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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年5月14日
【発行日】2021年9月24日
(54)【発明の名称】ランフラットタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/00 20060101AFI20210827BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210827BHJP
【FI】
   B60C17/00 B
   B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】42
【出願番号】特願2020-555588(P2020-555588)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2018-211515(P2018-211515)
(32)【優先日】2018年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】額賀 英幸
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA07
3D131AA30
3D131AA39
3D131BA01
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB10
3D131BC31
3D131BC32
3D131BC42
3D131BC51
3D131DA07
3D131DA09
3D131DA52
3D131HA14
3D131HA15
3D131HA28
3D131JA02
3D131JA03
3D131LA28
(57)【要約】
【解決手段】ビードワイヤー及び前記ビードワイヤーを被覆し樹脂組成物により形成される被覆樹脂層を有するビードコアと、タイヤサイド部に設けられゴム組成物により形成されるサイド補強ゴムと、を備え、前記樹脂組成物は熱可塑性エラストマーを含み、前記サイド補強ゴムの1%引張弾性率が8MPa以下であり、且つ、100%モジュラスが10MPa以上である、ランフラットタイヤ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードワイヤー及び前記ビードワイヤーを被覆し樹脂組成物により形成される被覆樹脂層を有するビードコアと、
タイヤサイド部に設けられゴム組成物により形成されるサイド補強ゴムと、
を備え、
前記樹脂組成物は熱可塑性エラストマーを含み、
前記サイド補強ゴムの1%引張弾性率が8MPa以下であり、且つ、100%モジュラスが10MPa以上である、
ランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記被覆樹脂層のメルトフローレートが0.5g/10min以上16.5g/10min以下である請求項1に記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記被覆樹脂層の引張弾性率が50MPa以上1000MPa以下である請求項1又は請求項2に記載のランフラットタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム組成物が、ゴムと充填材とを含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【請求項5】
前記ゴム組成物が、前記ゴム100質量部に対し前記充填材を75質量部以下で含む、請求項4に記載のランフラットタイヤ。
【請求項6】
前記サイド補強ゴムの架橋密度が、5×10−4mol/ml以上10×10−4mol/ml以下である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
パンク等によりタイヤの内圧が低下した状態でも、タイヤが荷重支持能力を失うことなくある程度の距離を安全に走行することが可能なタイヤ、いわゆるランフラットタイヤとして、タイヤのサイドウォール部のカーカスの内面に、比較的モジュラスが高い断面三日月状のサイド補強ゴム層を配置してサイドウォール部の剛性を向上させ、内圧低下時にサイドウォール部の撓み変形を極端に増加させることなく荷重を負担できるようにしたタイヤや、サイドウォール部を各種補強部材で補強したタイヤ等の、サイド補強タイプのランフラットタイヤが各種提案されている。
【0003】
特許文献1には、タイヤサイド部をサイド補強ゴムで補強し、ランフラット走行時(つまり、空気圧が低下した異常走行時)の耐久性を確保したサイド補強型のランフラットタイヤが開示されている。
【0004】
[特許文献1]特開2013−95369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の課題は、通常走行時の乗り心地性とランフラット走行耐久性とを両立したランフラットタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、以下の本開示により解決される。
[1] ビードワイヤー及び前記ビードワイヤーを被覆し樹脂組成物により形成される被覆樹脂層を有するビードコアと、
タイヤサイド部に設けられゴム組成物により形成されるサイド補強ゴムと、
を備え、
前記樹脂組成物は熱可塑性エラストマーを含み、
前記サイド補強ゴムの1%引張弾性率が8MPa以下であり、且つ、100%モジュラスが10MPa以上である、
ランフラットタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
特許文献1に記載されるサイド補強型のランフラットタイヤでは、ランフラット走行時の耐久性、つまり内圧低下時の荷重支持性を向上させるためには、サイド補強ゴムの弾性を高めることが望ましい。一方で、サイド補強ゴムは、弾性が高くなるほど柔軟性が低下する傾向にある。そのため、通常走行時の乗り心地が悪くなる。
上述するように、サイド補強型のランフラットタイヤでは、サイド補強ゴムによるランフラット走行時の耐久性向上と通常走行時の乗り心地性向上とは、二律背反の関係にある。しかし、ランフラットタイヤにおいては、このランフラット走行時の耐久性向上と通常走行時の乗り心地性向上とを両立することが望ましい。
本開示によれば、通常走行時の乗り心地性とランフラット走行耐久性とを両立したランフラットタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るランフラットタイヤを、リムに組み付けた状態でタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿って切断した切断面の片側を示す半断面図である。
図2】本実施形態に係るランフラットタイヤにおけるビードコアを示す部分拡大断面図である。
図3】本実施形態に係るランフラットタイヤにおけるベルト層を示す斜視図である。
図4】本実施形態に係るランフラットタイヤにおいて、複数本のビードワイヤーを被覆樹脂で被覆したワイヤー束でビードコアを形成した変形例を示す部分拡大断面図である。
図5】本実施形態に係るランフラットタイヤにおいて、複数本の補強コードを被覆樹脂で被覆した、断面が略平行四辺形状の樹脂被覆コードを用いてベルト層を形成した変形例を示す半断面図である。
図6】本実施形態に係るタイヤにおけるビード部の他の一例を示す、ビードワイヤーの長さ方向に対する垂直切断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
本明細書において「ゴム組成物」とは、加硫前の組成物の状態を意味する。
本明細書において、「樹脂組成物により形成される」とは、樹脂組成物を成形してなることを表す。また、「ゴム組成物により形成される」とは、ゴム組成物を成形してなることを表す。ゴム組成物の成形は、加硫を含むものであってもよい。
本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、ゴムは含まない。また、以下の樹脂の説明において「同種」とは、エステル系同士、スチレン系同士等、樹脂の主鎖を構成する骨格と共通する骨格を備えたものを意味する。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語には、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その目的が達成されるものであれば、当該工程も本用語に含まれる。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断りがない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「主成分」とは、特に断りがない限り、混合物中における質量基準の含有量が最も多い成分を意味する。
【0011】
また、本明細書において「熱可塑性樹脂」とは、温度上昇とともに材料が軟化して流動し、この流動物を冷却すると比較的硬く強度のある状態になるが、ゴム状弾性を有しない高分子化合物を意味する。
本明細書において「熱可塑性エラストマー」とは、ハードセグメント及びソフトセグメントを有する共重合体を意味する。熱可塑性エラストマーとしては、温度上昇とともに材料が軟化して、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有する高分子化合物が挙げられる。熱可塑性エラストマーとして具体的には、例えば、結晶性で融点の高いハードセグメント又は高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体が挙げられる。
なお、上記ハードセグメントは、ソフトセグメントよりも相対的に硬い成分を指す。ハードセグメントは塑性変形を防止する架橋ゴムの架橋点の役目を果たす分子拘束成分であることが好ましい。例えばハードセグメントとしては、主骨格に芳香族基若しくは脂環式基等の剛直な基を有する構造、又は分子間水素結合若しくはπ−π相互作用による分子間パッキングを可能にする構造等のセグメントが挙げられる。
また、上記ソフトセグメントは、ハードセグメントよりも相対的に柔らかい成分を指す。ソフトセグメントはゴム弾性を示す柔軟性成分であることが好ましい。例えばソフトセグメントとしては、主鎖に長鎖の基(例えば長鎖のアルキレン基等)を有し、分子回転の自由度が高く、伸縮性を有する構造のセグメントが挙げられる。
【0012】
−ランフラットタイヤ−
本実施形態に係るランフラットタイヤは、ビードワイヤー及び前記ビードワイヤーを被覆し樹脂組成物により形成される被覆樹脂層を有するビードコアと、タイヤサイド部に設けられゴム組成物により形成されるサイド補強ゴムと、を備え、前記樹脂組成物は熱可塑性エラストマーを含み、前記サイド補強ゴムの1%引張弾性率が8MPa以下であり、且つ、100%モジュラスが10MPa以上である。
【0013】
従来、ランフラットタイヤでは、ランフラット走行時の荷重支持のために、ゴム組成物により形成されるサイド補強ゴムを適用する技術が知られている。しかしながら、前記サイド補強ゴム及びゴム製のビードコアを用いたランフラットタイヤでは、前記サイド補強ゴムの弾性により、通常走行時の路面追従性が低下する、つまり、振動等により乗り心地性が低下するという問題があった。
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記構成を有することで、通常走行時の乗り心地性と、ランフラット走行時走行耐久性とを両立することが可能となることを見出した。その理由は、以下のように推察される。
【0015】
ランフラット走行時、つまり、内圧低下時にタイヤに係る荷重は、タイヤサイド部及びビード部により支持される。そのため、タイヤサイド部及びビード部は、内圧低下時にタイヤに係る荷重に応じて、歪む傾向にある。
【0016】
従来のランフラットタイヤにおいて、ビードコアの被覆層がゴム材により形成される被覆層である場合、ランフラット走行時におけるビード部の歪みが大きく、相対的にタイヤサイド部の歪みは大きくならない傾向にあった。
一方、本実施形態に係るランフラットタイヤは、ビードコアの被覆層が樹脂組成物により形成される被覆樹脂層である。そのため、ランフラット走行時のビード部の歪みは抑制される傾向にあり、相対的にタイヤサイド部に応力が集中し易くなり、タイヤサイド部の歪みが大きくなる。つまり、本実施形態に係るランフラットタイヤは、サイド補強ゴムにおける通常走行時の歪量とランフラット走行時の歪量との差が、ゴム材からなる被覆層を有するビードコアを備える従来のランフラットタイヤよりも、大きくなると考えられる。
【0017】
さらに本実施形態に係るランフラットタイヤは、サイド補強ゴムの1%引張弾性率が8MPa以下である。つまり、サイド補強ゴムが、歪みが小さい状態において柔軟性を発揮し得る。また、本実施形態に係るランフラットタイヤは、サイド補強ゴムの100%モジュラスが10MPa以上である。つまり、サイド補強ゴムが、歪みが大きい状態において高い弾性を発揮し得る。
【0018】
上述するように、本実施形態に係るランフラットタイヤは、被覆樹脂層を有するビードコアを備えているため、サイド補強ゴムにおける通常走行時の歪量とランフラット走行時の歪量との差が大きく、且つ、このサイド補強ゴムが上記範囲の1%引張弾性率及び100%モジュラスを満たす。これにより、通常走行時には柔軟性が発揮され易く、一方ランフラット走行時には高い弾性が発揮され易くなる。その結果、通常走行時の乗り心地性と、ランフラット走行時の走行耐久性とが両立されると考えられる。
【0019】
[サイド補強ゴムの性質]
以下、サイド補強ゴムの性質について説明する。
・1%引張弾性率
サイド補強ゴムの1%引張弾性率は、通常走行時の乗り心地性の観点から、8MPa以下であり、5MPa以上8MPa以下であることが好ましく、6MPa以上7MPa以下であることがより好ましい。
サイド補強ゴムの1%引張弾性率の測定は、株式会社上島製作所製スペクトロメータ−を用いて、初期荷重160mg、周波数52Hzの条件で測定を行った。
【0020】
1%引張弾性率を8MPa以下とする手法としては、特に限定されないが、例えば、サイド補強ゴムをゴムと充填材とを含む構成とし、サイド補強ゴムにおける前記充填材の分散状態を調整する手法;変性ポリブタジエンの適用などが挙げられる。
【0021】
・100%モジュラス
サイド補強ゴムの100%モジュラスは、ランフラット走行耐久性の観点から、10MPa以上であり、10MPa以上15MPa以下であることが好ましく、11MPa以上14MPa以下であることがより好ましい。
【0022】
「100%モジュラス」とは、JISダンベル状3号形サンプルを用意し、JIS K6251(2010年)に準拠して、室温で500±50mm/minの速度で引張試験を行って測定した引張応力である。
【0023】
100%モジュラスを10MPa以上とする手法としては、特に限定されないが、例えば、サイド補強ゴムの架橋密度を調整する手法;加硫促進剤を増量する手法などが挙げられる。
【0024】
・50%モジュラス
サイド補強ゴムの50%モジュラスは、ランフラット走行耐久性の観点から、3MPa以上であることが好ましく、4MPa以上6MPa以下であることがより好ましく、5MPa以上6MPa以下であることがさらに好ましい。
【0025】
「50%モジュラス」とは、JISダンベル状3号形サンプルを用意し、JIS K6251(2010年)に準拠して、室温で500±50mm/minの速度で引張試験を行って測定した引張応力である。
【0026】
50%モジュラスを3MPa以上とする手法としては、特に限定されないが、例えば、サイド補強ゴムの架橋密度を調整する手法;加硫促進剤を増量する手法;などが挙げられる。
【0027】
[ランフラットタイヤの具体例]
本実施形態に係るランフラットタイヤについて、一例を挙げて図面に基づき説明する。
図1には、本実施形態のランフラットタイヤ(以下、「タイヤ10」と称する。)のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿って切断した切断面(タイヤ周方向に沿った方向から見た断面)の片側が示されている。なお、図中矢印Wはタイヤ10の幅方向(つまり、タイヤ幅方向)を示し、矢印Rはタイヤ10の径方向(つまり、タイヤ径方向)を示す。ここでいうタイヤ幅方向とは、タイヤ10の回転軸と平行な方向を指している。また、タイヤ径方向とは、タイヤ10の回転軸と直交する方向をいう。また、符号CLはタイヤ10の赤道面(タイヤ赤道面)を示している。
【0028】
また、本実施形態では、タイヤ径方向に沿ってタイヤ10の回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」、タイヤ径方向に沿ってタイヤ10の回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」と記載する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と記載する。
【0029】
(タイヤ)
図1は、標準リムであるリム30に組み付けて標準空気圧を充填したときのタイヤ10を示している。なお、ここでいう「標準リム」とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2018年版規定のリムを指す。また、上記標準空気圧とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2018年版の最大負荷能力に対応する空気圧である。
【0030】
図1に示されるように、タイヤ10は、一対のビード部12と、ビード部12に埋設されたビードコア26に跨り端部がビードコア26に係止されたカーカス14と、ビード部12に埋設されビードコア26からタイヤ径方向外側へカーカス14の外面に沿って伸びるビードフィラー28と、タイヤサイド部22に設けられカーカス14の内面に沿ってタイヤ径方向に延びるサイド補強ゴム24と、カーカス14のタイヤ径方向外側に設けられたベルト層40と、ベルト層40のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド20と、を備えている。なお、図1では、片側のビード部12のみが図示されている。
【0031】
ベルト層40のタイヤ径方向外側には、タイヤ10の外周部を構成するトレッド20が設けられている。タイヤサイド部22は、ビード部12側のサイドウォール下部22Aと、トレッド20側のサイドウォール上部22Bとで構成され、ビード部12とトレッド20とを連結している。
【0032】
(ビード部)
一対のビード部12には、ワイヤー束を含むビードコア26がそれぞれ埋設されている。これらのビードコア26には、カーカス14が跨っている。ビードコア26の断面の構造としては、円形や多角形状など、空気入りタイヤにおけるさまざまな構造を採用することができ、多角形としては例えば六角形を採用することができるが、本実施形態においては四角形とされている。
【0033】
図2に示すように、ビードコア26は樹脂に被覆された1本のビードワイヤー26Aを複数回巻回し、積層して形成される。具体的には、樹脂に被覆されたビードワイヤー26Aをタイヤ幅方向に隙間無く巻回して一段目の列を形成し、以後同様にして隙間無くタイヤ径方向外側に積み重ね、断面形状が四角形状のビードコア26を形成する。このとき、タイヤ幅方向及び径方向に互いに隣接するビードワイヤー26Aの被覆樹脂同士は互いに接合される。これにより、ビードワイヤー26Aが被覆樹脂26Bで被覆されたビードコア26が形成される。
【0034】
図1に示すように、ビード部12のカーカス14で囲まれた領域(つまり、カーカス14においてビードコア26周りにタイヤ幅方向内側に配置された部分の外側の領域)には、ビードコア26からタイヤ径方向外側へ延びる樹脂製のビードフィラー28が埋設されている。
なお、図1に示すタイヤでは、樹脂製のビードフィラー28を用いているが、本実施形態はこれに限定されず、ゴム製のビードフィラーを用いていてもよい。
なお、ゴム製のビードフィラーなどゴム製の部材を被覆樹脂26Bに直に接触させて用いる場合、又は、ゴム製の部材を他の部材を間に介して隣接させて用いる場合、ゴム材の破壊性が低下することを抑制する観点から、金属(例えば、コバルト等)及び加硫促進剤(例えば、N,N―ジシクロヘキシルベンゾチアゾール―2―スルフェンアミド:DCBS等)を含まない組成であることが好ましい。
【0035】
(カーカス)
カーカス14は、2枚のカーカスプライ14A、14Bによって構成されたタイヤ骨格部材である。カーカスプライ14Aはタイヤ赤道面CLにおいてタイヤ径方向外側に配置されるカーカスプライであり、カーカスプライ14Bはタイヤ径方向内側に配置されるカーカスプライである。カーカスプライ14A、14Bは、それぞれ複数本のコードを被覆ゴムで被覆して形成されている。
【0036】
このようにして形成されたカーカス14が、一方のビードコア26から他方のビードコア26へトロイド状に延びてタイヤの骨格を構成している。また、カーカス14の端部側は、ビードコア26に係止されている。具体的には、カーカス14は、端部側がビードコア26周りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ折り返されて係止されている。また、カーカス14の折り返された端部(つまり、端部14AE、14BE)は、タイヤサイド部22に配置されている。カーカスプライ14Aの端部14AEは、カーカスプライ14Bの端部14BEよりもタイヤ径方向内側に配置されている。
【0037】
なお、本実施形態では、カーカス14の端部をタイヤサイド部22に配置する構成としているが、本実施形態はこの構成に限定されず、例えばカーカス14の端部をベルト層40に配置する構成としてもよい。また、カーカス14の端部側を折り返さず、複数のビードコア26で挟み込んだり、ビードコア26に巻き付けた構造を採用したりすることもできる。本明細書において、カーカス14の端部をビードコア26に「係止」するとは、これらのような各種の実施形態を含むものとする。
【0038】
なお、本実施形態においてカーカス14はラジアルカーカスとされている。また、カーカス14の材質は特に限定されず、レーヨン、ナイロン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、ガラス繊維、カーボン繊維、スチール等が採用できる。なお、軽量化の点からは、有機繊維コードが好ましい。また、カーカスの打ち込み数は20〜60本/50mmの範囲とされているが、この範囲に限定されるのもではない。
【0039】
(ベルト層)
カーカス14のタイヤ径方向外側には、ベルト層40が配設されている。図3に示すように、ベルト層40は、樹脂被覆コード42がカーカス14の外周面にタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻かれて形成されたリング状の箍である。
【0040】
樹脂被覆コード42は、ベルト層40が、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に沿った環状面から、この環状面の外側(例えば図3に矢印C1、C2で示した方向)へ変形しにくくなるよう、補強コード42Cを被覆樹脂42Sで被覆して構成されている。樹脂被覆コード42は、図1に示すように、断面が略正方形状とされている。樹脂被覆コード42のタイヤ径方向の内周部分の被覆樹脂42Sは、カーカス14の外周面にゴムや接着剤を介して接合されて構成されている。また、樹脂被覆コード42のタイヤ幅方向に互いに隣接する被覆樹脂42S同士は、熱溶着や接着剤などで一体的に接合されている。これにより、被覆樹脂42Sにて被覆された補強コード42Cを有するベルト層40(具体的には樹脂被覆ベルト層)が形成される。
【0041】
本実施形態では、樹脂被覆コード42は、1本の補強コード42Cを被覆樹脂42Sで被覆して構成しているが、複数本の補強コード42Cを被覆樹脂42Sで被覆して構成してもよい。
【0042】
本実施形態のビードコア26における被覆樹脂26B、ビードフィラー28、及びベルト層40における被覆樹脂42Sに用いられる樹脂材料は、熱可塑性エラストマーとされている。但し本実施形態はこれに限らず、例えば樹脂材料として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び(メタ)アクリル系樹脂、EVA樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の汎用樹脂のほか、エンジニアリングプラスチック等を用いることができる。なお、ここでの樹脂材料には、ゴムは含まれない。エンジニアリングプラスチックは、スーパーエンジニアリングプラスチックを含む。
【0043】
被覆樹脂26B、ビードフィラー28及び被覆樹脂42Sに用いられる樹脂材料については、後のビードコアの説明における被覆樹脂の項目で詳述する。
【0044】
本実施形態では、ベルト層40における被覆樹脂42Sは樹脂材料を用いて形成されているが、ベルト層40における補強コード42Cを覆う被覆層は、ゴム材で形成されていてもよい。なお、ゴム製の被覆層を有するベルト層40を用いる場合、ゴム材の破壊性が低下することを抑制する観点から、前記被覆層は、金属(例えば、コバルト等)及び加硫促進剤(例えば、N,N―ジシクロヘキシルベンゾチアゾール―2―スルフェンアミド:DCBS等)を含まない組成であることが好ましい。
また、前記被覆層に隣接するゴム製の部材(例えば、クッション性を付与する目的で設けられるトレッドアンダークッション、ベルトアンダークッション等)においても、金属(例えば、コバルト等)及び加硫促進剤(例えば、N,N―ジシクロヘキシルベンゾチアゾール―2―スルフェンアミド:DCBS等)を含まない組成であることが好ましい。
【0045】
また、本実施形態のビードコア26におけるビードワイヤー26A、及びベルト層40における補強コード42Cは、スチールコードとされている。このスチールコードは、スチールを主成分とし、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、銅、クロムなど種々の微量含有物を含んでいてもよい。
【0046】
なお、本実施形態はこれに限らず、ビードコア26におけるビードワイヤー26A、ベルト層40における補強コード42Cとしては、スチールコードに代えて、モノフィラメントコードや、複数のフィラメントを撚り合せたコードを用いることができる。撚り構造も種々の設計が採用可能であり、断面構造、撚りピッチ、撚り方向、隣接するフィラメント同士の距離も様々なものが使用できる。さらには異なる材質のフィラメントを縒り合せたコードを採用することもで、断面構造としても特に限定されず、単撚り、層撚り、複撚りなど様々な撚り構造を取ることができる。
【0047】
(トレッド)
ベルト層40のタイヤ径方向外側には、トレッド20が設けられている。トレッド20は、走行中に路面に接地する部位であり、トレッド20の踏面には、タイヤ周方向に延びる周方向溝50が複数本形成されている。周方向溝50の形状や本数は、タイヤ10に要求される排水性や操縦安定性等の性能に応じて適宜設定される。
【0048】
(サイド補強ゴム)
タイヤサイド部22は、タイヤ径方向に延びてビード部12とトレッド20とをつなぎ、ランフラット走行時にタイヤ10に作用する荷重を負担できるように構成されている。このタイヤサイド部22においてカーカス14のタイヤ幅方向内側には、タイヤサイド部22を補強するサイド補強ゴム24が設けられている。サイド補強ゴム24は、パンクなどでタイヤ10の内圧が減少した場合に、車両及び乗員の重量を支えた状態で所定の距離を走行させるための補強ゴムである。
【0049】
サイド補強ゴム24は、1種類のゴム材で形成されていてもよく、複数のゴム材で形成されていてもよい。
【0050】
このサイド補強ゴム24は、ゴムが主成分であれば、他に充填材、短繊維、樹脂等の材料を含んでもよく、充填材を含むことが好ましい。さらに、ランフラット走行時の耐久力を高めるため、サイド補強ゴム24を構成するゴム材として、硬さが70〜85のゴム材を含んでもよい。ここでいうゴムの硬さとは、JIS K6253で規定される、タイプAデュロメータにより測定される硬さを指す。さらに、粘弾性スペクトロメータ(例えば、東洋精機製作所製スペクトロメータ)を用いて周波数20Hz、初期歪み10%、動歪み±2%、温度60℃の条件で測定した損失係数tanδが0.10以下の物性を有するゴム材を含んでもよい。なお、サイド補強ゴム24に用いられるゴム組成物の詳細については後述する。
【0051】
サイド補強ゴム24は、カーカス14の内面に沿ってビード部12側からトレッド20側へタイヤ径方向に延びている。また、サイド補強ゴム24は、中央部分からビード部12側及びトレッド20側に向かうにつれて厚みが減少する形状、例えば、略三日月形状とされている。なお、ここでいうサイド補強ゴム24の厚みとは、カーカス14の法線に沿った長さを指す。
【0052】
サイド補強ゴム24のビード部12側の下端部24Bは、カーカス14を挟んでビードフィラー28とタイヤ幅方向から見て重なっている。また、サイド補強ゴム24のトレッド20側の上端部24Aは、ベルト層40とタイヤ径方向から見て重なっている。具体的には、サイド補強ゴム24の上端部24Aは、カーカス14を挟んでベルト層40と重なっている。換言すれば、サイド補強ゴム24の上端部24Aは、ベルト層40のタイヤ幅方向端部40Eよりもタイヤ幅方向内側に位置している。
【0053】
本実施形態に係るタイヤ10では、ビードコア26が、ビードワイヤー26Aを被覆樹脂26Bで被覆して形成されている。これにより、ビードワイヤー26Aをゴムで被覆する場合と比較して、ビードコア26のねじり剛性が高くなる。これによりビード部12がリム30から外れにくくなるため、ランフラット耐久性を向上させることができる。
【0054】
本実施形態においてビードコア26は、被覆樹脂26Bに被覆された1本のビードワイヤー26Aを巻回し、積層して形成されるものとしたが、本実施形態はこれに限らない。例えば図4に示すビードコア60のように、複数本のビードワイヤー60Aを被覆樹脂60Bで被覆したワイヤー束を巻回させて積層して形成してもよい。この場合、積層時の界面を熱溶着で融着させる。1つのワイヤー束に含まれるビードワイヤー60Aの数は3本に限定されるものではなく、2本でも4本以上でもよい。また、ワイヤー束を積層させる各層におけるワイヤー束の数は、図4に示されるように1束でもよいし、タイヤ幅方向に複数隣接させて2束以上としてもよい。
【0055】
本実施形態においては、ビードフィラー28を樹脂製としたが、本実施形態はこれに限らず、例えば、ゴムで形成していてもよい。
【0056】
本実施形態においてベルト層40は、1本の補強コード42Cを被覆樹脂42Sで被覆して形成された略正方形状の樹脂被覆コード42を、カーカス14の外周面に巻いて形成したが、本実施形態はこれに限らない。
【0057】
例えば図5に示すベルト層70のように、複数本の補強コード72Cを被覆樹脂42Sで被覆して形成された、断面が略平行四辺形状の樹脂被覆コード72を、カーカス14の外周面に巻いて形成してもよい。
【0058】
本実施形態に係るランフラットタイヤについて、各部材及び材料に沿って詳細に説明する。なお、符号は省略する。
【0059】
[ビードコア]
(ビードワイヤー)
ビードワイヤーは特に制限されず、例えば従来のゴム製タイヤに用いられる金属製のコード、有機樹脂製のコード等を適宜用いることができる。例えば、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(つまり、単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(つまり、撚り線)で構成される。中でも、金属製のコードが好ましく、より好ましくは鉄製のコード、つまりスチールコードである。
【0060】
本実施形態におけるビードワイヤーとしては、タイヤの耐久性をより向上させる観点からは、モノフィラメント(つまり、単線)が好ましい。ビードワイヤーの断面形状、サイズ(例えば直径)等は、特に限定されるものではなく、所望のタイヤに適したものを適宜選定して用いることができる。
ビードワイヤーが複数本のコードの撚り線である場合、複数本のコードの数としては、例えば2本〜10本が挙げられ、5本〜9本が好ましい。
【0061】
ビードワイヤーの表面は、接着層との接着性の観点から、Cu、Zn、Fe、Al、及びCoからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を主成分とする金属材料で構成されていることが好ましい。
例えば、Fe元素を主成分とする構成としては、スチールコードが挙げられる。
また、Cu、Zn、Al、及びCoからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を主成分とする構成としては、スチールコードの表面がめっきにより被覆された構成が挙げられる。
【0062】
コードの表面へのめっきの形成方法は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、めっき素線の芯線となるコードを、例えば銅めっき浴、亜鉛めっき浴等にそれぞれ通過浸漬してめっき処理が行われる。例えば、銅めっきを形成する場合には、シアン化銅浴、ホウフッ化銅浴、硫酸銅浴等により処理され、また亜鉛めっきの場合、シアン化亜鉛浴、塩化亜鉛浴、ジンケート浴等により処理される。めっき浴を通過浸漬させたコードに熱拡散処理を施してもよい。またその後に、所定のめっき厚さとする観点から、コードを伸線加工してもよい。
【0063】
めっきの付着量としては、例えばめっきの平均厚さとして、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上8.0μm以下がより好ましい。なお、めっき厚さは走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により測定することができる。
【0064】
ビードワイヤーの太さ(つまり平均直径)は、タイヤの耐内圧性と軽量化とを両立する観点から、0.3mm〜3mmであることが好ましく、0.5mm〜2mmであることがより好ましい。ビードワイヤーの太さは、任意に選択した5箇所の断面(ビードワイヤーの長さ方向に対する垂直断面)において測定した太さの数平均値とする。
【0065】
ビードワイヤー自体の強力は、通常1000N〜3000Nであり、1200N〜2800Nであることが好ましく、1300N〜2700Nであることがより好ましい。なお、ビードワイヤーの強力は、引張試験機にてZWICK型チャックを用いて応力−歪曲線を描き、その破断点から算出する。
【0066】
ビードワイヤー自体の破断伸び(つまり引張破断伸び)は、通常0.1%〜15%であることが好ましく、1%〜15%であることがより好ましく、1%〜10%であることがさらに好ましい。ビードワイヤーの引張破断伸びは、引張試験機にてZWICK型チャックを用いて応力−歪曲線を描き、歪から求めることができる。
【0067】
(接着層)
本実施形態に係るビードコアは、ビードワイヤーと被覆樹脂層との間に接着層を有していてもよい。接着層は、接着剤として樹脂を含む層であることが好ましく、この樹脂としては熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0068】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、及びオレフィン系熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0069】
中でも、接着剤として用いられる樹脂には、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むことがより好ましい。
【0070】
また、接着剤として用いられる樹脂に、酸変性された熱可塑性材料を用いることも好ましい。酸変性熱可塑性材料とは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーの分子の一部に酸基が導入された熱可塑性材料である。酸基としては、カルボキシ基(−COOH)及びその無水物基、硫酸基、燐酸基等が挙げられ、中でもカルボキシ基及びその無水物基が好ましい。
【0071】
接着層は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を用いてもよい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性エラストマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
接着層に含まれる樹脂の含有率は、接着層全体の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
【0073】
(被覆樹脂層)
本実施形態に係るビードコアは、ビードワイヤーを被覆し樹脂組成物により形成される被覆樹脂層を有する。ビードコアが前記接着層を有する場合、被覆樹脂層は、接着層の上に設ける。
【0074】
樹脂組成物は、熱可塑性エラストマーを含む。
【0075】
・熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。熱可塑性エラストマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
−ポリアミド系熱可塑性エラストマー−
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で融点の高いハードセグメントを形成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性の材料であって、ハードセグメントを形成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いて形成されてもよい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
【0077】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
【0078】
【化1】
【0079】
上記一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数2〜20のアルキレン基)を表す。
【0080】
【化2】
【0081】
上記一般式(2)中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数3〜20のアルキレン基)を表す。
【0082】
一般式(1)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4〜15のアルキレン基がさらに好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
また、一般式(2)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4〜15のアルキレン基がさらに好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸又はラクタムが挙げられる。また、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸又はラクタムの重縮合体、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
【0083】
ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドン等の炭素数5〜20の脂肪族ラクタム等を挙げることができる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の炭素数2〜20の脂肪族ジアミン等のジアミン化合物を挙げることができる。
また、ジカルボン酸は、HOOC−(R−COOH(R:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、又はウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
【0084】
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル等が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等も用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
【0085】
【化3】
【0086】
上記一般式(3)中、x及びzは、1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。
【0087】
一般式(3)において、x及びzは、それぞれ、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数がより好ましく、1〜14の整数がさらに好ましく、1〜12の整数が特に好ましい。また、一般式(3)において、yは、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数がより好ましく、7〜35の整数がさらに好ましく、8〜30の整数が特に好ましい。
【0088】
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、又はラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せがより好ましい。
【0089】
ハードセグメントを形成するポリマー(具体的にはポリアミド)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300〜15000が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜90:10が好ましく、50:50〜80:20がより好ましい。
【0090】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
【0091】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、宇部興産株式会社の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2XPA9044等)、ダイセル・エポニック株式会社の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40−S3、E47−S1、E47−S3、E55−S1、E55−S3、EX9200、E50−R2等)等を用いることができる。
【0092】
−ポリスチレン系熱可塑性エラストマー
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリスチレンがハードセグメントを形成し、且つ、ポリスチレン以外の他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法等で得られるポリスチレンが好ましく用いられ、具体的には、アニオンリビング重合で得られるポリスチレンが挙げられる。
ソフトセグメントを形成するポリスチレン以外のポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等が挙げられる。
【0093】
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ポリスチレン/ポリブタジエンの組合せ、又はポリスチレン/ポリイソプレンの組合せが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの意図しない架橋反応を抑制するため、ソフトセグメントは水素添加されていることが好ましい。
【0094】
ハードセグメントを形成するポリマー(具体的にはポリスチレン)の数平均分子量は、5000〜500000が好ましく、10000〜200000がより好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000がより好ましく、30000〜500000がさらに好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30がより好ましい。
【0095】
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体(ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)]等が挙げられる。
【0096】
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、旭化成株式会社製の「タフテック」シリーズ(例えば、H1031、H1041、H1043、H1051、H1052、H1053、H1062、H1082、H1141、H1221、H1272等)、株式会社クラレ製の「SEBS」シリーズ(例えば、8007、8076等)、「SEPS」シリーズ(例えば、2002、2063等)等を用いることができる。
【0097】
−ポリウレタン系熱可塑性エラストマー−
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを形成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が挙げられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
【0098】
【化4】
【0099】
上記式中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルを表す。Rは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。P’は、短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。
【0100】
式A中、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルとしては、例えば、分子量500〜5000のものを使用することができる。Pは、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル及び長鎖脂肪族ポリエステルを含むジオール化合物に由来する。このようなジオール化合物としては、例えば、分子量が前記範囲内にある、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(ブチレンアジベート)ジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
式A及び式B中、Rは、Rで表される脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジイソシアネート化合物を用いて導入された部分構造である。Rで表される脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,3−プロピレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
式B中、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素としては、例えば、分子量500未満のものを使用することができる。また、P’は、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジオール化合物に由来する。P’で表される短鎖脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジオール化合物としては、例えば、グリコール及びポリアルキレングリコールが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
また、P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
さらに、P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
ハードセグメントを形成するポリマー(具体的にはポリウレタン)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300〜1500が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの柔軟性及び熱安定性の観点から、500〜20000が好ましく、500〜5000がさらに好ましく、500〜3000が特に好ましい。また、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、15:85〜90:10が好ましく、30:70〜90:10がさらに好ましい。
【0104】
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256号公報に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントとの組合せが好ましく、より具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体からなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0105】
また、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、BASF社製の「エラストラン」シリーズ(例えば、ET680、ET880、ET690、ET890等)、株式会社クラレ社製「クラミロンU」シリーズ(例えば、2000番台、3000番台、8000番台、9000番台等)、日本ミラクトラン株式会社製の「ミラクトラン」シリーズ(例えば、XN−2001、XN−2004、P390RSUP、P480RSUI、P26MRNAT、E490、E590、P890等)等を用いることができる。
【0106】
−オレフィン系熱可塑性エラストマー−
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ハードセグメントを形成するポリオレフィンとは異なるポリオレフィン、ポリビニル化合物等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン−α−オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、具体的には、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0107】
これらの中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びプロピレン−酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、及びエチレン−ブチルアクリレート共重合体からなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のオレフィン樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー中のオレフィン樹脂含有率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
【0108】
オレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、5000〜10000000であることが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が5000〜10000000であると、熱可塑性樹脂材料の機械的物性が十分であり、加工性にも優れる。同様の観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、7000〜1000000であることがさらに好ましく、10000〜1000000が特に好ましい。これにより、熱可塑性樹脂材料の機械的物性及び加工性をさらに向上させることができる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜95:5が好ましく、50:50〜90:10がさらに好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、公知の方法によって共重合することで合成することができる。
【0109】
また、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーを酸変性してなるものを用いてもよい。
「オレフィン系熱可塑性エラストマーを酸変性してなるもの」とは、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることをいう。
オレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
酸性基を有する不飽和化合物としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーの劣化抑制の観点からは、弱酸基であるカルボン酸基を有する不飽和化合物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0110】
オレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、三井化学株式会社製の「タフマー」シリーズ(例えば、A0550S、A1050S、A4050S、A1070S、A4070S、A35070S、A1085S、A4085S、A7090、A70090、MH7007、MH7010、XM−7070、XM−7080、BL4000、BL2481、BL3110、BL3450、P−0275、P−0375、P−0775、P−0180、P−0280、P−0480、P−0680等)、三井・デュポンポリケミカル株式会社製の「ニュクレル」シリーズ(例えば、AN4214C、AN4225C、AN42115C、N0903HC、N0908C、AN42012C、N410、N1050H、N1108C、N1110H、N1207C、N1214、AN4221C、N1525、N1560、N0200H、AN4228C、AN4213C、N035C)等、「エルバロイAC」シリーズ(例えば、1125AC、1209AC、1218AC、1609AC、1820AC、1913AC、2112AC、2116AC、2615AC、2715AC、3117AC、3427AC、3717AC等)、住友化学株式会社の「アクリフト」シリーズ、「エバテート」シリーズ等、東ソー株式会社製の「ウルトラセン」シリーズ等、プライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ(例えば、E−2900H、F−3900H、E−2900、F−3900、J−5900、E−2910、F−3910、J−5910、E−2710、F−3710、J−5910、E−2740、F−3740、R110MP、R110E、T310E、M142E等)等も用いることができる。
【0111】
−ポリエステル系熱可塑性エラストマー−
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル又はポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
【0112】
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いてもよい。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。芳香族ポリエステルは、好ましくは、テレフタル酸及びジメチルテレフタレートの少なくとも1種と、1,4−ブタンジオールと、から誘導されるポリブチレンテレフタレートである。また、芳香族ポリエステルは、例えば、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、若しくはこれらのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニル等の芳香族ジオール;等)と、から誘導されるポリエステル、又はこれらのジカルボン酸成分及びジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分、多官能ヒドロキシ成分等を5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0113】
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエーテル等が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの中でも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましい。
【0114】
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量は、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)とソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、99:1〜20:80が好ましく、98:2〜30:70がさらに好ましい。
【0115】
上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、例えば、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントが脂肪族ポリエーテルである組み合わせが好ましく、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントがポリ(エチレンオキシド)グリコールである組み合わせがさらに好ましい。
【0116】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、東レ・デュポン株式会社製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046、5557、6347、4047N、4767N等)、東洋紡株式会社製の「ペルプレン」シリーズ(例えば、P30B、P40B、P40H、P55B、P70B、P150B、P280B、E450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等)等を用いることができる。
【0117】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
【0118】
・熱可塑性樹脂
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。
上記の中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂及びオレフィン系熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
−ポリアミド系熱可塑性樹脂−
ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、前述のポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリアミドを挙げることができる。ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ε−カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合したポリアミド(アミド66)、メタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を例示することができる。
【0120】
アミド6は、例えば、{CO−(CH−NH}で表すことができる。アミド11は、例えば、{CO−(CH10−NH}で表すことができる。アミド12は、例えば、{CO−(CH11−NH}で表すことができる。アミド66は、例えば、{CO(CHCONH(CHNH}で表すことができる。アミドMXは、例えば、下記構造式(A−1)で表すことができる。ここで、nは繰り返し単位数を表す。
アミド6の市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、1022B、1011FB等)を用いることができる。アミド11の市販品としては、例えば、アルケマ株式会社製の「Rilsan B」シリーズを用いることができる。アミド12の市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、3024U、3020U、3014U等)を用いることができる。アミド66の市販品としては、例えば、旭化成株式会社製の「レオナ」シリーズ(例えば、1300S、1700S等)を用いることができる。アミドMXの市販品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製の「MXナイロン」シリーズ(例えば、S6001、S6021、S6011等)を用いることができる。
【0121】
【化5】
【0122】
ポリアミド系熱可塑性樹脂は、上記の構成単位のみで形成されるホモポリマーであってもよく、上記の構成単位と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。コポリマーの場合、各ポリアミド系熱可塑性樹脂における上記構成単位の含有率は、40質量%以上であることが好ましい。
【0123】
−ポリエステル系熱可塑性樹脂−
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、前述のポリエステル系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリエステルを挙げることができる。
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ−3−ブチル酪酸、ポリヒドロキシ−3−ヘキシル酪酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステルなどを例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の観点から、ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0124】
ポリエステル系熱可塑性樹脂の市販品としては、例えば、ポリプラスチック株式会社製の「ジュラネックス」シリーズ(例えば、2000、2002等)、三菱エンジニアリングスプラスチック株式会社製の「ノバデュラン」シリーズ(例えば、5010R5、5010R3−2等)、東レ株式会社製の「トレコン」シリーズ(例えば、1401X06、1401X31等)等を用いることができる。
【0125】
−オレフィン系熱可塑性樹脂−
オレフィン系熱可塑性樹脂としては、前述のオレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリオレフィンを挙げることができる。
オレフィン系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレン系熱可塑性樹脂、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の点から、オレフィン系熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系熱可塑性樹脂の具体例としては、プロピレンホモ重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体等が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数3〜20程度のα−オレフィン等が挙げられる。
【0126】
被覆樹脂層に含まれる樹脂としては、熱可塑性エラストマーを単独で用いてもよく、2種以上の熱可塑性エラストマーを組み合わせて用いてもよく、1種以上の熱可塑性エラストマーに1種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
被覆樹脂層における熱可塑性エラストマーの総含有率は、被覆樹脂層全体に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
【0128】
被覆樹脂層は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマー以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、ゴム、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ等)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等が挙げられる。
【0129】
(被覆樹脂層の物性等)
・厚み
被覆樹脂層の平均厚みは、特に限定されない。耐久性に優れる点や溶着性の観点から、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、50μm以上700μm以下であることがより好ましい。
【0130】
被覆樹脂層の平均厚みは、ビードワイヤー、被覆樹脂層、及び必要に応じて用いられる接着層の積層方向に沿ってビードコアを切断して得られる断面のSEM画像を任意の5箇所から取得し、得られたSEM画像もしくはビデオマイクロスコープにより得られる画像から測定される被覆樹脂層の厚みの数平均値とする。各SEM画像における被覆樹脂層の厚みは、最も厚みの小さい部分(接着層と被覆樹脂層との間の界面と、ビードコアの外縁との距離が最小となる部分)で測定される値とする。
【0131】
・引張弾性率
被覆樹脂層の引張弾性率は、ランフラット耐久性及び通常走行時の乗り心地性を両立させる観点から、50MPa以上1000MPa以下であることが好ましく、50MPa以上800MPa以下であることがより好ましく、50MPa以上700MPa以下であることがさらに好ましい。なお、被覆樹脂層の引張弾性率は、接着層の引張弾性率よりも大きいことが好ましい。
【0132】
被覆樹脂層の引張弾性率は、例えば、被覆樹脂層に含まれる樹脂の種類等によって制御することができる。なお、被覆樹脂層の引張弾性率の測定は、JIS K7113:1995に準拠して行う。具体的には、例えば、株式会社島津製作所製、島津オートグラフAGS−J(5KN)を用い、引張速度を100mm/minに設定し、引張弾性率の測定を行う。なお、ビードコアに含まれる被覆樹脂層の引張弾性率を測定する場合、例えば、上記被覆樹脂層と同じ材料の測定試料を別途準備して引張弾性率を測定してもよい。
【0133】
・メルトフローレート(MFR)
被覆樹脂層のメルトフローレート(MFR)は、上限値が16.5g/10min以下(260℃、2.16kg条件)であることが好ましく、16g/10min以下であることがより好ましく、15.4g/10min以下であることがさらに好ましい。被覆樹脂層のMFRが16.5g/10min以下であると、被覆樹脂層には優れた疲労耐久性が発揮される傾向にある。
被覆樹脂層のMFRの下限値は、0.5g/10min以上(260℃、2.16kg条件)であることが好ましく、2g/10min以上であることがより好ましく、4g/10min以上であることがさらに好ましい。被覆樹脂層のMFRが0.5g/10min以上であると、押出成形において複雑な形状の押出にも対応した成型が可能となる。
被覆樹脂層のMFRの上下限値は、好ましくは2g/10min以上16g/10min以下であることが好ましく、4g/10min以上15.4g/10min以下であることがより好ましい。
【0134】
被覆樹脂層のメルトフローレート(MFR)は、被覆樹脂層から測定用のサンプルを切り出した上で、以下の方法により測定する。測定法は、JIS−K7210−1(2014)に準ずる。具体的には、MFRはメルトインデクサー(例えば、型番2A−C、株式会社東洋製機製作所)を用いて行う。測定条件は温度260℃、荷重2.16kg、インターバル25mm、オリフィス2.09Φ×8L(mm)を用いて、MFRを求める。
【0135】
被覆樹脂層のメルトフローレート(MFR)を0.5g/10min以上16.5g/10min以下とする方法としては、樹脂材料としてMFRが前記範囲内である熱可塑性エラストマーを用いること;樹脂材料全体としてMFRが前記範囲内となるように樹脂及び添加剤の種類、量等を調整すること等が挙げられる。
【0136】
・重量平均分子量(Mw)
被覆樹脂層に含まれる樹脂の重量平均分子量Mw(ポリメタクリル酸メチル換算)は、44000以上であることが好ましく、より好ましくは45000以上であり、さらに好ましくは47000以上である。樹脂のMwが44000以上であることで、被覆樹脂層には優れた疲労耐久性が発揮される。
一方、樹脂のMwの上限値としては、好ましくは100000以下であり、より好ましくは90000以下であり、さらに好ましくは79000以下である。樹脂のMwが100000以下であることで、押出成形において複雑な形状の押出にも対応した成型が可能となる。
なお、被覆樹脂層に含まれる樹脂のMwの上下限値は、好ましくは44000以上100000以下であり、より好ましくは45000以上90000以下であり、さらに好ましくは47000以上79000以下である。
【0137】
なお、被覆樹脂層に含まれる樹脂の重量平均分子量Mwは、被覆樹脂層から測定用のサンプルを切り出した上で、以下の方法により測定する。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」とも称す。)を、型番:HLC−8320GPC、株式会社東ソー社製を用いて行う。測定条件は、カラム:TSK−GEL GMHXL(株式会社東ソー社製)、展開溶媒:HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール、富士フイルム和光純薬株式会社製)、カラム温度:40℃、流速:1ml/分で、RI検出器を用いて、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量を求める。
【0138】
[サイド補強ゴム]
サイド補強ゴムは、ゴム組成物により形成される。
【0139】
・架橋密度
サイド補強ゴムは、ランフラット耐久性を向上させる観点から、架橋密度が、5×10−4mol/ml以上10×10−4mol/ml以下であることが好ましく、6×10−4mol/ml以上9×10−4mol/ml以下であることがより好ましく、7×10−4mol/ml以上9×10−4mol/ml以下であることがさらに好ましい。
【0140】
前記架橋密度は、サイド補強ゴムを形成するゴム組成物に含まれるゴムの種類及び組成比の調整;加硫剤、加硫促進剤等の量及び種類の調整;などによって制御しうる。
【0141】
架橋密度は、Floryの理論式を用いる膨潤圧縮法(例えば、日本ゴム協会誌、第63巻、第7号、1990年、P440〜448参照)により、全網目密度として測定する。
【0142】
ゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練機を用いて混練し、成形加工された後、加硫を行うことにより、タイヤのサイド補強ゴム層として用いられる。
【0143】
以下、サイド補強ゴムを構成する各材料について説明する。
(ゴム)
ゴムとしては、天然ゴム(NR)及びジエン系合成ゴムが挙げられる。
ジエン系合成ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)及びこれらの混合物が挙げられる。
ジエン系合成ゴムは、ジエン系合成ゴムの一部又は全てが、多官能型変性剤、例えば、四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有するものとなったジエン系変性ゴムであることが、より好ましい。
【0144】
ゴムとしては、共役ジエン系重合体をアミン変性したアミン変性共役ジエン系重合体を含むものが挙げられる。
アミン変性共役ジエン系重合体の含有量は、ゴムの全量に対して、30質量%以上、特には50質量%以上であることが好ましい。
アミン変性共役ジエン系重合体を30質量%以上含むと、得られるゴム組成物が低発熱化する傾向があるため、タイヤに適用した際に、ランフラット走行耐久性がより向上するものと考えられる。
【0145】
アミン変性共役ジエン系重合体としては、分子内に、変性用官能基として、プロトン性アミノ基、脱離可能基で保護されたアミノ基等のアミン系官能基を導入した共役ジエン系重合体であることが好ましい。
アミン変性共役ジエン系重合体は、変性用官能基として、前記アミン系官能基に加えて、さらにケイ素原子を含む官能基を導入した共役ジエン系重合体であることが好ましい。ケイ素原子を含む官能基としては、ケイ素原子にヒドロカルビルオキシ基、ヒドロキシ基等が結合してなるシラン基が挙げられる。
【0146】
前記変性用官能基は、共役ジエン系重合体の重合開始末端、側鎖及び重合活性末端のいずれかに存在すればよいが、本実施形態において前記変性用官能基は、重合末端に存在することが好ましく、同一重合活性末端に存在することがより好ましい。
【0147】
プロトン性アミノ基としては、一級アミノ基、二級アミノ基及びそれらの塩の中からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
脱離可能基で保護されたアミノ基としては、N,N−ビス(トリヒドロカルビルシリル)アミノ基、N−(トリヒドロカルビルシリル)イミノ基等が挙げられる。上記の中でも、脱離可能基で保護されたアミノ基としては、充填材の分散が良好になる観点から、炭素数1〜10のアルキル基を有するトリアルキルシリル基を含むヒドロカルビル基であることが好ましく、トリメチルシリル基を含むヒドロカルビル基であることがより好ましい。
脱離可能基で保護された一級アミノ基(以下、「保護化一級アミノ基」ともいう)としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ基等が挙げられる。
脱離可能基で保護された二級アミノ基としては、N−(トリメチルシリル)イミノ基等が挙げられる。なお、N−(トリメチルシリル)イミノ基を含有する基としては、非環状イミン残基及び環状イミン残基のいずれであってもよい。
【0148】
アミン変性共役ジエン系重合体が一級アミノ基で変性された一級アミン変性共役ジエン系重合体である場合、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られた保護化一級アミノ基により変性された一級アミン変性共役ジエン系重合体であることが好ましい。
【0149】
共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物単独重合体であってもよく、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。
共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、1,3−ブタジエンが好ましい。共役ジエン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロへキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン系重合体は、ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエン共重合体であることが好ましく、ポリブタジエンであることがより好ましい。
【0150】
共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体の活性末端に保護化一級アミンを好適に反応させアミン変性体を得る観点から、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性又は擬似リビング性を有することが好ましい。
【0151】
前記リビング性を有する重合反応としては、有機アルカリ金属化合物を開始剤として有機溶媒中でアニオン重合させる反応;有機溶媒中でランタン系列希土類元素化合物を含む触媒により配位アニオン重合させる反応;などが挙げられる。前記リビング性を有する重合反応は、共役ジエン部位のビニル結合の含有量を高くし耐熱性を向上させる観点から、アニオン重合であることが好ましい。
【0152】
有機アルカリ金属化合物としては、n−ブチルリチウム等のヒドロカルビルリチウム;リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド等のリチウムアミド化合物などの有機リチウム化合物が好ましい。例えば、ヒドロカルビルリチウムを有機アルカリ金属化合物として用いる場合、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。リチウムアミド化合物を有機アルカリ金属化合物として用いる場合、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
【0153】
アミン変性共役ジエン系重合体の製造方法は、特に制限されず、特開2011−68342等の従来公知の方法を用いてよい。
【0154】
アミン変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、10〜150であることが好ましく、15〜100であることがより好ましい。
ムーニー粘度が10以上であると、耐破壊特性が得られる傾向にある。
ムーニー粘度が150以下であると、配合剤とともに混練する等の製造工程が容易となり易い。
アミン変性共役ジエン系重合体を含む未加硫のゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4,130℃)は、10〜150であることが好ましく、30〜100であることがより好ましい。
【0155】
アミン変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、すなわち、分子量分布(Mw/Mn)は、1〜3であることが好ましく、1.1〜2.7であることがより好ましい。
【0156】
アミン変性共役ジエン系重合体の数平均分子量(Mn)は、100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜300,000であることがより好ましい。
【0157】
ゴムの含有量は、ゴム組成物の全量に対し、50質量%以上であることが好ましく、50質量%〜80質量%であることがより好ましく、55質量%〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0158】
(充填材)
ゴム組成物は、ゴムと充填材とを含むことが好ましい。
充填材としては、カーボンブラック、シリカ、下記一般式(I)で表される無機充填材等が挙げられる。
【0159】
nM・xSiO・zHO (I)
一般式(I)中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種以上の金属、又は前記金属の酸化物、水酸化物、水和物若しくは炭酸塩を表す。
一般式(I)中、nは1〜5の整数を表す。xは0〜10の整数の整数を表す。yは2〜5の整数の整数を表す。zは0〜10の整数の整数を表す。
【0160】
上記の中でも、充填材としては、カーボンブラック又はシリカが好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
【0161】
カーボンブラックとしては、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード、GPF級グレード、SAF級グレード等の種々のグレードのカーボンブラックを、単独又は混合して使用することができる。
上記の中でもカーボンブラックは、タイヤの発熱を抑制する観点から、FEF級グレードが好適である。また、シリカとしては、特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。これらは、単独で、又は適宜混合して使用することができる。
【0162】
一般式(I)で表される無機充填材としては、Mが、アルミニウム金属、並びに、アルミニウムの酸化物、水酸化物、水和物及び炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0163】
一般式(I)で表される無機充填材の具体例としては、Al:γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ;Al・HO:ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物;ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)];炭酸アルミニウム[Al(CO];水酸化マグネシウム[Mg(OH)];酸化マグネシウム(MgO);炭酸マグネシウム(MgCO);タルク(3MgO・4SiO・HO);アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO);チタン白(TiO);チタン黒(TiO2n−1);酸化カルシウム(CaO);水酸化カルシウム[Ca(OH)];酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al);クレイ(Al・2SiO);カオリン(Al・2SiO・2HO);パイロフィライト(Al・4SiO・HO);ベントナイト(Al・4SiO・2HO);AlSiO、Al・3SiO・5HO等のケイ酸アルミニウム;MgSiO、MgSiO等のケイ酸マグネシウム;Ca・SiO等のケイ酸カルシウム;Al・CaO・2SiO等のケイ酸アルミニウムカルシウム;ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO);炭酸カルシウム(CaCO);酸化ジルコニウム(ZrO);水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO];炭酸ジルコニウム[Zr(CO];ゼオライト等の結晶性アルミノケイ酸塩;などが使用できる。
【0164】
ゴム組成物には、本実施形態の効果が損なわれない範囲で、各種添加剤、例えば、加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を含んでいてもよい。
【0165】
充填材の含有量は、ゴム組成物中における充填材の分散性を高めることで、タイヤの発熱とゴムの弾性率の低下を抑制し、通常走行時の乗り心地性を向上させる観点から、前記ゴム100質量%に対し75質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましい。
【0166】
[カーカス]
本実施形態において「カーカス(carcass)」とは、従来タイヤにおいてタイヤの骨格をなす部材であり、いわゆるラジアルカーカス、バイアスカーカス、セミラジアルカーカス等が含まれる。カーカスは一般に、コード、繊維等の補強材がゴム材料で被覆された構造を有する。
【0167】
・ゴム材料
ゴム材料は、ゴムを少なくとも含んでいればよく、本実施形態に係る効果を損なわない範囲で、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、前記ゴム材料中におけるゴムの含有量は、ゴム材料の総量に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。カーカスは、例えばゴム材料を用いて形成することができる。
【0168】
カーカスに用いるゴムとしては、特に限定はなく、従来公知のゴム配合に使用される天然ゴム及び各種合成ゴムを、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。例えば、下記に示す様なゴム、もしくはこれらの2種以上のゴムブレンドを使用することができる。
上記天然ゴムとしては、シートゴムでもブロックゴムでもよく、RSS#1〜#5のいずれも用いることができる。
上記合成ゴムとしては、各種ジエン系合成ゴムやジエン系共重合体ゴム及び特殊ゴムや変性ゴム等を使用できる。具体的には、例えば、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体(例えばSBR、NBRなど)、ブタジエンと他のジエン系化合物との共重合体等のブタジエン系重合体;ポリイソプレン(IR)、イソプレンと芳香族ビニル化合物との共重合体、イソプレンと他のジエン系化合物との共重合体等のイソプレン系重合体;クロロプレンゴム(CR);ブチルゴム(IIR);ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR);エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(EPM);エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)及びこれらの任意のブレンド物;などが挙げられる。
【0169】
また、カーカスに用いるゴム材料は、目的に応じてゴムに添加物等の他の成分を加えてもよい。
添加物としては、例えば、カーボンブラック等の補強材、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、脂肪酸又はその塩、金属酸化物、プロセスオイル、老化防止剤等が挙げられ、これらを適宜配合することができる。
【0170】
ゴム材料で形成されるカーカスは、未加硫のゴム材料を加熱によって加硫することで得られる。
【0171】
−他の成分−
ゴム材料は、所望に応じて、ゴム以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、樹脂、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等が挙げられる。
【0172】
ゴム材料としては、通常のゴムタイヤで使用されている材料が使用でき、特に限定されるものではない。
【0173】
[ビードフィラー]
本実施形態に係るタイヤは、ビード部において、被覆樹脂層からタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラーを有していてもよい。また、このビードフィラーは、被覆樹脂層と一体成形された同一体の部材であってもよい。
【0174】
ビードフィラーの材質としては、特に限定されるものではなく、樹脂又はゴム等の従来公知の弾性材料が用いられる。ビードフィラーは、弾性材料として樹脂を含むことが好ましく、例えば前述の本実施形態に係るビードコアにおける被覆樹脂層に含まれる樹脂として列挙されたものが同様に用いられる。また、その好ましい樹脂の種類、好ましい含有量、含んでもよい他の成分等も、被覆樹脂層と同様である。
【0175】
[ビード部の形成方法]
ここで、本実施形態に係るタイヤにおけるビード部の形成方法について、一例を挙げて説明する。具体的には、図6に示す構成のビード部を例にして形成方法を説明する。
【0176】
・接着層及び第1被覆樹脂層の形成
図6に示すビード部110におけるビードコア101は、以下のようにして形成することができる。まずビードワイヤー111の周囲を接着層112で被覆し、その後、接着層112で被覆された3本のビードワイヤー111を第1被覆樹脂層113で被覆してなるストリップ部材を形成する。さらに、このストリップ部材を巻回して、断面での形状が略長方形であるストリップ部材を3段積層することで、ビードコア101を形成する。
【0177】
なお、図6では、ビードコア101中のビードワイヤー111の数は9本であるが、これに限定されるものではなく、ビードワイヤー111の本数は1本以上であればよく、1本のみであってもよい。また、図6では、ストリップ部材が断面で3段に積層された態様を示すが、積層部材の構造は、これに限定されるものではなく、例えば1段又は2段であっても、4段以上積層されていてもよい。
【0178】
本実施形態では、溶融状態の接着層112を形成する材料(例えば接着剤)をビードワイヤー111の外周表面に被覆し、さらに接着層112を形成する材料の表面に溶融状態の第1被覆樹脂層113を形成する材料(つまり、樹脂組成物)を被覆して、冷却により固化させることで、ストリップ部材を形成する。ストリップ部材の断面形状(つまり、ビードワイヤー111の長手方向に直交する断面の形状)は、本実施形態では略長方形であるが、これに限られず、例えば略平行四辺形等の様々な形状とすることができる。接着層112の形成及び第1被覆樹脂層113の形成は、公知の方法により行うことができ、例えば押出成形等の方法が挙げられる。そして、ビードコア101はストリップ部材を巻回して段積みすることにより形成することができ、段同士の接合は、例えば熱板溶着等の公知の方法で第1被覆樹脂層113を溶融させながらストリップ部材を巻回して、溶融した第1被覆樹脂層113を固化することにより行うことができる。あるいは、段同士を接着剤等により接着することにより接合することもできる。
【0179】
・第2被覆樹脂層の形成
次いで、得られたビードコア101の表面に、溶融状態の第2被覆樹脂層114を形成する材料(例えば樹脂)を被覆して、冷却により固化させることで、第2被覆樹脂層114を形成する。第2被覆樹脂層114の形成は、公知の方法により行うことができ、例えば射出成形等の方法が挙げられる。
具体的には、射出成形金型のキャビティにビードコア101を配置し、溶融状態の第2被覆樹脂層114を形成する材料をキャビティに射出する。次に、射出した材料を冷却により固化させることで、第2被覆樹脂層114を形成する。
【0180】
・ビードフィラーの形成
図6に示すビード部材110は、第2被覆樹脂層114のタイヤ径方向外側に向かって、ビードフィラー103が配置された構造を有する。ビードフィラー103の形成は、公知の方法により行うことができ、例えばビードフィラー103を樹脂で形成する場合には射出成形等の方法が挙げられる。なお、ビードフィラー103が第2被覆樹脂層114と一体成形された同一体の部材である場合、ビードフィラー103及び第2被覆樹脂層114の形状に加工された射出成形金型を用いて、一度の射出により両部材を一体成形することもできる。
【0181】
上記の通り、本開示によれば以下のランフラットタイヤが提供される。
[1] ビードワイヤー及び前記ビードワイヤーを被覆し樹脂組成物により形成される被覆樹脂層を有するビードコアと、
タイヤサイド部に設けられゴム組成物により形成されるサイド補強ゴムと、
を備え、
前記樹脂組成物は熱可塑性エラストマーを含み、
前記サイド補強ゴムの1%引張弾性率が8MPa以下であり、且つ、100%モジュラスが10MPa以上である、
ランフラットタイヤ。
[2] 前記被覆樹脂層のメルトフローレートが0.5g/10min以上16.5g/10min以下である前記[1]に記載のランフラットタイヤ。
【0182】
[3] 前記被覆樹脂層の引張弾性率が50MPa以上1000MPa以下である前記[1]又は[2]に記載のランフラットタイヤ。
【0183】
[4] 前記ゴム組成物が、ゴムと充填材とを含む、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【0184】
[5] 前記ゴム組成物が、前記ゴム100質量部に対し前記充填材を75質量部以下で含む、前記[4]に記載のランフラットタイヤ。
【0185】
[6] 前記サイド補強ゴムの架橋密度が、5×10−4mol/ml以上10×10−4mol/ml以下である、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【実施例】
【0186】
以下、本開示を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本開示は下記実施例により限定されるものではない。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本実施形態の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。なお、特に断りのない限り「部」は質量基準を表す。
【0187】
(サイド補強ゴム用ゴム組成物の準備)
表1に示す配合処方のサイド補強ゴム用ゴム組成物を調製し、株式会社神戸製鋼製MIXTRON BB MIXERのバンバリーミキサーで混練して成形し、未加硫のサイド補強ゴムを作製する。
【0188】
表1に示す配合材料について詳細を下記に示す。
・合成ゴム :下記のポリブタジエンゴム
・充填材 :カーボンブラック、旭カーボン株式会社製、N550。
・老化防止剤 :ヘキサメチレンテトラミン。
・加硫促進剤1:チウラム系化合物、大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーTOT−N。
・加硫促進剤2:ノクセラーNS−P、大内新興化学工業株式会社製。
【0189】
(合成ゴムの合成例:ポリブタジエンゴム)
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン1.4kg、1,3−ブタジエン250g、及び2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.0285mmolを含むシクロヘキサン溶液を注入し、これに2.85mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行う。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%である。この重合体溶液を、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り重合を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、ポリブタジエンを得る。前記ポリブタジエンは、ミクロ構造(つまりビニル結合量)が14%、重量平均分子量(Mw)が150,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.1である。
上記で得られた重合体溶液を、重合触媒を失活させることなく、温度50℃に保ち、一級アミノ基が保護されたN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(つまり3.364mmol)を加えて、変性反応を15分間行う。最後に、反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加する。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒および保護された一級アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熱ロールによりゴムを乾燥し、一級アミン変性ポリブタジエンを得る。前記変性ポリブタジエンは、ミクロ構造(つまりビニル結合量)が14%、重量平均分子量(Mw)が150,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.2、一級アミノ基含有量が4.0mmol/kgである。
【0190】
[実施例1〜2、比較例5〜6]
(樹脂製のビード部材の作製)
モノフィラメント(平均直径φ1.25mmのモノフィラメント、スチール製、強力:2700N、伸度7%)の表面に、接着剤として、三菱ケミカル株式会社製の無水マレイン酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー「プリマロイ−AP GQ730」を加熱溶融した状態で押出機にて押し出し付着させる。なお、プリマロイ−AP GQ730は、融点が204℃であり、引張弾性率が300MPaである。なお、接着層の押出条件は接着剤の温度を240℃とする。
次いで、接着剤が付着したビードワイヤーサンプルが3本並んで配置されるよう金型に設置し、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(具体的には東レ・デュポン株式会社製、商品名「ハイトレル5557」)を、押出機にて押し出して接着剤の表面に付着させて被覆し冷却して、第1被覆樹脂層を形成する。なお、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの押出条件は、樹脂の温度を240℃とする。こうして形成するビードワイヤーが3本並んだ部材を、熱風で溶着しながら巻回しする。これにより、9本のビードワイヤーがそれぞれ接着層で被覆され、さらにその周囲が第1被覆樹脂層で被覆された構造(つまり図6に示す構造)を有するビードコアを作製する。なお、隣り合うビードワイヤー間の平均距離は200μmである。
次いで、第2被覆樹脂層及びビードフィラーが一体となった部材の形状に予め加工した金型に、前記より得たビードコアを設置し、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(具体的には東レ・デュポン株式会社製、商品名「ハイトレル5557」)を射出成形機にて射出する。これにより、ビードコアの外周に第2被覆樹脂層及びビードフィラーが一体となった部材が形成された構造(つまり図6に示す構造)を有するビード部材を作製する。なお、射出成形時の金型温度は100℃、成形温度は240℃とする。
【0191】
(ランフラットタイヤの作製)
前述の実施形態に従って、未加硫のカーカス及びベルト層を作製する。ベルト層を未加硫のカーカスの外周面に設置し、ベルト層の外周に未加硫のトレッドを巻きつけ、表1〜2に示すゴム組成物からなるサイド補強ゴムを、上記で作製した樹脂製のビード部材と組み合わせた生タイヤを得る。そして、得られた生タイヤを160℃で20分間加熱することで加硫し、図1に示す構造を有するタイヤを得る。
また、前記サイド補強ゴム用ゴム組成物について、先述の測定方法により測定した1%引張弾性率、50%モジュラス、及び100%モジュラスの結果を表2に示す。
【0192】
[比較例1〜4]
実施例1における樹脂製のビード部材をゴム製のビード部材とし、且つ、表1〜2に示すゴム組成物からなるサイド補強ゴムと組み合わせる仕様とする以外は、実施例1と同様の仕様でランフラットタイヤを製造する。
【0193】
ゴム製のビード部材は、下記に示すゴム組成物を用いた。
・天然ゴム
・充填材 :旭#70K、旭カーボン株式会社製。
・老化防止剤 :ノンフレックスRD−S、静工化学株式会社製。
・加硫促進剤1:ノクセラーH、大内新興化学工業株式会社製
・加硫促進剤2:サンセラーCM−G、三新化学工業株式会社製。
【0194】
−評価−
(通常走行時の乗り心地性)
各例のタイヤの内圧を230kPaとしたときの縦ばね定数を計測する。
評価は、比較例1の測定値を100とする指数表示とし、数値が小さいほど乗り心地性が高いことを表す。なお、指数で100以上であれば、乗り心地が変わらないことを表す。結果を表2に示す。
【0195】
(ランフラット走行耐久性)
ISO規格に基づいた室内ドラム試験において、内圧0kPaで速度80km/hでランフラット走行させる。タイヤ故障または支持体故障により走行が不可能になるまでの走行距離を測定し、比較例1における走行距離を100としたときの指数を求める。結果を表2に示す。なお、指数が大きいほどランフラット走行性(すなわち耐久性)が良好であることを示す。
【0196】
【表1】
【0197】
【表2】
【0198】
表1に示す各ゴム組成物A〜Dは、全て合成した材料である。
表2に示す各評価試験の結果に関して、実施例1は及び比較例1〜4は実際に試験を実施して得たデータである。一方、実施例2は、シミュレーションによる予測データである。
【0199】
上記結果から、実施例のランフラットタイヤは、比較例のランフラットタイヤに比べ、通常走行時の乗り心地性及びランフラット走行耐久性が共に良好であることがわかる。
【0200】
2018年11月9日に出願された日本国特許出願2018−211515号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0201】
10 タイヤ(ランフラットタイヤ)
14 カーカス
22…タイヤサイド部
24 サイド補強ゴム
26 ビードコア
26A ビードワイヤー(ワイヤー)
26B 被覆樹脂
28 ビードフィラー
40 ベルト層、
42C 補強コード(コード)
101 ビードコア
103 ビードフィラー
110 ビード部
111 ビードワイヤー
112 接着層
113 第1被覆樹脂層
114 第2被覆樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】