特表2017-535633(P2017-535633A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションの特許一覧
<>
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000084
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000085
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000086
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000087
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000088
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000089
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000090
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000091
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000092
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000093
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000094
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000095
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000096
  • 特表2017535633-医用水溶性ポリカルボナート 図000097
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-535633(P2017-535633A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】医用水溶性ポリカルボナート
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20171102BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20171102BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20171102BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20171102BHJP
【FI】
   C08G64/02
   C08L69/00
   A61K47/34
   A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2017-518459(P2017-518459)
(86)(22)【出願日】2015年9月1日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】IB2015056639
(87)【国際公開番号】WO2016055880
(87)【国際公開日】20160414
(31)【優先権主張番号】14/506,733
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【復代理人】
【識別番号】100110607
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】イングラー、アマンダ、キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】コディ、ダニエル、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘドリック、ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、イ、イエン
(72)【発明者】
【氏名】カ、シユィ
【テーマコード(参考)】
4C076
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076EE24
4C076EE49
4C076FF15
4J002AB052
4J002AD002
4J002AE052
4J002AJ002
4J002CG021
4J002EN126
4J002EP016
4J002EU006
4J002EV066
4J002FD182
4J002FD186
4J002FD202
4J002FD206
4J002GB01
4J002GB02
4J002GB03
4J002GB04
4J002HA04
4J002HA07
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB02
4J029AB07
4J029AC01
4J029AC02
4J029AC03
4J029AD01
4J029AD10
4J029AE06
4J029AE18
4J029BH01
4J029DA01
4J029DA02
4J029FA03
4J029FA17
4J029FC02
4J029FC03
4J029FC04
4J029FC05
4J029FC16
4J029FC38
4J029HC06
4J029JC022
4J029JC072
4J029JC122
4J029KE09
4J029KH01
(57)【要約】
【課題】医学的処置用治療薬のデリバリに適した親水性ポリマーを提供すること。
【解決手段】活性エステル側鎖を有する環状カルボナートモノマーの有機酸触媒開環重合(ROP)によって水溶性生分解性ポリマーを調製した。活性エステル側鎖を含む開始ポリマーをアミノアルコールで処理して、活性エステル基をモノヒドロキシアルキル基若しくはジヒドロキシアルキル基又はその両方を有するN置換アミド基に変換し、それによって水溶性ポリマーを形成した。水溶性ポリマーは無毒であり、緩衝血清溶液中でステルス特性を示す。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)のカルボナート繰り返し単位を含むポリマーであって、
【化1】
式中、
R’は、2〜4個の炭素及び1〜2個のヒドロキシ基を含む一価の基であり、
R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される一価の基であり、
前記ポリマーが非荷電であり、
前記ポリマーが水に可溶性である、
ポリマー。
【請求項2】
R’が、
【化2】
からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーの数平均分子量(Mn)は、約1500以上である、請求項1又は請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーのマウス静脈内LD50値は、500mg/kgを超える、請求項1から3のいずれかに記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーは、ASTM D6400に準拠した生分解性である、請求項1から4のいずれかに記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリマーは、構造I’−O−*を有するポリマー末端基に末端繰り返し単位によって結合した1本のポリマー分枝を含み、前記ポリマー分枝は、前記カルボナート繰り返し単位のホモポリマーであり、I’は、1〜20個の炭素を含む、請求項1から5のいずれかに記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリマーは、式(1a)の構造を有し、
【化3】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化4】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
前記ポリマーは、構造I’−O−*を有するポリマー末端基に末端繰り返し単位によって結合した1本のポリマー分枝を含み、前記ポリマー分枝は、前記カルボナート繰り返し単位と非荷電疎水性の第2の繰り返し単位とのランダム・コポリマーであり、I’は、1〜20個の炭素を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
前記ポリマーは、式(2)の構造を有するランダム・コポリマーであり、
【化5】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
各T’は、1〜6個の炭素を含む独立した一価の基であり、
各T”は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R’は、
【化6】
からなる群から選択される、
請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーは、構造I’−O−*を有するポリマー末端基に末端繰り返し単位によって結合した1本のポリマー分枝を含み、前記ポリマー分枝は、第2のブロックに結合した第1のブロックを含むジブロック・コポリマーであり、前記第1のブロックは、前記カルボナート繰り返し単位を含み、前記第2のブロックは、非荷電疎水性の第2の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項11】
前記ポリマーは、式(3)の構造を有するジブロック・コポリマーであり、
【化7】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T’は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化8】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
前記ポリマーは、2本のポリマー分枝を含み、前記2本のポリマー分枝は、それぞれの末端繰り返し単位によって、構造*−O−I”−O−*を有する二価の連結基に結合し、I”は、2〜20個の炭素を含み、前記2本のポリマー分枝の各々は、前記カルボナート繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項13】
前記ポリマーは、式(4)の構造を有し、
【化9】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I”は、2〜20個の炭素を含む二価の連結基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化10】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項12に記載のポリマー。
【請求項14】
R”は、メチルである、請求項1から13のいずれかに記載のポリマー。
【請求項15】
前記カルボナート繰り返し単位は、立体特異的である、請求項1から14のいずれかに記載のポリマー。
【請求項16】
請求項1に記載のポリマーと、
遺伝子、タンパク質、ペプチド、薬物、及びそれらの組合せからなる群から選択される医学的処置用治療薬と
を含む組成物であって、
前記ポリマーと前記治療薬とが、非共有結合性相互作用によって結合し、
前記組成物は、平均円直径約10nm〜約500nmの粒子として水中に分散可能であり、
前記組成物の水性混合物は、静脈内注射に適している、
組成物。
【請求項17】
前記ポリマーは、式(4)の構造を有し、
【化11】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I”は、2〜20個の炭素を含む二価の連結基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化12】
からなる群から選択される独立した一価の基であり、
前記ポリマーは、水に可溶性である、
請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
mの平均値が約20〜約50である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリマーの数平均分子量(Mn)が約5000〜約10000である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリマーは、式(3)の構造を有するジブロック・コポリマーであり、
【化13】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T’は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化14】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
水と、式(1)のカルボナートの第1の繰り返し単位を含むポリマーとを含む第1の混合物を形成すること
【化15】
[上式で、i)R’は、2〜4個の炭素及び1〜2個のヒドロキシ基を含む一価の基であり、ii)R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択され、iii)前記ポリマーは、前記水に可溶である]、
i)有機溶媒、水、及びそれらの組合せからなる群から選択される溶媒と、ii)遺伝子、タンパク質、ペプチド、薬物、及びそれらの組合せからなる群から選択される医学的処置用治療薬とを含む、第2の混合物を形成すること、
前記第1の混合物と前記第2の混合物とを組み合わせ、それによって第3の混合物を形成すること、及び
前記第3の混合物から有機溶媒を除去し、それによって、非共有結合性相互作用によって結合した前記ポリマーと前記治療薬とを含む粒子を形成すること
を含み、
前記粒子は、水中に分散可能であり、前記粒子の水性混合物は、静脈内注射に適している、
方法。
【請求項22】
R’は、
【化16】
である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマーは、式(4)の構造を有し、
【化17】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I”は、2〜20個の炭素を含む二価の連結基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化18】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマーは、式(3)の構造を有するジブロック・ポリマーであり、
【化19】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T”は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T’は、
【化20】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用水溶性ポリカルボナートに関し、より具体的には、薬物などの治療薬の徐放デリバリ用水溶性ポリカルボナートに関する。
【背景技術】
【0002】
【化1】
【0003】
の構造を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)は、治療デリバリに使用される合成水溶性ポリマーの標準である。PEGは、エチレンオキシドの開環重合によって合成される。一般に、PEGは、広範囲の分子量及び狭い多分散指数(PDI:polydispersity index)を有し得る。PEGは、種々の有機溶媒及び水に可溶である。さらに、反応性官能基をPEG巨大分子中に容易に導入することができ、それゆえ生物学的に重要な材料の官能基化のための優れた候補となっている。
【0004】
本明細書では、材料が生理的環境(例えば、血流)の生物学的材料(例えば、オプソニン)と相互作用する傾向があまり見られない場合、その材料は「ステルス性」を有する。PEGが血流中に存在する際には、水素結合した水分子の保護性の覆いがPEG鎖を包囲する。水和PEG鎖は、優れたステルス性を示すことができる。例えば、PEGで安定化された薬物組成物は、酵素分解が少なく、細網内皮系による取り込みが少なく、腎臓濾過が少なく、その結果、血液循環半減期が長く、生物学的利用能が高いという特徴を有する。治療上有用な材料(例えば、薬物)にPEGを付加すると、材料の毒性をかなり減少させることもできる。
【0005】
本明細書では、「PEG化」という用語は、PEGポリマー鎖を含むことを意味する。PEGは、共有結合的に、若しくは非共有結合的に、又はその両方で結合することができる。PEG化製品は、約20年市販されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PEGの欠点は、その非生分解性である。腎クリアランスに必要な分子量を決定することは困難である。一般に、数平均分子量が約20kDa未満のPEGは、尿中に排出することができる。数平均分子量(Mn)が40〜60kDaを超えるPEGは、肝臓に蓄積しやすい。より高分子量のPEGは、依然として不明である機序によって、別の身体部位にも蓄積し得る。PEGの蓄積は、短期使用の時にはさほど懸念されないが、慢性疾患治療などの繰り返し投与では、高分子量PEGの使用は懸念される。数平均分子量(Mn)約40kDaのPEGが、生物活性分子のPEG化に一般に使用される。
【0007】
PEGが非生分解性であることに加えて、PEG合成中に形成される副生物(例えば、1,4−ジオキサン)及び残留未反応エチレンオキシドモノマーは有毒である。これらの副生物は、公知の発癌物質であり、医薬品等級PEGでは規制されている。
【0008】
免疫応答もPEGに関連している。PEGはステルス・ポリマーではあるが、一部の処方では、PEGは、静脈内、経口若しくは経皮又はその組合せで投与したときに免疫応答を誘導する。
【0009】
PEGに付随する欠点は、治療薬(例えば、疎水性薬物)の治療デリバリのための代替ポリマーを開発する動機となっている。かなりの研究がこの領域で成されているが、同じレベルの合成制御で調製することができる、同じステルス性を示す合成代替品はほとんどない。望ましいPEG代用品は、無毒の副生物へと生物分解するであろう。スキーム1は、現行の幾つかのポリ(アミノ酸)系生分解性PEG代用品の例を示し、各添字mは、独立に、平均値が1を超える数である。示した3種のポリマーのうち、ポリ(L−グルタミン酸)のみが、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)によって認可されている。
【0010】
【化2】
【0011】
他の非生分解性ポリマーもPEG代替品として興味深い(スキーム2、各添字mは、独立に、平均値が1を超える数である)。これらのポリマーの多くが、低分子量ポリマーのみを必要とする用途のPEG代替品として有望である。高分子量では、生物濃縮が問題になり得る。ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)及びポリ(グリセロール)は、臨床試験に至っている。
【0012】
【化3】
【0013】
少数の生分解性水溶性ポリカルボナートがPEGの代替品として調製されている。それらをスキーム3に示す。各例において、添字mは、独立に、平均値が1を超える数である。
【0014】
【化4】
【0015】
糖含有ポリマーは、身体の受容体が糖に結合し得ることから、制限がある。例えば、ガラクトースは、肝細胞を標的にする使用ができる。短いPEG側基を含むポリカルボナートは、PEGの代替品として使用することができる。しかし、それらは、環鎖平衡のために合成が困難である。側鎖が嵩高くなるほど、高重合度を得ることが困難になる。残りのポリカルボナートは、負に帯電し、それゆえ有機溶媒への溶解性が制限される。
【0016】
したがって、医学的処置用治療薬のデリバリに適した親水性ポリマーが引き続き求められている。その親水性ポリマーは、生分解性であり、無毒であり、有機溶媒及び水に可溶性であるべきである。親水性ポリマーは、望ましくない免疫応答を誘導するべきではない。親水性ポリマーは、PDIの狭い分子量の範囲で利用できるべきであり、無毒の副生物に分解すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、式(1)のカルボナート繰り返し単位を含むポリマーを開示する。
【0018】
【化5】
【0019】
式中、
R’は、2〜4個の炭素及び1〜2個のヒドロキシ基を含む一価の基であり、
R”は、水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される一価の基であり、
ポリマーは非荷電であり、
ポリマーは水に可溶性である。
【0020】
上記ポリマーと、
遺伝子、タンパク質、ペプチド、薬物、及びそれらの組合せからなる群から選択される医学的処置用治療薬と
を含む組成物であって、
ポリマーと治療薬が非共有結合性相互作用によって結合し、
組成物が平均円直径約10nm〜約500nmの粒子として水中に分散可能であり、
組成物の水性混合物が静脈内注射に適している、
組成物も開示する。
【0021】
水と式(1)のカルボナートの第1の繰り返し単位を含むポリマーとを含む第1の混合物を形成すること
【0022】
【化6】
【0023】
[上式で、i)R’は2〜4個の炭素及び1〜2個のヒドロキシ基を含む一価の基であり、ii)R”は水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択され、iii)ポリマーは水に可溶である]、
i)有機溶媒、水及びそれらの組合せからなる群から選択される溶媒と、ii)遺伝子、タンパク質、ペプチド、薬物及びそれらの組合せからなる群から選択される医学的処置用治療薬とを含む、第2の混合物を形成すること、
第1の混合物と第2の混合物とを組み合わせ、それによって第3の混合物を形成すること、及び
有機溶媒を第3の混合物から除去し、それによって、非共有結合性相互作用によって結合したポリマーと治療薬とを含む粒子を形成すること
を含み、
粒子が水中に分散可能であり、粒子の水性混合物が静脈内注射に適している、
方法も開示する。
【0024】
本発明の上記及び他の特徴及び利点が、以下の詳細な説明、図面、及び添付の特許請求の範囲から当業者に認識され、理解されよう。
【0025】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して、単なる例として記述する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1で形成されたP−1のH NMRスペクトルである。
図2】実施例7で形成されたA−3のH NMRスペクトルである。
図3】0.5%LiBrを含むジメチルホルムアミド(DMF)中における表8のP−1、A−1からA−3、及びA−5の一連のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:gel permeation chromatography)の線である。
図4】A−1共存下で48時間インキュベーション後のHEK293細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。
図5】A−2共存下で48時間インキュベーション後のHEK293細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。
図6】A−3共存下で48時間インキュベーション後のHEK293細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。
図7】A−5共存下で48時間インキュベーション後のHEK293細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。
図8】A−4共存下で48時間インキュベーション後のHEK293細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。
図9】A−6共存下で48時間インキュベーション後のHEK293細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。
図10】PEG 5kDa共存下で48時間インキュベーション後のHEK293細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。
図11】PEG 10kDa共存下で48時間インキュベーション後のHEK293細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。
図12】表10のポリマーA−7、A−8、A−9、A−10及びA−11をそれぞれ含む10%ウシ胎仔血清(FBS:fetal bovine serum)の時間の関数としての粒径挙動を示すグラフである。PEG 2kDa及び10%血清を対照として使用した。
図13】表9のジブロック・ポリマーD−3(3−アミノプロパノールから誘導される、m=50、n=20)、D−4(3−アミノプロパノールから誘導される、m=50、n=10)、D−5(1−アミノ−2−プロパノールから誘導される、m=50、n=20)、D−7(セリノールから誘導される、m=50、n=20)及びD−8(セリノールから誘導される、m=50、n=10)をそれぞれ含む10%FBSの時間の関数としての(動的光散乱によって測定された)粒径挙動を示すグラフである。
図14】表9のジブロック・ポリマーD−1(2−アミノエタノールから誘導される、m=50、n=20)、D−2(2−アミノエタノールから誘導される、m=50、n=10)、D−6(1−アミノ−2−プロパノールから誘導される、m=50、n=20)、D−9((±)−3−アミノ−1,2−プロパンジオールから誘導される、m=50、n=20)及びD−10((±)−3−アミノ−1,2−プロパンジオールから誘導される、m=50、n=10)をそれぞれ含む10%FBSの時間の関数としての(動的光散乱によって測定された)粒径挙動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
開示する親水性ポリマーは、式(1)のカルボナート繰り返し単位を含む。
【0028】
【化7】
【0029】
式中、
R’は、2〜4個の炭素及び1〜2個のヒドロキシ基を含む一価の基であり、
R”は、水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される一価の基である。
【0030】
本明細書では、星印のついた結合は、結合点を示し、メチル基ではない。
【0031】
親水性ポリマーは、本質的に非荷電繰り返し単位からなり得る。親水性ポリマーは、好ましくは、血清溶液の凝集を48時間にわたってほとんど又は全く誘発しない。親水性ポリマーを含むリン酸緩衝血清混合物は、最初の血清混合物に比べて、48時間後に、約10nm〜約500nm、より具体的には約10nm〜約150nm、更に具体的には約10nm〜約60nmの範囲の(動的光散乱によって決定された平均円直径に基づく)平均粒径を有することができる。
【0032】
親水性ポリマーは、1又は2本のポリマー分枝を含むことができる。各ポリマー分枝は、ポリカルボナート骨格(すなわち、カルボナート繰り返し単位で構成される)又はポリエステルカルボナート骨格(すなわち、エステル繰り返し単位とカルボナート繰り返し単位で構成される)を含むことができる。各ポリマー分枝は、式(1)のカルボナート繰り返し単位を含むホモポリマー、ランダム・コポリマー又はブロック・コポリマーとすることができる。
【0033】
より具体的な親水性ホモポリマーは、式(1a)の構造を有する。
【0034】
【化8】
【0035】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【0036】
【化9】
【0037】
からなる群から選択される独立した一価の基である。
【0038】
式(1a)の親水性ポリマーは、ポリマー鎖末端基I’−O−*から発する1本のポリマー分枝を含み、ポリマー分枝は、上記したカルボナート繰り返し単位のホモポリマーである。一実施形態においては、断片I’−O−*は、親水性ポリマーの調製に使用される開環重合(ROP:ring opening polymerization)用モノオール開始剤の残基である。
【0039】
より具体的な親水性ランダム・コポリマーは、式(2)の構造を有する。
【0040】
【化10】
【0041】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
各T’は、1〜6個の炭素を含む独立した一価の基であり、
各T”は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される独立した一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R’は、
【0042】
【化11】
【0043】
からなる群から選択される。
【0044】
角括弧内の繰り返し単位の縦方向の積み重ねは、示した2種のカルボナート繰り返し単位の不規則分布を示す。第1のカルボナート繰り返し単位は、親水性アミド側鎖*−(C=O)−NH−R’を有する式(1)のものである。第2のカルボナート繰り返し単位は、非荷電疎水性エステル側鎖*−(C=O)−O−T’を有する。この場合、親水性ポリマーは、ポリマー鎖末端基I’−O−*から発する1本のポリマー分枝を含み、ポリマー分枝は、示した2種の繰り返し単位のランダム・コポリマーである。式(3)の一方の繰り返し単位は、末端基I’−O−*と結合することができ、一方の繰り返し単位は、ポリマー鎖の反対側端部の末端繰り返し単位とすることができる。この場合、ポリマー鎖は、ROPを開始することが可能な末端ヒドロキシ基を含む。添字m及びnは、コポリマー鎖中のそれぞれの繰り返し単位の平均数である。
【0045】
より具体的な親水性ジブロック・ポリマーは、式(3)の構造を有する。
【0046】
【化12】
【0047】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T”は、水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T’は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【0048】
【化13】
【0049】
からなる群から選択される独立した一価の基である。
【0050】
式(3)の親水性ポリマーは、ポリマー鎖末端基I’−O−*から発する1本のポリマー分枝を含み、ポリマー分枝は、示した2種のカルボナート繰り返し単位のジブロック・コポリマーである。第1のカルボナート繰り返し単位は、親水性アミド側鎖*−(C=O)−NH−R’を有する式(1)のものである。第2のカルボナート繰り返し単位は、非荷電疎水性エステル側鎖*−(C=O)−O−T’を有する。第1のブロックは、第1のカルボナート繰り返し単位のホモポリマーを含み、第2のブロックは、第2のカルボナート繰り返し単位のホモポリマーを含む。一実施形態においては、断片I’−O−*は、親水性ポリマーの調製に使用される開環重合(ROP)用モノオール開始剤の残基である。
【0051】
より具体的な他の親水性ポリマーは、2本のポリマー分枝を有し、ポリマー分枝の各々は、式(4)の構造にあるように、二価の連結基*−O−I”−O−*と結合する。
【0052】
【化14】
【0053】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I”は、2〜20個の炭素を含む二価の連結基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【0054】
【化15】
【0055】
からなる群から選択される独立した一価の基である。
【0056】
式(4)の親水性ポリマーは、中心断片*−O−I”−O−*から発する2本のポリマー分枝を含み、ポリマー分枝の各々は、式(1)のカルボナート繰り返し単位のホモポリマーである。一実施形態においては、断片*−O−I”−O−*は、親水性ポリマーの調製に使用される開環重合(ROP)用ジオール開始剤の残基である。別の一実施形態においては、mの平均値は約10〜約100である。別の一実施形態においては、側鎖*−C=O(NH−R’)は、2−アミノ−1,3−プロパンジオール(セリノール)のアミドであり、R’は、
【0057】
【化16】
【0058】
である。
【0059】
好ましくは、上記構造においては、mは平均値が約10〜約100であり、nは、存在する際には、平均値が約0.20m〜約0.4mである。
【0060】
ある場合には、親水性ポリマーは、水中で500mg/L未満の臨界ミセル濃度(CMC:critical micelle concentration)を示さない。
【0061】
親水性ポリマーは、生分解性若しくは生体適合性又はその両方とすることができる。「生分解性」という用語は、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)によって、材料の化学構造の著しい変化をもたらす生物活性、特に酵素作用に起因する分解として定義される。本明細書では、材料は、ASTM D6400に従って180日以内に60%が生分解される場合に「生分解性」である。本明細書では、材料は、酵素によって触媒される反応によって分解(例えば、解重合)し得る場合に「酵素的に生分解性」である。
【0062】
「生体適合性」材料は、本明細書では、特定の用途において適切な宿主反応で機能し得る材料として定義される。
【0063】
本明細書では「制限された金属」としては、イオン及び非イオン形態のベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウム、及び周期表3〜12族の金属が挙げられる。周期表3〜12族の金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム及びコペルニシウムが挙げられる。上記制限された金属の各々は、親水性ポリマー中の濃度を0〜100ppm(百万分率)、0〜100ppb(十億分率)、又は0〜100ppt(一兆分率)とすることができる。好ましくは、上記制限された金属の各々は、親水性ポリマー中の濃度が0部である(すなわち、濃度が検出限界未満である)。一実施形態においては、環状モノマー、開環重合(ROP)開始剤、開環重合用触媒、溶媒、及び任意の塩基促進剤を含めて、開環重合(ROP)に使用される成分の化学式は、上記制限された金属のいずれも含まない。治療薬は、制限された金属を含むことができる。
【0064】
開示するポリマー若しくはその組成物又はその両方におけるホウ素、ケイ素又は任意の個々のアルカリ金属の濃度に制限はない。
【0065】
親水性ポリマーは無毒とすることができる。好ましくは、ポリマーは、静脈内LD50値が500mg/kg以上である。本明細書では、物質の静脈内LD50とは、指定時間内に試験哺乳動物(例えば、マウス)集団の50%が死亡する試験哺乳動物の体重1キログラム当たりの物質のミリグラム単位の致死静脈内投与量中央値を指す。
【0066】
親水性ポリマーを形成する方法
以下の記述においては、「環状カルボニルモノマー」という用語は、開環重合において重合することができる環状カルボナートモノマー、環状エステルモノマー及びそれらの組合せを含む。
【0067】
親水性ポリマーは、好ましくは、有機触媒開環重合(ROP)によって形成される。2種以上のROPを順次実施してブロック・コポリマーを形成することができる。
【0068】
ROP反応混合物は、ペンダント活性エステル側鎖を有する第1の環状カルボナートモノマーを含む。非限定的な活性エステルの例としては、ペンタフルオロフェニルエステル(PFP)、ペンタクロロフェニルエステル、パラ−ニトロフェニルエステル及びN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルが挙げられる。好ましくは、第1の環状カルボナートモノマーは、ペンダント・ペンタフルオロフェニルエステル(PFP)基を含む。ROP反応は、ペンダント活性エステル基を含む複数の繰り返し単位を含むリビング開始ポリマーを形成する。開始ポリマーは、別のROPを開始することが可能なリビング末端基(ヒドロキシ基)を有し、そのROPは、場合によっては末端キャッピングすることができる。開始ポリマー又は末端キャッピングされた開始ポリマーをアミノ−アルコール化合物で処理すると、式(1)のカルボナート繰り返し単位を含む開示された親水性ポリマーが生成する。活性エステルは、好ましくは、開始ポリマー骨格のアミノ分解をさほど起こさずに、アミノ−アルコールのアミン基と選択的に反応する。
【0069】
活性エステル基を含む第1の環状カルボナートモノマーの非限定的な例は、ペンダント・ペンタフルオロフェニルエステル(PFP)基を有するMTC−C6F5である。
【0070】
【化17】
【0071】
活性エステル側鎖を含む環状カルボナートモノマーは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0072】
ROP触媒
ROP反応混合物は、有機触媒を含み、当該有機触媒の化学構造は、好ましくは、上で更に記載した制限された金属のいずれをも含まない。
【0073】
有機触媒は、好ましくは、有機酸である。例示的な有機酸としては、リン酸ジフェニル、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリック酸)が挙げられる。一実施形態においては、有機触媒はトリフルオロメタンスルホン酸である。
【0074】
他の開環重合用有機触媒としては、トリアリルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、及びベンジルジメチルアミンなどの第三級アミン、4−ジメチルアミノピリジン、ホスフィン、N−複素環式カルベン(NHC)、二官能性アミノチオ尿素、ホスファゼン、アミジン、並びにグアニジンが挙げられる。
【0075】
より具体的な有機触媒は、N−ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシルチオ尿素(TU)である。
【0076】
【化18】
【0077】
他のROP有機触媒は、少なくとも1個の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール−2−イル(HFP)基を含む。単一供与性(Singly−donating)水素結合触媒は式(5)を有する。
−C(CFOH (5)
式中、Rは、水素、又は1〜20個の炭素を有する一価の基、例えば、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、置換ヘテロシクロアルキル(heterocycloalklyl)基、アリール基、置換アリール基又はそれらの組合せである。例示的な単一供与性水素結合触媒を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
二重供与性(Doubly−donating)水素結合触媒は、式(6)で表される2個のHFP基を有する。
【0080】
【化19】
【0081】
式中、Rは、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、置換ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、それらの組合せなどの1〜20個の炭素を含む二価のラジカル架橋基(radical bridging group)である。式(6)の代表的な二重水素結合触媒(double Hydrogen bonding catalyst)としては、表2に示したものが挙げられる。特定の一実施形態においては、Rは、アリーレン又は置換アリーレン基であり、HFP基は、芳香環上の互いにメタの位置を占める。
【0082】
【表2】
【0083】
一実施形態においては、触媒は、4−HFA−St、4−HFA−Tol、HFTB、NFTB、HPIP、3,5−HFA−MA、3,5−HFA−St、1,3−HFAB、1,4−HFAB及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0084】
担体に結合したHFP含有基を含む触媒も企図される。一実施形態においては、担体は、ポリマー、架橋ポリマー・ビーズ、無機粒子又は金属粒子を含む。HFP含有ポリマーは、HFP含有モノマー(例えば、メタクリラートモノマー(3,5−HFA−MA)又はスチリルモノマー(3,5−HFA−St))の直接重合を含む公知の方法によって形成することができる。直接重合(又はコモノマーとの重合)を行うことができるHFP含有モノマーにおける官能基としては、アクリラート、メタクリラート、アルファ,アルファ,アルファ−トリフルオロメタクリラート、アルファ−ハロメタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ノルボルネン、ビニル、ビニルエーテル、及び当該技術分野で公知の他の基が挙げられる。連結基の例としては、C〜C12アルキル、C〜C12ヘテロアルキル、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、エステル基、アミド基又はそれらの組合せが挙げられる。ポリマー又は担体表面の逆荷電部位にイオン会合によって結合した荷電HFP含有基を含む触媒も企図される。
【0085】
ROP反応混合物は、少なくとも1種の有機触媒及び、適切な際には、いくつかの有機触媒を共に含む。ROP触媒は、環状カルボニルモノマーに対して1/20〜1/40,000モルの割合で、好ましくは環状カルボニルモノマーに対して1/1,000〜1/20,000モルの割合で、添加することができる。
【0086】
ROP開始剤
ROP反応混合物は開始剤を含む。ROP開始剤は、アルコール、アミン、チオール及びそれらの組合せからなる群から選択される1個以上の求核基を有することができる。最も好ましくは、ROP開始剤は、1〜20個の炭素を含むモノオール若しくはジオール又はその両方の開始剤である。開始剤は、例えば、ハライド、エステル、アミド、エーテル、尿素、若しくは保護されたチオール、保護されたアミン、保護されたアルコールなどの保護された求核基、又はその組合せなどの別の官能基を含むことができる。
【0087】
例示的なモノ求核性開始剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、プロパルギルアルコール、ブタノール、3−ブチン−1−オール、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ペンタノール、アミルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、ピレンブタノール及び他の脂肪族飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール及び他の脂肪族環状アルコール;フェノール、置換フェノール、ベンジルアルコール、置換ベンジルアルコールなどのモノアルコールが挙げられる。
【0088】
例示的な二求核性開始剤としては、ベンゼンジメタノール、ヒドロキノン、レソルシノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。更に具体的な二求核性開始剤は、環状カルボナートモノマーの調製に使用される前駆体BnMPAである。
【0089】
【化20】
【0090】
モノオール開始剤を用いて調製すると、開始剤は、上で更に示した式(2)にあるような断片I’−O−*になる。ジオール開始剤を用いて調製すると、開始剤は、上で更に示した式(3)にあるような断片*−O−I’−O−*になる。
希釈剤モノマー
【0091】
ROP反応混合物は、環状カルボナート、環状エステル及びそれらの組合せからなる群から選択される第2の疎水性環状カルボニルモノマーを含むことができ、このカルボニルモノマーは、開環して、それぞれ疎水性カルボナート若しくはエステル又はその両方の第2の繰り返し単位を形成することができる。第2の繰り返し単位は、親水性ポリマーの親水性/疎水性バランスを調節する希釈剤として作用することができる。すなわち、親水性ポリマーの両親媒性は、第1の環状カルボナートモノマーの量及び構造、若しくは希釈剤である第2の環状カルボニルモノマーの量及び構造、又はその両方を調節することによって制御することができる。
【0092】
より具体的な希釈剤環状カルボナートモノマーは、式(7)の構造を有する。
【0093】
【化21】
【0094】
式中、各Qは、水素、及び1〜5個の炭素を含むアルキル基からなる群から独立に選択される一価の基であり、Rは、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価の基である。
【0095】
式(7)の希釈剤モノマーの開環重合によって形成される第2の繰り返し単位は、式(8)を有する。
【0096】
【化22】
【0097】
式中、Q及びRは上記に定義されており、骨格炭素及び酸素は、示したように付番される。この第2の繰り返し単位は、骨格カルボナート基を含む。一実施形態においては、Rは、1〜6個の炭素を含む基であり、Qはメチル又はエチルである。
【0098】
希釈剤環状カルボナートモノマーのより具体的な他の例を表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
【0101】
例示的な環状エステルモノマー(例えば、ラクトン)としては、式(9)の化合物が挙げられる。
【0102】
【化23】
【0103】
式中、vは1〜8の整数であり、各Qは、水素、1〜30個の炭素を含むアルキル基、及び6〜30個の炭素原子を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価の基である。環状エステル環は、場合によっては炭素−炭素二重結合を含むことができ、すなわち、場合によっては、式(9)の
【0104】
【化24】
【0105】
基は、独立に
【0106】
【化25】
【0107】
基である。環状エステル環は、酸素、窒素、硫黄、又はそれらの組合せなどのヘテロ原子も含むことができ、すなわち、場合によっては、式(9)の
【0108】
【化26】
【0109】
基は、独立に*−O−*、*−S−*、*−N(H)−*、又は*−N(R)−*基であり、式中、Rは、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価の基である。式(9)の環状エステルモノマーは、立体特異的でも、非立体特異的でもよい。
【0110】
式(9)の希釈剤モノマーの開環重合によって形成される第2の繰り返し単位は、式(10)を有する。
【0111】
【化27】
【0112】
式中、Q及びvは、上の式(9)において定義されている。第2の繰り返し単位は、骨格エステル基を含む。
【0113】
希釈剤環状エステルモノマーの他の非限定的な例としては、表4の化合物、及び適していればその立体特異体が挙げられる。
【0114】
【表4】
【0115】
【0116】
別の希釈剤環状エステルモノマーは、式(11)のジオキサンジカルボニルモノマーである。
【0117】
【化28】
【0118】
式中、w及びw’は、1〜3の値の独立した整数であり、各Q及び各Qは、水素、1〜30個の炭素を含むアルキル基、及び6〜30個の炭素原子を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価の基である。式(11)の化合物は、立体特異的でも、非立体特異的でもよい。一実施形態においては、w及びw’は各々1であり、各Qは水素であり、各Qは、1〜6個の炭素を含むアルキル基である。別の一実施形態においては、希釈剤モノマーは、D−ラクチド又はL−ラクチドである。
【0119】
式(11)の希釈剤モノマーの開環重合によって形成される第2の繰り返し単位は、式(12)を有する。
【0120】
【化29】
【0121】
式中、Q、Q、w及びw’は、上の式(11)において定義されており、骨格炭素及び酸素は、示したように付番されている。この第2の繰り返し単位は、2個の骨格エステル基を有する。
【0122】
式(11)の希釈剤モノマーの例としては、表5の化合物が挙げられる。
【0123】
【表5】
【0124】
上記環状カルボニルモノマーは、モノマーからできるだけ多くの水を除去するように特に注意しながら、酢酸エチルなどの溶媒からの再結晶によって、又は別の公知の精製方法によって、精製することができる。モノマー含水量は、モノマーの1〜10,000重量ppm、1〜1,000重量ppm、1〜500重量ppm、最も具体的には1〜100重量ppmの値とすることができる。
【0125】
ROPに使用される環状カルボニルモノマー、第1の繰り返し単位、若しくは第2の繰り返し単位、又はその組合せは、立体特異的でも、非立体特異的でもよい。立体特異的モノマー若しくは立体特異的繰り返し単位又はその両方は、i)重ね合わせ不可能な鏡像を有し、ii)1個以上の不斉な四価の炭素(すなわち、四面体sp炭素)を含む。四価の不斉炭素の各々には、カーン−インゴールド−プレローグ(CIP:Cahn−Ingold−Prelog)対称則に基づくR又はS対称性が割り当てられる。例えば、立体特異的繰り返し単位が1個の不斉な四価の炭素を有する場合、立体特異的繰り返し単位は、実質的にR立体異性体として、又は実質的にS立体異性体として、存在することができ、立体異性体が立体異性純度90%〜100%、94%以上、又はより具体的には98%〜100%で存在できることを意味する。別の一例においては、立体特異的繰り返し単位が2個の四価の不斉炭素を有する場合、立体特異的繰り返し単位は、実質的にR,R立体異性体として、実質的にR,S立体異性体として、実質的にS,S立体異性体として、又は実質的にS,R立体異性体として存在することができる。
【0126】
ROP促進剤
ROP重合は、任意に選択できる促進剤、特に窒素塩基の存在下で行うことができる。例示的な窒素塩基促進剤を以下に列挙するが、そのようなものとしては、表6に示すように、ピリジン(Py)、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン(MeNCy)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トランス1,2−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン(TMCHD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、(−)−スパルテイン、(Sp)1,3−ビス(2−プロピル)−4,5−ジメチルイミダゾル−2−イリデン(Im−1)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾル−2−イリデン(Im−2)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル(イミダゾル−2−イリデン(Im−3)、1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾル−2−イリデン(Im−4)、1,3−ジ−i−プロピルイミダゾル−2−イリデン(Im−5)、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾル−2−イリデン(Im−6)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾル−2−イリデン(Im−7)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾル−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾル−2−イリデン(Im−8)又はそれらの組合せが挙げられる。
【0127】
【表6】
【0128】
【0129】
一実施形態においては、促進剤は、例えば、構造(−)−スパルテインに見られるように、2又は3個の窒素を有し、各々がルイス塩基として関与することが可能である。強い塩基ほど一般に重合速度を改善する。
【0130】
ROP条件
開環重合は、好ましくは、約15℃〜約50℃、更に具体的には20℃〜30℃の温度で行われる。反応時間は、溶媒、温度、撹拌速度、圧力及び装置に応じて変わる。一般に、重合は、1〜100時間以内に完了する。
【0131】
ROP反応は、好ましくは、溶媒を用いて行われる。例示的な溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、石油エーテル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、又は上記溶媒の1種を含む組合せが挙げられる。適切なモノマー濃度は、約0.1〜5モル/リットル、より具体的には約0.2〜4モル/リットルである。
【0132】
ROP重合は、乾燥した不活性雰囲気、例えば窒素、アルゴンなどを用いて、圧力100MPa〜500MPa(1atm〜5atm)、より典型的には圧力100MPa〜200MPa(1atm〜2atm)で行われる。反応完了時、溶媒を減圧除去することができる。
【0133】
触媒と促進剤は同じ材料とすることができる。例えば、一部の開環重合は、別の触媒や促進剤を用いることなく、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)単独で行うことができる。
【0134】
触媒は、好ましくは、環状カルボニルモノマーの総モルに基づいて、約0.2〜20mol%、0.5〜10mol%、1〜5mol%、又は1〜2.5mol%の量で存在する。
【0135】
窒素塩基促進剤は、使用する際には、好ましくは、環状カルボニルモノマーの総モルに基づいて、0.1〜5.0mol%、0.1〜2.5mol%、0.1〜1.0mol%、又は0.2〜0.5mol%の量で存在する。上述したように、ある場合には、触媒と窒素塩基促進剤は、特定の環状カルボニルモノマーに応じて、同じ化合物とすることができる。
【0136】
開始剤の量は、求核性開始剤基1個当たりの換算分子量に基づいて計算される。開始剤基は、好ましくは、環状カルボニルモノマーの総モルに基づいて、0.001〜10.0mol%、0.1〜2.5mol%、0.1〜1.0mol%、及び0.2〜0.5mol%の量で存在する。例えば、開始剤の分子量が100g/モルであり、開始剤が2個のヒドロキシル基を有する場合、ヒドロキシル基1個当たりの換算分子量は50g/モルである。重合が、環状カルボニルモノマー1モル当たり5mol%のヒドロキシル基を必要とする場合、開始剤の量は、環状カルボニルモノマー1モル当たり、0.05×50=2.5gである。
【0137】
触媒は、選択的沈殿によって除去することができ、又は固体担持触媒の場合には、単に濾過によって除去することができる。ブロック・コポリマーは、親水性ポリマー及び残留触媒の総重量に基づいて、0wt%(重量パーセント)以上の量の残留触媒を含むことができる。
【0138】
アミノ−アルコール
ROPによって形成される開始ポリマー、又は末端キャッピングされた開始ポリマーを、アミノ−アルコールを用いて処理し、それによって親水性ポリマーを形成する。アミノ−アルコールは、1〜4個の炭素及び1個以上のヒドロキシル基を含む。特に好ましいアミノ−アルコールとしては、
【0139】
【化30】
【0140】
が挙げられる。アミノ−アルコールは、立体特異的でも、非立体特異的でもよい。アミノ−アルコールは、単独で又は組み合わせて使用することができる。一実施形態においては、アミノ−アルコールはセリノール(2−アミノ−1,3−プロパンジオール)である。
【0141】
平均分子量
親水性ポリマーは、好ましくは、数平均分子量Mnが約1500以上、より好ましくは約1500〜約50,000、最も好ましくは約5000〜約20,000である。一実施形態においては、親水性ポリマーは、数平均分子量Mnが約5000〜約10,000である。
【0142】
親水性ポリマーは、多分散指数(PDI)が1.01〜2.0、より好ましくは1.01〜1.30、更に好ましくは1.01〜1.25とすることができる。
【0143】
エンドキャップ剤
開始ポリマー若しくは親水性ポリマー又はその両方は、更に、エンドキャップ剤で処理して、更なる鎖成長を防止し、鎖切断などの望ましくない副反応に対して反応性末端基を安定化することができる。エンドキャップ剤としては、例えば、カルボン酸無水物、カルボン酸塩化物、反応性エステル(例えば、p−ニトロフェニルエステル)など、末端ヒドロキシル基をエステルに変換する材料が挙げられる。一実施形態においては、エンドキャップ剤は、反応性ヒドロキシ末端基を酢酸エステル基に変換する無水酢酸である。エンドキャップ剤は、生物活性部分を含むことがあり、この部分は、開環ポリマー鎖の末端基に結合される。
【0144】
一実施形態においては、親水性ポリマーは、リビング末端基を有し(すなわち、末端キャッピングされていない)、この末端基は、開環重合を開始することができる。
【0145】
細胞毒性
親水性ポリマー単体は、一般に細胞毒性がない。例えば、ヒト胎児腎細胞HEK293の細胞生存率は、200mg/Lまでのポリマー濃度で80%〜100%の範囲とし得る。
【0146】
充填ポリマー(Loaded polymers)
開示したポリマー及び治療薬を含む医学的処置用組成物(本明細書では「充填ポリマー」とも称する)も開示する。親水性ポリマーは、治療薬の担体として働くことができ、この治療薬は、非共有結合性相互作用(例えば、水素結合、疎水性相互作用)若しくは共有結合又はその両方によって親水性ポリマーに結合することができる。親水性ポリマーは、水性混合物における治療薬の分散助剤として働くことができる。
【0147】
組成物は、治療薬を血流中若しくは細胞内又はその両方に放出することができる。
【0148】
組成物は、水分散性粒子の形とすることができる。粒子は、動的光散乱によって測定された平均粒径が約10nm〜約500nm、より好ましくは10nm〜約200nmとすることができる。粒子は、更に水を含むことができる。
【0149】
組成物は、組成物の総乾燥重量に基づいて、0重量パーセント(wt%)を超える量、より具体的には約0.1wt%〜約15wt%の量の治療薬を含むことができる。
【0150】
治療薬は、開示する親水性ポリマーを用いて、可逆的な複合体(すなわち、非共有結合性相互作用による)若しくは付加体(すなわち、共有結合性相互作用による)又はその両方を形成可能な任意の適切な治療薬とすることができ、複合体若しくは付加体又はその両方は、治療薬の徐放が可能である。非限定的な治療薬としては、DNA、遺伝子、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、リン脂質、及びヌクレオチド)、天然又は合成の有機化合物(例えば、薬物、染料、合成ポリマー、オリゴマー及びアミノ酸)、無機材料(例えば、金属及び金属酸化物)、上記の放射性変異体、並びに上記の組合せが挙げられる。一実施形態においては、治療薬は、薬物若しくは遺伝子又はその両方である。
【0151】
治療薬は、望ましい医学的応答を誘導する際に有効である。非限定的な望ましい医学的応答としては、ある細胞型の別の細胞型に対する化学構造若しくは活性又はその両方の選択的変化が挙げられる。一例として、化学構造における一つの望ましい変化は、細胞のDNAへの遺伝子の組み込みとし得る。活性における望ましい変化は、導入された遺伝子の細胞による発現とし得る。細胞活性における別の望ましい変化は、所望のホルモン又は酵素の誘導産生とし得る。あるいは、活性における望ましい変化は、ある細胞型の他の細胞型よりも選択的な死とし得る。例えば、治療薬は、細菌の選択的な死滅、ウイルスの不活性化、若しくは腫瘍細胞の死滅、又はそれらの組み合わせを成すことができる。治療薬に起因する細胞活性の相対変化は、その変化が望ましく有用であるならば制限がない。さらに、治療薬が医学的に有用な応答を誘導するならば、治療薬には制限がない。
【0152】
非限定的な市販薬物の例としては、13−cis−レチノイン酸、2−CdA、2−クロロデオキシアデノシン、5−アザシチジン、5−フルオロウラシル、5−FU、6−メルカプトプリン、6−MP、6−TG、6−チオグアニン、アブラキサン、アキュテイン(登録商標)、アクチノマイシンD、アドリアマイシン(登録商標)、アドルシル(登録商標)、アフィニトール(登録商標)、アグリリン(登録商標)、アラ−コート(登録商標)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリムタ、アリトレチノイン、アルカバン−AQ(登録商標)、アルケラン(登録商標)、オールトランスレチノイン酸、アルファインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミホスチン、アミノグルテチミド、アナグレリド、アナンドロン(登録商標)、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、アラ−C、アラネスプ(登録商標)、アレディア(登録商標)、アリミデックス(登録商標)、アロマシン(登録商標)、アラノン(登録商標)、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ATRA、アバスチン(登録商標)、アザシチジン、BCG、BCNU、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ベクサール(登録商標)、ビカルタミド、BiCNU、ブレノキサン(登録商標)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、ブスルフェックス(登録商標)、C225、カルシウムロイコボリン、キャンパス(登録商標)、カンプトサー(登録商標)、カンプトセシン−11、カペシタビン、カラック(商標)、カルボプラチン、カルムスチン、カルムスチンウエハ、カソデックス(登録商標)、CC−5013、CCI−779、CCNU、CDDP、シーヌ、セルビジン(登録商標)、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、シトロボラム因子、クラドリビン、コルチゾン、コスメゲン(登録商標)、CPT−11、シクロホスファミド、シクロスポリン(通常は臓器移植後に患者に終生投与される免疫抑制剤)、シタドレン(登録商標)、シタラビン、シタラビンリポソーム、サイトサール−U(登録商標)、シトキサン(登録商標)、ダカルバジン、ダコゲン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、ダウノルビシン、塩酸ダウノルビシン、ダウノルビシンリポソーム、ダウノキソーム(登録商標)、デカドロン、デシタビン、デルタ−コルテフ(登録商標)、デルタソン(登録商標)、デニロイキンジフチトックス、デポサイト(商標)、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウムデキサソン、デクスラゾキサン、DHAD、DIC、ディオデックス、ドセタキセル、ドキシル(登録商標)、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーム、ドロキシア(商標)、DTIC、DTIC−ドーム(登録商標)、デュラロン(登録商標)、エフデックス(登録商標)、エリガード(商標)、エレンセ(商標)、エロキサチン(商標)、エルスパル(登録商標)、エムサイト(登録商標)、エピルビシン、エポエチンアルファ、アービタックス、エルロチニブ、エルウィニアL−アスパラギナーゼ、エストラムスチン、エチヨル、エトポホス(登録商標)、エトポシド、エトポシドリン酸、オイレキシン(登録商標)、エベロリムス、エビスタ(登録商標)、エクセメスタン、フェアストン(登録商標)、ファスロデックス(登録商標)、フェマーラ(登録商標)、フィルグラスチム、フィナステリド(発毛用)、フロクスウリジン、フルダラ(登録商標)、フルダラビン、フルオロプレックス(登録商標)、フルオロウラシル、フルオロウラシル(クリーム)、フルオキシメステロン、フルタミド、フォリン酸、FUDR(登録商標)、フルベストラント、G−CSF、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲムザール、グリベック(商標)、グリアデル(登録商標)ウエハ、GM−CSF、ゴセレリン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ハロテスチン(登録商標)、ハーセプチン(登録商標)、ヘキサドロール、ヘキサレン(登録商標)、ヘキサメチルメラミン、HMM、ハイカムチン(登録商標)、ハイドレア(登録商標)、酢酸ヒドロコート(登録商標)、ヒドロコルチゾン、リン酸ナトリウムヒドロコルチゾン、コハク酸ナトリウムヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルトン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタンイダマイシン(登録商標)、イダルビシン、イフェックス(登録商標)、IFN−アルファイホスファミド、IL−11 IL−2イマチニブメシレート、イミダゾールカルボキサミドインターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ−2b(PEGコンジュゲート)、インターロイキン−2、インターロイキン−11、イントロンA(登録商標)(インターフェロンアルファ−2b)、イレッサ(登録商標)、イリノテカン、イソトレチノイン、イキサベピロン、イクセンプラ(商標)、Kキドロラーゼ(t)、ラナコート(登録商標)、ラバチニブ、L−アスパラギナーゼ、LCR、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、リューケラン、リューカイン(商標)、ロイプロリド、ロイロクリスチン、ロイスタチン(商標)、リポソームアラ−C、液体プレッド(登録商標)、ロムスチン、L−PAM、L−サルコリシン、ループロン(登録商標)、ループロンデポ(登録商標)、マチュレーン(登録商標)、マキシデックス、メクロレタミン、塩酸メクロレタミン、メドラロン(登録商標)、メドロール(登録商標)、メガース(登録商標)、メゲストロール、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(商標)、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メチルプレドニゾロン、メチコルテン(登録商標)、マイトマイシン、マイトマイシン−C、ミトキサントロン、M−プレドニゾル(登録商標)、MTC、MTX、マスタージェン(登録商標)、ムスチンムタマイシン(登録商標)、マイルラン(登録商標)、マイロセル(商標)、マイロターグ(登録商標)、ナベルビン(登録商標)、ネララビン、ネオサール(登録商標)、ニューラスタ(商標)、ニューメガ(登録商標)、ニューポジェン(登録商標)、ネクサバール(登録商標)、ニランドロン(登録商標)、ニルタミド、ニペント(登録商標)、ナイトロジェンマスタード、ノルバデックス(登録商標)、ノバントロン(登録商標)、オクトレオチド、酢酸オクトレオチド、オンコスパー(登録商標)、オンコビン(登録商標)、オンタック(登録商標)、オンキサル(商標)、オプレベルキン、オラプレッド(登録商標)、オラソン(登録商標)、オキサリプラチン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、パンレチン(登録商標)、パラプラチン(登録商標)、ペディアプレッド(登録商標)、PEGインターフェロン、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG−イントロン(商標)、PEG−L−アスパラギナーゼ、ペメトレキセド、ペントスタチン、フェニルアラニンマスタード、プラチノール(登録商標)、プラチノール−AQ(登録商標)、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレロン(登録商標)、プロカルバジン、プロクリット(登録商標)、プロリュウキン(登録商標)、カルムスチンインプラントを有するプロリフェプロスパン20、プリナピュリネソール(登録商標)、ラロキシフェン、レブラミド(登録商標)、リウマトレックス(登録商標)、リツキサン(登録商標)、リツキシマブ、ロフェロン−A(登録商標)(インターフェロンアルファ−2a)ルベックス(登録商標)、塩酸ルビドマイシン、サンドスタチン(登録商標)、サンドスタチンLAR(登録商標)、サルグラモスチム、ソル−コルテフ(登録商標)、ソル−メドロール(登録商標)、ソラフェニブ、スプリセル(商標)、スピロノラクトン、STI−571、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、スーテント(登録商標)、タモキシフェン、タルセバ(登録商標)、タルグレチン(登録商標)、タキソール(登録商標)、タキソテール(登録商標)、テモダール(登録商標)、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テスパ、サリドマイド、サロミド(登録商標)、セラシス(登録商標)、チオグアニン、チオグアニンタブロイド(登録商標)、チオホスホアミド、チオプレックス(登録商標)、チオテパ、TICE(登録商標)、トポサール(登録商標)、トポテカン、トレミフェン、トーリセル(登録商標)、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレアンダ(登録商標)、トレチノイン、トレックサール(商標)、トリセノックス(登録商標)、TSPA、TYKERB(登録商標)、VCR、ベクティビックス(商標)、ベルバン(登録商標)、ベルケード(登録商標)、ベペシド(登録商標)、ベサノイド(登録商標)、ビアヅール(商標)、ビダーザ(登録商標)、ビンブラスチン、硫酸ビンブラスチン、ビンカサールPfs(登録商標)、ビンクリスチン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、VLB、VM−26、ボリノスタット、VP−16、ブモン(登録商標)、キセローダ(登録商標)、ザノサー(登録商標)、ゼバリン(商標)、ザインカード(登録商標)、ゾラデックス(登録商標)、ゾレドロン酸、ゾリンザおよびゾメタが挙げられる。
【0153】
(示した立体化学を有する)剛直な疎水性薬物の非限定的な例としては、抗腫瘍薬パクリタキセル(PTX):
【0154】
【化31】
【0155】
抗腫瘍薬ドキソルビシン(DOX):
【0156】
【化32】
【0157】
免疫抑制薬シクロスポリンA(CYC):
【0158】
【化33】
【0159】
及び発毛薬スピロノラクトン(SPL):
【0160】
【化34】
【0161】
SPLが挙げられる。
【0162】
治療薬は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0163】
また開示するのは、充填ポリマーを形成する方法であって、i)水及び開示する親水性ポリマーを含む第1の混合物を形成すること、ii)治療薬と、有機溶媒、水及びそれらの組合せからなる群から選択される溶媒とを含む第2の混合物を形成すること、iii)第1の混合物と第2の混合物を組み合わせ、それによって第3の混合物を形成すること、並びにiv)有機溶媒(単数又は複数)を第3の混合物から除去し、それによって、親水性ポリマーと、非共有結合性相互作用若しくは共有結合性相互作用又はその両方によって結合した治療薬とを含む分散粒子として、充填ポリマーを形成することを含む方法である。
【0164】
第3の混合物は、透析膜システムを用いて脱イオン水に対して透析して、有機溶媒を除去することができる。
【0165】
例示的な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、アセトン、2−ブタノン、ジメトキシエタン、ジグリム、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、塩化メチレン、酢酸エチル、エチレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンが挙げられる。
【0166】
充填ポリマーは、各々充填ポリマーの総乾燥重量に基づいて、約50.0wt%〜約99.9wt%の量の親水性ポリマー、及び約50.0wt%〜約0.1wt%の量の治療薬を含むことができる。
【0167】
充填ポリマーの粒子は、平均粒径(円形断面直径)が、動的光散乱によって測定して、10nm〜500nm、より好ましくは10nm〜250nm、最も好ましくは25nm〜200nmとすることができる。上記粒径の場合、水溶液は、pHが4.5〜8.0、より具体的には5.0〜8.0、又は更に具体的には7.0〜8.0とすることができる。
産業上の利用可能性
【0168】
開示の親水性ポリマー及び治療薬を含む充填ポリマー組成物は、ヒト若しくは非ヒト又はその両方の医学的処置に使用することができる。組成物は、散剤、丸剤、液剤、ペースト剤若しくはゲル剤又はその組合せの形で投与することができる。組成物は、薬物として使用することができる。組成物は、局所的に、経口的に、坐剤として、若しくは静脈内注射を含めた注射によって、又はそれらの組合せで投与することができる。組成物は、更に水を含むことができ、安定な水性分散体の形を有することができる。
【0169】
方法は、細胞を充填ポリマーに接触させ、それによって細胞を死滅させることを含む。一実施形態においては、細胞は微生物である。別の一実施形態においては、細胞はがん細胞である。
【0170】
抗菌組成物は、開示の親水性ポリマーと抗菌剤とを含む充填ポリマーを含む。抗菌組成物は、ヒト組織若しくは非ヒト動物組織又はその両方に適用することができ、非ヒト動物組織には、哺乳動物組織若しくは非哺乳動物組織又はその両方が含まれる。一般用語「動物組織」は、創傷組織、火傷組織、皮膚、内臓組織、血液、骨、軟骨、歯、毛、眼、鼻表面、口腔表面、他の体腔表面、及び任意の細胞膜表面を含む。一実施形態においては、方法は、動物組織を充填ポリマーに接触させ、それによって細菌を死滅させることを含む。細菌は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母若しくは真菌又はそれらの組合せであり得る。
【0171】
抗菌組成物は、散剤、丸剤若しくは水性混合物又はそれらの組合せの形で使用することができ、水性混合物は、易流動性液体、噴霧剤、クリーム、注射用混合物若しくはゲル又はその組合せとして適用される。用途としては、消毒薬があり、手、皮膚、毛、骨、耳、眼、鼻、咽喉、内部組織、創傷、及び歯(例えば、洗口剤として)に用いるものが挙げられる。更に他の用途としては、医療機器などの物品の消毒薬が挙げられる。医療機器としては、綿棒、カテーテル、縫合糸、ステント、便器、手袋、顔面マスク、吸収パッド、吸収性衣服、内部吸収装置、及び挿入可能な機械装置が挙げられる。
【0172】
抗菌組成物は、家の表面、事業所の表面、及び特に動物組織若しくは動物体液又はその両方に接触する病院の表面の消毒用にも魅力がある。家及び商業建築物の表面の例としては、床、ドア表面、ベッド表面、空調表面、浴室表面、手すり表面、台所表面、及び壁面が挙げられる。他の物品としては、医療機器、布、衣服、及び非医療機器が挙げられる。物品の表面は、木、紙、金属、布地、プラスチック、ゴム、ガラス、塗料、革、又はそれらの組合せなどの材料を含むことができる。一実施形態においては、方法は、物品の表面を充填ポリマー組成物に接触させ、それによって表面を消毒することを含む。別の一実施形態においては、方法は、物品の表面を組成物の水性混合物に接触させることを含む。
【0173】
以下の実施例は、親水性ポリマーの調製を示すものである。
【実施例】
【0174】
以下の実施例に使用する材料を表7に示す。
【0175】
【表7】
【0176】
本明細書では、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MWは1分子の分子量である。
【0177】
モノマー合成
MTC−C6F5は、以下の構造を有する。
【0178】
【化35】
【0179】
Sandersら、「万能なペンタフルオロフェニルエステル中間体を用いた官能性環状カルボナートモノマーの簡単で効率的な合成(A Simple and Efficient Synthesis of Functionalized Cyclic Carbonate Monomers Using a Versatile Pentafluorophenyl Ester Intermediate)」、Journal of the American Chemical Society、2010、132、14724〜14726ページに記述された手順によってMTC−C6F5を製造した。
【0180】
BnMPAは、以下の構造を有する。
【0181】
【化36】
【0182】
BnMPA及び他の環状カルボナートモノマーを、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(BisMPA)からスキーム4に従って調製することができる。
【0183】
【化37】
【0184】
BisMPAを公知の方法によって(i)ベンジルエステルBnMPAに変換することができる。BnMPAとトリホスゲンの反応によって(ii)環状カルボニルモノマーMTCOBnが生成する。MTCOBnの脱ベンジル化によって(iii)5−メチル−5−カルボキシル−1,3−ジオキサン−2−オン(MTCOH)が生成する。MTCOHからエステルを形成する2つの経路を示す。第1の経路(iv)においては、ROHと反応してMTCORを一段階で形成する適切なカルボキシ活性化剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などを用いて、MTCOHを処理する。あるいは、MTCOHを、まず、(v)酸塩化物MTCClに変換し、続いて(vi)MTCClを塩基の存在下でROHで処理して、MTCORを形成することができる。どちらの経路も説明のためのものであって、限定することを意図したものではない。以下の条件はスキーム4に示す反応に用いる典型的なものである:(i)臭化ベンジル(BnBr)、KOH、DMF、100℃、15時間、BnMPA収率62%;(ii)トリホスゲン、ピリジン、CHCl、−78℃〜0℃、MTCOBn収率95%;(iii)Pd/C(10%)、H(3atm)、EtOAc、室温、24時間、MTCOH収率99%;(iv)ROH、DCC、THF、室温、1〜24時間;(v)(COCl)、THF、室温、1時間、MTCCl収率99%;(vi)ROH、NEt、室温、3時間でMTCORを生成。
【0185】
MTCOEt(MW188.2)は、構造
【0186】
【化38】
【0187】
を有する。
【0188】
MTCOEt
上記スキーム4によって、MTCClをエタノールで処理してMTCOEtを形成した。MTCOEtを、希釈効果用の非官能性の相当物として、また、疎水性ブロックをブロック・ポリマーに導入するために、使用した。
【0189】
重合
実施例1 ジオール開始剤BnMPAを用いたペンタフルオロフェニルエステル・ポリマーP−1の調製
【0190】
【化39】
【0191】
窒素充填グローブ・ボックスにおいて、ベンジル2,2−ビス(メチロール)プロピオナート開始剤(BnMPA、0.0204g、0.91mmol)及びMTC−Cモノマー(0.59g、1.82mmol)をジクロロメタン(12mL)に溶解させた。触媒のトリフリック酸(0.069g、0.46mmol)を添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。粗ポリマー溶液をヘキサン中に沈殿させ、白色固体を得た。THFを溶離液として用いたGPCから、Mn=6200、PDI=1.15、重合度(DP)=20(上記反応においてm=20)であった。図1は、P−1のH NMRスペクトルである。開始剤断片のベンジルのピーク(図示せず)は、これらの材料に伴うCDClピークと同じ領域にある。H NMR(400MHz、CDCl):デルタ4.48(s、4H、CH)、1.51(3H、CH)。
【0192】
P−1は、ジオール開始剤由来の鎖断片(開始剤断片)から発する2本のポリマー分枝を有する。ポリマー分枝の各々は、MTC−C6F5のROPによって形成される繰り返し単位のホモポリマー鎖から本質的になる。各ホモポリマー鎖の第1の末端繰り返し単位は、開始剤断片に結合する。各ホモポリマー鎖の第2の末端繰り返し単位は、別のROPを開始することが可能なヒドロキシ基を有する。
【0193】
実施例2 モノオール開始剤3−ブチン−1−オールからのジブロック・ペンタフルオロフェニルエステル・ポリマーP−3の調製
【0194】
【化40】
【0195】
この反応を単一の容器中で実施した。窒素充填グローブ・ボックスにおいて、3−ブチン−1−オール開始剤(0.085g、0.12mmol)及びMTC−C6F5モノマー(1.98g、6.06mmol)をジクロロメタン(8mL)に溶解させた。触媒のトリフリック酸(0.045g、0.30mmol)を添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。反応変換率をH−NMRによって調べたところ、ほぼ完全な変換率であった。MTCOEtモノマー(0.57g、3.03mmol)を反応物に添加した。反応物を室温で撹拌し、変換率73%で停止した。粗ポリマーをヘキサン中に沈殿させ、白色固体P−3を得た。H NMR(400MHz、CDCl):デルタ4.48(s、CHポリ(MTC−OC)、4H)、4.26(m、CHポリ(MTC−Oエチル)、4H)、4.20(m、CHCHポリ(MTC−Oエチル)、2H)、1.51(s、CH、3H)ポリ(MTC−OC)、1.26(m、CHポリ(MTC−Oエチル)、3H)、1.26(m、CHCHポリ(MTC−Oエチル)、3H)。
【0196】
単離されない中間体ポリマーP−2は、モノオール開始剤3−ブチン−1−オール由来の開始剤断片に結合した1本のポリマー分枝を有する。ポリマー分枝は、MTC−C6F5のROPによって形成される繰り返し単位のホモポリマー鎖から本質的になる。ホモポリマー鎖の第1の末端繰り返し単位は、開始剤断片に結合する。ホモポリマー鎖の第2の末端繰り返し単位は、別のROPを開始することが可能なヒドロキシ基を有する。開始剤断片は、ポリマー分枝末端基でもある。
【0197】
単離されたポリマーP−3も、モノオール開始剤3−ブチン−1−オール由来の開始剤断片に結合した1本のポリマー分枝を有する。開始剤断片は、ポリマー分枝の末端基でもある。ポリマー分枝は、MTC−C6F5の第1のROPとそれに続くMTCOEtの第2のROPによって形成されるジブロック・コポリマー鎖から本質的になる。ジブロック・コポリマー鎖は、MTC−C6F5由来の第1の親水性ブロック、及びMTCOEt由来の疎水性の第2のブロックを含む。第1のブロックの第1の末端繰り返し単位は、開始剤断片に結合する。第1のブロックの第2の末端繰り返し単位は、第2のブロックの第1の末端繰り返し単位に結合する。第2のブロックの第2の末端繰り返し単位は、別のROPを開始することが可能なヒドロキシ基を含む。
【0198】
実施例3 ジブロック・ペンタフルオロフェニルエステル・ポリマーP−4の調製
【0199】
【化41】
【0200】
MTCOEtから誘導されるブロックのサイズを変えて、実施例2の手順に従ってP−4を調製した。使用量は以下の通りであった:3−ブチン−1−オール開始剤(0.0085g、0.12mmol)及びMTC−C6F5モノマー(1.98g、6.06mmol)をジクロロメタン(8mL)に溶解させ、触媒をトリフリック酸(0.046g、0.30mmol)とし、MTC−OEtモノマー(0.34g、1.82mmol)をジクロロメタン(12mL)に溶解した。MTC−OEt重合を変換率66.5%で停止した。H NMR(400MHz、CDCl):デルタ4.48(s、CHポリ(MTC−OC)、4H)、4.26(m、CHポリ(MTC−Oエチル)、4H)、4.20(m、CHCHポリ(MTC−Oエチル)、2H)、1.51(s、CH、3H)ポリ(MTC−OC)、1.26(m、CHポリ(MTC−Oエチル)、3H)、1.26(m、CHCHポリ(MTC−Oエチル)、3H)。
【0201】
実施例4 モノオール開始剤ベンジルアルコールを用いたペンタフルオロフェニルエステル・ホモポリマーP−5の調製
【0202】
【化42】
【0203】
窒素充填グローブ・ボックスにおいて、ベンジルアルコール(0.05g、0.46mmol)及びMTC−C6F5モノマー(3.02g、9.25mmol)をジクロロメタン(12mL)に溶解した。触媒のトリフリック酸(0.069g、0.46mmol)を添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。粗ポリマー溶液をヘキサン中に沈殿させ、白色固体P−5を得た。THFを溶離液として用いたGPCから、Mn=6200、PDI=1.15、DP=20(上記反応においてm=20)であった。H NMR(400MHz、CDCl):デルタ4.48(s、4H、CH)、1.51(3H、CH)。
【0204】
アミド官能基化
実施例5 アミド・ポリマーA−1の調製
【0205】
【化43】
【0206】
P−1(200mg、0.6132mmol繰り返し単位)をアセトニトリル(1mL)に溶解させた。2−アミノエタノール(0.0393g、0.6438mmol)及びトリエチルアミン(0.0651g、0.6438mmol)をアセトニトリル(1mL)に溶解させ、ポリマー溶液に滴下した。白色沈殿物が形成し始めた。DMF(1mL)を添加して、透明溶液を作製した。反応物を更に2時間撹拌し、粗A−1をジエチルエーテル中に沈殿させた。白色固体を回収し、DMFを溶離液として用いたGPCによって分析した(下表8参照)。H NMR(400MHz、DO):デルタ4.23(s、4H、CH)、3.53(2H、CHOH)、3.26(t、2H、NHCH)、1.19(s、3H、CH)。
【0207】
実施例6〜10 アミド・ポリマーA−2〜A−6の調製。これらのポリマーを実施例5の一般的手順及び下表8に列挙したアミノ−アルコールを用いてP−1から調製した。図2は、A−3(実施例7)のH NMRスペクトルである。以下は、DO中で得られた実施例6〜9の400MHz H NMRピーク帰属である。
実施例6:デルタ4.20(s、4H、CH)、3.51(t、2H、CHOH)、3.20(t、2H、NHCH)、1.62(t、2H、CHCHCH)、1.18(s、3H、CH)、
実施例7:デルタ4.22(s、4H、CH)、3.8(q、1H、CHOH)、3.15(d、2H、NHCH)、1.19(s、3H、CH)、1.03(t、2H、CHCH)、
実施例8:デルタ4.57(m、1H、NHCH)、4.19(s、4H、CH)、3.64、3.23(m、2H、CHOH)、1.58、1.28(m、2H、CHCH)、1.19(s、3H、CH)、1.03(t、2H、CHCH)、及び
実施例9:デルタ4.23(s、4H、CH)、3.94(d、1H、NHCH)、3.56(t、2H、CHOH)、1.21(s、3H、CH)。
【0208】
表8に、ペンタフルオロフェニルエステル・ポリマーP−1及びアミド・ポリマーA−1〜A−6の構造及び性質を要約する。表8のR’基は、下式(13)の構造のR’を指す。
【0209】
【化44】
【0210】
表8のR’基の星印のついた結合は、アミド窒素に結合する。重合度mも表8に示す。
【0211】
【表8】
【0212】
表8のポリマーP−1並びにアミド含有ポリマーA−1〜A−3及びA−5もゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって分析し、アミド形成中に骨格の分解がなかったか否かを判定した。図3のDMFのGPCトレースで示されたように、ピークの広幅化もポリマー分子量の著しい低下もなかった。
【0213】
ポリマーの水溶性を判定するために、精製ポリマーを小さなバイアルに入れ、水を添加してアミド含有ポリマーを溶解させた。2−アミノブタノールを用いて調製したA−4(実施例7)は、水溶性が限られていたが、他のアミド含有ポリマー(A−1、A−2、A−3、A−5及びA−6)はすべて十分な水溶性であった。
【0214】
実施例11〜20 ジブロック・ポリマーD−1〜D−10の調製。これらのポリマーを実施例4の一般的手順及び下表9に列挙したアミノ−アルコールを用いてP−3(実施例2)又はP−4(実施例3)から調製した。
【0215】
表9に、ジブロック・コポリマーD−1〜D−10並びに前駆体ポリマーP−3及びP−4の性質を要約する。表9の添字m及びn並びに表9のR’基は、式(14)の構造のそれぞれm、n及びR’を指す。
【0216】
【化45】
【0217】
表9のR’基の星印のついた結合は、アミド窒素に結合する。
【0218】
【表9】
【0219】
【0220】
実施例21〜25 アミド・ホモポリマーA−7〜A−11の調製。これらのポリマーを、実施例5の一般的手順及び下表10に列挙したアミノ−アルコールを用いて、P−5から調製した。以下は、DO中で得られた実施例21〜25の400MHz H NMRのピークの帰属である。
実施例21:デルタ4.23(s、4H、CH)、3.53(2H、CHOH)、3.26(t、2H、NHCH)、1.19(s、3H、CH)、
実施例22:デルタ4.20(s、4H、CH)、3.51(t、2H、CHOH)、3.20(t、2H、NHCH)、1.62(t、2H、CHCHCH)、1.18(s、3H、CH)、
実施例23:デルタ4.22(s、4H、CH)、3.8(q、1H、CHOH)、3.15(d、2H、NHCH)、1.19(s、3H、CH)、1.03(t、2H、CHCH)、
実施例24:デルタ4.23(s、4H、CH)、3.94(d、1H、NHCH)、3.56(t、2H、CHOH)、1.21(s、3H、CH)、及び
実施例25:デルタ4.19(m、4H、CH)、3.66(m、1H、CHOH)、3.37(dm、2H、NHCH)、1.19(s、3H、CH)、1.03(t、2H、CHCH)。
【0221】
表10に、ペンタフルオロフェニルエステル・ポリマーP−5及びアミド・ポリマーA−7〜A−11の構造及び性質を要約する。表10のR’基は、式(15)のR’基を指す。
【0222】
【化46】
【0223】
表10のR’基の星印のついた結合は、アミド窒素に結合する。重合度mも表10に示す。
【0224】
【表10】
【0225】
細胞生存率
細胞生存率試験を表8のアミド含有ポリマー及びHEK293細胞を用いて行った。5,000Da及び10,000Daの2種のPEGホモポリマーを対照として使用した。
【0226】
HEK293細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシンを補充したRPMI−1640中で培養した。HEK293細胞を96ウェルプレート上に密度10,000細胞/ウェルで播種した。細胞を37℃、5%COでインキュベートした。24時間後、培地を、様々な濃度のポリマーを含む新鮮な培地と交換した。48時間のインキュベーション後、新鮮な培地100マイクロリットル及び5mg/mL MTT溶液20マイクロリットルを使用して、試料培地を交換した。4時間のインキュベーション後、培地を除去し、DMSO(150マイクロリットル)を各ウェルに添加して、ホルマザン結晶を溶解させた。マイクロプレート・リーダ(Power−Wave X、Bio−tek Instruments、米国)を用いて、各ウェルの吸光度を、690nmの吸光度を差し引いた550nmの吸光度として測定した。結果をブランク対照の吸光度の割合として示した。
【0227】
図4〜9(それぞれA−1、A−3、A−2、A−4、A−5及びA−6)に示すように、2−アミノ−1−ブタノール(A−4)で置換されたポリマーのみ、細胞生存率が80%未満に低下した。他のポリマーはすべて無毒であり、PEG5kDa(図10)及びPEG10kDa(図11)と類似した毒性プロファイルを示した。
【0228】
マウス静脈内LD50試験
雌のBalb/cマウス(19〜21g)を無作為に選択し、ケージ中で少なくとも5日間保持して、検査室条件に順化させた。マウスを試験前に12時間絶食させた。ポリマーの用量を500mg/kgとした。ポリマーを滅菌食塩水に50mg/mLの注射用濃度で溶解させ、静脈内注射によって投与した。ポリマー溶液を最初に1匹のマウスに投与した。最初のマウスが48時間後に生存していた場合、更に2匹のマウスを試験に使用した。注射後、すべての動物を、最初の4時間は30分毎に、その後は毎日、計14日間にわたって観察した。
【0229】
セリノールで置換された表8のアミド含有ポリマーA−5(実施例8)の予備的な動物データによって、ポリマーが濃度>500mg/kgで無毒であることが示された。
【0230】
ポリマーのステルス性
ポリマー系がステルス特性を有するかどうかを判定する1つの方法は、ポリマーを含有する血清溶液の安定性を調べることである。動的光散乱を用いて、血清中で形成される粒子のサイズを経時的に測定することができる。最初の粒径がある期間にわたって変わらない(すなわち、血清溶液が、容認できない凝集を経時的に示さない)場合、ポリマーはステルス特性を有すると考えることができる。合成高分子若しくは血清成分又はその両方は、凝集し得る。
【0231】
表8及び表9のアミド含有ポリマーを、10%FBSを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解させた。各ポリマーの濃度は500mg/Lであった。血清溶液の時間依存的な粒径を、He−Neレーザ光線を備えたZetasizer3000HAS(Malvern Instrument Ltd.、モールバン、イギリス)を用いた動的光散乱によって658nm(散乱角:90°)で24時間又は48時間分析した。各試料を3回測定し、平均粒径を得た。粒径をナノメートル単位の平均円直径として報告する。
【0232】
図12は、PBS/10%FBS中の表10の幾つかのポリマーの粒径挙動を時間の関数として示したグラフである。PEG 2kDa及び10%血清を対照として使用した。粒径は、各試料で24時間一定であり、このことは、ポリマーA−7、A−8、A−9、A−10及びA−11によって凝集が生じないことを示している。各試料で観察された平均粒径は10nm〜15nmの範囲であった。
【0233】
図13は、表9の以下のジブロック・ポリマーのPBS/10%FBS中の時間の関数としての粒径挙動を示すグラフである:D−3(3−アミノプロパノールから誘導される、m=50、n=20)、D−4(3−アミノプロパノールから誘導される、m=50、n=10)、D−5(1−アミノ−2−プロパノールから誘導される、m=50、n=20)、D−7(セリノールから誘導される、m=50、n=20)及びD−8(セリノールから誘導される、m=50、n=10)。8時間未満の著しい凝集は、これらのポリマーでは観察されなかった。D−3及びD−7を用いて得られた平均粒径は、最初の24時間にわたって約10nm〜20nmの範囲であり、その後、48時間では、それぞれ約110nm及び約30nmに増加した。D−8を用いて得られた平均粒径は、8時間にわたって約10nm〜20nmの範囲であり、その後、48時間では、約170nmに増加した。D−4を用いて得られた平均粒径は、最初の24時間では、75nmから約30nmの間で変動し、その後、48時間では、約130nmに増加した。D−5を用いて得られた平均粒径は、最初の3時間では、70nmから約20nmの間で変動し、その後、48時間まで30nm未満のままであった。
【0234】
図14は、表9の以下のジブロック・ポリマーのPBS/10%FBS中の時間の関数としての粒径挙動を示すグラフである:D−1(2−アミノエタノールから誘導される、m=50、n=20)、D−2(2−アミノエタノールから誘導される、m=50、n=10)、D−6(1−アミノ−2−プロパノールから誘導される、m=50、n=20)、D−9((±)−3−アミノ−1,2−プロパンジオールから誘導される、m=50、n=20)及びD−10((±)−3−アミノ−1,2−プロパンジオールから誘導される、m=50、n=10)。D−1を用いて得られた平均粒径は、最初の3時間で約100nmのプラトーまで増加し、それは48時間続いた。D−2を用いて得られた平均粒径は、約175nmのピークまで増加し、48時間では約150nmに減少した。D−6を用いて得られた平均粒径は、1時間で約325nmのピークまで増加し、その後、48時間では、約20nmに減少した。D−9を用いて得られた平均粒径は、最初の3時間で約120nmのプラトーまで増加し、それは48時間続いた。D−10を用いて得られた平均粒径は、最初の2時間で約150nmのピークまで増加し、48時間では約130nmに減少した。
【0235】
表8の一連のポリマーの粒径データによれば、1又は2個のヒドロキシ基を有する非荷電の親水性繰り返し単位の大部分を含むポリカルボナートは、無毒であり、血清中でステルス性を有し、これらのポリマーを疎水性治療薬用の分散剤として魅力的なものにしている。モノオール、ジオール又はそれらの混合物は、開環重合の開始剤として利用することができる。親水性カルボナート繰り返し単位の各々は、アミドカルボニルがポリマー骨格に結合するアミド側鎖を有する。アミド側鎖は、3〜5個の炭素、1個のアミド基、及び1〜2個のヒドロキシ基を含むことができる。好ましくは、アミド側鎖は、2個のヒドロキシメチレン基(*−CH−OH)を含む。
【0236】
非荷電の疎水性の第2のポリマー・ブロックを含む、表9の一連のポリマーの粒径データによれば、これらのポリマーも血清成分に対してステルス性を有することができる。D−7及びD−8は、D−9及びD−10に比べて観察される凝集が少なく、このことは、2個のヒドロキシメチレン基を含む側鎖が、1個のヒドロキシメチレン基及び1個のヒドロキシメチン基を含むジオール側鎖よりも血清成分と適合し得ることを示している。
【0237】
【化47】
【0238】
したがって、表9のポリマーも疎水性治療薬(例えば、遺伝子、タンパク質、ペプチド、薬物及びそれらの組合せ)用の分散剤として魅力がある。親水性繰り返し単位は、併用することができる。疎水性繰り返し単位も併用することもできる。
【0239】
本明細書で使用する用語は、具体的な実施形態を記述するためのものにすぎず、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される際に、単数形「a)、「an」及び「the」は、文脈が特段に明確に示すのでない限り、複数形も含むものとする。さらに、「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」又はその両方の用語を本明細書で使用する際には、示した特徴、整数、ステップ、操作、要素若しくは成分又はそれらの組合せの存在を明示するが、1つ若しくは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、成分又はそれらのグループ又はそれらの組合せの存在又は追加を排除しないことを理解されたい。2つの数値限界X及びYを用いて、可能な値を表現するために範囲を使用する際には(例えば、濃度Xppm〜Yppm)、別段の記載がない限り、値は、X、Y、又はXとYの間の任意の数とすることができる。
【0240】
本発明の記述は、例示及び説明のために提示されてきたが、網羅すること、又は開示された形態での本発明に限定することを意図するものではない。多数の改変及び変形が本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明白になろう。実施形態は、本発明の原理、及びその実際の適用を最も良く説明し、他の当業者が本発明を理解できるように、選択され、記述されたものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2017年4月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)のカルボナート繰り返し単位を含むポリマーであって、
【化1】
式中、
R’は、2〜4個の炭素及び1〜2個のヒドロキシ基を含む一価の基であり、
R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される一価の基であり、
前記ポリマーが非荷電であり、
前記ポリマーが水に可溶性である、
ポリマー。
【請求項2】
R’が、
【化2】
からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーの数平均分子量(Mn)は、約1500以上である、請求項1又は請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーは、構造I’−O−*を有するポリマー末端基に末端繰り返し単位によって結合した1本のポリマー分枝を含み、前記ポリマー分枝は、前記カルボナート繰り返し単位のホモポリマーであり、I’は、1〜20個の炭素を含む、請求項1から3のいずれかに記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーは、式(1a)の構造を有し、
【化3】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化4】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリマーは、構造I’−O−*を有するポリマー末端基に末端繰り返し単位によって結合した1本のポリマー分枝を含み、前記ポリマー分枝は、前記カルボナート繰り返し単位と非荷電疎水性の第2の繰り返し単位とのランダム・コポリマーであり、I’は、1〜20個の炭素を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリマーは、式(2)の構造を有するランダム・コポリマーであり、
【化5】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
各T’は、1〜6個の炭素を含む独立した一価の基であり、
各T”は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R’は、
【化6】
からなる群から選択される、
請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
前記ポリマーは、構造I’−O−*を有するポリマー末端基に末端繰り返し単位によって結合した1本のポリマー分枝を含み、前記ポリマー分枝は、第2のブロックに結合した第1のブロックを含むジブロック・コポリマーであり、前記第1のブロックは、前記カルボナート繰り返し単位を含み、前記第2のブロックは、非荷電疎水性の第2の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
前記ポリマーは、式(3)の構造を有するジブロック・コポリマーであり、
【化7】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T’は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化8】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーは、2本のポリマー分枝を含み、前記2本のポリマー分枝は、それぞれの末端繰り返し単位によって、構造*−O−I”−O−*を有する二価の連結基に結合し、I”は、2〜20個の炭素を含み、前記2本のポリマー分枝の各々は、前記カルボナート繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項11】
前記ポリマーは、式(4)の構造を有し、
【化9】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I”は、2〜20個の炭素を含む二価の連結基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化10】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
請求項1に記載のポリマーと、
遺伝子、タンパク質、ペプチド、薬物、及びそれらの組合せからなる群から選択される医学的処置用治療薬と
を含む組成物であって、
前記ポリマーと前記治療薬とが、非共有結合性相互作用によって結合し、
前記組成物は、平均円直径約10nm〜約500nmの粒子として水中に分散可能であり、
前記組成物の水性混合物は、静脈内注射に適している、
組成物。
【請求項13】
前記ポリマーは、式(4)の構造を有し、
【化11】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I”は、2〜20個の炭素を含む二価の連結基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化12】
からなる群から選択される独立した一価の基であり、
前記ポリマーは、水に可溶性である、
請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマーは、式(3)の構造を有するジブロック・コポリマーであり、
【化13】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T’は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化14】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
水と、式(1)のカルボナートの第1の繰り返し単位を含むポリマーとを含む第1の混合物を形成すること
【化15】
[上式で、i)R’は、2〜4個の炭素及び1〜2個のヒドロキシ基を含む一価の基であり、ii)R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択され、iii)前記ポリマーは、前記水に可溶である]、
i)有機溶媒、水、及びそれらの組合せからなる群から選択される溶媒と、ii)遺伝子、タンパク質、ペプチド、薬物、及びそれらの組合せからなる群から選択される医学的処置用治療薬とを含む、第2の混合物を形成すること、
前記第1の混合物と前記第2の混合物とを組み合わせ、それによって第3の混合物を形成すること、及び
前記第3の混合物から有機溶媒を除去し、それによって、非共有結合性相互作用によって結合した前記ポリマーと前記治療薬とを含む粒子を形成し、前記粒子は、水中に分散可能であること
を含む方法。
【請求項16】
R’は、
【化16】
である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーは、式(4)の構造を有し、
【化17】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
I”は、2〜20個の炭素を含む二価の連結基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、
【化18】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーは、式(3)の構造を有するジブロック・ポリマーであり、
【化19】
式中、
mは、平均値が1を超える数であり、
nは、平均値が1を超える数であり、
I’は、1〜20個の炭素を含む一価の基であり、
各R”は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各R’は、水素、メチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T”は、1〜30個の炭素を含むアルキル基及び6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される独立した一価の基であり、
各T’は、
【化20】
からなる群から選択される独立した一価の基である、
請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】