特表-20158678IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年8月6日
【発行日】2021年12月2日
(54)【発明の名称】ゴム組成物、架橋体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20211105BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20211105BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20211105BHJP
【FI】
   C08L15/00
   C08L101/00
   B60C1/00 A
   B60C1/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
【出願番号】特願2020-569621(P2020-569621)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2020年1月27日
(31)【優先権主張番号】特願2019-14823(P2019-14823)
(32)【優先日】2019年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】井上 昌章
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA06
3D131BA07
3D131BA12
3D131BC33
3D131BC35
4J002AC111
4J002BA012
4J002BB032
4J002BK002
4J002CC052
4J002GN01
(57)【要約】
(A)重合体として式(1)で表される構造単位、式(2)で表される構造単位、式(3)で表される構造単位、及び式(4)で表される構造単位の重合体中の構成比(モル比)をそれぞれp、q、r、sとしたとき、数式(i)で表される値αが0.70以上0.99以下であり、炭素−炭素不飽和結合を有する重合体と、(B)樹脂として熱可塑性樹脂と、を含有し、(A)重合体と(B)樹脂との合計量に対して、(A)重合体を60〜95質量%含有するゴム組成物とする。
α=(p+(0.5×r))/(p+q+(0.5×r)+s) …(i)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される構造単位、下記式(2)で表される構造単位、下記式(3)で表される構造単位、及び下記式(4)で表される構造単位の重合体中の構成比(モル比)をそれぞれp、q、r、sとしたとき、下記数式(i)で表される値αが0.70以上0.99以下であり、炭素−炭素不飽和結合を有する重合体と、
(B)熱可塑性樹脂と、
を含有し、
前記(A)重合体と前記(B)樹脂との合計量に対して、前記(A)重合体を60〜95質量%含有する、ゴム組成物。
α=(p+(0.5×r))/(p+q+(0.5×r)+s)
…(i)
【化1】
【請求項2】
前記(B)樹脂は、スチレン系単量体に由来する構造単位を有する、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記(B)樹脂は、熱可塑性エラストマーである、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記(B)樹脂は、ポリエチレン、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、及びアルキルフェノール系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記(A)重合体は、アミノ基、窒素含有複素環基、ホスフィノ基、水酸基、チオール基及びヒドロカルビルオキシシリル基よりなる群から選ばれる一種以上の官能基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記(A)重合体は、下記式(9)で表される化合物、下記式(10)で表される化合物、下記式(11)で表される化合物、及び下記式(12)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも一種に由来する部分構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【化2】
(式(9)中、Aは、窒素、リン、酸素、硫黄及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有し、かつRに対して窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、若しくはカルボニル基に含まれる炭素原子で結合する1価の官能基であるか、又は(チオ)エポキシ基である。R及びRはヒドロカルビル基であり、Rはヒドロカルビレン基であり、rは0〜2の整数である。ただし、Rが複数存在する場合、複数のRは同一の基又は異なる基である。Rが複数存在する場合、複数のRは同一の基又は異なる基である。)
【化3】
(式(10)中、Aは窒素、リン、酸素、硫黄及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有さず、かつRに対して窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子若しくはケイ素原子で結合する1価の官能基であるか、又は炭素数1〜20のヒドロカルビル基である。R及びRは、それぞれ独立してヒドロカルビル基であり、Rはヒドロカルビレン基であり、Rは単結合又はヒドロカルビレン基であり、mは0又は1である。ただし、Rが複数存在する場合、複数のRは同一の基又は異なる基である。)
【化4】
(式(11)中、Aは、イミノ基、アミド基、(チオ)カルボニル基、(チオ)カルボニルオキシ基、スルフィド基、若しくはポリスルフィド基でLと結合する1価の基であるか、又は、保護された1級アミノ基、保護された2級アミノ基、3級アミノ基、ニトリル基、ピリジル基、(チオ)エポキシ基、(チオ)イソシアネート基、(チオ)ホルミル基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステル基の金属塩、−COX(Xはハロゲン原子)、イミダゾリル基、若しくは下記式(11a)で表される基である。L及びLはそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜20のヒドロカルビレン基であり、R及びR10はそれぞれ独立にヒドロカルビル基である。kは0〜2の整数であり、jは0又は1である。R、R10及びLの各記号につき、同一の記号が式中に複数個存在する場合、その記号が表す基は、互いに同一の基又は異なる基である。kが式中に複数個存在する場合、複数のkは、同一の数及び異なる数である。)
【化5】
(式(11a)中、Lは、単結合又は炭素数1〜20のヒドロカルビレン基であり、R11及びR12はそれぞれ独立にヒドロカルビル基である。iは0〜3の整数である。「*」はLと結合する部位を示す。R11、R12及びLの各記号につき、その記号が表す基は、互いに同一の基又は異なる基である。式中の複数のiは、同一の数及び異なる数である。)
【化6】
(式(12)中、Aはイミノ基、アミド基、(チオ)カルボニル基又は(チオ)カルボニルオキシ基であり、Zは窒素原子を含む又は含まない炭素数1〜20のt価の基であり、Lは単結合又は炭素数1〜20のヒドロカルビレン基であり、Lは炭素数1〜20のヒドロカルビレン基であり、R13及びR14はそれぞれ独立にヒドロカルビル基である。hは0又は1であり、tは2又は3である。R14、L、L及びAの各記号につき、その記号が表す基は、互いに同一の基又は異なる基である。式中の複数のhは、同一の数及び異なる数である。)
【請求項7】
更に架橋剤を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて得られる架橋体。
【請求項9】
請求項8の架橋体によりトレッド及びサイドウォールの一方又は両方が形成されたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年1月30日に出願された日本特許出願番号2019−14823号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ゴム組成物、架橋体及びタイヤに関し、詳細にはタイヤ用として好適なゴム組成物等に関する。
【背景技術】
【0003】
共役ジエン系重合体をはじめとする、炭素−炭素不飽和結合を有する重合体は、ゴム材料として広く使用されている。このうち、共役ジエン系重合体(例えば、スチレン−ブタジエン共重合体等)は、耐熱性、耐摩耗性、機械的強度、成形加工性等の各種特性が良好であることから、空気入りタイヤや防振ゴム、ホース等の各種工業製品に広く使用されている。また、共役ジエン系重合体が有する不飽和結合の一部を水素化した水添共役ジエン系重合体を使用することにより、高強度かつ低摩耗な架橋ゴムを得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/064646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴム製品の寿命を延ばし使用年数を増加させることは、環境負荷の低減に寄与する。また、タイヤ用途では、タイヤの劣化度合いが、車両の高速性能や走行安定性にも影響する。そこで、従来にも増して耐疲労性(代表的なパラメータの一つとして耐亀裂成長性)及び耐摩耗性に優れ、かつより高強度な架橋ゴムを得るための材料が求められている。
【0006】
本開示は、以上を鑑みてなされたものであり、耐摩耗性及び耐亀裂成長性に優れ、かつ高強度な架橋ゴムを得ることができるゴム組成物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を解決するべく鋭意検討した結果、高飽和ジエン系重合体及び熱可塑性樹脂を含有するゴム組成物を架橋処理することにより、上記課題を解決可能であることを見出した。具体的には、本開示により以下の手段が提供される。
【0008】
[1](A)下記式(1)で表される構造単位、下記式(2)で表される構造単位、下記式(3)で表される構造単位、及び下記式(4)で表される構造単位の重合体中の構成比(モル比)をそれぞれp、q、r、sとしたとき、下記数式(i)で表される値αが0.70以上0.99以下であり、炭素−炭素不飽和結合を有する重合体と、(B)熱可塑性樹脂と、を含有し、前記(A)重合体と前記(B)樹脂との合計量に対して、前記(A)重合体を60〜95質量%含有する、ゴム組成物。
α=(p+(0.5×r))/(p+q+(0.5×r)+s)
…(i)
【化1】
[2]上記(A)重合体と、上記(B)樹脂とを含有するゴム組成物を用いて得られる架橋体。
[3]上記[2]の架橋体によりトレッド及びサイドウォールの一方又は両方が形成されたタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高飽和ジエン系重合体と熱可塑性樹脂とを所定割合で配合したゴム組成物とすることにより、耐摩耗性、耐亀裂成長性及び強度がバランス良く改善された架橋ゴムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施に関連する事項について詳細に説明する。
≪ゴム組成物≫
本開示のゴム組成物は、高飽和ジエン系重合体と熱可塑性樹脂とを含有する。
【0011】
<高飽和ジエン系重合体>
本開示に係る高飽和ジエン系重合体(以下、(A)重合体ともいう。)は、炭素−炭素不飽和結合を有する重合体である。(A)重合体は、上記式(1)で表される構造単位、上記式(2)で表される構造単位、上記式(3)で表される構造単位、及び上記式(4)で表される構造単位の重合体中の構成比(モル比)をそれぞれp、q、r、sとしたとき、下記数式(i)で表される値αが0.70以上0.99以下である。
α=(p+(0.5×r))/(p+q+(0.5×r)+s)
…(i)
【0012】
(A)重合体は、例えば、ブタジエンを含有するモノマーを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る工程(重合工程)、及び共役ジエン系重合体を水添する工程(水添工程)を含む方法により製造することができる。また、当該方法は、任意に、重合工程により得られた共役ジエン系重合体の末端を変性する工程(変性工程)を含んでいてもよい。具体的には、国際公開第2014/133097号に記載の方法に従って、使用目的に合う様に、分子量、芳香族ビニル化合物量、ビニル結合の含有量、水添率、変性剤の種類等を適宜変更して製造することができる。また、国際公開第2015/190073号に記載の方法に従い、1,3−ブタジエン等のジエン系モノマーと、非共役オレフィンとを共重合することにより製造することもできる。以下、水添共役ジエン系重合体を例にとり、(A)重合体及びその製造方法について詳細に説明する。
【0013】
(重合工程)
(A)重合体が水添共役ジエン系重合体である場合、水添前の共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物に由来する構造単位を有する重合体である。水添前の共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物に由来する構造単位と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位とを有する共重合体であることが好ましい。本重合工程は、共役ジエン化合物、好ましくは共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを含むモノマーを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る工程である。
【0014】
上記重合に際し、共役ジエン化合物としては1,3−ブタジエンを好ましく用いることができる。また、上記重合では、1,3−ブタジエンの他、1,3−ブタジエン以外の共役ジエン化合物を用いてもよい。この様な共役ジエン化合物は、1,3−ブタジエン及び芳香族ビニル化合物と共重合可能であることが好ましい。1,3−ブタジエン以外の共役ジエン化合物の具体例としては、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらの中でもイソプレンが好ましい。なお、共役ジエン化合物は、1種の化合物が単独で使用されてもよく、又は2種以上の化合物が組み合わされて使用されてもよい。
【0015】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、これらの中でも、スチレン及びα−メチルスチレンから選ばれる1種以上の化合物であることが特に好ましい。なお、芳香族ビニル化合物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
本重合工程により得られる共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物の単独重合体であってもよいし、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。好ましくは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体である。また、共役ジエン化合物として、1,3−ブタジエンと1,3−ブタジエン以外の共役ジエン化合物とを用いた共重合体であってもよい。アニオン重合におけるリビング性が高い点で、当該共役ジエン系重合体は、中でも1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合体であることが好ましい。
【0017】
共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体において、芳香族ビニル化合物の使用量は、架橋ゴムの低ヒステリシスロス特性を良好にする観点から、重合に使用するモノマーの全体量に対して、10〜50質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。また、芳香族ビニル化合物の含量を上記範囲内にすることで、生産性と強度の両立が可能となる。水添前の共役ジエン系重合体の製造に使用されるモノマーは、当該モノマー100質量部に対し、好ましくは、ブタジエンを50〜90質量部、芳香族ビニル化合物を10〜50質量部、及び、ブタジエン以外の共役ジエン化合物を0〜40質量部含む。こうした配合量とすることにより、架橋ゴムの生産性と強度の両立を図る点で好ましい。
【0018】
なお、上記で例示した共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物は、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることが可能である点において、いずれも同様の作用を有するものである。したがって、後述の実施例に記載されていないものであっても、本開示において使用することが可能である。
【0019】
重合に際しては、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物以外の他のモノマーを使用することができる。他のモノマーとしては、例えばアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等を挙げることができる。他のモノマーの使用量は、重合に使用するモノマーの全体量に対して、40質量%以下とすることが好ましく、30質量%以下とすることがより好ましく、20質量%以下とすることが更に好ましい。
【0020】
本開示に係る共役ジエン系重合体を得るための重合法としては、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれを用いてもよいが、溶液重合法が特に好ましい。また、重合形式としては、回分式及び連続式のいずれを用いてもよい。溶液重合法を用いる場合、具体的な重合方法の一例としては、有機溶媒中において、共役ジエン化合物を含むモノマーを、重合開始剤及び必要に応じて用いられるランダマイザーの存在下、重合を行う方法が挙げられる。
【0021】
重合開始剤としては、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうち少なくともいずれかを用いることができる。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、アニオン重合の開始剤として通常用いるものを使用することができ、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、1,4−ジリチオブタン、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ナフチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカリウム、ステアリン酸カルシウム等を挙げることがきる。これらの中でも、リチウム化合物が好ましい。
【0022】
また、重合反応は、上記のアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうち少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(以下、化合物(C1)ともいう。)とを混合して得られる化合物(以下、化合物(R)ともいう。)の存在下で行ってもよい。化合物(R)の存在下で重合を行うことにより、共役ジエン系重合体の重合開始末端に、シリカと相互作用する官能基を導入することができる。なお、本明細書において「相互作用」とは、分子間で共有結合を形成するか、又は共有結合よりも弱い分子間力(例えば、イオン−双極子相互作用、双極子−双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等といった分子間に働く電磁気学的な力)を形成することを意味する。また、「シリカと相互作用する官能基」は、窒素原子、硫黄原子、リン原子、酸素原子などのシリカと相互作用する原子を少なくとも1つ有する基を示す。
【0023】
上記化合物(R)としては、中でもアルキルリチウム等のリチウム化合物と、第2級アミン化合物等の窒素含有化合物との反応生成物であることが好ましい。当該窒素含有化合物の具体例としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ドデカメチレンイミン、N,N’−ジメチル−N’−トリメチルシリル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペリジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジアリルアミン、モルホリン、N−(トリメチルシリル)ピペラジン、N−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン、1,3−ジトリメチルシリル−1,3,5−トリアジナン等が挙げられる。なお、化合物(R)の存在下で重合を行う場合、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうち少なくともいずれかと、化合物(C1)とを予め混合することにより化合物(R)を調製し、その調製した化合物(R)を重合系中に添加して重合を行ってもよい。あるいは、重合系中に、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうち少なくともいずれかと、化合物(C1)とを添加し、重合系中で両者を混合することにより化合物(R)を調製して重合を行ってもよい。
【0024】
ランダマイザーは、ビニル結合の含有率(ビニル含量)の調整等を目的として用いることができる。ランダマイザーの例としては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、2−(2−エトキシエトキシ)−2−メチルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
重合に使用する有機溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、例えば脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などを用いることができる。中でも、炭素数3〜8の炭化水素が好ましく、その具体例としては、例えばn−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、シクロへキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロヘキセン等を挙げることができる。なお、有機溶媒としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
溶液重合を用いる場合、反応溶媒中のモノマー濃度は、生産性と重合コントロールの容易性のバランスを維持する観点から、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。重合反応の温度は、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが特に好ましい。また、重合反応は、モノマーを実質的に液相に保つのに十分な圧力の下で行うことが好ましい。このような圧力は、重合反応に対して不活性なガスによって、反応器内を加圧する等の方法によって得ることができる。
【0027】
このようにして、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることができる。当該共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×10〜2.0×10である。Mwが1.0×10よりも小さいと、得られる架橋ゴムの耐摩耗性及び低燃費性能が低下しやすい傾向にあり、2.0×10よりも大きいと、加工性が低下しやすい傾向にある。Mwは、より好ましくは1.0×10以上であり、更に好ましくは1.5×10以上である。また、Mwは、より好ましくは1.5×10以下であり、更に好ましくは1.0×10以下である。
【0028】
上記重合により得られる共役ジエン系重合体の1,2−ビニル含量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。また、1,2−ビニル含量は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。1,2−ビニル含量が5質量%未満であると、グリップ特性が低くなる傾向があり、70質量%を超えると、耐摩耗性が悪化しやすくなる傾向にある。なお、1,2−ビニル含量は、H−NMRによって測定した値である。
【0029】
本開示に係る水添前の共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物に由来する構造単位と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位とのランダム共重合体であることが好ましい。この場合、フィラーの分散性をより良好にすることができる点で好適である。なお、当該ランダム共重合体は、片末端又は両末端に、共役ジエン化合物からなるブロック部分を有していてもよい。
【0030】
(変性工程)
変性工程は、上記重合工程により得られた共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(以下、化合物(C2)ともいう。)と、を反応させる工程である。この工程により、共役ジエン系重合体の重合終了末端に、シリカと相互作用する官能基を導入することができる。なお、本明細書において活性末端とは、分子鎖の端に存在する、炭素−炭素二重結合を有するモノマーに由来する構造以外の部分(より具体的には金属末端)を意味する。
【0031】
本工程における変性反応(以下、末端変性反応ともいう。)に用いる共役ジエン系重合体は、活性末端を有している限り、重合開始末端が未変性のものでもよいし、変性されたものでもよい。化合物(C2)は、共役ジエン系重合体の活性末端と反応し得る化合物であれば特に限定されない。本開示のゴム組成物を用いて得られる架橋体の低燃費性能を良好にできる点で、化合物(C2)は、アミノ基、炭素−窒素二重結合を有する基、窒素含有複素環基、ホスフィノ基、エポキシ基、チオエポキシ基、保護された水酸基、保護されたチオール基及びヒドロカルビルオキシシリル基よりなる群から選ばれる1種以上の官能基を有し、かつ重合活性末端と反応し得る化合物であることが好ましい。なお、アミノ基は、保護された1級アミノ基、保護された2級アミノ基及び3級アミノ基を含む。具体的には、化合物(C2)として、下記式(9)で表される化合物、下記式(10)で表される化合物、下記式(11)で表される化合物、及び下記式(12)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。
【化2】
(式(9)中、Aは、窒素、リン、酸素、硫黄及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有し、かつRに対して窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子若しくはカルボニル基に含まれる炭素原子で結合する1価の官能基であるか、又は(チオ)エポキシ基である。R及びRはヒドロカルビル基であり、Rはヒドロカルビレン基であり、rは0〜2の整数である。ただし、Rが複数存在する場合、複数のRは同一の基又は異なる基である。Rが複数存在する場合、複数のRは同一の基又は異なる基である。)
【化3】
(式(10)中、Aは窒素、リン、酸素、硫黄及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有さず、かつRに対して窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子若しくはケイ素原子で結合する1価の官能基であるか、又は炭素数1〜20のヒドロカルビル基である。R及びRは、それぞれ独立してヒドロカルビル基であり、Rはヒドロカルビレン基であり、Rは単結合又はヒドロカルビレン基であり、mは0又は1である。ただし、Rが複数存在する場合、複数のRは同一の基又は異なる基である。)
【化4】
(式(11)中、Aは、イミノ基、アミド基、(チオ)カルボニル基、(チオ)カルボニルオキシ基、スルフィド基、若しくはポリスルフィド基でLと結合する1価の基であるか、又は、保護された1級アミノ基、保護された2級アミノ基、3級アミノ基、ニトリル基、ピリジル基、(チオ)エポキシ基、(チオ)イソシアネート基、(チオ)ホルミル基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステル基の金属塩、−COX(Xはハロゲン原子)、イミダゾリル基、若しくは下記式(11a)で表される基である。L及びLはそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜20のヒドロカルビレン基であり、R及びR10はそれぞれ独立にヒドロカルビル基である。kは0〜2の整数であり、jは0又は1である。R、R10及びLの各記号につき、同一の記号が式中に複数個存在する場合、その記号が表す基は、互いに同一の基又は異なる基である。kが式中に複数個存在する場合、複数のkは、同一の数及び異なる数である。)
【化5】
(式(11a)中、Lは、単結合又は炭素数1〜20のヒドロカルビレン基であり、R11及びR12はそれぞれ独立にヒドロカルビル基である。iは0〜3の整数である。「*」はLと結合する部位を示す。R11、R12及びLの各記号につき、その記号が表す基は、互いに同一の基又は異なる基である。式中の複数のiは、同一の数及び異なる数である。)
【化6】
(式(12)中、Aはイミノ基、アミド基、(チオ)カルボニル基又は(チオ)カルボニルオキシ基であり、Zは窒素原子を含む又は含まない炭素数1〜20のt価の基であり、Lは単結合又は炭素数1〜20のヒドロカルビレン基であり、Lは炭素数1〜20のヒドロカルビレン基であり、R13及びR14はそれぞれ独立にヒドロカルビル基である。hは0又は1であり、tは2又は3である。R14、L、L及びAの各記号につき、その記号が表す基は、互いに同一の基又は異なる基である。式中の複数のhは、同一の数及び異なる数である。)
【0032】
上記式(9)及び式(10)において、R、R、R及びRのヒドロカルビル基は、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
及びRは、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基又は炭素数6〜20のアリーレン基が好ましい。
r及びmは、共役ジエン系重合体との反応性を高める観点から、0又は1が好ましい。
が上記1価の官能基である場合において、Aが有する、窒素、リン、酸素、硫黄及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子、並びにAが有する、窒素、リン、酸素、硫黄及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子は、活性水素に結合していないことが好ましく、保護基(例えば3置換のヒドロカルビルシリル基等)で保護されていることがより好ましい。なお、本明細書において活性水素とは、炭素原子以外の原子に結合した水素原子をいい、好ましくはポリメチレンの炭素−水素結合よりも結合エネルギーが低いものを指す。保護基とは、A、Aを重合活性末端に対して不活性な官能基に変換しておく官能基である。(チオ)エポキシ基とは、エポキシ基及びチオエポキシ基を包含する意味である。
【0033】
は、オニウム塩生成剤によってオニウムイオンになり得る基であってもよい。化合物(C2)がこのような基(A)を有することにより、水添共役ジエン系重合体に対して優れた形状保持性を付与することができる。
の具体例としては、例えば1級アミノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、2級アミノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、3級アミノ基、イミノ基、ピリジル基、1級ホスフィノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなるリン含有基、2級ホスフィノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなるリン含有基、3級ホスフィノ基、エポキシ基、水酸基の水素原子が保護基によって保護された基、チオエポキシ基、チオール基の水素原子が保護基によって置換されてなる硫黄含有基、ヒドロカルビルオキシカルボニル基等を含む基が挙げられる。これらの中でも、シリカとの親和性が良好である観点から、窒素原子を有する基であることが好ましく、3級アミノ基、2級アミノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、又は1級アミノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基を含む基であることがより好ましい。
【0034】
上記式(11)において、L及びLの炭素数1〜20のヒドロカルビレン基としては、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。R及びR10のヒドロカルビル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数3又は4のシクロアルキル基が挙げられる。なお、(チオ)カルボニル基はカルボニル基及びチオカルボニル基を包含し、(チオ)カルボニルオキシ基はカルボニルオキシ基及びチオカルボニルオキシ基を包含し、(チオ)イソシアネート基はイソシアネート基及びチオイソシアネート基を包含し、(チオ)ホルミル基はホルミル基及びチオホルミル基を包含し、(チオ)カルボン酸エステル基はカルボン酸エステル基及びチオカルボン酸エステル基を包含する意味である。
【0035】
上記式(12)において、Zは、窒素原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価若しくは3価の基であり、窒素原子を含んでいることが好ましい。L及びLの炭素数1〜20のヒドロカルビレン基としては、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。R13及びR14のヒドロカルビル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数3又は4のシクロアルキル基が挙げられる。
【0036】
化合物(C2)の好ましい具体例としては、上記式(9)で表される化合物として、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等を;上記式(10)で表される化合物として、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,2−アザシロリジン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,2−アザシロリジン、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1,2−アザシロリジン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−(2,2−ジメトキシ−1,2−アザシロリジン−1−イル)−N,N−ジエチルエタン−1−アミン、2−(2,2−ジメトキシ−1,2−アザシロリジン−1−イル)−N,N−ジメチルエタン−1−アミン、3−(2,2−ジメトキシ−1,2−アザシロリジン−1−イル)−N,N−ジエチルプロパン−1−アミン等を、それぞれ挙げることができる。
【0037】
また、化合物(C2)の好ましい具体例としては、上記式(11)で表される化合物として、例えば、N,N−ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミノプロピル−3−(1−イミダゾール)、N,N−ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミノプロピル−3−(1−イミダゾール)、N,N−ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミノプロピルメチルジエチルシラン、N,N,N−トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3−トリエトキシシリルプロピル)−1,3−ジアミノプロパン等を;上記式(12)で表される化合物として、例えば、下記式(M−1)〜(M−4)
【化7】
(式(M−1)中、R15は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であり、n5は1〜10の整数である。)
で表される化合物等を;上記以外の化合物として、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン等を、それぞれ挙げることができる。化合物(C2)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
上記の末端変性反応は、例えば溶液反応として行うことができる。この溶液反応は、上記重合工程における重合反応の終了後の未反応モノマーを含む溶液を用いて行ってもよく、当該溶液に含まれる共役ジエン系重合体を単離し、シクロヘキサン等の適当な溶媒に溶解した上で行ってもよい。また、末端変性反応は、回分式及び連続式のいずれを用いて行ってもよい。このとき、化合物(C2)の添加方法は特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法などが挙げられる。
【0039】
末端変性反応に使用する化合物(C2)の量は、反応に使用する化合物の種類に応じて適宜設定すればよいが、重合開始剤が有する重合反応に関与する金属原子に対し、好ましくは0.1モル当量以上、より好ましくは0.3モル当量以上である。化合物(C2)の使用量を0.1モル当量以上とすることにより、変性反応を十分に進行させることができ、シリカの分散性を好適に改良することができる。
末端変性反応の温度は、通常、上記重合反応の温度と同じであり、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが特に好ましい。変性反応の温度が低いと、変性共役ジエン系重合体の粘度が上昇する傾向がある。一方、変性反応の温度が高いと、重合活性末端が失活しやすくなる。変性反応の反応時間は、好ましくは1分〜5時間であり、より好ましくは2分〜1時間である。
【0040】
(水添反応)
本開示に係る水添共役ジエン系重合体は、上記で得られた変性又は未変性の共役ジエン系重合体を水添することにより得ることができる。水添反応の方法及び条件は、所望の水添率の共役ジエン系重合体が得られるのであれば、いずれの方法及び条件を用いることも可能である。それらの水添方法の例としては、チタンの有機金属化合物を主成分とする触媒を水添触媒として使用する方法、鉄、ニッケル、コバルトの有機化合物とアルキルアルミニウム等の有機金属化合物からなる触媒を使用する方法、ルテニウム、ロジウム等の有機金属化合物の有機錯体を使用する方法、パラジウム、白金、ルテニウム、コバルト、ニッケル等の金属を、カーボン、シリカ、アルミナ等の担体に担持した触媒を使用する方法などがある。各種の方法の中では、チタンの有機金属化合物単独、又はチタンの有機金属化合物とリチウム、マグネシウム、アルミニウムの有機金属化合物とから成る均一触媒(特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報)を用い、低圧、低温の穏和な条件で水添する方法は工業的に好ましく、またブタジエンの二重結合への水添選択性も高く本開示の目的に適している。
【0041】
変性共役ジエン系重合体の水添は、触媒に不活性であって、かつ共役ジエン系重合体が可溶な溶剤中で実施される。好ましい溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタンのような脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘプタンのような脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類の単独又はそれらを主成分とする混合物である。
【0042】
水添反応は、一般には共役ジエン系重合体を水素又は不活性雰囲気下、所定の温度に保持し、攪拌下又は不攪拌下にて水添触媒を添加し、次いで水素ガスを導入して所定圧に加圧することによって実施される。不活性雰囲気とは、水添反応の関与体と反応しない雰囲気を意味し、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。空気や酸素は、触媒を酸化等して触媒の失活を招くので好ましくない。また、窒素は、水添反応時に触媒毒として作用し、水添活性を低下させるので好ましくない。特に、水添反応器内は水素ガス単独の雰囲気であることが最も好適である。
【0043】
水添共役ジエン系重合体を得る水添反応プロセスは、バッチプロセス、連続プロセス、それらの組合せのいずれでも用いることができる。また、水添触媒としてチタノセンジアリール系化合物を用いる場合は、単独でそのまま反応溶液に加えてもよいし、不活性有機溶媒の溶液として加えてもよい。触媒を溶液として用いる場合に使用する不活性有機溶媒は、水添反応の関与体と反応しない各種溶媒を用いることができる。好ましくは水添反応に用いる溶媒と同一の溶媒である。また、触媒の添加量は、水添前の共役ジエン系重合体100g当り0.02〜20ミリモルである。
【0044】
本開示に係る水添共役ジエン系重合体は、上記数式(i)(すなわち、α=(p+(0.5×r))/(p+q+(0.5×r)+s))のαが0.70以上0.99以下である。αを0.70以上とすることにより、高強度であってかつ耐摩耗性及び耐亀裂成長性に優れた架橋ゴムを得ることができる。この様な理由から、αは0.75以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、0.90以上であることが特に好ましい。なお、上記数式(i)のαは、水添共役ジエン系重合体の水添率に相当する。例えば、αが0.70の場合、水添共役ジエン系重合体の水添率は70%である。水添共役ジエン系重合体中の水添率は、水添反応の時間等により調整することができる。この水添率はH−NMRにより測定することができる。なお、(A)重合体が、ジエン系モノマーと非共役オレフィンとを共重合して得られる重合体である場合、αの値は、共重合させるモノマー比率を変更することにより調整することができる。
【0045】
本開示に係る水添共役ジエン系重合体を得る好ましい方法は、ブタジエンを含むモノマーをアルカリ金属化合物の存在下で溶液重合し、得られた重合体溶液をそのまま用いて変性工程を行い、次いで水添工程に供することであり、工業的に有用である。この場合、水添共役ジエン系重合体は、上記で得られた溶液から溶媒を除去し、重合体を単離して得られる。重合体の単離は、例えばスチームストリッピング等の公知の脱溶媒方法及び熱処理等の乾燥の操作によって行うことができる。
【0046】
(A)重合体は、ゴム組成物を用いて得られる架橋体の低燃費性能をより高くできる点で、アミノ基、窒素含有複素環基、ホスフィノ基、水酸基、チオール基及びヒドロカルビルオキシシリル基よりなる群から選ばれる1種以上の官能基を有していることが好ましく、アミノ基、窒素含有複素環基及びヒドロカルビルオキシシリル基よりなる群から選ばれる1種以上の官能基を有していることがより好ましい。これらの官能基は、低燃費性能の改善効果をより高くできる点で、(A)重合体の末端に導入されていることが特に好ましい。
【0047】
<熱可塑性樹脂>
本開示のゴム組成物に含有される熱可塑性樹脂(以下、「(B)樹脂」ともいう。)としては、強度、耐摩耗性及び耐亀裂成長性の各種特性により優れた架橋ゴムを得る観点から、スチレン系樹脂、ポリエチレン、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、及びアルキルフェノール系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
ここで、スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を用いて得られる重合体であり、中でも、スチレン系単量体に由来する構造単位を、スチレン系樹脂が有する単量体単位の全量に対して20質量%以上有する重合体であることが好ましい。スチレン系単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。スチレン系単量体は、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンの少なくとも一方であることが好ましい。
【0049】
スチレン系樹脂は、1種のスチレン系単量体を重合した単独重合体でもよいし、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体でもよい。また、スチレン系樹脂は、スチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合し得る他の単量体とを用いて得られる共重合体でもよい。他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸類;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル類;クロロプレン、ブタジエンイソプレン等のジエン類;1−ブテン、1−ペンテン等のオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物、等が挙げられる。
【0050】
スチレン系樹脂の軟化点は、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。軟化点が30℃以上であると、架橋ゴムにおいて耐亀裂成長性の改善効果が得られやすい傾向がある。また、スチレン系樹脂の軟化点は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。軟化点が160℃以下であると、樹脂の分散性が良好となり、耐亀裂成長性、耐摩耗性及び破断強度が改善されやすい傾向がある。なお、本開示においてスチレン系樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2015に規定される方法に従い、環球式軟化点測定装置を用いて測定した値であり、試料が軟化して試料に載せた球が底板上に降下したときの温度である。
【0051】
スチレン系樹脂としては、ソフトセグメントとしての共役ジエン系重合体ブロックと、ハードセグメントとしてのポリスチレン系ブロックとを有するブロックポリマー(熱可塑性エラストマー)を用いることもできる。こうしたブロックポリマーを用いた場合、耐亀裂成長性の改善効果をより高くでき好ましい。なお、上記ブロックポリマーが有する共役ジエン系重合体ブロックは、共役ジエン化合物に由来する構造単位中の炭素−炭素二重結合のうちの一部が水素添加されていてもよい。
【0052】
上記共役ジエン系重合体ブロックを構成する共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。当該共役ジエン化合物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン及びイソプレンの少なくともいずれかであることが好ましい。ブロックポリマー中における共役ジエンユニットの含有割合は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、共役ジエンユニットの含有割合は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
上記ブロックポリマーにおけるポリスチレン系ブロックの含有割合は、破断強度をより高くできる点で、20質量%以上であることが好ましい。また、ポリスチレン系ブロックの含有割合は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。なお、ブロックポリマー中におけるポリスチレン系ブロック、共役ジエン系重合体ブロック及び共役ジエンユニットの各含有割合は、H−NMRスペクトルの積分比により算出することができる。
【0054】
上記ブロックポリマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はスチレン−イソプレンブロック共重合体が有する共役ジエン系重合体ブロックの一部を水素添加したブロック共重合体等が挙げられる。より詳細には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーのエポキシ化物、並びにこれらコポリマーの水添物等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、架橋されやすい点で、これらの中でも、ソフトセグメントが水素添加されていない共役ジエン系重合体ブロックを有するSBS若しくはSIS、又はスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーのエポキシ化物を好ましく用いることができる。
【0055】
ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。C5系樹脂は、C5留分をフリーデルクラフツ型触媒(AlClやBF等)を用いて重合して得られる固体重合体(C5系合成石油樹脂)である。C5系樹脂の具体例としては、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1−ペンテン等を主成分とする共重合体、2−ペンテンとジシクロペンタジエンとの共重合体、1,3−ペンタジエンを主成分とする重合体等が挙げられる。
【0056】
C9系樹脂は、C9留分をフリーデルクラフツ型触媒(AlClやBF等)を用いて重合して得られる固体重合体(C9系合成石油樹脂)である。C9系樹脂の具体例としては、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。C5/C9系樹脂は、C5〜C9留分をフリーデルクラフツ型触媒(AlClやBF等)を用いて重合して得られる固体重合体(C5/C9系合成石油樹脂)である。C5/C9系樹脂の具体例としては、例えばビニルトルエン、インデン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。C5/C9系樹脂は、C9以上の成分の少ない樹脂が、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。具体的には、C5/C9系樹脂は、樹脂全量中のC9以上の成分が50質量%未満であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
ジシクロペンタジエン系樹脂とは、C5留分中のジシクロペンタジエンを主原料として用いた石油樹脂である。ジシクロペンタジエン系樹脂の具体例としては、丸善石油化学(株)の商品名「マルカレッツM」シリーズ(M−890A、M−845A、M−990A等)が挙げられる。アルキルフェノール系樹脂としては、例えば、p−tert−ブチルフェノール−アセチレン樹脂等のアルキルフェノール−アセチレン樹脂、低重合度のアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0058】
(B)樹脂の配合割合は、ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対して、1質量部以上とすることが好ましい。(B)樹脂を1質量部以上配合することにより、当該ゴム組成物を用いて得られる架橋体において、(B)樹脂の添加による耐摩耗性、破断強度及び耐亀裂成長性の改善効果を十分に高くでき好適である。(B)樹脂の配合割合は、より好ましくは、ゴム成分100質量部に対して3質量部以上であり、更に好ましくは7質量部以上である。また、(B)樹脂の配合割合は、ゴム組成物の各種性能が良好に維持されるようにする観点から、ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対し、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下であり、更に好ましくは25質量部以下である。なお、(B)樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本明細書において、ゴム組成物に含まれる「ゴム成分」とは、熱硬化によりゴム弾性を示す硬化物を得ることが可能な重合体をいう。当該硬化物は、室温において小さな力で大きな変形(例えば、室温で伸ばすと2倍以上に伸びる変形)を起こし、力を取り除くと急速にほぼ元の形状に戻る性質を示す。
【0059】
本開示のゴム組成物は、(A)重合体と(B)樹脂との合計量に対し、(A)重合体を60〜95質量%、(B)樹脂を5〜40質量%含有する。(A)重合体及び(B)樹脂の配合割合を上記範囲とすることにより、耐摩耗性、破断強度及び耐亀裂成長性の改善効果をバランス良く十分に得ることができる。(A)重合体及び(B)樹脂の配合割合は、破断強度及び耐摩耗性の改善効果がより高い点で、(A)重合体を80〜95質量%、(B)樹脂を5〜20質量%とすることが好ましく、(A)重合体を86〜93質量%、(B)樹脂を7〜14質量%とすることがより好ましい。
【0060】
<架橋剤>
本実施形態に係る架橋ゴムは、熱処理されてなるものである。その熱処理のためにゴム組成物に含有される架橋剤の種類は特に限定されない。架橋剤の具体例としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄、硫黄化合物、p−キノン、p−キノンジオキシムの誘導体、ビスマレイミド化合物、エポキシ化合物、シラン化合物、アミノ樹脂、ポリオール、ポリアミン、トリアジン化合物、金属石鹸等を挙げることができる。これらのうち、有機過酸化物、フェノール樹脂及び硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。架橋剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
有機過酸化物としては、例えば1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,2’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−イソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシド等を挙げることができる。
【0062】
フェノール樹脂としては、例えば、下記一般式(8)で表されるp−置換フェノール系化合物、o−置換フェノール・アルデヒド縮合物、m−置換フェノール・アルデヒド縮合物、臭素化アルキルフェノール・アルデヒド縮合物等を挙げることができる。なかでも、p−置換フェノール系化合物が好ましい。
【化8】
【0063】
上記式(8)中、Xはヒドロキシル基、ハロゲン化アルキル基、又はハロゲン原子であり、Rは炭素数1〜15の飽和炭化水素基であり、nは0〜10の整数である。なお、p−置換フェノール系化合物は、アルカリ触媒の存在下における、p−置換フェノールとアルデヒド(好ましくはホルムアルデヒド)との縮合反応により得ることができる。
【0064】
フェノール樹脂の市販品としては、商品名「タッキロール201」(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、商品名「タッキロール250−I」(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、商品名「タッキロール250−III」(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、商品名「PR−4507」(群栄化学工業社製)、商品名「ST137X」(ローム&ハース社製)、商品名「スミライトレジンPR−22193」(住友デュレズ社製)、商品名「タマノル531」(荒川化学工業社製)、商品名「SP1059」、商品名「SP1045」、商品名「SP1055」、商品名「SP1056」(以上、スケネクタディ社製)、商品名「CRM−0803」(昭和ユニオン合成社製)を挙げることができる。これらの中でも、「タッキロール201」が好ましく使用される。
【0065】
架橋剤の使用量は、架橋ゴムを製造するためのゴム組成物に含まれるゴム成分の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜15質量部とすることがより好ましく、1〜10質量部とすることが更に好ましい。
【0066】
架橋剤として有機過酸化物を使用する場合において、有機過酸化物の使用量は、架橋ゴムを製造するためのゴム組成物に含まれるゴム成分の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部とすることが好ましく、0.1〜5質量部とすることがより好ましい。有機過酸化物の使用量が10質量部を超えると、架橋度が過度に高くなり、成形加工性が低下し、得られる架橋ゴムの機械的物性が低下する傾向にある。一方、有機過酸化物の使用量が0.05質量部未満であると、架橋度が不足し、得られる架橋ゴムのゴム弾性及び機械的強度が低下する傾向にある。
【0067】
また、架橋剤としてフェノール樹脂を使用する場合において、フェノール樹脂の使用量は、架橋ゴムを製造するためのゴム組成物に含まれるゴム成分の合計100質量部に対して、0.2〜10質量部とすることが好ましく、0.5〜5質量部とすることがより好ましい。フェノール樹脂の使用量が10質量部超であると、成形加工性が低下する傾向にある。一方、フェノール樹脂の使用量が0.2未満であると、架橋度が不足し、得られる架橋ゴムのゴム弾性及び機械的強度が低下する傾向にある。
架橋剤として硫黄を使用する場合において、硫黄の使用量は、架橋ゴムを製造するためのゴム組成物に含まれるゴム成分の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部とすることが好ましく、0.5〜3質量部とすることがより好ましい。
【0068】
架橋剤とともに、架橋助剤及び架橋促進剤の少なくともいずれかを用いると、架橋反応を穏やかに行うことができ、均一な架橋を形成することができるため好ましい。架橋剤として有機過酸化物を用いる場合には、架橋助剤として、硫黄、硫黄化合物(粉末硫黄、コロイド硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、表面処理硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等)、オキシム化合物(p−キノンオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシム等)、多官能性モノマー類(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−トルイレンビスマレイミド、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等)等を用いることが好ましい。なかでも、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシム、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジビニルベンゼンが好ましい。これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドは、架橋剤としての作用を示すものであるため、架橋剤として単独で使用することもできる。
【0069】
架橋剤として有機過酸化物を使用する場合における、架橋助剤の使用量は、混合物に含まれるゴム成分の合計100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、0.2〜5質量部とすることが更に好ましい。架橋助剤の使用量が10質量部超であると、架橋度が過度に高くなり、成形加工性が低下し、得られる架橋ゴムの機械的物性が低下する傾向にある。
【0070】
架橋剤としてフェノール樹脂を用いる場合には、架橋促進剤として、金属ハロゲン化物(塩化第一スズ、塩化第二鉄等)、有機ハロゲン化物(塩素化ポリプロピレン、臭化ブチルゴム、クロロプレンゴム等)等を用いると、架橋速度を調節することができるために好ましい。また、架橋促進剤の他に、酸化亜鉛等の金属酸化物やステアリン酸等の分散剤を使用することが更に望ましい。
【0071】
本開示に係るゴム組成物には、ゴム成分として上記(A)重合体に加えて、本開示の効果を損なわない範囲で、(A)重合体とは異なるゴム成分(以下、「他のゴム成分」ともいう。)が配合されてもよい。かかる他のゴム成分の種類は、特に限定されないが、ブタジエンゴム(BR。例えば、シス−1,4結合90%以上のハイシスBR、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(SPB)含有BRなど)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられ、より好ましくはNR、BR及びSBRよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。他のゴム成分を使用する場合、他のゴム成分の配合割合は、ゴム組成物に含まれるゴム成分((A)重合体及び他のゴム成分)の合計量100質量部に対して、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下である。
【0072】
本開示に係るゴム組成物において、フィラーとして、カーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウムなどの各種の補強性充填剤を用いることができる。好ましくは、カーボンブラック、シリカ、又は、カーボンブラックとシリカの併用である。シリカは静動比の点から好ましく、カーボンブラックはゴム組成物及び架橋ゴムの強度の点から好ましい。シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ等が挙げられ、中でも湿式シリカが好ましい。カーボンブラックとしては、例えばファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられ、中でもファーネスブラックが好ましい。
フィラーの配合量は、使用目的に応じて適宜決定すればよいが、例えば、ゴム組成物に配合されるゴム成分100質量部に対し、5〜150質量部である。ゴム組成物中におけるシリカ及びカーボンブラックの合計量は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全体量100質量部に対して、好ましくは20〜130質量部、より好ましくは25〜110質量部である。
【0073】
本開示に係るゴム組成物には、上記した成分の他に、例えばタイヤ用、ホース用、防振用、ベルト用等の各種用途の架橋ゴムを得るためのゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。当該添加剤としては、例えば老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、硫黄、加硫促進剤などが挙げられる。それらの配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲において、添加剤の種類に応じて適宜選択することができる。
【0074】
≪架橋体及びタイヤ≫
<架橋工程>
本開示に係るゴム組成物をゴム成形品とする場合、通常、ゴム組成物を所定形状に成形した後、架橋処理を行う。ゴム成形品の製造は、常法に従い行うことができる。例えばタイヤの製造は、上記ゴム組成物を、ロールやミキサー等の混合機で混合し、所定の形状に成形にしたものを、常法に従い外側に配して加硫成形することにより、トレッド及びサイドウォールの一方又は両方が形成され、空気入りタイヤが得られる。なお、ゴム成形品を得る際、架橋剤、架橋助剤としては、上述の架橋剤及び架橋助剤を用いることができる。
【0075】
以上よりなる架橋ゴムは、高強度かつ優れた耐摩耗性を示し、しかも耐亀裂成長性に優れているため、各種ゴム成型品に適用することができる。具体的には、タイヤのトレッド、サイドウォール用の材料;産業機械用や設備用などの防振ゴム類;ダイヤフラム、ロール、ラジエータホース、エアーホース等の各種ホース及びホースカバー類;パッキン、ガスケット、ウェザーストリップ、O−リング、オイルシール等のシール類;動力伝達用ベルトなどのベルト類;ライニング、ダストブーツ、等の材料として用いることができる。これらの中でも、タイヤ用部材、防振用部材及びベルト用部材として好適に用いることができ、特にタイヤ用部材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0077】
[結合スチレン含量(%)]:500MHzのH−NMRによって求めた。
[1,2−ビニル含量(%)]:500MHzのH−NMRによって求めた。
[変性前分子量]:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(HLC−8120GPC(商品名(東ソー社製)))を使用して得られたGPC曲線の最大ピークの頂点に相当する保持時間から、ポリスチレン換算で求めた。
(GPCの条件)
カラム;商品名「GMHXL」(東ソー社製)2本
カラム温度;40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/分
サンプル濃度;10mg/20ml
[ムーニー粘度]:JIS K6300−1:2013に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で求めた。
[水添率(%)]及び[α]:500MHzのH−NMRによって求めた。
【0078】
<高飽和ジエン系重合体の製造>
〈水添触媒の製造〉
〔製造例1:触媒Aの合成〕
撹拌機、滴下漏斗を備えた1L容量の三つ口フラスコを乾燥窒素で置換し、無水テトラヒドロフラン200ml及びテトラヒドロフルフリルアルコール0.2モルを加えた。その後、n−ブチルリチウム/シクロヘキサン溶液(0.2モル)を三つ口フラスコ中に15℃にて滴下して反応を行い、テトラヒドロフルフリルオキシリチウムのテトラヒドロフラン溶液を得た。
次に、撹拌機、滴下漏斗を備えた1L容量の三つ口フラスコを乾燥窒素で置換し、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド49.8g(0.2モル)及び無水テトラヒドロフラン250mlを加えた。そして、上記記載の方法により得られたテトラフルフリルオキシリチウムのテトラヒドロフラン溶液を室温撹拌下にて約1時間で滴下した。約2時間後、赤褐色液を濾過し、不溶部をジクロロメタンで洗浄した。
その後、ろ液及び洗浄液を合わせて減圧下にて溶媒を除去することにより、触媒A[ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウム(テトラヒドロフルフリルオキシ)クロライド](「[クロロビス(2,4−シクロペンタジエニル)チタン(IV)テトラヒドロフルフリルアルコキシド]」ともいう。)を得た。なお、収率は95%であった。
【0079】
〈水添共役ジエン系重合体の製造〉
〔製造例2:水添共役ジエン系ゴムAの合成〕
窒素置換された内容積10リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン5000g、テトラヒドロフラン150.0g、スチレン250g、1,3−ブタジエン730gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム(11.60mmol)を含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達した時点で、ブタジエン20gを追加し、更に5分重合させ、重合体を含む反応液を得た。得られた反応液にN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン8.5gを加え、30分間反応させた。
次いで、上記触媒A0.32g、テトラクロロシラン0.39gを加え、水素圧1.0MPaを保つようにして55分間反応させた。反応後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。
次いで、pH調整剤であるアンモニアによりpH8.5(ガラス電極法による、80℃におけるpH、以下同じ。)に調整した水溶液(温度:80℃)を脱溶媒槽に入れ、更に上記重合体溶液を加え(重合体溶液100質量部に対して、前記水溶液200質量部の割合)、脱溶媒槽の液相の温度:95℃で、2時間スチームストリッピング(スチーム温度:190℃)により脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥を行うことで、水添共役ジエン系ゴムAを得た。得られた水添共役ジエン系ゴムAの性質を下記表1に示す。
【0080】
<共役ジエン系重合体の製造>
〔製造例3:共役ジエン系ゴムSの合成〕
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2750g、テトラヒドロフラン50.0g、スチレン125g、1,3−ブタジエン365gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム(5.80mmol)を含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達した時点で、ブタジエン10gを追加し、更に5分重合させ、重合体を含む反応液を得た。得られた反応液にN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.25gを加え、30分間反応させた。得られた重合体溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールによりゴムを乾燥し、共役ジエン系ゴムSを得た。得られた共役ジエン系ゴムSの性質を下記表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
<ゴム組成物の製造及び特性評価>
[実施例1〜11及び比較例1〜3]
温度制御装置を付属したプラストミル(内容量250cc)を使用し、一段目の混練として、充填率72%、回転数60rpmの条件で、下記表2の配合処方により、水添共役ジエン系ゴムA、共役ジエン系ゴムS、天然ゴム、熱可塑性樹脂、シリカ、カーボンブラック、シランカップリング剤、ステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛を混練した。次いで、二段目の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、硫黄及び加硫促進剤を加えて混練した。これを成型し、160℃で所定時間、加硫プレスにて加硫した。加硫前のゴム組成物又は加硫ゴムを用い、以下の(1)〜(3)の特性評価を実施した。
【0083】
(1)破断強度:JIS K6251:2010に準拠して、試験用加硫ゴムシートからなる3号ダンベル型試験片を作製し、評価用の試験片とした。引張り試験機(型名「AG−2000」、(株)島津製作所製)を用いて、負荷速度500mm/分にて上記試料片を引っ張り、破断強度(TB)を求めた。比較例1を100とした指数で示し、数値が大きいほど高強度である。
(2)耐摩耗性:加硫ゴムを測定用試料とし、DIN摩耗試験機(東洋精機社製)を使用し、JIS K 6264−2:2005に準拠し、荷重10Nで25℃にて測定した。比較例1を100とした指数で表示し、数値が大きいほど耐摩耗性が良好である。
(3)耐亀裂成長性:ゴム組成物をカレンダー加工によってシート状に成型した後、加硫プレス機を用いて160℃で所定時間加硫処理することにより、厚みが2mmの架橋ゴムよりなるシートを作製した。得られたシートに対して打ち抜き加工を施すことにより、ASTM D638に記載のIV型のダンベルよりなる試験片を作製した。この際、ダンベルの長手方向がシートの列理方向となるよう、シートに対して打ち抜き加工を施すと共に、ダンベルにおける長手方向の中央位置に反列理方向に伸びる亀裂を形成した。得られた試験片について、伸長率が100%、測定温度が23℃、回転数が300cpmの条件で定伸長疲労試験を行い、試験片が破断するまでのサイクル数を測定した。比較例1を100とした指数で示し、数値が大きいほど耐亀裂成長性が良好であることを示す。
実施例1〜11及び比較例1〜3の特性評価の結果を下記表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2中、使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
水添SBR:水添共役ジエン系ゴムA
SBR:共役ジエン系ゴムS
SIS:JSR社製 JSRSIS5250(スチレン含量20%)
SIBS:カネカ社製 SIBSTAR 102T(スチレン含量23%)
エポキシSBS:ダイセル化学社製 エポフレンドA102(スチレン含量40%)
ポリエチレン:日本ポリエチレン社製 KS340T
AS樹脂:テクノUMG社製 SANREX SAN−C(スチレン含量73%)
C5/C9系樹脂:JXTGエネルギー社製 T−REZ PR802
カーボンブラック:三菱ケミカル社製 ダイアブラックN339
シリカ:東ソー・シリカ社製 ニプシルAQ
シランカップリング剤:エボニック社製 Si69
老化防止剤:大内新興化学工業社製 ノクラック810NA
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業社製 ノクセラーCZ
加硫促進剤D:大内新興化学工業社製 ノクセラーD
表2中、「−」は、該当する欄の化合物を使用しなかったことを表す。
【0086】
表2から明らかなように、高飽和ジエン系重合体と熱可塑性樹脂とを所定割合で含有するゴム組成物(実施例1〜11)は、熱可塑性樹脂を含有しないゴム組成物(比較例1〜3)に比べて、破断強度、耐摩耗性及び耐亀裂成長性がバランス良く改善された。
【国際調査報告】