特表-20009185IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年1月9日
【発行日】2021年7月15日
(54)【発明の名称】エラストマー組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20210618BHJP
【FI】
   C08J3/20 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2020-529046(P2020-529046)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2018-127762(P2018-127762)
(32)【優先日】2018年7月4日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】三田尾 徳之
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA07
4F070AC04
4F070AD02
4F070AD03
4F070FA05
4F070FB06
4F070FC03
(57)【要約】
本発明は、耐引裂き性に優れる成形体を供給可能なエラストマー組成物を、効率良く製造する方法の提供を目的とする。本発明のエラストマー組成物の製造方法は、エラストマーを含むラテックスと、カーボンナノチューブおよびSP値が8.0(cal/cm1/2以上10.0(cal/cm1/2以下であって且つ前記エラストマーを溶解可能な溶剤を含む分散液とを、前記ラテックス中の前記エラストマーの質量に対する前記分散液中の前記溶剤の質量の比が4以上となるように混合する混合工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーを含むラテックスと、カーボンナノチューブおよびSP値が8.0(cal/cm1/2以上10.0(cal/cm1/2以下であって且つ前記エラストマーを溶解可能な溶剤を含む分散液とを、前記ラテックス中の前記エラストマーの質量に対する前記分散液中の前記溶剤の質量の比が4以上となるように混合する混合工程を含む、エラストマー組成物の製造方法。
【請求項2】
前記エラストマーが、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ブチルゴム、およびこれらの水素化物からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである、請求項1または2に記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項4】
前記溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、およびトルエンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜3の何れかに記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項5】
前記混合工程で得られた混合物から、固形物を回収する固形物回収工程を更に含む、請求項1〜4の何れかに記載のエラストマー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下「CNT」と称することがある。)は、導電性、熱伝導性、摺動特性、機械特性等に優れるため、幅広い用途への応用が検討されている。
そこで、近年、エラストマーに対してカーボンナノチューブを添加することで、カーボンナノチューブの優れた特性を有すると共に、加工性や強度といったエラストマーの特性をも有する材料を提供する技術の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エラストマー100重量部に対し、カーボンナノチューブを0.1〜150重量部含有することを特徴とするエラストマー組成物が記載されている。ここで、特許文献1では、例えば、溶剤に溶解した溶液系のエラストマーと、カーボンナノチューブを溶剤に分散した分散液とを混合することによって、エラストマー組成物を調製している。そして特許文献1によれば、上述したエラストマー組成物は、加工性に優れると共に、加硫処理を施した際の高発熱性と破壊強度のバランスに優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−210830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、エラストマーを溶剤に溶解させる際に長時間を要する、また、得られたエラストマー組成物から形成される成形体の耐引裂き性に劣るといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、耐引裂き性に優れる成形体を供給可能なエラストマー組成物を、効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。そして、本発明者は、エラストマーを含むラテックスと、所定範囲内のSP値(溶解度パラメータ)を有し且つラテックス中のエラストマーを溶解可能な溶剤(有機溶剤)中にCNTが分散してなる分散液とを、所定の条件下で混合することで、成形体とした際に優れた耐引裂き性を奏するエラストマー組成物を効率良く製造し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、エラストマーを含むラテックスと、カーボンナノチューブおよびSP値が8.0(cal/cm1/2以上10.0(cal/cm1/2以下であって且つ前記エラストマーを溶解可能な溶剤を含む分散液とを、前記ラテックス中の前記エラストマーの質量に対する前記分散液中の前記溶剤の質量の比が4以上となるように混合する混合工程を含むことを特徴とする。上述の工程を経ることで、耐引裂き性に優れる成形体を供給可能なエラストマー組成物を、効率良く製造することができる。
なお、本発明において、SP値は、凝集エネルギー密度の平方根と定義され、混合によるエントロピー変化がほとんどゼロで、エンタルピー変化が起こる正則な溶液をもとにHildebrandとScottにより提唱されたパラメータで、代表的な溶剤の溶解度パラメータは「ポリマーハンドブック」(第3版)に例示されている。
また、本発明において、溶剤が「エラストマーを溶解可能」であるとは、25℃において、100gの溶剤にエラストマー0.5gを溶解した際に、不溶分が1質量%未満となることをいう。
【0009】
ここで、本発明のエラストマー組成物の製造方法では、前記エラストマーが、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ブチルゴム、およびこれらの水素化物からなる群から選択される少なくとも1つとすることができる。
【0010】
そして、本発明のエラストマー組成物の製造方法では、前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。単層カーボンナノチューブを用いれば、得られるエラストマー組成物の成形体の耐引裂き性を更に向上させることができる。
【0011】
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法では、前記溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、およびトルエンからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。上述した何れかの溶剤を用いれば、CNTとエラストマーが十分良好に混和した混合物を得て、結果として成形体の耐引裂き性を更に向上させることができる。
【0012】
そして、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、前記混合工程で得られた混合物から、固形物を回収する固形物回収工程を更に含むことが好ましい。上述した固形物回収工程を経れば、所望のエラストマー組成物を十分に効率良く製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、耐引裂き性に優れる成形体を供給可能なエラストマー組成物を、効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明のエラストマー組成物の製造方法は、エラストマーと、カーボンナノチューブが複合してなるエラストマー組成物(複合体)を製造する際に用いることができる。また、本発明のエラストマー組成物の製造方法を用いて製造したエラストマー組成物は、例えば架橋処理などを経て成形体とすることができる。
【0015】
(エラストマー組成物の製造方法)
本発明のエラストマー組成物の製造方法は、エラストマーを含むラテックスと、CNTおよびSP値が8.0(cal/cm1/2以上10.0(cal/cm1/2以下であって且つ上記エラストマーを溶解可能な溶剤を含む分散液とを、ラテックスに由来する上記エラストマーの質量に対する、分散液に由来する上記溶剤の質量の比(以下、「溶剤/エラストマー比」と称する場合がある。)が4以上となるように混合して混合物を得る工程(混合工程)を少なくとも含む。
【0016】
上述した本発明の製造方法によれば、エラストマーが水中に分散してなるラテックスを用いるため、固形状のエラストマーを溶剤に溶解させるといった手間が省け、エラストマー組成物の製造効率を高めることができる。更に、エラストマーを含むラテックスと、所定範囲内のSP値を有し且つエラストマーを溶解可能な溶剤中にCNTが分散してなる分散液とを、溶剤/エラストマー比が4以上となるように混合することで、CNTとエラストマーが、水および溶剤中に均一に分散および/または溶解した混合物を得ることができるためと推察されるが、結果として耐引裂き性等の諸特性に優れる成形体を形成可能なエラストマー組成物が得られる。
そして、本発明の製造方法を用いて得られるエラストマー組成物から形成される成形体は、CNTの優れた特性を備えると共に、耐引裂き性に優れるため、様々な製品の製造に有用である。
【0017】
<混合工程>
混合工程では、エラストマーを含むラテックスと、CNTおよびSP値が所定の範囲内であって且つ前記エラストマーを溶解可能な溶剤を含む分散液とを、溶剤/エラストマー比が所定の値以上となるように混合する。
【0018】
<<ラテックス>>
ラテックスとしては、エラストマーが水中に分散してなるラテックスを使用する。なお、ラテックスには、エラストマーと水以外の成分(その他の成分)が含まれていてもよい。
【0019】
[エラストマー]
ラテックスに含まれるエラストマーとしては、特に限定されず、既知のエラストマーを用いることができる。具体的には、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、そして、これらの水素化物(水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−イソプレンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム、水素化スチレン−ブタジエンゴム、水素化ブタジエンゴム、水素化イソプレンゴム、水素化天然ゴム、水素化エチレン−プロピレン−ジエンゴム、水素化ブチルゴム)が挙げられる。これら上述したエラストマーには、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基などの親水性基が導入されたものも含まれる。なお、これらのエラストマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ここで、ラテックス中のエラストマーの濃度は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが特に好ましく、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。ラテックス中のエラストマーの濃度が上述した範囲内であれば、得られる混合物中においてエラストマーとCNTを十分良好に混和させることができ、結果として成形体の諸特性(耐引裂き性など)を更に向上させることができる。
【0021】
[その他の成分]
ラテックス中に含まれるその他の成分としては、特に限定されないが、例えば、重合体であるエラストマーの調製に用いた製造助剤(乳化剤など)が挙げられる。また、ラテックスは溶剤(例えば、SP値が8.0(cal/cm1/2以上10.0(cal/cm1/2以下である溶剤)を含んでいてもよい。しかしながら、ラテックス中に含まれるその他の成分の合計割合(濃度)は、8質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
[ラテックスの調製方法]
ラテックスの調製方法は、特に限定されない。例えば、1種類または2種類以上の単量体を水中で重合し、任意に水素添加を行うことで、重合体であるエラストマーが水中に分散したラテックスを得ることができる。なお、重合の方法、水素添加の方法は、何れも既知のものを使用することができる。
また、エラストマーとして天然ゴムを含むラテックスとしては、天然物(ゴム樹の樹皮を傷つけて流出する乳液)を用いることもできる。
【0023】
<<分散液>>
分散液としては、カーボンナノチューブが、分散媒としての溶剤、具体的には8.0〜10.0(cal/cm1/2のSP値を有し、そして上述したラテックス中のエラストマーを溶解可能な溶剤中に分散してなる分散液を使用する。なお、分散液には、上記カーボンナノチューブと上記所定の溶剤以外の成分(その他の成分)が含まれていてもよい。
【0024】
[カーボンナノチューブ]
CNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)および/または多層カーボンナノチューブ(多層CNT)を用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層CNTであることがより好ましい。単層CNTを使用すれば、多層CNTを使用した場合と比較して、得られるエラストマー組成物から形成される成形体に、より優れた耐引裂き性を発揮させることができる。
【0025】
また、CNTの平均直径は、0.1nm以上であることが好ましく、0.5nm以上であることがより好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、3.5nm以上であることが特に好ましく、1000nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。CNTの平均直径が上述した範囲内であれば、得られるエラストマー組成物から形成される成形体に、より優れた耐引裂き性を発揮させることができる。
【0026】
そして、CNTとしては、市販品を用いてもよいし、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)で、効率的に製造してもよい。
【0027】
ここで、分散液中のCNTの濃度は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましく、0.2質量%以上であることがより一層好ましく、0.3質量%以上であることが特に好ましく、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。分散液中のCNTの濃度が上述した範囲内であれば、得られる混合物中においてエラストマーとCNTを十分良好に混和させることができ、結果として成形体の諸特性(耐引裂き性など)を更に向上させることができる。
【0028】
[溶剤]
CNTの分散媒である溶剤としては、SP値が8.0(cal/cm1/2以上10.0(cal/cm1/2以下の溶剤を使用する。溶剤のSP値が8.0(cal/cm1/2未満であると、ラテックスと分散液を混合した際に水と溶剤が馴染み難く、CNTとエラストマーが良好に混和された状態にある混合物を得ることができない。一方、溶剤のSP値が10.0(cal/cm1/2超であると、ラテックスと分散液を混合した際にエラストマーが溶剤に溶解し難く、その結果、各成分と溶媒とのバランスが崩れるものと推定されるが、凝集物(ダマ)が生じてしまい、CNTとエラストマーが良好に混和された状態にある混合物を得ることができない。そして、CNTとエラストマーが不均一な混和状態にある混合物を用いても、所望のエラストマー組成物を効率良く製造することはできない。
【0029】
ここで、SP値が8(cal/cm1/2以上10(cal/cm1/2以下の溶剤としては、例えば、アセトン(SP値:10.0)、メチルエチルケトン(SP値:9.3)、テトラヒドロフラン(SP値:9.4)およびトルエン(SP値:8.8)が挙げられる。これらの溶剤を用いることで、CNTとエラストマーが十分良好に混和した混合物を得て、結果として成形体の耐引裂き性を更に向上させることができる。なお、SP値が8(cal/cm1/2以上10(cal/cm1/2以下の溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
加えて、SP値が上述した範囲内である溶剤は、1−オクタノール/水分配係数(log Pow)が1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましく、−2.0以上であることが好ましく、−1.0以上であることがより好ましい。1−オクタノール/水分配係数が上述の範囲内である溶剤を用いることで、後述する固形物の取得工程において、水性溶媒を用いた凝固によって、効率よく固形物を取得することが出来る。
なお、本発明において、「1−オクタノール/水分配係数」は、JIS 7260−117:2006に準拠した方法で測定することができる。
そして、上述したSP値が8(cal/cm1/2以上10(cal/cm1/2以下の溶剤の中でも、1−オクタノール/水分配係数(log Pow)が1.0以下である溶剤としては、アセトン(log Pow:−0.24)、メチルエチルケトン(log Pow:0.29)、テトラヒドロフラン(log Pow:0.46)が挙げられる。
【0031】
そして、上述した中でも、溶剤としては、取り扱い性に優れる観点から、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0032】
[その他の成分]
分散液中に含まれるその他の成分としては、特に限定されない。例えば、分散液は、分散媒として、水や、SP値が8.0〜10.0(cal/cm1/2の範囲外である溶剤(以下、これらを纏めて「その他の分散媒」という。)を含んでいてもよい。しかしながら、分散液中に含まれるその他の分散媒の割合は、8質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0033】
また例えば、分散液は、分散剤を含んでいてもよい。分散剤としては、CNTの分散を補助するものであれば特に限定されないが、界面活性剤や多糖類が挙げられる。
【0034】
界面活性剤としては、例えば、スルホコハク酸塩系アニオン性界面活性剤(製品名:ライオン社製のリパール(登録商標;以下同じ)835l、リパール860K、リパール870P、リパールMSC、リパールMSE、リパールNTD、花王ケミカル社製のペレックス(登録商標;以下同じ)TR、ペレックスTA、ペレックスOT−P)、アルキルエーテルスルホン酸ナトリウム塩系アニオン性界面活性剤(製品名:花王ケミカル社製のペレックスSS−L、ペレックスSS−H)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(製品名:ライオン社製のライボンLS−250、ライボンPS−230、ライボンPS260、ライボンPS860、LN2050D、LN2450、BN2060)、ラウリル硫酸ナトリウム(製品名:花王ケミカル社製のエマール(登録商標;以下同じ)10G、エマール10PT、エマール2F−30、エマール2FG、エマール2Fペースト、エマールO、エマールOS、なお、ドデシル硫酸ナトリウムとしても市販されている)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(製品名:花王ケミカル社製のネオペレックス(登録商標;以下同じ)G−15、ネオペレックスG−25、ネオペレックスG−65)、1−ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、1−オクタデカンスルホン酸ナトリウム、1−ペンタデカンスルホン酸ナトリウム、1−テトラデカンスルホン酸ナトリウム、1−トリデカンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコールエトキシレート(製品名:ADEKA社製のアデカトール(登録商標;以下同じ)LA675B、アデカトールLA775、アデカトール875、アデカトールLA975、アデカトールLA1275)、第2級アルコールエトキシレート(製品名:ADEKA社製のアデカトールSO−105、アデカトールSO120、アデカトールSO135、アデカトールSO145)、特殊フェノールエトキシレート(製品名:ADEKA社製のアデカトールSP−12、アデカトールPC−1、アデカトールPC−6、アデカトールPC−10)が挙げられる。
【0035】
多糖類としては、例えば、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
【0036】
なお、分散剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、分散剤は、上記の通りCNTの分散媒中での分散を補助しうる。しかしながら、分散剤は、得られるエラストマー組成物から成形体を得る過程において析出(ブリード)してしまう場合がある。更には、本発明者らの検討によれば、エラストマー組成物中に分散剤が残存することで、成形体の耐引裂き性が低下することが明らかとなった。このような観点からは、分散液中に含まれる分散剤の濃度は、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.02質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0037】
[分散液の調製方法]
分散液の調製方法は、特に限定されない。例えば、上述したCNTおよび所定範囲内のSP値を有する溶剤、並びに任意使用のその他の成分をビーズミルなどの既知の混合機を用いて混合することで、CNTが所定の溶剤中に分散した分散液を調製することができる。
また例えば、所定範囲内のSP値を有する溶剤に対して、CNTおよび任意使用のその他の成分を添加した後、得られたCNT含有液に分散処理を施してCNTを分散させることにより、CNTが所定の溶剤中に分散した分散液を調製することができる。
ここで、CNT含有液中のCNTを分散させる際の分散処理としては、特に限定されることなく、既知の分散処理を用いることができる。具体的には、分散処理としては、キャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理を用いることができる。なお、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、液中に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波ホモジナイザーによる分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌装置による分散処理が挙げられる。また、解砕効果が得られる分散処理は、CNT含有液にせん断力を与えてCNTの凝集体を解砕・分散させ、さらにCNT含有液に背圧を負荷することで、気泡の発生を抑制しつつ、CNTを分散媒中に均一に分散させる分散方法である。そして、解砕効果が得られる分散処理は、市販の分散システム(例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)など)を用いて行うことができる。
【0038】
<<ラテックスと分散液の混合>>
上記ラテックスと上記分散液を混合して混合物を調製するに際し、溶剤/エラストマー比が、4以上であることが必要であり、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましく、32.8以上であることが特に好ましい。溶剤/エラストマー比が4未満であると、ラテックスと分散液を混合した際にエラストマーを溶剤に十分に溶解させることができず、CNTとエラストマーが良好に混和された混合物を得ることができない。そして、CNTとエラストマーが不均一な混和状態にある混合物を用いても、所望のエラストマー組成物を効率良く製造することはできない。一方、溶剤/エラストマー比の上限は、特に限定されないが、後述する固形物回収工程において固形物を容易に得る観点からは100以下が好ましい。
【0039】
なお、ラテックスと分散液を混合する方法は特に限定されず、例えば、スターラー等を用いた既知の攪拌方法を採用することができる。
【0040】
<その他の工程>
本発明のエラストマー組成物の製造方法は、上述した混合工程以外の工程を含んでいてもよい。例えば、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、所望のエラストマー組成物を十分に効率良く製造する観点から、上述した混合工程で得られた混合物から、混合物に含まれる水および溶剤を除去して、固形物を回収する工程(固形物回収工程)を含むことが好ましい。
【0041】
固形物回収工程において、混合物から、少なくともエラストマーおよびCNTを含む固形物を回収する方法は、特に限定されないが、例えば、混合物中の固形分(特にはエラストマー)を凝固させることで凝固物として固形物を回収する方法、混合物を乾燥して水および溶剤を除去することで乾燥物として固形物を回収する方法、が挙げられるが、効率よく固形物を回収する観点から、前者が好ましい。すなわち、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、固形物回収工程として、上述した混合工程で得られた混合物から、凝固により固形物を回収する工程(凝固工程)を含むことが好ましい。
凝固方法としては、溶剤中に溶解したエラストマーを凝固させることができれば特に限定されず、既知の凝固方法を用いることができる。例えば、混合工程で得られた混合物を多量の水性溶媒に少量ずつ滴下することで、混合物中の固形分を凝固させて固形物を析出させることができる。
ここで、水性溶媒としては、水や、水と混和可能な有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール)が挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。なお、水性溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、水性溶媒は、硫酸、酢酸、蟻酸、リン酸、塩酸などの酸や、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化カリウム等の塩を含んでいてもよい。
【0042】
本発明のエラストマー組成物の製造方法が、更に含み得る工程としては、例えば、上述した固形物回収工程の後、得られた固形物を水洗する工程(水洗工程)、水洗工程後の固形物を乾燥する工程(水洗後乾燥工程)が挙げられる。
水洗工程において固形物を水洗する方法は、特に限定されず既知の方法を採用することができる。また、水洗後乾燥工程において、水洗を行った後の固形物を乾燥する方法としては、温風乾燥、減圧乾燥などの既知の方法を採用することができる。また、乾燥条件は、エラストマー組成物の用途などに応じて適宜設定することができる。
【0043】
更に、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、任意に上記水洗工程等を経た固形物に対し、エラストマー組成物から形成される成形体の所望の性状などに応じた添加剤を添加する工程(添加剤添加工程)を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、軟化剤、粘着付与剤、離型剤、防臭剤、香料が挙げられる。なお、これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そしてこれらの中でも、添加剤としては、エラストマー組成物の成形性向上、およびエラストマー組成物から形成される成形体の機械的強度確保などのため、架橋剤を用いることが好ましい。架橋剤としてはエラストマーの架橋剤として使用されるものであれば限定されない。代表的な架橋剤としては、エラストマーの不飽和結合間を架橋する硫黄系架橋剤または有機過酸化物架橋剤が挙げられ、硫黄系架橋剤が好ましい。
【0044】
硫黄系架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄及び不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼノピン−2)、含リンポリスルフィド及び高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物が挙げられる。
【0045】
有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,3−及び1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ビス−(t−ブチル−ペルオキシ)−n−ブチルバレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、p−クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシベンゾエートが挙げられる。
【0046】
なお、架橋剤の添加量は特に限定されないが、エラストマー100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0047】
(成形体)
上述した本発明のエラストマー組成物の製造方法を用いて得られるエラストマー組成物を成形することで、耐引裂き性に優れる成形体を得ることができる。成形方法は、特に限定されず既知の方法を採用することができる。なお成形体を得るに際し、エラストマー組成物が架橋剤を含む場合は、成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。架橋方法については、特に限定されず既知の方法を採用することができる。また、成形体の形状は、シート状など成形体の用途に応じた任意の形状とすることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例において、混合工程で得られる混合物の混和状態、固形物回収工程における固形物の析出の有無、固形物中の分散剤量、および成形体の耐引裂き性は、以下の方法を使用して評価した。
【0049】
<混合物の混和状態>
混合工程で得られた混合物を目視で確認し、下記の基準で混和状態を評価した。
A:エラストマーおよびCNTが均一に混和した状態である。
B:エラストマーの凝固および/またはCNTの析出により、凝集物(ダマ)の発生が確認された。
<固形物の析出有無>
混合物を、希硫酸(pH=4)に滴下することにより固形物(凝固物)を良好に析出できたかを、目視により確認した。
A:混合物を希硫酸(pH=4)に滴下することで、固形物(凝固物)を析出させることができた。
B:混合物を希硫酸(pH=4)へ滴下しても、固形物(凝固物)を析出させることができなかった。
<固形物中の分散剤量>
水洗工程および水洗後乾燥工程後に得られたCNTとエラストマーの複合体から分散剤成分を抽出し、液体クロマトグラフィーで定量した。
<成形体の耐引裂き性>
得られたシート状の成形体から、JIS K6252に従い、切込みなしアングル形の打ち抜き刃で打ち抜くことで試験片を得て、列理方向に引裂き試験を行い、引裂き強度を測定した。引裂き強度の値が高いほど、成形体が耐引裂き性に優れることを示す。
【0050】
(実施例1)
<ラテックスの準備>
金属製ボトル中に、イオン交換水629質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度:10質量%)25質量部、アクリロニトリル37質量部、マレイン酸モノn−ブチル4質量部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5質量部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、ブタジエン59質量部を仕込んだ。次いで、金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、金属製ボトルを回転させながら16時間重合反応を行った。そして、ハイドロキノン水溶液(重合停止剤、濃度10質量%の)0.1部を加えて重合反応を停止させた。次いで、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、アクリロニトリル単位37質量%、ブタジエン単位59質量%、およびマレイン酸モノn−ブチル単位4質量%を有する重合体(カルボン酸基を含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム)のラテックス(固形分濃度:14質量%)を得た。なお、得られたカルボン酸基を含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムは、メチルエチルケトンに溶解可能であった。
<分散液の調製>
99.7kgのメチルエチルケトン(MEK)と0.3kgのカーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO SG101」、単層CNT、平均直径:3.5nm)を含むCNT含有液に対して、ジェットミルを用いて分散処理を施し、分散液(CNT濃度:0.3質量%)を得た。
<混合工程>
上述のようにして得られた分散液4.6gをスターラーで攪拌しながら、当該分散液に、上述のラテックス1gを滴下した(溶剤/エラストマー比:32.8)。滴下終了後、5分間攪拌(スターラーの回転速度:400回転/秒)して、評価用の混合物を得た。得られた混合物を目視で確認したところ、エラストマーおよびCNTが均一に混和しており、混和状態は良好であった(「混合物の混和状態」の評価結果を表1に示す)。
また、上述のようにして得られた分散液4600gをスターラーで攪拌しながら、当該分散液に、上述のラテックス1000gを滴下した(溶剤/エラストマー比:32.8)。滴下後、5分間攪拌(スターラーの回転速度:400回転/秒)して、混合物5600gを得た。
<固形物回収工程>
上述の混合工程で得られた混合物5600gを、攪拌下の希硫酸(pH=4)56000gに滴下したところ、固形物(凝固物)を析出させることができた(「固形物の析出有無」の評価結果を表1に示す)。
<水洗工程および水洗後乾燥工程>
上記固形物回収工程で得られた固形物を3回水洗した後乾燥して、CNTとエラストマーの複合体139gを得た。このCNTとエラストマーの複合体中の分散剤量を測定した。結果を表1に示す。
<成形体の作製工程>
バンバリーミキサーに、上述のようにして得られた複合体55g、カルボン酸基を含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム(上述「ラテックスの準備」と同様にして得られたラテックスの凝固物)50g、可塑剤(アデカ社製、製品名「アデカサイザー C−8」)5g、老化防止剤(大内新興化学工業社製、製品名「ノクラックCD」)1.5g、ステアリン酸1g、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業社製、製品名「フォスファノールRL210」1gを投入し、これらを50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合体を50℃のロールに移して、架橋剤(デュポン社製、製品名「Diak ♯1」)2.4g、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7(DBU)(RheinChemie社製、製品名「RHENOGRAN XLA−60」4gを混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を金型に入れ、プレス機で加圧しながら170℃で20分間プレス成形して、シート状の成形体(ゴム架橋物)を得た。得られた成形体の引裂き強度(耐引裂き性)の評価結果を表1に示す。また、この成形体表面にブリードは確認されなかった。
【0051】
(実施例2)
以下のようにして分散液の調製を実施した以外は、実施例1と同様にして、ラテックスを準備し、そして、混合工程、固形物回収工程、水洗工程、水洗後乾燥工程、および成形体の作製工程を実施した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
<分散液の調製>
99.68kgのメチルエチルケトン(MEK)、0.3kgのカーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO SG101」、単層CNT、平均直径:3.5nm)、および0.022kgの分散剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を含むCNT含有液に対して、ジェットミルを用いて分散処理を施し、分散液(CNT濃度:0.3質量%)を得た。
【0052】
(比較例1)
<ラテックスの準備>
実施例1と同様の、カルボン酸基を含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムのラテックスを準備した。
<分散液の調製>
98.5kgの水、0.3kgのカーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO SG101」、単層CNT、平均直径:3.5nm)、および1.2kgの分散剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を含むCNT含有液に対して、ジェットミルを用いて分散処理を施し、分散液(CNT濃度:0.3質量%)を得た。
<混合工程>
上述のようにして得られた分散液5gをスターラーで攪拌しながら、当該分散液に、上述のラテックス1gを滴下した(ラテックス中のエラストマーの質量に対する分散液中の水の質量の比(水/エラストマー比):35.6)。滴下後、5分間攪拌(スターラーの回転速度:400回転/秒)して、評価用の混合物を得た。得られた混合物を目視で確認したところ、エラストマーおよびCNTが均一に混和しており、混和状態は良好であった(「混合物の混和状態」の評価結果を表1に示す)。
また、上述のようにして得られた分散液5000gをスターラーで攪拌しながら、当該分散液に、上述のラテックス1000gを滴下した(水/エラストマー比:35.6)。滴下後、5分間攪拌(スターラーの回転速度:400回転/秒)して、混合物6000gを得た。
<固形物回収工程>
上述の混合工程で得られた混合物6000gを、攪拌下の希硫酸(pH=4)60000gに滴下したところ、固形物(凝固物)を析出させることができた(「固形物の析出有無」の評価結果を表1に示す)。
<水洗工程および水洗後乾燥工程>
上記固形物回収工程で得られた固形物を13回水洗した後乾燥して、CNTとエラストマーの複合体136gを得た。このCNTとエラストマーの複合体中の分散剤量を測定した。結果を表1に示す。
<成形体の作製工程>
上記水洗工程および水洗後乾燥工程で得られた複合体55.9gを用いた以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体の引裂き強度(耐引裂き性)の評価結果を表1に示す。また、この成形体表面には、ブリードが確認された。
【0053】
(比較例2)
<ラテックスの準備>
実施例1と同様の、カルボン酸基を含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムのラテックスを準備した。
<分散液の調製>
99.7kgの水と0.3kgのカーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO SG101」、単層CNT、平均直径:3.5nm)を含むCNT含有液に対して、ジェットミルを用いて分散処理を施し、分散液(CNT濃度:0.3質量%)を得た。
<混合工程>
上述のようにして得られた分散液5gをスターラーで攪拌しながら、当該分散液に、上述のラテックス1gを滴下した(水/エラストマー比:35.6)。滴下後、5分間攪拌(スターラーの回転速度:400回転/秒)して、評価用の混合物を得た。得られた混合物を目視で確認したところ、凝集物が発生してしまい、不均一な状態であったため、固形物回収工程以降の工程は実施しなかった(「混合物の混和状態」の評価結果を表1に示す)。
【0054】
(比較例3)
<ラテックスの準備>
実施例1と同様の、カルボン酸基を含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムのラテックスを準備した。
<分散液の調製>
99.7kgのメタノール(SP値:14.5)と0.3kgのカーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO SG101」、単層CNT、平均直径:3.5nm)を含むCNT含有液に対して、ジェットミルを用いて分散処理を施し、分散液(CNT濃度:0.3質量%)を得た。
<混合工程>
上述のようにして得られた分散液5gをスターラーで攪拌しながら、当該分散液に、上述のラテックス1gを滴下した(溶剤/エラストマー比:35.6)。滴下後、5分間攪拌(スターラーの回転速度:400回転/秒)して、評価用の混合物を得た。得られた混合物を目視で確認したところ、凝集物が発生してしまい、不均一な状態であったため、固形物回収工程以降の工程は実施しなかった(「混合物の混和状態」の評価結果を表1に示す)。
【0055】
(比較例4)
<ラテックスの準備>
実施例1と同様の、カルボン酸基を含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムのラテックスを準備した。
<分散液の調製>
実施例1と同様にして、分散液(CNT濃度:0.3質量%)を得た。
<混合工程>
上述のようにして得られた分散液3.3gをスターラーで攪拌しながら、当該分散液に、上述のラテックス14.4gを滴下した(溶剤/エラストマー比:1.6)。滴下後、5分間攪拌(スターラーの回転速度:400回転/秒)して、評価用の混合物を得た。得られた混合物を目視で確認したところ、凝集物が発生してしまい、不均一な状態であったため、固形物回収工程以降の工程は実施しなかった(「混合物の混和状態」の評価結果を表1に示す)。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より、エラストマーを含むラテックスと、所定範囲内にSP値を有し且つラテックス中のエラストマーを溶解可能な溶剤中にCNTが分散させてなる分散液とを、溶剤/エラストマー比が所定の値以上となるように混合して混合物を得て、当該混合物から固形物を回収した実施例1〜2では、優れた耐引裂き性を有する成形体を形成可能なエラストマー組成物を、効率良く製造できることが分かる。
一方、CNTを水中に分散させてなる分散液を用いた比較例1では、CNTを水中に分散させるために多くの分散剤を用いており、固形物中に残留した分散剤量が過多となったためと推察されるが、成形体の耐引裂き性が低下してしまうことが分かる。
また、分散剤を使用せずにCNTを水中に分散させて得られる分散液を用いた比較例2では、上述したように凝集物が発生してしまいエラストマーおよびCNTが良好に混和した混合物を得ることができなかった。
更に、分散液の溶剤として、SP値が所定の範囲外であるメタノールを用いた比較例3では、上述したように凝集物が発生してしまいエラストマーおよびCNTが良好に混和した混合物を得ることができなかった。
そして、エラストマーを含むラテックスと、所定範囲内にSP値を有する溶剤中にCNTが分散させてなる分散液とを、溶剤/エラストマー比が所定の値未満となるように混合して混合物を得た比較例4では、上述したように凝集物が発生してしまいエラストマーおよびCNTが良好に混和した混合物を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法によれば、耐引裂き性に優れる成形体を供給可能なエラストマー組成物を、効率良く製造することができる。
【国際調査報告】