特表-20080443IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年4月23日
【発行日】2021年9月24日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20210827BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20210827BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20210827BHJP
   D07B 1/06 20060101ALI20210827BHJP
【FI】
   B60C9/18 A
   B60C9/00 J
   B60C9/20 E
   B60C9/20 G
   B60C9/20 J
   D07B1/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2020-553265(P2020-553265)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2018-196210(P2018-196210)
(32)【優先日】2018年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】上村 一樹
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
【Fターム(参考)】
3B153AA03
3B153AA24
3B153BB13
3B153CC52
3B153FF16
3D131AA39
3D131AA45
3D131AA49
3D131BA02
3D131BA07
3D131BC13
3D131BC36
3D131DA33
3D131DA44
3D131DA45
3D131KA03
(57)【要約】
金属フィラメントを撚り合わせずに引き揃えた束からなる金属コードをエラストマーで被覆した、タイヤの性能を高度に改善し得るエラストマー−金属コード複合体を用いたタイヤを提供する。
少なくとも2層のベルト層105a、105bからなるベルト105を備えたタイヤ100であり、ベルト層105a、105bが、複数本の金属フィラメント1が撚り合わされずに一列に引き揃えられた束からなる金属コード2が、エラストマー3により被覆されてなり、金属フィラメント1に型付けがなされており、隣り合う金属フィラメント1同士の位相が異なる金属フィラメント1の対が少なくとも1つ存在し、ベルト層105a、105bの厚みが、0.30mm超、1.00mm未満であり、隣接する2層のベルト層105a、105bの金属コード2同士のタイヤ径方向の間隔が、タイヤセンターにおいて0.10mm以上1.20mm以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間にトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも2層のベルト層からなるベルトを備えたタイヤにおいて、
前記ベルト層が、複数本の金属フィラメントが撚り合わされずに一列に引き揃えられた束からなる金属コードが、エラストマーにより被覆されてなるエラストマー−金属コード複合体からなり、
前記金属フィラメントに型付けがなされており、隣り合う前記金属フィラメント同士の位相が異なる金属フィラメントの対が少なくとも1つ存在し、
前記ベルト層の厚みが、0.30mm超、1.00mm未満であり、
隣接する2層の前記ベルト層の金属コード同士のタイヤ径方向の間隔が、タイヤセンターにおいて0.10mm以上1.20mm以下であることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記金属フィラメントが、同一型付け量および同一ピッチである請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記隣り合う金属フィラメント同士の位相差が、π/4〜7π/4である請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記隣り合う金属フィラメントの、前記金属コードの幅方向側面におけるエラストマー被覆率が、単位長さ当たり10%以上である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項5】
前記金属フィラメントの型付け量が0.03〜0.30mm、前記金属フィラメントの型付けピッチが2〜30mmである請求項1〜4のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項6】
前記型付けされた金属フィラメントの型付け方向が、前記金属コードの幅方向である請求項1〜5のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項7】
隣接する前記ベルト層の間であってタイヤ幅方向端部に、層間ゴムが配置されている請求項1〜6のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項8】
前記層間ゴムの厚みが、0.2mm以上1.2mm以下である請求項7記載のタイヤ。
【請求項9】
前記エラストマーの、JIS K 6251(2010年)に準拠し測定した50%モジュラス値が、1.5MPa以上である請求項1〜8のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項10】
前記金属フィラメントの抗張力が、2500MPa以上である請求項1〜9のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、詳しくは、金属フィラメントを撚り合わせずに引き揃えた束からなる金属コードをエラストマーで被覆してなるエラストマー−金属コード複合体をベルトに用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、強度が必要とされるタイヤの内部には、リング状のタイヤ本体の子午線方向に沿って埋設された補強コードを含むカーカスが配置され、カーカスのタイヤ半径方向外側には、ベルト層が配置される。このベルト層は通常、スチール等の金属コードをエラストマーで被覆してなるエラストマー−金属コード複合体を用いて形成され、タイヤに耐荷重性、耐牽引性等を付与している。
【0003】
近年、自動車の燃費を向上させるために、タイヤを軽量化する要求が高まっている。タイヤの軽量化の手段として、ベルト補強用の金属コードが注目され、金属フィラメントを撚らずにベルト用コードとして使用する技術が多数公開されている。例えば、特許文献1では、軽量性と耐久性とを改善するにあたって、高い引張り強度で細径の金属フィラメントを、撚らずに並列に引き揃えて金属フィラメント束とし、これを被覆ゴム中に幅方向に配列させた少なくとも2枚のベルトプライでベルト層を形成したタイヤが提案されている。このタイヤにおいては、金属フィラメント束内の金属フィラメント本数を、金属フィラメント径に応じて適正化している。また、金属フィラメント束の径方向厚みも、ベルトプライ厚みに対し特定の割合とすることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−334810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、軽量性と耐久性については検討されているものの、他の性能については、検討がなされていない。したがって、今後、タイヤの高性能化に伴い、金属フィラメントを撚らずにベルト用コードとして使用するにあたっては、さらなる改良が求められることが予想される。
【0006】
そこで、本発明の目的は、金属フィラメントを撚り合わせずに引き揃えた束からなる金属コードをエラストマーで被覆した、タイヤの性能を高度に改善し得るエラストマー−金属コード複合体をベルトに用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、以下の知見を得た。すなわち、金属フィラメントを撚り合わせずに束ねた金属コードを用いると、ベルトトリートの圧縮入力時に金属コードが面内への変形を抑制し、金属コードの疲労性の悪化につながる。また、金属フィラメントを撚り合わせずに束ねた金属コードは隣接する金属フィラメント間ではゴムは浸透し難く、ゴムによって被覆されていない非ゴム被覆領域が発生する。したがってタイヤ転動時に、金属フィラメントが相互にずれてしまい、面内剛性(タイヤ接地面内の剛性)の低下により、操縦安定性が損なわれるおそれがある。かかる知見に基づき、本発明者はさらに鋭意検討した結果、金属フィラメントの束の構成を下記のとおりとすることにより、上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のタイヤは、一対のビード部間にトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも2層のベルト層からなるベルトを備えたタイヤにおいて、
前記ベルト層が、複数本の金属フィラメントが撚り合わされずに一列に引き揃えられた束からなる金属コードが、エラストマーにより被覆されてなるエラストマー−金属コード複合体からなり、
前記金属フィラメントに型付けがなされており、隣り合う前記金属フィラメント同士の位相が異なる金属フィラメントの対が少なくとも1つ存在し、
前記ベルト層の厚みが、0.30mm超、1.00mm未満であり、
隣接する2層の前記ベルト層の金属コード同士のタイヤ径方向の間隔が、タイヤセンターにおいて0.10mm以上1.20mm以下であるものである。
【0009】
ここで、図1は、金属フィラメントの型付け量hおよび型付けピッチpの定義を示す金属フィラメントの説明図であり、型付け量hとは金属フィラメント1の線径を含まない変動の幅をいう。なお、金属フィラメント1の型付け量hは、型付け後の金属フィラメント1を投影機にて投影し、金属フィラメントの投影像をスクリーン等に映して計測する。
【0010】
本発明のタイヤにおいては、前記金属フィラメントが、同一型付け量および同一ピッチであることが好ましい。また、本発明のタイヤにおいては、前記隣り合う金属フィラメント同士の位相差が、π/4〜7π/4であることが好ましい。さらに、本発明のタイヤにおいては、前記隣り合う金属フィラメントの、前記金属コードの幅方向側面におけるエラストマー被覆率が、単位長さ当たり10%以上であることが好ましい。さらにまた、本発明のタイヤにおいては、前記金属フィラメントの型付け量が0.03〜0.30mm、前記金属フィラメントの型付けピッチが2〜30mmであることが好ましい。また、本発明のタイヤにおいては、前記型付けされた金属フィラメントの型付け方向が、前記金属コードの幅方向であることが好ましい。さらに、本発明のタイヤにおいては、隣接する前記ベルト層の間であってタイヤ幅方向端部に、層間ゴムが配置されていることが好ましく、この場合、前記層間ゴムの厚みは、0.2mm以上1.2mm以下が好ましい。さらにまた、本発明のタイヤにおいては、前記エラストマーの、JIS K 6251(2010年)に準拠し測定した50%モジュラス値が、1.5MPa以上であることが好ましい。また、本発明のタイヤにおいては、前記金属フィラメントの抗張力は、2500MPa以上であることが好ましい。なお、本発明のエラストマー−金属コード複合体においては、真直の金属フィラメントとは、意図的に型付けをしておらず、実質的に型がついていない状態の金属フィラメントを指す。
【0011】
ここで、エラストマー被覆率とは、例えば、エラストマーとしてゴムを用い、金属コードとしてスチールコードを用いた場合、スチールコードをゴム被覆し、加硫した後、得られたゴム−スチールコード複合体からスチールコードを引き抜き、スチールコードを構成するスチールフィラメント同士の間隙に浸透したゴムにより被覆されている、スチールフィラメントの金属コード幅方向側面の長さを測定し、下記算出式に基づいて算出した値の平均をいう。
エラストマー被覆率=(ゴム被覆長/試料長)×100(%)
なお、エラストマーとして、ゴム以外のエラストマーを用いた場合、および、金属コードとして、スチールコード以外の金属コードを用いた場合も、同様に算出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属フィラメントを撚り合わせずに引き揃えた束からなる金属コードをエラストマーで被覆した、タイヤの性能を高度に改善し得るエラストマー−金属コード複合体をベルトに用いたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】金属フィラメントの型付け量hおよび型付けピッチpの定義を示す金属フィラメントの説明図である。
図2】本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤの概略片側断面図である。
図3】本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の幅方向における部分断面図である。
図4】本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の金属コードの概略平面図である。
図5】本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の金属コードの幅方向概略断面図である。
図6】本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の金属コードの幅方向概略断面図の他の例である。
図7】本発明の他の好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の金属コードの幅方向概略断面図である。
図8】本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルトの概略片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のタイヤについて、図面を用いて詳細に説明する。
図2に、本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤの概略片側断面図を示す。図示するタイヤ100は、接地部を形成するトレッド部101と、このトレッド部101の両側部に連続してタイヤ半径方向内方へ延びる一対のサイドウォール部102と、各サイドウォール部102の内周側に連続するビード部103とを備えたタイヤ100である。
【0015】
図示するタイヤ100は、トレッド部101、サイドウォール部102およびビード部103は、一方のビード部103から他方のビード部103にわたってトロイド状に延びる一枚のカーカス層からなるカーカス104により補強されている。また、トレッド部101は、カーカス104のクラウン領域のタイヤ径方向外側に配設した少なくとも2層、図示する例では、2層の第1ベルト層105aと第2ベルト層105bとからなるベルト105により補強されている。ここで、カーカス104のカーカス層は複数枚としてもよく、タイヤ周方向に対してほぼ直交する方向、例えば、70〜90°の角度で延びる有機繊維コードを好適に用いることができる。
【0016】
本発明のタイヤ100においては、少なくとも2層のベルト層が、複数本の金属フィラメントが撚り合わされずに一列に引き揃えられた束からなる金属コードが、エラストマーにより被覆されてなるエラストマー−金属コード複合体からなる。本発明のタイヤ100においては、エラストマー−金属コード複合体の金属フィラメントには型付けがなされており、隣り合う金属フィラメント同士の位相が異なる金属フィラメントの対が少なくとも1つ存在する。これらの型付けされた金属フィラメントは、金属コードの厚み方向において重ならないように配置されていることが好ましい。また、ベルト層の厚みは、0.30mm超、1.00mm未満であり、さらに、隣接する2層のベルト層の金属コード同士のタイヤ径方向の間隔が、タイヤセンターにおいて、0.10mm以上1.20mm以下である。かかる構造とすることにより、ベルト105の厚みを薄くすることができ、タイヤの軽量化を図ることができる。また、ベルトの面内剛性が向上する結果、タイヤの操縦安定性を良好に確保することができる。すなわち、ベルトの耐久性および操縦安定性を同時に向上させることができる。以下、本発明のタイヤ100に係るエラストマー−金属コード複合体について、詳細に説明する。
【0017】
図3は、本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の幅方向における部分断面図であり、図4は、本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の金属コードの概略平面図であり、図5は、本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の金属コードの幅方向概略断面図であり、図6は、本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の金属コードの幅方向概略断面図の他の例である。
【0018】
本発明のタイヤ100に係るエラストマー−金属コード複合体10は、複数本の金属フィラメント1が、撚り合わされずに一列に引き揃えられた束からなる金属コード2が、エラストマー3により被覆されたものである。金属フィラメント1は、好適には2本以上、より好適には5本以上であって、好適には20本以下、より好適には12本以下、さらに好適には10本以下、特に好適には9本以下の束で金属コード2を構成する。図示例においては、5本の金属フィラメント1が、撚り合わされずに引き揃えられて、金属コード2を形成している。
【0019】
本発明のタイヤ100に係るエラストマー−金属コード複合体10の金属フィラメント1は波型型付けされてなり、隣り合う金属フィラメント1同士の位相が異なる金属フィラメント1の対が少なくとも1つ存在する。このようにすることで、両者の位相が合致することを避けている。好ましくは対の50%以上において、隣り合う金属フィラメント1同士の位相が異なる。このような構成とすることで、隣り合う金属フィラメント1間にエラストマーを十分に浸透させることが可能となり、その結果、圧縮入力時に、金属コードが面外変形でき、金属コード折れ性を抑止することができる。
【0020】
また、前述のとおり、金属フィラメント1の束は、隣接するフィラメント間ではエラストマーは浸透し難く、エラストマーによって被覆されていない非エラストマー被覆領域が発生する。したがって、金属フィラメントを撚り合わせずに束ねた金属コードをベルト用コードとして用いた場合、この非エラストマー被覆領域において、タイヤ転動時に金属フィラメントが相互にずれてしまい、その結果、ベルトの面内剛性が低下し、操縦安定性が損なわれる結果となることがある。しかしながら、本発明のタイヤ100に係るエラストマー−金属コード複合体10は、隣り合う金属フィラメント1間にエラストマー3が十分に浸透するため上記の不具合が解消でき、ベルト105の面内剛性を向上させ、操縦安定性を改善することができる。
【0021】
本発明のエラストマー−金属コード複合体10においては、金属コード2中の少なくとも一か所において、隣り合う金属フィラメント同士の位相が異なっているものであるが、その位相差としては、π/4〜7π/4が好ましい。位相差をかかる範囲とすることで、本発明の効果を良好に得ることができる。より好ましくはπ/2〜3π/2、特に好ましくは、位相差がπの場合である。
【0022】
本発明のタイヤ100に係るエラストマー−金属コード複合体10において、型付けされた金属フィラメント1は、全て同一型付け量および同一ピッチであることが好ましい。また、本発明のタイヤ100に係るエラストマー−金属コード複合体10においては、図示するような波型型付けやジグザグ型付けのような2次元型付けであっても、螺旋状の3次元型付けであってもよいが、軽量性の観点からは2次元型付けが好ましく、波型型付けがより好ましい。ただし、ベルト層を薄くし、タイヤの軽量化を図るとの観点から、金属コード2の厚み方向に、金属フィラメント1同士が重ならないことが好ましい。
【0023】
本発明のタイヤ100に係るエラストマー−金属コード複合体10において、隣り合う金属フィラメント間における連続する非エラストマー被覆領域の存在を解消して、耐腐食進展性を確保するとともに、ベルトの面内剛性を向上させ、操縦安定性を改善する効果を良好に得るためには、隣り合う金属フィラメント1の、金属コード2の幅方向側面におけるエラストマー被覆率は、単位長さ当たり10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。さらに好ましくは50%以上被覆されており、80%以上被覆されていることが特に好ましい。もっとも好ましくは、90%以上被覆されている状態である。
【0024】
本発明のタイヤ100に係るエラストマー−金属コード複合体10においては、金属フィラメント1の型付け量が大きすぎると、エラストマー−金属コード複合体10中の金属コード2間の距離wが短くなり、ベルトの強度低下の原因となる。そのため、金属フィラメント1の型付け量は、2次元型付けの場合、0.03mm以上0.30mm以下が好ましい。型付け量を0.30mm以下とすることで、ベルト層105a、105bの強力を確保でき、本発明の効果を十分に得られるものとなる。特に、金属コード2間の距離wおよび、金属フィラメント1の強力の観点から、金属フィラメント1に2次元型付けを施すにあたっては、型付け量は0.03mm以上0.30mm以下が好ましく、より好ましくは0.03mm以上0.25mm以下であり、もっとも好ましくは0.03mm以上0.20mm以下である。また、同様の理由から、2次元型付けの場合、金属フィラメント1の型付けピッチは2mm以上30mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以上20mm以下であり、もっとも好ましくは3mm以上15mm以下である。金属フィラメント1の型付けピッチを2mm以上とすることで、フィラメント強度の低下やコード重量の増加を抑制することができる。
【0025】
図7に、本発明の他の好適な実施の形態に係るタイヤのベルト層に用いるエラストマー−金属コード複合体の金属コードの幅方向概略断面図を示す。図7に示すように、金属フィラメント1が、3次元型付けの場合、金属フィラメント1の型付け量は、0.10mm以上0.50mm以下が好ましく、より好ましくは0.20mm以上0.30mm以下である。型付け量を0.50mm以下とすることで、ベルト層105a、105bの強力の低下を抑制して、本発明の効果を十分に得ることができる。3次元型付けの場合、金属フィラメント1の型付けピッチは5mm以上であることが好ましく、より好ましくは8mm以上20mm以下である。
【0026】
なお、図3〜5に示す金属コード2においては、型付けされている金属フィラメント1aは、金属コード2の幅方向に型付けされているが、本発明のエラストマー−金属コード複合体10においては、図6に示すように、金属フィラメント1の型付け方向は金属コード2の幅方向に対して傾いていてもよい。このような構造であっても、隣り合う金属フィラメント1間にゴムを十分に浸透させることが可能であり、本発明の効果を得ることができる。しかしながら、本発明のタイヤ100に係るベルト層105a、105bにおいては、軽量性の観点からは、隣り合う金属フィラメント1同士の型付け方向が金属コード2の幅方向であるほうが、ベルト105を薄くできるため好ましい。
【0027】
図8に、本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのベルトの概略片側断面図を示す。本発明のタイヤ100においては、軽量性の観点から、ベルト層105a、105bの厚みt1は、0.30mm超、1.00mm未満であり、好適には0.40mm以上0.90mm以下である。また、隣接する2層のベルト層105a、105bの金属コード2同士のタイヤ径方向の間隔gが、タイヤセンターにおいて、0.1mm以上1.20mm以下である。かかる範囲とすることで、ベルトの軽量化と隣接するベルト層の間に生じるゴムの亀裂も防止することができ、耐久性も向上させることができる。好適には0.1mm以上0.8mm以下である。
【0028】
また、本発明のタイヤ100においては、隣接するベルト層のタイヤ幅方向端部に、層間の間隔を確保するための層間ゴム106が配置されていることが好ましい。この場合、層間ゴム106の厚みt2は0.2mm以上1.2mm以下であることが好ましい。層間ゴム106の厚みt2を0.2mm以上とすることで、ベルト層間の間隔を十分に確保することができ、ベルト端におけるセパレーションが抑制することができる。一方、層間ゴム106の厚みt2が1.2mm以下であれば、タイヤの軽量化を図る上で問題となることはない。なお、本発明のタイヤ100においては、層間ゴム6の形状は、図示するようなシート状のものであってもよく、ベルト層端部を覆う形状であってもよい。ベルト層端部を覆う形状の場合、全てのベルト層の端部を覆ってもよく、一部のベルト層のみ、例えば、第1ベルト層の端部のみや、第2ベルト層の端部のみを覆っていてもよい。
【0029】
なお、本発明のタイヤ100においては、層間ゴム6としては、上記金属コード2を被覆する被覆ゴムを用いることができるが、異なっていてもよい。
【0030】
さらに、本発明のタイヤ100においては、ベルト層中の金属コード2を被覆するエラストマーの、JIS K 6251(2010年)に準拠し測定した50%モジュラス値が、1.5MPa以上であることが好ましい。好ましくは1.8MPa以上、より好ましくは2.0MPa以上である。このようなエラストマーをベルト層105a、105bの被覆に用いると、金属コード2が長手方向に伸張して撚り締まった場合であっても、金属コード2内部のエラストマーが高剛性であるため、金属コード2の長手方向への伸張を阻害し、ベルト105の剛性をさらに向上させることができる。その結果、操縦安定性をより向上させることができる。
【0031】
このようなエラストマーとしては、ゴムであれば、例えば、従来のゴム以外にも、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBRおよび低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等のジエン系ゴムおよびその水添物、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等のオレフィン系ゴム、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)等の含ハロゲンゴム、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム等のシリコンゴム、ポリスルフィドゴム等の含イオウゴム、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等のフッ素ゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。なお、被覆ゴムの50%モジュラス値は、各サンプルのゴム組成物を、145℃で40分間加硫して加硫ゴムとした後、JIS K 6251(2010年)に準拠して測定した値である。
【0032】
本発明のタイヤ100のベルト層105a、105bにおいては、金属フィラメント1は、一般に、鋼、すなわち、鉄を主成分(金属フィラメントの全質量に対する鉄の質量が50質量%を超える)とする線状の金属をいい、鉄のみで構成されていてもよいし、鉄以外の、例えば、亜鉛、銅、アルミニウム、スズ等の金属を含んでいてもよい。
【0033】
また、本発明のタイヤ100のベルト層105a、105bにおいて、金属フィラメント1の表面状態については特に制限されないが、例えば、下記の形態をとることができる。すなわち、金属フィラメント1としては、表面のN原子が2原子%以上60原子%以下であって、かつ、表面のCu/Zn比が1以上4以下であることが挙げられる。また、金属フィラメント1としては、金属フィラメント表面からフィラメント半径方向内方に5nmまでの金属フィラメント最表層に酸化物として含まれるリンの量が、C量を除いた全体量の割合で、7.0原子%以下である場合が挙げられる。
【0034】
また、本発明のタイヤ100のベルト層105a、105bにおいて、金属フィラメント1の表面には、めっきが施されていてもよい。めっきの種類としては、特に制限されず、例えば、亜鉛(Zn)めっき、銅(Cu)めっき、スズ(Sn)めっき、ブラス(銅−亜鉛(Cu−Zn))めっき、ブロンズ(銅−スズ(Cu−Sn))めっき等の他、銅−亜鉛−スズ(Cu−Zn−Sn)めっきや銅−亜鉛−コバルト(Cu−Zn−Co)めっき等の三元めっきなどが挙げられる。これらの中でもブラスめっきや銅−亜鉛−コバルトめっきが好ましい。ブラスめっきを有する金属フィラメントは、ゴムとの接着性が優れているからである。なお、ブラスめっきは、通常、銅と亜鉛との割合(銅:亜鉛)が、質量基準で60〜70:30〜40、銅−亜鉛−コバルトめっきは、通常銅が60〜75重量%、コバルトが0.5〜10重量%である。また、めっき層の層厚は、一般に100nm以上300nm以下である。
【0035】
さらに、本発明のタイヤ100のベルト層105a、105bにおいては、金属フィラメント1の線径や抗張力、断面形状については、特に制限はない。例えば、金属フィラメント1の線径は、0.15mm以上0.40mm以下とすることができる。また、金属フィラメント1としては、抗張力が2500MPa(250kg/mm)以上のものを用いることができる。さらに、金属フィラメント1の幅方向の断面形状も特に制限されず、楕円状や矩形状、三角形状、多角形状等であってもよいが、円状が好ましい。なお、本発明のエラストマー−金属コード複合体10においては、金属コード2を構成する金属フィラメント1の束を拘束する必要がある場合には、ラッピングフィラメント(スパイラルフィラメント)を使用してもよい。
【0036】
本発明のタイヤに係るエラストマー−金属コード複合体は、既知の方法にて製造することができる。例えば、複数本の金属フィラメントを撚り合わせずに引き揃えた束からなる金属コードとしてのスチールコードを、所定の間隔で平行に並べてゴムで被覆して製造することができ、評価用サンプルは、その後、一般的な条件で加硫することにより、製造することができる。また、金属フィラメントの型付けについても、通常の型付け機を用いて、従来の手法に従い、行うことができる。
【0037】
本発明のタイヤとしては、具体的には、図2に示すタイプの2層のベルト層からなるベルトを有するタイヤであって、線径0.25mmのスチールフィラメント7本に、型付け量0.1mm、型付けピッチ4mmの2次元型付けを施し、位相差がπ/2となるように並列に引き揃えてスチールコードとし、このスチールコードを、コード間距離wが0.6mmとなるように並べ、厚みが0.65mmとなるようにゴム被覆したゴム−スチールコード複合体を、ベルト層として用いた形態を挙げることができる。このゴム−スチールコード複合体の打ち込み本数は15.6本/50mm、層間距離gは0.4mmである。このタイヤには、ベルト層の間であって、タイヤ幅方向端部に厚みt2が0.5mmの層間ゴムを配置することができる。
【0038】
本発明のタイヤ100は、ベルトの構造を上記のものとすればよく、それ以外の具体的なタイヤ構造についても、特に制限されるものではない。例えば、ベルト105のタイヤ径方向外側にベルト補強層を配置してもよく、その他の補強部材を用いてもよい。なお、タイヤ100に充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。本発明のタイヤは、乗用車用タイヤやトラック・バス用タイヤに好適に用いることができる。
【0039】
本発明に係るエラストマー−金属コード複合体をベルトに用いることで、操縦安定性と耐セパレーション性とを両立させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 金属フィラメント
2 金属コード
3 エラストマー
10 エラストマー−金属コード複合体
100 タイヤ
101 トレッド部
102 サイドウォール部
103 ビード部
104 カーカス
105 ベルト
105a,105b ベルト層
106 層間ゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】