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再表2020-111279カルボキシペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年6月4日
【発行日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】カルボキシペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/37 20060101AFI20210917BHJP
   C07K 5/06 20060101ALI20210917BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20210917BHJP
   C07F 9/655 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
   C12Q1/37
   C07K5/06
   C12Q1/02
   C07F9/655CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
【出願番号】特願2020-557889(P2020-557889)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2018-225735(P2018-225735)
(32)【優先日】2018年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、次世代がん医療創生研究事業、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】浦野 泰照
(72)【発明者】
【氏名】神谷 真子
(72)【発明者】
【氏名】栗木 優五
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
4H050
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ36
4B063QR48
4B063QR58
4B063QS03
4B063QS04
4B063QX02
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA50
4H045EA50
4H045FA10
4H045GA25
4H050AA01
4H050AB20
4H050BE54
4H050WA15
4H050WA23
4H050WA27
(57)【要約】
【解決課題】
新規のカルボキシペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブを提供すること。
【解決手段】
以下の一般式(I)で表される化合物又はその塩。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)で表される化合物又はその塩。
(式中、
は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;
Tは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体の残基を表し;
Sは、C末端アミノ酸残基を表し;
は、蛍光団を表し、
前記蛍光団は、−P(=O)(−R)−T−Sの部位が脱離することにより、吸収・蛍光波長が大きく変化する、あるいは消光状態から蛍光状態に変化する蛍光団である。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物又はその塩を含むカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブ。
【請求項3】
請求項2に記載の蛍光プローブを含む、カルボキシペプチダーゼ検出用キット。
【請求項4】
カルボキシペプチダーゼの活性を検出する方法であって、
(a)請求項1に記載の化合物又はその塩を細胞内に導入する工程、及び
(b)当該化合物又はその塩が細胞内でカルボキシペプチダーゼと反応することにより発せられる蛍光を測定する工程
を含む方法。
【請求項5】
蛍光イメージング手段を用いて前記蛍光応答を可視化することを特徴とする、請求項4に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
カルボキシペプチダーゼ(Carboxypeptidase、CP)は、ペプチド鎖のC末端側のアミノ酸残基を認識・切断する酵素群の総称であり、種々の疾患への関与が報告されているほか、細胞分化などの重要な生体機能に関わることが知られている。
【0003】
これまでに開発・報告されているカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブとしては、ローダミンのスピロ環化平衡の制御を利用したカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブ(非特許文献1)がある。この蛍光プローブは、世界で初めてのカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブであり、カルボキシペプチダーゼBの活性を検出することにより、動物モデルにおいて膵液漏出の検出に成功しており有用なプローブであるが、反応点を2点有するため、感度・定量に乏しく生細胞における活性の検出が難しいという問題がある。
【0004】
また、アゾホルミル基の特徴的な反応性を利用したカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブも開発されており(特願2018−037791)、この蛍光プローブは、カルボキシペプチダーゼとの反応点が1点であり、300倍以上の蛍光上昇を達成しており、また、がんバイオマーカーとして確立しているPSMAの活性を検出可能である等の利点がある。しかしながら、この蛍光プローブは、合成するのが煩雑であり、また、細胞内還元酵素によりアゾ基が還元される場合があるなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kuriki, Kamiya, Urano et al. JACS, 2018, 140, 1767
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規のカルボキシペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブを提供することを目的とする。特に、本発明は、1箇所の反応点で大きな蛍光強度変化を示し、生きた細胞におけるカルボキシペプチダーゼ活性を高感度に可視化することが可能なカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、核酸モノリン酸化体を細胞内に導入するためのプロドラッグ技術であるProTide化学に着目し、この技術を応用して、1箇所の反応点で大きな蛍光強度変化を示すことが可能なカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブを開発するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
[1] 以下の一般式(I)で表される化合物又はその塩。
(式中、
は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;
Tは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体の残基を表し;
Sは、C末端アミノ酸残基を表し;
は、蛍光団を表し、
前記蛍光団は、−P(=O)(−R)−T−Sの部位が脱離することにより、吸収・蛍光波長が大きく変化する、あるいは消光状態から蛍光状態に変化する蛍光団である。)
[2][1]に記載の化合物又はその塩を含むカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブ。
[3][2]に記載の蛍光プローブを含む、カルボキシペプチダーゼ検出用キット。
[4]カルボキシペプチダーゼの活性を検出する方法であって、
(a)[1]に記載の化合物又はその塩を細胞内に導入する工程、及び
(b)当該化合物又はその塩が細胞内でカルボキシペプチダーゼと反応することにより発せられる蛍光を測定する工程
を含む方法。
[5]蛍光イメージング手段を用いて蛍光応答を可視化することを特徴とする、[4]に記載の検出方法。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、1箇所の反応点で大きな蛍光強度変化を示し、生きた細胞におけるカルボキシペプチダーゼ活性を高感度に可視化することが可能なカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブを提供することが可能である。また、本発明のプローブにより、ex vivoにおいてもカルボキシペプチダーゼ活性の検出が可能である。
本発明のカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブは、外科手術において微小がん部位を高感度に可視化・検出するシステムなどの構築を図るのに有用である。
また、本発明のカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブは、乳がんのイメージングにも有効に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブの分子設計を表す。
図2】化合物AとCPAとの酵素アッセイの結果を示す。
図3】化合物BとCPBとの酵素アッセイの結果を示す。
図4】化合物CとCPBとの酵素アッセイの結果を示す。
図5】HMRef−tSoul−ARとの酵素アッセイの結果を示す。
図6】HMRef−tSoul−ARを用いたMDCK細胞中でのCPM活性のライブイメージングの結果を示す。
図7】10μMのMGTAの存在下又は不存在下において、20μMのHMRef−tSoul−ARで培養したMDCK細胞の培地のUPLC分析の結果を示す。
図8】4MU−tSoul−AEとPSMAを用いた酵素アッセイの結果を示す。
図9】4MU−tSoul−GEとPSMAを用いた酵素アッセイの結果を示す。
図10】HMRef−tSoul−ARを用いた乳がん患者由来の検体4例についての蛍光イメージングの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「アルキル基」又はアルキル部分を含む置換基(例えばアルコキシ基など)のアルキル部分は、特に言及しない場合には例えば炭素数1〜6個、好ましくは炭素数1〜4個、更に好ましくは炭素数1〜3個程度の直鎖、分枝鎖、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基を意味している。より具体的には、アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピルメチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などを挙げることができる。
【0012】
本明細書において「ハロゲン原子」という場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよく、好ましくはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子である。
【0013】
本発明の1つの態様は、以下の一般式(I)で表される化合物又はその塩である。
【0014】
【0015】
本発明者らは、核酸モノリン酸化体を細胞内に導入するためのプロドラッグ技術であるProTide化学に着目し、この技術を応用してカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブを開発した。細胞内におけるProTideの活性化メカニズムは長年検討されており、現在では以下の過程を経て目的の核酸誘導体のモノリン酸化体が放出されると考えられている。即ち、(1)Cathepsin A、カルボキシエステラーゼなどの細胞内エステラーゼによるエステルの加水分解、(2)生じたカルボキシレートのリンへの求核攻撃による分子内環化反応とそれに伴うアリールオキシ基の脱離、(3)分子内環化により生成した五員環構造の加水分解、(4)phosphoramidaseタイプの酵素による代謝、の4段階を経て目的のヌクレオチドが放出されるというメカニズムである。
【0016】
本発明では、この活性化における第一段階と第二段階に着目した。即ちProTideは細胞内エステラーゼをトリガーとしてカルボキシレートを生成し、分子内環化反応によってフェノール誘導体を放出するが、このトリガーをカルボキシペプチダーゼへと変更し、分子内環化反応によって蛍光団が放出されるようプローブを設計することでカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブを開発した(図1参照)。
【0017】
一般式(I)において、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。Rとしては、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくは、t−ブチル基、イソプロピル基である。Rとして、t−ブチル基等のこれら立体障害の大きい基をリン原子上に導入することにより、非酵素的な加水分解、例えば水分子のリン酸基への求核攻撃等を抑制することができる。
【0018】
一般式(I)において、Tは−NH−CRR’−C(=O)−構造を有する部位であり、一般的なα−アミノ酸残基(グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、システイン、トレオニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、セリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、プロリン)や、その誘導体(N−メチルロイシン、2,3−ジアミノプロパン酸、2,4−ジアミノ酪酸、オルニチン、α−ヒドロキシロイシン等)の残基が挙げられる。アミノ酸残基、その誘導体とも、L体アミノ酸及びD体アミノ酸の残基のいずれであってもよい。
アミノ酸残基として、好ましくは、グリシン、アラニンである。
【0019】
本発明の1つの側面において、Tは以下の式(1)で表される。
【0020】
式(1)において、Rは、水素、メチル基等の、天然アミノ酸(グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、システイン、トレオニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、セリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、プロリン)の側鎖を構成する基を表す。また、Rには、天然アミノ酸の側鎖を構成する基以外の基、例えば、種々の置換基を有するアルキル基なども含まれる。
式(1)のNHがPと結合する。
【0021】
一般式(I)において、Sは、C末端アミノ酸残基を表す。Sのアミノ酸残基は、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、システイン、トレオニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、セリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、プロリンの残基から選択される。また、SのC末端アミノ酸残基の種類はカルボキシペプチダーゼの種類に応じて選択され、例えば、フェニルアラニン、アルギニン、グルタミン酸である。
Sのアミノ酸残基としては、L体アミノ酸、D体アミノ酸の残基のいずれであってもよい。
【0022】
本発明の1つの側面において、Sは、以下の式(2)で表される、
【0023】
式(2)において、Rは、水素、メチル基等の、天然アミノ酸(グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、システイン、トレオニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、セリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、プロリン)の側鎖を構成する基を表す。
【0024】
一般式(I)において、
は、蛍光団を表す。
【0025】
本発明に用いることができる蛍光団は、本発明の化合物又はその塩がカルボキシペプチダーゼと反応すると、吸収・蛍光波長が大きく変化する、あるいは消光状態から蛍光状態に変化する蛍光団である。具体的には、本発明における蛍光団は、カルボキシペプチダーゼによる酵素反応によって、−P(=O)(−R)−T−S部位が脱離することで、吸収波長が大きく変化する、蛍光発光波長が大きく変化する、あるいは消光状態から蛍光状態に変化する蛍光団であり、このような特性を有する蛍光団であれば特に限定されずに使用することができる。
このような蛍光団としては、以下の式(3)〜(5)で表される吸収・蛍光波長変化型の蛍光団、式(6)で表される蛍光強度変化型の蛍光団が挙げられる。
【0026】
本発明の1つの側面において、一般式(I)の蛍光団は以下の式(3)で表される吸収・蛍光波長変化型の蛍光団である。
【0027】
式(3)において、Rは、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
また、式(3)において、R2は、水素、カルボキシル基又はエステル基(−COOR:Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す)を示す。
式(3)において、*は、−O−P(=O)(−R)−T−Sと結合する部位を表す
【0028】
本発明の1つの側面において、式(3)で表される蛍光団の非限定的な1つの例は以下の式で表される4−メチルウンベリフェロン(4MU)である。
【0029】
本発明の1つの側面において、一般式(I)の蛍光団は以下の式(4)で表される吸収・蛍光波長変化型の蛍光団である。
【0030】
式(4)において、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基又はカルボキシル基を表す。
【0031】
式(4)において、Rは、存在する場合は、ベンゼン環上に存在する同一又は異なる一価の置換基を示す。一価の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
mは、0〜4の整数である。mが2以上の場合は、各々のRは同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
式(4)において、Yは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基又はハロゲン原子を示す。
【0033】
式(4)において、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6個のアルキル基又はアリール基を示すが、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜3個のアルキル基であることが好ましく、R及びRがともにメチル基であることがより好ましい。R及びRが示すアルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR又はRが示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基などであってもよい。
又はRがアリール基を示す場合には、アリール基は単環の芳香族基又は縮合芳香族基のいずれであってもよく、アリール環は1個又は2個以上の環構成ヘテロ原子(例えば窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子など)を含んでいてもよい。アリール基としてはフェニル基が好ましい。アリール環上には1個又は2個以上の置換基が存在していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよい。
【0034】
式(4)において、Xは、酸素原子又はNR(Rは、水素原子又は炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基を表し、例えば、フッ化アルキル基(例えば、−CH−CF、−CH−CH−CF)が挙げられる。)である。
【0035】
式(4)において、*は、−O−P(=O)(−R)−T−Sと結合する部位を表す。
【0036】
また、本発明の1つの側面において、一般式(I)の蛍光団は以下の式(5)で表される吸収・蛍光波長変化型の蛍光団である。
【0037】
式(5)において、Rは、存在する場合は、ベンゼン環上に存在する同一又は異なる一価の置換基を示す。一価の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基又はカルボキシル基等が挙げられる。
【0038】
mは、0〜4の整数である。mが2以上の場合は、各々のRは同じであっても異なっていてもよい。
本発明の1つの好ましい側面において、mは0である。
【0039】
式(5)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基又はハロゲン原子を示す。
及びRがアルキル基を示す場合には、該アルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR又はRが示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基などであってもよい。R及びRがそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。R及びRがハロゲン原子である場合は、R及びRがともにフッ素原子であるか、塩素原子である場合がより好ましい。
本発明の1つの好ましい側面においては、R及びRは水素原子である。
【0040】
式(5)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、R及びRについて説明したものと同様である。R及びRが共に水素原子であることが好ましい。
【0041】
式(5)において、Rは、NH、NHR、NRR’、OH又はOR’’から選択される。R、R’は、それぞれ独立に、炭素数1〜5個のアルキル基、又は炭素数1〜5個のフッ化アルキル基を示す。また、R’’は、炭素数1〜5個のアルキル基を示す。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基が好ましい。また、フッ化アルキル基としては、−CH−CF、−CH−CH−CFが好ましい。
【0042】
式(5)において、R及びRは、存在する場合は、それぞれ独立に、炭素数1〜6個のアルキル基又はアリール基を示すが、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜3個のアルキル基であることが好ましく、R及びRがともにメチル基であることがより好ましい。R及びRが示すアルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などの置換基が1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR又はRが示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基などであってもよい。
又はRがアリール基を示す場合には、アリール基は単環の芳香族基又は縮合芳香族基のいずれであってもよく、アリール環は1個又は2個以上の環構成ヘテロ原子(例えば窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子など)を含んでいてもよい。アリール基としてはフェニル基が好ましい。アリール環上には1個又は2個以上の置換基が存在していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよい。
【0043】
また、後述するYが酸素原子の場合は、R及びRは存在しない。
また、後述するYがリン原子の場合は、R、Rのいずれか一方は、=Oである。
【0044】
式(5)において、Xは、酸素原子又はNRaを表す。ここで、Raは、水素原子又は炭素数1〜5個のアルキル基を表す。
【0045】
Yは、酸素原子、珪素原子、炭素原子又はリン原子を示す。
本発明の1つの好ましい側面においては、Yは酸素原子である。
【0046】
nは、1〜3の整数であり、好ましくは、nは1である。
【0047】
式(5)において、*は、−O−P(=O)(−R)−T−Sと結合する部位を表す。
【0048】
また、本発明の1つの側面において、一般式(I)の蛍光団は以下の式(6)で表される蛍光強度変化型の蛍光団である。
【0049】
式(6)において、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基又はカルボキシル基を表す。
【0050】
式(6)において、Rは、存在する場合は、ベンゼン環上に存在する同一又は異なる一価の置換基を示す。一価の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
mは、0〜4の整数である。mが2以上の場合は、各々のRは同じであっても異なっていてもよい。
本発明の1つの好ましい側面において、mは0である。
【0051】
式(6)において、Yは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基又はハロゲン原子を示す。
【0052】
式(6)において、Xは、酸素原子又はNR(Rは、水素原子又は炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基を表し、例えば、フッ化アルキル基(例えば、−CH−CF、−CH−CH−CF)が挙げられる。)である。
【0053】
式(6)において、*は、−O−P(=O)(−R)−T−Sと結合する部位を表す。
【0054】
本発明の1つの態様は、以下の一般式(II)で表される化合物又はその塩である。
【0055】
一般式(II)におけるR、R、R及び
は、一般式(I)で説明したのと同様である。
【0056】
本発明の一般式(I)及び(II)で表される化合物は、酸付加塩又は塩基付加塩として存在することができる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、又はメタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩などを挙げることができ、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩などの有機アミン塩などを挙げることができる。これらのほか、グリシンなどのアミノ酸との塩を形成する場合もある。本発明の化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質も本発明の範囲内である。
【0057】
本発明の一般式(I)及び(II)で表される化合物は、置換基の種類により、1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、1個又は2個以上の不斉炭素に基づく光学活性体や2個以上の不斉炭素に基づくジアステレオ異性体などの立体異性体のほか、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などは、いずれも本発明の範囲に包含される。
【0058】
本発明の化合物の代表的化合物の製造方法を本明細書の実施例に具体的に示した。従って、当業者は、これらの説明をもとにして、反応原料、反応条件、及び反応試薬などを適宜選択して、必要に応じてこれらの方法に修飾や改変を加えることにより、一般式(I)で表される本発明の化合物を製造することができる。
【0059】
本発明の一般式(I)及び(II)で表される本発明の化合物は、カルボキシペプチダーゼ活性を検出する蛍光プローブとして有用である。
即ち、本発明のもう1つの態様は、一般式(I)で表される化合物又はその塩を含む蛍光プローブである。
また、本発明のもう1つの態様は、細胞内のカルボキシペプチダーゼ活性を検出する方法であって、(a)一般式(I)で表される化合物又はその塩を細胞内に導入する工程、及び(b)当該化合物又はその塩が細胞内でカルボキシペプチダーゼと反応することにより発せられる蛍光を測定する工程を含む方法、である。
一般式(I)で表される本発明の化合物又はその塩は、カルボキシペプチダーゼのない環境において実質的に無蛍光であるか、弱い蛍光のみを有するが、カルボキシペプチダーゼのある環境において強い蛍光を発する特徴を有する。
【0060】
本発明の方法は、さらに蛍光イメージング手段を用いて蛍光応答を観測することを含むことができる。蛍光応答を観測する手段は、広い測定波長を有する蛍光光度計を用いることができるが、前記蛍光応答を2次元画像として表示可能な蛍光イメージング手段を用いて可視化することもできる。蛍光イメージングの手段を用いることによって、蛍光応答を二次元で可視化できるため、カルボキシペプチダーゼを瞬時に視認することが可能となる。蛍光イメージング装置としては、当該技術分野において公知の装置を用いることができる。なお、場合によって、紫外可視吸光スペクトルの変化(例えば、特定の吸収波長における吸光度の変化)によって上記測定対象試料と蛍光プローブの反応を検出することも可能である。
【0061】
本発明の蛍光プローブの使用方法は特に限定されず、従来公知の蛍光プローブと同様に用いることが可能である。通常は、生理食塩水や緩衝液などの水性媒体、又はエタノール、アセトン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの水混合性の有機溶媒と水性媒体との混合物などに上記式(I)で表される化合物又はそれらの塩を溶解し、細胞や組織を含む適切な緩衝液中にこの溶液を添加して、蛍光スペクトルを測定すればよい。本発明の蛍光プローブを適切な添加物と組み合わせて組成物の形態で用いてもよい。例えば、緩衝剤、溶解補助剤、pH調節剤などの添加物と組み合わせることができる。
【0062】
本発明の蛍光プローブが検出することができるカルボキシペプチダーゼとしては、種々のカルボキシペプチダーゼ、例えば、カルボキシペプチダーゼA,カルボキシペプチダーゼB, カルボキシペプチダーゼM, Prostate specific membrane antigen (PSMA)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
上記工程(a)における測定対象である細胞の試料は、カルボキシペプチダーゼを発現している細胞であることができるが、かかる細胞がカルボキシペプチダーゼを発現しているがん細胞やがん組織である場合には、本発明の検出方法によって、がん細胞やがん組織を検出又は可視化することができる。すなわち、本発明の蛍光プローブ、当該蛍光プローブを含む組成物、及び本発明の検出方法は、がんの診断に用いることもできる。
【0064】
本明細書において、「がん組織」の用語はがん細胞を含む任意の組織を意味している。「組織」の用語は臓器の一部又は全体を含めて最も広義に解釈しなければならず、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。がん組織としてはカルボキシペプチダーゼを高発現している組織が好ましい。また、本明細書において「診断」の用語は任意の生体部位においてがん組織の存在を肉眼的又は顕微鏡下に確認することを含めて最も広義に解釈する必要がある。
本発明の検出方法の1つの好ましい側面においては、上記工程(a)における測定対象である細胞の試料は、がん細胞であり、好ましくは乳がん細胞である。
【0065】
本発明の検出方法においては、上記蛍光プローブを含むカルボキシペプチダーゼ検出用キットを用いることが好ましい。当該キットにおいて、通常、本発明の蛍光プローブは溶液として調製されているが、例えば、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供され、使用時に注射用蒸留水や適宜の緩衝液に溶解して適用することもできる。
【0066】
また、当該キットには、必要に応じてそれ以外の試薬等を適宜含んでいてもよい。例えば、添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
[原料]
合成に使用した全ての化学物質は、東京化成工業(株)、和光純薬工業(株)、シグマアルドリッチ(株)から購入した。 さらに精製することなく使用した。
【0069】
[測定機器]
NMRスペクトルは、重水素化溶媒中を用い、JEOL JNM-LA400[1H 400 MHz, 13C 100 MHz]もしくはBruker NMR AVANCE III 400分光計[31P(162MHz)]で得た。
高分解能ESI質量スペクトルは、JEOL JMS-T100LC AccuToF (ESI)で得た。
HPLC精製は、Inertstil−ODS−3カラム(Φ10×250mm(セミ分取)およびΦ20×250mm(分取))を備えたJASCO PU−2080 Plusポンプ(GL Science Co.、Ltd.)およびMD-2015検出器(JASCO)で行った。
HPLCに使用した溶媒は、和光(株)より入手した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、シリカゲル60N(球状、中性、63〜210μm;関東化学株式会社製)を用いて行った。
TLCは、シリカゲルプレートF254(0.25mm(分析);Merck、AKG)で行った。
UV−visスペクトルは、Shimadzu UV−1800分光光度計で得た。
蛍光スペクトルは、F-7100 (日立)で取得した。
【0070】
[合成実施例1]
蛍光団として青色蛍光を有する4−MU、一般式(I)におけるTとしてアラニン残基、Rとしてエトキシ基、Sとしてフェニルアラニン残基およびアルギニン残基を夫々有する化合物A、Bの合成を行った。尚、化合物AとBをはじめとして本分子設計においてはジアステレオマーが存在するが、それらの単離は行わず混合物を用いて評価を行った。
合成は、以下のスキーム1により、エチルジクロロホスフェート(1)に対して4−MU、別途調整したジペプチド(2、3)を順次縮合させ、その後の酸性条件での保護基の除去を行うことで目的化合物を得た。
【0071】
スキーム1
(a) 1) HATU, DIEA, DMF, 2) Piperidine, DMF, y. 85 % in 2 steps. (b) 1) 1) HATU, DIEA, DMF, 2) Piperidine, DMF, y. 71 % in 2 steps. (c) 4-MU, TEA, THF, (d) 1) H-Ala-Phe-OtBu, TEA, THF, 2) TFA, MeCN, y. 8.4 % in 3 steps, diastereomer mixture (e) 1) H-Ala-Arg(Pbf)-OtBu, TEA, THF, 2) TFA, MeCN, y. 17 % in 3 steps, diastereomer mixture
【0072】
化合物2の合成
Fmoc−Ala−OH(622mg、2.00mmol)、H−Phe−OtBu塩酸塩(515mg、2.00mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1032μL、5.92mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mLに溶解し、HATU(837mg、2.20mmol)を加えて室温にて一晩攪拌した。反応溶液に酢酸エチルおよび飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、分液操作によって酢酸エチル層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をN,N−ジメチルホルムアミド8mLに溶解し、ピペリジン2mLを加えて室温にて一晩攪拌した。反応溶液に酢酸エチルおよび飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、分液操作によって酢酸エチル層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(酢酸エチル/ヘキサン=1/2→2/1)、化合物(498mg、85%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.25 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.41 (s, 9H), 3.21-2.99 (m, 2H), 3.46 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 4.82-4.64 (m, 1H), 7.19-7.13 (m, 2H), 7.36-7.19 (m, 3H), 7.65 (d, J = 7.8 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 21.7, 28.0, 38.3, 50.8, 53.1, 82.2, 126.9, 128.3, 129.6, 136.4, 170.9, 175.3
HRMS (ESI+): calcd for [M+H]+, 293.18652 ; found, 293.18572 (-0.89 mmu)
【0073】
化合物3の合成
Fmoc−Ala−OH(595mg、1.91mmol)、H−Arg(Pbf)−OtBu塩酸塩(992mg、1.91mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(986μL、5.73mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド15mLに溶解し、HATU(799mg、2.10mmol)を加えて室温にて1時間攪拌した。反応溶液に酢酸エチルおよび飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、分液操作によって酢酸エチル層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をN,N−ジメチルホルムアミド8mLに溶解し、ピペリジン 2 mLを加えて室温にて90分攪拌した。反応溶液に酢酸エチルおよび飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、分液操作によって酢酸エチル層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン→ジクロロメタン/メタノール=95/5)、化合物(745mg、71%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 1.25 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.43 (s, 9H), 1.45 (s, 6H), 1.49-1.61 (m, 2H), 1.61-1.72 (m, 1H), 1.72-1.96 (m, 1H), 2.07 (s, 3H), 2.50 (s, 3H), 2.57 (s, 3H), 2.99 (s, 2H), 3.07-3.25 (m, 2H), 3.45 (q, J = 6.9 Hz, 1H), 4.23 (dd, J = 5.0 , 8.2 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CD3OD): δ 11.2, 17.1, 18.3, 20.3, 25.6, 26.9, 27.4, 28.6, 40.2, 42.6, 49.9, 52.7, 81.6, 86.3, 117.1, 124.7, 132.1, 133.1, 138.0, 156.7, 158.5, 171.2, 177.1
HRMS (ESI+): calcd for [M+H]+, 554.30123 ; found, 554.30128 (0.05 mmu)
【0074】
化合物Aの合成
エチルホスホロジクロリダート(21μL、0.171mmol)をテトラヒドロフラン1.5mLに溶解し、アルゴン雰囲気下、−78°Cにて10分攪拌した。テトラヒドロフラン1mLに溶解した4−メチルウンベリフェロン(31mg、0.171mmol)、トリエチルアミン(47μL、0.342mmol)を順次ゆっくり滴下した後、室温まで昇温し、アルゴン雰囲気下で2時間攪拌した。反応溶液を再び−78°Cにて10分間攪拌した後、テトラヒドロフラン1mLに溶解した化合物(100mg、0.342mmol) 、トリエチルアミン(94μL、0.684mmol)を順次ゆっくり滴下した後、室温まで昇温し、アルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。水を加えて反応を停止した後、ジクロロメタン、酢酸エチルを用いて水層を抽出し、有機層を合わせたものを、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、溶媒を減圧除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)にて一部精製した。目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除き、残渣をアセトニトリル1mLに溶解させた後、トリフルオロ酢酸3mLを加えて2時間室温で攪拌した。溶媒を減圧除去して得た残渣をHPLC(eluent A (HO 0.1%TFA)and eluent B(CHCN 80%、HO 20%、0.1% TFA)(A/B=80/20 to 0/100 in 30min))で精製して目的化合物(7.2mg、8.4%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 1.26-1.03 (m, 6H), 2.41 (d, J = 1.4 Hz, 3H), 2.95-2.76 (m, 1H), 3.14-2.95 (m, 1H), 3.84-3.65 (m, 1H), 4.11-3.84 (m, 2H), 4.53-4.30 (m, 1H), 5.90-5.66 (m, 1H), 6.34 (s, 1H), 7.32-7.03 (m, 7H), 7.73 (dd, J = 11.9, 8.7 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 7.8 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 16.4 (d, J = 6.7 Hz), 16.5 (d, J = 6.7 Hz), 18.7, 21.1, 21.2, 21.3, 37.2, 50.8 (d, J = 4.8 Hz), 53.7, 53.8, 63.0 (d, J = 4.8 Hz), 63.1 (d, J = 5.7 Hz), 108.3 (d, J = 5.7 Hz), 108.5 (d, J = 4.8 Hz), 113.6, 116.8 (containing 2 peaks), 117.0 (d, J = 4.8 Hz), 117.2 (d, J = 5.7 Hz), 126.9, 127.0, 127.2, 128.6, 128.7, 129.6, 137.8, 153.5, 153.9 (d, J = 5.8 Hz), 154.0 (d, J = 6.7 Hz), 154.2, 154.3, 160.2, 173.2 (containing 2 peaks)
31P NMR (162 MHz, DMSO-d6): δ 3.55, 3.89
HRMS (ESI+): calcd for [M+H]+, 503.15833 ; found, 503.15702 (-1.31 mmu)
The UPLC (eluent; A/B = 95/5 to 5/95 in 4 min) chromatogram after purification is shown. Absorbance at 310 nm was detected. Eluent A (H2O containing 0.1 % formic acid) and eluent B (80 % acetonitrile and 20 % H2O containing 0.1 % formic acid) were used for UPLC analysis.
【0075】
化合物Bの合成
エチルホスホロジクロリダート(21μL、0.171mmol)をテトラヒドロフラン1.5mLに溶解し、アルゴン雰囲気下、−78°Cにて10分攪拌した。テトラヒドロフラン1mLに溶解した4−メチルウンベリフェロン(31mg、0.171mmol)、トリエチルアミン(47μL、0.342mmol)を順次ゆっくり滴下した後、室温まで昇温し、アルゴン雰囲気下で2時間攪拌した。反応溶液を再び−78°Cにて10分間攪拌した後、テトラヒドロフラン1mLに溶解した化合物(189mg、0.341mmol)、トリエチルアミン(94μL、0.684mmol)を順次ゆっくり滴下した後、室温まで昇温し、アルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した後、ジクロロメタン、酢酸エチルを用いて水層を抽出し、有機層を合わせたものを、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、溶媒を減圧除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル→酢酸エチル/メタノール=97/3)にて一部精製した。目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除き、残渣にトリフルオロ酢酸3mLを加えて1時間室温で攪拌した。溶媒を減圧除去して得た残渣をHPLC(eluent A (HO 0.1% TFA) and eluent B(CHCN 80%、HO 20%、0.1% TFA)(A/B=80/20 to 0/100 in 30min))で一部精製した。目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除き、残渣をHPLC(eluent C (HO containing 100mM triethylammonium acetate) and eluent D(80%acetonitrile and 20%HO containg 100 mM triethylammonium acetate)(C/D=80/20 to 0/100 in 30min))で一部精製した。目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除き、残渣を再度HPLC(eluent A (HO 0.1% TFA) and eluent B(CHCN 80%、HO 20%、0.1% TFA)(A/B=80/20 to 0/100 in 30min))で生成し、目的化合物(18mg、17%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6+D2O): δ 1.09-1.24 (m, 6H), 1.32-1.47 (m, 2H), 1.47-1.62 (m, 1H), 1.62-1.78 (m, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.92-3.12 (m, 2H), 3.71-3.82 (m, 1H), 4.07-4.22 (m, 1H), 6.29 (s, 1H), 7.06-7.25 (m, 2H), 7.40-7.57 (m, 1H), 7.64-7.81 (m, 1H), 8.09 (d, J = 7.8 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 16.4, 16.5 (containing 2 peaks), 18.7, 21.2, 21.3, 25.5, 25.6, 28.8, 40.8, 50.7 (containing 2 peaks), 52.0, 63.1 (containing 2 peaks), 63.2, 108.3 (d, J = 4.8 Hz), 108.5 (d, J = 4.8 Hz), 113.6, 116.8, 116.9, 117.1 (d, J = 5.8 Hz), 117.3 (d, J = 5.8 Hz), 127.1, 127.2, 153.6, 154.0 (d, J = 6.7 Hz), 154.2, 154.3, 157.2, 160.3, 173.4, 173.5 (containing 2 peaks), 173.7 (containing 2 peaks)
31P NMR (162 MHz, DMSO-d6): δ 3.62, 4.00
HRMS (ESI+): calcd for [M+H]+, 512.19102 ; found, 512.19088 (-0.15 mmu)
The UPLC (eluent; A/B = 95/5 to 5/95 in 4 min) chromatogram after purification is shown. Absorbance at 310 nm was detected. Eluent A (H2O containing 0.1 % formic acid) and eluent B (80 % acetonitrile and 20 % H2O containing 0.1 % formic acid) were used for UPLC analysis.
【0076】
[実施例1]
合成した化合物A、Bを用いた酵素アッセイを行った。結果として、化合物A及びBはそれぞれの標的酵素であるカルボキシペプチダーゼA(CPA)、カルボキシペプチダーゼB(CPB)とインキュベーションすることで蛍光が上昇し、その蛍光上昇はそれぞれの阻害剤である(S)−benzylsuccinic acidおよびMGTAの添加によって抑制された。また、化合物Aの酵素アッセイにおいてはproCPAの活性化のためにトリプシンが共存しているためトリプシンのみを添加した条件も検討したが、顕著な蛍光上昇は見られなかった。一方で、わずかではあるか酵素非存在下においても徐々に蛍光が上昇してきており、本プローブは非酵素的な分解反応を受けることが明らかとなった(図2図3)。
図2の(a)は、化合物AとCPAの反応スキームを示す。図2の(b)では、PBS(−)中10μMの化合物Aを、共溶媒として0.1%DMSOを含む100μM阻害剤((S)−ベンジルコハク酸)の存在下または非存在下で、1.5μgトリプシンによって活性化した5ngCPAと37℃でインキュベートした。Ex/Em=355/460nm。n=4。(図2中、Tryはトリプシンを、SBSAは(S)−ベンジルコハク酸を表す。)
図3の(a)は、化合物BとCPBの反応スキームを示す。図3の(b)では、PBS(−)中10μMの化合物Bを、共溶媒として0.1%DMSOを含む100μM阻害剤(MGTA)の存在下または非存在下で5ngCPBと37℃でインキュベートした。Ex/Em=355/460nm。n=4。
【0077】
上記の結果は、ProTide chemistyを利用した本分子設計が新たなカルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブとして機能することを示すものである。一方、双方のプローブにおいて非酵素的な分解反応が見られ、実用的なプローブの開発のためには水溶液中での安定性を向上させる必要があることが明らかとなった。
【0078】
プローブの非酵素的な分解反応の機構としては、溶媒水分子のリン原子への求核攻撃による加水分解が考えられる。これを防ぐためのプローブの改良として、リン原子上の置換基を嵩高いものへと変更することで立体障害による安定性の向上を検討した。
【0079】
[合成実施例2]
次に、リン原子上の置換基として新たにtBu基を導入し、一般式(I)のSのアミノ酸としてアルギニンを有する化合物Cの合成を以下のスキームにより行った。
【0080】
スキーム2
(a) 1) 4-MU, TEA, THF, 2) H-Ala-Arg(Pbf)-OtBu, TEA, THF, 3) TFA, MeCN, 14 % in 3 steps (diastereomer mixture).
【0081】
化合物Cの合成
tert−ブチルホスホン酸ジクロリド(30mg、0.171mmol)をテトラヒドロフラン1mLに溶解し、アルゴン雰囲気下、−78°Cにて10分攪拌した。テトラヒドロフラン1mLに溶解した4−メチルウンベリフェロン(31mg、0.171mmol)、トリエチルアミン(47μL、0.342mmol)を順次ゆっくり滴下した後、室温まで昇温し、アルゴン雰囲気下で3時間攪拌した。反応溶液を再び−78°Cにて10分間攪拌した後、テトラヒドロフラン 1 mLに溶解した化合物(189mg、0.341mmol)、トリエチルアミン(94μL、0.684mmol)を順次ゆっくり滴下した後、室温まで昇温し、アルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した後、ジクロロメタン、酢酸エチルを用いて水層を抽出し、有機層を合わせたものを、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、溶媒を減圧除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル→酢酸エチル/メタノール=97/3)にて一部精製した。目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除き、残渣をアセトニトリル2 mLに溶解し、トリフルオロ酢酸8mLを加えて1時間室温で攪拌した。溶媒を減圧除去して得た残渣をHPLC (eluent A (HO 0.1% TFA) and eluent B (CHCN 80%、HO 20%、0.1% TFA)(A/B=80/20 to 0/100 in 30min))で精製し、化合物C(15mg、14%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 1.15 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 1.24-1.38 (m, 10H), 1.51-1.78 (m, 3H), 1.78-1.98 (m, 1H), 2.40-2.56 (m, 3H), 3.06-3.24 (m, 2H), 3.91-4.11 (m, 1H), 4.25 (q, J = 4.4 Hz, 0.37H), 4.39 (q, J = 4.6 Hz, 0.63H), 6.30 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 7.12-7.22 (m, 0.37H), 7.22-7.29 (m, 1.63H), 7.76 (d, J = 8.7 Hz, 0.37H), 7.80 (d, J = 8.2 Hz, 0.63H) (diastereomer mixture, dr = 63 : 37 judged from 1H NMR)
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 18.7, 21.6 (d, J = 5.8 Hz), 22.0 (d, J = 2.9 Hz), 24.7, 24.8, 25.5, 25.6, 28.7, 32.8 (d, J = 132.2 Hz), 32.9 (d, J = 132.2 Hz), 40.8, 50.3, 50.5, 51.9, 52.0, 108.8 (d, J = 4.8 Hz), 109.3 (d, J = 3.7 Hz), 113.4, 113.5, 116.5, 116.6, 117.7 (d, J = 3.8 Hz), 118.3 (d, J = 3.8 Hz), 126.8 (containing 2 peaks), 153.6, 153.7, 154.0, 154.1, 154.2, 154.3, 154.4, 157.3, 160.3, 160.4, 173.6, 173.7, 174.0 (d, J = 1.6 Hz), 174.1 (d, J = 4.8 Hz),
31P NMR (162 MHz, DMSO-d6): δ 39.5, 40.3
HRMS (ESI+): calcd for [M+H]+, 524.22741 ; found, 524.22696 (-0.45 mmu)
The UPLC (eluent; A/B = 95/5 to 5/95 in 4 min) chromatogram after purification is shown. Absorbance at 310 nm was detected. Eluent A (H2O containing 0.1 % formic acid) and eluent B (80 % acetonitrile and 20 % H2O containing 0.1 % formic acid) were used for UPLC analysis.
【0082】
[実施例2]
合成した化合物CとCPBを用いて酵素アッセイを行った。結果として化合物CはCPBの基質となり蛍光上昇を示した一方、化合物Bと比較すると酵素非存在下では蛍光の上昇が見られず、生理的条件であるpH7.4において安定であることが明らかとなった(図4)。
図4の(a)は、化合物CとCPBの反応スキームを示す。図4の(b)では、PBS(−)中10μMの化合物Cを、共溶媒として0.1%DMSOを含む5ngCPBの存在下または非存在下、37℃でインキュベートした。 Ex/Em=355/460nm。n=4。図4の(c)は、化合物Aと化合物Cの安定性の比較を示す。PBS(−)中10μMの化合物Aまたは化合物Cを、CPBの非存在下で、37℃でインキュベートした。Ex/Em=355/460nm。n=4。
【0083】
これらの結果からProTideを基に設計した本分子設計において、リン原子上の置換基としてt−Bu基を有する誘導体は生理的条件であるpH7.4において安定であり、かつカルボキシペプチダーゼとの反応によって蛍光増大を引き起こすことが可能であった。本分子におけるリンカー部位をtSoul (Bu ubstituted phsphorinker)と命名すると、化合物Cである4MU−tSoul−ARはCPB活性を検出する青色プローブであると言える。
一方、生細胞や臨床検体におけるカルボキシペプチダーゼのライブイメージングを行う上では、細胞毒性・自家蛍光の観点から蛍光波長を長波長化させることが望ましい。そこで次に、蛍光団として緑色蛍光を有し、フェノール性水酸基の保護・脱保護反応を、スピロ環化平衡の変化を介して蛍光のOFF/ONに繋げられることが報告されているHMRefを有する新たなプローブHMRef−tSoul−ARの合成を以下のスキームにより行った。尚、HMRefは文献(D. Asanuma, M. Sakabe, M. Kamiya, K. Yamamoto, J. Hiratake, M. Ogawa, N. Kosaka, P.L. Choyke, T. Nagano, H. Kobayashi, Y. Urano, Nat. Commun., 2015, 6, 6463.)に従って合成した。
【0084】
スキーム3
(a) 1) HMRef, TEA, THF, 2) H-Ala-Arg(Pbf)-OtBu, TEA, THF, 3) TFA, MeCN, 1.7 % in 3 steps (diastereomer mixture).
【0085】
[合成実施例3]
HMRef−tSoul−ARの合成
tert−ブチルホスホン酸ジクロリド(30mg、0.171mmol)をテトラヒドロフラン1mLに溶解し、アルゴン雰囲気下、−78°Cにて10分攪拌した。テトラヒドロフラン1mLに溶解したHMRef(68mg、0.170mmol)およびトリエチルアミン(47μL、0.342mmol)をゆっくり滴下した後、35°Cまで昇温し、アルゴン雰囲気下で4時間攪拌した。反応溶液を再び−78°Cにて10分間攪拌した後、テトラヒドロフラン1mLに溶解した化合物(188mg、0.334mmol)、トリエチルアミン(94μL、0.684mmol)を順次ゆっくり滴下した後、60°Cまで昇温し、アルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した後、酢酸エチルを用いて水層を抽出した。有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、溶媒を減圧除去した後、残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン→ジクロロメタン/メタノール=93/7)にて一部精製した。目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除き、残渣にトリフルオロ酢酸2mLを加えて2時間室温で攪拌した。減圧除去によって溶媒を除き、HPLC(eluent A (HO 0.1% TFA) and eluent B(CHCN 80%、HO 20%、0.1% TFA)(A/B=80/20 to 0/100 in 30min))で一部精製し、目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をHPLC(eluent C (HO containing 100mM triethylammonium acetate) and eluent D (80% acetonitrile and 20% HO containg 100mM triethylammonium acetate)(C/D=80/20 to 0/100 in 30min))で一部精製し、目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をHPLC(eluent E(HO) and eluent F(80% acetonitrile and 20% HO)(E/F=80/20 to 0/100 in 30min))により精製し、目的化合物HMRef−tSoul−AR(2.2mg、1.7%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 1.07 (dd, J = 7.3, 9.1 Hz, 1H), 1.19-1.33 (m, 11H), 1.33-1.87 (m, 4H), 2.79-2.95 (m, 1.3H), 3.08-3.18 (m, 0.7H), 3.82 (q, J = 9.1 Hz, 2H), 3.88-3.99 (m, 1H), 4.07-4.22 (m, 1H), 5.21-5.29 (m, 2H), 6.44 (dd, J = 2.3, 8.7 Hz, 1H), 6.48-6.55 (m, 1H), 6.66-6.73 (m, 1H), 6.78 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.84-6.94 (m, 2H), 7.05-7.13 (m, 1H), 7.21-7.31 (m, 1H), 7.33-7.44 (m, 2H) (diastereomer mixture)
HRMS (ESI+): calcd for [M]+, 747.28829 ; found, 747.28597 (-2.33 mmu)
The UPLC (eluent; C/D = 95/5 to 5/95 in 4 min) chromatogram after purification is shown. Absorbance at 254 nm was detected. Eluent C (H2O containing 10 mM ammonium formate) and eluent D (80 % acetonitrile and 20 % H2O containing 10 mM ammonium formate) were used for UPLC analysis.
【0086】
[実施例3]
次に、CPBとの反応性およびpH7.4の緩衝液中での安定性の検討を行った。結果として、HMRef−tSoul−ARはCPBとの反応によって3320倍もの蛍光増大を引き起こす一方、酵素非存在下では少なくとも1時間程度は安定であることが明らかとなった。その結果を図5に示す。
図5の(a)は、HMRef−tSoul−ARとCPBの反応スキームを示す。図5の(b)は、共溶媒として0.1%DMSOを含む30μgCPBとインキュベートしたPBS(−)中の1μM HMRef−tSoul−ARの蛍光増加を示す。25℃でインキュベートした。励起波長は498nmであった。図5の(c)は、PBS(−)中の1μM HMRef−tSoul−ARの25℃で50分間の吸収変化を示す。
【0087】
また、酵素反応速度パラメータの算出を行った。尚、これまでの検討ではCPBとの反応を行ってきたが、HMRef−tSoul−ARはCPB同様塩基性アミノ酸を基質して好むカルボキシペプチダーゼM(CPM)の基質となることも明らかとなったため、双方の酵素に関してパラメータの算出を行った。今回のプローブはバックグラウンドシグナルが十分に抑えられているため、高濃度のプローブを用いても蛍光法により初速度の算出が可能であると判断し、測定を行った。
【0088】
【表1】
【0089】
全ての実験は、共溶媒としてDMSOを含有する全容量20μLのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中37℃で行った。5ngのCPB又はCPMを添加した。酵素反応初速度をプレートリーダーを用いて535nmでの蛍光変化から計算した(n=3)。励起波長は485nmであった。
【0090】
CPBとの反応性を第一世代プローブであるdiClHMRBC−CONH−Argと比較すると、HMRef−tSoul−ARではkcat/Kの値が1オーダー程度上昇しており、酵素との反応性の上昇が見られた。これらの結果から、酵素との反応性およびS/Nの向上によりプローブの高感度化が達成できたと判断し、diClHMRBC−CONH−Argでは達成できなかった生細胞におけるカルボキシペプチダーゼ活性のライブイメージングを行うこととした。
【0091】
[実施例4]
生細胞におけるカルボキシペプチダーゼ活性のライブイメージング
上記で合成したHMRef−tSoul−ARを用いて、生細胞におけるカルボキシペプチダーゼ活性のライブイメージングを行った。具体的には、HMRef−tSoul−ARを基質とすることが明らかとなったCPMを発現するMDCK細胞にプローブを添加することで蛍光の上昇が見られるか否かを検討した。尚、CPMはCPBとは異なり活性型として細胞膜上に発現することが報告されているため、トリプシンなどの添加は不要である。
その結果、MDCK細胞からの経時的な蛍光上昇が観測された一方、その蛍光上昇は阻害剤であるMGTAの添加によって完全に抑制されることが明らかとなった(図6)。
ここで、図6の(a)、(b)は、10μM MGTAの存在下(a)又は非存在(b)での、HBSSに10μM HMRef−tSoul−ARを含むMDCK細胞の蛍光画像を示す。Ex/Em=488/500−550nm レーザー出力5%、PMT 600V。10μM Hoechst 33342を焦点面の補正のために共インキュベートした。Hoechst信号のイメージングでは、Ex/Em=405/430−460nm。レーザー出力3%、PMT 1000V、SP8。
また、20μMのHMRef−tSoul−ARを20時間インキュベーションした後の外液を回収しUPLCで分析したところ、確かにHMRefが生成していることが確かめられた(図7)。
ここで、図7は、10μM MGTAの存在下または非存在下で20μM HMRef−tSoul−ARとインキュベートしたMDCK細胞の培地のUPLC分析の結果を示す。MDCK細胞を、10μM MGTAの存在下または非存在下、37°Cで20時間、HBSS中の20μM HMRef−tSoul−ARとインキュベートした。溶出は、C/D=95/5〜5/95の線形勾配で4分で行い、254nmで検出した。
これらの結果は、生細胞におけるCPM活性のライブイメージングに成功した世界で初めての例である。
【0092】
[実施例5]
PSMA活性検出蛍光プローブの開発
これまでに開発してきたtSoulを用いて、前立腺がんのバイオマーカーとして確立しているProstate specific membrane antigen(PSMA)活性検出蛍光プローブの開発を行った。PSMAはC末端のグルタミン酸を切断する活性を有することが報告されている。そこで、蛍光団として青色蛍光を有する4−MU、一般式(I)におけるTとしてアラニン残基、RとしてtBu基、Sとしてグルタミン酸残基を有する4MU−tSoul−AEの合成を行った。
【0093】
スキーム4
(a) 1) HATU, DIEA, DMF, 2) Piperidine, DMF, y. 85 % in 2 steps. (b) 1) 4-MU, TEA, THF, 2) H-Ala-Glu(OtBu)-OtBu, TEA, THF, 2) TFA, MeCN, y. 14 % in 3 steps, diastereomer mixture.
【0094】
化合物5の合成
Fmoc−Ala−OH(994mg、3.00mmol)、H−Glu(OtBu)−OtBu塩酸塩(886mg、3.00mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1548μL、9.29mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mLに溶解し、HATU(1254mg、3.30mmol)を加えて室温にて3時間攪拌した。反応溶液に酢酸エチルおよび飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、分液操作によって酢酸エチル層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより一部精製し(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)、目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をN,N−ジメチルホルムアミド8mLに溶解し、ピペリジン2mLを加えて室温にて90分攪拌した。反応溶液に酢酸エチルおよび飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、分液操作によって酢酸エチル層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン→ジクロロメタン/メタノール=97/3)、化合物(841mg、85%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 1.28 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.45 (s, 9H), 1.47 (s, 9H), 1.76-1.98 (m, 1H), 1.99-2.20 (m, 1H), 2.32 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 3.44 (q, J = 6.9 Hz, 1H), 4.31 (dd, J = 5.3, 8.9 Hz, 1H),
13C NMR (100 MHz, CD3OD): δ 20.3, 26.7, 26.9, 27.0, 31.2, 49.9, 52.2, 80.5, 81.7, 171.1, 172.3, 177.2
HRMS (ESI+): calcd for [M+H]+, 331.22330 ; found, 331.22158 (-1.72 mmu)
【0095】
4MU−tSoul−AEの合成
tert−ブチルホスホン酸ジクロリド(30mg、0.171mmol)をテトラヒドロフラン2mLに溶解し、アルゴン雰囲気下、−78°Cにて10分攪拌した。テトラヒドロフラン1mLに溶解した4−メチルウンベリフェロン(30mg、0.170mmol)、トリエチルアミン(48μL、0.349mmol)を順次ゆっくり滴下した後、室温まで昇温し、アルゴン雰囲気下で1時間攪拌した。反応溶液を再び−78°Cにて10分間攪拌した後、テトラヒドロフラン1mLに溶解した化合物(113mg、0.342mmol)、トリエチルアミン(96μL、0.698mmol)を順次ゆっくり滴下した後、室温まで昇温し、アルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。60°Cまで昇温してさらに3時間攪拌した後、飽和食塩水を加えて反応を停止した後、酢酸エチルを用いて水層を抽出し、有機層を合わせたものを、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、溶媒を減圧除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=65/35→90/10)にて一部精製した。目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除き、残渣をアセトニトリル2 mLに溶解し、トリフルオロ酢酸 4 mLを加えて1時間室温で攪拌した。溶媒を減圧除去して得た残渣をHPLC (eluent A(HO 0.1% TFA) and eluent B(CHCN 80%、HO 20%、0.1% TFA)(A/B=80/20 to 0/100 in 30min))で精製し、化合物C (12mg、14%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 1.04-1.40 (m, 12H), 1.60-1.79 (m, 0.48H), 1.79-2.05 (m, 1H), 2.06-2.25 (m, 1.52H), 2.30-2.37 (m, 1H), 2.40-2.53 (m, 3H), 3.87-4.08 (m, 1H), 4.22 (q, J = 4.6 Hz, 0.48H), 4.38 (q, J = 4.7 Hz, 0.52H), 6.25 (d, J = 1.4 Hz, 0.48H), 6.27 (d, J = 1.4 Hz, 0.52H), 7.12-7.31 (m, 2H), 7.66-7.85 (m, 1H) (diastereomer mixture, dr = 13 : 12 judged from 1H NMR)
13C NMR (100 MHz, CD3OD): δ 17.3, 17.4, 19.9 (d, J = 6.8 Hz), 20.5 (d, J = 3.8 Hz), 23.3 (d, J = 6.7 Hz), 26.5, 29.6, 32.4 (d, J = 132.3 Hz), 32.5 (d, J = 132.2 Hz), 50.4, 51.5 (containing 2 peaks), 108.9 (d, J = 4.8 Hz), 109.0 (d, J = 4.8 Hz), 113.0, 113.1, 116.9, 117.0, 117.4 (d, J = 3.8 Hz), 117.6 (d, J = 4.8 Hz), 126.1, 126.2, 153.5 (d, J = 3.7 Hz), 153.6 (d, J = 3.8 Hz), 153.7, 154.2 (containing 2 peaks), 161.3, 161.4, 172.9, 173.1, 174.5, 174.6 (containing 2 peaks), 174.7, 174.8
31P NMR (162 MHz, CD3OD): δ 41.1, 41.6
HRMS (ESI+): calcd for [M+H]+, 497.16889 ; found, 467.16732 (-1.57 mmu)
The UPLC (eluent; A/B = 95/5 to 5/95 in 4 min) chromatogram after purification is shown. Absorbance at 310 nm was detected. Eluent A (H2O containing 0.1 % formic acid) and eluent B (80 % acetonitrile and 20 % H2O containing 0.1 % formic acid) were used for UPLC analysis.
【0096】
合成した4MU−tSoul−AEとPSMAを用いて酵素アッセイを行った。結果、期待に反して蛍光上昇は観測されず、4MU−tSoul−AEは基質として認識されないことが明らかとなった(図8)。
ここで、TBSバッファー中の10μM 4MU−tSoul−AEを、共溶媒として0.1%DMSOを含む10μM阻害剤(2−PMPA)の存在下または非存在下で22ng PSMAと37℃でインキュベートした。Ex/Em=355/460nm。n=3。
【0097】
[実施例6]
この結果を基に、プローブの改良を行った。PSMAの酵素認識にはC末端のグルタミン酸だけでなく、隣接するアミノ酸残基も重要であることが示唆されている。そこで一般式(I)におけるTを異なるアミノ酸に変えた誘導体の合成を行うこととした。PSMAの酵素ポケットが比較的小さいことを考慮して、分子サイズの小さな蛍光団として青色蛍光を有する4−MU、一般式(I)におけるTとしてグリシン残基、RとしてtBu基、Sとしてグルタミン酸残基を有する4MU−tSoul−GEの合成を行った。
【0098】
スキーム5
(a) 1) HATU, DIEA, DMF, 2) Piperidine, DMF, y. 61 % in 2 steps. (b) 1) 4-MU, TEA, THF, 2) H-Ala-Glu(OtBu)-OtBu, TEA, THF, 2) TFA, MeCN, y. 14 % in 3 steps, diastereomer mixture.
【0099】
化合物6の合成
Fmoc−Gly−OH(594mg、2.00mmol)、H−Glu(OtBu)−OtBu塩酸塩(591mg、2.00mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1032μL、6.00mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド10mLに溶解し、HATU(1032mg、2.20mmol)を加えて室温にて90分攪拌した。反応溶液に酢酸エチルおよび飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、分液操作によって酢酸エチル層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより一部精製し(酢酸エチル/ヘキサン=3/7→1/1)、目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をN,N−ジメチルホルムアミド8mLに溶解し、ピペリジン2mLを加えて室温にて2時間攪拌した。反応溶液に酢酸エチルおよび飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、分液操作によって酢酸エチル層を抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、減圧除去によって溶媒を除いた。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(酢酸エチル→酢酸エチル/メタノール=90 10)、化合物(385mg、61%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.44 (s, 9H), 1.48 (s, 9H), 1.82-2.04 (m, 1H), 2.05-2.21 (m, 1H), 2.21-2.39 (m, 2H), 3.37 (s, 2H), 4.44-4.62 (m, 1H), 7.69 (d, J = 8.2 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CD3OD): δ 26.8, 26.9, 27.0, 31.1, 43.6, 52.2, 80.5, 81.8, 171.2, 172.2, 174.1
HRMS (ESI+): calcd for [M+Na]+, 339.18959 ; found, 339.18576 (-3.83 mmu)
【0100】
4MU−tSoul−GEの合成
tert−ブチルホスホン酸ジクロリド(30mg、0.171mmol)をテトラヒドロフラン2mLに溶解し、アルゴン雰囲気下、−78°Cにて10分攪拌した。テトラヒドロフラン1mLに溶解した4−メチルウンベリフェロン(30mg、0.170mmol)、トリエチルアミン(48μL、0.349mmol)を順次ゆっくり滴下した後、35°Cまで昇温し、アルゴン雰囲気下で2時間攪拌した。反応溶液を再び−78°Cにて10分間攪拌した後、テトラヒドロフラン1mLに溶解した化合物(108mg、0.341mmol)、トリエチルアミン(96μL、0.698mmol)を順次ゆっくり滴下した後、60°Cまで昇温しアルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。飽和食塩水を加えて反応を停止した後、酢酸エチルを用いて水層を抽出した。有機層を合わせたものを飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、溶媒を減圧除去した。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/1→酢酸エチル)にて一部精製した。目的化合物を含む画分を集めた後に減圧除去によって溶媒を除き、残渣をアセトニトリル2mLに溶解し、トリフルオロ酢酸6mLを加えて2時間室温で攪拌した。溶媒を減圧除去して得た残渣をHPLC(eluent A(HO 0.1% TFA) and eluent B(CHCN 80%、HO 20%、0.1% TFA)(A/B=80/20 to 0/100 in 30min))で精製し、化合物C(18mg、22%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.32 (d, J = 17.4 Hz, 9H), 1.60-1.92 (m, 1H), 1.95-2.16 (m, 1H), 2.16-2.38 (m, 2H), 2.38-2.57 (m, 3H), 3.57-3.82 (m, 2H), 4.30-4.49 (m, 1H), 6.21-6.36 (m, 1H), 7.17-7.37 (m, 2H), 7.69-7.87 (m, 1H) (diastereomer mixture)
13C NMR (100 MHz, CD3OD): δ 17.3, 23.4, 26.7, 26.9, 29.5, 29.6, 32.8 (d, J = 130.3 Hz), 43.9 (d, J = 4.8 Hz), 51.2, 51.5, 108.8 (d, J = 4.8 Hz), 109.9 (d, J = 4.8 Hz), 113.1, 113.2, 117.0, 117.2, 117.4 (d, J = 4.8 Hz), 117.5 (d, J = 4.8 Hz), 126.3, 126.4, 153.3 (d, J = 10.5 Hz), 153.5 (d, J = 10.5 Hz), 154.3 (containing 2 peaks), 161.4 (containing 2 peaks), 171.3 (containing 2 peaks), 172.9 (containing 2 peaks), 174.7 (containing 2 peaks)
31P NMR (162 MHz, CD3OD): δ 42.5, 42.8
HRMS (ESI+): calcd for [M+Na]+, 505.13519 ; found, 505.13393 (-1.25 mmu)
The UPLC (eluent; A/B = 95/5 to 5/95 in 4 min) chromatogram after purification is shown. Absorbance at 310 nm was detected. Eluent A (H2O containing 0.1 % formic acid) and eluent B (80 % acetonitrile and 20 % H2O containing 0.1 % formic acid) were used for UPLC analysis.
【0101】
合成した4MU−tSoul−GEとPSMAを用いて酵素アッセイを行った。結果として、PSMA存在下で蛍光上昇が観測され、その蛍光上昇は阻害剤である2−PMPAの添加によって抑制された。この結果より、4MU−tSoul−GEはPSMA活性検出蛍光プローブとして機能することが明らかとなった。このことはカルボキシペプチダーゼによる切断を受けるC末端のアミノ酸のみならず、隣接するアミノ酸の構造もフレキシブルに選択できる本分子設計の強みを表していると言える(図9)。
ここで、図9の(a)は、4MU−tSoul−GEとPSMAの反応スキームを示す。図9の(b)では、TBSバッファー中の10μM 4MU−tSoul−GEを、共溶媒として0.1%DMSOを含む10μM阻害剤(2−PMPA)の存在下または非存在下で22 ng PSMAと37℃でインキュベートした。Ex/Em=355/460nm。n=3。
【0102】
[実施例7]
HMRef−tSoul−ARを用いた乳がんイメージング
上記の実施例3〜4の検討でHMRef−tSoul−ARはin vitroにおいてCPBおよびCPMと反応すること、またMDCK細胞のCPM活性をライブイメージング可能であることが明らかとなった。これらの結果を基に、HMRef−tSoul−ARをがん患者由来の臨床検体に適応することでがんイメージングが可能であるか否かを検討することとした。
生体内には表2にまとめるように、塩基性アミノ酸を基質として好むカルボキシペプチダーゼが複数種存在し、いくつかはがんとの関わりが報告されている。HMRef−tSoul−ARがこれらの基質となるのかは現状わかっていないが、CPB、CPM以外のサブタイプとも反応することは十分に期待できる。そこで、これらサブタイプのうちCPD、CPE(変異体)、CPNの関連が報告されている乳がんに対するイメージングを試みることとした。これらのカルボキシペプチダーゼはCPMと同様活性体として存在しているため、トリプシンなどの添加は不要である。
【0103】
【表2】
【0104】
乳がん患者由来の検体4例(IDC:浸潤性乳管癌3例、DCIS:非浸潤性乳管癌1例)に対し、腫瘍部と正常部に対してHMRef−tSoul−ARを散布し蛍光イメージングを以下の手順により行った(図10)。
HMRef−tSoul−ARを終濃度50μMになるようにPBSに溶解し(1%DMSOを含む)、100μM MGTA存在下・非存在下で乳がん患者からの臨床検体に適用した。蛍光像は、in vivoイメージング蛍光装置Maestro (PerkinElmer,Inc.,MA,USA)で取得し、励起光フィルターとして455nm(435−480nm)バンドパスフィルター、蛍光フィルターとして490 nm ロングパスフィルターを使用した。
尚、上昇が見られた場合にそれが塩基性カルボキシペプチダーゼ活性由来であるか否かを検討するため、同時に阻害剤MGTAを添加した群も検討した。MGTAは塩基性アミノ酸を好むカルボキシペプチダーゼを幅広く阻害することが知られている。
【0105】
結果として腫瘍組織から正常組織と比して顕著な蛍光上昇が観測され、その蛍光上昇はMGTAの添加によって抑制された。60分後の蛍光強度から算出されたT/Nは2.39−10.66であり、たしかに腫瘍部から強い蛍光が観測された。また阻害剤の存在下によって蛍光上昇が抑制されたため、蛍光上昇の大部分はカルボキシペプチダーゼ活性によるものであると解釈して問題ないと考えられる。
以上の結果より、開発したプローブHMRef−tSoul−ARを用いることにより乳がんのイメージングが可能であり、その蛍光上昇は乳がん組織におけるカルボキシペプチダーゼ活性の亢進によるものであることが示された。
【0106】
これまで乳がんにおける塩基性カルボキシペプチダーゼの関与は報告されていたものの、それらの結果はライセート化したサンプル中の活性評価や免疫染色の結果を基にしたものであり、組織の形態を保った状態において実際にその活性が亢進していることは本発明によって初めて確認された。これは侵襲性の低いライブイメージングを行うことで初めて得られた知見であると言え、本プローブの有用性を示すものであると言える。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】