特表2015-528759(P2015-528759A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特表2015-528759物品の表面のエピラム化のための作用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-528759(P2015-528759A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(54)【発明の名称】物品の表面のエピラム化のための作用剤
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20150904BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20150904BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20150904BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20150904BHJP
   C09D 151/00 20060101ALI20150904BHJP
   C09D 153/00 20060101ALI20150904BHJP
【FI】
   B32B27/30 D
   C08F2/00 C
   C09D201/02
   C09D133/04
   C09D151/00
   C09D153/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-520861(P2015-520861)
(86)(22)【出願日】2013年6月4日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月27日
(86)【国際出願番号】EP2013061435
(87)【国際公開番号】WO2014009058
(87)【国際公開日】20140116
(31)【優先権主張番号】12175783.5
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】リシャール,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ルトンドール,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J011
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA16A
4F100AA17A
4F100AA19A
4F100AA20A
4F100AA21A
4F100AA23A
4F100AA37A
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4F100AB11A
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4F100AC00A
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4F100AK17B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH462
4J011CA02
4J011CA05
4J011CA08
4J011CB00
4J011CC02
4J011CC07
4J038CG141
4J038CP001
4J038CQ001
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4J038GA03
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4J038NA01
4J038NA24
4J038PB06
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、以下の一般式(1):
A−F (1)
を有する1つ又は複数の分子を含む、特に物品の表面エピラム化のための作用剤に関し、
ここでAは、シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される部分を含むアンカー基であり、
Fは官能基であり、この官能基は、バックボーン及び少なくとも2つの側鎖基を有する分岐ポリマーを含み、上記側鎖基のうちの少なくとも1つは、C1−20炭化水素基又は過ハロゲン化C1−20炭化水素基である。
本発明は、時計の機械部品のエピラム化の技術分野に属する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面を有する基材を備える物品であって:
前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部は、以下の一般式(1):
A−F (1)
を有する1つ又は複数の分子を含む、物品の表面エピラム化のための作用剤でコーティングされており、
ここでAは、シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれの組み合わせからなる群から選択される部分を含むアンカー基であり、
Fは官能基であり、前記官能基は、バックボーン及び少なくとも2つの側鎖基を有する分岐ポリマーを含み、前記側鎖基のうちの少なくとも1つは、C1−20炭化水素基又は過ハロゲン化C1−20炭化水素基である
こと;並びに
前記作用剤は、エピラム官能基として、部分フルオロ化炭化水素基である少なくとも1つの側鎖基を含むこと
を特徴とする、物品。
【請求項2】
前記側鎖基のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは全ては、C1−20炭化水素基、好ましくはC2−18炭化水素基、より好ましくはC4−17炭化水素基、更に好ましくはC6−16炭化水素基、最も好ましくはC8−14炭化水素基であることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記少なくとも1つの側鎖基は、部分フルオロ化炭化水素基、好ましくはパーフルオロ化炭化水素基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記炭化水素基は、アルキルエステル基、好ましくは直鎖アルキルエステル基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の物品。
【請求項5】
前記炭化水素基は、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、芳香族環に結合した少なくとも1つのアルキル基を有するスチレン誘導体、上述の基のうち2つ以上のいずれの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記分岐ポリマーは、2〜50、好ましくは3〜30、より好ましくは4〜20、更に好ましくは5〜15、最も好ましくは7〜13の側鎖基を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の物品。
【請求項7】
全ての前記側鎖基は、同一の又は異なるC1-12炭化水素基、より好ましくはC2-10炭化水素基、更に好ましくはC3-9炭化水素基、最も好ましくはC4-8炭化水素基であることを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
全ての前記側鎖基は、部分フルオロ化炭化水素基、好ましくはパーフルオロ化炭化水素基であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の物品。
【請求項9】
前記側鎖基のうちの少なくとも1つは、前記一般式(1)を有する前記作用剤の別の分子と架橋できる少なくとも1つの官能基を有し、
前記分岐ポリマーは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基を含む少なくとも1つのブロックを含み、
前記側鎖基のうちの少なくとも2つはそれぞれ、前記一般式(1)を有する前記作用剤の別の分子と架橋できる少なくとも1つの官能基を有する
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項10】
前記分岐ポリマーは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基を含む少なくとも1つの更なるブロックを含有し、
前記少なくとも1つの更なるブロックの全ての側鎖基は、前記分岐ポリマーの別の分子と架橋できる官能基を含有せず;
より好ましくは、前記分岐ポリマーは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基をそれぞれ含む2つの前記更なるブロックを含有し、
前記更なるブロックの全ての側鎖基は、前記分岐ポリマーの別の分子と架橋できる官能基を含有せず;
少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基を含み、かつ前記側鎖基のうちの少なくとも2つがそれぞれ、前記一般式(1)を有する前記作用剤の別の分子と架橋できる少なくとも1つの官能基を含む、前記ブロックは、前記2つの更なるブロックの間に配設される
ことを特徴とする、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記作用剤でコーティングされる前記少なくとも1つの表面は、ケイ素、ダイヤモンド様炭素、炭化ケイ素、サファイア、鋼鉄、金属被覆鋼鉄、ニッケルメッキ鋼鉄、ルビー、酸化アルミニウム、酸化鉄、マグネシウム合金、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化チタン、ポリマー、上述の材料のうち2つ以上のいずれの組み合わせからなる群から選択される材料からなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の物品。
【請求項12】
a)少なくとも1つの表面を有する基材を準備するステップ;
b)シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアンカー基を、前記基材の前記少なくとも1つの表面のうち少なくとも1つに結合させるステップ;
c)少なくとも1種類のモノマーを準備するステップ;及び
d)前記少なくとも1種類のモノマーを、前記少なくとも1つのアンカー基にグラフト重合させて、前記少なくとも1つのアンカー基と共有結合した分岐ポリマーを形成するステップ
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品を製造するための方法。
【請求項13】
c’)少なくとも1種類のモノマーを準備するステップ;
d’)前記少なくとも1種類のモノマーを、シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアンカー基にグラフト重合させて、前記少なくとも1つのアンカー基と共有結合した分岐ポリマーを形成するステップ;
a’)少なくとも1つの表面を有する基材を準備するステップ;及び
b’)前記少なくとも1つのアンカー基を、前記基材の前記少なくとも1つの表面のうち少なくとも1つに結合させるステップ
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品を製造するための方法。
【請求項14】
d’)少なくとも1種類のモノマーをグラフト重合させて、少なくとも1つの分岐ポリマーを形成するステップ;
a)少なくとも1つの表面を有する基材を準備するステップ;
b)シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアンカー基を、前記基材の前記少なくとも1つの表面のうち少なくとも1つに結合させるステップ;及び
e)前記少なくとも1つの分岐ポリマーを前記少なくとも1つのアンカー基に結合させるステップ
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品を製造するための方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品を含む、時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に物品の表面のエピラム化等の物品の表面改質のための作用剤に関する。更に本発明は、前記作用剤の使用、前記作用剤でコーティングされた表面を有する物品、前記物品を製造する方法、及び前記物品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の表面特性の改善を達成するために、適切な作用剤を用いた処理によって物品の表面を改質する様々な方法が、従来技術において公知である。例えば、特に腕時計製作の技術分野等の機械工学の技術分野では、物品の使用中に物品表面の表面エネルギを制御及び低減するために、物品表面のエピラム化が実施されることがある。
【0003】
しかしながら、エピラム化に使用される物質は現在のところ、様々な欠点を有する。より具体的には、公知のエピラムは、洗浄に対する耐性が低いエピラム化物品表面をもたらす。更に、公知のエピラムは、長期間にわたり優れたエピラム化効果を達成するために、十分な密度及び厚さで物品表面に結合する必要があるが、それが不可能である。更に、公知のエピラムは、干渉現象及び物品表面上でのスポットの形成により、表面にマイナスの審美的効果を引き起こす。また、公知のエピラムは通常、異なる表面材料に対する適用が制限されており、即ちその使用は特定の表面材料に対するもののみに限られている。従って、例えば表面材料に対する柔軟性が高い、即ち様々な異なる表面材料に適用できる上述の制限を克服するエピラムに対する需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、物品の表面のエピラム化に適した、改良された作用剤を提供することであり、当該作用剤は、前記表面上における:作用剤の分子の均一性が改善されたコーティング層の形成;より厚みのあるコーティング層の形成;作用剤の分子の密度が改善されたコーティング層の形成;洗浄に対する耐性が良好になったコーティング層の形成;及び/又は審美的特性が改善されたコーティング層の形成のうちの少なくとも1つを実現可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、この目的は、以下の一般式(1)を有する1つ又は複数の分子を含む作用剤を提供することによって解決される:
A−F (1)
ここでAは、シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される部分を含むアンカー基であり、
Fは官能基であり、この官能基は、バックボーン及び少なくとも2つの側鎖基を有する分岐ポリマーを含み、前記側鎖基のうちの少なくとも1つは、C1−20炭化水素基又は過ハロゲン化C1−20炭化水素基である。
【0006】
この解決法は、このような作用剤が、そのアンカー基及び分岐ポリマー基によって、物品の表面と高い分子密度で強固かつ均一に結合できるという驚くべき発見に基づくものである。従って、前記作用剤は、高い機械的引っ掻きに対する耐性及び高い洗浄耐性を有する。
【0007】
更に、本発明による作用剤は、表面材料に対する接着性といったその特性に関して容易に最適化できる。これは、アンカー基を官能基の性質とは独立してこの目的のために選択できるためである。
【0008】
その他に、物品の表面に対する作用剤の強固な結合により、改質された物品の表面は、洗浄に対する優れた耐性を提供する。更に、表面上のこのような作用剤の層は、優れた審美的特性を呈する。
【0009】
いずれの理論に束縛されることを望むものではないが、上述の優れた表面特性は、物品の表面における本発明による作用剤の分子のパッキングの改善、及び分岐ポリマーを含む官能基を有する作用剤を使用することによって達成される炭素原子の密度の上昇によるものである。実際、分子のパッキングは正確に制御でき、これに付随して、分岐ポリマーの厚さを確実に生成できる。更に分岐ポリマーにより、多数のモノマーを局所的に官能化して使用できるようになり、即ち選択的なUV曝露により、所定の位置のみにおいて重合化を発生させることができる。最後に、分岐ポリマーにより、別の分子との架橋を高度に調整する。
【0010】
アンカー基は広範な官能基から選択できるため、A−F分子のアンカー基は、特定の表面材料上へのアンカー基の接着を最適化するように選択できる。
【0011】
従って、アンカー基を適切に選択することにより、本発明による作用剤を様々な異なる表面材料に塗布できる。特定の基材に対する作用剤の上述の適合化に加えて、この作用剤は、改質対象の表面上に直接的又は間接的に、容易かつ効率的に調製できる。この目的には、選択した材料に対して適切なアンカー基Aを使用した重合方法が適している。
【0012】
よって、アンカー基Aを表面に結合させることができ、その後、アンカー基上へのモノマーのグラフト重合を介して官能基を合成して、作用剤の前記A−Fを形成するか、又はアンカー基A上へのモノマーのグラフト重合を介して官能基を合成し、その後アンカー基を表面に結合させて、本発明の代替実施形態による作用剤の前記A−Fを形成する。
【0013】
特に、官能基Fの分岐ポリマーを部分的にフルオロ化又は更にパーフルオロ化する場合、本発明による作用剤は、基材上の撥油層を提供するエピラムとして使用するのに極めて適したものとなる。この利点は、作用剤の制御された密度によるものである。実際、分岐ポリマーは、所定の体積における高い密度及び不均質な分布(側鎖基が様々な方向を有する)を伴う。
【0014】
本発明で使用される炭化水素基の種類には具体的な制限はないが、非置換炭化水素基及びいずれの種類の置換炭化水素基を含む。従って用語「炭化水素基」は、炭素原子及び水素原子のみからなる基に限定されず、例えばハロゲン置換基又はエステル基といったその他の成分も含む基に拡張される。
【0015】
本発明によるカテコール基は、1,2−ジヒドロキシベンゼン基、及びドーパミン基又はニトロドーパミン基等のいずれかの置換1,2−ジヒドロキシベンゼン基を含む。
【0016】
本発明によると、用語「アミン基を含むアンカー基」は、ポリアミド由来アンカー基も含む。従って本発明では、このようなアンカー基は、ポリアミンに由来する、即ち2つ以上の末端アミノ基及び任意に1つ又は複数の第2級及び/若しくは第3級アミノ基を含有する化合物に由来する構造単位を含有してもよい。
【0017】
上述のように、官能基Fは分岐ポリマーを含む。好ましくは、官能基Fは分岐ポリマーからなり、即ち分岐ポリマー以外のいずれかの更なる基を含有しない。
【0018】
特に、側鎖基のうちの少なくとも1つがC2−18炭化水素基、好ましくはC4−17炭化水素基、より好ましくはC6−16炭化水素基、最も好ましくはC8−14炭化水素基である場合、エピラム化に関する2つの特に良好な結果が得られる。
【0019】
本発明の更なる実施形態によると、側鎖基のうちの少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは全てが炭化水素基であることが好ましく、この炭化水素基は好ましくはC1−20炭化水素基、より好ましくはC2−18炭化水素基、更に好ましくはC4−17炭化水素基、また更に好ましくはC6−16炭化水素基、最も好ましくはC8−14炭化水素基である。
【0020】
作用剤の所望の特性に応じて、前記少なくとも1つの側鎖基は非置換炭化水素基、即ちC−H結合のみを含む炭化水素基であっても、又は置換炭化水素基であってもよい。原理的には、全ての置換炭化水素基を使用でき、この置換炭化水素基が、アルキルエステル基、好ましくは非置換アルキルエステル基である場合に特に良好な結果が得られる。作用剤はエピラム官能基として、部分フルオロ化炭化水素基、好ましくはパーフルオロ化炭化水素基である少なくとも1つの側鎖基を含む。
【0021】
本発明の更に好ましい実施形態によると、炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニルアリール基、アリールアルケニル基、アルキニルアリール基、アリールアルキニル基、アルキルエステル基、アルケニルエステル基、アルキニルエステル基、アリールエステル基、アルキルアリールエステル基、アリールアルキルエステル基、アルケニルアリールエステル基、アリールアルケニルエステル基、アルキニルアリールエステル基、アリールエステル基、及び上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される。全てのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、直鎖、分岐、環状であってもよい。
【0022】
好ましくは、炭化水素基はアルキルエステル基であり、より好ましくは直鎖アルキルエステル基である。
【0023】
アルキルエステル基の非限定的な例は炭化水素基であり、この炭化水素基は、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、芳香族環に結合した少なくとも1つのアルキル基を有するスチレン誘導体、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0024】
上述のアルキルエステル基の代わりに、特定の用途においては、炭化水素基がアリールアルキル又はアルキルアリール基、更に好ましくは直鎖アリールアルキル又は直鎖アルキルアリール基であることが好まれる。
【0025】
本特許出願による作用剤は、好ましくは2〜50、より好ましくは3〜30、更に好ましくは4〜20、また更に好ましくは5〜15、最も好ましくは7〜13の側鎖基を含む分岐ポリマーを含む。
【0026】
この実施形態では、全ての側鎖基は同一でも異なっていてもよく、好ましくはC1−12炭化水素基、より好ましくはC2−10炭化水素基、更に好ましくはC3−9炭化水素基、最も好ましくはC4−8炭化水素基である。
【0027】
更に、特に上述の実施形態では、側鎖基が全て部分フルオロ化炭化水素基、より好ましくはパーフルオロ化炭化水素基であることが好ましい。
【0028】
改質された表面に所望の特性をもたらすために十分な厚さの層を提供するために、本発明による作用剤は好ましくは特定の長さを有する。従って作用剤のバックボーンの長さは、10〜300nm、より好ましくは50〜250nm、更に好ましくは100〜200nm、最も好ましくは120〜180nmの範囲であることが好ましい。
【0029】
本発明の更なる特に好ましい実施形態によると、官能基Fの分岐ポリマーの側鎖基のうち少なくとも1つは、一般式(1)を有する作用剤の別の分子と架橋できる少なくとも1つの官能基を有する。このような架橋により、分岐ポリマーの耐摩耗性が改善され、従ってこれは特に好ましい。分岐ポリマー中に複数の架橋基が存在する場合、これらの架橋基は分子全体に亘って統計的に分布させることができるか、又はブロック状に分布し得る。
【0030】
十分な架橋密度を達成するために、分岐ポリマーは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基を含む少なくとも1つのブロックを含み、これら側鎖基のうちの少なくとも2つはそれぞれ、一般式(1)を有する作用剤の別の分子と架橋できる少なくとも1つの官能基を含む。
【0031】
代替として、そして更に好ましくは、分岐ポリマーは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基を含む少なくとも1つの更なるブロックを含有し、この少なくとも1つの更なるブロックの全ての側鎖基は、分岐ポリマーの別の分子と架橋できる官能基を含有しない。
【0032】
代替として、そして更に好ましくは、分岐ポリマーは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基をそれぞれ含む2つの更なるブロックを含有し、これら更なるブロックの全ての側鎖基は、分岐ポリマーの別の分子と架橋できる官能基を含有しない。また、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基を含み、かつこれら側鎖基のうちの少なくとも2つが、それぞれ一般式(1)を有する作用剤の別の分子と架橋できる少なくとも1つの官能基を含む、前記ブロックは、これら2つの更なるブロックの間に配置される。
【0033】
本発明の更なる主題は、少なくとも1つの表面を有する基材を含み、この少なくとも1つの表面のうちの少なくとも1つが前述の作用剤でコーティングされている物品である。
【0034】
表面上への強固な接着を得るために、一般式(1)を有する作用剤の分子のアンカー基のうちの少なくとも1つは、基材の表面に結合する。物理的結合又はイオン基を介した結合が可能であるものの、一般式(1)を有する作用剤の分子のアンカー基のうちの1つは、基材の表面に共有結合することが好ましい。
【0035】
原理的には、本発明による作用剤はあらゆる基材に結合できる。適切な基材材料の比限定的な例としては、ケイ素、ダイヤモンド様炭素、炭化ケイ素、サファイア、鋼鉄、金属被覆鋼鉄、ニッケルメッキ鋼鉄、ルビー、酸化アルミニウム、酸化鉄、マグネシウム合金、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化チタン、ポリマー、上述の材料のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される材料である。
【0036】
当然のことながら、アンカー基の種類は、特定の基材に対する本発明による作用剤の接着性を決定するため、アンカー基は、基材材料に応じて選択する必要がある。ケイ素、炭化ケイ素、サファイア、ダイヤモンド様炭素製の基材に関しては、例えばシラン基含有アンカー基によって良好な結果が得られ、その一方で鋼鉄、金属、ルビー、酸化アルミニウム、酸化鉄製の基材のためのアンカー基として適切な例は、ニトロドーパミン基である。更に、リン酸基及びホスホン酸エステル基は、特にマグネシウム合金製基材に適切なアンカー基であり、カルボン酸基は、特に鋼鉄及び酸化鉄製基材に適切なアンカー基であり、ポリアミン基は、特に酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化チタン及び/又は酸化アルミニウム製基材に適切なアンカー基であり、チオール基は特に金製基材に適切なアンカー基である。
【0037】
本発明の更なる主題は、以下のステップを含む、上述の物品の製造方法である:
(a)少なくとも1つの表面を有する基材を準備するステップ;
(b)シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアンカー基を、前記基材の少なくとも1つの表面のうち少なくとも1つに結合させるステップ;
(c)少なくとも1種類のモノマーを準備するステップ;及び
(d)前記少なくとも1種類のモノマーを、前記少なくとも1つのアンカー基にグラフト重合させて、前記少なくとも1つのアンカー基と共有結合した分岐ポリマーを形成するステップ。
【0038】
第1の代替例によると、上述の物品を製造するための本発明による方法は、以下のステップを含む:
(c’)少なくとも1種類のモノマーを準備するステップ;
(d’)前記少なくとも1種類のモノマーを、シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアンカー基にグラフト重合させて、前記少なくとも1つのアンカー基と共有結合した分岐ポリマーを形成するステップ;
(a’)少なくとも1つの表面を有する基材を準備するステップ;及び
(b’)前記少なくとも1つのアンカー基を、前記基材の少なくとも1つの表面のうち少なくとも1つに結合させるステップ。
【0039】
第2の代替例によると、上述の物品を製造するための本発明による方法は、以下のステップを含む:
(d’)少なくとも1種類のモノマーをグラフト重合させて、少なくとも1つの分岐ポリマーを形成するステップ;
(a)少なくとも1つの表面を有する基材を準備するステップ;
(b)シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアンカー基を、前記基材の少なくとも1つの表面のうち少なくとも1つに結合させるステップ;及び
(e)前記少なくとも1つの分岐ポリマーを前記少なくとも1つのアンカー基に結合させるステップ。
【0040】
分岐ポリマーは、また表面開始型酸素耐性ARGET ATRP合成によっても製造できる。
【0041】
ARGET ATRP重合化反応を、基材の種類に関わらずCuBr2のみを使用し、Fe系塩を使用せずに実施した。溶液と接触する厳密に定義された(限定された)量の空気を得るために、いずれかの液体反応物を添加する以前に、反応開始剤−官能化ウェハを反応フラスコ(20mLシュレンク管、小型5ml丸底フラスコ又は20ml平底ガラス瓶)内に配置し、続いてゴム隔壁を用いて反応フラスコを密閉する。
【0042】
固体反応物、即ちCuBr2(5mg、0.022mmol)及び4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジン(44mg、0.11mmol)を、シュレンク管に接続された100mLフラスコに添加する。その後、真空及び窒素充填を3サイクル行うことによって空気を除去した。これは系に存在する酸素と還元剤との比の制御を達成するために行われた。各サイクルにおいて少なくとも2分間に亘って真空引きを行う。更に、19mLの阻害剤非含有モノマー(ドデシルメタクリレート)を、(単にシリンジによって、モノマーの瓶から)密閉フラスコに添加し、混合物が淡紫色を呈しかつリガンドが完全に溶解するまで、110℃で少なくとも5分間激しく撹拌した。密閉反応フラスコへの粘性還元剤(1.4mL、4.34mmolのSn(エチルヘキサノエート)2)の注入を容易にするために、粘性還元剤を別個のガラス容器(非密閉)中で、2.3mLの超乾燥アニソール(99.7%の無水物、Sigma−Aldrich製)で希釈する。
【0043】
続いて還元剤−溶媒溶液を、モノマー、CuBr2及びリガンドの高温混合物に注入し、この瞬間完全な反応混合物が得られる。最長5分間の110℃における激しい撹拌の後、所望の体積の淡黄褐色液体溶液を、反応開始剤−官能化ウェハを含む閉鎖された反応フラスコ内に移す。
【0044】
反応を実施する方法には2つの変形例、即ち:空気を充填した基材含有フラスコを用いる(比較的単純な)例;又は窒素を充填した基材含有フラスコを用いる(真空−窒素サイクルによる大気交換が必要な)例が存在する。反応フラスコがシュレンク管に接続されていない場合、空のバルーンをフラスコに接続し、このバルーンは膨張して、フラスコ内に追加の空気を導入することなく、追加の気体容積を収容できる。
【0045】
液体の移動は、(包装から取り出したばかりの)酸素処理したシリンジを用いて実施することが好ましい。更に、好ましい様式では、シュレンクラインに接続された反応フラスコ内で反応を実施する場合、ウェハを真空−窒素サイクルに供して、更なる反応中に不活性雰囲気を提供する。この場合、過剰な圧力を収容するための空のバルーンは不要である。
【0046】
平底反応ガラスを用いて作業を行う場合、ウェハを上下逆に配置する(即ち官能化領域が反応ガラスの底面を向くようにする)と、より良好なコーティング均一性が得られる。
【0047】
原理的には、グラフト重合は当業者に公知のいずれかの技術に従って実施してもよい。しかしながら、グラフト重合を原子移動ラジカル重合として実施すると、特に良好な結果が得られる。
【0048】
本発明による作用剤は、上述したような有利な特性により、機械工学、好ましくは精密工学、最も好ましくは時計及び/又は腕時計分野で使用できる。
【0049】
同様の理由により、本発明による物品もまた、機械工学、好ましくは精密工学、最も好ましくは時計及び/又は腕時計分野で使用できる。
【0050】
これより、本発明を例示するが限定するものではない実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
開始剤合成に使用されるジメチルクロロシラン(Aldrich−Fine Chemicals製、98%)、10−ウンデセン−1−オル(Aldrich−Fine Chemicals製、98%)、2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロミド(Acros Organics製、98%)、クロロ白金酸ヘキサハイドレート(ABCR(、ドイツ)製、99.9%)は、供給元から受領したままの状態で使用した。
【0052】
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートは、アセトンを溶出剤として使用してアルミナ充填カラムを通過させ、真空でこの溶出剤を除去することにより、阻害剤を非含有とする。
【0053】
臭化銅(II)(Sigma−Aldrich製、99%)を、供給元から受領したままの状態で使用した。臭化銅(I)(Aldrich−Fine Chemicals製、5N)は、氷酢酸で洗浄することによって精製した。従って4gのCuBrを400mlの酢酸中に懸濁し、得られた混合物を一晩に亘って室温で撹拌した。その後、濾紙を用いた濾過によってCuBrを分離し、続いてメタノール及びジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させた。このようにして得られたCuBrを、不活性ガス下で室温において貯蔵した。
【0054】
ジメチルクロロシランアンカー基を有する11−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−ジメチルクロロシラン反応開始剤(BPCS)の合成は、Sanjuan(Lang−muir 2007、23、5769−5778、Sanjuanら)に記載された2段階プロトコルに従って実施された。
【0055】
【化1】
【0056】
50mlの乾燥テトラヒドロフラン(Sigma Aldrich製、98%)中の10.7mlの10−ウンデセン−1−オルに、9ml(60mmol)のトリエチルアミン(Sigma Aldrich製、99.5%)を添加し、続いて20mlの乾燥テトラヒドロフラン中の7mlの2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロミドの溶液を滴下した。この混合物を、不活性ガス下で24時間撹拌し、100mlのヘキサンを用いて希釈し、100mlの(208mlのH2Oに42mlの37%HClを添加することによって調製された)2M HClで2回洗浄し、100mlの超純水で4回洗浄した。有機相を分離し、硫化マグネシウム上で60分間乾燥させ、その後濾紙を用いて濾過し、40℃、130mbarで濃縮した。得られた粗生成物を、シリカカラム(シリカゲル60、直径80mm、高さ約27cm、溶出剤:1.5lのジクロロメタン、重力)を通過させることによって精製した。真空で溶出剤を除去した後、無色の油性産物として10−ウンデセン−1−イル−2−ブロモ−2−メチルプロピオネートが得られ、これを以下に説明する第2段階まで、不活性ガス下において4℃で貯蔵した。
【0057】
第2の反応段階では、前の段階で得られた2.54gの10−ウンデセン−1−イル−2−ブロモ−2−メチルプロピオネートを、10mgのクロロ白金酸ヘキサハイドレート及び7.93mlのジメチルクロロシランに添加した。このようにして得られた混合物を、不活性ガス下において暗所で一晩に亘って撹拌し、追加の溶媒を使用すること無く、シリカプラグを通して濾過した。真空下において24時間乾燥させることにより、過剰な未反応シリカを除去した。
【0058】
得られた11−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−ジメチルクロロシラン反応開始剤(BPCS)を、−20℃において不活性ガスを充填した容器内に貯蔵し、−20℃においてパラフィルムで密閉した。
【0059】
実施例
(i)ケイ素表面への反応開始剤の結合
ケイ素製物品(P/B<100>、Si−Mat Silicon Wafers(ドイツ)製)を、超音波浴中にイソプロパノールを用いて3回洗浄し、UVオゾン洗浄機(UV/Ozone ProCleaner(登録商標)及びProCleaner(登録商標)Plus、米国アイオワ州)で30分間処理した。このようにして得られた物品をすぐに、蒸留したばかりのトルエン中のBPCS開始剤の10mM溶液中に浸漬し、不活性雰囲気下で24時間インキュベートした。その後、異なる5つのトルエン浴に数分浸漬することによって、トルエン中での洗浄を5回行い、この5回の浴のうち最後の浴に浸漬している間に、20秒間の短い音波処理を行って弱結合分子を除去し、最後にイソプロパノールですすいだ。このようにして調製した試料を窒素流で乾燥させ、不活性雰囲気下においてパラフィルム密閉ボックス中に暗所で貯蔵し、7日以内に使用した。
【0060】
静的接触角度(CA)測定によって、前記プロトコルによって得られたBPCS−反応開始剤−官能化ケイ素表面の特徴決定を行った。BPCS開始剤の溶液への含浸前の初期接触角度が3°未満であったUV/オゾン洗浄済み超親水性ケイ素表面上に同化したBPCS層に対して実施したこの測定の結果は、接触角度77°±2°であった。
【0061】
可変角度分光エリプソメータ(VASE)(M−2000F、LOT Oriel GmbH製、ドイツ、ダルムシュタット)を用いて、BPCS層の厚さは1.8±0.1nmと決定された。このエリプソメータによる測定データは、3つの異なる入射角65°、70°、75°で補正され、入射波長は995〜370nmで可変であった。得られた厚さの値は、WVASE32ソフトウェア(LOT Oriel GmbH(ドイツ、ダルムシュタット)製)において定義されたSiジェル/SiO2/コーシーの3層モデルへの適合の結果である。
【0062】
(ii)3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートの原子移動ラジカルグラフト重合
環境条件下において、2.9ml(4.75g)の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、11.3mlのシクロヘキサノン、167μl(138mg)のN,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を、ゴム隔壁で密閉されたフラスコに添加した。得られた溶液を4回の冷凍−吸引−解凍サイクルに供し、その後不活性雰囲気下で、57.4mgの臭化銅(I)及び10.0mgの臭化銅(II)を含有する第2のフラスコへと移した。得られた溶液を、110℃の高温油浴による加熱下で5分間撹拌して、暗褐色の均一な混合物を得た。この混合物4mlを、不活性雰囲気下において無酸素シリンジを用いて、20mlシュレンク管内に並置されたステップ(i)で調製したBPCS改質ケイ素物品試料へと移動させた。反応を、不活性雰囲気下において110℃に3時間維持した。大気への曝露及びトルエンの添加によって反応を停止させ、得られた物品、即ちシラン部分を介してその表面に付着した、上述の反応によって得られたポリマーを有するケイ素基材を、混合物から分離した。
【0063】
(iii)精製
先行するステップ(ii)で得られた物品を精製して、結合していない材料を除去した。精製は、得られた物品を音波処理しながらジクロロメタンに15分間浸漬することによって実施でき、これを合計3回実施した後、物品を乾燥させた。代替としてその他の種類の精製も実施可能である。
【0064】
可変角度分光エリプソメータ(VASE)(M−2000F、LOT Oriel GmbH製、ドイツ、ダルムシュタット)を用いて、表面結合ポリマーコーティングの厚さを5〜30nmに決定した。
【0065】
更に、水、ベンジルアルコール、エチレングリコール、Moebiusオイル9010、Moebius試験オイル3に対する接触角度を決定し、その結果を以下の表に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
複数回の洗浄後であっても、接触角度は概ね変化しないことがわかる。
【0068】
当然のことながら、本発明はここに示した実施例に限定されるものではなく、当業者に明らかな様々な変形及び改変を受けることができる。特に、使用するモノマー及びポリマー並びに/又はアンカー基並びに/又は架橋剤並びに/又は基材に対して反応条件を適合させることができる。
【手続補正書】
【提出日】2015年1月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面を有する基材を備える物品であって:
前記表面の少なくとも一部は、以下の一般式(1):
A−F (1)
を有する1つ又は複数の分子を含む、物品の表面エピラム化のための作用剤でコーティングされており、
ここでAは、シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される部分を含むアンカー基であり、
Fは官能基であり、前記官能基は、バックボーン及び少なくとも2つの側鎖基を有する分岐ポリマーを含み、前記側鎖基のうちの少なくとも1つは、C4−20炭化水素基又は過ハロゲン化C4−20炭化水素基である
こと;並びに
前記作用剤は、エピラム官能基として、部分フルオロ化炭化水素基である少なくとも1つの側鎖基を含むこと
を特徴とする、物品。
【請求項2】
前記側鎖基のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは全ては、C4−18炭化水素基、より好ましくはC6−16炭化水素基、最も好ましくはC8−14炭化水素基であることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記側鎖基は、部分フルオロ化炭化水素基、好ましくはパーフルオロ化炭化水素基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記炭化水素基は、アルキルエステル基、好ましくは直鎖アルキルエステル基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の物品。
【請求項5】
前記炭化水素基は、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、芳香族環に結合した少なくとも1つのアルキル基を有するスチレン誘導体、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記分岐ポリマーは、2〜50、好ましくは3〜30、より好ましくは4〜20、更に好ましくは5〜15、最も好ましくは7〜13の側鎖基を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の物品。
【請求項7】
全ての前記側鎖基は、同一の又は異なるC4-10炭化水素基、好ましくはC3-9炭化水素基、最も好ましくはC4-8炭化水素基であることを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
全ての前記側鎖基は、部分フルオロ化炭化水素基、好ましくはパーフルオロ化炭化水素基であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の物品。
【請求項9】
前記側鎖基のうちの少なくとも1つは、前記一般式(1)を有する前記作用剤の別の分子と架橋できる少なくとも1つの官能基を有し、
前記分岐ポリマーは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基を含む少なくとも1つのブロックを含み、
前記側鎖基のうちの少なくとも2つは、それぞれ前記一般式(1)を有する前記作用剤の別の分子と架橋できる少なくとも1つの官能基を有する
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項10】
前記分岐ポリマーは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基を含む少なくとも1つの更なるブロックを含有し、
前記少なくとも1つの更なるブロックの全ての側鎖基は、前記分岐ポリマーの別の分子と架橋できる官能基を含有せず;
より好ましくは、前記分岐ポリマーは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基をそれぞれ含む2つの前記更なるブロックを含有し、
前記更なるブロックの全ての側鎖基は、前記分岐ポリマーの別の分子と架橋できる官能基を含有せず;
少なくとも5、好ましくは少なくとも10の側鎖基を含み、かつ前記側鎖基のうちの少なくとも2つがそれぞれ、前記一般式(1)を有する前記作用剤の別の分子と架橋できる少なくとも1つの官能基を含む、前記ブロックは、前記2つの更なるブロックの間に配設される
ことを特徴とする、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記作用剤でコーティングされる前記少なくとも1つの表面は、ケイ素、ダイヤモンド様炭素、炭化ケイ素、サファイア、鋼鉄、金属被覆鋼鉄、ニッケルメッキ鋼鉄、ルビー、酸化アルミニウム、酸化鉄、マグネシウム合金、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化チタン、ポリマー、上述の材料のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される材料からなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の物品。
【請求項12】
a)少なくとも1つの表面を有する基材を準備するステップ;
b)シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアンカー基を、前記基材の前記少なくとも1つの表面のうち少なくとも1つに結合させるステップ;
c)少なくとも1種類のモノマーを準備するステップ;及び
d)前記少なくとも1種類のモノマーを、前記少なくとも1つのアンカー基にグラフト重合させて、前記少なくとも1つのアンカー基と共有結合した分岐ポリマーを形成するステップ
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品を製造するための方法。
【請求項13】
c’)少なくとも1種類のモノマーを準備するステップ;
d’)前記少なくとも1種類のモノマーを、シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアンカー基にグラフト重合させて、前記少なくとも1つのアンカー基と共有結合した分岐ポリマーを形成するステップ;
a’)少なくとも1つの表面を有する基材を準備するステップ;及び
b’)前記少なくとも1つのアンカー基を、前記基材の前記表面のうち少なくとも1つに結合させるステップ
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品を製造するための方法。
【請求項14】
d’)少なくとも1種類のモノマーをグラフト重合させて、少なくとも1つの分岐ポリマーを形成するステップ;
a)少なくとも1つの表面を有する基材を準備するステップ;
b)シラン基、ヒドロキシル基、カテコール基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、カルボン酸基、アミン基、チオール基、上述の基のうち2つ以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアンカー基を、前記基材の前記少なくとも1つの表面のうち少なくとも1つに結合させるステップ;及び
e)前記少なくとも1つの分岐ポリマーを前記少なくとも1つのアンカー基に結合させるステップ
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品を製造するための方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品を含む、時計。
【国際調査報告】