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再表2020-217281複合材料積層構造体の設計方法、複合材料積層構造体の製造方法、及び複合材料積層構造体の設計装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年10月29日
【発行日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】複合材料積層構造体の設計方法、複合材料積層構造体の製造方法、及び複合材料積層構造体の設計装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20210409BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20210409BHJP
【FI】
   B32B33/00
   B32B5/28 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2019-552639(P2019-552639)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年4月22日
(11)【特許番号】特許第6625306号(P6625306)
(45)【特許公報発行日】2019年12月25日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】高垣 和規
(72)【発明者】
【氏名】関根 一史
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 壮平
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AD11A
4F100AD11B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK53A
4F100AK53B
4F100BA05
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DH02A
4F100DH02B
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ82
4F100JA02A
4F100JA02B
4F100JA20A
4F100JA20B
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JL02
(57)【要約】
複合材料積層構造体の設計方法は、複数の層が積層された複合材料積層構造体の物性値と、複合材料積層構造体の積層構成と、の組合せをそれぞれ含む複数のデータの機械学習を行って、物性値と積層構成との関係式を得る機械学習ステップと、関係式と物性値の目標値とに基づいて、目標値が得られる積層構成の情報である積層構成情報を算出する積層構成情報算出ステップと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層された複合材料積層構造体の物性値と、前記複合材料積層構造体の積層構成と、の組合せをそれぞれ含む複数のデータの機械学習を行って、前記物性値と前記積層構成との関係式を得る機械学習ステップと、
前記関係式と前記物性値の目標値とに基づいて、前記目標値が得られる前記積層構成の情報である積層構成情報を算出する積層構成情報算出ステップと、
を備える複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項2】
前記複数の層のそれぞれは、ある繊維配向角度で配向した繊維を有しており、
前記積層構成情報は、繊維配向角度毎の必要積層数の情報を含む請求項1に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項3】
前記積層構成情報は、前記複数の層の積層順序の情報を含んでおり、
前記積層構成情報算出ステップでは、前記複数の層のうち互いに隣接する2つの層の間の繊維配向角度差が45°以下となるように前記積層構成情報が生成される請求項2に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項4】
前記繊維配向角度毎の前記必要積層数を離散化により非負整数にする離散化ステップをさらに備える請求項2又は請求項3に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項5】
前記離散化ステップでは、全ての前記繊維配向角度の前記必要積層数を区間内の前記必要積層数の和が1となるように複数の区間に分割し、前記複数の区間のそれぞれにおける前記繊維配向角度の加重平均を前記複数の区間のそれぞれの代表的な前記繊維配向角度とする請求項4に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項6】
前記物性値は、縦弾性率、横弾性率、ポアソン比及び熱膨張率のうちの少なくとも2つを含む請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項7】
前記複数のデータのそれぞれの前記物性値は、理論計算、数値計算及び実測のうちの少なくとも1つにより得られている請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項8】
前記複数の層は、互いに材料の異なる2つ以上の層を含んでいる請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項9】
前記複合材料積層構造体の積層数は10層以上である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計方法を含む複合材料積層構造体の製造方法であって、
前記積層構成情報に基づいて中間材料を積層する材料積層ステップと、
前記中間材料を一体化させ、前記複合材料積層構造体を成形する成形ステップと、
をさらに備える複合材料積層構造体の製造方法。
【請求項11】
複数の層が積層された複合材料積層構造体の物性値と、前記複合材料積層構造体の積層構成と、の組合せをそれぞれ含む複数のデータの機械学習を行って、前記物性値と前記積層構成との関係式を得る機械学習部と、
前記関係式と前記物性値の目標値とに基づいて、前記目標値が得られる前記積層構成の情報である積層構成情報を算出する積層構成情報算出部と、
を備える複合材料積層構造体の設計装置。
【請求項12】
前記複数のデータのそれぞれが変数として入力される変数入力部と、
前記目標値が入力される目標物性値入力部と、
前記積層構成情報を表示する積層構成情報表示部と、
をさらに備える請求項11に記載の複合材料積層構造体の設計装置。
【請求項13】
前記複数の層のそれぞれは、ある繊維配向角度で配向した繊維を有しており、
前記積層構成情報は、繊維配向角度毎の必要積層数の情報を含んでおり、
前記繊維配向角度毎の前記必要積層数を離散化により非負整数にする離散化部をさらに備える請求項11又は請求項12に記載の複合材料積層構造体の設計装置。
【請求項14】
前記関係式を記憶する関係式記憶部をさらに備える請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計装置。
【請求項15】
前記積層構成情報を記憶する積層構成情報記憶部をさらに備える請求項11〜請求項14のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層が積層された複合材料積層構造体の設計方法、複合材料積層構造体の製造方法、及び複合材料積層構造体の設計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学観測衛星では、判読性に優れ、画質の安定した高分解能画像を撮影できることが望まれている。そのため、光学観測衛星には、安定した光学観測性能を長期にわたって軌道上で維持可能なことが求められる。そのような光学観測衛星の実現には、大型鏡と、それを支える高剛性で寸法安定性の高い支持構造体と、が必要になる。
【0003】
高剛性で寸法安定性の高い支持構造体の1つとして、繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)製パイプが知られている。ところが、所望の物性値を有するFRP製パイプを製造するためには、FRP製パイプの積層構成についての煩雑な設計が必要であった。
【0004】
特許文献1には、FRP製パイプの設計支援方法が記載されている。この設計支援方法では、FRP製パイプの任意の断面部位における肉厚、曲げ剛性及びねじれ剛性の目標値と、これらの目標値の許容値と、マンドレルの外径と、がコンピューターに入力され、さらに、面状部材の種類及び面状部材の繊維配向角が指定される。これにより、許容値を含む目標値を満足する面状部材の積層構成、パイプの肉厚、パイプの曲げ剛性及びパイプのねじれ剛性がコンピューターに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−18941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の設計支援方法では、FRP製パイプの要求仕様と面状部材の積層構成等との関係式がコンピューターに予め入力されている必要がある。しかしながら、上記のような関係式には一般的なものが存在しない場合がある。したがって、仮に特許文献1の設計支援方法を用いたとしても、複合材料積層構造体の積層構成の設計は煩雑になってしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、複合材料積層構造体の積層構成の設計の煩雑さを低減できる複合材料積層構造体の設計方法、複合材料積層構造体の製造方法、及び複合材料積層構造体の設計装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る複合材料積層構造体の設計方法は、複数の層が積層された複合材料積層構造体の物性値と、前記複合材料積層構造体の積層構成と、の組合せをそれぞれ含む複数のデータの機械学習を行って、前記物性値と前記積層構成との関係式を得る機械学習ステップと、前記関係式と前記物性値の目標値とに基づいて、前記目標値が得られる前記積層構成の情報である積層構成情報を算出する積層構成情報算出ステップと、を備える。
本発明に係る複合材料積層構造体の製造方法は、本発明に係る複合材料積層構造体の設計方法を含む複合材料積層構造体の製造方法であって、前記積層構成情報に基づいて中間材料を積層する材料積層ステップと、前記中間材料を一体化させ、前記複合材料積層構造体を成形する成形ステップと、をさらに備える。
本発明に係る複合材料積層構造体の設計装置は、複数の層が積層された複合材料積層構造体の物性値と、前記複合材料積層構造体の積層構成と、の組合せをそれぞれ含む複数のデータの機械学習を行って、前記物性値と前記積層構成との関係式を得る機械学習部と、前記関係式と前記物性値の目標値とに基づいて、前記目標値が得られる前記積層構成の情報である積層構成情報を算出する積層構成情報算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複合材料積層構造体の積層構成の設計の煩雑さを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係る複合材料積層構造体の設計方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図2】本発明の実施の形態1に係る複合材料積層構造体の設計方法の積層構成情報算出ステップで算出される積層構成情報の一例をグラフ化して示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る複合材料積層構造体の設計方法に用いられる物性値−積層構成データベースの構成を示す概念図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る複合材料積層構造体の設計方法を用いて製造される複合材料積層構造体の構成を示す模式図である。
図5】各データの物性値と、当該物性値を関係式に入力して得られた積層構成情報からCLTを用いて計算された物性値と、の関係を示すグラフである。
図6】各データの物性値と、当該物性値を関係式に入力して得られた積層構成情報からCLTを用いて計算された物性値と、の関係を示すグラフである。
図7】本発明の実施の形態1の変形例に係る複合材料積層構造体の設計方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態2に係る複合材料積層構造体の製造方法の処理又は工程の流れを示すフローチャートである。
図9】本発明の実施の形態2に係る複合材料積層構造体の製造方法における成形ステップを模式的に示す図である。
図10】本発明の実施の形態3に係る複合材料積層構造体の設計装置の構成を示すブロック図である。
図11】本発明の実施の形態3の変形例に係る複合材料積層構造体の設計装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る複合材料積層構造体の設計方法について説明する。複合材料積層構造体は、複数の層が積層された複合材料により形成される構造体である。複合材料積層構造体は、例えば、光学観測衛星において大型鏡を支持する支持構造体に用いることができる。本実施の形態では、複合材料としてFRPが用いられる。複合材料積層構造体が備える複数の層のそれぞれは、ある特定の繊維配向角度で配向した繊維を有している。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法の処理の流れを示すフローチャートである。図1に示す処理は、プロセッサ、記憶装置、入出力インターフェース回路などを備えたコンピューターにおいて、記憶装置に記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより行われる。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法は、機械学習ステップ(ステップS1)と積層構成情報算出ステップ(ステップS2)とを有している。本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法が実行される際には、物性値−積層構成データベース10が用いられる。物性値−積層構成データベース10には、複数のデータが記憶されている。複数のデータのそれぞれは、複合材料積層構造体の物性値と複合材料積層構造体の積層構成との組合せを含んでいる。
【0014】
ステップS1の機械学習ステップでは、物性値−積層構成データベース10に記憶されているデータの機械学習が行われる。これにより、複合材料積層構造体の物性値と複合材料積層構造体の積層構成との関係式20が得られる。関係式20は、ある物性値が入力されると積層構成を出力するものである。物性値−積層構成データベース10内の1組のデータにおいて、物性値及び積層構成のそれぞれは、複数の要素を持つことができる。物性値の要素としては、縦弾性率、横弾性率、ポアソン比、熱膨張率などがある。積層構成の要素としては、繊維配向角度毎の必要積層数などがある。コンピューターの操作者は、物性値及び積層構成のそれぞれの要素を必要に応じて指定することができる。
【0015】
ステップS2の積層構成情報算出ステップでは、操作者により入力される物性値の目標値21が、機械学習ステップで得られた関係式20に入力される。これにより、積層構成情報22が算出される。積層構成情報22は、複合材料積層構造体において目標値21が得られる理論的な積層構成の情報である。物性値の目標値21は、複合材料積層構造体の要求仕様に基づいて設定される。
【0016】
図2は、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法の積層構成情報算出ステップで算出される積層構成情報22の一例をグラフ化して示す図である。横軸は繊維配向角度[deg]を表しており、縦軸は必要積層数を表している。図2に示すように、積層構成情報算出ステップで算出される積層構成情報22には、繊維配向角度毎の必要積層数の情報が含まれている。ここで、積層構成情報算出ステップのアルゴリズムによっては、繊維配向角度毎の必要積層数が0以上の整数(以下、「非負整数」という)にならない場合がある。このため、積層構成情報算出ステップの後には、必要積層数を非負整数にする離散化ステップが実行されるようにしてもよい。離散化ステップについては後述する。
【0017】
以上のような工程によって複合材料積層構造体が設計されることにより、所望の物性値が得られる理論的な積層構成を容易に決定することができるため、複合材料積層構造体の設計効率を向上させることができる。
【0018】
図3は、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法に用いられる物性値−積層構成データベース10の構成を示す概念図である。図3に示すように、物性値−積層構成データベース10には、複数のデータのそれぞれにおいて積層構成のデータと関連付けられている物性値のデータとして、理論計算物性値データ11、数値計算物性値データ12及び実測物性値データ13のうち少なくとも1種が格納されている。
【0019】
理論計算物性値データ11は、複合材料積層構造体の積層構成に基づく理論計算によって得られるデータである。理論計算物性値データ11は、例えば古典積層理論(CLT;Clasical Lamination Theory)のデータ作成ステップにより作成される。数値計算物性値データ12は、複合材料積層構造体の積層構成に基づく数値計算によって得られるデータである。数値計算物性値データ12は、例えば有限要素解析(FEA;Finite Element Analysis)のデータ作成ステップで作成される。実測物性値データ13は、複合材料積層構造体の物性値の実測によって得られるデータである。
【0020】
物性値−積層構成データベース10内の1組のデータは、積層構成のデータと、当該積層構成に対応する理論計算物性値データ11、数値計算物性値データ12又は実測物性値データ13と、により構成されている。物性値−積層構成データベース10には、100組以上のデータが格納されていることが望ましい。
【0021】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法により得られる計算結果の一例について説明する。図4は、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法を用いて製造される複合材料積層構造体30の構成を示す模式図である。図4に示す複合材料積層構造体30は、平板状の形状を有している。複合材料積層構造体30は、第1層31、第2層32、第3層33及び第4層34を含む複数の層が積層された構成を有している。ここで、第1層31及び第2層32は互いに隣接しており、第3層33及び第4層34は互いに隣接している。複数の層のそれぞれは、2種の材料種のうちのいずれか1種により形成されている。また、複数の層のそれぞれは、面内方向において0°から90°まで5°刻みで任意の繊維配向角度を有している。
【0022】
本実施の形態では、複合材料積層構造体30の設計条件として、2種の材料種、複合材料積層構造体30の物性値、複合材料積層構造体30の全体の積層数、積層構成の出力形式、などを選択できるようになっている。2種の材料種としては、PITCH系繊維YS95A(NGF社製)及びエポキシ樹脂を含む炭素繊維強化複合材料(CFRP;Carbon Fiber Reinforced Plastics)と、PAN系繊維T800H(東レ社製)及びエポキシ樹脂を含むCFRPと、を選択した。複合材料積層構造体30の物性値としては、長手方向の弾性率と同方向の熱膨張率とを選択した。複合材料積層構造体30の全体の積層数としては、18層を選択した。積層構成の出力形式としては、材料種毎及び繊維配向角度毎の必要積層数を選択した。
【0023】
記憶装置に記憶されたプログラムをプロセッサに実行させることにより、以下の処理を行った。まず、機械学習を行う前のデータ作成ステップとして、各層の材料種と各層の繊維配向角度とがランダムに選ばれた積層構成のデータを200個作成した。次に、CLTを用いて、各積層構成の長手方向の弾性率及び同方向の熱膨張率を計算した。これにより、物性値と積層構成との組合せをそれぞれ含む200組のデータが得られた。各データにおける物性値は、各積層構成の長手方向の弾性率及び同方向の熱膨張率という2つの要素を持っている。得られた200組のデータは、物性値−積層構成データベース10に格納された。
【0024】
なお、材料種の数、繊維配向角度の刻み、及び全体の積層数を上記のように設定した場合、想定されうる全ての積層構成の数は10の14乗以上になる。このため、全ての積層構成について物性値を計算し、その計算結果から所望の物性値を満たす積層構成を決定することは現実的でない。本実施の形態で作成されるデータ数は、想定されうる全ての積層構成の数と比較して、非常に少ない数である。
【0025】
次に、物性値−積層構成データベース10内の200組のデータから170組のデータをランダムに抽出した。次に、線形回帰分析を用いた機械学習ステップを行った。機械学習ステップでは、物性値が入力となり、積層構成の出力形式として選択された材料種毎及び繊維配向角度毎の必要積層数が出力となるように、170組のデータの機械学習を行った。これにより、機械学習ステップでは、物性値と積層構成との関係式20が得られた。
【0026】
ここで、機械学習ステップで得られた関係式20の妥当性を検討するため、機械学習ステップで使用しなかった30組を含む全200組のデータのそれぞれの物性値を関係式20に入力し、200個の積層構成情報22を出力した。さらに、出力された200個の積層構成情報22のそれぞれについて、CLTを用いて物性値を計算した。
【0027】
図5及び図6は、各データの物性値と、当該物性値を関係式20に入力して得られた積層構成情報22からCLTを用いて計算された物性値と、の関係を示すグラフである。図5に示すグラフでは、物性値として長手方向の弾性率が用いられている。図5の横軸は、各データにおける長手方向の弾性率を目標弾性率[GPa]として表している。図5の縦軸は、目標弾性率を関係式20に入力して得られた積層構成情報22からCLTを用いて計算された長手方向の弾性率[GPa]を表している。
【0028】
図6に示すグラフでは、物性値として長手方向の熱膨張率が用いられている。図6の横軸は、各データにおける長手方向の熱膨張率を目標熱膨張率[ppm/K]として表している。図6の縦軸は、目標熱膨張率を関係式20に入力して得られた積層構成情報22からCLTを用いて計算された長手方向の熱膨張率[ppm/K]を表している。
【0029】
図5に示すグラフにおいて、横軸の目標弾性率と縦軸の弾性率との相関係数は約99.5%であった。また、図6に示すグラフにおいても、横軸の目標熱膨張率と縦軸の熱膨張率との相関係数は約99.5%であった。これにより、機械学習ステップで得られた関係式20が妥当であることが確認された。したがって、本実施の形態によれば、機械学習ステップで得られた関係式20を用いることにより、複合材料積層構造体30の積層構成を容易に設計できることが分かる。
【0030】
本実施の形態では、複合材料積層構造体30の物性値として、長手方向の弾性率及び同方向の熱膨張率が用いられているが、これには限られない。複合材料積層構造体30の物性値としては、縦弾性率、横弾性率、ポアソン比、熱膨張率、成形時の残留変形の大きさなどの物性値のうち、少なくとも1つを用いることができる。また、複合材料積層構造体30の物性値としては、例えば、複合材料積層構造体30の積層面内で互いに直交する2方向と、複合材料積層構造体30の板厚方向と、の計3方向のうち、少なくとも1方向における物性値を用いることができる。
【0031】
図7は、本実施の形態の変形例に係る複合材料積層構造体30の設計方法の処理の流れを示すフローチャートである。図7に示す処理の流れでは、積層構成情報算出ステップの後に、繊維配向角度毎の必要積層数を離散化により非負整数に修正する離散化ステップ(ステップS3)が実行される。図2に示したように、繊維配向角度毎の必要積層数は、非負整数にならない場合がある。一方、複合材料積層構造体30を実際に製造するためには、繊維配向角度毎の必要積層数は全て非負整数である必要がある。したがって、積層構成情報算出ステップの後には、必要に応じて離散化ステップが実行されるようにしてもよい。
【0032】
離散化ステップでは、まず、全ての繊維配向角度の必要積層数が、区間内の必要積層数の和が1となるように複数の区間に分割される。そして、各区間での繊維配向角度の加重平均が、各区間の代表的な繊維配向角度に設定される。これにより、繊維配向角度毎の必要積層数を非負整数にすることができる。具体的には、繊維配向角度をxとし、繊維配向角度xの必要積層数をf(x)とした場合、以下の式(1)を満たすyiを代表的な繊維配向角度とする。
【数1】
ここで、xiは以下の式(2)を満たす繊維配向角度であり、iは非負整数であり、x0は0°である。
【数2】
【0033】
本実施の形態では、複合材料積層構造体の各層に用いられる材料種を2種類としたが、材料種は1種類又は3種類以上であってもよい。
【0034】
本実施の形態において、複合材料積層構造体30の全体の積層数は10層以上であることが望ましい。
【0035】
本実施の形態において、積層構成情報は、複数の層の積層順序の情報を含んでいてもよい。この場合、積層構成情報算出ステップでは、複合材料積層構造体30の製造上の条件に応じた制約条件が設定されるようにしてもよい。制約条件としては、例えば繊維配向角度差に関するものが設定される。ここで、繊維配向角度差とは、互いに隣接する2つの層のそれぞれの繊維配向角度の差を0°以上90°以下の角度で表したものである。繊維配向角度差のデータを物性値の一部として選択できるようにすることにより、繊維配向角度差のデータを機械学習ステップに組み込むことができる。繊維配向角度差は小さい方がよく、45°以下であることが好ましい。例えば、図4に示した複合材料積層構造体30では、互いに隣接する第1層31及び第2層32の繊維配向角度差と、互いに隣接する第3層33及び第4層34の繊維配向角度差とは、いずれも45°以下であることが好ましい。繊維配向角度差が45°以下に制約されることにより、複合材料積層構造体30の製造時に生じる残留応力を小さくすることができる。また、別の制約条件として、複合材料積層構造体30の全体における材料種の割合などが設定されるようにしてもよい。
【0036】
また、本実施の形態では繊維配向角度の刻み幅を5°としたが、繊維配向角度の刻み幅は5°より小さくてもよいし、5°より大きくてもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、積層構成の出力形式として繊維配向角度毎の必要積層数が選択されているが、積層構成の出力形式としては、各層の積層角度、又は各層の積層厚が選択されるようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、平板状の複合材料積層構造体30を例に挙げたが、複合材料積層構造体30は、断面円形状、断面多角形状などの閉断面を有する形状であってもよいし、開断面を有する形状であってもよい。複合材料積層構造体30が閉断面を有する形状である場合、複合材料積層構造体30の内径及び外径、複合材料積層構造体30の断面における頂点の数などのデータを物性値又は積層構成の一部として選択できるようにしてもよい。これにより、これらのデータを機械学習ステップに組み込むことができる。また、複合材料積層構造体30は、断面L字形状、断面U字形状などの、コーナー部を有する形状であってもよい。この場合、コーナー部での曲率、フランジ長さなどのデータを物性値又は積層構成の一部として選択できるようにすることにより、これらのデータを機械学習ステップに組み込むことができる。
【0039】
また、本実施の形態では、複合材料積層構造体30の材料として、炭素繊維とエポキシ樹脂とを含む複合材料を例に挙げたが、複合材料積層構造体30の材料はこれに限られない。複合材料積層構造体30の材料としては、ガラス繊維、セラミック繊維などの炭素繊維以外の繊維を用いることもできるし、シアネートエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂などのエポキシ樹脂以外の樹脂を用いることもできる。
【0040】
また、本実施の形態では、複合材料積層構造体30の材料としてFRPを例に挙げたが、複合材料積層構造体30の材料としては、アルミニウム、鉄などの金属を用いることもできるし、エポキシ、シアネートなどの樹脂を用いることもできる。すなわち、物性値−積層構成データベース10には、FRP以外の材料のデータが格納されていてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、機械学習ステップのアルゴリズムとして線形回帰分析を用いたが、機械学習ステップには、物性値と積層構成との関係式を得ることができるアルゴリズムであれば、線形回帰分析以外のアルゴリズムを用いることができる。例えば、機械学習ステップには、ニューラルネットワーク又はベイズ回帰を利用したアルゴリズムを用いることもできる。
【0042】
また、本実施の形態において、設計条件として選択された積層構成では物性値の目標値が得られない場合には、物性値と積層構成との関係式20に基づいて積層構成が修正されるようにしてもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法は、複数の層が積層された複合材料積層構造体30の物性値と、複合材料積層構造体30の積層構成と、の組合せをそれぞれ含む複数のデータの機械学習を行って、物性値と積層構成との関係式20を得る機械学習ステップ(図1のステップS1)と、関係式20と物性値の目標値21とに基づいて、目標値21が得られる積層構成の情報である積層構成情報22を算出する積層構成情報算出ステップ(図1のステップS2)と、を備える。
【0044】
この構成によれば、複合材料積層構造体30の物性値と複合材料積層構造体30の積層構成との関係式20を機械学習によって得ることができるため、ユーザーにとって半自動的に関係式20を得ることができる。このため、物性値と積層構成との関係式20が予め得られていない場合であっても、物性値の目標値21が得られる積層構成情報22を容易に算出することができる。したがって、上記構成によれば、複合材料積層構造体30の積層構成の設計の煩雑さを低減することができる。結果として、所望の物性値を有する複合材料積層構造体30の積層構成を容易に設計することができる。
【0045】
また、上記構成によれば、機械学習によって関係式20が得られるため、複合材料積層構造体30で想定されうる全ての積層構成について物性値を計算するまでもなく、関係式20に基づいて積層構成情報22を算出することができる。したがって、上記構成によれば、複合材料積層構造体30の積層構成の設計時間を短縮することができる。結果として、所望の物性値を有する複合材料積層構造体30の積層構成をより少数のデータに基づいて効率的に設計することができる。
【0046】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法において、複数の層のそれぞれは、ある繊維配向角度で配向した繊維を有している。積層構成情報22は、繊維配向角度毎の必要積層数の情報を含む。この構成によれば、繊維配向角度毎の必要積層数の情報を、積層構成情報22に基づいて把握することができる。
【0047】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法において、積層構成情報22は、複数の層の積層順序の情報を含んでいる。積層構成情報算出ステップでは、複数の層のうち互いに隣接する2つの層の間の繊維配向角度差が45°以下となるように積層構成情報22が生成される。この構成によれば、互いに隣接する2つの層の間の繊維配向角度差を45°以下にすることができるため、複合材料積層構造体30の製造時に生じる残留応力を小さくすることができる。
【0048】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法は、繊維配向角度毎の必要積層数を離散化により非負整数にする離散化ステップ(図7のステップS3)をさらに備える。この構成によれば、積層構成情報算出ステップで得られた繊維配向角度毎の必要積層数の情報を、複合材料積層構造体30の製造時に実現可能な情報に修正することができる。
【0049】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法において、離散化ステップでは、全ての繊維配向角度の必要積層数を区間内の必要積層数の和が1となるように複数の区間に分割し、複数の区間のそれぞれにおける繊維配向角度の加重平均を複数の区間のそれぞれの代表的な繊維配向角度とするようにしてもよい。
【0050】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法において、物性値は、縦弾性率、横弾性率、ポアソン比及び熱膨張率のうちの少なくとも2つを含む。この構成によれば、複数の物性値のそれぞれの目標値21を同時に達成できる積層構成情報22を一度に算出することができるため、複合材料積層構造体30の積層構成の設計の煩雑さをさらに低減することができる。
【0051】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法では、複数のデータのそれぞれの物性値は、理論計算、数値計算及び実測のうちの少なくとも1つにより得られている。理論計算では、複合材料積層構造体30の形状が限定されるものの多数の物性値データを得ることができる。数値計算では、複合材料積層構造体30の形状が考慮された理論計算よりもさらに精度の高い物性値データを得ることができる。実測では、計算で考慮できない要因を反映させた物性値データを得ることができる。上記の複数種類の物性値データを使用することにより、データ数を増加させることができるため、確度が高く誤差の少ない関係式20を得ることができる。
【0052】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法において、複数の層は、互いに材料の異なる2つ以上の層を含んでいる。この構成によれば、機械学習によって関係式20が得られるため、互いに材料の異なる2つ以上の層が含まれる複雑な複合材料積層構造体30であっても、想定されうる全ての積層構成について物性値を計算するまでもなく、積層構成情報22を算出することができる。したがって、上記構成によれば、複合材料積層構造体30の積層構成の設計時間を短縮することができる。
【0053】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計方法において、複合材料積層構造体30の積層数は10層以上である。複合材料積層構造体30の積層数が多い場合、想定されうる積層構成の数が非常に多くなる。複合材料積層構造体30の積層数が10層以上である場合、各層の材料種を2種とし、繊維配向角度の刻み幅を5°とすると、想定されうる積層構成の数は5.1×109通りとなる。上記構成によれば、機械学習によって関係式20が得られるため、積層数が10層以上であっても、想定されうる全ての積層構成について物性値を計算するまでもなく、積層構成情報22を算出することができる。したがって、上記構成によれば、複合材料積層構造体30の積層構成の設計時間を短縮することができる。
【0054】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る複合材料積層構造体の製造方法について説明する。本実施の形態に係る複合材料積層構造体の製造方法は、実施の形態1に係る複合材料積層構造体の設計方法を含んでいる。図8は、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の製造方法の処理又は工程の流れを示すフローチャートである。図8に示すように、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の製造方法は、機械学習ステップ(ステップS11)、積層構成情報算出ステップ(ステップS12)、材料積層ステップ(ステップS13)及び成形ステップ(ステップS14)を有している。機械学習ステップ及び積層構成情報算出ステップについては、実施の形態1に係る複合材料積層構造体の設計方法と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
ステップS13の材料積層ステップは、積層構成情報算出ステップで出力された積層構成情報22に基づいて、中間材料を積層する工程である。図8には示していないが、材料積層ステップの前に、繊維配向角度毎の必要積層数を非負整数にする離散化ステップが実行されるようにしてもよい。例えば、材料積層ステップでは、積層構成情報22に基づいて、複数枚のプリプレグが治具上に形成される。プリプレグとは、強化繊維に樹脂を含浸して作製されたシート状の中間材料のことである。複数枚のプリプレグが重ねられたものをプリプレグ積層体と呼ぶ。
【0056】
ステップS14の成形ステップは、材料積層ステップで積層された中間材料を一体化させる工程である。例えば、成形ステップでは、プリプレグ積層体に含まれる樹脂を固化させるか、又はプリプレグ積層体に含まれる樹脂を一旦溶融させて固化させることにより、プリプレグ積層体を一体化させる。これにより、複合材料積層構造体30が製造される。
【0057】
図9は、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の製造方法における成形ステップを模式的に示す図である。ここで、本例では、プリプレグに含まれる樹脂として熱硬化性樹脂が用いられている。図9に示すように、成形ステップでは、まず、バギングフィルム43及びシール材44を用いて、プリプレグ積層体42を治具41上で密封する。バギングフィルム43の内部には、必要に応じて、気体の経路を確保するための部材である副資材45が設けられる。次に、治具41及び密封されたプリプレグ積層体42をオートクレーブ装置内に設置する。オートクレーブ装置では、バギングフィルム43の内部の空気を排気ポンプで排出しながら、プリプレグ積層体42をバギングフィルム43の外部から加圧して加熱する。例えば、オートクレーブ装置内の加圧圧力を3気圧とし、加熱温度を120℃とした状態で3時間維持する。これにより、プリプレグ積層体42が一体的に固化し、複合材料積層構造体30が成形される。加圧条件及び加熱条件は、プリプレグに含まれる樹脂に応じて適宜設定される。加圧及び加熱の終了後、オートクレーブ装置内を室温まで冷却し、治具41及び複合材料積層構造体30をオートクレーブ装置から取り出す。治具41、バギングフィルム43及び副資材45を複合材料積層構造体30から取り除くことにより、複合材料積層構造体30が得られる。
【0058】
本実施の形態では、プリプレグに含まれる樹脂として熱硬化性樹脂が用いられているが、プリプレグに含まれる樹脂は熱可塑性樹脂であってもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、複合材料積層構造体30の製造方法として、プリプレグを用いたオートクレーブ法を例に挙げたが、RTM(Resin Transfer Molding)法、フィラメントワインディング法などの他の方法を用いることもできる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の製造方法は、実施の形態1に係る複合材料積層構造体の設計方法を含んでいる。本実施の形態に係る複合材料積層構造体の製造方法は、積層構成情報22に基づいて中間材料を積層する材料積層ステップ(図8のステップS13)と、中間材料を一体化させ、複合材料積層構造体30を成形する成形ステップ(図8のステップS14)と、をさらに備える。
【0061】
この構成によれば、複合材料積層構造体30の積層構成の設計の煩雑さを低減することができるため、所望の物性値を有する複合材料積層構造体30の製造効率を向上させることができる。
【0062】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る複合材料積層構造体の設計装置について説明する。本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計装置は、実施の形態1に係る複合材料積層構造体の設計方法、又は実施の形態2に係る複合材料積層構造体の製造方法を実行する際に用いられる。本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計装置には、プロセッサ、記憶装置、入出力インターフェース回路などを備えたコンピューターが用いられる。
【0063】
図10は、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計装置50の構成を示すブロック図である。図10に示すように、設計装置50は、変数入力部51、機械学習部52、目標物性値入力部53、積層構成情報算出部54及び積層構成情報表示部55を有している。
【0064】
変数入力部51は、複数のデータがそれぞれ変数として入力される入力部である。複数のデータのそれぞれは、複合材料積層構造体30の物性値と複合材料積層構造体30の積層構成との組合せを含んでいる。変数入力部51としては、例えばキーボードが用いられる。
【0065】
変数入力部51により入力された変数は、物性値−積層構成データベース10に記憶される。これにより、物性値−積層構成データベース10が構築される。物性値−積層構成データベース10は、設計装置50に含まれていてもよい。物性値−積層構成データベース10には、積層構成のデータと組み合わされる物性値のデータとして、理論計算物性値データ11、数値計算物性値データ12及び実測物性値データ13のうち少なくとも1種のデータが格納されている。物性値−積層構成データベース10内の1組のデータにおいて、物性値及び積層構成のそれぞれは、複数の要素を持つことができる。物性値の要素としては、縦弾性率、横弾性率、ポアソン比、熱膨張率などが含まれる。積層構成の要素としては、繊維配向角度毎の必要積層数などが含まれる。
【0066】
機械学習部52は、記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することにより実現される機能ブロックであり、例えば図1のステップS1に対応している。機械学習部52は、物性値−積層構成データベース10に記憶されている変数の機械学習を行って、物性値と積層構成との関係式20を得るように構成されている。関係式20は、ある物性値が入力されると積層構成を出力するものである。
【0067】
目標物性値入力部53は、物性値の目標値21が入力される入力部である。目標物性値入力部53としては、例えば、変数入力部51と共通のキーボードが用いられる。
【0068】
積層構成情報算出部54は、記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することにより実現される機能ブロックであり、例えば図1のステップS2に対応している。積層構成情報算出部54は、機械学習部52で得られた関係式20と、目標物性値入力部53により入力された目標値21と、に基づいて、目標値21が得られる理論的な積層構成の情報である積層構成情報22を算出するように構成されている。
【0069】
積層構成情報表示部55は、積層構成情報算出部54で算出された積層構成情報22を表示する表示部である。積層構成情報表示部55としては、例えばモニターが用いられる。
【0070】
図11は、本実施の形態の変形例に係る複合材料積層構造体の設計装置50の構成を示すブロック図である。図11に示す本変形例の設計装置50は、図10に示した設計装置50の構成に加えて、離散化部57、関係式記憶部56及び積層構成情報記憶部58をさらに備えている。離散化部57、関係式記憶部56及び積層構成情報記憶部58のそれぞれは、必要に応じて設けられる。
【0071】
離散化部57は、記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することにより実現される機能ブロックであり、例えば図7のステップS3に対応している。離散化部57は、積層構成情報算出部54で算出された繊維配向角度毎の必要積層数を、離散化により非負整数に修正するように構成されている。積層構成情報表示部55では、離散化部57で修正された積層構成情報22が表示される。
【0072】
関係式記憶部56は、機械学習部52で機械学習により得られた関係式20を記憶するように構成されている。これにより、積層構成情報算出部54は、関係式記憶部56に記憶されている関係式20と、目標物性値入力部53により入力された目標値21と、に基づいて積層構成情報22を算出することができる。したがって、目標値21が入力される度に機械学習部52で機械学習が繰り返されるのを防ぐことができる。関係式記憶部56は、例えば、コンピューターの記憶装置の一部に設けられた記憶領域により構成される。
【0073】
積層構成情報記憶部58は、積層構成情報算出部54で算出された積層構成情報22、又は、離散化部57で修正された積層構成情報22を記憶するように構成されている。積層構成情報記憶部58は、例えば、コンピューターの記憶装置の一部に設けられた記憶領域により構成される。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計装置50は、複数の層が積層された複合材料積層構造体30の物性値と、複合材料積層構造体30の積層構成と、の組合せをそれぞれ含む複数のデータの機械学習を行って、物性値と積層構成との関係式20を得る機械学習部52と、関係式20と物性値の目標値21とに基づいて、目標値21が得られる積層構成の情報である積層構成情報22を算出する積層構成情報算出部54と、を備える。
【0075】
この構成によれば、複合材料積層構造体30の物性値と複合材料積層構造体30の積層構成との関係式20を機械学習によって得ることができるため、ユーザーにとって半自動的に関係式20を得ることができる。このため、物性値と積層構成との関係式20が予め得られていない場合であっても、積層構成情報22を容易に算出することができる。したがって、上記構成によれば、複合材料積層構造体30の積層構成の設計の煩雑さを低減することができる。
【0076】
また、上記構成によれば、機械学習によって関係式20が得られるため、複合材料積層構造体30で想定されうる全ての積層構成について物性値を計算するまでもなく、関係式20に基づいて積層構成情報22を算出することができる。したがって、上記構成によれば、複合材料積層構造体30の積層構成の設計時間を短縮することができる。
【0077】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計装置50は、複数のデータのそれぞれが変数として入力される変数入力部51をさらに備えていてもよい。設計装置50は、目標値21が入力される目標物性値入力部53をさらに備えていてもよい。設計装置50は、積層構成情報22を表示する積層構成情報表示部55をさらに備えていてもよい。
【0078】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計装置50において、複数の層のそれぞれは、ある繊維配向角度で配向した繊維を有している。積層構成情報22は、繊維配向角度毎の必要積層数の情報を含んでいる。設計装置50は、繊維配向角度毎の必要積層数を離散化により非負整数にする離散化部57をさらに備える。この構成によれば、積層構成情報算出部54で得られた繊維配向角度毎の必要積層数の情報を、複合材料積層構造体30の製造時に実現可能な情報に修正することができる。
【0079】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計装置50は、関係式20を記憶する関係式記憶部56をさらに備える。この構成によれば、目標値21が入力される度に機械学習部52で機械学習が繰り返されるのを防ぐことができる。
【0080】
本実施の形態に係る複合材料積層構造体の設計装置50は、積層構成情報22を記憶する積層構成情報記憶部58をさらに備えていてもよい。
【0081】
上記の各実施の形態1〜3及びそれぞれの変形例は、互いに組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 物性値−積層構成データベース、11 理論計算物性値データ、12 数値計算物性値データ、13 実測物性値データ、20 関係式、21 目標値、22 積層構成情報、30 複合材料積層構造体、31 第1層、32 第2層、33 第3層、34 第4層、41 治具、42 プリプレグ積層体、43 バギングフィルム、44 シール材、45 副資材、50 設計装置、51 変数入力部、52 機械学習部、53 目標物性値入力部、54 積層構成情報算出部、55 積層構成情報表示部、56 関係式記憶部、57 離散化部、58 積層構成情報記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11

【手続補正書】
【提出日】2019年9月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層された複合材料積層構造体の物性値と、前記複合材料積層構造体の積層構成と、の組合せをそれぞれ含む複数のデータの機械学習を行って、前記物性値と前記積層構成との関係式を得る機械学習ステップと、
前記関係式と前記物性値の目標値とに基づいて、前記目標値が得られる前記積層構成の情報である積層構成情報を算出する積層構成情報算出ステップと、
を備え
前記複数の層のそれぞれは、ある繊維配向角度で配向した繊維を有しており、
前記積層構成情報は、繊維配向角度毎の必要積層数の情報を含んでおり、
前記繊維配向角度毎の前記必要積層数を離散化により非負整数にする離散化ステップをさらに備え、
前記離散化ステップでは、全ての前記繊維配向角度の前記必要積層数を区間内の前記必要積層数の和が1となるように複数の区間に分割し、前記複数の区間のそれぞれにおける前記繊維配向角度の加重平均を前記複数の区間のそれぞれの代表的な前記繊維配向角度とする複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項2】
前記積層構成情報は、前記複数の層の積層順序の情報を含んでおり、
前記積層構成情報算出ステップでは、前記複数の層のうち互いに隣接する2つの層の間の繊維配向角度差が45°以下となるように前記積層構成情報が生成される請求項に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項3】
前記物性値は、縦弾性率、横弾性率、ポアソン比及び熱膨張率のうちの少なくとも2つを含む請求項1又は請求項2に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項4】
前記複数のデータのそれぞれの前記物性値は、理論計算、数値計算及び実測のうちの少なくとも1つにより得られている請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項5】
前記複数の層は、互いに材料の異なる2つ以上の層を含んでいる請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項6】
前記複合材料積層構造体の積層数は10層以上である請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計方法を含む複合材料積層構造体の製造方法であって、
前記積層構成情報に基づいて中間材料を積層する材料積層ステップと、
前記中間材料を一体化させ、前記複合材料積層構造体を成形する成形ステップと、
をさらに備える複合材料積層構造体の製造方法。
【請求項8】
複数の層が積層された複合材料積層構造体の物性値と、前記複合材料積層構造体の積層構成と、の組合せをそれぞれ含む複数のデータの機械学習を行って、前記物性値と前記積層構成との関係式を得る機械学習部と、
前記関係式と前記物性値の目標値とに基づいて、前記目標値が得られる前記積層構成の情報である積層構成情報を算出する積層構成情報算出部と、
を備え
前記複数の層のそれぞれは、ある繊維配向角度で配向した繊維を有しており、
前記積層構成情報は、繊維配向角度毎の必要積層数の情報を含んでおり、
前記繊維配向角度毎の前記必要積層数を離散化により非負整数にする離散化部をさらに備え、
前記離散化部は、全ての前記繊維配向角度の前記必要積層数を区間内の前記必要積層数の和が1となるように複数の区間に分割し、前記複数の区間のそれぞれにおける前記繊維配向角度の加重平均を前記複数の区間のそれぞれの代表的な前記繊維配向角度とする複合材料積層構造体の設計装置。
【請求項9】
前記複数のデータのそれぞれが変数として入力される変数入力部と、
前記目標値が入力される目標物性値入力部と、
前記積層構成情報を表示する積層構成情報表示部と、
をさらに備える請求項に記載の複合材料積層構造体の設計装置。
【請求項10】
前記関係式を記憶する関係式記憶部をさらに備える請求項8又は請求項9に記載の複合材料積層構造体の設計装置。
【請求項11】
前記積層構成情報を記憶する積層構成情報記憶部をさらに備える請求項〜請求項10のいずれか一項に記載の複合材料積層構造体の設計装置。
【国際調査報告】