(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-518727(P2016-518727A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(54)【発明の名称】耐放射線強化した超小型電子チップのパッケージング技術
(51)【国際特許分類】
H01L 23/00 20060101AFI20160527BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20160527BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20160527BHJP
【FI】
H01L23/00 C
H01L23/30 A
H01L23/30 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-513948(P2016-513948)
(86)(22)【出願日】2014年5月16日
(85)【翻訳文提出日】2016年1月15日
(86)【国際出願番号】US2014000125
(87)【国際公開番号】WO2015023312
(87)【国際公開日】20150219
(31)【優先権主張番号】61/855,488
(32)【優先日】2013年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/279,601
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】509314792
【氏名又は名称】ナショナル・インスティチュート・オブ・エアロスペース・アソシエイツ
(71)【出願人】
【識別番号】510149563
【氏名又は名称】ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ・アズ・リプレゼンテッド・バイ・ジ・アドミニストレーター・オブ・ザ・ナショナル・エアロノーティクス・アンド・スペース・アドミニストレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】カン,ジン・ホー
(72)【発明者】
【氏名】サウティ,ゴッドフレー
(72)【発明者】
【氏名】パク,チョル
(72)【発明者】
【氏名】ギボンズ,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ティボルト,シェイラ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ローサー,シャロン・イー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアント,ロバート・ジー
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA03
4M109DB17
4M109FA07
4M109GA04
(57)【要約】
新規な耐放射線強化したチップパッケージの技術は、航空宇宙または陸上のデバイスの中の超小型電子チップおよびシステムを高エネルギー放射線から保護する。希土類元素と複数層構造を用いる耐放射線強化したチップパッケージの提案される技術は、アルファ粒子およびベータ粒子から中性子および高エネルギー電磁線までの放射線の衝撃に対する保護を与える。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路チップのための強化したチップパッケージを形成するための方法であって、次の各工程:
回路チップを用意すること;
回路チップをアルファ粒子遮蔽材料で被覆すること;
アルファ粒子遮蔽材料を高エネルギー粒子遮蔽複合材料で被覆すること;
高エネルギー粒子遮蔽複合材料を高エネルギー電磁波(EM波)遮蔽複合材料で被覆し、それにより被覆された回路チップを形成すること;および
被覆された回路チップ、アルファ粒子遮蔽材料、高エネルギー粒子遮蔽複合材料および高エネルギーEM波遮蔽複合材料を成形コンパウンドで封入すること;
を含む、前記方法。
【請求項2】
アルファ粒子遮蔽材料で被覆する工程の後に、配線の取り付けのために、アルファ粒子遮蔽材料のコーティングにエッチングによって穴を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高エネルギーEM波遮蔽複合材料で被覆する工程の後に、次の各工程:
配線の取り付けのために、アルファ粒子遮蔽材料のコーティング、高エネルギー粒子遮蔽複合材料および高エネルギーEM波遮蔽複合材料にエッチングによって穴を形成すること;
被覆された回路チップをスライスして複数のダイにすること;
複数のダイの各々をパッドに取り付けること;および
回路チップに少なくとも一つの配線を取り付けること;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アルファ粒子遮蔽材料は純粋なポリイミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アルファ粒子遮蔽材料はシロキサンを含有するポリイミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
高エネルギー粒子遮蔽複合材料はガドリニウムとポリイミドの複合材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
高エネルギー粒子遮蔽複合材料は5重量%Gdのガドリニウムとポリイミドの複合材料である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
高エネルギー電磁波(EM波)遮蔽複合材料は希土類元素である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
高エネルギーEM波遮蔽複合材料で被覆する工程は、導電性の粒子との複合材料の薄膜を積層することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
高エネルギーEM波遮蔽複合材料で被覆する工程は、カーボンナノチューブとの複合材料の薄膜を積層することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
高エネルギーEM波遮蔽複合材料で被覆する工程は、高エネルギーEM波遮蔽複合材料に銀を注入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法に従って調製された、回路チップのための強化したチップパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連する出願についての相互参照
[01]本出願は「耐放射線強化した超小型電子チップのパッケージング技術」と題する米国仮出願61/855488号(2013年5月16日提出)の利益について権利主張する。
【技術分野】
【0002】
連邦政府が後援する研究または開発についての陳述
[02]ここに記載された発明は、NASAの協力協定の下で研究を行う中で合衆国政府の従業員によって成され、公法96-517(米国特許法第202条)の規定に従うものであり、合衆国政府によって(または合衆国政府のために)、政府の目的で、発明についての(または発明に対する)特許権使用料を何ら支払うことなく製造および使用することができる。米国特許法第202条に従って、協力協定の受領者は所有権を保持することを選択した。
【0003】
[03]本発明は強化したチップのパッケージ技術に関し、特に高エネルギー放射線に対して強化したチップのパッケージ技術に関する。
【背景技術】
【0004】
[04]添付の参考文献一覧に挙げた全ての参考文献は参考として本明細書に取り込まれるが、しかしそれらの各々について、参考文献として取り込まれるそのような情報または陳述が本発明が特許を取得しようとしていることと一致しないと考えられる場合には、それらの陳述は明らかに出願人によってなされたものとは考えられない。以下の明細書中で括弧の中にある参考文献番号は、添付の参考文献一覧のものに当てはまる。
【0005】
[05]高エネルギー放射線は宇宙環境の中の至る所に存在し、超小型電子デバイス(
図1)における計算とメモリの機能不全を生じさせる場合がある[参考文献1]。加えて、超小型電子回路チップの集積度と密度が増大するのに伴って、非常に小さくなりつつあるトランジスタは破滅的な破壊機構に対していっそう脆弱になり、それは、重イオン、陽子、アルファ粒子および中性子のような高エネルギー放射線または高エネルギー粒子がデバイス構造物を通過するときに誘発される可能性がある。
【0006】
[06]本発明は、宇宙探査や高い高度の飛行を行う際に高エネルギー放射線に対して航空電子工学デバイスを保護する、耐放射線強化したチップのパッケージング(パッケージ化)技術を提供する。ソフトエラーを修正するための新たな論理設計やゲート電荷を増大させるための物理的設計など、放射線損傷を低減するための幾つかの試みが行われてきた[参考文献2、3]。しかし、これらの方法は超小型電子チップの追加的な容積の増大を必要とし、そのために大きな電力消費を招き、デバイスのサイズと性能を制限する。従って、現行の方式の耐放射線強化したチップとは異なる設計と製造のために必要となる長い期間、増大するコストおよび市場の制限により、航空宇宙において用いられる特殊化したマイクロチップの実現は遅れている。あいにくと、これらの新たな機器構成であっても、放射線損傷に対して信頼できる保護は保証できない。他の方法は、パッケージング材料として放射線遮蔽材料を用いることである[参考文献4、5]。しかし、これらの方法は様々な放射線源に対する保護を行うことができない。加えて、複雑な加工工程のために、さらなる設備投資を行うことなくしては、半導体チップの製造におけるそれらの技術の使用は妨げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[07]本発明の主な目的は、希土類元素とポリマーの複合材料からなる複数層の構造物で構成される効率的な遮蔽用パッケージであって、超小型電子回路チップのあらゆる構造物をアルファ粒子や中性子から高エネルギー電磁線までの様々な放射線源から保護するのに適用可能なパッケージを提供することである。
【0008】
[08]本発明の目的は、現行の半導体チップのパッケージング加工に適用することができる、耐放射線強化したチップのパッケージング技術を提供することである。
【0009】
[09]本発明の目的は、耐放射線強化したパッケージング材料を用いて製作されるセンサーや作動器のデバイスを提供することである。
【0010】
[10]本発明の目的は、耐放射線強化したパッケージング材料を用いて製作されるマイクロプロセッサーやメモリチップを提供することである。
【0011】
[11]本発明の目的は、耐放射線強化したパッケージング材料を用いて製作される電子部品や光電子部品を提供することである。
【0012】
[12]本発明の目的は、耐放射線強化パッケージング技術によって保護される電子システムや電気システムを提供することである。
【0013】
[13]最後に、本発明の目的は、上記の各目標を単純で費用対効果が高いやり方で達成することである。
【0014】
[14]本発明の上記の目的とその他の目的、細目および利点は、添付する図面と共に読むことによって、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[15]本発明は回路チップのための強化したチップパッケージを形成するための方法を提供することによって、これらの要求に対処する。最初に、回路チップがアルファ粒子遮蔽材料で被覆され、次いで、アルファ粒子遮蔽材料は高エネルギー粒子遮蔽複合材料で被覆され、次いで、高エネルギー粒子遮蔽複合材料は高エネルギー電磁波(EM波)遮蔽複合材料で被覆され、それにより被覆された回路チップが形成され、そして最後に、その被覆された回路チップ、アルファ粒子遮蔽材料、高エネルギー粒子遮蔽複合材料および高エネルギーEM波遮蔽複合材料は、成形コンパウンドで封入される。必要であれば、配線の取り付けのために、アルファ粒子遮蔽材料のコーティングにエッチングによって穴が形成される。さらなる代替の態様は、高エネルギーEM波遮蔽複合材料で被覆する工程の後に、配線の取り付けのために、アルファ粒子遮蔽材料のコーティング、高エネルギー粒子遮蔽複合材料および高エネルギーEM波遮蔽複合材料にエッチングによって穴を形成することである。被覆された回路チップをスライスして複数のダイにすることができ、それらのダイの各々がパッドに取り付けられ、そして被覆された回路チップに配線が取り付けられる。アルファ粒子遮蔽材料は好ましくは純粋なポリイミドであり、より好ましくはシロキサンを含有するポリイミドである。高エネルギー粒子遮蔽複合材料は好ましくはガドリニウムとポリイミドの複合材料であり、より好ましくは、5重量%Gdのガドリニウムとポリイミドの複合材料である。高エネルギー電磁波(EM波)遮蔽複合材料は好ましくは希土類元素であり、より好ましくは、導電性粒子との複合材料またはカーボンナノチューブとの複合材料の層状膜をさらに含んでいてもよい。あるいは、高エネルギーEM波遮蔽複合材料には銀が注入されていてもよい。請求項1の方法に従って調製される回路チップのための強化したチップパッケージが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
[16]本発明の主題とその利点についてのより完全な説明は以下の詳細な説明を参照して行われ、このとき添付図面が参照される。
【
図1】[17]
図1は超小型電子チップの放射線損傷を示す。
【
図2a】[18]
図2aは耐放射線強化した超小型電子チップのパッケージングの概略図である。
【
図2b】[19]
図2bは耐放射線強化した超小型電子チップのパッケージングの概略図であり、これにおいては、配線がL1だけを通るようにするために、層L2と層L3がエッチング除去されている。
【
図3a】[20]
図3aは耐放射線強化したチップパッケージの加工工程の図解である。
【
図3b】[21]
図3bはウエーハの段階の遮蔽のための加工工程を示す。
【
図4】[22]
図4はガドリニウムとポリイミドの複合材料のX線回折パターンを示す。
【
図5】[23]
図5はガドリニウムとポリイミドの複合材料の放射線遮蔽の効果を示す。
【0017】
構成要素のリスト
[24] 10 集積回路のダイ
[25] 12 アルファ粒子の遮蔽(L1)
[26] 14 高エネルギー粒子(陽子、中性子など)の遮蔽(L2)
[27] 16 高エネルギーEMの遮蔽(L3)
[28] 18 絶縁用成形コンパウンド(L4)
[29] 20 配線
[30] 22 はんだボール
[31] 24 耐放射線強化技術を用いたボールグリッドアレイのチップスケールパッケージ
[32] 26 クロストークを最小限にするために修正した耐放射線強化技術を用いたボールグリッドアレイのチップスケールパッケージ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[33]以下の詳細な説明は本発明を実施するための最良のものであると現在考えられている態様である。この説明は限定的な意味で解釈されるべきではなく、本発明の態様の一般的な原理を単に例示する目的でなされるものである。本発明の態様と様々な特徴およびその有利な細目を、添付図面において記載および/または例示するとともに以下の説明において示される非限定的な態様と実施例を参照して、さらに十分に説明する。図面で例示された態様は必ずしも一定の縮尺では描かれておらず、またここで明示されていなくても、一つの態様の特徴は他の態様においても当業者が認識するように用いることができる、ということを認識すべきである。周知の構成要素と技術についての説明は、本発明を不明確にすることを避けるために省かれるかもしれない。ここで用いられる各実施例は単に、本発明を実施するやり方についての理解を促進し、また当業者が本発明を実施することをさらに可能にすることを意図したものである。従って、ここで示される実施例と態様は本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本発明の範囲は添付する特許請求の範囲によって明示される。さらに、幾つかの図面を通して同様の引用数字は同じ部分を示していることに留意されたい。
【0019】
[34]
図2aに示す本発明の技術は複数層構造の希土類元素/ポリマー複合材料を用いていて、これはアルファ粒子や中性子から高エネルギー電磁線までの様々な放射線源からの保護を与えるためにあらゆる構造の超小型電子回路チップに適用できる。
図2aにおいてはボールグリッドアレイのチップスケールパッケージ24が用いられているが、しかし本技術は限定的なものではなく、クワッドフラットパッケージ、スモールアウトラインパッケージ、薄型スモールアウトラインパッケージ、フリップチップパッケージ、デュアルインラインパッケージ、マルチチップモジュールパッケージ、フラットパックパッケージあるいはジグザグインラインパッケージなどの他のパッケージング技術にも適用することができる。
【0020】
[35]好ましい方法は、回路チップを含めたデバイスを高性能のパッケージ絶縁体を用いて遮蔽することである。チップの表面上に配置したポリイミドのコーティングは約9MeVまでのエネルギーを有するアルファ粒子を止め、ガドリニウムやサマリウムのような希土類元素は高い高度の放射線、銀河宇宙線(GCR)および太陽粒子事象(SPE)に対する保護を与える。希土類元素であるGd
157の中性子吸収断面積は2.59×10
5バーンであり、中性子吸収材として広くみなされているB
10の中性子吸収断面積(3.84×10
3バーン)よりも二桁大きい。特に、Gd
157は、中性子によって照射された回路における放射線によるソフトエラーの原因のうちの一つである、アルファ粒子の二次核分裂副生物を生じさせない。
【0021】
[36]
図3aは耐放射線強化したチップパッケージングを製造するための工程または技術を示す。最初に、ウエーハの段階の遮蔽であるか、それともダイの段階の遮蔽であるかについて、遮蔽パッケージング方法を決定する。第二に、
図2aに示すようにアルファ粒子に対して保護するために、裸のウエーハまたはダイ10(先行技術)の上にアルファ粒子遮蔽層(L1)12を被覆する。GdまたはCNTを含むもの以外に純粋なポリイミドなどの任意のアルファ粒子遮蔽材料が満足のいくものであるが、より良好な接着性を得るために、シロキサンを含むポリイミドが好ましい。第三に、L112の上に高エネルギー粒子(陽子、中性子など)の遮蔽用複合材料(L2)14を被覆する。第四に、L214の上に高エネルギー電磁波遮蔽複合材料(L3)16を被覆する。第五に、必要であれば、配線20のための穴を設けるために、被覆した各遮蔽層をエッチングする。
図2bに示すように、クロストークを最小限にするために修正した耐放射線強化技術を用いたボールグリッドアレイのチップスケールパッケージ26の上で、配線20どうしの間で生じるクロストークの問題を最小限にするために、被覆したL214またはL3 16をエッチングしてもよく、あるいは部分的に被覆してもよい。必要に応じてウエーハはスライスしてダイにされ、そしてデータ移動のための配線20のために、リードフレームまたはパッドの上に取り付けられる。最後に、上述した複数層の遮蔽で被覆されたダイは、エポキシの成形コンパウンドのような適当な成形コンパウンド(L4)18を用いて封入される。L418として慣用の成形コンパウンドを用いることができるが、しかし、より効率的な遮蔽のためには、L418として耐放射線強化した樹脂を用いてもよい。
図3bはウエーハの段階の遮蔽のための加工工程を示す。
【0022】
[37]ガドリニウムとポリイミドの複合材料は、チップを高エネルギー粒子から遮蔽する層(L2)14のための好ましい候補になる材料である。ガドリニウム/ポリイミドは好ましくは現場重合によって調製される。
図4はポリイミドのマトリックスの中に立方晶構造の酸化ガドリニウム(Gd
2O
3)があることを示している。
【0023】
[38]
図5は純粋なポリエチレン、純粋なポリイミド、ホウ化ポリイミド(30重量%hBN)および5重量%Gdを含むポリイミド複合材料についての中性子断面積を示す。断面積はLaRC1 Ciアメリシウム-ベリリウム中性子源(ポリエチレンのブロックによって減速されたもの)を用いて得られた。Gdとポリイミドの複合材料は最も大きな中性子断面積を有し、このことがこの材料を好ましい遮蔽材料にしている。このGd複合材料はポリエチレンと比較して3240%高い遮蔽効果を示し、これはGdの約49700バーンの大きな中性子吸収断面積によるものである。さらに、有効な遮蔽は低いGd添加量(5重量%)において得られ、それによりこの材料は、ポリイミドのマトリックスを使用することによって生じる可撓性、加工性およびその他の望ましい性質を確実に保持できる。hBNを使用して同等の遮蔽を得るためには30重量%の充填材量が必要となる。
【0024】
[39]希土類元素の磁気特性は、チップの中への電磁波のさらなる伝播を効果的に遮断する。加えて、導電性の粒子またはカーボンナノチューブとの複合材料の追加の薄膜を積層することによって、導電性の表皮効果によりEMI遮蔽効果を高めることができる。純粋なポリイミドと比較して、1%のカーボンナノチューブとポリイミドの複合材料の薄膜は、10GHzにおける遮蔽効果(3dB)において約400%の増大を示した。銀を追加して注入すると、遮蔽効果は純粋なポリイミドと比較して約480%向上した。
【0025】
[40]放射線実験設備においてメモリチップの耐放射線強化試験を行った。熱中性子源(中性子を減速するためにポリエチレンのブロックで囲んだA1Ci Am/Be源)に隣接してメモリテスタを取り付け、このとき適当な遮蔽体を用いた。耐放射線強化した複合材料のコーティングを伴うか、またはこれを伴わない不揮発性フラッシュメモリチップ(NANDフラッシュ)をメモリテスタのホルダーに取り付け、そして中性子線に曝露する間にリアルタイムで特徴づけを行った。耐放射線強化した複合材料のコーティングが無い場合、5日間の曝露を行った際の故障率は1.14×10
−7/ビット/時であった。ガドリニウムとポリイミドの複合材料の薄膜による遮蔽(約37μmの厚さ)を用いると、故障率は8.49×10
−11/ビット/時となり、故障において100000%の低減を示した。
【0026】
[41]新規な複数層の構造は、それぞれの層が中性子、陽子、アルファ粒子および高エネルギー電磁線のようなそれぞれの放射線源に対して保護することができるように構成される。
【0027】
[42]本発明は、宇宙特務飛行を含めたあらゆる飛行形態に適用できる知識、データおよび設計手段を提示する。さらに、耐放射線強化したパッケージング材料の使用は、輸送機関の性能の数量化のためにデータが得られるようにセンサーおよび/または器械を苛酷な環境の中に置くことを可能にする。この技術は希土類ナノ構造化ポリマー複合材料のチップスケールパッケージングを用いる放射線遮蔽を含むので、これはイオン化放射線の影響に対する危険管理にも寄与し、またこの開発技術の成果は、原子力利用システムや高質量マーズ入力システム(High Mass Mars Entry System)のような宇宙探査用車両システムに役立つ。さらに、この技術は原子力事故や核戦争による放射線シャワーに対して電子デバイスを保護する。
【0028】
[43]明らかに、本発明の基本的な精神から逸脱することなく多くの修正を成しうる。従って、添付した特許請求の範囲の中で、本明細書に特に記載したこと以外について本発明を実施できることが、当業者には認識されよう。本明細書に記載して特許請求の範囲で明示している本発明の精神と範囲から逸脱することのない多くの改良、修正および付加は、当業者には明らかであろう。
【0029】
参考文献一覧
[参考文献1]M. O'Bryan et al., IEEE NSRECIO Data workshop, July 2010
[参考文献2]S. Krishnamohan et al., IEEE International SOC Conference 2004, pp 227-230
[参考文献3]Q. Zhou et al., IEEE Trans. Comp. Des. Integ. Circ. Sys., 25, 155 (2006)
[参考文献4]M. Sono, US patent 4,661,837
[参考文献5]D Czajkowski et al., US patent 5,880,403
【符号の説明】
【0030】
10 集積回路のダイ、 12 アルファ粒子の遮蔽(L1)、 14 高エネルギー粒子(陽子、中性子など)の遮蔽(L2)、 16 高エネルギー電磁波の遮蔽(L3)、 18 絶縁用成形コンパウンド(L4)、 20 配線、 22 はんだボール、 24 耐放射線強化技術を用いたボールグリッドアレイのチップスケールパッケージ、 26 クロストークを最小限にするために修正した耐放射線強化技術を用いたボールグリッドアレイのチップスケールパッケージ。
【国際調査報告】