特表2015-500297(P2015-500297A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-500297(P2015-500297A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(54)【発明の名称】治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/30 20150101AFI20141202BHJP
   A61K 35/32 20150101ALI20141202BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20141202BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20141202BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20141202BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20141202BHJP
【FI】
   A61K35/30
   A61K35/32
   A61K35/36
   A61P25/00
   A61P25/18
   A61P25/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-546242(P2014-546242)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(85)【翻訳文提出日】2014年7月18日
(86)【国際出願番号】AU2012001530
(87)【国際公開番号】WO2013086574
(87)【国際公開日】20130620
(31)【優先権主張番号】2011905180
(32)【優先日】2011年12月13日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】514072632
【氏名又は名称】メドベッド サイエンス プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】エンジェル・ロペス
(72)【発明者】
【氏名】クエンテン・シュワルツ
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB45
4C087BB46
4C087BB48
4C087CA04
4C087MA23
4C087MA38
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA12
4C087ZA18
(57)【要約】
本発明は、一般に、哺乳動物の海馬を再生させる方法およびそれに用いる作用剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、神経堤幹細胞の亜集団を投与することによって哺乳動物の海馬を再生させる方法を提供する。本発明方法は、精神神経疾患などの、欠陥のある海馬を特徴とする身体状態の治療に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥のある海馬を特徴とする状態を有する哺乳動物の治療方法であって、海馬の再生をなし遂げるのに十分な時間および条件下で、哺乳動物に、有効数のNrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントを投与することを含む方法。
【請求項2】
欠陥のある海馬を特徴とする哺乳動物の状態の治療用医薬の製造における、海馬を再生させる、Nrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントの使用。
【請求項3】
該Nrp2+神経堤幹細胞が、成体幹細胞である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
該成体Nrp2+神経堤幹細胞が、歯の象牙質および毛包から単離される、請求項3に記載の方法または使用。
【請求項5】
該状態が、脳の先天的な解剖学的異常または後天的脳傷害である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法または使用。
【請求項6】
該後天的脳傷害が、頭部外傷、窒息、萎縮または発育不全が原因である、請求項5に記載の方法または使用。
【請求項7】
該状態が、機能性ンパク質14-3-3ζまたはタンパク質14-3-3ζ/DISC1複合体形成のレベルの低下を特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法または使用。
【請求項8】
該状態が、神経精神疾患状態である、請求項7に記載の方法または使用。
【請求項9】
該神経精神疾患状態が、統合失調症の一種以上の症状を特徴とする状態、統合失調症、統合失調症性人格障害、精神病、双極性障害、躁うつ病、感情障害、または統合失調症様障害または統合失調性感情障害、精神病性うつ病、自閉症、薬物誘発性精神病、せん妄、アルコール離脱症候群あるいは認知症性精神病を特徴とする状態である、請求項8に記載の方法または使用。
【請求項10】
該哺乳動物が、ヒトである、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法または使用。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において用いるための、Nrp2+神経堤幹細胞を含む単離された細胞集団。
【請求項12】
該Nrp2+神経堤幹細胞が、成体幹細胞である、該請求項11に記載の単離された細胞集団。
【請求項13】
該Nrp2+神経堤幹細胞が、歯の象牙質または毛包から単離される、請求項12に記載の単離された細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、哺乳動物の海馬を再生させる方法およびそれに用いる作用剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、神経堤幹細胞の亜集団を投与することによって哺乳動物の海馬を再生させる方法を提供する。本発明方法は、精神神経疾患などの、欠陥のある海馬を特徴とする身体状態の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
本明細書において著者によって参照された刊行物の書誌的詳細は、詳細な説明の最後にアルファベット順にまとめている。
【0003】
本明細書における任意の従来技術に対する参照は、その従来技術がオーストラリアにおける一般的知識の一部を形成することを肯定または示唆するものではなく、またそのようにみなされるべきではない。
【0004】
統合失調症は、世間に知られている最も人を無力にし、かつ感情的に壊滅的な病気の一つである。残念なことに、統合失調症は、あまりにも長い間誤解されてきたので、相対的に少ない関心しかもたれておらず、その被害者は不当に非難されてきた。実際のところ、統合失調症は、かなり一般的な障害である。それは男女両方に等分に影響を及ぼし、世界人口の約1%が罹患している。さらに2〜3%が、統合失調症性人格障害を患っている。その有病率と重症度ゆえに、統合失調症は、病気を診断するためのより良い基準を開発するための努力において広範に研究されている
【0005】
統合失調症は、独特で予測可能な一連の症状を特徴とする。この疾患に最も一般的に伴う症状は、著しく異常な行動を意味する、いわゆる陽性症状である。この症状として、思考障害(一つの主題から別の主題に進むことが困難であるか、または主題が飛躍する、論理的な関連性の見られない話し方)、妄想(迫害、罪責感、誇大妄想または他人の管理下にあるという誤った思い込み)、および幻覚(幻視または幻聴)が挙げられる。思考障害は、明瞭かつ論理的に思考する能力の低下である。思考障害は、統合失調症の人が会話に参加するのを不可能にする、関連性のない無意味な言語によって現れることが多く、その結果として、家族、友人および社会からの疎外感がもたらされる。妄想は、統合失調症の人の間でよく見られる症状である。罹患した人は、陰謀を企てられていると信じるようになる(偏執性妄想と呼ばれる)。「思考流出(Broadcasting)」は、この疾病をもつ個人が、彼の思考を他人が聞くことができると信じている妄想の一つのタイプである。幻覚は、聞いたり、見たり、あるいは感じたりすることができる。ほとんどの場合、患者のみに聞こえる声の形をとる。このような声は、患者の行動を述べたり、危険を警告したり、何をすべきかを言ったりする。患者は、複数の声が会話をしているのを聞くこともある。上述した「陽性症状」および「思考障害」ほど明らかではないが、同等に重篤なものに、正常な挙動の不在を表す欠損または陰性症状がある。これらの症状として、平坦な感情または感情鈍麻(すなわち、情動的表現の欠如)、無気力、引きこもりと洞察力の欠如が挙げられる。
【0006】
統合失調症は、高齢者においても進行することが知られているが、その発症は、通常、思春期または成人早期中である。発症は、急性症状を伴って迅速に起こり、数週間にわたってゆっくりと進行する。統合失調症は、人生のどの時点においても、誰にでも影響を及ぼしうるが、遺伝的にこの疾患にかかりやすい人々において起こることがやや多く、最初の精神病エピソードは、一般に青年後期または成人初期に起こる。どちらもこの疾患をもっていない二人の親の子供が統合失調症になる確率は、1パーセントである。一方の親がこの疾患をもっている子供が統合失調症になる確率は、13パーセントである。両方の親がこの疾患をもっている子供が統合失調症になる確率は、35パーセントである。このことは、伝的関連の存在を示す。
【0007】
統合失調症をもつ人の3/4は、16〜25歳の間に疾患を発症する。30歳以降の開始はめったになく、40歳以降はまれである。16〜25歳グループにおいて、統合失調症は、女性よりも男性に多い。25〜30歳グループにおいては、男性よりも女性に多い。
【0008】
一般に、病気の研究は、診断のための適切な基準が存在することを必要とする。実際に、診断は、最終的には、原因、すなわち、病気が遺伝子欠陥、ウイルスもしくは細菌感染、毒素またはストレスに起因するかどうか、に基づくべきである。残念ながら、精神病の原因は分かっておらず、したがって、これらの障害は、依然として、4つの主な心的能力のうちどれが影響を及ぼされるかにしたがって分類される:
(i)思考および認識障害
(ii)気分障害
(iii)社会的行動障害;および
(iv)学習、記憶および知能障害。
【0009】
したがって、これらの状態の生物学的原因はほとんど分かっていないので、これらの疾患が誘発され、進行するメカニズムを解明する必要性が継続して存在する。
【0010】
14-3-3タンパク質は、発達全体にわたって、および成体組織において、豊富に発現される高度に保存された調節分子のファミリーを構成する。これらのタンパク質は、細胞の周期の調節、増殖、移動、分化およびアポトーシスをコントロールするために多数の機能的に多様なシグナル伝達分子を結合する7つの別のイソ型(β、ζ、ε、γ、η、τ、σ)を含む(Bergら、Nat Rev Neurosci 2003;4(9):752-762;Fuら、Annu Rev Pharmacol Toxicol 2000;40:617-647;Toyo-okaら、Nat Genet 2003 Jul;34(3):274-285;Aitken A.、Semin Cancer Biol 2006;16(3):162-172;Rosnerら、Amino Acids 2006;30(1):105-109)。
【0011】
これまで、統合失調症における14-3-3タンパク質ファミリー分子の役割(もしあれば)は、とらえどころがないままであった。今までのところ結論に達しないにもかかわらず、いくつかの調査が、統合失調症などの神経精神疾患状態を発症する素因を伴う単一核多型(single nuclear polymorphism)を同定することに焦点を合せている。14-3-3タンパク質イソ型分子が突然変異しているかどうかにかかわらず、これらの分子のレベルの変化を調査することを目的とする研究は、イータおよびシータイソ型のレベルの変化に焦点を合せる傾向にある。とはいえ、これまでに、それらの分子が神経精神疾患状態の開始の確実なマーカーであるというどのような確証も得られていない。ベータおよびゼータなどの他の14-3-3タンパク質イソ型に関して、Wongら、(2005)は、統合失調症および双極性障害において発現レベルに変化がないことを見出した。Middletonら、(2005)は、さらに推し進めて、これらの特定のイソ型は、統合失調症を発症する遺伝的危険率に直接関係がありそうにないこと、および統合失調症に強い関連性を提供するマーカーはないと述べた。
【0012】
これらの発見にもかかわらず、かつ対照的に、本発明に至るまでの研究において、14-3-3ζタンパク質の機能レベル、特に14-3-3ζ/DISC1形成のレベルの減少が、統合失調症の一種以上の症状を特徴とする状態などの神経精神疾患状態を発症するか、または神経精神疾患状態を発症しやすいことに関連することが究明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これらの発見は、統合失調症の発症しやすさを予測するための診断の発達という点で確かに関連性が高いが、検出可能な診断マーカーが、それ自体マーカーとして信頼できるとはいえ、疾患の実際の原因に対して二次的であることが多いので、診断症状の存在が、必ずしも有効な療法を教示しないことは当業者には当然のことであろう。疾患状態に関連する「原因と結果」の直接的知識がない場合、有効な治療法の設計は、事実上不可能になる。この目的を達成するために、統合失調症などの神経精神障害を効果的に治療する方法の開発が長い間求められてきた。
【0014】
この目的を達成するために、本発明に至るまでのさらなる研究において、14-3-3ζoyobi14-3-3ζ/DISC1の複雑な機能における欠陥が、異常なニューロン移動に起因する海馬の発育異常をもたらすことが究明されている。さらに、海馬の発達という点において、神経堤幹細胞の亜集団であるNrp2+神経堤幹細胞が、海馬のニューロンに特異的に分化し、海馬を効率的に再生させることができることが究明されている。したがって、このことが、今や、統合失調症などの神経精神疾患状態の治療的処置の設計を促進している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
文脈によって他に要求されない限り、本明細書および後述する特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」ならびにその変形である「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、記述された完全体(integer)もしくはステップ、または完全体もしくはステップの群の包含を意味するが、いずれかの他の完全体もしくはステップ、または完全体もしくはステップの群の除外を意味しないことが理解されよう。
【0016】
本明細書で用いる、用語「に由来する」は、特定の完全体(integer)または完全体の群が、特定された種に起源があるが、特定された源から必ずしも直接得られていないことを意味する。さらに、本明細書で用いる単数形の「a」および「the」は、文脈が他に明確に示さない限り、複数の指示対象を包含する。
【0017】
他に特記しない限り、本明細書で用いるすべての技術および科学用語は、本発明が属する当技術分野における当業者によって一般に理解される意味と同意義である。
【0018】
本発明の1つの態様は、欠陥のある海馬を特徴とする状態を有する哺乳動物の治療方法であって、該方法は、海馬の再生をなし遂げるのに十分な時間および条件下で、哺乳動物に、有効数のNrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントを投与することを含む方法に関する。
【0019】
もう1つの態様において、本発明は、欠陥のある海馬を特徴とする状態を有するヒトの治療方法であって、該方法は、海馬の再生をなし遂げるのに十分な時間および条件下で、ヒトに、有効数のNrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントを投与することを含む方法を提供する。
【0020】
さらに別の態様において、したがって、本発明は、欠陥のある海馬を特徴とする状態を有する哺乳動物の治療方法であって、該方法は、海馬の再生をなし遂げるのに十分な時間および条件下で、哺乳動物に、有効数の成熟Nrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントを投与することを含む方法を提供する。
【0021】
本発明のさらにもう1つの態様は、欠陥のある海馬を特徴とする哺乳動物の状態の治療用医薬の製造における、Nrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントの使用に関し、ここで、該幹細胞は、海馬を再生させる。
【0022】
本発明のさらなる態様は、本発明の治療方法において用いるためのNrp2+神経堤幹細胞を含む単離された細胞集団に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】14-3-3ζ欠損マウスは、異常な認知と行動特性を実証する。 (a)オープンフィールド試験にて、14-3-3ζ062-/-マウス(白抜きバー;n=11)は、5〜30週齢において、14-3-3ζ062+/+同腹子(黒塗りバー;n=11)よりも活発な探索行動をとった。(b)高架式迷路にて、14-3-3ζ062-/-マウス(白抜きバー;n=12)は、オープンアームで、14-3-3ζ062+/+マウス(黒塗りバー;n=12)よりも多い時間を費やした。(c)交差迷路逃避タスク試験にて、14-3-3ζ062-/-マウス(白丸;n=12)は、空間学習(第1〜6日)および記憶(M1およびM2)の両方について、14-3-3ζ062+/+マウス(黒四角;n=12)より低い能力を有する。(d)14-3-3ζ062+/+マウス(黒塗りバー;n=11)と比較して、14-3-3ζ062-/-マウス(白抜きバー;n=11)は、70dBのベースラインならびに100ミリ秒の刺激間隔におけるプレパルス(PP)2、4、8および16 dBにより、より低いプレパルス抑性を示した。すべてのPP強度の平均も示す。雄性および雌性マウスからのデータは、すべてのグラフにプールされる。誤差は、平均±SEMである。*)p<0.05;**)p<0.01;***)p<0.001。
図2】14-3-3ζは、アンモンの角の錐体細胞および歯状回の顆粒ニューロンにおいて発現される。 (a)(i)海馬の様々な領域を欠損している14.5 dpcのマウス胎児脳の冠状断面の略図。V、脳室;IZ、中間帯;VZ、脳室帯。(ii)P0マウス海馬のの冠状断面の略図。海馬原基からのニューロンは、脳室神経上皮(ライトブルー)および海馬采に隣接する脳室神経上皮(ダークブルー)に由来する。アンモンの角およびその層(so、上昇層;sp、錐体細胞層;sl、透明層;sr、放線層)を構成するアンモン角の錐体ニューロンを含んでいる3つの部分体(CA1〜3)を、歯状回(DG)中の顆粒状ニューロンの位置に関連して示す。(b)(i-ii)14.5 dpcの発生中の海馬の中間帯において、14-3-3ζ免疫活性を検出した。(iii-iv)P0にて、14-3-3ζ陽性ニューロンは、錐体細胞層に位置する。(v)錐体ニューロン(星印)のより拡大した図は、14-3-3ζが、細胞質内で点状に局在していることを示す。(c)P0、P7および成体14-3-3ζ062+/-海馬における14-3-3ζの内因性発現を示すX-gal染色である。高レベルの14-3-3ζ-lacZの発現は、錐体および顆粒ニューロンにおいて明らかである。(d)海馬ニューロンの培養。(i)EB1による14-3-3ζ染色(赤)。(ii)MAP2陽性海馬ニューロン(緑)。(iii)14-3-3ζとMAP2の重ね合わせは、MAP2陽性神経突起における共発現を強調表示する(矢印)。(e)14-3-3ζタンパク質(27 kDa)は、野生型マウスのアンモンの角および歯状回において発現される。成体WTおよび14-3-3ζ062-/-マウスからの溶解液のウエスタンブロットを免疫ブロットし、抗体で14-3-3ζを探査した(EB1)。抗β-アクチン(42 kDa)抗体をローディングコントロールとして用いた。スケールバー=100 μm(bi-iv;c;di-iii)、25 μm(bv)。
図3】14-3-3-ζ欠損マウスは、海馬の積層欠陥を示した。 ニッスル染色は、14.5 dpcから出生後第56日(P56)までのWTおよび14-3-3ζ062-/-マウスの海馬発生を示す。海馬細胞は、 14-3-3ζ062-/-マウスの錐体細胞層(sp)中に分散する(iv、vi、viii)。矢印は、放線層(sr)中の海馬錐体ニューロンの重複している層を強調表示する。星印は、上昇層(so)中に異所的に位置する錐体細胞を強調表示する。矢印は、歯状回中に漫然と配置された顆粒ニューロンを示す。(b)14-3-3ζ062バックグラウンドに導入されたThy1-YFP導入遺伝子の発現は、14-3-3ζ062-/-マウスにおいて海馬錐体ニューロンの激しい無秩序を示した。青、DAPI;緑、Thy1発現。(c)示した遺伝子型のP0(i-iv)およびP56(v-vi)マウスから得られた海馬の冠状切片である。WT海馬において、より深い錐体細胞層には、NeuN陽性錐体細胞が存在しており(黄、矢印)、 CA1からCA3への均一な成熟ゾーンを形成する。14-3-3ζ062-/-海馬において、成熟ゾーンの均一性はより低く、CA3における錐体細胞層のより深いゾーン(黄の矢印)およびより表面のゾーン(白の矢印)の両方において、異所的に存在するいくつかのNeuN陽性成熟錐体細胞を有する。P56 14-3-3ζ062-/-マウスにおいて、NeuNに対する免疫染色は、重複したCA3サブフィールド中の錐体細胞を強調表示し、異所性細胞が成熟に達したことを示す(vi)。スケールバー:100um。
図4】BrdU-パルス-チェイス分析は、14-3-3ζ欠損マウスにおけるニューロン移動欠陥を示す。 14.5dpc:P7(i-v)および16.5dpc:P7(vi-x)におけるBrdU-パルス-チェイス分析は、BrdU陽性細胞(黒)が、WT海馬のCA3サブフィールドの錐体細胞層(sp)内に位置することを実証する(iiおよびvii)。(v)グラフは、14.5dpc:P7における異所性海馬ニューロンのパーセンテージをまとめたものである。14-3-3ζ062-/-マウスのBrdU-標識細胞は、異所的に配置された。ニューロンは、上昇層(so)にとどめられるか、または錐体細胞層を越えて、透明層(sl)に移動した(ivおよびix)。(x)グラフは、16.5dpc:P7における異所性海馬ニューロンのパーセンテージをまとめたものである。スケールバー:100 μm
図5】14-3-3ζ欠損マウスにおける異常な苔状線維経路。 14-3-3ζ062+/+(i,iii,vおよびvii)および14-3-3ζ062-/-(ii、iv、viおよびviii)マウスにおける錐体下(IPMF、黄矢印)および錐体上(SPMF、白矢印)苔状線維の通り道の軌道のカルビンジン免疫染色。WTコントロールと同様に、14-3-3ζ062-/-欠損神経突起は、歯状回(DG)から離れて移動(navigate)した後、最初、SPMFブランチおよびIPMFブランチへと二股に分かれる。しかしながら、14-3-3ζ062-/-マウスのIPMFブランチは、錐体細胞の細胞体(sp、白矢印)の間で異常に移動した。さらに、14-3-3ζ062-/-マウスの拡散したSPMFブランチは、CA3にある重複した錐体細胞層に侵入した。スケールバー=100 μm。
図6】異所性CA3錐体細胞と経路を誤った苔状線維との間の機能的シナプス結合。 (i-iv)シナプトフィジン(Syp)に対する抗体で染色したP56 14-3-3ζ062+/+マウスからの海馬切片は、IPMF(白矢印)およびSPMF(黄矢印)の両方において免疫反応性を示す。Syp染色は、CA3の錐体細胞体を取り囲んでいる上昇層(so)および透明層(sl)の両方にある。(v-viii14-3-3ζ062-/-マウス)からの海馬切片のSyp染色は、CA3の錐体細胞層内で異常に移動する苔状線維(星印、v、vii)が機能的シナプスを形成することを示す。(ix-xii)異所性成熟CA3錐体細胞(NeuNで染色;星印で示す)は、経路を誤った苔状線維からのシナプスタンパク質(Syp、緑色)と連絡をとる。スケールバー=100 μm。(b)ゴルジ染色は、WTまたは14-3-3ζ062-/-成体マウス(P35)の錐体細胞の樹状樹枝状構造(dendritic arborization)を示す。経路を誤った苔状線維シナプス神経繊維末端(MFB、斜角線(bevelled line))との接触点を示す、とげのある突出物の1つのセットは、WTニューロンにおけるCA3錐体細胞の頂端近位樹状突起(apical proximal dendrites)上にある。とげのある突出物の2つのセットが、14-3-3ζ062-/-マウスの頂端樹状ツリー上にあって、一方は近位頂端樹状突起にあり、他方は遠位樹状ブランチ(*)にある。(c)模式図は、WT海馬と比較して、経路を誤った苔状線維の通り道および14-3-3ζ062-/-マウスの異所性CA3錐体細胞に連絡している苔状線維神経繊維末端の異所性シナプス点を示す。
図7】14-3-3ζは、DISC1と相互作用して、神経発達をコントロールする。 (a-b)P7マウス脳からの等量の溶解物を、抗DISC1抗体または抗14-3-3抗体で免疫沈降させ、DISC1(a)または14-3-3ζを認識するEB1精製抗血清(b)で免疫ブロットした。共免疫沈降に用いるための総細胞溶解物(インプット)の5%からのDISC1イソ型および14-3-3ζの相対的発現レベルも、直接免疫ブロット法によって決定した。矢印は、DISC1の主な100kDaおよび75kDaバンド(a)および14-3-3ζを表す27kDaバンド(b)を示す。星印は、免疫沈降からのバックグラウンドIgGバンドを表す。(c)ニューロン移動および軸索成長における14-3-3ζの役割を示す模式図である。(i)14-3-3ζは、CDK5リン酸化Ndel1を結合させて、LIS1との相互作用を促進し、それによってニューロン移動を促進する。(ii)14-3-3ζは、LIS1/ Ndel1/DISC1複合体にも存在して、軸索成長動力学をコントロールする。
図8】14-3-3ζ遺伝子の遺伝子トラップ突然変異。 (a)14-3-3ζGt(OST062)Lexマウス株のためおよび(b)マウス株14-3-3ζGt(OST390)Lexのための挿入点を示す模式図である。遺伝子トラップベクターは、それによって内因性14-3-3ζプロモーター下で発現される選択可能なマーカー遺伝子(Oガラクトシダーゼ/ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ融合遺伝子のためのBGEO)に融合したスプライスアクセプター配列(SA)を含む。14-3-3ζの上流エクソンに組み込まれた場合、BGEOは、mRNA転写を妨げる融合転写物を生成する。ベクターは、PGKプロモーターに続いて、スプライスドナー(SD)シグナルの上流にブルトン型チロシンキナーゼ遺伝子(BTK)の第一エクソンも含む。BTKは、融合転写物の下流の翻訳を妨げるために、すべての読み取り枠に終止コドンを含む。遺伝子トラップベクターは、レトロウイルス体において、2つの長い末端反復(LTR)の間に示される。両方の図において、矢印は、遺伝子型決定に用いたプライマーを示す。赤ボックスは、非コーティング非翻訳配列を示し、緑ボックスは、コーティング配列を示す。
図9】ウエスタンブロット分析は、14-3-3ζ発現が、突然変異マウスの全ての組織において減少することを実証する: (a)雄性および雌性の、14-3-3ζ062-/-および年齢をマッチさせた14-3-3ζ062+/+マウス、ならびに(b)雄性および雌性の、14-3-3ζ390-/-および年齢をマッチさせた14-3-3ζ390+/+マウスから組織を採集した。材料および方法において記載したように、プロテアーゼインヒビターを含むNP40溶解緩衝液中ですべてのサンプルをホモジナイズした。ピアスBCAプロテインアッセイキットを用いてタンパク質濃度を決定し、レーン毎に10μgのタンパク質をロードした。ブロットをEB-1抗体でプローブして、14-3-3ζを検出し、ローディングコントロールとして抗β-アクチン(1:5000)を用いた。結合した抗体を、HRP-複合二次抗体(1:20,000、Pierce-Thermo Scientific)で検出した。ECLによって免疫反応性タンパク質を視覚化した。EB1抗体が、14-3-3ζ以外の14-3-3イソ型を検出できることに留意。
図10】14-3-3イソ型のmRNAレベルは、14-3-3ζ欠損マウス脳において一定のままである: すべてのイ14-3-3ソ型の転写物レベルは、14-3-3ζ062-/-マウス由来の脳組織において、14-3-3ζイソ型の欠失に応答して変化することはない。3匹の14-3-3ζ062-/-マウスおよび3匹の年齢をマッチさせた14-3-3ζ062+/+コントロールの全脳からRNAを単離した。Quantitect kit(Qiagen)を用いて、1 μgのRNAから相補的DNA(cDNA)を生成した。 Sybr Green(Qiagen)およびRotor Geneマシーン(Corbett)を用いるリアルタイムPCRを用いて、14-3-3のすべてのイソ型のサンプル中のGAPDHと比較して、mRNAのレベルを決定した。プライマーの詳細については表1を参照。
図11】14-3-3ζ欠損マウスは、学習および記憶において認知機能障害を示す。 クロス迷路逃避タスク試験において、14-3-3ζ062-/-マウス(白丸;n=12)は、空間学習(第1-6日)および記憶の両方について、14-3-3ζ062+/+マウス(黒四角;n=12)よりも能力が低い。14-3-3ζ062-/-マウスは、トレーニング期間を通して、および記憶試験期間(M1およびM2)中に、逃避プラットフォームに到達するのにより長い時間がかかる。雄性および雌性マウスからのデータをプールする。誤差バーは、平均±SEMとして現す。*、p<0.05;**、p <0.01;***、p <0.001。
図12】14-3-3ζ欠損マウスは、驚愕反射の低下を示す。 14-3-3ζ062-/-マウスの驚愕振幅(白抜きバー;n=13)は、4つの115 dBのパルス単独ブロックを通して、14-3-3ζ062+/+マウス(黒塗りバー;n=14)よりも低い。すべてのブロックからの平均驚愕(Avg)も示す。**、<0.05。
図13】14-3-3ζ発現は、海馬ニューロンにおいて維持される。 X-gal染色は、P0およびP7の14-3-3ζ062+/-海馬および小脳における、14-3-3ζの内因性発現を示す。海馬における高レベルの14-3-3ζ-lacZ発現は、アンモンの角の錐体ニューロンおよび成熟歯状回ニューロンの両方において明らかであるが、誕生後の小脳においては明らかでない。スケールバー=25 μm。
図14】、14-3-3ζ欠損マウスにおける海馬の層状構造の欠如。 ニッスル染色は、14.5 dpcから誕生(P0)までのWT(i、iii、v)および14-3-3ζ062-/-(ii、iv、vi)マウスの海馬発生を示す。海馬細胞は、14-3- 3ζ062-/-マウスの錐体細胞層(sp)において分散された。矢印は、放線層(sr)の海馬錐体ニューロン重複した層を強調表示する。星印は、上昇層(so)において異所的に配置された錐体細胞を強調表示する。スケールバー=25 μm。
図15】14-3-3ζ欠損マウスの誤って配置されたニューロンは、成体期まで生存する。 海馬原基(a-f)および成熟海馬(g-h)におけるアポトーシス細胞。14-3-3ζ-/-海馬では、分裂したアポトーシス細胞核の増加は検出されなかった(aiiおよびbii中の緑のTUNEL陽性細胞において示される)。スケールバー=100 μm。
図16】末梢神経系の発生中、Nrp1陽性神経堤幹細胞は、交感神経系および副腎のクロム親和細胞(c)、ニューロン(n)およびグリア(g)を形成する。対照的に、Nrp2陽性神経堤細胞は、感覚神経系のニューロンおよびグリアを形成する。我々は、Nrp1プロモーター(Nrp1:Cre/RFP)からCreおよび赤色蛍光タンパク質を発現しているトランスジェニックマウスモデル、またはNrp2プロモーター(Nrp2:Cre/GFP)からCreおよび緑色蛍光タンパク質を発現しているトランスジェニックマウスモデルを創り出した。これらのマウスは、各亜集団を精製するのに用いることができる、Nrp1およびNrp2陽性神経幹細胞のスペクトル分離を促進する。
図17】Nrp2:ベータガラクトシダーゼに対して染色したCre/GFPマウス由来のP0マウス脳の冠状切片。(A)中の枠囲み領域の拡大図である(B)は、海馬(h)のアンモン角(CA1-3)錐体ニューロンおよび歯状回(DG)顆粒ニューロンが、Nrp2発現神経幹細胞から誘導されることを実証する。Nrp2は、脳室帯(VZ)中の神経幹細胞においても発現される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な記載
本発明は、タンパク質14 3-3ζの絶対レベルまたはタンパク質14-3-3ζ/DISC1複合体形成のレベルとの関連といったような、タンパク質14-3-3ζの機能的レベルの低下が、統合失調症または関連する状態などの神経精神疾患状態の開始または開始する傾向を示すという決定を部分的に前提としている。しかしながら、この低下が海馬の変性をもたらすというさらなる決定が、統合失調症などの欠陥のある海馬を示している個人のための治療処置を発達させるための基礎を提供している。神経堤幹細胞の亜集団が、海馬のニューロンに選択的に分化し、脳に移植されて海馬の再生を達成しうるというさらなる決定が、これらの発見すべての組合せに基づいて、今や、統合失調症などの抗体のための治療処方計画の開発を導いている。
【0025】
したがって、本発明の1つの態様は、欠陥のある海馬を特徴とする状態を有する哺乳動物の治療方法に関し、該方法は、海馬の再生をなし遂げるのに十分な時間および条件下で、哺乳動物に、有効数のNrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントを投与することを含む
【0026】
「海馬」への言及は、脳の海馬領域への言及であると理解すべきである。本発明をいずれかの任意の理論または作用機序に限定することを望むものではないが、海馬は、ヒトおよびその他の哺乳動物の脳の主な構成要素である。海馬は、大脳辺縁系に属し、短期記憶から長期記憶への情報の固定化および空間移動の情報の固定化において重要な役割を演じる。密接に関連している大脳皮質のように、海馬は、脳の左側と右側に、半分の鏡像として対になった構造である。ヒトおよびその他の霊長類において、海馬は、側頭葉内側部の内側であって皮質表面の下に位置する。海馬は、2つの主な嵌合部:アンモンの角および歯状回を含む。
【0027】
解剖学的に、海馬は、大脳皮質の縁部の精緻化である(AmaralおよびLavenex(2006).「Ch 3. Hippocampal Neuroanatomy」. The Hippocampus Book. Oxford University Press)。大脳皮質の縁部を補強する構造は、いわゆる大脳辺縁系(limbic system)(ラテン語のlimbus=周縁)を構成する:これらは、海馬、帯状皮質、嗅覚皮質および扁桃体を包含する。海馬は、解剖学的に、情動行動に関与する脳の部分(中隔、視床下部の乳頭体、および視床における前部核複合体)に接続されている。
【0028】
海馬は、全体として、湾曲した管の形状をしており、タツノオトシゴ、雄羊の角(アンモンの角、CA1〜CA4に分画される)またはバナナ(AmaralおよびLavenex、上記)など様々になぞらえられてきた。海馬は、大脳皮質が、隙間のないU字状にカールする密集した錐体ニューロンの単層へとせばまるゾーンとして区別することができる:「U字」の1つの縁であるCA4野は、後ろ向きに強く曲げられたV字状の皮質、歯状回に埋め込まれる。海馬は、両方が同様の構成を共有するが、異なる神経回路の部分である腹側と背側部分からなる(MoserおよびMoser(1998)Hippocampus 8(6):608-19)。この一般的配置は、あらゆる哺乳類種にわたって保持されている。
【0029】
海馬傍回に位置する内嗅皮質(EC)は、その解剖学的関連から、海馬領域の部分であるとみなされる。ECは、大脳皮質の多くの他の部分に、強固かつ相互に接続されている。さらに、内側中隔核、視床および視床下部の乳頭体核の前核複合体および結合核ならびに、脳幹内の縫線核および青斑核が、ECに軸索を送っている。EC軸索の主な出力経路(有孔質路)は、鉤状回に「孔をあけ」、歯状回中の顆粒細胞に密に投射する第II層中の大きな星状錐体細胞に由来し、CA3の先端樹状突起は、より少ない密度の投射を受け、CA1の先端樹状突起は、まばらな投射を受ける。したがって、有孔質路は、海馬と大脳皮質の他の部分との間の主な「接合部分」としてのECを確立する。歯状回顆粒細胞軸索(苔状線維と呼ばれる)は、CA3錐体細胞の近位先端樹状突起から出る、スパイン上のECからの情報を順送りする。次いで、CA3軸索は、細胞体の深部から出て、先端樹状突起がある領域内に続き、次いで、内嗅皮質の深層に遡る;シャファー側枝が可逆回路を完成させる;CA1野もまた、ECに軸索を送り戻すが、これらの投射は、CA3の投射よりもさらにまばらである。海馬内で、ECからの情報の流れは大部分が一方向であり、シグナルは、主としてCA3軸索の担保(collateralization)により、最初に歯状回へ、次いで、CA3層へ、次いで、CA1層へ、次いで、鉤状回へ、次いで、海馬からECへと、一連の堅く詰め込まれた細胞層を通って伝播する。これらの層のそれぞれは、また、複合内在性回路および広範な縦の接続を含む(AmaralおよびLavenex 2006、前記)。
【0030】
数種の他の接続は、海馬機能において重要な役割を演じる(AmaralおよびLavenex 2006、前記)。ECへの出力を越えて、さらなる出力経路が、前頭前皮質などの他の皮質領域に行く。非常に重要な大きな出力は、外側中隔領域に行き、次いで、視床下部の乳頭体に行く。海馬は、セロトニン、ノルエピネフリンおよびドーパミンからの調節入力、ならびに視床の結合核からCA1野への調節入力を受ける。非常に重要な投射は、内側中隔領域から来るものであり、海馬のすべての部分へコリン作動性およびGABA作動性線維を送る。中隔領域からの入力は、海馬の生理的状態の制御において重要な役割を演じる:中隔領域の破壊は、海馬のシータリズムを無効にし、あるタイプの記憶を損なう(Winson(1978)、Science 201(4351):160-63)。
【0031】
海馬に隣接する大脳皮質領域は、海馬傍回として集合的に知られているEichenbaumら、(2007)、Annu Rev Neurosci 30:123-52)。それは、EC、および嗅脳溝の隣にあるという事実にその名前が由来する、鼻周囲皮質も包含する。鼻周囲皮質は、複合目的物の視認において重要な役割を演じるが、海馬の寄与とは区別することができる記憶への寄与を有するという実質的な証拠、および海馬と海馬傍回の両方が損傷をうける場合にのみ、完全な記憶喪失が起こるという実質的な証拠もある(Eichenbaumら、(2007)、Annu Rev Neurosci 30:123-52)。
【0032】
「欠陥のある」海馬への言及は、構造または機能の全部または一部が正常でない海馬への言及であると理解すべきである。この目的のために、欠陥は、先天性または後天性でありうる。たとえば、海馬の解剖学的奇形は、誕生時から存在する可能性がある。しかしながら、多くの神経精神疾患状態および神経変性状態の開始にともなう海馬の欠陥は、出生後に獲得されることが多く、傷害(たとえば、頭部外傷または窒息)、環境因子への曝露および薬物使用などの結果である。他の状況において、遺伝的欠陥は、先天的に存在するが、かなり後まで現れないか、または成人するまで現れないことがある。これまでに詳述したように、本発明方法は、構造的および機能的に正常な組織へと少なくとも部分的に組織を修復する、海馬組織の再生手段を提供する。これに関連して、「再生」への言及は、脳の海馬領域内における少なくともいくらかの正常な海馬組織の生成への言及である。海馬が完全に置き換えられること、あるいはすべての欠陥組織が置き換えられることを意味することを意図しない。むしろ、本発明方法は、本発明方法の適用前に患者に存在した比率と比較して、正常な海馬組織の比率を増加させるという事実への言及である。したがって、本発明方法は、すべての影響を受けた海馬組織の完全な正常化に関連する適用に限定されない。むしろ、欠陥組織のすべてまたはある程度の部分的正常化を意味すると理解すべきである。
【0033】
本明細書で用いる用語「哺乳動物」は、ヒト、霊長類、家畜(たとえば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ロバなど)、実験動物(たとえば、マウス、ラット、モルモットなど)、愛玩動物(たとえば、イヌ、ネコなど)および捕獲された野生動物(たとえば、カンガルー、シカ、キツネなど)を包含する。哺乳動物がヒトまたは実験動物であるのが好ましい。哺乳動物がヒトであるのがさらに好ましい。
【0034】
この実施態様にしたがって、本発明は、欠陥のある海馬を特徴とする状態を有するヒトを治療する方法であって、海馬の再生をなし遂げるのに十分な時間および条件下で、哺乳動物に、有効数のNrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントを投与することを含む方法を提供する。
【0035】
上記に詳述したように、本発明方法は、欠陥のある海馬を有する哺乳動物の脳へのNrp2+神経堤幹細胞の投与が、組織への細胞の生着をもたらすのみならず、海馬の形態と機能の補修および修復をもたらすという決定を前提としている。「幹細胞」は、細胞が、完全には分化されていないが、成熟を達成するためにさらなる分化を必要とすることを意味する。このような細胞は、「前駆(precursor)」細胞、「前駆(progenitor)」細胞、「多能性(multipotent)」細胞または「多能性(pluripotent)」細胞と呼ばれることもある。
【0036】
本発明をいずれかの任意の理論または作用機序に限定することを望むものではないが、神経堤細胞は、メラノサイト、頭蓋顔面の軟骨や骨、平滑筋、末梢および腸ニューロンおよびグリアなどの多様な細胞系統を生じさせる脊椎動物特有の一過性で多機能な遊走細胞集団である。原腸形成後に、神経堤細胞が、神経板と非神経外胚葉の境界に特定される。神経胚形成中に、神経襞としても知られる神経板は、背側正中線に収束して、神経管を形成する。続いて、神経管の屋根板からの神経堤細胞が、上皮間葉移行を受け、神経上皮から剥離し、次いで、様々な細胞型に分化する周辺部を通って移動する。神経堤の発達の基礎となるのは、細胞特性を付与する相互作用シグナル、転写因子および下流エフェクター遺伝子のセットとして記載される、遺伝子調節ネットワークである。
【0037】
したがって、「神経堤幹細胞」への言及は、神経堤幹細胞の1つ以上の機能的または表現型の特徴を示すか、または神経堤幹細胞が分化しうるいずれかの細胞型への分化への可能性を示すいずれかの細胞への言及であると理解すべきである。対象の神経堤幹細胞は、多能性を示す細胞であり、たとえば、頭蓋の骨格、歯の象牙質、メラノサイト、末梢神経細胞、副腎髄質細胞および毛包内の特定の細胞などのいずれかの一種以上の複数の末梢構造を生じさせるために分化するように誘発されうる前駆細胞であるか、あるいは、すでにこれらの系統のサブグループに分化していてもよい。しかしながら、この分化が初期レベルであったとしても、対象の細胞は、依然として、完全には分化していないということに基づいて「幹細胞」である。用語「幹細胞」の使用は、用語「前駆細胞」、「多能性細胞(multipotent cell)」、「多能性細胞(pluripotent cell)」またはその他のこうのうな用語の使用によって暗示されるものと比べて、対象の細胞の成熟/未熟に関する限定であると理解すべきではない
【0038】
神経堤幹細胞の「機能的」特徴を示している細胞への言及は、神経堤細胞由来の系統のいずれか1つ以上に沿って分化するように限定されている細胞への言及であると理解すべきである。「機能的」特徴を示している細胞への言及は、神経堤幹細胞の特徴である、1つ以上のタンパク質性または非タンパク質性分子の細胞表面または細胞内発現プロファイルへの言及であると理解すべきである。この目的のために、本発明方法にしたがって、今や、それは、海馬の機能的ニューロンを選択的に生じさせ、したがって、海馬の再生のための細胞源であるNrp2(ニューロピリン2)を発現する神経堤幹細胞であることが決定されている。したがって、「Nrp2+」への言及は、Nrp2の細胞表面発現を特徴とする神経堤幹細胞への言及であると理解すべきである。
【0039】
いかなる形でも本発明を限定するものではないが、神経堤幹細胞は、胚源、またはより簡便には成体源のいずれかから誘導することができる。さらに詳しくは、成体神経堤幹細胞は、歯の象牙質および毛包の隆起(bulge)から容易かつ日常的に単離することができ、中枢神経系においてニューロンおよびグリアのための同じ前駆細胞源を提供することができる。移植されると、これらの細胞は、ニューロンおよび乏突起膠細胞に分化する。したがって、成体源または胚源のいずれかを、本発明方法との関連で用いることができる。1つの実施態様において、対象の幹細胞は、成体幹細胞である。
【0040】
この実施態様にしたがって、本発明は、本発明は、欠陥のある海馬を特徴とする状態を有する哺乳動物を治療する方法であって、海馬の再生をなし遂げるのに十分な時間および条件下で、哺乳動物に、有効数のNrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントを投与することを含む方法を提供する。
【0041】
もう1つの実施態様において、該成体Nrp2+神経堤幹細胞は、象牙質または毛包から単離される。
【0042】
対象のNrp2+神経堤幹細胞集団は、単一細胞懸濁液または組織などの細胞集合体であってよく、それらは、個体(治療の対象でありうる個体など)から新たに単離されるか、または培養物(たとえば、そこで、細胞数を増殖させ、および/またはそれらが分化シグナルを受け入れるようになるように細胞を培養する)などの非生鮮源、あるいは個体または別の源から早い時点で単離された細胞の冷凍ストック(たとえば、樹立細胞株)から供給されてよい。対象の細胞が、濃縮もしくは精製、細胞周期状態の調節、分子転位または細胞株の形成など(これらに限定されるものではない)の他の形態の処置または操作を受けていてもよいことを理解すべきである。したがって。対象の細胞は、初代細胞または二代細胞であってよい。初代細胞は、個体から新たに単離された細胞である。二代細胞は、その単離後、細胞株の調製などの何らかの形態のインビトロ操作を受けた細胞である。
【0043】
対象の細胞集団の「突然変異もしくはバリアント」への言及は、細胞集団に由来するが、表現型レベルまたは機能レベルにおいて少なくとも1つの差異を示す細胞への言及であると理解すべきである。たとえば、突然変異もしくはバリアントは、その細胞表面マーカーの発現が、全体として、あるいは最初の単離後のその機能性という面において、変化していてもよい。このような変化は、自然発生的に(インビトロ培養または自然発生的形質転換に続いて起こりうる細胞表面マーカーの自然発生的上方調節または下方調節など)、または指示された操作の結果として起こりうるものであり、細胞が意図的に形質転換された場合(たとえば、細胞株の創生を達成するため)、またはトランスフェクトされた場合(たとえば、特定の遺伝子またはマーカーの発現を達成するため)などに起こりうる。
【0044】
本発明のNrp2+神経堤幹細胞集団が、単一表現型プロファイル内での分化状態において何らかのバリエーションを示すことを理解すべきである。すなわち、単一の表現型プロファイル内で、そのプロファイルを含む細胞は、類似の表現型および/または機能的特徴を実質的に示すが、それにもかかわらず、何らかの差異を示しうる。たとえば、このことは、争点である表現型プロファイルを含む細胞のトランスクリプトームプロファイルまたは細胞表面マーカー発現(本明細書に記載のマーカー以外)に関して明らかである。たとえば、Nrp2+神経堤幹細胞は、高度に特異的かつ個別のステージを表さないが、もし「このステージに分化した細胞」対「このステージからの成熟の最前線にある細胞」を比較したならば、相の遷移を反映する多くの個別の細胞亜集団を特徴とすることができる。したがって、本発明の単一の表現型プロファイル内にある細胞亜集団の存在が、包含される。
【0045】
ヒト胚幹細胞が単離され、インビトロでNrp2+ 神経堤幹細胞に分化することが求められている限りにおいて、これらの細胞を、ヒト胚盤胞期胚の内細胞塊から誘導することができるか、または樹立細胞株を用いることができる(ThomsonおよびOdorico、Trends Biotechnol.、18:53-57(2002)によって開発された細胞株、すなわち、H1、H7、H9.1、H9.2、H13またはH14など)。デノボヒト胚幹細胞培養物を生成するために、顕微手術または免疫手術(栄養外胚葉を分解するためにそれに対する抗体を用いる)によって内細胞塊からの細胞を周囲の栄養外胚葉から分離し、通常、複製を防ぐために有糸分裂的に不活化したマウス胚線維芽細胞のフィーダー層を用い、ウシ胎児血清(あるいは、塩基性FGFを含むノックアウト・ダルベッコ変法最小必須培地に血清リプレーサー(Life Technologies)を添加し、血清なしで用いることができる)を添加した増殖培地を含む培養皿に置く。別法として、基質としてマトリゲルまたはラミニン、塩基性FGFおよびマウス胚線維芽細胞の培養物からの馴らし培地を用いるChunhui Xu、Melissa Carpenterおよび共同研究者らによって報告されたシステムなどの無フィーダー培養システムを用いてもよい(Xuら.、Nat Biotechnol. 2001 Oct;19(10):971-4)。次いで、Nrp2+神経堤幹細胞集団が、この出発多能幹細胞集団から分化される。
【0046】
本発明は、哺乳動物の脳へのその局在化を促進するために、哺乳動物に、Nrp2+神経堤幹細胞集団を投与することを前提とする。「局在化」は、患者に導入される少なくともいくつかのNrp2+神経堤幹細胞集団が脳を標的とすることを意味する。しかしながら、任意の処置イベントという観点では、投与されたNrp2+神経堤幹細胞の一部は、脳を標的とせず、除去されるか、もしくは脳以外の組織にとどまる場合があることを理解すべきである。
【0047】
本発明との関連で投与される細胞は、単離され、それらが元来採取された個人に戻し移植される自己細胞(たとえば、象牙質由来のNrp2+ 神経堤幹細胞)
であるのが好ましい。しかしながら、それにもかかわらず、本発明が、対象の細胞が、処置の対象である個人と同じ主要組織適合性プロファイルを示すいずれかの他の適当な源に由来する細胞の使用にまで及ぶことを理解すべきである。したがって、このような細胞は、それらが、異種のMHCプロファイルを示している細胞の移植に通常伴う組織適合性の問題をもたらさないという点において事実上自己由来である。このような細胞は、「自己由来」の定義に入ることを理解すべきである。たとえば、特定の環境下で、対象の細胞が、遺伝的に同一の双子から単離されること、または対象の個人に由来するか、または対象の個人からクローニングされた配偶子を用いて生成された胚の幹細胞から分化することが、望ましいか、必要であるか、または実際に重要である。細胞はまた、所望の主要組織適合性プロファイルを示すように遺伝子工作されていてもよい。このような細胞の使用は、組織および臓器移植との関連で本質的に直面する困難を克服する。
【0048】
しかしながら、自己細胞を単離または生成するのが可能ではない場合、同種異系細胞を用いることが必要である。「同種異系」細胞は、処置される対象と同じ種から単離されるが、異なるMHCプロファイルを示す細胞である。治療との関連でのこのような細胞の使用は、同種異系に基づく免疫反応の発症をもたらすが、それにもかかわらず、この問題は、兄弟、親または子などの血縁者から単離/生成された細胞集団などの処置される対象のMHCプロファイルに類似性を示しているMHCプロファイルを示す細胞の使用によって最小化することができる。同種異系細胞の使用を特徴とすることが多い免疫学的組織拒絶反応は、免疫抑制剤の使用によって最小化してもよい。しかしながら、このような薬物の使用が必要であるとみなされるかどうかは、ケース毎の特定の状況に依存する。樹立Nrp2+神経幹細胞株の使用も本明細書において企図される。本発明は、異種移植にも及ぶと理解すべきである。すなわち、患者に導入される細胞は、処置される被験者の種以外の種から単離される。
【0049】
「有効数」への言及は、少なくとも部分的に所望の効果を達成するか、または治療される特定の状態の発症を遅延化させるか、または治療される特定の状態の進行を阻止するか、または治療される特定の状態の発症もしくは進行を完全に停止させるのに必要な細胞の数を意味する。このような量は、もちろん、治療される特定の状態、該状態の重篤度、および年齢、体調、背格好、体重、生理学的状態、併用療法、病歴および議論中の障害に関連するパラメーターなどの個々の患者のパラメーターに応じて変わる。当業者であれば、過度の実験を行うことなく、有効用量を構成するNrp2+神経堤幹細胞の数ならびに最適投与モードを決定することができるが、これについては後期でさらに述べる。これらのファクターは、当業者には周知であり、単なる日常的実験で対処することができる。通常、最大細胞数、すなわち、穏当な医学的判断による最高安全数を用いるのが好ましい。しかしながら、当業者であれば、医学的理由、心理的理由またはいずれかの他の理由から、より少ない細胞数を投与してもよいことが理解されよう。
【0050】
本発明方法にしたがって投与されるNrp2+神経堤幹細胞のすべてが、かならずしも治療計画に寄与するわけではないということも理解すべきである。たとえば、いくつかの細胞は、脳以外の組織に局在化する可能性があり、その他は、生存不能または非機能的になる可能性がある。Nrp2+神経堤幹細胞集団が異種細胞集団(毛包サンプルなど)から精製されている、もう1つの例では、精製された集団は、100%の純度が得られない場合、いくつかの非Nrp2+神経堤幹細胞を含む可能性がある。したがって、もし、患者に導入される細胞の関連部分が上述のように「有効数」を構成するならば、本発明は達成される。
【0051】
本発明のこの態様に関連して、対象の細胞は、対象の個人への導入を必要とする。この目的のために、細胞は、いずれかの適当な方法で導入されてよい。たとえば、組織または血液凝固への直接注射によって、細胞懸濁液を導入することができ、それによって細胞が凝固内に固定化され、移植が促進される。細胞は、移植前にカプセル封入されてもよい。カプセル封入は、増殖し続けることができる(すなわち、不死の特徴を示す)細胞の伝播を防止するのに有用な技術である。細胞は、限局的、静脈内または全身経路によって導入されてもよい。
【0052】
細胞は、外科的埋め込み(移植)によって導入されてもよい。これは、たとえば、細胞が移植組織片の形態で存在する場合、もしくは、細胞が移植前にカプセル封入される場合に必要である。本発明をいずれかの任意の理論または作用機序に限定することを望むものではないが、細胞がカプセル封入された細胞懸濁液として投与される場合、細胞は合体して塊になる。
【0053】
患者に投与される細胞は、いずれかの適当な経路による単回または複数回用量として投与することができる。好ましくは、そして可能であれば、特に脳への外科的生着が、使用された方法である場合は、単回投与を用いる。注射を介する投与は、必要とされる治療のタイプに応じて、組織または臓器の様々な領域へ送ることが可能である。
【0054】
本発明方法にしたがって、Nrp2+神経堤幹細胞の導入とともに、または移植された細胞の分化増殖期中に、のいずれかで、抗生物質または分化誘導サイトカインなどの他のタンパク質性または非タンパク質性分子を共投与することができる。「共投与」は、同じ製剤または異なる製剤における同じもしくは異なる経路での同時投与、または同じまたは異なる経路での連続的投与を意味する。「連続的」投与は、これらの細胞の移植とタンパク質性または非タンパク質性分子の投与との間が、秒、分、時間または日の時差であることを意味する。たとえば、対象のNrp2+ 神経堤幹細胞の局在化または方向性のある分化を促進する分子を共投与するのが望ましい。共投与が必要である状況の他の例として、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【0055】
非同系細胞または組織を被験者に投与する場合、通常、被験者による、そのような細胞または組織の免疫拒絶反応が起こる。この状況において、免疫抑制治療計画で患者を処置することも必要であり、拒絶反応を最小にするために、このような投与の前に処置を開始するのが好ましい。たとえば、シクロスポリンA、免疫抑制抗体などの投与による同種異系移植片拒絶を阻止するための免疫抑性プロトコルは、広範かつ標準的に行われている方法である。
【0056】
治療される状態の性質に応じて、移植された細胞が組み込まれて完全に機能するようになるまで、該状態の症状を軽減するための薬物療法の過程上に患者を維持することが必要である(たとえば、統合失調症を治療するための抗精神病薬の投与など)。あるいは、状態が治療される時点で、損傷の再発を防止するために、薬剤の長期使用を開始する必要があるかもしれない。たとえば、対象の損傷が自己免疫状態によって引き起こされた場合、同系細胞が使用された場合であっても免疫抑制剤の継続的な使用が要求される可能性がある。
【0057】
本発明方法が、議論中の状態を治療するために単独で行われうるか、または対象の治療を促進または増強させるように設計された一種以上の追加の技術と共に行われうることも理解すべきである。これらの追加の技術は、上述したように、他のタンパク質性または非タンパク質性分子の共投与の形をとりうる。
【0058】
「欠陥のある海馬を特徴とする状態」への言及は、その症状もしくは原因が海馬の変性または損傷である任意の状態への言及であると理解すべきである。このような状態の例として、脳の先天的な解剖学的異常、このような頭部外傷または窒息などが原因の後天的傷害、長期強要後の帰還軍人に見られるような萎縮および発育不全、あるいは神経精神疾患状態などの機能性ンパク質14-3-3ζもしくはタンパク質14-3-3ζ/DISC1複合体形成のレベルの低下を特徴とする状態が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
「神経精神疾患状態」への言及は、神経学に基づいた、認知、感情および行動障害を特徴とする状態への言及であると理解すべきである。このような状態の例として、とりわけ、統合失調症の一種以上の症状を特徴とする状態、統合失調症、統合失調症性人格障害、精神病、双極性障害、躁うつ病、感情障害、または統合失調症様障害または統合失調性感情障害、精神病性うつ病、自閉症、薬物誘発性精神病、せん妄、アルコール離脱症候群あるいは認知症性精神病が挙げられる。
【0060】
1つの実施態様において、神経精神疾患状態は、統合失調症の一種以上の症状を特徴とする状態である。
【0061】
この実施態様にしたがって、海馬の再生をなし遂げるのに十分な時間および条件下で、哺乳動物に、有効数のNrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントを投与することを含む、神経精神疾患状態を有する哺乳動物を治療する方法が提供される。
【0062】
1つの実施態様において、哺乳動物は、ヒトである。もう1つの実施態様において、Nrp2+神経堤幹細胞は、成人由来幹細胞である。
【0063】
さらにもう1つの実施態様において、神経精神疾患状態は、統合失調症の一種以上の症状を特徴とする状態である。
【0064】
さらなる実施態様において、状態は、統合失調症である。
【0065】
「統合失調症に特徴的な症状」への言及は、統合失調症を患っている個人に起こりうるいずれかの一種以上の症状への言及であると理解すべきである。これらの症状は、疾病経過を通して顕著でありうるか、または一時的にのみ、もしくは周期的に顕著でありうる。たとえば、統合失調症に伴う幻覚は、通常、周期的エピソードにおいて起こり、特徴的な社会的ひきこもりは、継続的な症状を示しうる。統合失調症を患っているすべての個人が、必ずしも対象の症状を示すわけではないことも理解すべきである。たとえば、幻聴のみに悩まされる個人もあれば、幻視のみに悩まされる個人もある。しかしながら、本発明においては、どれだけ多くの、または少ない統合失調症患者が実際に所定の症状を示すかには無関係に、いずれかのこのような症状が、この定義に包含される。本発明をいずれかの任意の理論または作用機序に限定することを望むものではないが、該疾患に最もよく伴う症状は、いわゆる陽性症状(著しく異常な行動が存在することを意味する)、思考障害および陰性症状である。思考障害および陽性症状として、一つの主題から別の主題に進むことが困難であるか、または主題が飛躍する、論理的な関連性の見られない話し方、妄想(迫害、罪責感、誇大妄想または他人の管理下にあるという誤った思い込み)、および幻覚(幻視または幻聴)が挙げられる。思考障害は、明瞭かつ論理的に思考する能力の低下である。思考障害は、統合失調症の人が会話に参加するのを不可能にする、関連性のない無意味な言語によって現れることが多く、その結果として、家族、友人および社会からの疎外感がもたらされる。妄想は、統合失調症の人の間でよく見られる症状である。罹患した人は、陰謀を企てられていると信じるようになる(偏執性妄想と呼ばれる)。「思考流出(Broadcasting)」は、この疾病をもつ個人が、彼の思考を他人が聞くことができると信じている妄想の一つのタイプである。幻覚は、聞いたり、見たり、あるいは感じたりすることができる。ほとんどの場合、患者のみに聞こえる声の形をとる。このような声は、患者の行動を述べたり、危険を警告したり、何をすべきかを言ったりする。患者は、複数の声が会話をしているのを聞くこともある。「陽性症状」ほど明らかではないが、同等に重篤なものに、正常な挙動の不在を表す欠損または陰性症状がある。これらの症状として、平坦な感情または感情鈍麻(すなわち、情動的表現の欠如)、無気力、引きこもりと洞察力の欠如が挙げられる。陽性症状および陰性症状の両方が、「統合失調症に特徴的な症状」の定義に含まれると理解すべきである。
【0066】
統合失調症患者が示す症状という点において、患者間に有意な変動がありうるという事実に加えて、一種以上のこれらの症状を特徴とする他の神経精神疾患状態があることも理解すべきである。たとえば、幻覚は、双極性障害、精神病性うつ病、せん妄および認知症性精神病の患者においても通例観察される。したがって、統合失調症に特徴的な一種以上の症状への言及は、一種以上のこれらの症状の存在を特徴とするいずれかの神経精神疾患状態への言及であると理解すべきである。1つの実施態様において、該状態は、統合失調症である。
【0067】
本発明の関連する態様において、治療(treatment)を受けている患者は、治療的または予防的処置を受けており、治療的または予防的処置を必要とする任意のヒトまたは動物であってよい。これに関して、「治療」および「予防」への言及は、その最も広い関連で考慮されるべきである。用語「治療」は、哺乳動物が完全に回復するまで治療されることを必ずしも意味しない。同様に、「予防」は、患者が最終的に疾患に罹患しないことを必ずしも意味しない。したがって、治療および予防は、特定の疾患状態の症状を軽減すること、または特定の疾患状態を発症するリスクを予防もしくは減少させることを包含する。用語「予防」は、特定の疾患状態の発症の重篤度を低減化することであるとみなされてよい。「治療」は、存在する疾患状態の重篤度の低減化することもできる。
【0068】
本発明のさらにもう1つの態様は、欠陥のある海馬を特徴とする哺乳動物の状態の治療用医薬の製造における、Nrp2+神経堤幹細胞またはその突然変異体もしくはバリアントの使用に関し、ここで、該幹細胞は、海馬を再生させる
【0069】
1つの実施態様において、哺乳動物はヒトである。
【0070】
もう1つの実施態様において、Nrp2+神経堤幹細胞は、成熟幹細胞であり、さらに詳しくは、象牙質または毛包由来の幹細胞である。
【0071】
さらなる実施態様において、該疾患状態は、脳の先天的な解剖学的異常、このような頭部外傷または窒息などが原因の後天的傷害、または機能性ンパク質14-3-3ζもしくはタンパク質14-3-3ζ/DISC1複合体形成のレベルの低下を特徴とする状態である。
【0072】
もう1つの実施態様において、該疾患状態は、神経精神疾患状態、さらに詳しくは、統合失調症の一種以上の症状を特徴とする状態、統合失調症、統合失調症性人格障害、精神病、双極性障害、躁うつ病、感情障害、または統合失調症様障害または統合失調性感情障害、精神病性うつ病、自閉症、薬物誘発性精神病、せん妄、アルコール離脱症候群あるいは認知症性精神病である。
【0073】
本発明のさらにもう1つの態様は、本発明の治療方法において用いるためのNrp2+神経堤幹細胞を含む単離された細胞集団に関する。
【0074】
本発明は、以下の非限定的実施例を参照することにより、さらに詳細に記載される。
【実施例1】
【0075】
材料および方法
マウス:Geoレポーター遺伝子を含む遺伝子トラップ構築物を有する14-3-3ζGt(OST062)Lexおよび14-3-3ζGt(OST390)Lex突然変異マウスは、それぞれ、Lexicon Genetics ES細胞株であるOST062およびOST390に由来した。14-3-3ζGt(OST062)Lexマウス中の遺伝子トラップベクターは、14-3-3ζの第一イントロンに挿入されたが、14-3-3ζGt(OST390)Lexマウス中の遺伝子トラップベクターは、14-3-3ζの第二イントロンに挿入された。ES細胞株を増殖させ、SV129胚盤胞に注入した。得られる生殖細胞系伝達オスは、SV129バックグラウンドに維持するか、または6世代にわたってC57/Bl6およびBA1,BCバックグラウンドに戻し交配した。qRT-PCRおよび全組織サンプルからのウエスタンブロットを用いて、これらのマウス株における遺伝子の完全KOを確認した。補足の表1に詳述するプライマーを用いるゲノムテールDNAのPCR増幅によって14-3-3C遺伝子型を決定した。WT対立遺伝子は、288 bp(14-3-3ζGt(OST062)Lex)または445 bp(14-3-3ζGt(OST390)Lex)のバンドを増幅させ、突然変異遺伝子トラップされた対立遺伝子は、165 bp(14-3-3ζGt(OST062)Lex)または203 bp(14-3-3ζGt(OST390)Lex)のバンドを増幅させた。マウスを、WT同腹子と表現型的に区別できないヘテロ接合つがいとして維持した。Institute of Medical and Veterinary Sciencesの動物倫理委員会およびアデレード大学のガイドラインにしたがって、動物実験を行った。
【0076】
行動試験
8.00 amと12.00 pmの間の普通光条件下で、すべての操作を行った。以前の記載(Coyleら、Behav Brain Res 2009、197(1):210-218;Summersら、Pediatr Res 2006;59(1):66-71;van den Buuseら、Int J Neuropsychopharmacol 2009;12(10):1383-1393)にしたがって、行動表現型解析を行なった。5、10、20および40週齢におけるオープンフィールド試験のために、マウスの1つのコホートを用いた。空間作業記憶、次いで、高架式十字迷路および物体認識タスクのために、12週齢のマウスの1つのコホートを用いた。PPIのために、12週齢のマウスの別ノコホートを用いた。
【0077】
運動機能試験
15個の四角(9 cm x 10 cm)に区画された床をもつボックス(50 cm x 27 cm)型のオープンフィールドにおいてマウスの探索的行動および不安レベルを測定した。右上隅に面したボックスの同じ位置に各マウスを導き入れる。マウスの行動を観察し、線を横切るとき(すなわち、マウスが4本の足すべてを1つの四角から別の四角へ移動させたとき)の回数の値として運動機能を採点した。マウスが両方の前足を床から上げた場合の後足で立つ回数を採点した。セッション間に尿および糞便物質を除去し、残り香を除去するために、80%エタノールでボックスを完全に清潔にした。
【0078】
物体認識試験
物体認識タスクは、マウスの目新しいものに対する自然な親しみを利用する;以前に見た(見覚えがある)物体を認識するマウスは、目新しい物体を探索するのにより多くの時間を費やす(Dereら、Neurosci Biobehav Rev 2006;30(8):1206-1224;Sikら、Behav Brain Res 2003;147(1-2):49-54)。簡単に言うと、プラスチックアリーナ(長さ;50 cm、幅;35 cm、深さ;20 cm)からなる装置を寝床で満たした。2つの異なる物体のセットを用いた;黄色の蓋をしたプラスチックジャー(高さ、6 cm;ベース直径、4.3 cm)および赤いプラスチックバルブ(bulb)(長さ:8 cm、幅:4 cm)。マウスは、これらの物体の両方を提示されると、アリーナ内でマウスが配置されている位置にかかわらず、等量の時間を費やした(データ示さず)。12週齢において、空間学習についてマウスの同じコホートを試験し、物体認識記憶について記憶を評価した。テストアリーナにマウスを慣らすために存在する任意の物体なしで、試験ボックスを探求するための時間を各マウスに5分間与えた。マウスは、2つのトライアルからなる試験セッションを受けた。各トライアルの期間は、3分間であった。第一のトライアル(サンプル期間)中、ボックスには、ボックスの北西(左)および北東(右)隅に(壁から5 cm離れて)置かれた2つの同一の物体(a.サンプル)が存在した。マウスは、常に、南の壁に面して装置内に配置した。第一の探索期間後に、マウスをフォームケージに戻した。15分間の保持間隔の後、第二トライアル(選択期間)のために、見慣れた物体(a.サンプル)および目新しい物体(b)とともにマウスを装置内に配置した。残り香を除去するために、セッションの間に物体をアルコールで完全に清潔にした。トライアル1およびトライアル2中、各物体を探索するのに費やされた時間を記録した。鼻で物体に接触するか、またはその2 cm以内に近づくかで探索を定義した。物体認識タスクの基本測定は、トライアル1およびトライアル2中に物体を探索するのに費やされた時間であった。試験中にいくつかの変数を測定した:e1(a+a)およびe2(a+b)は、それぞれ、トライアル1およびトライアル2中の両方の物体の総探索時間の測定である。h1は、トライアル1およびトライアル2からの総探索時間における差異(e1−e2)によって測定された慣れの指数である。d1(b−a)およびd2(d1/e2)は、目新しい物体と見慣れた物体の間の弁別の指数としての測定である。したがって、d2は、探索的行動(e2)についてd1を修正する、弁別の相対的測定である。ゼロ以上の弁別指数は、見慣れた物体よりも長時間、目新しい物体を探索している動物を示す。いずれの物体にも優先傾向を示さない動物の指数はゼロに近い。サンプル期間または選択期間のトライアル中の総探索時間が7秒未満のマウスは、探索時間の測定が、この閾値以下では信頼性がないことが見出されているので、分析から除外した(van den Buuseら、前述;de Bruinら、Pharmacol Biochem Behav 2006;85(1):253-260)。
【0079】
高架式十字バー試験
開放された高架式のエリアに対する自然な嫌悪に基づくマウスの不安行動を、以前の記載(Komadaら、J Vis Exp 2008;(22);Walfら、Nat Protoc 2007;2(2):322-328)にしたがって、高架式十字迷路を用いて評価した。簡単に述べると、装置は、黒いプレキシガラスで十字形状に作られ、互いに中央で直角に交差した2つのオープンアーム(25 cm x 5 cm)と2つのクローズドアーム(25 cm x 5 cm x 16 cm)からなった。アームの中央に、中央プラットフォーム(5 cm x 5 cm)があった。十字迷路は、地面から1 mの高さであった。実験者とは反対側のオープンアームに面して、個々のマウスを装置の中央に導き、ビデオ記録によって5分間観察した。オープンアームおよびクローズドアームへの進入回数および両方のタイプのアームを探索している時間を採点した。高架下を覗き込む(head dipping)回数、後足で立ち上がる回数および伸展を伴う姿勢(stretch attended postures)などのマウスの自然な行動を測定した。各トライアル後、すべてのアームおよび中央エリアをアルコールで完全に清潔にして、残り香を除去した。
【0080】
水迷路逃避試験
以前の記載(Coyleら、2009、上記)にしたがって、交差迷路逃避タスクを用いて空間学習および記憶を評価した。交差迷路は、透明なプラスチック製(長さ、72 cm;アーム寸法、長さ 26cm x 幅20 cm)であり、23℃に維持した水の円形プール(直径 1 m)に配置した。粉ミルクを水に混ぜて、迷路の遠位北アームに置いた水没した(水面下0.5cm)逃避プラットフォームが見えないようにした。プールを黒いプラスチックの壁(高さ、90 cm)で囲んだ。一定の空間的な手がかりが、訓練および試験手順中、常に南に立っている実験者によって、迷路の各アームに配置された。逃避プラットフォームなしでプール内に配置し、60秒間泳がせることによって、12週齢のマウスを迷路環境に個々に慣らした。逃避プラットフォームを含まない他の3つのアーム(東、南、西)から、マウスが水没した逃避プラットフォームの位置を学習するのに必要な6日間の訓練期間にわたって学習トライアルを行った。無作為パターンにて、3つのアームのそれぞれを出発点として選んで(1日2回)、各マウスに1日6回トライアル(3回のトライアルを2つのブロックにまとめて、30分間の休憩を挟む)をさせた。各トライアルのために、マウスを壁に面してアームの遠位端に配置し、逃避プラットフォームに到達するために60秒を与え、プラットフォームに上がれば10秒間とどまらせた。所定の時間内に逃避プラットフォーム上に上がらなかったマウスは、プラットフォーム上に10秒間置いた。次いで、マウスを10秒間ケージ内に配置し、次のトライアルを継続した。学習期間中と同じ位置に置かれる逃避プラットフォームの位置の長期保持についてマウスを評価した。学習の最終日から14(M1)および28(M2)日後に記憶を試験したが、記憶は、学習期間について記載したように6回のトライアルのうちの一日から構成された。逃避潜時(すなわち、プラットフォームに泳ぎ着くのにかかる時間)、正確なトライアルの数(すなわち、マウスが最初のアームエントリーにおいてプラットフォームを見つけた場合)、および不正確なエントリー/再エントリーの数(すなわち、マウスが逃避プラットフォームを含まないアームに行った回数)に関して、各トライアルおよび各マウスに対するデータを記録した。
【0081】
PPI試験
以前の記載(van den Buuseら、2009、上記)にしたがって、8ユニット自動システム(SR-LAB、San Diego Instruments、USA)を用いて、驚愕、驚愕への慣れおよび驚愕のPPIを評価した。簡単に述べると、マウスを、いずれかの端が閉じられた透明なプレキシガラスノシリンダー内に配置し、ボックスの天井に設置したスピーカーを通して70dB以上のバックグラウンドノイズの音響刺激を与えた。各試験セッションは、25秒の平均トライアル間の間隔の104回のトライアルから構成された。最初と最後の8回のトライアルは、40ミリ秒の115 dBパルス1回の単独驚愕刺激で構成された。中盤の88回のトライアルは、16回の115dBパルス単独刺激、擬似ランダム化付与で構成され、その間の8回のトライアルは、刺激なしであり、64回はプレパルストライアルであった。32回の115dBパルス単独トライアルの合計を、8つのブロックからなる4つのブロックとして表し、驚愕慣れを決定するのに用いた。プレパルストライアルは、70dBのベースラインでの2、4、8または16 dBの非驚愕刺激を20ミリ秒与え、30ミリ秒または100ミリ秒の刺激間隔(ISI)をとった後に、115dBのパルスを一回与えることで構成された。プラットフォームの下に取り付けられた圧電加速度計ユニットによって、全身驚愕反応を定量的値に変換した。パルス単独驚愕反応−(プレパルス+パルス)驚愕反応/パルス単独驚愕反応×100として、プレパルス抑性パーセンテージ(%PPI)を計算した。
【0082】
統計分析
すべての統計的計算は、平均±SEMで表し、SAS バージョン9.2(SAS Institute Inc.、Cary、NC、USA)を用いて行った。オープンフィールドデータについては、線形混合効果モデルを用い、線を横切る回数を野生型および突然変異グループの間で経時的に比較した。無作為マウス効果を該モデルに含めて、同じマウスからの反復観察における依存性を説明した。高架式交差バーからのデータは、独立サンプルt-検定を用いて、WTと突然変異の間で比較した。水交差迷路試験については、コックス比例ハザードモデルを用い、2つの処置グループの間で経時的に逃避潜時を比較した。このモデルにおいてロバスト分散評価を用いて、同じマウスにおける反復測定による結果における依存性を調節した。モデルグループ(WTまたはKO)において、時間(第1日から6日)、およびグループと時間との間の相互作用を予測因子として入れた。マウスが出口をまだ見つける必要があった場合に、逃避潜時は、30秒にて打ち切られて正しいとみなされた。我々の研究においては、正常に分布しているとして結果を処理することができるように30秒にて打ち切られる逃避潜時を有する動物が多すぎた。したがって、線形混合効果モデルを使用することは不可能であった。負の二項回帰モデルを用いて、不正確なエントリーを野生型および突然変異グループの間で経時的に比較した。モデルグループ(WTまたはKO)において、時間(第1日から6日)、およびグループと時間との間の相互作用を予測因子として入れた。一般化推定方程式を用いて、同じマウスにおける反復測定ゆえの結果における依存性を説明した。反復測定の双方向分散分析を用いて、PPI試験からのデータを比較した(Systat、バージョン9.0、SPSSソフトウェア;SPSS Inc.、USA)。この分析では、群間要因は、遺伝子型であり、群内反復測定要因は、プレパルス強度および驚愕ブロックであった。すべての試験において、<0.05のap値は、統計的に有意であるとみなされた。
【0083】
免疫組織化学
切片を、PBST(0.1M PBS、0.3% Triton X-100、1% BSA)中の10%非免疫ウマ血清内に室温(RT)にて1時間ブロックし、次いで、一次抗体で室温にて一夜インキュベートした。一次抗体および希液:14-3-3ζに対するウサギポリクローナル(1:200)(Guthridgeら、Blood 2004;103(3):820-827)、0-チューブリンに対するウサギポリクローナル(1:250、Sigma)、カルビンジン-D28Kに対するウサギポリクローナル(1:1000、Chemicon)、 NeuNに対するマウスモノクローナル(1:500、Chemicon)、シナプトフィジンに対するウサギポリクローナル(1:100、Cell Signaling)。翌日、切片を二次抗体とともに室温にて1時間インキュベートした。0.1M PBSで3回洗浄した後、切片にDAPI(Molecular Probes)とともにプロロング(登録商標)ゴールド退色防止試薬を乗せた。
【0084】
BrdUパルスチェイス分析およびTUNEL標識
14.5 dpcまたは16.5 dpcの妊娠しているマウスに、BrdUを、100 μg/体重gにて注入し、子マウスを、生後7日で安楽死させた。これらの時点で生じる増殖している海馬ニューロンの最終到達点は、凍結脳切片におけるBrdU免疫組織化学によって明らかにされた。2M HClで組織を37℃にて20分間変性させ、0.1 Mホウ酸塩緩衝剤(pH 8.5)で10分間中和し、PBST中の10%ウマ血清でブロックし、ラットモノクローナル抗BrdU(1:250;Abcam)およびマウスモノクローナル抗NeuN(1:500;Chemicon)抗体で4℃にて一夜プローブした。使用説明書にしたがってインサイチュ細胞死検出キット(TMR Red;Roche Applied Science)を用いるTUNELアッセイを行い、次いで、DAPI(Molecular Probes)で対比染色を行うことによって、細胞アポトーシスを決定した。
【0085】
免疫沈降
150 mM NaCl、10 mM Tris-HCl(pH 7.4)、10%グリセロール、1% ノニデットP-40、ならびにプロテアーゼおよびホスファターゼインヒビター(10 mg のアプロチニン/ml、10 mgのロイペプチン/ml、2 mMフッ化フェニルメチルスルホニル、および2 mMバナジン酸ナトリウム)から構成される細胞溶解緩衝液中に溶解することによって、すべてのタンパク質抽出物を調製した。サンプルを4℃にて60分間溶解し、次いで、10,000gにて15分間遠心分離した。上清をマウスIg結合セファロースビーズで4℃にて30分間処理してプレクリアした。プレクリアした細胞溶解液を、タンパク質A-セファロース(Amersham Biosciences)に吸収された抗DISC1抗体(C-末端)(Invitrogen)または抗14-3-3抗体(3F7 Abcam)のいずれかの2 ug/mlとともに、4℃にて2時間インキュベートした。セファロースビーズを細胞溶解緩衝液で3回洗浄した後、SDS-PAGEサンプル緩衝液中で5分間沸騰させた。免疫沈降したタンパク質と溶解液を、SDS-PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜に電気泳動で移し、イムノブロッティングによって分析した。
【0086】
イムノブロッティング
膜を、1:1000の抗14-3-3ζ EB1 pAb(Guthridgeら、2004、上記)または1ug/mlの抗DISC1(C-末端)(Invitrogen))のいずれかでプローブした。脳組織由来の14-3-3ζを分析するために、β-アクチンに対するウサギポリクローナル(1:5000、Millipore)をローディングコントロールとして用いた。HRP複合二次抗体(1:20,000、Pierce-Thermo Scientific)によって、結合した抗体を検出した。ECL(Luminescent Image Analyzer LAS-4000、フジフィルム、日本)によって、免疫反応性タンパク質を視覚化した。Multi Gauge Ver3.0(フジフィルム、日本)で画像を分析した。
【0087】
神経細胞培養
文献(Kaechら、Nat Protoc 2006、1(5):2406-2415)の記載にしたがって、P7海馬のニューロン-グリア共培養物を調製した。ホウ酸緩衝液中の100 μg/mlのポリ-L-lysin/PLL(Sigma)で、硝酸処理したカバースリップ(直径13 mm)を37℃にて一夜覆い、次いで、滅菌水で3 x 1時間洗浄した。歯状回およびCAサンプルを切断し、ハンクス液(HBSS)に解離させ、1 x 105細胞/培養皿の密度でニューロンを置いた(4PLL-で覆ったカバースリップを用いた)。神経突起アッセイのために、培養物をインビトロで7および14日間インキュベートした。細胞を4% PFA中に1時間固定し、PBST中の10%非免疫ウマ血清(0.1M PBS、0.1% Triton X -100、1% BSA)とともに室温にて1時間プレインキュベートし、マウスモノクローナルMAP2(1:200、Millipore)および 14-3-3ζ(1:1000)に対する一次抗体とともに4℃にて一夜インキュベートした。次いで、対応する二次抗体とともにカバースリップを室温にて1時間インキュベートした。カバースリップを退色防止DAPI(Molecular Probes)で覆った。
【0088】
結果
14-3-3ζ、突然変異マウスは、行動障害および認知障害を示す。
14-3-3タンパク質は、発生中および成体の脳において豊富に発現される(Bergら、Nat Rev Neurosci 2003;4(9):752-762;Baxterら、Neuroscience 2002;109(1):5-14)。神経発達および生み出された脳機能における14-3-3ζの役割を解明するために、イントロン1または2内にレトロウイルス遺伝子トラップ挿入を含む胚幹細胞から、それぞれ14-3-3および14-3-3ζGt(OST390)Lexと称する2種類のノックアウトマウス系統を作成した(図8;Lexicon Genetics)。ヘテロ接合交雑からの胚および成体脳組織における定量的RT-PCRおよびウエスタンブロットにより、遺伝子トラップベクターが、遺伝子転写を中断させ、ヌル対立遺伝子を生成することが確認された(図3)。これらの突然変異系統は、14-3-3ζ062+/-および14-3-3ζ390+/-と呼ばれる。他の14-3-3イソ型の欠失とは異なり(Suら、Proc Natl Acad Sci U SA 2011;108(4):1555-1560)、発現分析はさらに、14-3-3Cの除去は、突然変異マウスにおける他の14-3-3ファミリーメンバーの発現増加によって補償されないことを決定した(図10)。両方の株からの14-3-3ζヘテロ接合マウスの交雑は、予測されたメンデル比(WT 23%、Het 56%、Mut 21%;n=494、p<0.001)においてホモ接合突然変異を引き起こし、遺伝子の除去は、胚致死性ではないことを示した。突然変異胚および新生児マウスの新規検査により、それらはその同腹子と形態学的に区別することができないので、発生は正常に進行するということが示唆された。しかしながら、P14までに、両方の系統からの突然変異マウスは発育遅延を示し、P21までに、およそ20%の突然変異マウスは、死亡した(WT 29%、Het 54%、Mut 17%;n=1619)。残りの突然変異マウスは、WT同腹子よりも小さいが、類似した平均余命を有した(P100;WT 24.55±1.7g、Mut 19.73g±2.5g)。突然変異マウスは、嗅覚検査、視覚的なテストおよびワイヤーハングテストにおいて差がなく、外見上は正常で健康であるように見えた。
【0089】
14-3-3ζと、神経障害および脳機能との関連を決定的に分析するために、突然変異およびコントロールマウスにおいて、一連の行動試験を行った。オープンフィールド環境への14-3-3ζ062-/-マウスの応答を最初に評価した。突然変異マウスは、試験期間中の移動距離において有意な増加を示し、それはすべての試験週齢(5、10、20および30週)を通して維持され、突然変異マウスが過活動であることを示す(図1A)。この効果は、性による偏りはなく、雄と雌の両方において同様であった(p>0.05)。
【0090】
見慣れた物体よりも目新しい物体に対してマウスの自然な探索的優先傾向があることを利用して、認識記憶を試験した。中葉にある鼻周囲皮質の正確な機能は、このタスクにとって必須である(Dereら、2006、上記;Sikら、2003、上記;Forwoodら、Hippocampus 2005;15(3):347-355;Wintersら、J Neurosci 2005;25(17):4243-4251)。サンプル期間において、マウスは、同一の物体を探求するのにそれぞれ等しい時間を費やした(14-3-3ζ062+/+、50.82±1.2%;14-3-3ζ062-/- 49.18±1.2%)。見慣れた物体と目新しい物体を提示された場合、14-3-3ζ062-/-マウスは、試験期間にわたって、コントロールと比較して、有意に損なわれた目新しい物体認識を示した。見慣れた物体と目新しい物体の間の優先傾向の欠如に一致して、14-3-3ζ062-/-マウスは、弁別指数(目新しい物体を探索する時間−見慣れた物体を探索する時間/目新しい物体を探索する時間+見慣れた物体を探索する時間)が低下し、このことは、14-3-3ζ062-/-マウスが、新しい情報を保持することができなかったことを示す(14-3-3ζ062+/+、0.1667±0.086秒;14-3-3ζ062-/-、-0.0569±0.047秒;p<0.05)。この場合も、いずれの試験期間においても性差はなかった(p>0.5)。特に、14-3-3ζ062-/-突然変異マウスは、試験の両期間において長時間の探索行動を示し、物体認識試験における過活動も示した(サンプル期間、14-3-3ζ062+/+、27.33±2.7秒;14-3-3ζ062-/-、38.62±4.1秒;p<0.05:試験期間、14-3-3ζ062+/+、24.58±3.1秒;14-3-3ζ062-/-、50.77±4.7秒;p<0.0001)。
【0091】
高架式十字迷路は、げっ歯類の不安行動を試験するために広範に用いられている(Komadaら、2008、上記;Walfら、2007、上記;Lister RG、Psychopharmacology (Berl) 1987;92(2):180-185)。このような試験に付す場合、14-3-3ζ062-/-マウスは、野生型コントロールと比較して、活動の増加も示した。14-3-3ζ062-/-マウスは、5分の試験期間中、交差アーム間で25.23±1.76回移動したが、14-3-3ζ062+/+マウスは、12.29±1.21回(p<0.0001)であった。さらに、14-3-3ζ062-/-マウスは、14-3-3ζ062+/+マウス(31.4±6.0秒 、p<0.0001)と比較して、オープンアームにおいて有意に長い時間を費やし(図1B:114.8±11.5秒)、より多くその中に入り(14-3-3ζ062+/+、4.6±0,6回;14-3-3ζ062-/-、15.5±1.7回、p<0.0001)、より多く高架下を覗き込み(14-3-3ζ062+/+ 19.6±1.5回;14-3-3ζ062-/-、33.4±2.4回 p=0.0041)、このことは、14-3-3ζ062-/-マウスの不安レベルが低かったことを示唆する。
【0092】
交差迷路逃避タスク(Summersら、2006、上記)を用いて、空間作業記憶依存性学習を検討した。海馬と前頭前皮質との間の適切なシグナル伝達は、このタスクの獲得の前提条件である。マウスは、水没した逃避プラットフォームを含む交差迷路の正確なアームを識別するように、6日間にわたって訓練された。実験の間、交差迷路の各アームを新たな視覚的な手がかりによって示した。14-3-3ζ062-/-マウスは、正確なアームを識別することを学習するものもいたが、獲得期間の過程を通して、プラットフォームに達する潜時が長く(図11;Χ2(5)=29.8808;p<0.0001)、アーム選択精度が有意に低い(図1C:IRR=0.52;p<0.0001)。次いで、獲得後14日間または28日間マウスを休養させ、次いで、逃避プラットフォーム水迷路にて再試験することによって、該マウスの正確な交差アームを思い出す能力を試験した(それぞれ、M1およびM2)。学習期間と比較すると、14-3-3ζ062+/+マウスは、逃避潜時において変化を示さなかった(HR=1.18,p=0.383)が、14-3-3ζ062-/-マウスは、逃避潜時において有意な増加を示した(HR=2.98、p <0.0001)。海馬依存性記憶における機能不全と一致して、突然変異マウスは、アーム選択精度においても有意な低下を示した(図1C:IRR=0.231;p<0.0001)。すべての認知障害は、性別非依存性であった。
【0093】
感覚運動ゲイティングにおける欠陥は、統合失調症および関連障害などの神経精神疾患の中間表現型である。海馬と他の脳領域における適切なシグナル伝達は、このフィルタリングメカニズムにとって必須である。14-3-3ζ突然変異マウスが異常な感覚運動ゲイティングを有しているかどうかを決定するために、聴覚の驚愕反射のプレパルス阻害(PPI)を評価した。14-3-3ζ062+/+マウスと比較して、14-3-3062-/-マウスが、有意に低いPPI(図1D:遺伝子型の主要効果 F(1,20)=5.89、p=0.025)および驚愕(図12:F(1,20)=5.87、p=0.023)を有することが見出された。プレパルス強度のレベルの増加は、WTおよび突然変異マウスのPPIにおいて同様の増加を引き起こした(図1D)。全体として、驚愕振幅は、突然変異マウスにおいて低下したが、驚愕馴化は正常であった(図12)。
【0094】
14-3-3ζは、積層をコントロールするために海馬ニューロンに発現される。
認知および行動の欠陥が海馬の神経発達不良から生じるのかどうかを決定するために、神経発達における14-3-3ζの役割を分析した。海馬ニューロンは、脳室帯に沿った神経上皮および海馬采に隣接した神経上皮(NEf)の限定された領域に由来する(Nakahiraら、J Comp Neurol 2005;483(3):329-340)(図2A)。14.5 dpcに、神経上皮前駆体においてではなく、中間帯内の移動海馬ニューロンにおいて、14-3-3ζ免疫染色を検出した(図2Bi)。P0までに、固有海馬/アンモン角(CA)の錐体細胞において、14-3-3ζ免疫染色が検出された(図2Biii)。4-3-3ζマウス系統の遺伝子トラップベクター内のベータ-geo導入遺伝子を利用して、ヘテロ接合マウスにおけるβガラクトシダーゼ染色した14-3-3ζの内因性発現をモニターした。免疫染色と一致して、移動CAニューロン内の転写レベルでの14-3-3ζの発現が同定された。さらに、成体後期において、CAおよびDGニューロン内での発現が検出された(図2C)。しかしながら、予期せぬことに、生後初期段階で、小脳などの脳の他の領域において14-3-3ζを検出することはできなかった(図13)。CAおよびDGニューロン内での発現は、顕微切断された成体海馬から抽出されたタンパク質のウエスタンブロットによって確認された(図2D)。ウエスタンブロットは、14-3-3ζ062-/-マウスのこれらの脳領域からのタンパク質の完全な除去も確認した。最後に、インビトロで10日後(DIV)、海馬MAP2陽性神経培養では、細胞体および軸索/樹状突起内に14-3-3ζの点状免疫細胞染色も示された(図2E)。
【0095】
14-3-3ζは、海馬ニューロンに発現されるので、我々は、次に、CAおよびDGニューロンが、成体および胚突然変異において正確に位置するかどうかを決定するために審査されたかどうかを検討した。14-3-3ζ062-/-マウスのニッスル染色は、海馬成熟に先立って最初に顕著な発育不全を示した(P0にて5/5、P7にて4/4、P28にて2/2およびP56にて2/2;図3Aおよび図14)。特に、錐体ニューロンは、錐体細胞層の通常の休止場所に加えて、放線層および上昇層において異所的に配置された。CA3サブフィールド内で、錐体ニューロンは、単細胞層の代わりに、二層の細胞層に分かれる。歯状回顆粒ニューロンはまた、14-3-3ζ062+/+同腹子と比較して、14-3-3ζ062-/-マウスに拡散的にパックされた。ニッスル染色に一致して、thy1 -YFPマウスにおける海馬組織の分析はまた、中断された層状の組織を示した(図3B)。
【0096】
次いで、異所的に配置された錐体細胞が成熟ニューロンに発達するかどうかを考察した。すべての14-3-3ζ062-/-海馬(4/4子マウス)において、異所性細胞は、神経マーカーNeuNに対して陽性であった(図3C)。ニューロンもまた、深部の分子層に自身を配置するのではなく、CA3の表層で成熟した。また、このデータから、海馬において誤配置された細胞が。機能的錐体および顆粒ニューロンを形成することが推測される。さらに、胚、出生後早期および成体マウス由来の海馬のTUNEL染色は、遺伝型の間で明らかな差異を示さず(図15)、このことは、14-3-3ζの欠如は、神経細胞の生存に影響を及ぼさないことを示唆する。
【0097】
14-3-3ζ欠損マウスは、海馬ニューロン移動欠陥を示す。
14.5dpcでの中間帯内での発現およびP0での表層における成熟ニューロンの存在は、誤移動から異常な層状構造が生じる可能性をもたらす。海馬ニューロン移動を視覚化するために、14.5 dpcおよび16.5 dpcのヘテロ接合14-3-3ζ062交配種からの妊娠中の母親にBrdUを注入することによってBrdU誕生日決定を達成した。14-3- 3ζ062+/+および14-3-3ζ062-/-の子マウスをP7にて採取し、冠状切片にてBrdU保持細胞を同定した。海馬の分離した層を識別するために、切片をDAPIで対比染色した。各遺伝子型の5匹のマウスを用いて10μm切片からBrdU保持細胞を計数し、各層における相対的パーセンテージを数値化した。両方の注入時点は、4.5 dpcまたは16.5 dpcにて脳室帯で生まれたほとんどすべてのニューロンが、コントロールマウスにおいてCAの錐体細胞層に移動することを明らかにする(図4)。しかしながら、驚くべきことに、BrdU保持細胞の有意なパーセンテージが、14-3-3ζ062-/-マウスにおける錐体細胞層の外側にて同定された。したがって、ニューロンの誕生場所からの移動不全およびその正しい層内での停止不全は、14-3-3ζ062-/-海馬において重複した錐体細胞層を引き起こす。
【0098】
機能的に中断された苔状繊維回路および14-3-3ζ欠損マウスの錐体細胞における異常なシナプス終末
CA3錐体ニューロンとDG顆粒細胞との間の伝達は、正確な軸索ナビゲーションおよびシナプスターゲティングを通して達成される。不整列な錐体ニューロンが海馬回路に影響を及ぼすかどうかという問題を、P0、P7およびP56海馬において抗カルビンジンで免疫組織化学的染色を行うことによって評価した。コントロールマウスにおいて、苔状線維は、顆粒細胞の体細胞から発芽し、CA3の錐体細胞層にまたがるインフラ錐体苔状線維(IPMF)束およびスープラ錐体苔状線維(SPMF)束に分岐した(図5)。14-3-3ζ062-/-マウスにおいて、IPMF束はCA3錐体ニューロンの頂端表面に沿って進んだが、SPMF束は CA3ニューロンの間で経路を誤った。
【0099】
DG顆粒細胞が、それらのCA標的細胞上にシナプス形成するかどうかを決定するために、抗シナプトフィジンを用いて、コントロール動物のCA3サブフィールドのIPMFおよびSPMFの両方において前シナプスを同定した。14-3-3ζ062-/-マウスにおいて、経路を誤った軸索はまた、錐体細胞層内に異常なシナプスを形成した(図6)。ゴルジ染色によるシナプス神経線維末端の視覚化は、CA3におけるシナプス形成における著しい差異を明らかにした。コントロール動物においては、頂端樹状突起の近位領域にある大きな脊椎突出物に、小口径樹状枝が続く。14-3-3ζ062-/-マウスの錐体ニューロンにおいては、樹状ツリーは、同様の数の分岐点を有するように見えたが、調査したすべてのマウスの近位および遠位の頂端樹状突起上に経路を誤った線維束からのとげのある突出物を有していた。
【0100】
ニューロン移動および軸索探索を調整するために14-3-3ζによって利用された分子経路を同定するために、P7マウスからの全脳抽出物において、共免疫沈降実験を行った。14-3-3ζが、DISC1のC末端に対する抗体と共免疫沈降されうることが見出された。逆に、DISC1が14-3-3ζを認識する抗体と共免疫沈降しうることも見出された(図7)。驚くべきことに、データは、14-3-3ζが、100 kDaの全長タンパク質よりも、75 kDaのDISC1と特異的に相互作用することを示し、このことは、DISC1が、神経発達においてイソ型特異的に機能することを示す。
【実施例2】
【0101】
NRP2陽性ニューロン前駆体が、海馬を生じさせることの実証
Nrp1またはNrp2を発現しているニューロン前駆体に由来する成熟ニューロンを決定するために、Nrp1およびNrp2系統追跡マウスが作成されている。このために、Cre/RFPまたはCre/GFPが、Nrp1またはNrp2プロモーターの発現下に置かれている(図16)。これらのマウスを用いる実験(n=2実験、図17)は、海馬のニューロンが、Nrp2発現ニューロン幹細胞に由来することを初めて明らかにしている。
【0102】
当業者であれば、本明細書に記載の発明が、本明細書に特記されたもの以外の変形や変更を受けやすいことを理解するであろう。本発明が、このような変形や変更をすべて包含することを理解すべきである。本発明はまた、本明細書に言及されるかまたは示されたステップ、特徴、組成物および化合物のすべてを、個別的あるいは集合的に包含し、該ステップまたは特徴の任意の2種以上の組合せのいずれか、またはすべてを包含する。
【0103】
文献目録
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図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
【国際調査報告】