特表-20204012IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧
再表2020-204012絶縁性樹脂組成物およびその製造方法、絶縁テープおよびその製造方法、絶縁層形成方法、ならびに電力ケーブルおよびその製造方法
<>
  • 再表WO2020204012-絶縁性樹脂組成物およびその製造方法、絶縁テープおよびその製造方法、絶縁層形成方法、ならびに電力ケーブルおよびその製造方法 図000005
  • 再表WO2020204012-絶縁性樹脂組成物およびその製造方法、絶縁テープおよびその製造方法、絶縁層形成方法、ならびに電力ケーブルおよびその製造方法 図000006
  • 再表WO2020204012-絶縁性樹脂組成物およびその製造方法、絶縁テープおよびその製造方法、絶縁層形成方法、ならびに電力ケーブルおよびその製造方法 図000007
  • 再表WO2020204012-絶縁性樹脂組成物およびその製造方法、絶縁テープおよびその製造方法、絶縁層形成方法、ならびに電力ケーブルおよびその製造方法 図000008
  • 再表WO2020204012-絶縁性樹脂組成物およびその製造方法、絶縁テープおよびその製造方法、絶縁層形成方法、ならびに電力ケーブルおよびその製造方法 図000009
  • 再表WO2020204012-絶縁性樹脂組成物およびその製造方法、絶縁テープおよびその製造方法、絶縁層形成方法、ならびに電力ケーブルおよびその製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年10月8日
【発行日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】絶縁性樹脂組成物およびその製造方法、絶縁テープおよびその製造方法、絶縁層形成方法、ならびに電力ケーブルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20210402BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20210402BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20210402BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20210402BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20210402BHJP
   H01B 9/02 20060101ALI20210402BHJP
   H01B 9/00 20060101ALI20210402BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20210402BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   C08L23/02
   C08L23/26
   H02G15/08
   H02G1/14
   H01B3/44 F
   H01B3/44 G
   H01B9/02 A
   H01B9/00 A
   H01B13/00 541
   H01B7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
【出願番号】特願2020-544684(P2020-544684)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2020年3月30日
(11)【特許番号】特許第6852229号(P6852229)
(45)【特許公報発行日】2021年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2019-69322(P2019-69322)
(32)【優先日】2019年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】三枝 哲也
(72)【発明者】
【氏名】金谷 考洋
【テーマコード(参考)】
4J002
5G305
5G309
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB082
4J002BB121
4J002BB212
4J002EK04
4J002EW116
4J002FD076
4J002FD14
4J002GQ01
4J002GR00
5G305AA02
5G305AB01
5G305BA13
5G305BA20
5G305CA01
5G305CA55
5G305CB13
5G305CD09
5G305DA13
5G309LA26
5G355AA03
5G355BA01
5G355BA02
5G355BA11
5G355BA17
5G355CA15
5G375AA01
5G375BA26
5G375BB71
5G375CB04
(57)【要約】
絶縁層に蓄積される空間電荷量が少なく、それにより絶縁破壊の起こり難い絶縁性樹脂組成物を提供する。
絶縁性樹脂組成物1は、極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相11の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相12が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、
前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、
前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である、絶縁性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、
テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である、電力ケーブルの絶縁層形成用絶縁テープ。
【請求項3】
導体と、
前記導体の外周上に、
第一導電性樹脂からなる内部半導電層、
請求項1に記載の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、前記第二相中の少なくとも前記変性ポリオレフィン樹脂、および前記第一相中の少なくとも前記未変性ポリオレフィン樹脂が架橋されてなる絶縁層、ならびに
第二導電性樹脂からなる外部半導電層
が順に積層されて形成された複合被膜と
を有する、電力ケーブル。
【請求項4】
複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部と、
前記接続部の外周上に、
第一導電性樹脂からなる内部半導電層、
請求項1に記載の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、前記第二相中の少なくとも前記変性ポリオレフィン樹脂、および前記第一相中の少なくとも前記未変性ポリオレフィン樹脂が架橋されてなる絶縁層、ならびに
第二導電性樹脂からなる外部半導電層
が順に積層されて形成された複合被膜と
を有する接続構造部を備える、電力ケーブル。
【請求項5】
前記絶縁層は、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である絶縁層形成用絶縁テープを、前記内部半導電層の外周上に巻回および架橋して形成される、請求項4に記載の電力ケーブル。
【請求項6】
前記内部半導電層と前記外部半導電層の厚みの合計が5mm以下である、請求項3から5のいずれかに記載の電力ケーブル。
【請求項7】
極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤を添加し、その後、前記変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されたベース樹脂を得るとともに、前記ベース樹脂が、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下となるように混練する工程を含む、絶縁性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤を添加して、前記変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されてなるベース樹脂を含む希釈ポリオレフィンペレットを作製し、その後、作製した前記希釈ポリオレフィンペレットに架橋剤を添加し、前記ベース樹脂が、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下となるようにドライブレンドする工程を含む、絶縁性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
電力ケーブルの絶縁層形成用絶縁テープの製造方法であって、
請求項1に記載の絶縁性樹脂組成物を押出成形してフィルムを形成し、前記フィルムの表面温度を、前記絶縁性樹脂組成物が押し出されてから15秒以内に、前記未変性ポリオレフィン樹脂の融点以下に冷却する工程と、
前記フィルムにスリット加工を施してテープを形成する工程と
を有する、絶縁層形成用絶縁テープの製造方法。
【請求項10】
複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に、請求項1に記載の絶縁性樹脂組成物を用いて前記接続部の外面に絶縁層を形成し、
前記絶縁層を形成した前記接続部に、300kPa以上1000kPa以下および140℃以上280℃以下の条件下で加圧加熱処理を施して、前記絶縁層に含まれる前記ベース樹脂の未変性ポリオレフィン樹脂および変性ポリオレフィン樹脂を架橋させる工程を含む、電力ケーブルの接続部外面への絶縁層形成方法。
【請求項11】
前記接続部の外周への前記絶縁層の形成は、前記絶縁性樹脂組成物を原材料とし、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である絶縁層形成用絶縁テープを巻回して行う、請求項10に記載の絶縁層形成方法。
【請求項12】
導体の外周に、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を順に積層し、少なくとも前記絶縁層を架橋する工程を有する電力ケーブルの製造方法であって、
前記絶縁層の積層は、請求項1に記載の絶縁性樹脂組成物を、前記内部半導電層の外周に押し出すことで行い、
積層された前記絶縁層の表面温度を、前記内部半導電層の外周に押し出されてから15秒以内に、前記未変性ポリオレフィン樹脂の融点以下に冷却し、
前記絶縁層の架橋工程は、前記絶縁層に300kPa以上1000kPa以下および140℃以上280℃以下の条件下で加圧加熱処理を施して、前記絶縁層に含まれる前記ベース樹脂の未変性ポリオレフィン樹脂および変性ポリオレフィン樹脂を架橋させることによって行う、電力ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性樹脂組成物および絶縁性樹脂組成物の製造方法と、この絶縁性樹脂組成物を用いて形成される電力ケーブルの接続部の被覆に用いられる絶縁テープおよび絶縁テープの製造方法と、この絶縁テープを用いた電力ケーブルの接続部外面への絶縁層形成方法と、この絶縁性樹脂組成物を用いて形成される絶縁層を有する電力ケーブルおよび電力ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用の送配電ケーブル(電力ケーブル)としては、導体と、導体の外周を被覆し、架橋ポリエチレン樹脂などの架橋ポリオレフィン樹脂を含む絶縁層とを有するケーブルが広く用いられている。しかし、電力ケーブルの絶縁層を構成する架橋ポリオレフィン樹脂は、時間経過とともに内部への空間電荷の蓄積によって劣化が進み、それによって絶縁破壊が起こりやすいことが知られている。そのため、電力ケーブルは、絶縁破壊を起こさないようにするには、絶縁層に蓄積される空間電荷量を少なくすることが好ましい。
【0003】
絶縁層に蓄積される空間電荷量を減らすための手段としては、絶縁層を構成するポリオレフィン樹脂を改質させる方法が挙げられる。より具体的には、ポリオレフィン樹脂に電界安定剤や耐トリー添加剤などを添加する方法や、2種類以上の高分子をブレンドする方法、さらに、適切な極性基をもっている単量体をポリエチレン鎖にグラフトさせたり、重合工程を改造して他の高分子と共重合させたりして、新しい材料を開発する方法等が挙げられる(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
このうち、ポリオレフィンに電界安定剤や耐トリー添加剤などを添加する方法としては、例えば特許文献1に、酸化マグネシウムなどの有極性無機充填剤を含む架橋ポリエチレンを絶縁層とする直流用ケ−ブルにおいて、有極性無機充填剤として、表面処理剤によって表面処理されており、かつ、表面処理前の有極性無機充填剤の粒径とほぼ同等の粒径になるように粉砕されたものを用いたケ−ブルが記載されている。そして、酸化マグネシウムを添加することで、DCP(ジクミルパーオキサイド)などの有機過酸化物架橋剤の分解残渣による体積抵抗率の低下や、空間電荷の蓄積を抑えることによって、絶縁層の直流絶縁特性を向上させている。
【0005】
また、適切な極性基をもっている単量体をポリエチレン鎖にグラフトさせる方法としては、例えば特許文献2に、密度が0.93g/cm以上、無水マレイン酸濃度が0.01〜5重量%の無水マレイン酸グラフトポリエチレンを、絶縁体に用いた交流電力ケーブルが記載されている。そして、無水マレイン酸グラフトポリエチレンをポリエチレンで希釈することで、適正量のカルボニル基が絶縁体の樹脂に添加され、添加されたカルボニル基が空間電荷のトラップとして作用することで空間電荷の移動が抑えられるため、局所的な空間電荷の蓄積による直流絶縁破壊の発生を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−086634号公報
【特許文献2】特開2004−363020号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】李昌龍、他2名、電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌)、第118巻第10号、1998年、p.1094−1100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載される直流用ケーブルは、絶縁層の樹脂に、比重が樹脂より大きい無機充填剤を添加するため、ケーブルが重くなってケーブル使用時の作業性が悪いという問題がある他、100μm以上の巨大な充填剤粒子の混入によって絶縁破壊を引き起こし易いという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載される交流電力ケーブルは、無水マレイン酸グラフトポリエチレンを希釈する際の樹脂の混練が不十分であると、樹脂組成物中の極性基の分布が不均一になり、絶縁層に蓄積される空間電荷量にばらつきが生じ、カルボニル基の少ない箇所では絶縁破壊を引き起こし易いという問題がある。他方で、均一性を高める目的で、混練時の樹脂の温度を高くしたり、押し出し機のスクリューの回転速度を高めたりすると、せん断発熱によって樹脂の異常架橋が発生して成形が困難になる問題がある。
【0010】
本発明の目的は、絶縁層に蓄積される空間電荷量が少なく、それにより絶縁破壊の起こり難い絶縁性樹脂組成物およびその製造方法と、この絶縁性樹脂組成物を用いて形成される電力ケーブルの接続部の被覆に用いられる絶縁テープおよびその製造方法と、この絶縁テープを用いた電力ケーブルの接続部外面への絶縁層形成方法と、この絶縁性樹脂組成物を用いて形成される絶縁層を有する電力ケーブルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、極性基を持つ分子で変性した変性ポリオレフィンを電力ケーブルの絶縁層に用いるには、未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を形成させることが、絶縁層に蓄積される空間電荷量の低減により効果的であることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である、絶縁性樹脂組成物。
(2)上記(1)に記載の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である、電力ケーブルの絶縁層形成用絶縁テープ。
(3)導体と、前記導体の外周上に、第一導電性樹脂からなる内部半導電層、上記(1)に記載の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、前記第二相中の少なくとも前記変性ポリオレフィン樹脂、および前記第一相中の少なくとも前記未変性ポリオレフィン樹脂が架橋されてなる絶縁層、ならびに第二導電性樹脂からなる外部半導電層が順に積層されて形成された複合被膜とを有する、電力ケーブル。
(4)複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部と、前記接続部の外周上に、第一導電性樹脂からなる内部半導電層、上記(1)に記載の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、前記第二相中の少なくとも前記変性ポリオレフィン樹脂、および前記第一相中の少なくとも前記未変性ポリオレフィン樹脂が架橋されてなる絶縁層、ならびに第二導電性樹脂からなる外部半導電層が順に積層されて形成された複合被膜とを有する接続構造部を備える、電力ケーブル。
(5)前記絶縁層は、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である絶縁層形成用絶縁テープを、前記内部半導電層の外周上に巻回および架橋して形成される、上記(4)に記載の電力ケーブル。
(6)前記内部半導電層と前記外部半導電層の厚みの合計が5mm以下である、上記(3)から(5)のいずれかに記載の電力ケーブル。
(7)極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤を添加し、その後、前記変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されたベース樹脂を得るとともに、前記ベース樹脂が、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下となるように混練する工程を含む、絶縁性樹脂組成物の製造方法。
(8)極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤を添加して、前記変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されてなるベース樹脂を含む希釈ポリオレフィンペレットを作製し、その後、作製した前記希釈ポリオレフィンペレットに架橋剤を添加し、前記ベース樹脂が、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下となるようにドライブレンドする工程を含む、絶縁性樹脂組成物の製造方法。
(9)電力ケーブルの絶縁層形成用絶縁テープの製造方法であって、上記(1)に記載の絶縁性樹脂組成物を押出成形してフィルムを形成し、前記フィルムの表面温度を、前記絶縁性樹脂組成物が押し出されてから15秒以内に、前記未変性ポリオレフィン樹脂の融点以下に冷却する工程と、前記フィルムにスリット加工を施してテープを形成する工程とを有する、絶縁層形成用絶縁テープの製造方法。
(10)複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に、上記(1)に記載の絶縁性樹脂組成物を用いて前記接続部の外面に絶縁層を形成し、前記絶縁層を形成した前記接続部に、300kPa以上1000kPa以下および140℃以上280℃以下の条件下で加圧加熱処理を施して、前記絶縁層に含まれる前記ベース樹脂の未変性ポリオレフィン樹脂および変性ポリオレフィン樹脂を架橋させる工程を含む、電力ケーブルの接続部外面への絶縁層形成方法。
(11)前記接続部の外周への前記絶縁層の形成は、前記絶縁性樹脂組成物を原材料とし、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である絶縁層形成用絶縁テープを巻回して行う、上記(10)に記載の絶縁層形成方法。
(12)導体の外周に、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を順に積層し、少なくとも前記絶縁層を架橋する工程を有する電力ケーブルの製造方法であって、前記絶縁層の積層は、上記(1)に記載の絶縁性樹脂組成物を、前記内部半導電層の外周に押し出すことで行い、積層された前記絶縁層の表面温度を、前記内部半導電層の外周に押し出されてから15秒以内に、前記未変性ポリオレフィン樹脂の融点以下に冷却し、前記絶縁層の架橋工程は、前記絶縁層に300kPa以上1000kPa以下および140℃以上280℃以下の条件下で加圧加熱処理を施して、前記絶縁層に含まれる前記ベース樹脂の未変性ポリオレフィン樹脂および変性ポリオレフィン樹脂を架橋させることによって行う、電力ケーブルの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相(海相)の中に、変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相(島相)が存在する、いわゆる海島構造を有するとともに、第二相(島相)の大きさが2μm以下と微細であることで極性基の分布に偏りが小さくなるため、絶縁性樹脂組成物に蓄積される空間電荷量が低減される。それにより、絶縁破壊の起こり難い絶縁性樹脂組成物およびその製造方法と、この絶縁性樹脂組成物を用いて形成される絶縁テープおよびその製造方法と、この絶縁テープを用いた絶縁層形成方法と、この絶縁性樹脂組成物を用いた電力ケーブルおよびその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る絶縁性樹脂組成物が有している、海島構造について説明する模式図である。
図2】本発明に係る電力ケーブルを説明する図である。このうち、図2(a)は、電力ケーブルを模式的に示す断面図である。また、図2(b)は、図2(a)のA−A´線上の断面図である。
図3】本発明に係る絶縁テープを巻回して形成した接続構造部を有する電力ケーブルを説明する図である。このうち、図3(a)は、接続構造部を含む電力ケーブルの模式断面図である。また、図3(b)は、図3(a)のB−B´線上の断面図である。さらに、図3(c)は、図3(a)のC−C´線上の断面図である。
図4】本発明に係る電力ケーブルの接続部外面への絶縁層形成方法について説明する図である。このうち、図4(a)は、端部の導体を露出させた2本の電力ケーブルの端部同士を向かい合わせた分離状態で示す断面図である。また、図4(b)は、導体を露出させた端部同士を導体接続させた状態を示す断面図である。また、図4(c)は、接続部の外周に内部半導電層を形成させた状態を示す断面図である。また、図4(d)は、接続部の内部半導電層の外周に絶縁層を形成した状態を示す断面図である。また、図4(e)は、絶縁層の外周に外部半導電層を形成した状態を示す断面図である。
図5】本発明に係る絶縁性樹脂組成物の製造方法の押出成形で好適に用いられる、フルフライトスクリューの先端部に樹脂混合部を設けたスクリューの例(実施例)を示す正面図である。
図6】絶縁性樹脂組成物の製造方法の押出成形で用いられる、一般的なフルフライトスクリューを有するスクリューの例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0016】
<絶縁性樹脂組成物>
本発明の絶縁性樹脂組成物は、極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含む。ここで、変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる。また、ベース樹脂は、未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、第二相の平均直径が2μm以下である。
【0017】
本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物は、変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相(海相)の中に、変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相(島相)が存在する、いわゆる海島構造を有するとともに、第二相(島相)の大きさを2μm以下と微細にすることによって、極性基の分布に偏りが小さくなるため、絶縁層に蓄積される空間電荷量が有効に低減され、その結果、絶縁層での絶縁破壊を起こり難くすることができる。
【0018】
本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物は、少なくともベース樹脂(A)と、酸化防止剤(C)とを含む。また、本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物は、架橋剤(B)をさらに含むことが好ましい。
【0019】
[ベース樹脂(A)]
ベース樹脂(A)は、極性基を有する分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂(A1)と、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)とを併用する。これにより、絶縁性樹脂組成物に、親水性の高い変性ポリオレフィン樹脂(A1)と、疎水性の高い未変性ポリオレフィン樹脂(A2)とが併存するため、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)を含む第一相の中に、変性ポリオレフィン樹脂(A1)を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を形成することができる。
【0020】
ここで、「海島構造」は、例えば図1に示すような、海相と呼ばれる第一相11の中に、島相と呼ばれる第二相12が存在するような構造である。そのため、本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物1は、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)を含む第一相(海相)11の中に、変性ポリオレフィン樹脂(A1)を含む第二相(島相)12が存在する。このような構造を有することで、電力ケーブルへの電流通電時における空間電荷の蓄積を低減することができるため、絶縁性樹脂組成物1から形成される絶縁層において絶縁破壊を低減することができる。
【0021】
ここで、海島構造における第二相(島相)12は、平均直径が2μm以下である。これにより、電力ケーブルに電流を通電した際にも、島相での空間電荷の蓄積が起こり難くなるため、絶縁性樹脂組成物1から形成される絶縁層における、局所的な電界集中に起因した絶縁性能の低下を抑えることができる。
【0022】
また、海島構造における第二相(島相)12は、縦10μm×横10μmの観測範囲内に、直径が0.5μm〜2.0μmの範囲にある第二相(島相)が5個〜20個の範囲で存在し、かつ、すべての第二相(島相)12の占める面積の和が20μm以下であることが好ましい。これにより、絶縁性樹脂組成物における極性基の分布の偏りがより小さくなるため、空間電荷の蓄積も分散されることで、絶縁層での絶縁破壊をより起こり難くすることができる。
【0023】
絶縁性樹脂組成物が海島構造を有することについての確認と、海島構造に含まれる第二相(島相)の直径の測定と、直径が0.5〜2μmの範囲にある第二相(島相)の個数の測定は、必要に応じて金属染色を行った後、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、樹脂組成物やその断面を観察することで行うことができる。ここで、島相の平均直径の測定は、透過型電子顕微鏡の倍率を10000倍に設定し、海島構造が分かるようにコントラストを調整して撮影される1枚の画像を用いて、撮影されている島の平均直径を求めることで行った。ここで、第二相(島相)の直径は、画像処理を用いて、全周(360度)にわたって島相の大きさを測定したときの最大値と最小値をそれぞれ最大寸法および最小寸法として、これら最大寸法と最小寸法の算術平均値とした。
【0024】
(変性ポリオレフィン樹脂(A1))
ベース樹脂(A)に含まれる変性ポリオレフィン樹脂(A1)としては、極性基を有する分子によって変性されたものを用いる。この変性ポリオレフィン樹脂(A1)は、海島構造の第二相(島相)に含まれる。
【0025】
変性ポリオレフィン樹脂(A1)は、極性基を有する分子を結合させることで変性されたポリオレフィン樹脂である。
【0026】
ここで、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびこれらのコポリマーが好ましい。また、変性ポリオレフィン樹脂(A1)は、極性基を有する分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸の誘導体の群から選択される少なくとも1種によって変性されている必要がある。
【0027】
極性基を有する分子のうち、不飽和ジカルボン酸の一例としては、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸などが挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸無水物の一例としては、無水マレイン酸、および無水イタコン酸などが挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸の誘導体の一例としては、不飽和ジカルボン酸のモノメチルエステル、モノエチルエステル、ジエチルエステル、アミド、およびイミドなどが挙げられる。より具体的には、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、およびN−シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。これらの中でも、少量の添加によってポリオレフィン樹脂に親水性を付与することができるため、分子量当たりのカルボニル基の比率が最も高い無水マレイン酸を用いることが最も好ましい。これらの極性基を有する分子は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
変性ポリオレフィン樹脂(A1)としては、上述のように極性基を有する分子を用いてポリオレフィン樹脂を変性することで得られるもののほか、市販の樹脂を用いることもできる。例えば、ハイミラン(アイオノマー樹脂、三井・デュポン ポリケミカル株式会社)、ニュクレル(エチレン-メタクリル酸共重合体、デュポン株式会社)、SCONA TSPE(無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン、BYK株式会社)、オレヴァックG(無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン、アルケマ株式会社)、モディック(無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン、三菱化学)、ユーメックス(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、三洋化成株式会社)、REO−070−1(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、理研ビタミン株式会社)、カヤブリッド(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、化薬アクゾ)、SCONA TPPP(無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン、BYK株式会社)、アドマー(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、三井化学株式会社)などを好適に用いることができる。
【0029】
変性ポリオレフィン樹脂(A1)の融点は、JIS K7121−1987の示差走査熱量測定法による測定で、90℃以上140℃以下が好ましく、90℃以上130℃以下がより好ましく、100℃以上120℃以下がさらに好ましい。
【0030】
(未変性ポリオレフィン樹脂(A2))
また、ベース樹脂(A)に含まれる未変性ポリオレフィン樹脂(A2)は、海島構造の第一相(海相)に含まれるものであり、変性ポリオレフィン樹脂(A1)の分散媒として作用する。
【0031】
未変性ポリオレフィン樹脂(A2)としては、公知のものを用いることが可能であり、その中でも、比重が0.900以上0.940以下の、分岐構造を有するポリエチレンである低密度ポリエチレンや、ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレンとアルケンとのコポリマーを含むことが好ましい。これにより、絶縁性樹脂組成物から絶縁テープや絶縁層を形成したときの柔軟性が高められるため、電力ケーブルの取り回しを行い易くすることができる。
【0032】
また、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点は、JIS K7121−1987の示差走査熱量測定法による測定で、90℃以上170℃以下が好ましく、90℃以上130℃以下が好ましく、100℃以上120℃以下がより好ましい。
【0033】
ベース樹脂(A)を構成する変性ポリオレフィン樹脂(A1)と未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の割合は、添加剤との混錬などの作業を行い易くして均一な樹脂を得る観点と、親水性基の濃度を適度に調整する観点から、変性ポリオレフィン樹脂(A1)1質量部に対し、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)を2質量部以上20質量部以下の割合で配合することが好ましい。
【0034】
[架橋剤(B)]
本発明の樹脂組成物は、ベース樹脂(A)を架橋させるために、架橋剤(B)を添加することが好ましい。架橋剤(B)は、ベース樹脂(A)を架橋することで、樹脂材料の機械特性および耐熱性を高めるとともに、絶縁性樹脂組成物を含む絶縁テープを用いて絶縁層を形成する際には、隣接する絶縁テープを結合する作用も有する。
【0035】
架橋剤(B)としては、加熱したときに熱分解によってラジカルを生成する有機過酸化物を含有することが好ましい。
【0036】
架橋剤(B)の具体例としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ブチルパーアセテート、tert−ブチルパーベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどが挙げられる。その中でも、DCPを含有することが好ましい。また、架橋剤(B)として、これらの化合物のうち2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0037】
架橋剤(B)の含有量の下限は、ベース樹脂(A)の合計100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。これにより、ポリオレフィン樹脂の架橋によって、樹脂材料の機械特性および耐熱性を高めることができる。他方で、架橋剤(B)の含有量の上限は、ベース樹脂(A)の合計100質量部に対して、5質量部であることが好ましく、3質量部であることがより好ましい。これにより、絶縁性樹脂組成物を押出成形する際における、異常架橋による電気特性の低下を抑えることができる。
【0038】
[酸化防止剤(C)]
酸化防止剤(C)は、老化防止剤とも呼ばれ、絶縁性樹脂組成物や、絶縁性樹脂組成物からなる絶縁テープや絶縁層が、熱や空気中の酸素によって劣化するのを防ぐ作用を有するものである。
【0039】
酸化防止剤(C)としては、フェノール系、リン系、硫黄系、アミン系、ヒドラジン系およびアミド系のうち1種以上に属する酸化防止剤、ならびにその誘導体が含まれる。特に、酸化防止剤(C)としては、これらの化合物のうち2種以上を併用してもよい。また、酸化防止剤(C)として、フェノール系酸化防止剤またはアミン系酸化防止剤と、リン酸系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤とを含有することが好ましい。
【0040】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、イルガノックス245、イルガノックス259、イルガノックス565、イルガノックス1010、イルガノックス1035、イルガノックス1076、イルガノックス1098、イルガノックス1222、イルガノックス1330、イルガノックス1425、イルガノックス3114、イルガノックス1520、イルガノックス1135、イルガノックス1141、(以上いずれもBASF社製)、スミライザーBHT、スミライザー MDP−S、スミライザーGA−80、スミライザーBBM−S、スミライザーWX−R、スミライザーGM、(以上いずれも住友化学社製)、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、(以上ADEKA社製)などが挙げられる。
【0041】
また、リン系酸化防止剤の具体例としては、イルガフォス168、イルガフォスP−EPQ、イルガフォス126、(以上いずれもBASF社製)、スミライザーBBM−S、(住友化学社製)、アデカスタブPEP−4C)、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ1178、アデカスタブ2112、アデカスタブC、アデカスタブ135 A、アデカスタブ3010、(以上いずれもADEKA社製)などが挙げられる。
【0042】
また、硫黄系酸化防止剤の具体例としては、イルガノックスPS800FL、イルガノックスPS802FL、(以上BASF社製)、スミライザーWX(住友化学社製)、アデカスタブAO−503、アデカスタブAO−23(ADEKA社製)などが挙げられる。
【0043】
酸化防止剤(C)の合計含有量の下限は、ベース樹脂(A)の合計100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.2質量部であることがより好ましい。これにより、絶縁性樹脂組成物を混練するときにスコーチの発生を低減することができ、また、絶縁性樹脂組成物を架橋して得られる絶縁層の耐熱老化性を高めることができる。他方で、酸化防止剤(C)の合計含有量の上限は、ベース樹脂(A)の合計100質量部に対して、0.8質量部であることが好ましく、0.6質量部であることがより好ましい。これにより、樹脂架橋時に発生する水分量を減少させることができ、また、樹脂架橋体からのブリードも減少させることができる。
【0044】
加えて、架橋剤(B)100質量部に対する酸化防止剤(C)の合計含有量は、5〜50質量部であることがより好ましい。
【0045】
[その他の成分(D)]
本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて、他の成分を含んでもよい。例えば、水分吸収剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、軟化剤、充填剤、着色剤、溶剤、顔料、染料、蛍光体などの各種の添加剤を加えてもよい。
【0046】
[絶縁性樹脂組成物の特性]
本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物は、パルス静電応力法によって空間電荷を測定することで得られる、空間電荷の蓄積を表す電界増倍率(=最大測定電界/印加電界)が低いことが好ましい。このような樹脂組成物は、絶縁層を形成したときに、絶縁層に蓄積される空間電荷量が小さくなるため、絶縁層への絶縁破壊を起こり難くすることができる。ここで、絶縁性樹脂組成物における電界増倍率は、130%以下であることが好ましい。特に、電界増倍率が110%未満である樹脂組成物は、直流電力ケーブル用の絶縁材料として好適である。
【0047】
<絶縁性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物の製造方法は、主に2つの方法が挙げられる。第1の絶縁性樹脂組成物の製造方法は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤と、必要に応じて架橋剤を添加し、その後、変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されたベース樹脂を得る方法である。このとき、ベース樹脂が、未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、第二相の平均直径が2μm以下となるように混練する工程を含む方法(製造方法(I))である。また、第2の絶縁性樹脂組成物の製造方法は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤を添加して、変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されてなるベース樹脂を含む希釈ポリオレフィンペレットを作製し、その後、作製した希釈ポリオレフィンペレットに、必要に応じて架橋剤を添加する方法である。このとき、ベース樹脂が、未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、第二相の平均直径が2μm以下となるようにドライブレンドする工程を含む(製造方法(II))である。
【0048】
{絶縁性樹脂組成物の製造方法(I)}
絶縁性樹脂組成物の製造方法(I)は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤と、必要に応じて架橋剤を添加して混練することで、変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されたベース樹脂を得る方法である。この方法は、ベース樹脂が、未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、第二相の平均直径が2μm以下となるように混練する工程を含む。
【0049】
(原材料の準備および作製)
本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物の製造方法で原材料として用いられる、ベース樹脂(A)、架橋剤(B)および酸化防止剤(C)は、上述のものを用いることができる。このうち、ベース樹脂(A)に含まれる変性ポリオレフィン樹脂(A1)としては、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなるものを用いる。
【0050】
ここで、極性基を持つ分子によるポリオレフィン樹脂の変性は、例えば上述の未変性ポリオレフィン樹脂と極性基を持つ分子とを、付加反応させるための少量の架橋剤とともに、単軸または二軸の押出機で溶融混練することで行うことができる。このとき、ポリオレフィン樹脂の異常架橋を防ぐため、極性基を持つ分子とともに酸化防止剤を配合することが好ましい。
【0051】
(混練工程)
絶縁性樹脂組成物の製造方法(I)の混練工程では、絶縁性樹脂組成物の原材料である変性ポリオレフィン樹脂(A1)に、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)および酸化防止剤(C)を添加して混練する。このとき、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)および酸化防止剤(C)とともに、架橋剤(B)を添加して混練してもよい。これにより、変性ポリオレフィン樹脂(A1)は、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)によって希釈されてベース樹脂(A)を構成し、極性基の濃度が所望の範囲に調整される。それとともに、ベース樹脂(A)に含まれる変性ポリオレフィン樹脂(A1)と未変性ポリオレフィン樹脂(A2)とが混錬されることで、変性ポリオレフィン樹脂(A2)を含む第一相(海相)の中に、変性ポリオレフィン樹脂(A1)を含む第二相(島相)が存在する、いわゆる海島構造を形成することができ、かつ、第二相(島相)の平均直径を小さくすることができる。
【0052】
ここで、原材料について行う混練は、ベース樹脂(A)および酸化防止剤(C)に、必要に応じて架橋剤(B)を予め配合した原材料を混練してもよい。しかしながら、特に架橋剤(B)を添加する態様では、混練時の熱で架橋剤(B)が熱分解することで引き起こされる、ベース樹脂(A)の異常架橋を抑制するため、ベース樹脂(A)および酸化防止剤(C)を含む原材料を先に混練した後、混練物に架橋剤(B)を添加して混練することが好ましい。
【0053】
絶縁性樹脂組成物の原材料について行う混練は、単軸または二軸の押出機で溶融混練することで行うことができる。特に、必要以上のせん断発熱による樹脂のヤケを防ぐためには、単軸の押出機で溶融混練することがより好ましい。
【0054】
このうち、単軸の押出機に用いられるスクリューとしては、例えば図5に示すように、フルフライトスクリュー42の中間部や先端部に、マドック型やダルメージ型などの樹脂混合部43を設けたスクリュー4を用いることが好ましい。ここで、例えば図6に示すような、一般的なフルフライトスクリュー52を有するスクリュー5を用いると、押出機に挿入された、ベース樹脂(A)および酸化防止剤(C)を少なくとも含む原材料は、スクリューの先端方向に向かって前方に一定速度で押し出されるだけで、十分に混錬することは期待できない。これに対し、本実施形態では、図5に示すようなマドック型やダルメージ型などの樹脂混合部43を設けたスクリュー4を用いることによって、押出機に挿入された原材料を、スクリューの先端まで押し出すまでに原材料に対してせん断力を強く作用させることができるとともに、押し出されるまでに混錬時間も長くなることから、原材料を十分に混錬することができる。
【0055】
ポリオレフィン樹脂を変性させる際の溶融混練の温度は、ポリオレフィン樹脂を溶融してシリンダ内で適度な撹拌が行われる粘度を得るため、140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。他方で、この溶融混練の温度の上限は、異常架橋によるスコーチの発生を抑えるため、300℃以下であることが好ましい。特に、均一な反応を速やかに完了させる観点では、溶融混練の温度の上限は280℃以下であることが好ましい。
【0056】
スクリュー4の樹脂混合部54における混合の方式としては、流動場を複雑にすることで原材料の位置交換を促進して分配混合を促進する位置交換方式を用いることができ、例えばダルメージ型、DIS型またはピン型のスクリューを、樹脂混合部43に用いることができる。また、せん断応力を強く作用させることで原材料の分散混合を促進するバリア・スリット方式も用いることができ、例えばリング型、マドック型、ユニメルト型またはダブルフライト型のスクリューを、樹脂混合部43に用いることができる。また、伸長流を利用することで原材料の分散混合を促進する伸長変形方式も用いることができ、例えばウエーブ型、CTM型、バレルピン型、HM型、スパイレックス型のスクリューを、樹脂混合部43に用いることができる。
【0057】
スクリュー4の混練に使われる部分の大きさは、一般に直径Dに対する長さLの比(L/D比)で表され、このL/D比は18以上であることが好ましい。また、このL/D比の上限は、40未満であることが好ましい。
【0058】
混練工程における混練温度は、均一なペースト状の混練物を得る観点では、ベース樹脂(A)のうち少なくともいずれかの融点より高いことが好ましい。また、特に架橋剤(B)を含めて混練する場合は、架橋剤(B)の熱分解によるベース樹脂(A)の異常架橋を避けるため、混練工程における混練温度は130℃以下であることが好ましい。他方で、架橋剤(B)を含まない場合は、混練工程における混練温度が130℃を超えていてもよい。
【0059】
{絶縁性樹脂組成物の製造方法(II)}
絶縁性樹脂組成物の製造方法(II)は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤を添加して、変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されてなるベース樹脂を含む希釈ポリオレフィンペレットを作製し、その後、作製した希釈ポリオレフィンペレットに架橋剤を添加する方法である。この方法は、ベース樹脂が、未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、第二相の平均直径が2μm以下となるようにドライブレンドする工程を含む。すなわち、絶縁性樹脂組成物の製造方法(II)と、上述した絶縁性樹脂組成物の製造方法(I)とが異なる点は、絶縁性樹脂組成物の製造方法(I)が、ベース樹脂(A)に酸化防止剤(C)および架橋剤(B)を添加して混練する工程を含むのに対し、絶縁性樹脂組成物の製造方法(II)が、混練する工程の代わりに、ベース樹脂(A)に酸化防止剤(C)を添加して、希釈ポリオレフィンペレットを作製し、その後、作製した希釈ポリオレフィンペレットと架橋剤(B)とをドライブレンドする工程を含むことである。
【0060】
(ドライブレンド工程)
ドライブレンド工程は、酸化防止剤(C)を添加して未変性ポリオレフィン樹脂(A2)で希釈した変性ポリオレフィン樹脂(A1)をペレット化し、その後、架橋剤(B)を溶融させてペレットに吸収させるために加熱する工程である。ドライブレンド工程は、ドライブレンドする際に、架橋剤(B)を溶融させてペレットへの吸収を促進できる点で、架橋剤(B)の融点以上に加熱することが好ましく、架橋剤(B)の融点より10℃以上高い温度に加熱することがより好ましい。他方で、ドライブレンドの際の加熱温度を、架橋剤(B)の分解温度以下にすることが、ベース樹脂(A)の異常架橋を防ぐことができる点で好ましい。
【0061】
例えば、架橋剤(B)としてジクミルパーオキサイド(DCP)を用いる場合、DCPを溶融させてペレットに速やかに吸収させるためには、ドライブレンドの際の加熱温度を、融点である40℃以上に加熱することが好ましく、50℃以上に加熱することがより好ましい。他方で、DCPを分解させないためには、DCPの分解温度である130℃以下で、ペレットとのドライブレンドを行うことが好ましい。
【0062】
<電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープ>
本実施形態に係る絶縁テープは、上述の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、電力ケーブルの接続部の被覆に用いられるものである。より具体的には、複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に、必要に応じて内部半導電層を積層した上で巻回し、接続部を被覆する絶縁層を形成するために用いられる。
【0063】
本実施形態に係る絶縁テープのテープ厚みは、接続部に巻回する際の巻回数を少なくするため、30μm以上が好ましく、50μm以上より好ましく、70μm以上がさらに好ましい。他方で、絶縁テープのテープ厚みの上限は、接続部に巻回し易くするため、250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。
【0064】
また、本実施形態に係る絶縁テープのテープ幅は、滑らかな巻回表面を形成するため、3mm以上40mm以下が好ましい。
【0065】
本実施形態に係る絶縁テープは、複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周上に巻回して絶縁層を形成する用途に好適に用いられる。特に、テープを巻回する際のテープの延伸や、ベース樹脂(A)を架橋する際の樹脂の溶融流動を起こさないようにすれば、所望の海島構造を有した状態で、接続部の外周に絶縁層を被覆することも可能である。
【0066】
<絶縁テープの製造方法>
本実施形態に係る絶縁テープの製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述の絶縁性樹脂組成物を押出成形してフィルムを形成し、フィルムの表面温度を、絶縁性樹脂組成物が押し出されてから15秒以内に、未変性ポリオレフィン樹脂の融点以下に冷却する工程と、冷却後のフィルムにスリット加工を施してテープを形成する工程とを有する。
【0067】
絶縁性樹脂組成物から所定の厚さのフィルムを形成する押出成形の手段としては、インフレーション法、Tダイ法、キャスト法、カレンダー法などを用いることができ、その中でもインフレーション法を用いることが好ましい。
【0068】
フィルムを形成する際、ベース樹脂(A)としてポリエチレン樹脂を含む場合には、絶縁性樹脂組成物を押出成形する際のダイの温度を120℃以上にすることが好ましい。これにより、第二相(島相)の平均直径が小さい海島構造が含まれるテープを形成することができる。他方で、架橋剤(B)を添加する場合のダイの温度の上限は、絶縁性樹脂組成物に含まれる架橋剤(B)の分解を低減させるため、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
【0069】
形成されたフィルムについて、絶縁性樹脂組成物が押し出されてから15秒以内、より好ましくは10秒以内に、フィルムの表面温度を未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点以下に冷却する。これにより、形成された絶縁テープに含まれる第二相(島相)の成長が抑えられるため、この絶縁テープで電力ケーブルの接続部を巻回したときにも、所望の海島構造を有することができ、それにより絶縁破壊が起こり難い絶縁層を得ることができる。
【0070】
フィルムを冷却する方法としては、フィルムが最初に接するロールの温度と距離を調整する方法や、フィルムの表面を風冷する方法や、作業環境の温度を下げる方法、フィルムに放冷板を押し当てる方法などが挙げられる。その中でも、特にインフレーション法によってフィルムを形成する場合は、フィルムを膨らませる際に用いられる空気の温度を低く調整する方法が、正確に温度を調整できる点で好ましい。
【0071】
また、絶縁性樹脂組成物から形成されたフィルムは、フィルムを冷却する前後の少なくともいずれかにおいて、所定のテープ幅になるようにスリット加工を行ってテープを成形する。
【0072】
<電力ケーブル(第一の実施形態)>
本実施形態に係る電力ケーブル2は、図2(a)および図2(b)に示されるように、導体21と、導体21の外周上に、第一導電性樹脂からなる内部半導電層22、上述の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、第二相(島相)中の少なくとも変性ポリオレフィン樹脂(A2)、および第一相(海相)中の少なくとも未変性ポリオレフィン樹脂(A1)が架橋されてなる絶縁層23、ならびに、第二導電性樹脂からなる外部半導電層24が、順に積層されて形成された複合被膜20と、を有する。
【0073】
この電力ケーブル2は、図2(b)に示すように、導体21の外周に、内部半導電層22、絶縁層23および外部半導電層24が順に積層されたものであり、これら内部半導電層22、絶縁層23および外部半導電層24が複合被膜20を構成する。この複合被膜20の上に、金属遮蔽層25およびシース26が順に積層されてなることが好ましい。
【0074】
(絶縁層)
このうち、絶縁層23は、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である絶縁層形成用絶縁テープを、内部半導電層22の外周上に巻回および架橋して形成されることが好ましい。絶縁層23は、上述の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、海島構造のうち第二相(島相)中の少なくとも変性ポリオレフィン樹脂(A2)と、第一相(海相)中の少なくとも未変性ポリオレフィン樹脂(A1)が、それぞれ架橋されたものからなる。
【0075】
絶縁層23の厚みは、絶縁特性の観点から、1.5mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましい。他方で、絶縁層23の厚みの上限は、敷設作業性の観点から、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましい。
【0076】
(内部半導電層および外部半導電層)
内部半導電層22および外部半導電層24は、例えば架橋性樹脂および導電性カーボンブラックと、必要に応じて架橋剤を含有する半導電性樹脂組成物を原材料とし、少なくとも架橋性樹脂が架橋されている、第一導電性樹脂および第二導電性樹脂によって、それぞれ構成される。ここで、架橋性樹脂としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体から選択される一種以上の樹脂を挙げることができる。
【0077】
内部半導電層22および外部半導電層24の厚みは、これらの導電特性によって電界の偏りを抑える観点から、それぞれ0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。また、内部半導電層22と外部半導電層24の厚みの上限は、電力ケーブルに通電する際に生じる熱を速やかに放熱する観点から、それぞれ3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0078】
また、内部半導電層22と外部半導電層24の厚みの合計は、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましい。これにより、内部半導電層22の原材料である半導電性樹脂組成物と、絶縁層23の原材料である絶縁性樹脂組成物と、外部半導電層24の原材料である半導電性樹脂組成物とを導体21に積層した後で、絶縁性樹脂組成物を架橋する場合であっても、絶縁性樹脂組成物が冷却され易くなるため、海島構造の第二相(島相)の成長を抑えることができる。他方で、この厚みの合計が大きいと、絶縁性樹脂組成物の冷却が遅くなるので、海島構造の第二相(島相)が成長し易くなる。
【0079】
(金属遮蔽層および防食シース)
外部半導電層24の周囲には、金属遮蔽層および防食シース(ともに図示せず)を設けてもよい。金属遮蔽層としては、例えば鉛や銅、アルミニウムからなるものを用いることができる。また、防食シースとしては、例えば塩化ビニルやポリエチレン、ナイロンからなるものを用いることができる。
【0080】
<電力ケーブルの製造方法>
本実施形態に係る電力ケーブルの製造方法は、例えば図2(a)および図2(b)に示される電力ケーブル2の製造方法であり、導体21の外周に、内部半導電層22、絶縁層23および外部半導電層24を順に積層し、少なくとも絶縁層23を架橋する工程を有するものである。
【0081】
(内部半導電層、絶縁層および外部半導電層の積層)
内部半導電層22の積層は、例えば架橋性樹脂および導電性カーボンブラックと、必要に応じて架橋剤を含有する半導電性樹脂組成物を、導体21の外周に押し出す押出成形によって行うことができる。また、絶縁層23の積層は、上述の絶縁性樹脂組成物を、内部半導電層22の原材料である半導電性樹脂組成物の外周に押出成形することによって行うことができる。また、外部半導電層24の積層は、内部半導電層22と同様の半導電性樹脂組成物を、絶縁層23の原材料である絶縁性樹脂組成物の外周に押出成形することによって行うことができる。これらの内部半導電層22、絶縁層23および外部半導電層24は、導体21の外周に同時に押出成形することによって行ってもよい。
【0082】
押出成形する際の樹脂の温度は、ベース樹脂(A)としてポリエチレン樹脂を含む場合には、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。また、ベース樹脂(A)の架橋反応を抑える観点から、押出成形する際の樹脂の温度は、140℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。
【0083】
ここで、積層された絶縁層23は、導体21および内部半導電層22の外周に押し出されてから15秒以内、より好ましくは10秒以内に、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点以下に冷却する。これにより、絶縁性樹脂組成物に形成されている海島構造における、第二相(島相)の成長が抑えられるため、絶縁破壊が起こり難い絶縁層23を得ることができる。絶縁層23の冷却は、樹脂表面を風冷する、作業環境の温度を下げる、放冷板を押し当てる、などの方法を用いて行うことができる。
【0084】
(絶縁層の架橋)
次いで、半導電性樹脂組成物が架橋剤(B)を含有する場合、積層された絶縁層23に対して、300kPa以上5000kPa以下および140℃以上280℃以下の条件下で加圧加熱処理を施して、絶縁層23に含まれる変性ポリオレフィン樹脂(A1)および未変性ポリオレフィン樹脂(A2)を架橋させる架橋工程を行う。これにより、絶縁層23の機械特性および耐熱性を高めることができる。
【0085】
ここで、架橋工程は、圧力容器で密閉し、ガスを充填して加圧した状態で加圧加熱処理を行う。このとき、架橋工程において加圧加熱処理を行う際の圧力は、300kPa以上が好ましく、400kPa以上がより好ましい。また、架橋工程において圧力容器の密閉部シールの破壊を防ぐ観点から、加圧加熱処理を行う際の圧力は、5000kPa以下が好ましく、1000kPa以下がより好ましい。
【0086】
架橋工程における加熱温度は、架橋剤の作用による架橋反応を促進させるため、140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。他方で、架橋工程における加熱温度は、ポリオレフィン樹脂の熱分解を防ぐ観点から、280℃以下が好ましく、260℃以下がより好ましい。
【0087】
<電力ケーブル(第二実施形態)>
本実施形態に係る電力ケーブル3は、図3(a)に示されるように、接続構造部37を備えている。接続構造部37は、複数の電力ケーブルの導体、ここで図3では2本の導体31a、32aを露出させた端部同士を導体接続した接続部(接合部)371と、接続部371の外周上に、第一導電性樹脂からなる内部半導電層372と、上述の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、第二相(島相)中の少なくとも変性ポリオレフィン樹脂(A1)、および第一相(海相)中の少なくとも未変性ポリオレフィン樹脂(A2)が架橋されてなる絶縁層373、ならびに第二導電性樹脂からなる外部半導電層374が順に積層されて形成された複合被膜370とを有している。
【0088】
この電力ケーブル3は、接続部371の外周に、図3(a)および図3(c)に示すように、内部半導電層372、絶縁層373および外部半導電層374が順に積層されてなり、これらが接続構造部17を構成している。
【0089】
(絶縁層)
接続部371の外周を被覆する絶縁層373の厚みは、絶縁特性の観点から、1.5mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましい。また、この絶縁層373の厚みの上限は、敷設作業性の観点から、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましい。
【0090】
この絶縁層373は、上述の絶縁層形成用絶縁テープを、内部半導電層372の外周上に巻回および架橋して形成されるものであってもよい。本実施形態では、絶縁層形成用絶縁テープから所望の海島構造を有する絶縁層373を形成できるため、簡便な方法によって絶縁層373を形成できるとともに、形成された絶縁層373における絶縁破壊を低減することができる。ここで、絶縁層373の形成に用いられる絶縁層形成用絶縁テープは、上述のとおり、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲であることが好ましい。
【0091】
(内部半導電層および外部半導電層)
接続部371の外周を被覆している内部半導電層372および外部半導電層374は、第一実施形態における内部半導電層および外部半導電層と同様のものを用いることができる。ここで、内部半導電層372と外部半導電層374の厚みは、これらの導電特性によって電界の偏りを抑える観点から、それぞれ0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。また、内部半導電層372と外部半導電層374の厚みの上限は、電力ケーブルに通電する際に生じる熱を速やかに放熱する観点から、それぞれ3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0092】
また、内部半導電層372と外部半導電層374の厚みの合計は、第一実施形態の内部半導電層および外部半導電層と同様に、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましい。
【0093】
(金属遮蔽層および防食シース)
外部半導電層374の周囲には、第一実施形態の電力ケーブルと同様に、金属遮蔽層および防食シース(ともに図示せず)を設けてもよい。
【0094】
<電力ケーブルの接続部外面への絶縁層形成方法>
本実施形態に係る電力ケーブルの接続部外面への絶縁層形成方法は、複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に、上述の絶縁テープを巻回して前記接続部の外面に絶縁層を形成するテープ巻回工程と、前記絶縁層を形成した前記接続部に、300kPa以上5000kPa以下および140℃以上280℃以下の条件下で加圧加熱処理を施して、前記絶縁層に含まれる未変性ポリオレフィン樹脂および変性ポリオレフィン樹脂を架橋させる架橋工程とを含む。
【0095】
図4は、本発明に係る絶縁層形成方法について説明する図である。図4では、銅やアルミニウムなどからなる導体31aの周囲に、内部半導電層32a、絶縁層33a、外部半導電層34a、金属遮蔽層35aおよびシース36aが順に積層された電力ケーブル30aと、導体31bの周囲に、内部半導電層32b、絶縁層33b、外部半導電層34b、金属遮蔽層35bおよびシース36bが順に積層された電力ケーブル30bとを接続する場合を例として示す。
【0096】
(接続部の形成)
接続させる複数の電力ケーブル30a、30bは、図4(a)に示すように、各々端部の導体31a、31bを露出させる。このとき、露出される部分の長さは、それぞれE1、E2で示される。ここで、絶縁層33a、33bが親水性の高い樹脂、特に上述の変性ポリエチレン樹脂(A1)からなる場合には、導体31a、31bとともに絶縁層33a、33bも露出させることが好ましい。露出させた絶縁層33a、33bにも絶縁テープを巻回積層することで、絶縁層33a、33bと絶縁テープとの密着性が高められるため、これらの界面部分における絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0097】
次いで、図4(b)に示すように、導体31a、31bの端部同士を導体接続(接合)する。導体接続の方法としては、例えば溶接を用いることができ、導体接続によって接続部(溶接部)371が形成される。
【0098】
(内部半導電層の形成)
形成された接続部371の外周には、図4(c)に示すように、内部半導電層372を形成してもよい。内部半導電層372は、例えば架橋性樹脂および導電性カーボンブラックと、必要に応じて架橋剤を含有する半導電性の樹脂組成物から形成される。
【0099】
内部半導電層372は、例えば樹脂を成形することで得ることができ、より具体的には、導体31a、31bの表面に樹脂を押し出し成形することで行ってもよく、導体31a、31bを金型に差し込んで金型に樹脂を注入することで行ってもよく、また、樹脂をテープ状に成型して導体31a、31bの表面に巻回してもよい。さらには、接続部371を形成する前の導体31a、31bのいずれかに、加熱により収縮する半導電性のチューブを予め差し込んでおき、接続部371を形成した後で加熱してチューブを収縮させることによって内部半導電層372を形成することもできる。
【0100】
(絶縁層の形成)
次いで、図4(d)に示すように、複数の電力ケーブル30a、30bの導体31a、31bを露出させた端部同士を導体接続して形成される接続部371の外周に形成した内部半導電層372の外周に、接続部371および内部半導電層372の外周全体を覆う範囲にわたって絶縁層373を形成する。
【0101】
絶縁層373の形成方法としては、簡便な方法によって絶縁層373を形成できるため、上述の絶縁性樹脂組成物を原材料とし、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である絶縁テープを導体31a、31bの表面に巻回することで行うことが好ましい。他方で、上述の電力ケーブルの絶縁層(例えば図2(a)の絶縁層23)と同様に、導体31a、31bおよび内部半導電層372の表面に絶縁性樹脂組成物を押し出し成形することで、絶縁層373を形成してもよい。また、内部半導電層372が形成された導体31a、31bを金型に差し込んで金型に絶縁性樹脂組成物を注入することで、絶縁層373を形成してもよい。
【0102】
(外部半導電層の形成)
次いで、絶縁層373の周囲に、図4(e)に示すように、外部半導電層374を形成する。外部半導電層374は、内部半導電層372と同様に、半導電性の樹脂組成物から形成される。
【0103】
外部半導電層374は、内部半導電層372と同様に、例えば樹脂を成形することで得ることができる。また、接続部371を形成する前の導体31a、31bに加熱により収縮する半導電性のチューブを差し込んでおき、接続部371を形成した後で加熱してチューブを収縮させてもよい。
【0104】
(架橋工程)
次いで、絶縁層373を構成する樹脂組成物が架橋剤(B)を含有する場合、絶縁層373を形成した接続部371に、300kPa以上5000kPa以下および140℃以上280℃以下の条件下で加圧加熱処理を施して、絶縁層373に含まれるポリエチレンを架橋させる架橋工程を行う。これにより、変性ポリエチレン樹脂(A1)や未変性ポリエチレン樹脂(A2)が架橋することで、絶縁層373を構成している樹脂材料の機械特性および耐熱性を高めることができる。
【0105】
ここで、架橋工程は、圧力容器で密閉し、ガスを充填して加圧した状態で加圧加熱処理を行う。このとき、架橋工程において加圧加熱処理を行う際の圧力は、300kPa以上が好ましく、400kPa以上がより好ましい。また、架橋工程において圧力容器の密閉部シールの破壊を防ぐ観点から、加圧加熱処理を行う際の圧力は、5000kPa以下が好ましく、1000kPa以下がより好ましい。
【0106】
架橋工程における加熱温度は、架橋剤の作用による架橋反応を促進させるため、140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。他方で、架橋工程における加熱温度は、ポリエチレン樹脂の熱分解を防ぐ観点から、280℃以下が好ましく、260℃以下がより好ましい。
【0107】
(金属遮蔽層および防食シースの形成)
架橋後の絶縁層373の周囲には、金属遮蔽層および防食シース(ともに図示せず)を設けてもよい。金属遮蔽層としては、例えば鉛や銅、アルミニウムからなるものを用いることができる。また、防食シースとしては、例えば塩化ビニルやポリエチレン、ナイロンからなるものを用いることができる。
【実施例】
【0108】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、本発明例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0109】
[本発明例1]
(絶縁性樹脂組成物の作製)
ベース樹脂(A)として、変性ポリオレフィン樹脂(A1)である無水マレイン酸変性ポリエチレン「SCONA TSPE 1112 GALL」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、融点115〜132℃、比重0.89〜0.94)5質量部と、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)である低密度ポリエチレン「ZF30R」(日本ポリエチレン株式会社製、融点110℃、比重0.92)95質量部をそれぞれ用いて、これらの含有量の合計を100質量部とした。
【0110】
これらのベース樹脂(A)100質量部に、酸化防止剤(C)として、リン系酸化防止剤である「イルガフォスP−EPQ」(テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、BASF株式会社製)0.2質量部を加え、フルフライトスクリューの中間部にマドック型の樹脂混合部を有するスクリュー(IKG株式会社製、L/D比=25)を設けた単軸押し出し機を用いて、押出し温度(混練温度)125℃で溶融混練してペレット化した。
【0111】
得られたペレットに、架橋剤(B)である「パークミルD」(ジクミルパーオキサイド(DCP)、日本油脂株式会社製、融点40℃、分解温度130℃)1.7質量部を90℃でドライブレンドし、溶融したDCPをペレットに吸収させることで、絶縁性樹脂組成物(融点=110℃)を得た。
【0112】
(評価用シートの形成)
得られた絶縁性樹脂組成物について、Tダイ法により、ダイの温度を130℃にして、フィルム厚さが0.3mmとなるように押出成形を行った。このとき、絶縁性樹脂組成物が押し出されてから10秒後に、フィルムの表面温度が未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点以下となるように、フィルムが最初に接するロールの温度と距離を調整してフィルムを冷却した。
【0113】
得られたフィルムを、170℃の温度および5000kPaの圧力で30分間プレスすることで加圧加熱処理を施して、変性ポリオレフィン樹脂(A1)および未変性ポリオレフィン樹脂(A2)を架橋させることにより、厚さ0.3mmの樹脂架橋体からなる評価用シートを得た。
【0114】
得られた評価用シートをスライスしてRuOを用いて金属染色を行った後、透過型電子顕微鏡(TEM、日立ハイテクノロジーズ社製HT7700)を用いて、樹脂が有している海島構造を撮影した。海島構造の撮影は、顕微鏡の倍率を10000倍に設定して、樹脂の断面から海島構造が分かるようにコントラストを調整して行った。撮影された画像について、画像解析用ソフトウェアImageJを用いて解析し、画像に含まれる島相の平均直径を求めた。ここで、島相の直径は、ImageJによる画像処理を用いて、全周(360度)にわたって島相の大きさを測定したときの最大値と最小値をそれぞれ最大寸法および最小寸法として、これら最大寸法と最小寸法の算術平均値を求めた。また、撮影された画像に含まれる、任意の縦10μm×横10μmの観測範囲について、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数を求め、かつ、すべての島相の占める面積の和を求めた。なお、お互いの粒子間距離が平均粒径の1/50以上離れている場合、互いに独立した島であるとして解析を行った。
【0115】
このようにして求められる、評価用シートの海島構造における島相の平均直径は、1μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は6個であり、すべての島相の占める面積の和は5μmであった。
【0116】
[本発明例2]
ベース樹脂(A)100質量部に、酸化防止剤(C)として、フェノール系酸化防止剤である「イルガノックス1010」(ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を用いて0.2質量部加えた以外は、本発明例1と同様にして、樹脂架橋体からなる評価用シートを得た。得られた評価用シートについて、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、1μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は5個であり、すべての島相の占める面積の和は5μmであった。
【0117】
[本発明例3]
ベース樹脂(A)として、変性ポリエチレン(A1)であるエチレン−メタクリル酸共重合体「ハイミラン1705Zn」(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、メタクリル酸含有量15質量%、融点91℃、比重0.95)5質量部と、未変性ポリエチレン(A2)である低密度ポリエチレン「ZF30R」(日本ポリエチレン株式会社製、融点110℃、比重0.92)95質量部をそれぞれ用いて合計を100質量部とした以外は、本発明例1と同様にして絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0118】
得られた絶縁性樹脂組成物について、絶縁性樹脂組成物が押し出されてから3秒後に、フィルムの表面温度が未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点以下となるようにフィルムを冷却した以外は、本発明例1と同様にして樹脂架橋体からなる評価用シートを得た。得られた評価用シートについて、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、2μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は5個であり、すべての島相の占める面積の和は6μmであった。
【0119】
[本発明例4]
ベース樹脂(A)として、変性ポリオレフィン樹脂(A1)である無水マレイン酸変性ポリプロピレン「ユーメックス100TS」(三洋化成株式会社製、融点136℃、比重0.89)30質量部と、未変性ポリオレフィン樹脂(A2)であるポリプロピレン(融点167℃、比重0.925、メルトインデックス(MI)0.8)70質量部をそれぞれ用いて、これらの含有量の合計を100質量部とした。
【0120】
これらのベース樹脂(A)100質量部に、酸化防止剤(C)として、リン系酸化防止剤である「イルガフォスP−EPQ」(テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、BASF株式会社製)0.2質量部を加え、フルフライトスクリューの中間部にマドック型の樹脂混合部を有するスクリュー(IKG株式会社製、L/D比=28)を設けた単軸押し出し機を用いて、押出し温度(混練温度)220℃で溶融混練してペレット化して、絶縁性樹脂組成物(融点=164℃)を得た。得られた絶縁性樹脂組成物について、Tダイ法により、本発明例1と同様に押出成形を行い、得られたフィルムを評価用シートとした。
【0121】
得られた評価用シートについて、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、2μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は20個であり、すべての島相の占める面積の和は20μmであった。
【0122】
[比較例1]
ベース樹脂(A)として、変性ポリエチレン(A1)を用いずに、未変性ポリエチレン(A2)である低密度ポリエチレン「ZF30R」(日本ポリエチレン株式会社製、融点110℃、比重0.92)を用いて、その含有量を100質量部とした点と、原材料を溶融混練する際のスクリューとして、樹脂混合部を有しないフルフライトスクリュー(IKG株式会社製、L/D比=25)を用いた点を除いては、本発明例1と同様にして、樹脂架橋体からなる評価用シートを得た。得られた評価用シートには、海島構造は形成されていなかった。
【0123】
[比較例2]
原材料を溶融混練する際のスクリューとして、樹脂混合部を有しないフルフライトスクリュー(IKG株式会社製、L/D比=16)を用いた点を除いては、本発明例1と同様にして、樹脂架橋体からなる評価用シートを得た。得られた評価用シートについて、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、13μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は0個であり、すべての島相の占める面積の和は25μmであった。
【0124】
[比較例3]
原材料を溶融混練する際のスクリューとして、樹脂混合部を有しないフルフライトスクリュー(IKG株式会社製、L/D比=25)を用いた点と、絶縁性樹脂組成物を押出成形する際、絶縁性樹脂組成物が押し出されてから18秒後に、フィルムの表面温度が未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点以下となるように、フィルムが最初に接するロールの温度と距離を調整してフィルムを冷却した点を除いては、本発明例1と同様にして樹脂架橋体からなる評価用シートを得た。得られた評価用シートについて、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、3μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は4個であり、すべての島相の占める面積の和は4μmであった。
【0125】
[本発明例5]
絶縁層を形成する絶縁性樹脂組成物として、本発明例1で得られた絶縁性樹脂組成物を用いるとともに、内部半導電層および外部半導電層を形成する半導電性樹脂組成物として、架橋性樹脂、導電性カーボンブラックおよび架橋剤を含有する樹脂組成物を用いた。
【0126】
導体断面積が2000mm、長さが25mの導体の外周面に、内部半導電層を形成する半導電性樹脂組成物と、絶縁層を形成する本発明例1の絶縁性樹脂組成物と、外部半導電層を形成する半導電性樹脂組成物とを、3層同時に押出成形した。このとき、内部半導電層の樹脂厚みを1.5mmに、絶縁層の樹脂厚みを15mmに、外部半導電層の樹脂厚みを1.5mmになるようにして、ダイの温度を128℃にした。また、これらの樹脂が押し出されてから10秒後に、押出成形された樹脂の表面温度が未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点以下となるように、これらの樹脂を冷却した。
【0127】
次いで、窒素雰囲気下で784kPaの圧力および220℃の加熱温度で、2時間にわたり加熱処理を行うことで、絶縁層を形成する本発明例1の絶縁性樹脂組成物を架橋させるとともに、導体の外周面に、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を形成した。
【0128】
形成された外部半導電層の周囲に、金属遮蔽層および防食シースを設けることで、図2(a)および(b)に示す構造の電力ケーブル2を得た。得られた電力ケーブルの絶縁層23を評価用シートとして、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、1μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は10個であり、すべての島相の占める面積の和は11μmであった。
【0129】
[本発明例6]
内部半導電層を形成する半導電性樹脂組成物と、絶縁層を形成する本発明例1で得られた絶縁性樹脂組成物と、外部半導電層を形成する半導電性樹脂組成物とを、3層同時に押出成形する際、内部半導電層の樹脂厚みを2mmに、外部半導電層の樹脂厚みを2.5mmにした以外は、本発明例5と同様にして電力ケーブルを得た。得られた電力ケーブルの絶縁層を評価用シートとして、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、2μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は7個であり、すべての島相の占める面積の和は8μmであった。
【0130】
[本発明例7]
本発明例1で得られた樹脂組成物を用いて、絶縁テープを作製した。ここで、絶縁性樹脂組成物の押出成形にはインフレーション製膜機(PLACO社製)を用い、押出成形する際のダイの温度を130℃にして、フィルム厚さが100μm、押出から10秒後のフィルムの表面温度が未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点以下となるような条件で、フィルムを形成した。得られたフィルムに対して、テープ幅20mmになるようにスリット加工を行うことで、フィルムと同じ100μmの厚さを有する絶縁テープを得た。得られた絶縁テープを評価用シートとして、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、1μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は6個であり、すべての島相の占める面積の和は6μmであった。
【0131】
[比較例4]
本発明例2と同様の絶縁性樹脂組成物を用いた点と、原材料を溶融混練する際のスクリューとして、樹脂混合部を有しないフルフライトスクリュー(IKG株式会社製、L/D比=24)を用いた点と、絶縁性樹脂組成物を押出成形する際、押出から16秒後のフィルムの表面温度が未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点以下となるような条件で、フィルムを形成した点以外は、本発明例7と同様にして絶縁テープを得た。得られた絶縁テープを評価用シートとして、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、5μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は2個であり、すべての島相の占める面積の和は15μmであった。
【0132】
[本発明例8]
本発明例5で作製した電力ケーブルを2本用い、図4(a)に示すように、切削加工によって各々の端部の導体31a、31bを露出させた後、外部半電導層となる厚さ1mmの収縮チューブに電力ケーブルの一方を差し込んだ。次いで、図4(b)に示すように、導体31a、31bの端部同士を導体接続して接続部371を形成した後、図4(c)に示すように、導体31a、31bが露出している部分を覆うように、半導電性テープを巻回して厚さ1mmの内部半導電層372を形成した。そして、形成された内部半導電層372の外周をさらに覆うように、本発明例7の絶縁テープを巻回して厚さ20mmの絶縁層373を積層し、その上に上述の収縮チューブで覆って外部半導電層374を形成した。
【0133】
次いで、窒素雰囲気下で784kPaの圧力および220℃の加熱温度で、3時間にわたりこれらの加熱処理を行うことで、絶縁テープに含まれる絶縁性樹脂組成物を架橋させ、それにより導体の外周面に内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を形成した。
【0134】
形成された外部半導電層の周囲に、金属遮蔽層および防食シースを設けることで、図3(a)〜(c)に示す構造の、1本に繋げられた電力ケーブルを得た。得られた電力ケーブルの接続部371を被覆している絶縁層372を評価用シートとして、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、1μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は
8個であり、すべての島相の占める面積の和は7μmであった。
【0135】
[比較例5]
原材料を溶融混練する際のスクリューとして、樹脂混合部を有しないフルフライトスクリュー(IKG株式会社製、L/D比=24)を用いた点と、絶縁性樹脂組成物を押出成形する際、押出から16秒後のフィルムの表面温度が未変性ポリオレフィン樹脂(A2)の融点以下となるような条件で、フィルムを形成した点以外は、本発明例7と同様にして絶縁テープを作製し、この絶縁テープを用いて本発明例8と同様にして2本の電力ケーブルを1本に繋げた。得られた電力ケーブルの接続部を被覆している絶縁層を評価用シートとして、本発明例1と同じ方法で求められる、海島構造における島相の平均直径は、6μmであった。また、縦10μm×横10μmの観測範囲における、直径が0.5μm〜2.0μmの島相の個数は1個であり、すべての島相の占める面積の和は21μmであった。
【0136】
[電界増倍率の評価]
上記の本発明例および比較例に係る評価用シート、絶縁テープおよび電力ケーブルの絶縁層(本発明例8、比較例5については、電力ケーブルの接続部を被覆している絶縁層)の電界増倍率について、パルス静電応力法により評価した。
【0137】
測定対象となる評価用シート、絶縁テープおよび絶縁層のサンプルを縦横50mm、厚さ0.3mmに切り出し、空間電荷測定装置(ファイブラボ株式会社製、標準PEA−ST)の上部電極と下部電極の間に挟み、温度90℃で負極性30kV/mmの直流電界をこの架橋体シートに48時間連続印加して、印加電界に対する測定される最大測定電界の比を「電界増倍率」とした。ここで、本発明例9の絶縁テープは、厚さ0.3mm、縦横50mmに成形して電界増倍率を求めた。ここで得られる「電界増倍率」は、蓄積される空間電荷量が小さいことが好ましいので、数値が小さいことが好ましく、130%以下であるとより好ましい。結果を表1および表2に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
表1および表2の評価結果から、極性基を持つ特定の分子によって変性されている変性ポリオレフィン樹脂、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤を少なくとも含有し、かつ、島相の平均直径が本発明の適正範囲内である海島構造を有する本発明例1〜8の評価用シート、絶縁テープおよび絶縁層は、電界増倍率が130%以下であることが確認された。
【0141】
上記結果より、本発明例1〜8の評価用シート、絶縁テープおよび絶縁層は、絶縁破壊が起こり難いことが確認された。
【0142】
これに対し、比較例1の評価用シートでは、海島構造を有しないため、電界増倍率が高く、合格レベルを満たさなかった。
【0143】
また、比較例2〜3の評価用シート、比較例4の絶縁テープおよび比較例5の電力ケーブルの接続部を被覆している絶縁層では、海島構造のうち島相の平均直径が2μm超の大きな値であったため、電界増倍率が高く、合格レベルを満たさなかった。
【符号の説明】
【0144】
1 絶縁性樹脂組成物
11 第一相(海相)
12 第二相(島相)
2、3、30a、30b 電力ケーブル
21、31a、31b 導体
22、32a、32b 内部導電体層
23、33a、33b 絶縁層
24、34a、34b 外部半導電層
25、35a、35b 金属遮蔽層
26、36a、36b シース
20、370 複合被膜
37 接続構造部
371 接続部
372 内部半導電層
373 絶縁層
374 外部半導電層
4、5 スクリュー
41、51 押出機への取付部
42、52 フルフライトスクリュー
43 樹脂混合部
E1、E2 電力ケーブルの導体が露出する部分の長さ
D スクリューの直径
L スクリューの長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6

【手続補正書】
【提出日】2020年12月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの絶縁層に用いられる絶縁性樹脂組成物であって、
極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、架橋剤と、酸化防止剤とを少なくとも含み、
前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、
前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である、絶縁性樹脂組成物。
【請求項2】
電力ケーブルの絶縁層に用いられる絶縁性樹脂組成物であって、
極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、
前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、
前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下であり、
前記第二相中の少なくとも前記変性ポリオレフィン樹脂、および前記第一相中の少なくとも前記未変性ポリオレフィン樹脂が架橋されてなる、絶縁性樹脂組成物。
【請求項3】
極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である絶縁性樹脂組成物を原材料とし、
テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である、電力ケーブルの絶縁層形成用絶縁テープ。
【請求項4】
導体と、
前記導体の外周上に、
第一導電性樹脂からなる内部半導電層、
極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である絶縁性樹脂組成物を原材料とし、前記第二相中の少なくとも前記変性ポリオレフィン樹脂、および前記第一相中の少なくとも前記未変性ポリオレフィン樹脂が架橋されてなる絶縁層、ならびに
第二導電性樹脂からなる外部半導電層
が順に積層されて形成された複合被膜と
を有する、電力ケーブル。
【請求項5】
複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部と、
前記接続部の外周上に、
第一導電性樹脂からなる内部半導電層、
極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である絶縁性樹脂組成物を原材料とし、前記第二相中の少なくとも前記変性ポリオレフィン樹脂、および前記第一相中の少なくとも前記未変性ポリオレフィン樹脂が架橋されてなる絶縁層、ならびに
第二導電性樹脂からなる外部半導電層
が順に積層されて形成された複合被膜と
を有する接続構造部を備える、電力ケーブル。
【請求項6】
前記絶縁層は、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である絶縁層形成用絶縁テープを、前記内部半導電層の外周上に巻回および架橋して形成される、請求項に記載の電力ケーブル。
【請求項7】
前記内部半導電層と前記外部半導電層の厚みの合計が5mm以下である、請求項からのいずれかに記載の電力ケーブル。
【請求項8】
極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤を添加し、その後、前記変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されたベース樹脂を得るとともに、前記ベース樹脂が、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下となるように混練する工程を含む、絶縁性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなる変性ポリオレフィン樹脂に、未変性ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤を添加して、前記変性ポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂で希釈されてなるベース樹脂を含む希釈ポリオレフィンペレットを作製し、その後、作製した前記希釈ポリオレフィンペレットに架橋剤を添加し、前記ベース樹脂が、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下となるようにドライブレンドする工程を含む、絶縁性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
電力ケーブルの絶縁層形成用絶縁テープの製造方法であって、
極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である絶縁性樹脂組成物を押出成形してフィルムを形成し、前記フィルムの表面温度を、前記絶縁性樹脂組成物が押し出されてから15秒以内に、前記未変性ポリオレフィン樹脂の融点以下に冷却する工程と、
前記フィルムにスリット加工を施してテープを形成する工程と
を有する、絶縁層形成用絶縁テープの製造方法。
【請求項11】
極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である絶縁性樹脂組成物を用いて、複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に絶縁層を形成し、
前記絶縁層を形成した前記接続部に、300kPa以上1000kPa以下および140℃以上280℃以下の条件下で加圧加熱処理を施して、前記絶縁層に含まれる前記ベース樹脂の未変性ポリオレフィン樹脂および変性ポリオレフィン樹脂を架橋させる工程を含む、電力ケーブルの接続部外面への絶縁層形成方法。
【請求項12】
前記接続部の外周への前記絶縁層の形成は、前記絶縁性樹脂組成物を原材料とし、テープ厚みが30μm以上250μm以下の範囲であり、テープ幅が3mm以上40mm以下の範囲である絶縁層形成用絶縁テープを、前記接続部の外面に巻回して行う、請求項11に記載の絶縁層形成方法。
【請求項13】
導体の外周に、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を順に積層し、少なくとも前記絶縁層を架橋する工程を有する電力ケーブルの製造方法であって、
前記絶縁層の積層は、極性基を持つ分子によって変性された変性ポリオレフィン樹脂、および未変性ポリオレフィン樹脂を有するベース樹脂と、酸化防止剤とを少なくとも含み、前記変性ポリオレフィン樹脂は、極性基を持つ分子である不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸無水物誘導体から選択される少なくとも1種によって変性されてなり、前記ベース樹脂は、前記未変性ポリオレフィン樹脂を含む第一相の中に、前記変性ポリオレフィン樹脂を含む第二相が存在する、いわゆる海島構造を有し、かつ、前記第二相の平均直径が2μm以下である絶縁性樹脂組成物を、前記内部半導電層の外周に押し出すことで行い、
積層された前記絶縁層の表面温度を、前記内部半導電層の外周に押し出されてから15秒以内に、前記未変性ポリオレフィン樹脂の融点以下に冷却し、
前記絶縁層の架橋工程は、前記絶縁層に300kPa以上1000kPa以下および140℃以上280℃以下の条件下で加圧加熱処理を施して、前記絶縁層に含まれる前記ベース樹脂の未変性ポリオレフィン樹脂および変性ポリオレフィン樹脂を架橋させることによって行う、電力ケーブルの製造方法。
【国際調査報告】