特表2018-521065(P2018-521065A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特表2018-5210652,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの合成のための簡易化された拡張可能な方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-521065(P2018-521065A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの合成のための簡易化された拡張可能な方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 241/08 20060101AFI20180706BHJP
【FI】
   C07D241/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-500397(P2018-500397)
(86)(22)【出願日】2016年6月28日
(85)【翻訳文提出日】2018年2月26日
(86)【国際出願番号】EP2016064982
(87)【国際公開番号】WO2017005547
(87)【国際公開日】20170112
(31)【優先権主張番号】15176058.4
(32)【優先日】2015年7月9日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 エッセン レリングハウザー シュトラーセ 1−11
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ ブラウネ
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 ビッケンバッハ バーンホーフシュトラーセ 60
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ロスト
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 マンハイム エミール−ヘッケル−シュトラーセ 20アー
(72)【発明者】
【氏名】ユアゲン ビルツ
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 フライゲリヒト レッスィングシュトラーセ 11
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ホイスナー
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 エッパーツハウゼン ゲーテシュトラーセ 20アー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヨアヒム ハッセルバッハ
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 ゲルンハウゼン ドイチュオアデンシュトラーセ 6
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ コープラー
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 アルツェナウ ツェントグラーフェンヴェーク 12
(57)【要約】
本発明は、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの製造のための方法であって、以下の工程:a)メチオニンおよび極性プロトン性溶媒を含む反応混合物を145.0℃から169.5℃までの温度で加熱し、ここで、不活性ガス流を反応混合物の上またはその中に通過させる工程、b)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを得る工程を含む方法に関する。さらに、本発明は、反応混合物からの2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの単離のための方法であって、以下の工程:A1)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを含む反応混合物を、極性溶媒および水で希釈し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する工程、またはA2)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを含む反応混合物を、有機溶媒での事前の希釈なしに、圧力を維持してか、もしくは圧力を維持せずに、水でのみ希釈し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する工程、またはA3)反応混合物を、物質の添加なしに、ジケトピペラジンが結晶化を開始する温度、とりわけ135.0℃から145.0℃未満まで、好ましくは138.0℃から142.0℃までの温度が達成されるまで冷却するか、もしくは冷却させ、最後に、水の添加により希釈し、それにより冷却を行い、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する工程、B)A1)またはA2)またはA3)で得られた結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを固形物として分離し、溶媒、とりわけエチレングリコール、アセトンまたはメタノールで洗浄し、最後に、水で洗浄する工程を含む方法に関する。とりわけ、本発明は、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの製造のための方法と、反応混合物からの2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの単離のための方法の組み合わせに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの製造のための方法であって、以下の工程:
a)メチオニンおよび極性プロトン性溶媒を含む反応混合物を145.0℃から169.5℃までの温度で加熱し、ここで、不活性ガス流を、反応混合物の上方またはその中に通過させる工程、
b)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを得る工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
工程a)の温度は、最大で169.5℃、好ましくは最大で169.0℃、さらに好ましくは最大で168.0℃、さらにより好ましくは最大で166.0℃、特に好ましくは最大で165.0℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の温度は、145.0℃から169.0℃まで、好ましくは145.0℃から168.0℃まで、さらに好ましくは145.0℃から166.0℃まで、特に好ましくは145.0℃から165.0℃までである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程a)の温度は、155.0℃から169.5℃まで、好ましくは155.0℃から169.0℃まで、さらに好ましくは155.0℃から168.0℃まで、さらにより好ましくは155.0℃から166.0℃まで、特に好ましくは155.0℃から165.0℃までである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程a)の温度は、160.0℃から169.5℃まで、好ましくは160.0℃から169.0℃まで、さらに好ましくは160.0℃から168.0℃まで、さらにより好ましくは160.0℃から166.0℃まで、特に好ましくは160.0℃から165.0℃までである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応混合物中のメチオニンの初期濃度は、20質量%から60質量%までである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応混合物中のメチオニン対極性プロトン性溶媒の初期の混合比(w/w)は、1:4から4:1まで、とりわけ1:4から1.5:1までである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
極性プロトン性溶媒は、多価アルコール、とりわけ二価アルコールまたは三価アルコール、さらに好ましくは2個から4個までの炭素原子、とりわけ2個または3個の炭素原子を有する多価アルコール、とりわけ二価アルコールまたは三価アルコールであり、ここで、極性プロトン性溶媒は、さらにより好ましくは、グリコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリンおよびブタンジオールからなる群から選択されるものであり、特に好ましくはエチレングリコールである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
使用された極性プロトン性溶媒の少なくとも一部、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも90%、殊に好ましくは少なくとも91%を再循環させる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
不活性ガス流を反応混合物の上に通過させて、反応で生じた水を反応混合物から除去する、請求項1から9までのいずれか1項に記載に方法。
【請求項11】
不活性ガス流を反応混合物の中に通過させて、反応で生じた水を反応混合物から除去し、ここで、不活性ガスは、反応混合物への導入時に少なくとも100.0℃、好ましくは少なくとも120.0℃、さらに好ましくは少なくとも145.0℃、さらにより好ましくは少なくとも155.0℃、特に好ましくは少なくとも160.0℃の温度を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
不活性ガスとして、窒素、二酸化炭素、低酸素空気(希薄空気)、燃焼ガスまたは希ガス、とりわけアルゴンまたはヘリウムを使用する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
c1)反応混合物を、極性溶媒および水での希釈により100.0℃未満に冷却し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化するか、または
c2)反応混合物を、圧力を維持して、もしくは圧力を維持しないで、有機溶媒での事前の希釈なしに水での希釈によってのみ冷却し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化するか、または
c3)反応混合物を、物質の添加なしに、ジケトピペラジンが結晶化を開始する温度、とりわけ135.0℃から145.0℃未満まで、好ましくは138.0℃から142.0℃までが達成されるまで冷却するか、もしくは冷却させ、最後に、水の添加により希釈して、さらに冷却し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する、
請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程c1)において、反応混合物を、反応後または反応の終了時に、極性溶媒、とりわけエチレングリコールで希釈し、引き続き、水で希釈し、ここで、100.0℃未満、好ましくは95.0℃から98.0℃までに冷却し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを固形物として分離し、エチレングリコール、アセトンまたはメタノールで洗浄して、引き続き、水で有機溶媒残留物を除去する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの洗浄に使用された溶媒を少なくとも部分的に再循環させる、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
反応混合物からの2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの単離のための方法であって、以下の工程:
A1)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを含む反応混合物を、極性溶媒および水で希釈し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する工程、または
A2)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを含む反応混合物を、有機溶媒での事前の希釈なしに、圧力を維持してか、もしくは圧力を維持せずに、水でのみ希釈し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する工程、または
A3)反応混合物を、物質の添加なしに、ジケトピペラジンが結晶化を開始する温度、とりわけ135.0℃から145.0℃未満まで、好ましくは138.0℃から142.0℃までが達成されるまで冷却するか、もしくは冷却させ、最後に、水の添加により希釈して、それにより冷却を行い、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する工程、
B)A1)またはA2)またはA3)で得られた結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを固形物として分離して、溶媒、とりわけエチレングリコール、アセトンまたはメタノールで洗浄し、最後に水で洗浄する工程
を含む、前記方法。
【請求項18】
式(I)
【化1】
を有する2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの製造のための方法であって、
以下の工程:
a)メチオニンおよび極性プロトン性溶媒を含む反応混合物を、170.0℃未満の温度で加熱し、ここで、不活性ガス流を反応混合物の上またはその中に通過させ、好ましくは反応混合物の上に通過させて、反応で生じた水を反応混合物から除去する工程、
b)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(式(I))を得る工程、
c1)反応混合物を、極性溶媒および水で希釈して、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(式(I))を結晶化させる工程、または
c2)反応混合物を、有機溶媒での事前の希釈なしに、圧力を維持してか、もしくは圧力を維持せずに、水でのみ希釈して、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(式(I))を結晶化させる工程、または
c3)反応混合物を、物質の添加なしに、ジケトピペラジンが結晶化を開始する温度、とりわけ135.0℃から145.0℃未満まで、好ましくは138.0℃から142.0℃までの温度が達成されるまで冷却するか、もしくは冷却させ、最後に、水の添加により希釈し、それにより冷却を行い、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(式(I))を結晶化させる工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本発明は、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの新規の化学合成に関する。
【0002】
先行技術
2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(met−DKP)の製造に関しては、先行技術において種々の方法が確立されている。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第3,980,653号明細書(US3,980,653)の特許は、メチオニンヒダントインとメチオニンを160℃および初めに9.5barの圧力で反応させる3,6−ビス−(2−メチルメルカプトエチル)−2,5−ピペラジンジオン(メチオニンジケトピペラジン)の製造のための方法を開示している。相応のジケトピペラジンは、結晶化により単離された。
【0004】
国際公開第2010/043558号(WO2010/043558)は、N−カルバモイル−メチオニン、N−カルバモイルメチオニンアミド、メチオニルヒダントイン、メチオニンアミド、3−(メチルメルカプト)プロピオンアルデヒドシアノヒドリン、3−(メチルメルカプト)プロピオンアルデヒドまたはメチオニンニトリルの変換によるメチオニンジケトピペラジンの製造のための方法を開示している。
【0005】
さらに、文献には、溶媒としてのエチレングリコールまたはグリセリン中、2種のアミノ酸の直接二量化/縮合によるDKPの合成のための方法であって、170℃から175℃まで、またはそれよりも高い温度で実施される方法が記載されている(H.R.Bentley et al.Pr.Roy.Soc.<B>1951,138,265;Sannie,Bull.Soc.Chim.1942,9(5),487.Maillard,Compt.rend.153,1078(1911);Ann.chim.et phys.[9]1,521(1914);2,210(1914);4,225(1915);Balbiano,Atti accad.Lincei,23,I,893(1914),ibid.,24,I,822,936(1915))。この様な高い温度でメチオニンまたはメチオニン類似物を使用する場合、多数の不純物が形成され、その不純物は、費用のかかる、生産規模では実現不可能な後処理によって低減される必要があることは好ましくない。
【0006】
代替的に、先行技術では、例えばホスゲンの使用により反応速度を高める方法が記載されている(A.D.Borthwick Chem.Rev.2012,112,3641;A.Gonzalez et al.Tetrahedron Asymmetry 1995,6,1357;V.A.Basiuk et al.Synthesis 1992,5,449;V.Santagada et al.Tetrahedron Lett.2003,44,1145;M.Jainta et al.Eur.J.Org.Chem.2008,32,5418)。しかし、相応のコストプッシュを伴う工業的生産にとって、プロセスに関係のない(prozessfremd)、場合によっては毒性の高いさらなる成分を加えることに関心が持たれない。
【0007】
出発物質であるメチオニンは、生産の観点から、他の、活性化された化合物、例えばメチオニンメチルエステルよりも好ましい、それというのは、メチオニンは、商業的に入手しやすく、活性化には、1つの追加的なプロセス工程を要するからである。メチオニンメチルエステルを出発点とする2,5−ジケトピペラジンの合成は、すでに1972年の出願公開明細書である独国特許出願公開第2261926号明細書(DE2261926)に開示されている。その中では、メチオニンのイソプロピルエステルの加熱により、3,6−ビス[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(メチオニンジケトピペラジン、DKP)が形成されることが開示されている。Baker,D.H. et al.(Journal of Nutrition,Band 114,Nr.2,1984,292〜297ページ)の刊行物も、ジケトピペラジンの製造のためのこの方法に関している。しかし、メチオニンイソプロピルエステルを出発材料として使用することは、過度に費用がかかり、それゆえ、経済的ではない。
【0008】
きわめて費用がかかり、本来は実験室規模にのみ実現可能な、混合生成物の後処理に関する種々の説明は、さまざまな出典に記載されており、それらは、1942年のSannieの刊行物を引用している。以下の出版物は、他のDKP誘導体の合成を記載している:Arthur Vogel,Textbook of practical organic chemistry(4.ed.rev.);Longman,1981,New York,909;H.F.Schott J.Org.Chem.1947,12,490。
【0009】
発明の課題
本発明の課題は、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの製造のための、新規の比較的容易かつ経済的な、生産規模で実現可能な方法を提供することであった。
【0010】
発明の説明
本発明の第一の態様では、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの製造のための方法であって、以下の工程:
a)メチオニンおよび極性プロトン性溶媒を含む反応混合物を、170.0℃未満の温度で加熱し、ここで、不活性ガス流を反応混合物の上またはその中に通過させる工程、
b)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを得る工程
を含む方法が提供される。
【0011】
本発明によれば、メチオニンを反応させてDKPにする際の反応温度は、170.0℃未満である。それに反して先行技術に記載の方法は、170℃から175℃まで、またはそれよりも高い温度で実施される。この高い温度でメチオニンを使用する場合、多数の不純物が形成され、その不純物は、費用のかかる、生産規模では実現不可能な後処理によって低減される必要がある。同等の反応時間でのより温和な反応条件によって、本発明による方法では、形成される副生成物が明らかにより少なく、これは、反応混合物の色で認識できる。したがって、本発明による方法の特別な利点は、得られたジケトピペラジンの純度である。このことが、結晶化による反応混合物からの容易で迅速な、したがって経済的な精製を可能にする。
【0012】
さらなる好ましい方法では、工程a)の温度は、最大で169.5℃、好ましくは最大で169.0℃、さらに好ましくは最大で168.0℃、さらにより好ましくは最大で166.0℃、特に好ましくは165.0℃である。
【0013】
とりわけ、工程a)の温度が、145.0℃から169.5℃まで、好ましくは145.0℃から169.0℃まで、さらに好ましくは145.0℃から168.0℃まで、さらにより好ましくは145.0℃から166.0℃まで、特に好ましくは145.0℃から165.0℃までであることが好ましい。
【0014】
工程a)の温度が、155.0℃から169.5℃まで、好ましくは155.0℃から169.0℃まで、さらに好ましくは155.0℃から168.0℃まで、さらにより好ましくは155.0℃から166.0℃まで、特に好ましくは155.0℃から165.0℃までであることがさらに好ましい。
【0015】
さらに特に好ましい方法では、工程a)の温度は、160.0℃から169.5℃まで、好ましくは160.0℃から169.0℃まで、さらに好ましくは160.0℃から168.0℃まで、さらにより好ましくは160.0℃から166.0℃まで、特に好ましくは160.0℃から165.0℃までである。
【0016】
反応温度の効果に関しては、より詳細な試験が実施された。それによって、反応の速度は、約175℃の温度の場合に最適とされることが確かに判明した。しかし、すでに上で説明した通り、本発明により適用される温度を上回る温度では、付随する重合反応および分解反応が著しい。この際、不所望の不純物が生じ、その不純物は、比較的大きい労力、ひいては比較的高い費用をかけて除去される必要がある。さらに、180℃から210℃までの温度ではすでに、技術的方法には禁止的とされる激しい分解反応が起きうることが判明した。本発明による方法により、分解の開始温度に対する最小差異を保つことができる。したがって、本発明による方法は、より温和な反応条件で実施され、それによって、形成される副生成物も明らかにより少ないが、これまでと同様に許容可能な転化時間で実施される。
【0017】
好ましい方法では、反応混合物中のメチオニンの初期濃度は、20質量%から60質量%まで、特に好ましくは30質量%から50質量%までである。ここで、反応混合物中のメチオニン対極性プロトン性溶媒の初期混合比(w/w)は、好ましくは1:4から4:1まで、とりわけ1:4から1.5:1までである。この好ましいパラメーターの維持は、以下に記載の、反応後の反応溶液の希釈により引き起こされる生成物の結晶化に好影響を与える。
【0018】
反応混合物中のメチオニンの初期濃度の60質量%を上回ると、反応の速度は明らかに低下する。このことは、DKPが同一の反応器内で形成されて結晶化されるプロセス実施に起因する。メチオニンの濃度が比較的高い場合、反応中の体積は比較的小さく、不活性ガスの移行の有効性は比較的低い。代替的な方法では、メチオニンの初期濃度は、60質量%を上回っていてもよく、ここで、DKPは、別個の反応器内で形成されて、結晶化される。
【0019】
好ましい方法では、反応混合物として、実質的に極性プロトン性溶媒とメチオニンからなる混合物が使用される。
【0020】
さらに好ましい方法では、極性プロトン性溶媒は、多価アルコール、とりわけ二価アルコールまたは三価アルコールである。さらに好ましくは、極性プロトン性溶媒は、2個から4個までの炭素原子、とりわけ2個または3個の炭素原子を有する多価アルコール、とりわけ二価アルコールまたは三価アルコールである。さらに好ましくは、極性プロトン性溶媒は、グリコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリンおよびブタンジオールからなる群から選択されるものであり、特に好ましくはエチレングリコールである。さらに、多価アルコールの混合物、とりわけ、エチレングリコールとグリセリンからの混合物が極性プロトン性溶媒として使用されてよい。さらに、溶媒としては、2個から4個までの炭素原子、とりわけ2個または3個の炭素原子を有する1つまたは複数の多価アルコール、とりわけ二価アルコールまたは三価アルコールと、180℃超の沸点を有する他の有機溶媒からの混合物が使用されてよい。
【0021】
さらに好ましい方法では、使用される極性プロトン性溶媒は、少なくとも部分的に再循環される。さらに、使用される極性プロトン性溶媒の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも90%、殊に好ましくは少なくとも91%が再循環されることが好ましい。溶媒の高い回収率およびその再利用によって費用が下げられる。
【0022】
極性プロトン性溶媒、とりわけ上に記載の多価アルコールは、メチオニン分子のカルボキシル基の活性化試薬として用いられ、ここで、おそらく相応のエステルが中間生成され、そのエステルは、所定の反応条件下に、第二のメチオニン分子のアミノ基と反応する。引き続いて、相応のジケトピペラジンをもたらす環化が同じように行われる。これらの反応条件下では、六員環をもたらす分子内反応が速度的に有利であるため、反応は、ジペプチドの中間段階で停止させることはできない。理論に縛られることなく、最初に、メチオニン−ジペプチドが形成され、これが、次に、直接またはさらなる活性化の後に、環化してDKPをもたらすと考えられる。反応の初めに、反応混合物中には、懸濁液が存在しており、その懸濁液から、転化の進行とともに溶液が形成される。その溶液から、反応の終了後に、さらに下に記載の通り、DKPが結晶化される。
【0023】
さらに、本発明による方法の工程a)は、1時間から48時間まで、好ましくは1時間から24時間まで、さらに好ましくは1時間から15時間まで、特に好ましくは4時間から7時間までの間、実施されるのが好ましい。
【0024】
本発明によれば、不活性ガス流を反応混合物の上またはその中に通過させる。
【0025】
本発明による方法の1つの方法別形では、不活性ガス流を反応混合物の上に(中ではない)通過させる。不活性ガス流を「反応混合物の上に」通過させるという措置は、この不活性ガス流が、反応混合物の液位の上方を運ばれることを意味する。このことは、不活性ガス流が、反応混合物中に導入されるか、またはこの反応混合物の中を通って運ばれるのではないことを意味する。
【0026】
本発明による方法の代替的な方法別形では、不活性ガス流を反応混合物の中に通過させる。不活性ガスの通過による反応混合物の冷却を回避するために、もしくは、反応混合物を所望の温度に保つか、またはこの温度に上げるために、不活性ガスは、反応混合物への導入時に、少なくとも100.0℃、好ましくは少なくとも120.0℃、さらに好ましくは少なくとも145.0℃、さらにより好ましくは少なくとも155.0℃、特に好ましくは少なくとも160.0℃の温度を有する。
【0027】
この措置(不活性ガス流を反応混合物の上もしくは反応混合物の上方、または反応混合物の中に通過させること)は、二重縮合の際に放出される水を非共沸蒸留を用いて平衡から除去して、許容可能な反応時間を実現するために用いられる。不活性ガス流に接触させない場合、反応時間は、許容できないほどに、日数規模で長くなるであろう。不活性ガス流に関しては、不活性ガスとして、窒素、二酸化炭素、低酸素空気(希薄空気)、燃焼ガスまたは希ガス、例えばアルゴンまたはヘリウムが使用されるのが好ましい。特に好ましい方法では、窒素が不活性ガスとして使用される。
【0028】
本発明による方法の特別な利点は、得られたジケトピペラジンの純度である。このことは、直接結晶化による反応混合物からの容易かつ迅速な精製を可能にする。したがって、本発明による方法では、先行技術の方法と比べて、不純物を低減するために、結晶化前に抽出を実施する必要がない。本発明による方法の好ましい実施形態では、反応混合物を、反応の終了後または終了時に、極性溶媒および水で希釈して、100.0℃未満に冷却する。ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する。ここで、結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを固形物として分離し、エチレングリコール、アセトンまたはメタノールで白色になるまで洗浄して、最後に、水で有機溶媒残留物を除去することができる。一般的に、生成り色(wollweiss)の生成物が得られる。ここで、固形物は、有利には、加圧フィルタープレス、遠心分離機、ベルトろ過器または同等の固液分離装置で分離することができる。固形物の分離は、有利には、したがって好ましくは、室温で行われる。
【0029】
本発明による方法では、反応混合物の希釈のための極性溶媒として、好ましくは、反応時に反応混合物中で使用されたものと同じ溶媒が使用される。好ましくは、極性溶媒は、極性プロトン性溶媒、特に好ましくは多価アルコール、とりわけ二価アルコールまたは三価アルコールである。さらに好ましいのは、極性溶媒は、2個から4個までの炭素原子、とりわけ2個または3個の炭素原子を有する多価アルコールである。さらに好ましくは、極性溶媒は、グリコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリンおよびブタンジオールの群から選択されるものであり、好ましくはエチレングリコールである。さらに、多価アルコールの混合物、とりわけエチレングリコールとグリセリンからの混合物が、極性溶媒として使用されてよい。
【0030】
本発明のさらに好ましい方法では、反応混合物を、反応後または反応の終了時に極性溶媒、特に好ましくはエチレングリコールで希釈し、引き続き、水で希釈し、ここで、反応混合物は、100.0℃未満、好ましくは95.0℃から98.0℃までに冷却され、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する。
【0031】
特に好ましくは、反応混合物を、極性溶媒、殊に好ましくはエチレングリコールで希釈し、ここで、125.0℃から135.0℃までに冷却し、引き続き、水で希釈し、ここで、100.0℃未満、好ましくは95.0℃から98.0℃までに冷却し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する。
【0032】
希釈の際、反応混合物に添加される極性溶媒、とりわけエチレングリコール対添加される水の比(w/w)は、好ましくは1:4から4:1まで、とりわけ4:3から3:1までである。
【0033】
希釈工程に関しては、極性溶媒での希釈前もしくは希釈の開始時の反応混合物の温度は、少なくとも145.0℃、好ましくは少なくとも150.0℃、さらに好ましくは少なくとも155.0℃、さらにより好ましくは少なくとも160.0℃であることが好ましい。
【0034】
反応混合物の希釈により、その冷却が行われる。それにより反応も終了する。開始濃度に応じて、溶液がかろうじて存在しているか、もしくは第一の結晶が沈殿するのに充分な量の溶媒が添加されてよい。2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの結晶化は、水の添加時の極性の変化により開始される。水での希釈は、さらなる取り扱いに好適な結晶構造を有する結晶性の2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの形成を保証する。結晶性の2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンは、次に固形物として分離されて、エチレングリコール、アセトンまたはメタノールで白色になるまで洗浄され、最後に、水で有機溶媒残留物を除去することができ、このことは、有利には、したがって好ましくは、室温で行われる。
【0035】
代替的な実施形態では、反応混合物を、反応の終了後または終了時に有機溶媒での事前の希釈なしに、水でのみ希釈することにより冷却し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する。水の添加は、反応混合物が、とりわけ135.0℃以下、好ましくは120.0℃以下、さらに好ましくは110.0℃以下、さらより好ましくは100.0℃未満に冷却されるように調節することができる。
【0036】
ここで、反応混合物の希釈および冷却のための水の添加は、圧力を維持して行われるか、または圧力を維持せずに行われてよい。
【0037】
反応混合物の希釈および冷却が、有機溶媒での事前の希釈なしに水の添加によってのみ、圧力を維持して行われる場合、水の添加は、反応混合物が、とりわけ100.0℃超から135.0℃まで、好ましくは100.0℃超から120.0℃まで、特に好ましくは100.0℃超から110.0℃までに冷却され、100.0℃未満へのさらなる冷却が、大気圧への放圧により行われるように調節される。好ましい実施形態では、反応混合物の希釈および冷却のための水の添加は、0.0barから7.0barまでの正圧、好ましくは0.0barから3.0barまでの正圧、特に好ましくは0.0barから2.0barまでの正圧がかかるように調節される。
【0038】
希釈のため、および冷却のために水を添加する際の圧力維持の措置の利点は、とりわけ、この手法の場合に、反応混合物の冷却に使用する水をより少なくできることにある。その理由は、反応混合物が大気圧への放圧時にさらに冷却されるからである。同時に、それによって、蒸留される母液中の水の残量がさらに低下する。反応後に反応混合物を100.0℃を上回る温度に冷却するための水の添加が、圧力維持して行われる(好ましくは最大7.0bar、さらに好ましくは最大3.0bar、さらにより好ましくは最大2.0barの正圧)という、この方法別形によれば、反応混合物の冷却のために添加されなければならない水は、100.0℃未満の温度に直接冷却されなければならない場合よりも少ない。したがって、圧力維持の場合、添加されなければならない水はより少ない、それというのは、圧力の大気圧への放圧時に、反応混合物は、水の蒸発エンタルピーによって100.0℃以下にさらに冷却されるからである。ここで、水の一部が取り除かれ、それによって、母液中の含水率は、その場合、第一の場合よりも少ない。このことは、母液の再蒸留の際に費用をより少なくするか、もしくは所要時間をより少なくする。
【0039】
結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンは、固形物として分離され、エチレングリコール、アセトンまたはメタノールで白色になるまで洗浄されて、最後に、水で有機溶媒残留物を除去することができる。この実施形態の場合、希釈工程に関しては、水での希釈前もしくは希釈の開始時の反応混合物の温度が、少なくとも145.0℃、好ましくは少なくとも150.0℃、さらに好ましくは少なくとも155.0℃、さらにより好ましくは少なくとも160.0℃であることが好ましい。
【0040】
さらなる代替的な実施形態では、反応混合物を、反応の終了後または終了時に、物質の添加なしに、ジケトピペラジンが結晶化を開始する温度、とりわけ135.0℃から145.0℃未満まで、好ましくは138.0℃から142.0℃までの温度が達成されるまで冷却するか、または冷却させて、最後に、水の添加により希釈して、さらに冷却する。ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化し、これは、固形物として分離され、エチレングリコール、アセトンまたはメタノールで白色になるまで洗浄されて、最後に、水で有機溶媒残留物を除去することができる。
【0041】
水で実施される洗浄工程は、その前に抽出に使用された極性溶媒を低減するために用いられる。生成物の洗浄に使用される溶媒は、同様に再び蒸留されて、返送されてよい。したがって、さらに好ましい方法では、結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの洗浄に使用された溶媒は、少なくとも部分的に再循環される。ここで、洗浄に使用された溶媒の再利用率は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも97%であってよい。
【0042】
ここで、得られた固形物は、有利には、加圧フィルタープレス、遠心分離機、ベルトろ過器または同等の固液分離装置で分離することができ、これは、有利には、したがって好ましくは、室温で行われる。
【0043】
結晶性の2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの洗浄のために、使用された溶媒が使用されてよいが、好ましくは、反応混合物中で使用されるものとは異なる極性溶媒が使用される。好ましくは、結晶性の2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの洗浄のための極性溶媒として、ニトリル、とりわけアセトニトリル、環式および非環式カルボン酸エステル、とりわけエチルアセテート、芳香族溶媒、とりわけトルエン、環式および非環式カルボン酸アミド、とりわけジメチルホルムアミド(DMF)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、炭酸エステル、とりわけ炭酸ジメチル、環式および非環式エーテル、とりわけテトラヒドロフラン(THF)および2−メトキシ−2−メチルプロパン(MTBE)、ケトン、とりわけアセトン、スルホキシド、とりわけジメチルスルホキシド(DMSO)、アミン、とりわけトリエチルアミン、カルボン酸、とりわけ酢酸、塩素化炭化水素、とりわけジクロロメタンおよびクロロホルム、アルコール、とりわけメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコールからなる群から選択される極性溶媒、好ましくはアセトンまたはメタノールが使用される。
【0044】
本発明の第二の態様
すでに説明した通り、本発明の特別な利点は、本方法により得られるジケトピペラジンの純度である。反応の最後の生成物の純度は、直接結晶化による反応混合物からの容易かつ迅速な精製を可能にする。すでに上に記載の通り、本方法の好ましい実施形態では、反応混合物を、反応の終了後もしくは終了時に、極性溶媒および水で希釈して100.0℃未満に冷却するか、または有機溶媒での事前の希釈を行わずに水でのみ希釈するか、または物質の添加なしに、ジケトピペラジンが結晶化を開始する温度が達成されるまで冷却するか、もしくは冷却させて、最後に、水の添加により希釈して冷却する。ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化し、これは、固形物として分離され、エチレングリコール、アセトンまたはメタノールで白色になるまで洗浄されて、最後に、水で有機溶媒残留物を除去することができる。
【0045】
したがって、本発明は、第二の態様において、反応混合物からの2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの単離のための方法であって、以下の工程:
A1)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを含む反応混合物を、極性溶媒および水で希釈し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する工程、または
A2)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを含む反応混合物を、有機溶媒での事前の希釈なしに、圧力を維持してか、もしくは圧力を維持せずに、水でのみ希釈し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する工程、または
A3)反応混合物を、物質の添加なしに、ジケトピペラジンが結晶化を開始する温度、とりわけ135.0℃から145.0℃未満まで、好ましくは138.0℃から142.0℃までの温度が達成されるまで冷却するか、もしくは冷却させて、最後に、水の添加により希釈し、それにより冷却を行い、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する工程、
B)A1)またはA2)またはA3)で得られた結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンを固形物として分離して、溶媒、とりわけエチレングリコール、アセトンまたはメタノールで洗浄して、最後に、水で洗浄する工程
を含む方法を提供する。
【0046】
工程B)の水で実施される洗浄工程は、その前に抽出に使用された極性溶媒を低減するために用いられ、それにより、きわめて容易かつ有利に、高い純度の生成物が得られる。洗浄工程(工程B))で使用される溶媒は、同様に再び蒸留されて、返送されてよい。したがって、さらなる好ましい方法では、結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの洗浄に使用された溶媒は、少なくとも部分的に再循環される。ここで、洗浄に使用された溶媒の再利用率は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも97%であってよい。
【0047】
とりわけ別形A1によれば、容易に、追加費用なしに、さらに比較的短い滞留時間で高い純度の生成物が得られる。したがって、別形A1が特に有利である。
【0048】
ここで、工程B)の固形物は、有利には、加圧フィルタープレス、遠心分離機、ベルトろ過器または同等の固液分離装置で分離することができ、これは、有利には、およびしたがって好ましくは、室温で行われる。
【0049】
本発明の第二の態様による方法では、反応混合物は、反応がすでに行われたため、実質的に2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンと、最初に使用された極性プロトン性溶媒と、未反応のメチオニンと、場合によって水および反応の副生成物とからなる。
【0050】
本発明の第二の態様による方法では、工程A1)による反応混合物を希釈するための極性溶媒として、好ましくは、反応のための反応混合物中で使用されたものと同じ溶媒が使用される。好ましくは、極性溶媒は、極性プロトン性溶媒、特に好ましくは多価アルコール、とりわけ二価アルコールまたは三価アルコールである。さらに好ましくは、極性溶媒は、2個から4個までの炭素原子、とりわけ2個または3個の炭素原子を有する多価アルコールである。さらに好ましくは、極性溶媒は、グリコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリンおよびブタンジオールの群から選択されるものであり、好ましくはエチレングリコールである。さらに、多価アルコールの混合物、とりわけエチレングリコールとグリセリンからの混合物が、極性溶媒として使用されてよい。
【0051】
本発明の第二の態様のさらに好ましい方法では、工程A1)の反応混合物を、極性溶媒で希釈して、引き続き、水で希釈し、ここで、100.0℃未満、好ましくは95.0℃から98.0℃までに冷却し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する。
【0052】
本発明の第二の態様のさらなる殊に好ましい方法では、工程A1)の反応混合物を、エチレングリコールで希釈して、引き続き、水で希釈し、ここで、100.0℃未満、好ましくは95.0℃から98.0℃までに冷却し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する。
【0053】
本発明の第二の態様による方法では、希釈の際に、反応混合物に添加される極性溶媒、とりわけエチレングリコール対添加される水の比(w/w)は、好ましくは1:4から4:1まで、とりわけ4:3から3:1までである。
【0054】
本発明の第二の態様による方法では、工程A1)による希釈前もしくは希釈の開始時の反応混合物の温度は、少なくとも145.0℃、好ましくは少なくとも150.0℃、さらに好ましくは少なくとも155.0℃、さらにより好ましくは少なくとも160.0℃である。
【0055】
方法別形A2)によれば、反応混合物を、反応の終了後または終了時に、有機溶媒での事前の希釈なしに、水でのみ希釈することにより冷却し、ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化する。水の添加は、反応混合物が、とりわけ135.0℃以下、好ましくは120.0℃以下、さらに好ましくは110.0℃以下、さらにより好ましくは100.0℃未満に冷却されるように調節することができる。
【0056】
工程A2)では、反応混合物の希釈および冷却のための水の添加は、圧力を維持して行われるか、または圧力を維持せずに行われてよい。
【0057】
反応混合物の希釈および冷却が、有機溶媒での事前の希釈なしに、圧力を維持して、水の添加によってのみ行われる場合、水の添加は、反応混合物が、100.0℃超から135.0℃まで、好ましくは100.0℃超から120.0℃まで、特に好ましくは100.0℃超から110.0℃までの温度に冷却されて、100.0℃未満へのさらなる冷却が大気圧への放圧により行われるように調節される。好ましい実施形態では、反応混合物の希釈および冷却のための水の添加は、0.0barから7.0barまでの正圧、好ましくは0.0barから3.0barまでの正圧、特に好ましくは0.0barから2.0barまでの正圧がかかるように調節される。
【0058】
次に、結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンは、固形物として分離されて、エチレングリコール、アセトンまたはメタノールで白色になるまで洗浄されて、最後に、水で有機溶媒残留物を除去することができる。この実施形態では、希釈工程に関して、水での希釈前もしくは希釈の開始時の反応混合物の温度は、少なくとも145.0℃、好ましくは少なくとも150.0℃、さらに好ましくは少なくとも155.0℃、さらにより好ましくは少なくとも160.0℃であることが好ましい。
【0059】
工程A3)では、反応混合物を、反応の終了後または終了時に、物質の添加なしに、ジケトピペラジンが結晶化を開始する温度、とりわけ135.0℃から145.0℃未満まで、好ましくは138.0℃から142.0℃までの温度が達成されるまで冷却するか、または冷却させて、最後に、水の添加により希釈して、さらに冷却する。ここで、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンが結晶化し、これを、固形物として分離し、エチレングリコール、アセトンまたはメタノールで白色になるまで洗浄して、最後に、水で有機溶媒残留物を除去することができる。
【0060】
本発明の第二の態様による方法では、工程B)による結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの洗浄のための極性溶媒として、反応混合物中で使用されるものとは異なる溶媒が使用される。好ましくは、工程B)による結晶化した2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの洗浄のための極性溶媒として、ニトリル、とりわけアセトニトリル、環式および非環式カルボン酸エステル、とりわけエチルアセテート、芳香族溶媒、とりわけトルエン、環式および非環式カルボン酸アミド、とりわけジメチルホルムアミド(DMF)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、炭酸エステル、とりわけ炭酸ジメチル、環式および非環式エーテル、とりわけテトラヒドロフラン(THF)および2−メトキシ−2−メチルプロパン(MTBE)、ケトン、とりわけアセトン、スルホキシド、とりわけジメチルスルホキシド(DMSO)、アミン、とりわけトリエチルアミン、カルボン酸、とりわけ酢酸、塩素化炭化水素、とりわけジクロロメタンおよびクロロホルム、アルコール、とりわけメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコールからなる群から選択される極性溶媒、好ましくはアセトンまたはメタノールが使用される。
【0061】
2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの製造および単離のための全体的な方法
上で説明した通り、本発明は、第一の態様では、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの製造のための方法に関し、第二の態様では、反応混合物からの2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの単離のための方法を提供する。
【0062】
さらに、本発明は、本発明の第一および第二の態様の組み合わせに相応する方法を提供する。したがって、本発明は、とりわけ、式(I)
【化1】
を有する2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジンの製造のための方法であって、以下の工程:
a)メチオニンおよび極性プロトン性溶媒を含む反応混合物を、170.0℃未満の温度で加熱して、ここで、不活性ガスを反応混合物の上またはその中に通過させ、好ましくは反応混合物の上に通過させて、反応で生じた水を反応混合物から除去する工程、
b)2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(式(I))を得る工程、
c1)反応混合物を、極性溶媒および水で希釈して、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(式(I))を結晶化する工程、または
c2)反応混合物を、有機溶媒での事前の希釈なしに、圧力を維持してか、もしくは圧力を維持せずに、水でのみ希釈して、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(式(I))を結晶化する工程、または
c3)反応混合物を、物質の添加なしに、ジケトピペラジンが結晶化を開始する温度、とりわけ135.0℃から145.0℃未満まで、好ましくは138.0℃から142.0℃までの温度が達成されるまで冷却するか、もしくは冷却させて、最後に、水の添加により希釈し、それにより冷却を行い、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(式(I))を結晶化する工程
を含む方法に関する。
【0063】
本発明の第一および第二の態様の組み合わせによるこの方法は、相応して、第一および第二の態様に関して記載された好ましい実施形態、特徴、技術的効果および利点も含み、この箇所において参照される。
【0064】
メチオニンの活性化形態を用いない、2,6−ビス(メチオニル)−1,4−ジケトピペラジン(DKP)の製造のための方法を求めて、発明者は、メチオニンを出発点とする合成に注目した。すでに上で説明した通り、文献に記載の、溶媒としてのエチレングリコールまたはグリセリンにおける2種のアミノ酸の直接二量化/縮合によるDKPの合成は、170℃から175℃まで、またはそれより高い温度で行われる(H.R.Bentley et al.Pr.Roy.Soc.<B>1951,138,265;Sannie Bull.Soc.Chim.1942,9(5),487.Maillard,Compt.rend.153,1078(1911);Ann.chim.et phys.[9]1,521(1914);2,210(1914);4,225(1915);Balbiano,Atti accad.Lincei,23,I,893(1914),ibid.,24,I,822,936(1915))。しかし、この高い温度でメチオニンを使用する場合、同じく進行する重合反応および分解反応により多数の不純物が形成される。これらの不所望の不純物は、費用のかかる、生産規模では実現不可能な後処理により低減されるか、もしくは除去される必要がある。
【0065】
本発明の範囲では、後処理をきわめて簡易化することができたため、そのプロセスは、むしろ大規模工業的規模で使用できる。本発明によれば、DKPの合成で生じた不純物を最小限に抑えることができる。ここで、2つの措置が本発明に必須である:
i)工程a)におけるメチオニン反応させてDKPにする際の反応温度が、170.0℃未満であること。ここで、温度は、好ましくは最大で169.5℃、最大で169.0℃、最大で168.0℃、最大で166.0℃、最大で165.0℃である。とりわけ、以下の温度範囲が特に好ましい:160.0℃から169.5℃まで、160.0℃から169.0℃まで、160.0℃から168.0℃まで、160.0℃から166.0℃まで、殊に好ましいのは、160.0℃から165.0℃までの温度範囲である。
ii)さらに、本発明による方法の工程a)では、不活性ガス流、とりわけ窒素流を、反応混合物の上またはその中に通過させて、DKPの合成で放出される水を非共沸蒸留により平衡から除去すること。
【0066】
先行技術に記載の方法と比べて、本発明によるプロセスで用いられる比較的低い温度は、同等の反応時間でより温和な反応条件をもたらす。この措置は、直接的に生成物に好影響を与える、それというのは、ここで、形成される副生成物が明らかにより少ないからである。本発明による方法により得られるジケトピペラジンの比較的高い純度は、結晶化を用いる反応混合物からの比較的に容易で、迅速かつ経済的な分離および精製を可能にする。
【0067】
本発明による方法のさらなる利点は、先行技術において既存の反応器および装置の加熱手段もしくは加熱ジャケットが、一般に真空安定性を示すように設計されることにある。真空安定性を示すように設計されている装置は、一般に、約6barの範囲の圧力まで操作できる。これらの反応器および装置を使用する場合、ならびに水蒸気で加熱された加熱ジャケットもしくは加熱ループで約6barの範囲の圧力をかける場合、加熱時に、160.0℃から165.0℃までの本発明による方法に特に好ましい、および有利な温度が達成される。したがって、本発明による方法は、有利には、通常、この圧力に対して設計されている既存の装置を備える既存の多目的設備で実施することができる。
【0068】
本発明による方法は、以下の例により詳述されるが、ここに記載される発明を制限するものではないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】ジケトピペラジンの製造、結晶化および精製に関する図
【0070】
実施例
例1:DKP合成
ジケトピペラジンの合成は、以下の反応図の通りに行った:
【化2】
9.0kgのエチレングリコール(d=1.11g/ml)を20Lの反応器に装入して、撹拌しながら6.0kgのメチオニン(40.2mol)を加えた。ベージュ色の撹拌性の優れた懸濁液を165.0℃に加熱した。同時に、窒素流(200NL/h)を表面上に通過させて、形成された水を排出した。排ガスは、臭いが強く、毒性があり、15%の過酸化水素溶液が充填されたガス洗浄瓶で洗浄した。165.0℃で4時間の反応時間後、90%の転化率が観察され、合計6時間後は、95%の転化率であった。赤褐色の溶液が形成され、1.2kgの水−エチレングリコール混合物が排出された。
【0071】
後処理のために、さらなる4.0kgのエチレングリコールを、160.0℃の高温の反応混合物に加えた。それによって、混合物は、130.0℃に冷却された。130.0℃に冷却する際、DKPは結晶化を開始した。3.0kgの水の供給により、反応混合物は、95.0℃に冷却され(わずかな泡)、黄褐色のろ過性に優れた懸濁液が生じた。バッチを可能な限り迅速に室温に冷却した。
【0072】
懸濁液を加圧フィルタープレス(ろ紙MN616)で吸引ろ過した。代替的に、遠心分離機を使用することができる。生成り色のフィルターケーキ(φ29cm)をヌッチェで一度に13Lのアセトンで洗浄した。ケーキは、温浸しなかった。続いて、さらに、10Lの水で2回洗浄して、エチレングリコール含有率およびアセトン含有率を下げた。80%のDKP含有率を有する5.33kgの生成り色のDKP(16.3mol)を分離し、これは、80%の収率に相当するものであった。
図1
【国際調査報告】