特表2018-522106(P2018-522106A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-522106(P2018-522106A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(54)【発明の名称】加水分解性バインダ
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/14 20060101AFI20180713BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20180713BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20180713BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20180713BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20180713BHJP
   C08G 77/48 20060101ALN20180713BHJP
   C08G 77/42 20060101ALN20180713BHJP
   C08G 77/38 20060101ALN20180713BHJP
【FI】
   C09D183/14
   C09D5/16
   C09D7/61
   C09D7/41
   C09D171/02
   C08G77/48
   C08G77/42
   C08G77/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2017-568051(P2017-568051)
(86)(22)【出願日】2016年7月11日
(85)【翻訳文提出日】2018年2月23日
(86)【国際出願番号】EP2016066422
(87)【国際公開番号】WO2017009283
(87)【国際公開日】20170119
(31)【優先権主張番号】15176493.3
(32)【優先日】2015年7月13日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 エッセン レリングハウザー シュトラーセ 1−11
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フィーデル
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 45131 エッセン リュッテンシャイダー シュトラーセ 198
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ アレフ
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 45128 エッセン ヘルダーリンシュトラーセ 11
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク シック
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 47809 クレーフェルト アム ベッターショフ 18
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシュワ プラサド アイザ
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 45128 エッセン シューベルト シュトラーセ 41
(72)【発明者】
【氏名】ティム フレデリック スロート
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 45721 ハルターン アム ゼー ゾフィー ショル シュトラーセ 19
(72)【発明者】
【氏名】キム エーベルグ ヘッド
【住所又は居所】ノルウェー王国 3940 ポルスグルン タイタンベーゲン 21
(72)【発明者】
【氏名】マリット セイム
【住所又は居所】ノルウェー王国 3970 ランゲスン スジェセベイエン 11
【テーマコード(参考)】
4J038
4J246
【Fターム(参考)】
4J038DF011
4J038DL161
4J038HA026
4J038HA066
4J038HA216
4J038HA266
4J038HA446
4J038HA456
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA07
4J038NA05
4J038PB05
4J038PC01
4J038PC02
4J246AA11
4J246AB02
4J246BA020
4J246BA02X
4J246BB020
4J246BB021
4J246BB02X
4J246BB270
4J246BB273
4J246BB27X
4J246CA240
4J246CA24U
4J246CA24X
4J246CA530
4J246CA53E
4J246CA53U
4J246CA53X
4J246CA58
4J246CA58E
4J246CA58U
4J246CA630
4J246CA63E
4J246CA63M
4J246CA63U
4J246CA63X
4J246EA13
4J246FA031
4J246FA131
4J246FA321
4J246FA341
4J246FA471
4J246FB303
4J246FC141
4J246FE03
4J246FE33
4J246FE35
4J246GA01
4J246GB02
4J246GC09
4J246GC37
4J246GC46
4J246GD08
4J246HA24
4J246HA36
4J246HA40
4J246HA56
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、付着防止性および/または撥汚性が改良された表面を有する塗料組成物の調製に好適なABAB型ポリシロキサン共重合体に基づく加水分解性バインダに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋用塗料組成物に用いない塗料組成物用加水分解性バインダであって、式(A’’)で表される少なくとも1つのポリシロキサンモノマーA’:
【化1】
(式中、各Rはメチルであり、
XおよびYは、同一で、(CHx’−OH,−(CHx’−COOH、または−(CHx’−COORを示し、
x’は、1〜5、特に2〜5、例えば3〜5であり、
Rは、C1−6アルキル基であり、
nは、10〜300、特に15〜100である)と、
式(B’’)または式(B’’’)で表される少なくとも1つの第2モノマーB’:
RcOOC−Q−COORc(式B’’)
または、
Rc’O−Q−ORc’(式B’’’)
(式中、Qは、20個以下の炭素原子を有する、脂肪族基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ポリオキシアルキレン基、もしくは芳香族基か、共有結合か、または線状ポリシロキサンであり、各Rcおよび各Rc’は、同一または異なっており、H、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C6−20アリール基、C3−20シクロアルキル基、またはC7−20アリールアルキル基である。
ただし、式(B’’)または式(B’’’)中の前記Rc基または前記Rc’基は、モノマーA’の前記X基および前記Y基と反応してエステル基を形成することを条件とする。)と
の反応生成物を含む、加水分解性バインダ。
【請求項2】
少なくとも1つのポリシロキサンモノマーA’の反応生成物を含み、
前記モノマーA’は、
【化2】
から選択され、
X’は、1〜10、例えば1〜5、特に2〜5、特に3〜5であり、
11およびR12は、それぞれ独立して、C2−6アルキレン基であることを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物用加水分解性バインダ。
【請求項3】
前記モノマーB’は、式(II):
【化3】
(式中、Rdは、飽和、不飽和、または芳香族C3−8環、好ましくはC5−6環である。)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の加水分解性バインダ。
【請求項4】
前記モノマーB’は、式(III):
【化4】
(式中、Rdは、飽和、不飽和、または芳香族C3−8環、好ましくはC5−6環であり、RおよびRは、それぞれ独立して、直鎖または分枝鎖のC1−20アルキル基、好ましくはC1−10アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基、より好ましくはC1−4アルキル基か、直鎖または分枝鎖のC2−10アルケニル基、好ましくはC2−6アルケニル基か、C6−20アリール基、C7−20アリールアルキル基、好ましくはC7−12アリールアルキル基、好ましくはC6−10アリール基か、またはC3−20シクロアルキル基、好ましくはC4−15シクロアルキル基、特にC5−10シクロアルキル基である。)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の加水分解性バインダ。
【請求項5】
前記モノマーB’は、HO−Q−OHジオールであり、Qは、20個以下の炭素原子を有する、脂肪族基、ポリオキシアルキレン基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、もしくは芳香族基、または10個以下の炭素原子を有するアルキレン鎖等の共有結合であることを特徴とする、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の加水分解性バインダ。
【請求項6】
前記モノマーA’および前記モノマーB’は、重合反応して、−[ABAB]−構造を有する共重合体を形成することを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか1項に記載の加水分解性バインダ。
【請求項7】
前記共重合体の骨格は、ポリオキシアルキレン基、好ましくはPEGもしくはPPG、またはその共重合体を含む、請求項6に記載の加水分解性バインダ。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の少なくとも1つの加水分解性バインダと、
充填剤、顔料、溶剤、添加剤、硬化剤、および触媒のうち少なくとも1つと
を含む非海洋用塗料組成物。
【請求項9】
付着防止性、防汚性、洗浄容易性、落書き防止性、または付着物防止性を有する、非海洋用塗料組成物を調製するための、請求項1から8のうちいずれか1項に記載の加水分解性バインダの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着防止性および/または撥汚性が改良された表面を有する塗料組成物の調製に適したABAB型ポリシロキサン共重合体に基づく加水分解性バインダに関する。
【背景技術】
【0002】
海水に浸漬される表面は、緑藻や褐藻、フジツボ、イガイ、棲管虫等の海洋生物による汚損にさらされる。船舶、石油採掘用プラットフォーム、ブイ等の海洋用構造物にとってそのような汚損は望ましくなく、経済的な結果を招く。汚損は、表面の生物学的劣化、負荷の増大や腐食の促進の原因となり得る。汚損は、船舶において摩擦抵抗を増大させ、速度の低下および/または燃料消費量の増加を引き起こす。汚損は、操縦性低下の原因にもなり得る。
【0003】
同様の問題が、川、湖、運河、スイミングプール等の水性環境にさらされる、産業プラント、パイプ、淡水貯蔵用タンク等の水中構造物においても、生物の付着および増殖によって引き起こされる。この問題によって、操業可能な時間が減少するため、多大な経済的損失が生じる。
【0004】
海洋生物の定着および増殖を防止するために防汚塗料が用いられている。これらの塗料には、一般的に、膜形成バインダが、顔料、充填剤、溶剤、および生物活性物質等の他の成分と共に含まれている。
【0005】
2003年まで、市場で最も成功を収めた防汚塗料系はトリブチル錫(TBT)自己研磨型共重合体系であった。これらの防汚塗料用のバインダ系は、トリブチル錫ペンダント基の線状アクリル共重合体であった。その共重合体は海水中で徐々に加水分解され、効果的な殺生物剤であるトリブチル錫を放出した。そのとき、カルボン酸基を含有する残りのアクリル共重合体は、海水中で十分溶解可能な状態になるかまたは分散可能な状態になり、塗料表面から洗い流されるかまたは侵食される。この自己研磨効果によって、塗料中の生物活性化合物の放出は制御され、優れた防汚効率と滑らかな表面がもたらされ、その結果、摩擦抵抗が低減した。
【0006】
2001年の国際海事機関条約「船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約」により、2003年から新たなTBT含有防汚塗料の使用が禁止され、2008年からは船舶船体へのTBT含有防汚塗料の使用が禁止された。
【0007】
このTBT使用の禁止の結果として、近年、新たな防汚塗料系が開発および導入されている。今日、市場で殺生物性防汚塗料の広範な一群を成しているのが、TBT自己研磨型共重合体塗料を模倣した自己研磨型防汚塗料である。これらの防汚塗料は、殺生物特性のない加水分解性ペンダント基を有する(メタ)アクリル共重合体に基づいている。その加水分解メカニズムは、TBT含有共重合体の加水分解メカニズムと同じである。このメカニズムによって、重合体の溶解が同じように制御され、それによって、塗膜からの防汚化合物の放出が制御され、その結果、TBT含有防汚塗料系と同様の性能がもたらされる。今日、最も成功を収めている自己研磨型防汚系は、シリルエステル官能性(メタ)アクリル共重合体に基づいている。これらの塗料組成物は、例えば、欧州特許第0646630号、欧州特許第0802243号、欧州特許第1342756号、欧州特許第1479737号、欧州特許第1641862号、WO00/77102号、WO03/070832号、およびWO03/080747号に記載されている。この加水分解性バインダによって、塗膜が連続して再生され、塗料表面に殺生物剤が効率的に放出され、それによって、生物のいない表面が維持される。
【0008】
上記の防汚塗料系は、重合体骨格上のペンダント基の加水分解によって分解し、それにより、水侵食性重合体が生じる。重合体骨格上のペンダント基の加水分解の結果、カルボン酸塩が形成されて重合体が親水性となり、その結果、侵食性となる。加水分解後に、十分な親水性、そして侵食性重合体を得るためには、所定量の加水分解性基が必要となる。
【0009】
水侵食性重合体を得るための別の方法は、加水分解性基を重合体骨格に導入することによって重合体構造を分解し、重合体膜または塗膜の侵食を生じさせるというものである。ポリ無水物は、骨格の加水分解によって分解する重合体の一種である。ポリ無水物は、その表面分解特性から多くの文献に記載されている。表面分解は、良好な防汚塗料を得る上で最も重要な要因の1つである。防汚塗料組成物のバインダとして特定の芳香族ポリ無水物を使用することが、例えばWO2004/096927号に記載されている。
【0010】
しかし、無水物基は水分の存在下では非常に不安定であるため、防汚塗料に用いるために加水分解がゆっくりかつ制御されたポリ無水物に基づく塗料系を設計するのは難しい。したがって、防汚塗料組成物に用いられるポリ無水物は、加水分解を制御するために、概して芳香族単位の含有量が多い。
【0011】
近年、防汚塗料のバインダとして用いるのに適した重合体の一種として、ポリオキサレートが浮上している。これらの化合物における骨格の加水分解は、ポリ無水物の骨格の加水分解よりもさらに制御される。
【0012】
重合体の骨格が海水で加水分解する自己研磨型バインダを用いることによって、侵食性架橋重合体と高分子量の重合体とが得られる。
【0013】
防汚塗料(殺生物剤を必ず含有する)の代替物は、所謂、付着物剥離塗料である。これらの塗料は、表面張力および弾性率が小さく、また、海洋生物が付着できないか、または付着できるとしても表面に対する水の動きによって洗い流される「付着防止性」面をもたらすように機能する。塗料は、概して毒性の低いポリシロキサン/シリコーン/ポリジメチルシロキサン(PDMS)に基づくことが多い。付着物剥離系には短所がある。例えば、ボートの船体に塗布すると、海生生物の堆積は減少するが、全ての付着物を除去するためには比較的速い船舶速度が必要とされる。したがって、幾つかの場合においては、そのような重合体で処理された船体から有効に剥離するためには、14ノット以上の速度で航行することが必要であると示されてきた。
【0014】
しかし、そのような「防付着性」塗料は、時間の経過とともに、スライムや藻類等の軟質の付着物に対する耐性が良好でなくなる。この問題を克服するために、WO2011/076856号において、そのようなPDMS塗料に親水性に変性されたPDMS油と組み合わせた殺生物剤を添加することが提案されている。WO2013/00479号も同様に殺生物剤を添加する原理に依っているが、そこでは、親水性に変性されたポリシロキサン部位がポリシロキサンバインダに共有結合している。
【0015】
しかし、塗料の有効期限の最初期では、表面に殺生物剤が拡散するのが速すぎ、その後、塗料が経年変化すると、その拡散は停止してしまうため、これらの混合物材料は商業的に成功するには限界があることが分かっている。より最近では、Azemar氏が、「Progress in Organic Coatings」87巻(2015年、10〜19頁)に、ポリカプロラクトンとPDMSとのトリブロック共重合体に基づくハイブリッド塗料について述べている。PDMSブロックをカプロラクトンと共重合してPDMSブロックの各端部にポリカプロラクトン重合ブロックを得る。したがって、この重合体は、カプロラクトンから形成された2個のポリエステルブロックを有するただ1つのPDMSブロックを含んでおり、これは、いずれの加水分解も、分子の端部においてのみ生じ、鎖の中央部では生じないことを意味する。ポリ(カプロラクトン単位)は、2個の同一の官能基を含まないため、請求項に記載するような共重合体の製造には用いることができない。
【0016】
WO2004/085560号には、ジカルボン酸とアシルオキシシリル化合物との反応によって形成されるポリシリルエステルが開示されている。その結果として生じる重合体を、防汚塗料のバインダとして使用することが提案されている。しかし、請求項に記載する重合体は必ず、特徴的なシリルエステルSi−O−CO結合を骨格に含んでいる。シリルエステルは、水分に対する反応性が非常に高く、数日または数週間内に完全に分解することが知られている。WO2004/085560号に開示されている化合物は、非常に不安定であるので、何年にもわたって使用できることが求められる長期防汚塗料組成物に良好に用いることができない。また、これらのシリルエステル重合体の製造方法は複雑であることも分かっている。本願の解決法では、はるかに容易な方法が用いられ、酸の蒸留に伴う問題等が回避される。
【0017】
WO2015/082397号には、ポリシロキサンとラクトンとの反応から形成されるバインダを含有する塗料組成物について記載されている。この組成物によって、−CO−アルキレン−O−基を含む重合体鎖が生じる。これはラクトンの開環によって得られる。さらに、開環したラクトンは他のラクトンと反応し、その重合範囲を拡大することができるので、重合の結果、ブロック共重合体が生じる。したがって、この重合体は、AAABBBAAA構造を有するトリブロック重合体となる。硬化性重合体を得るためには、シロキサンに対する有機化合物の比率は、比較的高いことが必要である。この方法によって、従来のポリシロキサンに比してはるかに高いガラス転移を示す重合体が生じる。これによって、重合体の付着防止性、軟質性、剥離性が制限されてしまう。
【0018】
解決すべき問題、特に、時間の経過に対する付着物剥離性塗料の性能の問題が残っている。
【0019】
本発明者らは、再生可能な付着物剥離性塗膜表面を有することが有益であろうことを認識している。再生可能な表面を用いることで、殺生物剤の必要性の有無にかかわらず、スライム/藻類および他の軟質の付着物が物理的に除去される。したがって、防汚塗料組成物からなる、そのような再生可能な表面を付着物剥離性塗料組成物によって設けることができれば有用であろう。これは、殺生物剤の添加にかかわらず達成することができる。例えば、船の船体等の基材が遅い速度または程度の大きい付着物の状況にさらされる可能性がある場合に殺生物剤を用いてもよい。
【0020】
本発明の目的は、微生物、藻類、および有機、無機、または生物的な汚れが構造物の表面に付着するのを防止することが可能な塗料組成物用の新規なバインダを提供することである。本発明の概念は、付着物剥離性塗料の利点と自己研磨型防汚塗料の利点を組み合わせる、とりわけ、基材に再生可能で付着防止性の表面を設けることである。バインダは、塗料の防汚効果を延長し得る殺生物剤を含んでも、含まなくてもよい。
【0021】
したがって、本発明は、2つの技術の利点を組み合わせて、任意に殺生物剤を含む、表面張力の小さい再生可能な塗料を提供する。
【0022】
本発明は、ポリシロキサン単位を、ポリシロキサンではない、より小さなコモノマー分子と重合して生成した共重合体を用いて、その骨格に加水分解性エステル単位を含む重合体を付与することで、この目的を達成する。または、本発明は、結合すると加水分解性エステル結合がその間に形成される2つの(異なる)ポリシロキサン反応体を結合させることを想定する。
【0023】
驚くべきことに、本発明者らは、本明細書において設計した重合体は、海水中で加水分解して、その表面を再生し、必要に応じて、塗料に含まれるいずれの殺生物剤も浸出することができることを見出した。また、本発明のバインダによって、VOCが少なく、界面エネルギーが小さく、かつ弾性率が低い塗料組成物が提供される。
【発明の概要】
【0024】
したがって、一態様において、本発明は、海洋用塗料組成物用バインダを提供し、前記バインダは、下記式で表される複数の単位からなるABAB型ポリシロキサン共重合体である。
【0025】
【化1】
【0026】
または
【化2】
【0027】
式中、各Rは、同一または異なっており、非置換もしくは置換のC1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、もしくはC7−20アリールアルキル基、またはポリオキシアルキレン鎖であり、
R’’は、独立して、C1−6アルキル基またはH、特に水素であってもよく、
x’は1〜10、例えば1〜5、特に2〜5、特に3〜5であり、
nは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100であり、
は、20個以下の炭素原子を有する、脂肪族基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、もしくは芳香族基、または共有結合であり、
は、20個以下の炭素原子を有する、脂肪族基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ポリオキシアルキレン基、または芳香族基である。
【0028】
別の態様において、本発明は、海洋用塗料組成物用バインダであって、下記一般式で表される少なくとも1つのポリシロキサン(A’):
【0029】
【化3】
【0030】
または
【0031】
【化4】
【0032】
(式中、各Rは、同一または異なっており、非置換もしくは置換のC1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、もしくはC7−20アリールアルキル基、またはポリオキシアルキレン鎖であり、
XおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、(CR’’x’−OH、(CR’’x’COOH、(CR’’x’COOR、または−(CR’’x’−(OR11−(OR11−OHを示し、
R’’は、それぞれ独立して、C1−6アルキル基またはH、特にHであってもよく、
x’は1〜10、例えば1〜5、特に2〜5、特に3〜5であり、
Rは、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、またはC7−20アリールアルキル基であり、
11は、それぞれ独立して、C2−6アルキレン基であり、
a=0〜50、b=0〜50、かつ、a+b=1〜50であり、
nは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100であるか、
または、n’+mは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100である。)と、
下記式で表される少なくとも1つの第2モノマーB’:
【0033】
【化5】
【0034】
または
【0035】
【化6】
【0036】
(式中、各Rは、同一または異なっており、非置換もしくは置換のC1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、もしくはC7−20アリールアルキル基、またはポリオキシアルキレン鎖であり、
XおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、(CR’’x’−OH、(CR’’x’COOH、(CR’’x’COOR、または−(CR’’x’−(OR11−(OR11−OHを示し、
R’’は、独立して、C1−6アルキル基またはH、特にHであってもよく
x’は1〜10、例えば1〜5、特に2〜5、特に3〜5であり、
Rは、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、またはC7−20アリールアルキル基であり、
11は、それぞれ独立して、C2−6アルキレン基であり、
a=0〜50、b=0〜50、かつ、a+b=1〜50であり、
nは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100であるか、
または、n’+mは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100である。
ただし、モノマーB’中のX基およびY基は、モノマーA’中のX基およびY基と反応してエステル基を形成するよう選択される。)と
の反応生成物からなるバインダを提供する。
【0037】
これらのモノマーは、重合反応して、−[ABAB]−構造を有する共重合体を形成する。
【0038】
XおよびYは、同一または異なっていてもよく、(CHx’−OH、(CHx’COOH、(CHx’COOR、または−(CHx’−(OR11−(OR11−OHであることが好ましい。XとYは同一であることが理想的である。
【0039】
別の態様において、本発明は、海洋用塗料組成物用バインダであって、下記一般式で表される少なくとも1つのポリシロキサン(A’)
【0040】
【化7】
【0041】
または
【0042】
【化8】
【0043】
(式中、各Rは、同一または異なっており、非置換もしくは置換のC1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、もしくはC7−20アリールアルキル基、またはポリオキシアルキレン鎖を示し、
XおよびYは、同一でも異なっていてもよく、(CR’’x’−OH、(CR’’x’COOH、(CR’’x’COOR、または−(CR’’x’−(OR11−(OR11−OHを示し、
R’’は、独立して、C1−6アルキル基またはH、特にHであってもよく、
x’は1〜10、例えば1〜5、特に2〜5、特に3〜5であり、
Rは、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、またはC7−20アリールアルキル基であり、
11は、それぞれ独立して、C2−6アルキレン基であり、
a=0〜50、b=0〜50、かつ、a+b=1〜50であり、
nは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100であるか、
または、n’+mは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100である。)と、
下記式で表される少なくとも1つの第2モノマーB’(i):
W−Q−Z
(式中、WおよびZは、それぞれ独立して、RcOCO、RcOCOO−、−RcCOOCO−COOH、Hal−CO、またはOHであり、
Qは、20個以下の炭素原子を有する、脂肪族基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ポリオキシアルキレン基、アミンエーテル基、もしくは芳香族基であるか、または、QはOもしくは共有結合であり、
各Rcは、同一または異なっており、ハロゲン、H、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C6−20アリール基、C3−20シクロアルキル基、またはC7−20アリールアルキル基である。Rc基は両方とも同一であるのが好ましい。
ただし、モノマーB’のW基およびZ基は、モノマーA’のW基およびZ基と反応してエステル基を形成するよう選択される。)、または、
環状無水物である、少なくとも1つの第2モノマーB’(ii)と
の反応生成物からなるバインダを提供する。
【0044】
別の態様において、本発明は、海洋用塗料組成物用バインダであって、下記一般式で表される少なくとも1つのポリシロキサン(A’):
【0045】
【化9】
【0046】
または
【0047】
【化10】
【0048】
(式中、各Rは、同一または異なっており、非置換もしくは置換のC1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、もしくはC7−20アリールアルキル基、またはポリオキシアルキレン鎖を示し、
XおよびYは、同一でも異なっていてもよく、(CR’’x’−OH、(CR’’x’COOH、(CR’’x’COOR、または−(CR’’x’−(OR11−(OR11−OHを示し、
R’’は、独立して、C1−6アルキル基またはH、特にHであってもよく、
x’は1〜10、例えば1〜5、特に2〜5、特に3〜5であり、
Rは、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、またはC7−20アリールアルキル基であり、
11は、それぞれ独立して、C2−6アルキレン基であり、
a=0〜50、b=0〜50、かつ、a+b=1〜50であり、
nは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100であるか、
または、n’+mは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100である。)と、
少なくとも1つの第2モノマーB’であって、ジカルボン酸もしくはジカルボン酸誘導体(エステル、環状無水物、もしくは酸ハロゲン化物等)またはジオールであり、モノマーA’のX基およびY基がモノマーB’と反応して重合体の骨格内にエステル基を形成するという条件下で、結果として生じる重合体は−[ABAB]−構造を有する第2モノマーB’と
の反応生成物からなるバインダを提供する。
【0049】
別の態様において、本発明は、付着物剥離性塗料組成物であって、本明細書で先に定義したバインダと、充填剤、顔料、溶剤、添加剤、の硬化剤、および触媒のうちの少なくとも1つとを含み、好ましくは殺生物剤を含まない付着物剥離性塗料組成物を提供する。
【0050】
別の態様において、本発明は、本明細書で先に定義したバインダと、少なくとも1つの防汚剤とを含む防汚塗料組成物を提供する。
【0051】
別の態様において、本発明は、汚損から物体を保護する方法であって、汚損にさらされる前記物体の少なくとも一部に、本明細書で先に定義した塗料組成物を塗布し、好ましくは前記組成物を硬化する方法を提供する。
【0052】
別の態様において、本発明は、本明細書で先に定義した塗料組成物、好ましくは硬化した組成物が塗布された物体を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、海洋用塗料組成物用バインダを調製する方法であって、ポリシロキサン単位A’と少なくとも1つの第2モノマーB’とを共重合し、骨格に加水分解性エステル官能基を含む−ABAB−共重合体を形成する方法を提供する。
【0054】
別の態様において、本発明は、付着物剥離性組成物または海洋用防汚塗料組成物に用いる、本明細書で先に定義したバインダの使用を提供する。
【0055】
定義
殺生物剤および防汚剤という用語は、本明細書において交換可能に用いられ、後段で定義する。
【0056】
第2モノマーB’は、ポリシロキサン単位A’とは必ず異なることが分かるであろう。モノマーB’自体がポリシロキサンであっても、共重合反応を生じさせるためには、ポリシロキサン単位A’とは異なっていなければならない。
【0057】
本発明の前記バインダは、分子骨格に複数のエステル加水分解性基を含む。エステル加水分解性官能基は、海水中で加水分解する基である。その重合体は、重合体の骨格に、複数、例えば3つ以上の加水分解性エステル基を含むことが好ましい。他の加水分解性基を含んでもよい。
【0058】
前記エステル加水分解性基としては、式−[Si−(CHx’−O−CO−]−または−[Si−(CHx’−CO−O]−で表される基が理想的である。
【0059】
前記加水分解反応は、その反応率が、周囲環境条件(塩分、pH、温度、含水量等)とともに、化合物/バインダの化学構造/組成物にも大きく依存していることが理解されるであろう。前記加水分解性基は、0℃〜35℃の温度、ならびに天然海水を反映したpHおよび塩分濃度で加水分解する基である。
【0060】
エステル「加水分解性基」は、塗料表面が海水中を移動している際に、塗料表面研磨効果が十分にあげられる割合で加水分解反応する基、すなわち、0℃〜35℃の温度範囲、ならびに天然海水を反映したpHおよび塩分濃度で加水分解する基である。
【0061】
前記エステル加水分解性基と同様、含まれる他の基として、アセタール、ヘミアセタール、ケタール、カルバミン酸塩、炭酸塩、およびシリルエーテル等の基が挙げられる。
【0062】
不確かさを排除するために、本明細書では、エーテル類、チオエーテル類、アミド類、およびアミン類は十分な加水分解性を有しているとは考えない。シロキサン基が十分な加水分解性を有しているとは考えない。
【0063】
加水分解性基は、主重合体鎖から離れている側鎖ではなく、重合体の骨格に存在する必要がある。加水分解性基は骨格に繰り返して存在する。重合体の側鎖に加水分解性基が存在していてもよいが、重合体の骨格には加水分解性基が存在していなくてはならない。
【0064】
効果をあげるためには、加水分解性基は、例えば分子の両端にのみ位置しているのではなく、高分子の全体にわたって分布しているべきである。本発明の共重合体は、シロキサンのブロックと、ポリエステル等の他の物質の端部ブロックとが存在しているブロック共重合体ではない、すなわち、AAAABBBBBBAAAA構造を有する重合体ではないことが好ましい。むしろ、本発明の共重合体は、少なくとも2つのモノマーA’繰り返し単位と少なくとも2つのモノマーB’繰り返し単位とを備えた−[ABAB]−構造を有する。多くの繰り返し単位が存在し得、また、式−[ABAB]−は、任意の数のAB繰り返し単位を有する共重合体を包含することを意味していることが分かるであろう。分子量については後段で定義する。
【0065】
モノマーA’とモノマーB’は共に反応して、重合体繰り返し単位ABを形成する。
【0066】
アミンエーテルという用語は、C1−6−アルキレン−NH−C1−6アルキレン基等のアルキレン−NR20−アルキレン構造を表す。R20は、C1−6アルキル基またはHであってもよい。
【0067】
本発明のいずれの実施例においても、アルキル基またはアルキレン基は線状であることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明は、付着物剥離性塗料組成物または防汚塗料組成物に用いることができる新規なバインダに関する。付着物剥離性組成物は、防汚剤を含まないことが好ましく、本発明のバインダを含む塗料組成物から、理想的にはその組成物の架橋によって、形成される。防汚塗料組成物という用語は、本発明のバインダと少なくとも1つの海洋用防汚剤とを含む組成物を表す。バインダが加水分解性基を含有することにより、該バインダはいずれのタイプの塗料においても使用するのに理想的になる。また、加水分解が遅いと、塗料表面を再生することができる。この再生によって、付着物剥離性塗料組成物に藻類/スライムが形成されるという問題が有効に対処される。加水分解反応によって、防汚塗料に含まれる防汚剤の剥離性を制御することができる。
【0069】
以下に記載する塗料組成物という用語は、防汚塗料組成物または付着物剥離性塗料組成物を表すのに用いられる。
【0070】
バインダという用語は、当技術の用語である。バインダは、塗料組成物に含まれる、実際に膜を形成する成分である。塗料組成物は、後段に詳述するように、バインダと他の成分とを含む。バインダは、付着性を付与し、塗料組成物の成分同士を結合させる。
【0071】
ポリシロキサン成分A’
本発明の重合体バインダは、少なくとも2つのモノマー等、複数のモノマーから形成される。少なくとも1つのポリシロキサン単位A’(ポリシロキサンモノマーと考えてもよい)と、少なくとも1つの他のモノマー単位(本明細書では第2モノマーと称する)B’があり、モノマー単位B’はポリシロキサン単位A’と反応して、重合体骨格に複数のエステル加水分解性結合を有する共重合体を生成する。重合体骨格は、リンカー−[Si−(CHx’−O−CO]−または−[Si−(CHx’−CO−O]を含むことが理想的である。式中のx’は後段で定義する。
【0072】
前記重合体は、縮合重合によって形成されるため、−ABABA−型となり、AAABBBBBBAAA型のブロック共重合体ではない。前記エステル加水分解性結合は、海水中で時間の経過とともに加水分解し、付着物剥離性塗料の表面を再生させ、本発明の防汚組成物に含まれる殺生物剤を一新かつ浸出させることができる。WO2015082397号では、ポリシロキサンバインダを、ラクトンの開環によって調製する。エステル結合がラクトンの開環によって形成される場合、ラクトンが開環し、それによって、さらなるラクトンモノマーを開環することができるOHが付与される。したがって、結果として生じる重合体は、シロキサンモノマーを含むが、このとき、ラクトンが形成された一連の繰り返し単位がその側面に位置する。したがって、そのような重合体は、ABAB重合体ではない。
【0073】
骨格は、加水分解性結合−[Si−(CHx’−O−CO−]−または−[Si−(CHx’−CO−O]−を含むことが好ましい。他の加水分解性結合を含んでいてもよい。加水分解性結合は、実際の重合反応中に形成されてもよく、または、重合する単位の骨格内に重合前から存在し、したがって、重合中に共重合体骨格の一部となってもよい。また、加水分解性結合は、モノマー骨格、ひいては重合体骨格内に存在する加水分解性基のみならず、共重合中に形成される加水分解性基でもあり得る。したがって、好ましい実施形態において、モノマーB’は、ポリシロキサンとの共重合時に重合体骨格の一部となるモノマーの骨格内に少なくとも1つの加水分解性基を含む。
【0074】
したがって、一実施形態において、これらの加水分解性基の導入は、ポリシロキサン単位A’と第2モノマーB’との間の反応に依存し、エステル加水分解性結合を形成する。前記反応は、ポリシロキサンの末端基と第2モノマーの末端基に依存する多くの方法によって引き起こすことができる。したがって、2つの反応体を結合させてエステルを形成する化学反応は、化学的に極めて単純であると広義に定義される。当業者は、例えばエステル結合を生じさせる多くの方法を知っている。ポリシロキサン単位は、含まれる官能基に依存して、求核性物質として機能し得るか、または、求電子物質として機能し得ることが分かるであろう。求核性物質としてポリシロキサン単位を用いる方がより容易であるかもしれないが、本発明は、ポリシロキサン単位の端部に求電子基を配置し、第2モノマーがポリシロキサン単位に作用できるようにするのに容易に対応できる。前記重合は、縮合重合または付加重合であることが好ましいが、当業者が熟知している他の種類の重合を用いることもできる。
【0075】
第2実施形態において、第2モノマーは、ポリシロキサンとの共重合時に重合体骨格の一部となる骨格に、1つ以上の加水分解性基を含んでもよい。繰り返しになるが、本発明は、そのような加水分解性基を有する重合体を提供する。同時に、共重合時に、モノマーA’とモノマーB’との間に加水分解性結合を生じさせる。
【0076】
本発明の要点は、−[Si−(CHx’−O−CO−]−等の加水分解性結合をポリシロキサン重合体の骨格に導入することで、有用な海洋用バインダを調製することができることと理解される。当業者は、加水分解性単位を導入する方法は多数あることを認識している。
【0077】
本発明のバインダを生成するために共重合されるポリシロキサン単位は、一般式(A’)で表されることが好ましい。
【0078】
【化11】
【0079】
式中、各Rは、同一または異なっており、非置換もしくは置換のC1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、もしくはC7−20アリールアルキル基、またはポリオキシアルキレン鎖を示し、
XおよびYは、同一でも異なっていてもよく、(CR’’x’−OH、(CR’’x’COOH、(CR’’x’COOR、または−(CR’’x’−(OR11−(OR11−OHであり、
R’’は、独立して、C1−6アルキル基またはH、特にHであってもよく、
x’は1〜10、例えば1〜5、特に2〜5、特に3〜5であり、
Rは、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、またはC7−20アリールアルキル基であり、
11は、それぞれ独立して、C2−6アルキレン基であり、
a=0〜50、b=0〜50、かつ、a+b=1〜50であり、
nは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100である。
【0080】
XおよびYは、同一または異なっていてもよく、(CHx’−OH、(CHx’COOH、(CHx’COOR、または−(CHx’−(OR11−(OR11−OHを示すことが好ましい。XとYは同一であることが好ましい。
【0081】
本明細書において使用されるアリールアルキル基という用語は、アルキル部分を介してSiへの結合が成される、ベンジル型リンカー(CH−Ph)、またはアリール基を介してシリコンへの結合が成されるメチルフェニル型基を意味する。
【0082】
基が全て同一であることが好ましい。Rは、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C6−20アリール基、C7−20アリールアルキル基であることが好ましい。Rは置換されていないことが好ましい。Rは、エチルまたは特にメチルのようなC1−6アルキル基であることが好ましい。したがって、PDMSを使用することが特に好ましい。しかし、また、少なくとも1つのR基はポリオキシアルキレン鎖であり得る。前記分子は、ポリシロキサン骨格に分布するこれらの基を複数含む可能性が高い。そのような鎖が存在していると、分子の親水性が高くなる。好適なポリオキシアルキレン鎖は下記式で表されるポリオキシアルキレン鎖であってもよい。
10−(OR11−(OR11−OR12
式中、R10およびR11は、それぞれ独立してC2−6アルキレン基であり、R12は、H、CHCO−、CHCHCO−、HCO−、またはC1−6アルキル基であり、a=0〜50、b=0〜50、かつa+b=1〜50である。側鎖におけるいずれの反応も回避されるように、R12がHではないことが好ましい。R12は、好ましくは、CHCO−、CHCHCO−、HCO−、またはC1−6アルキル基であり、特にCHCO−またはCHCHCO−である。
【0083】
したがって、好適な材料としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリ(オキシエチレン−コ−オキシプロピレン)から選択される材料が挙げられる。好ましいポリシロキサンモノマーは、ポリジメチルシラン(PDMS)である。繰り返し単位−Si−O−Si−は加水分解性であるとは考えられないことが分かるであろう。
【0084】
末端基XおよびYは、同一であることが好ましい。R基が全て同一であることが好ましい。Rが、エチルまたはメチル等のC1−6アルキル基であることが好ましい。
【0085】
R’’基は全て同一であることが好ましい。R’’はHであることが好ましい。
【0086】
Xおよび/またはYは、カルビノール、すなわち、(CHx’OH鎖であるか、またはXおよび/またはYは、(CHx’COOHまたは(CHx’COORであることが好ましい。この点に関して、Rは、C1−6アルキル基であることが好ましい。下付き文字x’は、1〜10、例えば2〜5または3〜5であることが好ましい。
【0087】
PDMSカルビノールを用いることは、好ましい一選択肢である。
【0088】
好ましい一選択肢において、ポリシロキサンモノマーA’の数平均分子量(Mn)は、700以上、例えば、1,200以上または2,000以上であってもよい。その数平均分子量(Mn)の上限は、40,000、例えば20,000であり、例えば、15,000以下等、上限が17,000であることが妥当である。
【0089】
理論上、上記式(A’)で識別されるXおよびYよりも多くの末端基を含む分枝状ポリシロキサンモノマーを用いることができる。分枝状構造を用いると、第2モノマーとの分枝状共重合体を生成できる。しかし、実質的に2つの反応末端基を含む二官能ポリシロキサンを用いることが好ましいと考えられ、これは、そのようなモノマーによって、実質的に線状の重合体を生成することが可能になるからである。本発明のいずれの重合体も、ポリシロキサン単位由来の少なくとも2つの残基を含むであろう。
【0090】
したがって、式(A’’)で表されるポリシロキサンが好ましい。
【0091】
【化12】
【0092】
式中、各Rはメチルであり、
XおよびYは、同一で、(CHx’−OH、−(CHx’−COOH、または、−(CHx’−COOR、好ましくは(CHx’−OH、または−(CHx’−COORを示し、
x’は、1〜10、特に2〜5、例えば3〜5であり、
Rは、C1−20アルキル基であり、
nは、10〜300、特に15〜100である。
【0093】
したがって、式(A2)で表されるポリシロキサンがより好ましい。
【0094】
【化13】
【0095】
式中、各Rはメチルであり、
XおよびYは、同一で、(CHx’−OHまたは−(CHx’−COORを示しし、
x’は、1〜5、特に2〜5、例えば3〜5であり、
Rは、C1−6アルキル基であり、
nは、10〜300、特に15〜100である。
【0096】
用いることができるシロキサン単位として、以下のものが挙げられる。
【0097】
【化14】
【0098】
式中、変数は本明細書で定義される通りである。上記選択肢のうち、最初の2つが最も好ましい。
【0099】
本発明のバインダを製造するために、前記ポリシロキサンを少なくとも1つのさらなるモノマーB’と反応させる。これが第2モノマーである。重合反応中に加水分解性エステル基が生成される。特に、本発明のポリシロキサン重合体に含まれる加水分解性基は、式−Si−(CHx’−CO−O−または、Si−(CHx’−O−CO−で示される。本発明の前記重合体は、式Si−(CHx’−CO−O−またはSi−(CHx’−O−CO−で表される複数の基を含むことが好ましい。
【0100】
本発明のポリシロキサンのポリシロキサン骨格は、式−Si−O−CO−で表される、いずれの基も含まないことが好ましい。また、本発明のポリシロキサンのポリシロキサン骨格は、ラクチド結合、すなわち、−CO−C1−3−アルキル−O−等の−CO−アルキル−O−基を含まないことが好ましい。
【0101】
前記ポリシロキサン単位との縮合共重合反応において、多官能第2モノマーを用いることが好ましい。そのような縮合重合反応においては、前記2つの「モノマー」が反応して、各AおよびBの残基間にエステル加水分解性結合が存在する−[ABAB]−構造を有する共重合体が生成される。したがって、実質的に、ポリシロキサンモノマーの末端基が第2モノマーの末端基と反応して、エステル官能基を生成し、このエステル官能基は、前記2つの単位を結合させ、かつ、海水中で加水分解し、それによって本発明のバインダが自己研磨するバインダとなることを確実にする。
【0102】
したがって、第2モノマーは、ジエステル、二塩基酸もしくはその誘導体、またはモノマーA’と反応する好適な末端基官能基を有する第2シロキサンモノマーであることが好ましい。必要に応じて、三官能性または四官能性第2モノマー(など)を用いて分枝状構造を構築することも可能である。しかし、第2モノマーは二官能性であり、それによって、実質的に線状の重合体を生成することが好ましい。したがって、最も好ましい実施形態においては、ポリシロキサン単位および第2モノマーの両方が二官能性であり、したがって、それらにおいては2つの基のみが共重合する。
【0103】
異なる反応基を有するモノマー、例えば、1つの端部に酸を有し、別の端部にエステルを有しするモノマーでもよい。異なる基が含まれている場合、その両方が求核性物質であるか、または両方が求電子物質であることが好ましい。本明細書にける化学反応には様々な種類があることは、当業者には明らかであろう。
【0104】
一実施形態において、第2モノマーB’は、ポリシロキサンに基づくものであってもよく、該ポリシロキサンは、ポリシロキサン単位と共重合して、ポリシロキサン単位同士がエステル加水分解性基を介して結合している共重合体を形成する。したがって、共重合を生じさせるためには、2つのモノマー単位は生来的に異なっていなくてはならないことが分かるであろう。よって、一態様において、モノマーB’は下記式で表される。
【0105】
【化15】
【0106】
式中、各Rは、同一または異なっており、非置換もしくは置換のC1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C3−20シクロアルキル基、C6−20アリール基、もしくはC7−20アリールアルキル基、またはポリオキシアルキレン鎖を示し、
XおよびYは、同一でも異なっていてもよく、(CHx’−OH、(CHx’COOH、(CHx’COOR、または−(CHx’−(OR11−(OR11−OHであり、
x’は1〜10、例えば1〜5、特に2〜5、特に3〜5であり、
Rは、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C6−20アリール基、またはC7−20アリールアルキル基であり、
11は、それぞれ独立して、C2−6アルキレン基であり、
a=0〜50、b=0〜50、かつ、a+b=1〜50であり、
nは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100である。
ただし、モノマーB’のX基およびY基は、モノマーA’のX基およびY基と反応してエステル基を形成するように選択される。
【0107】
好ましい選択肢において、モノマーB’のX基およびY基はモノマーA’のX基およびY基と反応してエステル基を形成するように選択されるという条件で、モノマーB’は、A’’またはA2のように定義される。
【0108】
しかし、モノマー単位が異なっていても、最終生成物の重合体において、繰り返し単位は同一になり得る。例えば、−(CHx’−COOH−終端PDMSを(CHx’OH−終端PDMSと共重合させる場合、結果として生じる重合体は、PDMS単位同士を結合するエステル結合を有するPDMSである。
【0109】
第2モノマーがポリシロキサンでない場合、バインダ重合体の重量の大部分がポリシロキサン残基から形成されるように、第2モノマーの分子量がポリシロキサン単位の分子量より小さいことが好ましい。したがって、第2モノマーがポリシロキサン以外である場合、第2モノマーの数平均分子量Mnは、2,000未満、例えば1,000未満であり、特に、500未満、例えば400未満であることが好ましい。
【0110】
他の実施形態において、特に第2モノマーがポリシロキサンを含む場合、ポリシロキサンモノマーB’の数平均分子量(Mn)は、700以上、例えば1,200以上、例えば2,000以上であってもよい。その数平均分子量(Mn)の上限は、40,000、例えば20,000であり、例えば、15,000以下等、上限17,000であることが妥当である。
【0111】
第2モノマーは、一般式(B’)で表されるものでもよい。
W−Q−Z(B’)
式中、WおよびZは、同一または異なっており、かつ、ポリシロキサンモノマーA’上の末端基XおよびYと反応してエステル加水分解性基を形成することができる官能基であり、
Qは、20個以下の炭素原子を有する、脂肪族基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ポリオキシアルキレン基、アミンエーテル基、もしくは芳香族基であるか、または、Qは、−O−もしくは共有結合である。有機化学者は、Qリンカーの性質はW基およびZ基の選択に依存していることを理解するであろう。WおよびZがヒドロキシル基である場合、Qは共有結合でもOでもないことは明らかである。
【0112】
WおよびZは、好ましくはOHであるか、または、カルボン酸もしくはカルボン酸エステル等のカルボキシル基または酸ハロゲン化物を含む。
【0113】
W−Q−Z分子のMnは、好ましくは2,000未満、例えば1,000未満であり、特に500未満、例えば300未満である。
【0114】
Qが−O−である場合、モノマーB’は無水物であることが好ましい。Q基が共有結合である場合、W基とZ基は直接結合して、オキサレート等の化合物を形成する。Qは、アルキレン基、フェニル基、またはポリオキシアルキレン基であることが好ましい。WおよびZがヒドロキシル基である場合、ポリオキシアルキレン基を用いることが特に好ましい。
【0115】
Qがポリオキシアルキレン基である場合、Qは下記の構造を有する。
−R10−(OR11−(OR11
式中、R10およびR11は、それぞれ独立して、C2−6アルキレン基であり、a=0〜50、b=0〜50、かつ、a+b=1〜50である。
【0116】
理論上、上記式(B’)で識別されるWおよびZよりも多くの末端基を有する分枝状ポリシロキサンモノマーを用いることができる。分枝状構造を用いると、第1モノマーとの分枝状共重合体を生成できる。しかし、実質的に2つの反応末端基を含む二官能ポリシロキサンを用いることが好ましいと考えられ、これは、そのようなモノマーによって、実質的に線状の重合体を生成することができるからである。
【0117】
分枝状のモノマーBは、3つ以上のヒドロキシル基を含むポリオール構造を有していてもよく、例えば、Qリンカーが3つの利用可能なOH基、すなわち、W、YおよびZを有するモノマーであってもよい。
【0118】
【化16】
【0119】
WおよびZは、エステルRc−OOC−、RcCOOCO−もしくは−COOH等の−COO基、またはHal−CO基を含む末端基であってもよい。ここで、Rcは、H、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C6−20アリール基、C3−20シクロアルキル基、またはC7−20アリールアルキル基を示す。したがって、酸ハロゲン化物または無水物等の変装した酸が対象として含まれる。エステル結合は、酸/エステルとアルコールとの反応、例えばエステル交換反応または直接エステル化する方法を介して得られる。したがって、使用し得る多官能エステルモノマーは多数ある。
【0120】
したがって、好適な第2モノマーとしては、シュウ酸ジメチル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジメチル、スベリン酸ジメチルエステル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジエチル、スベリン酸ジエチル、アゼライン酸ジエチルエステル、およびセバシン酸ジエチルエステル等の脂肪族二塩基酸エステルが挙げられる。
【0121】
したがって、好適なエステル/酸は、下記式で表されるものでもよい。
RcOOC−Q−COORc(式B’’)
または
Rc’O−Q−ORc’(式B’’’)
式中、Qは、20個以下の炭素原子を有する、脂肪族基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、もしくは芳香族基であるか、共有結合であるか、または線状ポリシロキサンであり、
各Rcおよび各Rc’は、同一または異なっており、H、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C6−20アリール基、C3−20シクロアルキル基、またはC7−20アリールアルキル基を示す。Rc基およびRc’基は同一であることが好ましい。RcおよびRc’は、HまたはC1−6アルキル基であることが好ましく、メチルまたはエチルであってもよい。ただし、(式B’’)または(式B’’’)中のRc基またはRc’基は、モノマーA’中のX基およびY基と反応してエステル基を形成する。
【0122】
そのようなモノマー単位のMnは、100〜2,000、好ましくは100〜1,000、特に100〜500である。一般的に、Rc=H、Me、またはEtであることが好ましい。
【0123】
好ましい選択肢は、シュウ酸ジエチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、およびアジピン酸ジエチルから選択されるジカルボン酸ジエステル、ならびに、C1−6アルコールを有する前記カルボン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、例えば、シュウ酸ジエチル、コハク酸ジエチル、ジエチルエステル類、グルタル酸ジエチル、アジピン酸モノメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ−n−ブチル、フマル酸モノエチル、およびマレイン酸ジメチルである。
【0124】
好適なジカルボン酸が無水物を形成できる場合、バインダを調製するための成分(a)として少なくともジカルボン酸の無水物、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、または無水コハク酸を用いることも可能である。第2モノマーとしては、テレフタル酸、フタル酸、ならびにテレフタル酸、o−フタル酸、およびm−フタル酸の、ジメチル、ジエチル、ジプロピル、およびジブチルエステルが、特に好ましく用いられる。もちろん、異なるカルボン酸またはエステルの混合物を用いることも可能である。同様に、縮合重合において、例えば、カルボン酸およびエステルの混合物、またはカルボン酸および無水物の混合物を用いることも可能である。
【0125】
さらに好ましい選択肢は、ジアルケニルジエステルである。好適なジアルケニルジエステルとして、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、マロン酸ジアリル、シュウ酸ジアリル、グルタル酸ジアリル、アゼライン酸ジアリル、ジグリコール酸ジアリル、フマル酸ジアリル、リンゴ酸ジアリル、セバシン酸ジアリル、およびスベリン酸ジアリル等が挙げられる。
【0126】
環状ジカルボン酸として、例えば、下記式B3で表される環状ジカルボン酸が挙げられる。
【0127】
【化17】
【0128】
式中、Rdは、N、O、およびSから成る群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含む、飽和、不飽和、または芳香族C3−8環、好ましくはC5−6環である。
複素環として、例えば、フラン(例えば、フラン−2,5−ジカルボン酸化合物が挙げられる)が挙げられる。ヘテロ原子が前記環に含まれる場合、前記2つのカルボキシル基がその環の炭素原子上で結合することが分かるであろう。
【0129】
Rdはフェニル基であってもよい。前記2つのカルボン酸基は、前記環上のいずれの位置にあってもよい。例えば、RがC環である場合、前記2つのカルボン酸基は、互いに対して、オルト、メタ、またはパラの位置にあってもよいが、メタの位置にあるのが好ましい。
【0130】
環状ジエステルとして、例えば、下記式B4で表される環状ジエステルが挙げられる。
【0131】
【化18】
【0132】
式中、Rdは、N、O、およびSから成る群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含む、飽和、不飽和、または芳香族C3−8環、好ましくはC5−6環である。ヘテロ原子が前記環に含まれる場合、前記2つのエステル基はその環の炭素原子上で結合することが分かるであろう。前記2つのエステル基は、前記環上のいずれの位置にあってもよい。例えば、RdがC環である場合、前記2つのエステル基は、互いに対して、オルト、メタ、またはパラの位置にあってもよいが、メタの位置にあるのが好ましい。式(III)中のRおよびRは、それぞれ独立して、直鎖または分枝鎖のC1−20アルキル基、好ましくはC1−10アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基、より好ましくはC1−4アルキル基であるか、直鎖または分枝鎖のC2−10アルケニル基、好ましくはC2−6アルケニル基であるか、C6−20アリール基、C7−20アリールアルキル基、好ましくはC7−12アリールアルキル基、好ましくはC6−10アリール基であるか、または、C3−20シクロアルキル基、好ましくはC4−15シクロアルキル基、特にC5−10シクロアルキル基である。RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0133】
以上の記載においては、ポリシロキサンが第2モノマーに求核的な作用を及ぼすと想定している。前記シロキサンがカルボキシル末端基を備えている場合、第2モノマーは、同様にジオールまたはトリオールであり得る。
【0134】
任意のHO−Q−OHジオールを用いることができる。ここで、Qは、20個以下の炭素原子を有する、脂肪族基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ポリオキシアルキレン基、もしくは芳香族基、または10個以下の炭素原子を有するアルキレン鎖等の共有結合である。例えば以下の式で表されるポリオキシアルキレン基を使用するのが好ましい。
−R10−(OR11−(OR11
式中、好ましくは、R10およびR11は、それぞれ独立してC2−6アルキレン基であり、a=0〜50、b=0〜50、かつ、a+b=1〜50である。
【0135】
したがって、好ましいジオールとして、下記のジオールが挙げられる。
HO−Qz−OH
式中、Qzは、ポリオキシアルキレン−R10−(OR11−(OR11−またはC1−10アルキレン基であり、
10およびR11は、それぞれ独立して、C2−6アルキレン基であり、a=0〜50、b=0〜50、かつ、a+b=1〜50である。
【0136】
2つ以上の第2モノマーを本発明のバインダを調製するのに用いることは、本発明の範囲に含まれる。しかし、用いる第2モノマーは1つのみであることが理想的である。
【0137】
第2モノマーは、前記ポリシロキサンと凡その化学量論組成モル比で混合するか、または、場合によっては、わずかに過剰な量の前記モノマーのうちの1つ、典型的には、過剰な量の求核性物質と混合することが好ましい。
【0138】
さらなる実施形態において、第2モノマーは、メチル無水物等の単純無水物であってもよい。無水物は、スキーム1で示されるように、カルボキシル官能化ポリシロキサンと反応する。
【0139】
ポリ無水物−シロキサン共重合体
【0140】
【化19】
【0141】
スキーム2では、酸塩化物モノマーBを用いる。
【0142】
【化20】
【0143】
無水物リンカーは迅速に加水分解し、通常、表面研磨膜を生じさせる。対象となる無水物は、下記式で表される。
【0144】
【化21】
【0145】
式中、Rfは、C1−6アルキル基であるか、または2つのRfが組み合わさってC1−6アルキル環等の環を形成する。
【0146】
上述したように、ポリオキシアルキレン側鎖を用いることも可能であり、例えば下記のポリシロキサン単位を使用することも可能である。
【0147】
【化22】
【0148】
式中、mおよびnは、独立して、1〜100、例えば1〜50であり、aは1〜10であり、Rは、CHCO−、CHCHCO−、HCO−、またはC1−6アルキル基である。
【0149】
ポリエーテルの導入
好ましい実施形態において、第2モノマーは、PEG基またはPPG基等、ポリエーテル基を分子の骨格に導入するように設計されている。PEGやPPG等、組み込まれたポリ(オキシアルキレン)のMnは、50〜5,000、例えば50〜2,000、より好ましくは1,000未満である。PEGは、1〜100個、より好ましくは1〜50個、特に2〜30個の繰り返し単位を有することが好ましい。
【0150】
例えば、スキーム3によって、ポリエステル−シロキサン重合体の骨格にPEGを組み込むことができる。
【0151】
【化23】
【0152】
ポリエーテルが含まれていると、バインダを用いて形成されたポリマー膜の吸水率を制御することができ、また、PEGにヒドロゲルのような特性を付与してタンパク質吸着を不活性にし得る。
【0153】
したがって、好ましい一選択肢において、モノマーB’は、エチレングリコールまたはプロピレングリコールの繰り返し単位を含む。
【0154】
したがって、モノマーB’は、PEGまたはPPGを含むリンカーによって結合される末端基WおよびZ(通常ヒドロキシル基)を含んでもよい。
【0155】
上記の説明によって、当業者は、請求項における機能に関する定義の要件を満たす様々なバインダを設計することができる。
【0156】
したがって、一実施形態において、本発明は、少なくとも1つのポリシロキサンモノマーA’:
【0157】
【化24】
【0158】
(式中、各Rはメチルであり、
XおよびYは、同一で、(CHx’−OH,−(CHx’−COOH、または−(CHx’−COORを示し、
x’は、1〜5、特に2〜5、例えば3〜5であり、
Rは、C1−6アルキル基であり、
nは、10〜300、特に15〜100である。)と、
下記式で表される少なくとも1つの第2モノマーB’:
RcOOC−Q−COORc(式B’’)
または
Rc’O−Q−ORc’(式B’’’)
(式中、Qは、20個以下の炭素原子を有する、脂肪族基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ポリオキシアルキレン基、もしくは芳香族基であるか、共有結合であるか、または線状ポリシロキサンであり、各Rcおよび各Rc’は、同一または異なっており、H、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C6−20アリール基、C3−20シクロアルキル基、またはC7−20アリールアルキル基を示す。
ただし、(式B’’)または(式B’’’)中のRc基またはRc’基は、モノマーA’のX基およびY基と反応してエステル基を形成する。)と
の反応生成物を含む加水分解性バインダに関する。
【0159】
バインダ
考え得る全ての選択肢に対処する一般式を考案することは困難であることが分かるであろう。好ましい一実施形態において、本発明で使用するバインダは、式(C)で表される単位を含む。
【0160】
【化25】
【0161】
または
【0162】
【化26】
【0163】
式中、各Rは、同一または異なっており、非置換もしくは置換のC1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C6−20アリール基、もしくはC7−20アリールアルキル基、またはポリオキシアルキレン鎖を示し、
x’は上記に定義された通りであり、
nは、1〜500、より好ましくは10〜300、特に15〜100である。
【0164】
本発明のバインダの数平均分子量Mnは、2,000〜100,000、例えば5,000〜80,000、特に10,000〜50,000であることが好ましい。
【0165】
本発明のバインダのガラス転移温度は非常に低く、例えば0℃以下、好ましくは、−50℃以下、特に−100℃以下である。
【0166】
エンドキャッピング
前記重合体は、FおよびGで表される末端基を有していてもよい。F基およびG基は、XおよびY(またはWおよびZ)に対して上記に定義された通りであるか、または、F基およびG基は、重合後に、共重合体をエンドキャッピングするか、もしくは共重合体の末端を変性することによって、誘導することができる。エンドキャッピング/末端変性は、例えば硬化性末端基または架橋剤と反応することができる末端基を含むように、共重合中に必然的に形成される末端基を重合後に官能基化することを意味する。また、R側鎖基を官能基化することによって、架橋を促進してもよい。
【0167】
前記モノマーのうちの1つがわずかに過剰な量で重合に用いられるので、FおよびGは、同一または異なっていてもよく、通常、同一である。FおよびGは、アルコキシシラン等の、アルコキシ基、ヒドロキシル基、もしくは加水分解性基、またはアミンもしくはエポキシ等の他の官能基であることが好ましい。
【0168】
F基およびG基は、架橋基である、すなわち、架橋剤の添加の有無にかかわらず硬化可能であることが理想的である。重合体をエンドキャッピングする選択肢について、以下に詳述する。
【0169】
また、バインダは異なるポリシロキサンモノマー、第2モノマー、および第3モノマーを含み得ることが分かるであろう。したがって、ターポリマー等を形成する可能性は、発明の範囲に含まれる。
【0170】
重合前に全ての出発原料を混合することによって、または反応中にモノマーのうちの1つを投入することによって、共重合体バインダを得てもよい。使用するモノマーに依存する重合を行う方法を当業者は分かるであろうことは理解される。形成されるバインダは、通常、使用される単位のABABAB交互重合体であり、これは、A単位およびB単位はそれら自身ではなく互いに反応するためである。いずれかのタイプの単位が2つ以上ある場合、そのパターンは変化し得るが、ポリシロキサン単位はそれ自身とは重合せず、また第2モノマーもそれ自身とは重合しないことは理解されるであろう。重合を引き起こすためには第2モノマーが含まれることが求められる。重合体は、ブロック共重合体でないことが好ましい。2種の第2モノマーBおよびCがある場合、そのパターンはAXAXAXであり、式中のXは、BまたはCから任意に選ばれる。BおよびCの含有量は、重合化学量論に依存する。
【0171】
重合条件は多種多様であり得るが、通常、20℃〜250℃、例えば40℃〜220℃の温度が適用される。対象となる重合が縮合重合である場合、凝縮液(一般的には水またはアルコール)が形成される。重合が継続している間に、この凝縮液を蒸留により取り除くのが好ましい。この除去は減圧下で実施することができる。重合は不活性雰囲気中、例えば窒素雰囲気中で行うことが好ましい。対象となる重合が付加重合である場合、モノマーのうちの1つを投入して発熱反応を制御することが好ましい。
【0172】
本発明のバインダの数平均分子量(Mn)は、5,000g/mol以上、好ましくは10,000g/mol以上、より好ましくは15,000g/mol以上、特に20,000g/mol超である。特に好ましい実施形態において、その数平均分子量(Mn)値は、10,000g/mol超であることが好ましい。その数平均分子量は、100,000g/mol以下、例えば80,000g/mol以下であることが好ましい。
【0173】
しかし、ここでトレードオフが生じる。Mnが増加し過ぎると粘性が増加し、これによって、塗料組成物を確実に塗布できるように、より多量の溶剤が必要となるためである。より多量の溶剤が用いられると、揮発性有機物の含有量が増加し、これは望ましくない。
【0174】
もちろん、バインダは全体として、異なるMnおよび/または異なる加水分解特性/率を有する、すなわち、異なる加水分解基および(加水分解基の含有量)を有する2つ以上のバインダの混合物から形成され得ることが理解されるであろう。バインダ成分の性質を変えることによって、加水分解の速度を変化させることができる。
【0175】
バインダが、30wt%以上、例えば40wt%以上、50wt%以上等の塗料組成物を形成することが好ましい。バインダが、70wt%以下、例えば60wt%以下の塗料組成物を形成してもよい。
【0176】
架橋剤および硬化剤
本発明の幾つかの実施形態において、使用されるバインダ重合体を架橋することが好ましい。本発明のバインダ重合体は、バインダ重合体を形成するのに用いられる基の性質またはエンドキャッピングによって、硬化性末端基を有し得る。そのような基として、シラノール基、カルビノール基、カルボキシル基、エステル基、水素化物、アルケニル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、アルコキシシラン基、およびアルコキシ基が挙げられる。または、重合体の末端基は、架橋反応を生じさせることができるように反応基でエンドキャップしてもよい。
【0177】
本発明のバインダは、硬化剤不在の状態でも、硬化剤の存在下でも、架橋され得る。
【0178】
当技術分野において周知である硬化剤として、例えば、イソシアネートモノマー、イソシアネートポリマー、およびイソシアネートプレポリマーが挙げられる。ポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーより毒性が低いため好ましい。ポリイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)の化学的性質に基づくものでもよい。これらのポリイソシアネートは、例えば、Bayer Material Science(バイエルマテリアルサイエンス)製の商品名Desmodur(デスモデュール)やVencorex(ベンコレックス)製の商品名Tolonateで供されている。ポリイソシアネートとして、例えば、Bayer Material Science製のDesmodur N3400、Desmodur N3300、Desmodur N3600、Desmodur N75、Desmodur XP2580、Desmodur Z4470、Desmodur XP2565、およびDesmodur VLが挙げられる。
【0179】
ポリイソシアネートは、異なるNCO官能性で形成することができる。NCO官能性とは、ポリイソシアネート分子当たり、またはイソシアネートプレポリマー分子当たりのNCO基量である。異なるNCO官能性を有するポリイソシアネート硬化剤を使用してもよい。
【0180】
硬化剤は、ヒドロキシル基量に対して、0.8〜1.5当量、好ましくは0.9〜1.4当量、より好ましくは0.95〜1.3当量、さらにより好ましくは1〜1.2当量のNCO基量で含まれることが好ましい。
【0181】
バインダの末端基の官能性は、出発モノマーに依存する。その末端基は、広範囲の硬化反応に好適な他の官能基を容易に変性することができる。他の硬化性末端基として、例えばエポキシ基が挙げられる。
【0182】
例えば、バインダ中のヒドロキシル基をアクリル酸またはメタクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸と反応させることによって、(メタ)アクリレート基等のエチレン性不飽和基を導入してもよい。
【0183】
したがって、バインダは、硬化性末端基を生来的に含んでいるか、または硬化性末端基を含むように変性されることが好ましい。硬化性末端基を含むように変性されている化合物を、末端基変性バインダ(または、エンドキャップ化変性バインダ)と具体的に称する場合がある。
【0184】
代替末端基変性剤は、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、またはトリアルコキシシラン等のアルコキシシランを含む。現在市販の付着物剥離性塗料は、一般に、(メ)エトキ−シラン化合物の加水分解を伴う縮合硬化メカニズムによって硬化する。これは、(汚損源との極相互作用を促進し得る)極体の導入量を最小限に抑えるため、例えば、イソシアネートに基づく架橋と比較すると、利点がある。本発明のバインダに用いられる同様の縮合硬化メカニズムを促進するために、末端官能基のエンドキャップ反応を行ってもよい。
【0185】
例えば、3−イソシアネートプロペニルトリメトキシシラン等のアルコキシシランを用いて、末端ヒドロキシル基を変性してもよい。
【0186】
したがって、さらなる実施形態においては、バインダは、−SiR’’(OR’)3−a基(a=0〜2であり、R’’およびR’は独立してC1−6から選択される)を含む化合物でエンドキャップされる。その例として、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、およびジメチルエトキシシリル基が挙げられる。前記化合物は全体として、このシロキシ基と、形成された共重合体バインダ上の末端基と反応可能なさらなる官能基とを含む。エンドキャッピング単位としては、Mnが400以下の低分子量化合物が理想的である。
【0187】
使用する化合物として、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、およびビニルトリメトキシシランが挙げられる。水分の存在下で、バインダの末端に存在するシロキシ末端基が架橋し始める。場合によっては、塗料を硬化するために別個の架橋剤(例えば、メチルトリメトキシシラン等のアルコキシシランまたはその縮合物(例えばWACKER(登録商標)TES40WN))を用いる場合、末端基がモノ(メ)エトキシシランであってもよい。
【0188】
架橋剤は、0〜10乾燥重量パーセントの塗料組成物を構成するのが好ましく、架橋剤として、例えば、下記式(2)で表される有機ケイ素化合物、その部分加水分解縮合物、またはそれら2つの混合物が挙げられる。
Ra−Si−X4−d(2)
式中、各Rは、独立して、1〜6個の炭素原子を有する一価の非置換または置換の炭化水素基を示し、各Xは、独立して、加水分解性基を示し、dは、0〜2、例えば0〜1等の整数を示す。
【0189】
バインダ重合体と硬化剤との混合は、塗料を物体に塗布する直前、例えば、時期尚早に硬化しないように塗料またはバインダを乾燥した状態に維持しつつも硬化可能な状態で供給する1時間前以内に行ってもよい。幾つかの実施形態において、硬化剤/エンドキャッピング剤を別個に残りの塗料組成物に供給して、塗料が物体に塗布される前に硬化してしまうのを防ぐ。末端がモノ(メ)エトキシシランである場合、TES40WN等の(メ)エトキシシラン架橋剤をバインダと組み合わせて用いてもよい。これによって、本発明の塗料組成物をマルチパック(好ましくは2パック)の調合物として供給することができる。
【0190】
したがって、別の態様において、本発明は、本明細書で記載したようなバインダ重合体(I)と、硬化剤またはエンドキャッピング剤(II)とを含むキットを提供する。キットは、塗布直前に成分を混合する方法についての指示とともに供されるのが好ましい。また、架橋工程を促進するために、1つ以上の成分に触媒を付与してもよい。
【0191】
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、バインダまたはバインダの混合物を含む。また、前記組成物は、付着物剥離性組成物の他の従来成分を含んでもよい。
【0192】
ポリシロキサンに基づくバインダ系は、通常、20〜90乾燥重量パーセント、40%乾燥重量パーセント以上、特に50〜90乾燥重量パーセントの塗料組成物を構成する。
【0193】
ポリシロキサンに基づくバインダ系は、上述したように、バインダ、架橋剤、硬化系を意味する。
【0194】
本発明のバインダは海水中で分解する。バインダの分解反応は、重合体骨格に生じる加水分解反応であり、すなわち、加水分解性結合が重合体骨格に含まれることと理解されよう。
【0195】
バインダに加えて、本発明の塗料組成物は、添加油、触媒、殺生物剤、酵素、およびコバインダ等の他の成分を含んでもよい。他の従来成分としては、溶剤、添加剤、顔料、および充填剤が挙げられる。
【0196】
添加油
塗料組成物は、例えばWO2011/076856号に記載されているような、周知の親水性に変性した添加油を含んでもよい。さらに、前記組成物は、親水性に変性したポリシロキサンオイル、すなわち、ポリシロキサンに基づいたバインダマトリックスに共有結合しない構成要素を含んでもよい。親水性に変性したポリシロキサンオイルは、同分子中に含まれる親水基および親油基の含有量により、界面活性剤や乳化剤として広く用いられている。上述したポリシロキサン成分とは対照的に、親水性に変性したポリシロキサンオイルは、バインダ(もしくはバインダ成分)または架橋剤(含まれている場合)と反応することができる基を含まないように選択され、したがって、親水性に変性したポリシロキサンオイルは、特にバインダ成分に反応しないように意図されている。特に、親水性に変性したポリシロキサンオイルは、ポリシロキサンに基づくバインダ系の構成要素と反応しないように、Si−OH基等のいずれのシリコン反応性基やSi−OR(アルコキシ基、オキシム基、アセトキシ基)等の加水分解性基を含まない。
【0197】
通常、親水性に変性した非反応性ポリシロキサンオイルは、極性を有し、かつ/または水素結合が可能である非イオン性オリゴマーまたはポリマー基を添加することによって、変性され、これによって、極性溶剤、特に水、または極性オリゴマーもしくはポリマー基との相互作用を促進する。これらの基として、例えば、アミド類(例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド])、ポリ(N,N−ジメタクリルアミド)、酸類(例えば、ポリ(アクリル酸))、アルコール類(例えば、ポリ(グリセリン)、ポリHEMA、多糖類、ポリ(ビニルアルコール))、ケトン類(ポリケトン類)、アルデヒド類(例えば、ポリ(アルデヒドグルロン酸))、アミン類(例えば、ポリビニルアミン)、エステル類(例えば、ポリカプロラクトン類、ポリ(酢酸ビニル))、エーテル類(例えば、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(プロピレングリコール)等のポリオキシアルキレン類)、イミド類(例えば、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン))、および前述した共重合体が挙げられる。
【0198】
親水性は、ポリオキシアルキレン基の変性によって得ることが好ましい。好ましい一実施形態において、親水性に変性したポリシロキサンオイル(含まれている場合)の数平均分子量(Mn)は、100〜100,000g/molの範囲内、例えば、250〜75,000g/molの範囲内、特に500〜50,000g/molの範囲内である。
【0199】
塗料組成物中の1つ以上の親水性に変性したポリシロキサンオイルの含有量は、0.01〜30乾燥重量パーセント、例えば0.05〜10乾燥重量パーセントである。幾つかの実施形態において、1つ以上の親水性に変性したポリシロキサンオイルは、0.05〜7乾燥重量パーセント、例えば0.1〜5乾燥重量パーセント、特に0.5〜3乾燥重量パーセントの塗料組成物を構成する。
【0200】
対象となる他の添加油は、WO2008132196号に記載されている。好適な非反応性流体は、WO2008/132195号に開示されているような、メチルフェニルシリコーンオイル、ポリジメチルシロキサン、カルボキシル官能性有機シロキサン等のシリコーンオイル、およびPCT/EP第2012/065920号に開示されているような、石油、ポリオレフィンオイル、ポリ芳香族オイル、ポリテトラフルオロエチレンまたはフッ化アルキル基もしくはアルコキシ基含有ポリマー流体等のフッ素樹脂、ラノリンおよびラノリン誘導体、および他のステロールおよび/またはステロール誘導体、または、これらの組み合わせである。非反応性流体として、メチルフェニルシリコーンオイルが好ましい。また、WO2014131695号に記載されているフッ化両親媒性ポリマー/オリゴマーも対象となる。非反応性流体の割合は、塗料組成物の固形分に対して、好ましくは5wt%〜25wt%であり、より好ましくは5wt%〜10wt%である。
【0201】
殺生物剤/防汚剤
一実施形態において、殺生物剤は、本発明のバインダに用いてもよい。好適な殺生物剤は、周知のものであり、WO2013/000479号に記載されている。
【0202】
本明細書の文脈において、用語「殺生物剤」は、化学的手段または生物学的手段によって、任意の有害な生物を駆除し、抑止し、無害化し、その活動を防止し、または有害な生物に対して制御効果があるように意図されている反応性物質を意味する。殺生物剤の実例として、ビス(ジメチルジチオカルバメート)亜鉛、エチレン−ビス(ジチオカルバメート)亜鉛、およびエチレン−ビス(ジチオ−カルバメート)マンガン等のメタロ−ジチオカルバメート類、ならびにこれらの複合体;ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジン−チオネート−O,S)銅;アクリル酸銅;ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオネート−O,S)亜鉛;フェニル(ビスピリジル)−ビスマスジクロライド;酸化銅(I)、亜酸化銅、金属銅、および銅‐ニッケル合金等の銅合金等の金属殺生物剤;チオシアン酸銅(I)、塩基性炭酸銅、水酸化銅、メタほう酸バリウム、および硫化銅等の金属塩;3a,4,7,7a−テトラヒドロ−2−((トリクロロ−メチル)−チオ)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、ピリジン−トリフェニルボラン、1−(2,4,6−トリクロロ−フェニル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジン、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミン−s−トリアジン、およびキノリン誘導体等の複素環式窒素化合物;2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−オクチル−3(2H)−イソチアゾリン、(Sea−Nine(登録商標)211N)、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、および2−(チオシアナトメチルチオ)−ベンゾチアゾール等の複素環硫黄化合物;N−(1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)−N,N’−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、N−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N−ジメチル尿素)、およびΝ,Ν−ジメチルクロロフェニル尿素等の尿素誘導体;カルボン酸アミドまたはイミド;2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、1,1−ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)スルフォニル)−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)−メタンスルフェンアミド、2,2−ジブロモ−3−ニトリロ−プロピオンアミド、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、Ν,Ν−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、およびN−メチロールホルムアミド等のスルホン酸およびスルフェン酸アミドまたはイミド;2−((3−ヨード−2−プロピニル)オキシ)−エタノールフェニルカルバメートおよびN,N−ジデシル−N−メチル−ポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネート)等のカルボン酸の塩類またはエステル類;デヒドロアビエチルアミンおよびココジメチルアミン等のアミン類;ジ(2−ヒドロキシ−エトキシ)メタン、5,5’−ジクロロ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、およびメチレン−ビスチオシアネート等の置換メタン;2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ベンゼンジカルボニトリル、1,1−ジクロロ−N−((ジメチル−アミノ)−スルフォニル)−1−フルオロ−N−フェニルメタンスルフェンアミド、1−((ジヨードメチル)スルフォニル)−4−メチル−ベンゼン等の置換ベンゼン;トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウムクロリド等のテトラアルキルホスホニウムハロゲニド類;n−ドデシルグアニジンヒドロクロリド等のグアニジン誘導体;ビス−(ジメチルチオカルバモイル)−ジスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド等のジスルフィド類;フェニルカプサイシン;メデトミジン等のイミダゾール含有化合物;2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール、およびこれらの混合物から選択される殺生物剤が挙げられる。目下、前記殺生物剤が錫を含まないことが好ましい。
【0203】
目下好ましい殺生物剤は、2,4,5,6−テトラ−クロロイソフタロニトリル(クロロタロニル)、チオシアン酸銅(チオシアン酸第一銅)、N−ジクロロ−フルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド(ジクロフルアニド)、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(ジウロン)、N2−t−ブチル−N4−シクロプロピル−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(シブトリン)、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、(2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール;トラロピリル)、シブトリン、(RS)−4−[1−(2,3−ジメチルフェニル)エチル]−3H−イミダゾール(メデトミジン)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT、Sea−Nine(登録商標)211N)、ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)スルフォニル)フルオロ−N−(p−トリル)メタンスルフェンアミド(トリルフルアニド)、2−(チオシアノメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾール((2−ベンゾチアゾリルチオ)メチルチオシアネート;TCMTB)、トリフェニルボランピリジン(TPBP);ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオネート−O,S)−(T−4)亜鉛(亜鉛ピリジンチオン;亜鉛ピリチオン)、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオネート−O,S)−T−4)銅(銅ピリジンチオン;銅ピリチオン;銅オマジン)、亜鉛エチレン−1,2−ビス−ジチオカルバメート(亜鉛−エチレン−N−N’−ジチオカルバメート;ジネブ)、酸化銅(I)、金属銅、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(ジウロン)およびジヨードメチル−p−トリスルホン、Amical 48、ならびにフェニルカプサイシンからなる群から選択される殺生物剤である。少なくとも1つの殺生物剤は、上記のリストから選択されることが好ましい。
【0204】
特に好ましい実施形態において、殺生物剤は、スライムおよび藻類等の軟質の汚れに対して有効な殺生物剤から選択されるのが好ましい。そのような殺生物剤として、例えば、N2−t−ブチル−N4−シクロプロピル−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(シブトリン)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT、Sea−Nine(登録商標)211N)、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオネート−O,S)−(T−4)亜鉛(亜鉛ピリジンチオン;亜鉛ピリチオン)、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオネート−O,S)−T−4)銅(銅ピリジンチオン;銅ピリチオン)、亜鉛エチレン−1,2−ビス−ジチオカルバメート(亜鉛−エチレン−N−N’−ジチオカルバメート;ジネブ)、酸化銅(I)、金属銅、チオシアン酸銅(チオシアン酸第一銅)、およびビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオネート−O,S)−T−4)銅(銅ピリジンチオン;銅ピリチオン;銅オマジン)等が挙げられる。
【0205】
さらに特に好ましい実施形態において、殺生物剤は、ピリチオン錯体、亜鉛ピリチオン、または銅ピリチオン等の有機殺生物剤である。有機殺生物剤は、完全に有機由来の殺生物剤であっても、部分的に有機由来の殺生物剤でもよい。海洋用防汚剤を、任意で、不活性担体に内包させるかもしくは吸着させるか、または他の物質と結合させるかして剥離性を制御してもよい。
【0206】
本発明の防汚組成物に含まれる有機殺生物剤の総量は、0.1wt%〜40wt%の範囲内、例えば、0.1wt%〜20wt%、0.5wt%〜10wt%(塗料組成物の乾燥重量)、例えば1wt%〜8wt%でもよい。本発明の防汚組成物に含まれる、亜酸化銅、酸化銅(I)、および金属銅等の無機殺生物剤の総量は、0.5〜80乾燥重量パーセント、例えば、1〜70乾燥重量パーセントでもよい。この成分量は、最終用途や用いられる海洋用防汚剤に依存して変わることが分かるだろう。
【0207】
触媒
硬化工程を促進するために、本発明の塗料組成物は、触媒を含んでもよい。WO2014/131695号は、考えられる触媒の広範囲なリストを提供している。用いることができる触媒として、例えば、錫、鉄、鉛、バリウム、コバルト、亜鉛、アンチモン、カドミウム、マンガン、クロム、ニッケル、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、およびジルコニウム等の様々な金属の遷移金属化合物、金属塩、および有機金属錯体が挙げられる。上記塩類は、長鎖カルボン酸および/もしくはキレート化合物の塩、または有機金属塩であることが好ましい。好適な触媒として、例えば、ジラウリン酸ジブチル錫、ジオクタン酸ジブチル錫、二酢酸ジブチル錫、2−エチルヘキサン酸ジブチル錫、ジネオデカン酸ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジベンゾアート、ジブチル錫アセトアセトネート、ジブチル錫アセチルアセトネート、ジブチル錫アルキルアセトアセトネート、ジラウリン酸ジオクチル錫、ジオクタン酸ジオクチル錫、二酢酸ジオクチル錫、2−エチルヘキサン酸ジオクチル錫、ジネオデカン酸ジオクチル錫、ジオクチル錫ジメトキシド、ジオクチル錫ジベンゾアート、ジオクチル錫アセトアセトネート、ジオクチル錫アセチルアセトネート、ジオクチル錫アルキルアセトアセトネート、ジメチル錫ジブチレート、ビスネオデカン酸ジメチル錫、ジネオデカン酸ジメチル錫、ナフテン酸錫、酪酸錫、オレイン酸錫、カプリル酸錫、オクタン酸錫、ステアリン酸錫、オクタン酸錫、ステアリン酸鉄、2−エチルヘキサン酸鉄、オクタン酸鉛、2−エチルオクタン酸鉛、2−エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、金属トリフラート、酒石酸トリエチル錫、オクタン酸第一錫、トリスベリン酸カルボメトキシフェニル錫、イソブチル錫トリセロエートが挙げられる。
【0208】
好適な触媒の例として、さらに、2−エチルヘキサン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス、およびネオデカン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物が挙げられる。好適な触媒の例として、さらに、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、および有機ハフニウム化合物、ならびにナフテン酸チタン、ナフテン酸ジルコニウム、チタン酸テトラブチル、テトラキス(2−エチルヘキシル)チタネート、チタン酸トリエタノールアミン、テトラ(イソプロペニルオキシ)チタネート、チタンテトラブタノレート、チタンテトラプロパノレート、チタンテトライソプロパノレート、ジルコン酸テトラブチル、テトラキス(2−エチルヘキシル)ジルコネート、ジルコン酸トリエタノールアミン、テトラ(イソプロペニルオキシ)ジルコネート、ジルコニウムテトラブタノレート、ジルコニウムテトラプロパノレート、ジルコニウムテトライソプロパノレート、およびジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタネート、ジイソプロピルビス(エチルアセトアセトニル)チタネート、およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトネート)等のキレート化チタン酸塩等のチタン酸エステルおよびジルコン酸エステルが挙げられる。
【0209】
触媒の含有量は、塗料組成物の総重量に対して、0.01wt%〜5wt%、特に0.05wt%〜4wt%であるのが好ましい。
【0210】
溶剤、顔料、充填剤、および添加剤
塗料は溶剤を含んでもよい。好適な溶剤としては、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、および芳香族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、およびこれらの混合物が挙げられる。好適な溶剤の例としては、ホワイトスピリット溶剤、シクロヘキサン溶剤、トルエン溶剤、キシレン溶剤、ナフサ溶剤、メトキシプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、および2−エトキシエチルアセテート等のエステル類;オクタメチルトリシロキサン、ならびにこれらの混合物が挙げられる。溶剤が含まれる場合、その溶剤は、通常、塗料組成物の総重量に対して5wt%〜50wt%を構成する。固形分は、ASTM D2697に従って決定してもよい。
【0211】
本発明の塗料組成物は顔料を含んでもよい。顔料の例としては、黒色酸化鉄、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、赤色モリブデン酸塩、黄色モリブデン酸塩、硫化亜鉛、酸化アンチモン、ナトリウムアルミニウムスルホシリケート、キナクリドン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、インダンスロンブルー、酸化アルミニウムコバルト、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス−アセトアセト−トリジオール、ベンゾイミダゾロン、キナフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン、キノフタロンイエロー、金属フレーク材料(例えばアルミニウムフレーク)、または、亜鉛末もしくは亜鉛合金等の他の所謂バリア顔料もしくは防蝕顔料、または、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、もしくは窒化ホウ素等の他の所謂潤滑性顔料が挙げられる。好ましい顔料は、黒色酸化鉄、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、ナトリウムアルミニウムスルホシリケート、および二酸化チタンである。
【0212】
顔料の割合は、塗料組成物の総重量に対して、0wt%〜25wt%、好ましくは0wt%〜15wt%である。
【0213】
本発明の塗料組成物は充填剤を含んでもよい。本発明の塗料組成物に用いることができる充填剤の例として、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ならびに焼成シリカ、ベントナイト、および他の粘土を含む、シリカまたはケイ酸塩(雲母、長石、および陶土等)、ならびに、通常、縮合した分枝状ポリシロキサンである固体シリコーン樹脂が挙げられる。ヒュームドシリカ等の幾つかの充填剤は、塗料組成物に対してチキソトロピー効果を及ぼす。充填剤の割合は、塗料組成物の総重量に対して、0wt%〜25wt%、好ましくは0wt%〜10wt%、より好ましくは0wt%〜5wt%である。
【0214】
本発明による塗料組成物は、他の界面活性剤、湿潤剤、増粘剤、沈降防止剤、および染料から選択される1つ以上の成分を任意に含む。
【0215】
別のバインダを用いて、塗膜の自己研磨特性および機械特性を調整することができる。本発明のバインダに加えて、本発明による塗料組成物に用いることができるバインダの例として、他のポリシロキサンが挙げられる。
【0216】
本発明のバインダは、滑りやすく、撥水撥汚性、非接着性、自己洗浄性、付着物剥離性、低空気抵抗性、および/または低摩擦性の表面を有する塗料組成物を調製するのに用いることができる。これらの塗料組成物は、優れた付着防止性および撥汚性を発揮する。
【0217】
塗料組成物の塗布
本発明の塗料組成物を、汚損にさらされる物体表面の全体または一部に塗布してよい。その表面は、恒久的または断続的に(例えば、潮の動き、異なる積荷の荷重、または膨張による)水中にあり得る。物体表面は、通常、船舶の船体または石油採掘用プラットフォームもしくはブイ等の海洋用固定物体の表面である。塗料組成物の塗布は、例えば塗料を(ブラシまたはローラー等を用いて)物体に塗布または噴霧する等、任意の簡便な手段により実施することができる。塗布するには、通常、表面を海水から隔離する必要がある。技術上従来公知であるように塗料を塗布することができる。
【0218】
塗料組成物は、刷毛塗り、ローラー塗り、または(エアレスおよびエアアシスト)噴霧等の一般的な技術によって塗布することができる。基材に適切に付着させるために、下塗りした基材に塗料組成物を塗布することが好ましい。プライマーは、PDMS塗料に好適な任意の従来のプライマー/シーラー塗料系でもよい。また、経年化した防汚塗料層または付着物剥離性層を含む基材に、本発明による塗料組成物を塗布することもできる。本発明による塗料組成物をそのような高経年化した層に塗布する前に、その古い層を高圧水洗によって洗浄し、あらゆる付着物を除去する。WO99/33927号に開示されたプライマーを、経年化した塗料層と本発明による塗料組成物との間のタイコートとして用ることもできる。
【0219】
プライマーは、WO2010/018164号に開示されているように接着促進剤を任意で含んでもよい。
【0220】
プライマーは、殺生物剤を任意で含んでもよい。塗料は、硬化すると、その直後に浸漬されることができ、また、その直後に防汚または付着物剥離を防止することができる。上述したように、本発明による塗料組成物は、非常に優れた防汚性および付着物剥離性を有する。これによって、これらの塗料組成物は、海洋用の防汚塗料または付着物剥離性塗料として用いるのに非常に好適となる。ボート船体、ブイ、掘削プラットフォーム、乾ドック設備、オイルおよび/またはガス製造施設、浮体式オイルおよびガス処理、貯蔵および荷揚げ用タンク、水産養殖設備、網製品およびケージ、沖合風車、潮汐エネルギー装置、および波動エネルギー装置等のエネルギー生成装置、発電装置用および発電所用の冷却水取水口、水に浸漬されるパイプ、ならびに水を貯蔵および輸送するのに用いられるタンク、パイプおよび導管等の動的構造および静的構造に、前記塗料を用いることができる。塗料は、金属、コンクリート、木材、プラスチック、または繊維強化プラスチック等の構造体に用いられる、あらゆる基材に塗布することができる。
【0221】
以下、非限定の実施例を参照して本発明を定義する。
【0222】
SiH含有量の測定
用いられた水素シロキサンのSiH値および反応マトリックスのSiH値の測定は、それぞれ、ガスビュレット中にアリコートを秤量した試料量の、酪酸ナトリウムにより引き起こされるの分解を利用してガス容積測定により行われる。測定した水素体積を一般ガス方程式に用いる場合、その水素体積によって、出発原料および反応混合物中の活性SiH官能基の含有量を測定することができ、これによって変換制御ができる。
【0223】
重合体モル質量分布の測定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって、重合体を特性評価する。分子量分布(MWD)は、Polymer Laboratories(ポリマーラボラトリー社)製PLgel5μmMixed−Dカラム(300mm×7.5mm)2本を直列に備えたPolymer Laboratories製PL−GPC50機器を用い、テトラヒドロフランを溶離剤として、周囲温度および1mL/分の一定流量で、屈折率(RI)検出器を用いて測定した。前記カラムは、Polymer Laboratories製のポリスチレン標準液Easivials PS−Mを用いて較正した。データをPolymer Laboratories製のソフトウエアCirrusを用いて処理した。
【0224】
5mgの乾燥重合体に相当する量の重合体溶液を、5mLのテトラヒドロフランに溶解して試料を調製した。試料を室温で最低4時間維持した後、GPC測定用にサンプリングした。
【0225】
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、およびMw/Mnに相当する分散度(u)を表に示す。
【0226】
赤外分光法(IR)
Specac Ltd.製の単一反射減衰全反射(ATR)アクセサリを備えたPerkin−Elmer(パーキンエルマー)製Spectrum100FTIRに、IRスペクトルを記録した。
【0227】
吸水率および膜損失率
吸水率は、重量法によって測定した。塗料を、クリアランス300μmのフィルムアプリケーターを使用して、あらかじめ秤量かつ番号が付されたガラスパネルに塗布した。塗膜を、周囲条件下で1日以上、50℃で一晩中、乾燥させ、その後、デシケーターに入れて真空状態で24時間置いた。乾燥後、塗布ガラスパネルを秤量し、人工海水が充填された容器に入れた。脱イオン水にNaClを溶解し(33.3g/l)、必要に応じて、2MのHCl(水)溶液またはNaOH(水)溶液を用いてpHを8.1〜8.4に調節して、前記人工海水を調製した。
【0228】
測定では、圧縮空気を用いてパネルと塗面を迅速に乾燥させた。パネルを秤量し、その後、2日間50℃で乾燥させた。その後、パネルをデシケーターに入れて真空状態で24時間置き、その後、再度秤量した。曝露後の塗膜の乾燥重量に対する乾燥前後の重量差を、吸水率としてパーセント値で表す。曝露前の初期乾燥膜重量に対する、測定時の乾燥膜の重量差を、膜損失率としてパーセント値で表す。結果は、3つの同等物の平均値として示される。
【0229】
海水中の塗膜の研磨速度の測定
塗膜の膜厚の経時的な減少を測定して研磨速度を求めた。この試験には、PVCディスクを使用した。塗料組成物に好適なプライマー/タイコートを用いて、PVCディスクの下塗を行った。フィルムアプリケーターを用いて、塗料組成物をディスクに放射状の縞模様に塗布した。レーザー表面観測装置によって、乾燥塗膜の膜厚を測定した。PVCディスクをシャフトに取り付け、海水が流れる容器内で回転させた。ろ過され、かつ25℃±2℃に温度調整された天然海水を用いた。膜厚を測定するために、PVCディスクを一定の間隔で取り出した。ディスクをすすぎ、室温で一晩自然乾燥させた後、膜厚を測定した。
【0230】
示差走査熱量測定(DSC)
Mettler Toledo DCS1機器を用いて測定を行った。密閉アルミニウム製るつぼに10mgの試料を投入し、−150℃〜50℃の温度範囲を走査し、10℃/分の加熱速度とした。
【0231】
化学物質:
アルファ−、オメガ−カルビノールシロキサン、例えば、Tegomer H−Si 2115(n=10)またはTegomer H−Si 2315(n=30)、Evonik(エボニック)
アルファ−、オメガ−水素シロキサン(α−、ω− n=30)、SiH=0.9molH/kg
アルファ−、オメガ−水素シロキサン(α−、ω− n=10)、SiH=3.24molH/kg
5−ヘキサン酸メチル、TCI Europe GmbHより入手可能
ジエチル−エステルモノマー(シュウ酸ジエチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル)、Sigma−Aldrich(シグマアルドリッチ)より入手可能
3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、Wacker(ワッカー)より入手可能
【0232】
チタン(IV)ブトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫、シグマアルドリッチより入手可能
用いるカールシュテット触媒溶液は、0.1重量%プラチナ濃度のプラチナ(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(AB153234、CAS68478−92−2、Gelest/ABCRより入手可能、2.1〜2.4重量%のプラチナ、これをデカメチルシクロペンタシロキサンを用いて希釈し、0.1重量%Ptに調節する)である。以下の実施例における触媒の投与量は、ヒドロシリル化の反応成分の初期重量の総量を意味する。添加する溶剤は、この計算には考慮に入れない。
【0233】
実施例
実施例1〜3:カルビノール終端ポリジメチルシロキサンとジエチル−エステルモノマーとのエステル交換反応により得られるエステル−シロキサンバインダ
【0234】
【化27】
【0235】
【表1】
【0236】
重合手順:カルビノール終端PDMS(n=30)とジエチル−エステルモノマー(DEO、DES、DEA)とを、1.1:1の化学量論比で、0.05%(w/w)チタン(IV)ブトキシド触媒を用いて重合した。通常の縮合反応装置一式を使用した。2つの反応体と触媒とを室温で10分間撹拌し、その後、還流温度が78.4℃を超えないようにしながら、温度を200℃まで徐々に上昇させた。凝縮液がそれ以上形成されないことを確認し、10mbarになるまで徐々に真空状態を生じさせた。10mbarで5〜6時間、重縮合反応させ、その後、真空状態を解除することによって反応を終了し、反応混合物を室温まで放冷した。
【0237】
出発カルビノール終端PDMS(n=30)をGPC分析した結果、Mnは2,300g/molであり、Mwは3,330g/molであった。実施例1〜3に対して得られた分子量(GPC:Mn/Mw、表1)が著しく高いことから、3つのバインダ全てにおいて重合が成功したことが分かる。実施例1(DEOを用いた重合)の結果、PDMS−カルビノールモノマーが化学量論的に過剰であったにもかかわらず、DEO末端基を有するバインダが生成された。これは、第1エチルエステルがPDMS−カルビノールと反応した際にDEOの第2エチルエステルの反応性が変化したことによる。FT−IRを用いて、約3,200〜3,550cm−1において特徴的なアルコール伸縮がなく、結果として生じたバインダ(実施例1)に対して、約1,735〜1,750cm−1において明確な2つの別個のエステル伸縮を確認し、それによってDEO末端基の存在を確認した。また、実施例1のバインダは、イソシアネート架橋剤(Desmodur(登録商標)N3600、Bayer(バイエル)製)と架橋反応しなかった。DESのエチル−エステル基がCアルキル結合によって分離される実施例2、および、DEAのエチル−エステル基がCアルキル結合によって分離される実施例3において、エチル−エステル基の反応性は、同じようには変化しなかった。よって、実施例2および実施例3における重合の結果、PDMS−カルビノールモノマーがわずかに過剰であったため、カルビノール終端バインダが生成された。これは、約3,200〜3,550cm−1において特徴的なアルコール伸縮があり、約1,735〜1,750cm−1(FT−IR)で1つのエステル伸縮があり、かつ、バインダがイソシアネート架橋剤(Desmodur(登録商標)N3600、Bayer製)と架橋する性能を有していたことによって、確認された。
【0238】
実施例4:カルビノール終端ポリジメチルシロキサンとメチルエステル終端ポリジメチルシロキサンとのエステル交換反応によるエステル−シロキサンバインダ
【0239】
メチルエステル終端シロキサン(前駆体シロキサン−1)の調製
アルファ−、オメガ−メチルエステル官能基を有するシロキサン(前駆体シロキサン−1)を形成する5−ヘキサン酸メチルを用いた、アルファ−、オメガ−SiHシロキサン(n=10)のヒドロシリル化:窒素ライン、撹拌装置、および内部温度計を備えた多口フラスコに、175.30g(1.37mol)の5−ヘキサン酸メチル(30mol%過剰)と324.71g(1.05mol SiH)のアルファ−、オメガ−水素シロキサン(3.24当量SiH/kg)とを投入し、90℃に加熱した。30wppmカールシュテット触媒を添加することで、ヒドロシリル化反応を開始した。7時間後、ガス容積測定においてSiHは確認されなかった。生じた製品を、140℃、1mbar未満で4時間蒸留して揮発化合物を全て除去し、ろ過した結果、460gの透明で黄みがかった製品を得た。
【0240】
アルファ−、オメガ−メチルエステル官能基を有するシロキサン(前駆体シロキサン−1)(n=10、0.807mol−COOMe/kg、486.18g/mol、−COOMe Mw〜873.60g/mol(理論値))

前駆体シロキサン−1(N=10)とアルファ−、オメガ−ヒドロキシアルキル官能基を有するシロキサンTegomer H−Si 2115(N=10)とのエステル交換反応:
【0241】
【化28】
【0242】
窒素ライン、撹拌装置、および内部温度計を備えた多口フラスコに、218.41gのアルファ−、オメガ−メチルエステル官能基を有するシロキサン「前駆体シロキサン−1」(250mmol=500mmol−COOMe)と、206.43gのアルファ−、オメガ−ヒドロキシアルキル官能基を有するシロキサン(250mmol=500mmol−(CHOH)とを投入し、90℃に加熱した。さらに、0.32gのブチルチタネート(0.075wt%)を添加し、反応混合物を撹拌しながら8時間200℃に加熱した。窒素をゆっくりと除去し、それによって、メタノールの沸騰を促進した。前記反応を完結させるために、さらに6時間、10mbarの真空状態にした。
【0243】
わずかに黄みがかった、室温で粘着性を有するポリマーを得た。
実施例4に対するGPC分析:Mw=62,003g/mol、Mn=16,898g/mol、u=3.67
【0244】
実施例5:人工海水における吸水率および膜損失率
キシレン中の、イソシアネート系架橋剤、3−イソシアネ−トプロピルトリメトキシシラン、およびジラウリン酸ジブチル錫触媒を用いて、実施例2、3、および4で得られたポリ(エステル−シロキサン)バインダの透明塗膜を硬化した。ヒドロキシル末端基(バインダ)とイソシアネート(架橋剤)との比率を1:1.5(OH:NCO)とし、0.1%(w/w)の触媒と30%(w/w)のキシレンを用いて、塗膜を形成した。クリアランス300μmのフィルムアプリケーターを用いて、膜をガラス製試験パネルに塗布した。人工海水における吸水率および膜損失率を、30日間にわたって試験した。30%(w/w)キシレン中の1%(w/w)ジラウリン酸ジブチル錫触媒を使用し、3%(w/w)のケイ酸エチル架橋剤(TES40WN、Wacker製)により、66%(w/w)のシラノール終端PDMS(DMS−S33、Gelest(ゲレスト)製)を硬化して、非研磨型基準(「PDMS基準」)を調製した。非研磨型PDMS基準を選択したのは、典型的な市販の付着物剥離性塗料に用いられるバインダ系と類似しているためである。
【0245】
【表2】
【0246】
結果は、ポリ(エステル−シロキサン)バインダを含む塗料は、PDMS基準と同様の吸水率を有することを示す。特に、実施例2〜4の塗料は全て、非研磨型PDMS基準と比較して、30日後の膜損失率が高い。
【0247】
実施例6:塗料組成物
表3に示した成分を混合して、6つの異なる塗料組成物を調製した。第1の組成物「FRC基準」は、通常の付着物剥離性塗料組成物である。塗料2〜4の組成は類似しており、シラノール終端ポリジメチルシロキサンバインダ(非分解性)の代わりに実施例2〜4のポリ(エステル−シロキサン)が含まれている。塗料5および塗料6は、銅ピリチオン殺生物剤の追加による、塗料2および塗料4の変形例である。
【0248】
【表3】
【0249】
実施例7:研磨
クリアランス300μmのフィルムアプリケーターを用いて、表3の最初から4つの塗料組成物(FRC基準、塗料2〜4)を、PVCディスクに放射状縞模様に塗布した。PVCディスクには、あらかじめ、特定の条件下で、エアレス噴霧によって、ヨツン製Safeguard Universal ESプライマーとヨツン製SeaLionタイコートを塗布して下塗を実施していた。試験開始前に、試験縞を周囲条件下で24時間以上硬化させた。表4に4つの組成物の研磨を示す。各測定値は、3つの並行する縞の平均値を表す。
【0250】
【表4】
【0251】
結果は、本発明の3つの調合物(塗料2〜4)は全て、時間の経過とともに、表面が研磨され続け、膜厚が減少したことを示す。FRC基準の膜厚は最初に少し減少し、その後は、継続して研磨する兆候を示すことなく、膜厚は安定する。
【0252】
実施例8:比較例
2つの比較例バインダ、すなわち、比較例EG2および比較例EG4を、WO2015/082397A1号(実施例EG2および実施例EG4、表1、27頁)のラクトン−シロキサン−ラクトンABA型トリブロック共重合体に基づいて合成した。
【0253】
比較例EG2
窒素ライン、撹拌装置、および内部温度計を備えた多口フラスコに、初期窒素パージ後、130gのTegomer H−Si 2315(n(OH)=0.1182mol)と240.5gのD,L−ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)(n=1.6686mol)とを投入し、130℃〜140℃に加熱した。さらに、0.34gのBorchiKat28(0.05mol%のD,L−ラクチド)を添加し、反応混合物を撹拌しながら6時間190℃に加熱した。重合体溶融物をアルミニウム板に移すことで、わずかに黄色の固体として100%バルク重合体を得た。所望の重合体が形成されたこと、特に完全なシロキサン骨格が形成されたことをNMR分光分析によって確認した。
GPCデータ:Mw=10.520g/mol、Mn=2.496g/mol、u=4.12
【0254】
比較例EG4
窒素ライン、撹拌装置、および内部温度計を備えた多口フラスコに、初期窒素パージ後、38.16gのTegomer H−Si 2315(n(OH)=0.0347mol)と350.0gのD,L−ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)(n=2.428mol)とを投入し、130℃〜140℃に加熱した。
さらに、0.49gのBorchiKat28(0.05mol%のn(D,L−ラクチド)を添加し、反応混合物を撹拌しながら6時間で190℃に加熱した。重合体溶融物をアルミニウム板に移すことで、わずかに茶色がかった固体として100%バルク重合体を得た。所望の重合体が形成されたこと、特に完全なシロキサン骨格が形成されたことをNMR分光分析によって確認した。
GPCデータ:Mw=26.164g/mol、Mn=2.677g/mol、u=8.54
【0255】
さらに、2つの比較例塗料組成物、すなわち、比較例塗料EG5(‘EG2バインダ)と比較例塗料EG7(‘EG4バインダ)とを、WO2015/082397A1号に記載の実施例5および実施例7(表2、29頁)に詳述された調合に従って混合して調製した。
【0256】
実施例9:DSC測定
本発明の[ABAB]型バインダとWO2015/082397A1号に記載のABAトリブロック比較例との相違を浮き彫りにするために、DSC測定を行った。表5に、本発明の代表的なバインダ(実施例2)と2つの比較例バインダのガラス転移温度(Tg)と理論PDMS含有量(対有機物質含有量)を示す。
【0257】
【表5】
【0258】
結果は、約92%のPDMS含有量を有する実施例2のバインダのTgは、約−120℃であるということを示している。これは、典型的なFRCに用いられる従来のPDMSバインダと同じ範囲である。PDMS含有量が相対的にはるかに低い(有機物質含有量が高い)比較例EG2および比較例EG4のTgは、約30℃〜40℃である。これは、従来の殺生物性防汚剤に用いられる典型的なアクリルバインダと同じ範囲である。
【0259】
実施例10:防汚試験
クリアランス300μmのフィルムアプリケーターを用いて、実施例6の塗料組成物(塗料2〜6およびFRC基準)をPVC製海洋用試験パネルに塗布した。パネルには、あらかじめ、特定の条件下で、エアレス噴霧によって、Jotun(ヨツン)製Safeguard Universal ESプライマーとJotun製SeaLionタイコートを塗布して下塗を施していた。クリアランス300μmのフィルムアプリケーターを用いて、Jotun製Safeguard Universal ESプライマーを塗布して下塗されているパネルに、比較例塗料EG5およびEG7を塗布した。‘ESプライマーのみを塗布したパネルをネガティブコントロールとして用いた。
【0260】
防汚試験(1)
試験地:サンネフィヨルド、ノルウェー
寸法20cm×40cmのパネルを浮き台での静的試験に用いた。該パネルは、枠に取り付けられ、水面下0.5m〜1.5mに垂直につり下げられた。付着物の範囲は、生態学的に導き出した4つの付着物のカテゴリー、すなわち、スライム(微小付着物)、海草、軟体動物、および硬体動物に分類して評価した。8週間後に、付着物の範囲と塗膜の完全性に対する目視検査によって、パネルを分析した。洗浄スポンジを用いてスポンジ洗浄を行い、下記1〜4の格付けを行った。
1.スポンジを用いて1回軽く拭うことで完全に除去された付着物
2.スポンジを用いて繰り返し軽く拭うことで完全に除去された付着物
3.スポンジを用いて繰り返し強く拭うことで除去された付着物
4.スポンジを用いて繰り返し強く拭っても除去できなかった付着物
【0261】
以下の表に結果を示す。
【0262】
【表6】
【0263】
表6は、8週間の静的浸漬後、本発明の塗料(塗料2,4〜6)の耐汚性がFRC基準よりも良好であり、比較例塗料よりはるかに優れていたことを示している。本発明の塗料の完全性と被洗浄性もまた、比較例塗料より優れていた。結果は、添加油および殺生物剤の両方を含むエステル−シロキサン塗料(塗料5および塗料6)は耐汚性に特に優れていることを示している。
【0264】
防汚試験(2)
試験地:バテル、フロリダ(米国)
寸法7.5cm×17cmのパネルを用いて、動的回転試験を行った。該試験は、塗布されたパネルを回転ドラムに取り付け、水中に完全に浸水させて、7ノット(3.6m/s)で水中を回転させて行った。付着物の範囲は、生態学的に導き出した4つの付着物のカテゴリー、すなわち、スライム(微小付着物)、海草、軟体動物、および硬体動物に分類して評価した。13週間後に、付着物の範囲と塗膜の完全性に対する目視検査によって、パネルを分析した。その結果を下記表に示す。
【0265】
【表7】
【0266】
表7は、13週間の動的試験後、本発明の塗料の(塗料2〜5)耐汚性がFRC基準よりもはるかに良好であり、比較例塗料より優れていたことを示している。本発明の塗料の完全性もまた、比較例塗料EG7より優れていた。結果は、添加油および殺生物剤の両方を含むエステル−シロキサン塗料(塗料5)は耐汚性に特に優れていることを示している。
【0267】
本発明のバインダの性能試験
本発明のバインダの性能試験をワニス系で実施した。
【0268】
【表8】
【0269】
表8に記載の全成分を混合し、その混合物を、溶解機を用いて2,000rpmの周速度で2分間で均質化する。
【0270】
混和後、巻き線型塗布管を用いて、ワニスを、下塗りされているアルミニウムパネルに塗布し、100μm厚の未乾燥膜を形成する。その後、24時間、室温でパネルを乾燥させる。
【0271】
下記の評価基準に従って、得られた塗膜の撥汚性、撥水性、および撥油性を試験する。
【0272】
Edding試験:
Edding400永久マーカーを用いて、膜表面に書き込みをし、その表面が書き込み可能か否かを視覚評価する。インクがその表面上で拡散するか、または収縮するかを評価する。インクが乾燥した後、乾燥布で拭くことでインクを除去することを試みる。
評価:1〜5
1=インクが収縮し、紙布を用いてインクを残留物なく除去できる。
5=インクが基材上に非常によく広がり、インクを除去することは実質的に不可能である。
【0273】
ビチューメン試験:
膜表面に塗布することができる程度に十分に液化するまで、ビチューメンを加熱する。ビチューメン塊が冷却された後、どれくらい効果的に、ビチューメン塊を残留物なく表面から手動で分離させることができるかについて、視覚評価を行う。
評価:1〜5:
1=容易に、残留物なく、ビチューメンを除去することができる
5=ビチューメンが表面に堅固に付着し、ビチューメンを除去することは実質的に不可能である
【0274】
Bayferrox(バイフェロックス)粉末による着色:
スプーン3杯分のBayr Ag(バイエル)製の酸化鉄顔料Bayferrox130Mを膜表面に拡散させ、そして、洗瓶を用いて、蒸留水を5回噴出させて塗膜表面を再び洗浄した。可能なかぎり残留物のない状態の表面を視覚評価する。
評価:1−5:
1=Bayferrox粉末を、残留物がないように水で洗浄することができる
5=水洗による洗浄効果がなく、大きな赤色のしみが残る
【0275】
水の表面流出試験:
1滴の水を表面に垂らす。その後、水滴が表面流出するまで、塗布膜表面を傾斜させる。水滴が表面流出した角度、および水滴が残留物なく表面流出したかどうかについて、視覚評価を行う。
評価:1−5:
1=破断することなく、かつ小滴を残すことなく、水滴が完全に表面流出するために、緩やかな角度で十分である
5=水滴が表面流出するには、塗布パネルを急な角度に傾斜させなくてはならず、水の残留物が膜表面に残っている可能性がある
【0276】
鉱油の表面流出試験:
市販の従来の鉱油を1滴、膜表面に垂らす。次に、塗布膜表面を油滴が約10cm表面流出するまで傾斜させる。5分後、油跡または油滴の改変について視覚評価する。
評価:1−5:
1=油跡が直ちに個々の油滴に改変する
5=油跡は改変せず、むしろ、さらに広がる可能性がある
【0277】
対照試料は、いかなるワニス系も含まない。
【0278】
【表9】
【国際調査報告】