【実施例】
【0094】
実施例1−レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、プロテインAクロマトグラフィカラムのカラムの品質評価への、ガンマ分布の推移分析の適用
概論:
治療用抗体レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造プロセスは、複数の段階を含み、そのうちの4段階はクロマトグラフィによる精製を含む。カラムの品質評価のためのガンマ分布の推移分析(GDTA)を、これらのカラム工程のそれぞれの間の2つ又は3つの推移に適用した。本実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造中に使用されるプロテインAカラム精製工程へのGDTA法の適用を記載する。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した2つのトランジションフロント、すなわち、平衡化フロント及び中間洗浄フロントを含む。
【0095】
69バッチのレミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の連続精製から、60の平衡化フロント及び69の洗浄フロントを含む129のフロントについてGDTAを実行した。ガンマモデルによるフロント分布分析は製造と並行して行われ、製造プロセスには影響しなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行った。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0096】
GDTAをリアルタイムでカラム操作に適用したことに加えて、過去4年間に処理された285バッチの過去のデータもまた、本明細書に記載されるように収集及び分析した。データセットには、253の平衡化フロント及び285の洗浄フロントを含む、合計538の過去のフロントが含まれていた。使用前に殺菌を行った32バッチについては、平衡化のフロントは生成されなかった。このデータセットは、カラムの寿命を通じて均等な分布を提供するために選択されたものであり、11のカラム充填を表す。
【0097】
GDTAプロトコル:
プロテインAカラム精製中、すなわち、洗浄及び平衡化中の各トランジションフロントについて、導電率及び累積流量を記録した。カラムがインラインに置かれた時点を特定するために、プレカラム導電率及び圧力の傾向を評価することによって、開始点の決定を行った。フロントの持続時間について、スプレッドシートを作成し、計算された10秒の間隔を使用して、サーバから流量及び導電率のデータを取得するように設定した。
【0098】
導電率データは、最大値を1及び最小値を0とし、他の点を相対的にスケーリングすることで正規化した。加えて、流量をカラム体積に変換した。
【0099】
開始ガンマCDFを、PIモジュールと同じ開始k、θ、V
iパラメータを使用して計算した。V
iは、ガンマ分布関数のx項の各体積値から減算した。精製中に増加していた導電率を正規化するために、V
i未満の体積では導電率の値を0に設定し、最大値を1に設定した。
【0100】
各導電率値と各体積点に対するモデルあてはめとの差(誤差)を計算した。加えて、0.5〜1.8CVの誤差に対する平方和を計算した。次の式を用い平方和の最小値を有するモデル曲線を生成するk、θ、及びV
iパラメータを見つけるために、Excelソルバーを使用して最良にあてはめられるガンマモデルのCDFパラメータを計算した。
【0101】
【数14】
【0102】
ソルバーは、最も近いあてはめを確実に達成するために、k≧0.0001及びV
i≧0の制約を有するGRG非線形法を使用して、10,000回の反復を行った。
【0103】
k、θ、及びV
iの最終値から以下のパラメータを計算した:
【0104】
【数15】
【0105】
平均流量及びプレカラム圧力を、各フロントについて0.5〜1.8CVの期間にわたって計算した。
【0106】
受入基準の分析及び評価:
正規性
平衡化フロント及び洗浄フロントの両方についてのHETP及びSSの結果を、確率プロットを作成することによって正規性について評価した。確率プロット(
図3〜
図12)では、データ点(HETP又はSSの結果)は、試料で観察された実際の累積分布を表している。線は、試料から推定されるパラメータを使用した正規分布に基づいて、あてはめられた累積分布並びに信頼区間の上限値及び下限値を表している。パーセンタイルスケールを変換することにより、あてはめられた分布が直線を形成する。HETP及びSSのデータセットは、それぞれ下端が0に固定されているが、正規分布モデルは負の値を示唆している。得られた確率プロットは、曲線形状を示す。
図3〜
図6を参照されたい。したがって、結果は、自然対数変換を用いて良好にあてはめられる。自然対数変換データの確率プロットについては、
図7〜
図10を参照されたい。
【0107】
平均(V
m)のデータもまた、正規性について評価した。
図11及び
図12は、データが正規分布にあてはめられ、外れ値はごくわずかであることを示す。したがって、変換は必要なかった。このパラメータは、プロトコルにおいて指定されなかったが、曲線あてはめが有効であることを保証した。このパラメータの管理限界もまた、この分析から生成される。
【0108】
外れ値の特定及び変動の原因。
外れ値を特定し、結果の変動性を評価するために、各パラメータについての管理図を作成した。
図13〜
図22を参照されたい。管理図は、HETP及びSSの変換されたデータを使用し、自然対数変換が適用された。データはまた、これらのパラメータのそれぞれについて、変換された上方管理限界を有する時系列プロットでプロットされる。
【0109】
HETP:HETP結果において、平衡化フロント及び洗浄フロントの両方について多くの外れ値及び傾向が明らかである。加えて、
図13及び
図18は、図中の四角で表され、以下に番号を付したシューハートのルール1、2及び3に基づくデータの傾向を示している。
【0110】
【表2】
【0111】
これらの逸脱に関連するバッチは、許容可能なプロセスを代表するものであることから分析から除外されなかった。
【0112】
管理図(
図13及び
図18)は両方とも、管理限界を超えるシューハートルール1の違反を数多く示している。各場合において、問題は、カラムを再コンディショニングすることによって特定及び修正された。
【0113】
予想されるように、カラム充填の変動により、いくつかの実行は、ルール2及び3の基準を満たしていた。傾向を更に評価するために、カラム充填(
図23〜
図24)及びスキッド(
図25〜
図26)によりグループ化したデータを使用して時系列プロットを作成した。これらのチャートは、特別な原因による変動の多くが、カラムの劣化及びいくつかの孤立した逸脱に起因することを示している。各カラムについて、平衡化フロントの時間に対してHETPの増加傾向が明らかである(
図23)。洗浄フロントで観察された逸脱は、異なる時間で一方のスキッド又は他方のスキッドに分離されているように見え(
図26)、これは、スキッドにおけるカラム性能の変動の原因がある可能性を示唆している。
【0114】
平方和(SS):平方和は、ガンマ分布がプロセスデータにどのくらい良好にあてはめられるかの尺度である。この測定は、HETP結果が有効なものであることを確認するためのチェックを提供する。変換されたデータの管理図は、それぞれ平衡化及び洗浄について
図15及び
図20に示される。この測定値は、上方管理限界のみを有する。
図15は、上方管理限界を超えた6点を示す。これらのうちの4つは、より高いHETPと関連付けられる。バッチ880572Mは、フロントの間に流れが乱れてSSが高くなったが、HETPには影響しなかった。
【0115】
流量及び圧力の評価。
データセットの平均流量及びプレカラム圧力を評価して、任意の外れ値を特定した。特定された差違と結果との間の関係を評価した。
【0116】
流量及びプレカラム圧力は、
図27〜
図30の傾向がある。チャートは、各工程の流量制御が優れていることを示している。この評価の間、洗浄流量を変化させた。プレカラム圧力は、スキッド及びカラムに関連する変動を示しているが、概して、ある範囲内で安定である。
図31は、HETP値が洗浄流量の変化によって有意な影響を受けていないことを示している。
【0117】
プロテインAカラムの管理限界
HETP:
HETPは、カラム性能に直接関連するものであり、分散を増加させる可能性があるシステム内の他の要因によっても影響を受ける。結果は、0超でなければならない。HETPの管理限界は、平衡化について
図13及び洗浄フロントについて
図18に示すように、自然対数のBox−Cox変換(λ=0)を用いることによって最適に決定される。管理図は、平均+/−3の標準偏差を用いMinitabにより計算され変換されたデータの管理限界を示す(以下の表2も参照されたい)。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命の間のカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。上方及び下方管理限界を逆変換(e
x)して、変換されていないデータの管理限界を決定する。
【0118】
各フロントのHETP結果及び管理限界の時系列プロットを
図14及び
図19に示す。この過去のレビューに基づき、これらの限界内での動作であれば、許容可能なクロマトグラフ性能が得られると期待される。上方管理限界を超える値は、カラム流量の問題を示している可能性があり、更に評価する必要がある。下方管理限界を下回る値は、計算エラーを示している可能性がある。
【0119】
平方和(SS):
SSは、ガンマモデルの分布がどのくらい良好にデータにあてはめられるかを示す尺度である。この尺度を使用して、GDTA法で計算されたHETP値がプロセスデータを表すことを確認する。下限は存在せず、結果は0超でなければならない。SSの上方管理限界は、平衡化フロントについて
図15及び洗浄フロントについて
図20に示すように、自然対数のBox−Cox変換(λ=0)を用いることによって最適に決定される。管理図は、平均+/−3の標準偏差を用いMinitabにより計算され変換されたデータの管理限界を示す。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命の間のカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。管理図は、平衡化フロント及び洗浄フロントについてそれぞれ0.050及び0.989を与えるように逆変換した、変換されたデータの上方管理限界を示している(表2を参照されたい)。各フロントのSS結果及び管理限界の時系列プロットを
図16及び
図20に示す。限界内にある結果は、モデルがデータ及び過去の結果にあてはめられることを保証する。結果がこの範囲外である場合、特別な原因が考えられる。
【0120】
平均値:
平均値を、ガンマモデルの分布の精度についての第2の尺度として加えた。平均値は、フロントの理論的な質量中心を表し、システム内で当該値をシフトさせる、大過剰のカラム体積や移動相と樹脂との間の相互作用などといった他の要因がない限り、常に1カラム体積に近い値であるべきである。平衡化フロント及び洗浄フロントの両方の平均値はほぼ正規分布しており、変換を必要としない。
図11及び
図12を参照されたい。平衡化フロントの平均は1.07CV付近に密に分布しており、いくつかの外れ値がいずれかの側に存在し、高い側では1.2に接近している。
図17を参照されたい。洗浄フロントは、わずかに多くの変動を示し、かつ0.99CVを中心としており、0.8付近に低い外れ値がいくつか存在する。
図22を参照されたい。両フロントの平均については、0.80〜1.20CVの管理限界を適用することが推奨される(表2を参照されたい)。平均値はカラム性能の尺度ではなく、分析が適切であったかを確認するためのチェックとして用いられるものであることから、これは適切である。より厳しい管理限界は、このチェックの感度としては必要とされていない。
【0121】
【表3】
【0122】
実施例2−レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、プロテインAクロマトグラフィカラムの最適以下の性能での検出のための、ガンマ分布の推移分析の適用
治療抗体レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造プロセスは複数の段階を含み、そのうちの4段階はクロマトグラフィ精製を含む。カラムの品質評価のためのガンマ分布の推移分析(GDTA)を、これらのカラム工程のそれぞれの間の2つ又は3つの推移に適用した。本実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用されるプロテインAカラム精製工程へのGDTA法の適用を記載する。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した2つのトランジションフロント、すなわち、平衡化フロント及び中間洗浄フロントを含む。
【0123】
カラム充填883333M001で処理された23バッチ及びカラム充填885473M001で処理された22バッチを含む、45バッチのレミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の連続した精製から、45の平衡化フロントについてGDTAを実行した。ガンマモデルによるフロント分布分析は製造と並行して行われ、製造プロセスには影響しなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行った。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0124】
45バッチの平衡化HETP結果の傾向は(
図32を参照されたい)、カラム充填間の有意差を示した。カラム評価のための現在の対照では、2つのカラム充填間の差は確認されなかった。バッチ収率の評価は、2つのカラム充填で処理されたバッチ間の有意な差(p=0.001)を示し、より高いHETP値を有するカラム充填の方が4.3%低いと推定された。他の潜在的要因を評価したところ、収率差に対する相関は示さなかった。したがって、この分析からは、カラムの性能差により低収率が生じたという結論が得られる。この発見に基づいて、より低い収率のカラムをコンディショニングして、使用を連続する前にカラム充填を改善した。この実施例は、クロマトグラフィカラムの質を評価する際のGDTA法の感度を示す。
【0125】
実施例3−レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、SP−セファロース高性能クロマトグラフィカラムのカラムの品質評価への、ガンマ分布の推移分析の適用
概論:
上述のように、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造プロセスは、複数の段階を含み、そのうちの4段階はクロマトグラフィ精製を含む。本実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用されるSP−セファロース高性能(SPHP)カラム精製工程にGDTA法を適用することを記載する。SPHPカラムは陽イオン交換クロマトグラフィカラムである。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した3つのトランジションフロント、すなわち、平衡化フロント、WFIフラッシュフロント、及びストレージフロントを含む。
【0126】
23バッチのレミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の精製から、23の、平衡化フロント、WFIフラッシュフロント、及びストレージフロントを含む69のフロントについてGDTAを実行した。ガンマモデルによるフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスには影響しなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0127】
GDTAをリアルタイムでカラム操作に適用したことに加えて、過去4年間に処理された189のトランジションフロントの過去のデータもまた、本明細書に記載されるように収集及び分析した。データセットには、64の平衡化フロント、63のWFIフラッシュフロント、及び62のストレージフロントが含まれた。このデータセットは、カラムの寿命を通じて均等な分布を提供するために選択されたものであり、6のカラム充填を表す。
【0128】
SPHPカラムフロントについてのGDTAは、上記実施例1に記載するように行った。この分析により、HETP、SS、及び各フロントの平均値についての測定値を生成した。統計的評価に基づいてこれら3つのパラメータのそれぞれについて導出された管理限界を以下の表3に列挙する。
【0129】
SPHPカラムの管理限界:
HETP:
HETPは、カラム性能に直接関連するものであり、分散を増加させる可能性があるシステム内の他の要因によっても影響を受ける。結果は、0超でなければならない。HETPの管理限界は、自然対数のBox−Cox変換(λ=0)を用いることによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/−3の標準偏差を用いMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命の間のカラム性能の変動を考慮するために、25の移動範囲を選択した。上方及び下方管理限界を逆変換(e
x)して、変換されていないデータの管理限界を決定する。各フロントのHETP結果及び管理限界の時系列プロットを
図33(平衡化フロント)、
図34(WFIフラッシュフロント)、及び
図35(ストレージフロント)に示す。この過去のレビューに基づき、これらの限界内での動作であれば、許容可能なクロマトグラフ性能が得られると期待されている。上方管理限界を超える値は、カラム流量の問題を示している可能性があり、更に評価する必要がある。下方管理限界を下回る値は、計算エラーを示している可能性がある。
【0130】
平方和(SS):
SSは、ガンマモデルの分布がどのくらい良好にデータにあてはめられるかを示す尺度である。この尺度を使用して、GDTA法で計算されたHETP値がプロセスデータを表すことを確認する。下限は存在せず、結果は0超でなければならない。SSの上方管理限界は、自然対数のBox−Cox変換(λ=0)を用いることによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/−3の標準偏差を用いMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命の間のカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。変換されたデータの上方管理限界を逆変換して、平衡化フロントについて0.110、WFIフラッシュフロントについて0.027、及びストレージフロントについて0.073を得た(表3を参照されたい)。限界内にある結果は、モデルがデータ及び過去の結果にあてはめられることを保証する。結果がこの範囲外である場合、特別な原因が考えられる。
【0131】
平均値:
平均値を、ガンマモデルの分布の精度についての第2の尺度として加えた。平均値は、フロントの理論的な質量中心を表し、システム内で当該値をシフトさせる、大過剰のカラム体積や移動相と樹脂との間の相互作用などといった他の要因がない限り、常に1カラム体積に近い値であるべきである。平衡化フロント、WFIフラッシュフロント及びストレージフロントの平均値は不規則な分布を有し、変換の恩恵を受けていない。フロントのそれぞれの平均については、0.80〜1.20CVの管理限界を適用することが推奨される(表3を参照されたい)。平均値はカラム性能の尺度ではなく、分析が適切であったかを確認するためのチェックとして用いられるものであることから、これは適切である。これらの限界は、予想される計算結果からの有意な逸脱を特定するのに十分なものであると予想される。より厳しい管理限界は、このチェックの感度としては必要とされず、これについては各カラム充填で変化すると見られる。
【0132】
【表4】
【0133】
実施例4−レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、Q2クロマトグラフィカラムのカラムの品質評価への、ガンマ分布の推移分析の適用
概論:
本実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される二次陰イオン交換(Q2)カラム精製工程にGDTA法を適用することを記載する。Q2カラムは、陰イオン交換クロマトグラフィカラムである。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した3つのトランジションフロント、すなわち、平衡化フロント、ストリップフロント、及びストレージフロントを含む。
【0134】
23の平衡化フロント及び23のストリップフロント、及び22のストレージフロントを含む68のフロントについてGDTAを実行した。ガンマモデルによるフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスには影響しなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0135】
GDTAをリアルタイムでカラム操作に適用したことに加えて、過去4年間に処理された324のトランジションフロントの過去のデータもまた、本明細書に記載されるように収集及び分析した。データセットには、121の平衡化フロント、124のストリップフロント、及び79のストレージフロントが含まれた。このデータセットは、カラムの寿命を通じて均等な分布を提供するために選択されたものであり、10のカラム充填を表す。
【0136】
Q2カラムフロントのGDTAは、上記実施例1に記載されるように行われた。この分析は、HETP、SS、及び各フロントの平均値についての測定値を生成した。統計的評価に基づいてこれら3つのパラメータのそれぞれについて導出された管理限界を以下の表4に列挙する。
【0137】
Q2カラムの管理限界:
HETP:
HETPは、カラム性能に直接関連するものであり、分散を増加させる可能性があるシステム内の他の要因によっても影響を受ける。結果は、0超でなければならない。HETPの管理限界は、自然対数のBox−Cox変換(λ=0)を用いることによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/−3の標準偏差を用いMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命の間のカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。上方及び下方管理限界を逆変換(e
x)して、変換されていないデータの管理限界を決定する。
【0138】
各フロントのHETP結果及び管理限界の時系列プロットを
図36(平衡化フロント)、
図37(ストリップフロント)、及び
図38(ストレージフロント)に示す。この過去のレビューに基づき、これらの限界内での動作であれば、許容可能なクロマトグラフ性能が得られると期待されている。上方管理限界を超える値は、カラム流量の問題を示している可能性があり、更に評価する必要がある。下方管理限界を下回る値は、計算エラーを示している可能性がある。
【0139】
平方和(SS):
SSは、ガンマモデルの分布がどのくらい良好にデータにあてはめられるかを示す尺度である。この尺度を使用して、GDTA法で計算されたHETP値がプロセスデータを表すことを保証する。下限は存在せず、結果は0超でなければならない。SSの上方管理限界は、自然対数のBox−Cox変換(λ=0)を用いることによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/−3の標準偏差を用いMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命の間のカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。移動範囲による方法ではより高い標準偏差が出ていたため、ストレージフロントについての集計データから標準偏差を決定した。管理限界を下の表4に報告する。限界内にある結果は、モデルがデータ及び過去の結果にあてはめられることを保証する。結果がこの範囲外である場合、特別な原因が考えられる。
【0140】
平均値:
平均値を、ガンマモデルの分布の精度についての第2の尺度として加えた。平均値は、フロントの理論的な質量中心を表し、システム内で当該値をシフトさせる、大過剰のカラム体積や移動相と樹脂との間の相互作用などといった他の要因がない限り、常に1カラム体積に近い値であるべきである。平衡化フロント、ストリップフロント、及びストレージフロントの平均値は不規則な分布を有し、変換の恩恵を受けていない。フロントのそれぞれの平均については、0.80〜1.20CVの管理限界を適用することが推奨される(表4を参照されたい)。平均値はカラム性能の尺度ではなく、分析が適切であったかを確認するためのチェックとして用いられるものであることから、これは適切である。これらの限界は、予想される計算結果からの有意な逸脱を特定するのに十分なものであると予想される。より厳しい管理限界は、このチェックの感度としては必要とされず、これについては各カラム充填で変化すると見られる。
【0141】
【表5】
【0142】
実施例5−SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の製造プロセス
ゴリムマブのバックグラウンド
抗TNFα剤を用いた治療は炎症性関節炎の治療に成功裏に使用されてきたが、初期の抗TNFα剤は安全性、投与計画、費用及び/又は免疫原性に関して限界がある。いくつかの限界に対処するために、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)と表される完全ヒト抗抗TNFα mAbが開発された。ゴリムマブ(CNTO148及びrTNV148Bとしても既知である)は、免疫グロブリンG1(IgG1)重鎖アイソタイプ(G1m[z]アロタイプ)及びκ軽鎖アイソタイプを有する完全ヒトモノクローナル抗体である。ゴリムマブは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を有する。ゴリムマブの分子量は、149,802〜151,064ダルトンの範囲である。
【0143】
ゴリムマブは、高親和性及び特異性を有し、ヒト腫瘍壊死因子α(TNFα)の可溶性の形態及び膜貫通型の生物活性形態の両方を有する高親和性の安定複合体を形成し、これは、TNFαの受容体への結合を防止し、TNFαの生理活性を中和する。他のTNFαスーパーファミリーリガンドに対する結合は観察されなかった。具体的には、ゴリムマブは、ヒトリンパ球に結合しない、又は中和しない。TNFαは、自己会合して生物活性ホモトリマーを形成し、タンパク質分解によって細胞表面から急速に放出される膜貫通タンパク質として、主として活性化された単球、マクロファージ及びT細胞により合成される。TNFαのp55又はp75 TNF受容体のいずれかへの結合により、受容体細胞質ドメインがクラスター化し、シグナル伝達が開始される。腫瘍壊死因子αは、様々な刺激に応答して産生され、続いて、カスパーゼ依存性アポトーシス経路の活性化及び転写因子核因子(NF)−B及び活性化タンパク質−1(AP−1)の活性化による炎症応答を促進する、主要なセンチネルサイトカインとして同定されている。腫瘍壊死因子αはまた、胚中心での免疫細胞の組織化における役割を介して免疫応答を調節する。TNFαの発現の上昇は、リウマチ性関節炎(RA)などの慢性炎症性疾患、並びに乾癬性関節炎(PsA)及び強直性脊椎炎(AS)などの脊椎関節症に関連しており、これらの疾患に特徴的な関節性炎症及び構造的損傷の重要なメディエーターである。
【0144】
ゴリムマブを用いた臨床経験
強直性脊椎炎(AS)を対象としたゴリムマブ皮下(SC)投与のグローバル無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験(試験C0524T09)において、ゴリムマブは、強直性脊椎炎(AS)に罹患した被験者における徴候及び症状、身体機能、健康関連の生活の質(HRQOL)の改善に有効であることが実証された。更に、安全性分析では、SCゴリムマブは一般的に良好に忍容されることが示され、また他の抗TNFα剤で観察されたものと同様の安全性プロファイルを示された。
【0145】
SCゴリムマブの既知の安全性及び有効性を考慮すると、IVゴリムマブは、RA、PsA、及びASなどのリウマチ性疾患における他の抗TNFα剤と一致する許容可能な安全性プロファイルで有効であることが証明されると予想された。ゴリムマブの静脈内投与は、RA治療の承認の基礎となったフェーズ3試験(CNTO148ART3001)で確定的に研究されている。CNTO148ART3001試験は、同時メトトレキサート(MTX)療法にもかかわらず活動性RAを有する対象における、0週目、4週目、及びその後8週ごと(q8w)に30±10分にわたって注入されるゴリムマブ2mg/kgのIV投与の有効性及び安全性に関する、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設2群試験であった。MTXにもかかわらず活動性RAを有する対象は、0週目、4週目、及び8週ごとに24週まで2mg/kgでプラセボ注入又はゴリムマブのIV投与のいずれかを受けるように無作為化された。24週目に開始して、100週まで、全ての対象をIVゴリムマブで治療した。IVゴリムマブは、RAの徴候及び症状、身体機能、並びに健康関連の生活の質の改善、並びに構造的損傷の進行の抑制において実質的な利益を提供することが実証された。RAの治療における静脈内投与では、ゴリムマブ(CNTO148ART3001)の輸注反応の発生率は低く、強力な有効性と許容される安全性プロファイルとを示した。
【0146】
より最近では、活動性強直性脊椎炎(AS)及び活動性乾癬性関節炎(PsA)に罹患した被験者の治療において、静脈内(IV)ゴリムマブの有効性及び安全性を評価するための2つの第3相試験が設計された。現在入手可能なIV抗TNFα剤は免疫原性及び輸注反応に関して制限があり、IVゴリムマブの30±10分間の注入と比較してより長い注入時間(60〜120分間)を有することから、被験者におけるIV投与経路が評価される。患者はまた、SC剤と比較してより頻繁な投与よりもIVゴリムマブの維持投与計画を好むかもしれない。
【0147】
配列
例示的抗TNFα抗体配列−SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)
各重鎖CDR(HCDR)及び軽鎖CDR(LCDR)は、ゴリムマブの重鎖及び軽鎖(Kabatにより定義)に下線が引かれている。
【0148】
重鎖(HC)−配列番号:1
[1]
【0149】
軽鎖(LC)−配列番号:2
[2]
【0150】
組換え発現カセット
本発明は核酸を含む組換え発現カセットを使用する。核酸配列、例えば本発明の方法に使用される抗体をコードするcDNA又はゲノム配列を使用して、少なくとも1つの所望の宿主細胞に導入することができる組換え体発現カセットを構築することができる。組換え発現カセットは、典型的には、意図される宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を導く、転写開始調節配列に操作可能に連結される、ポリヌクレオチドを含む。異種及び非異種(すなわち、内因性)プロモーターの両方を利用して、核酸の発現を導くことができる。
【0151】
一部の実施形態では、プロモーター、エンハンサー、又は他の要素として機能する単離された核酸を、ポリヌクレオチドの発現を上方又は下方調節するために、本発明の非異種形のポリヌクレオチドの適切な位置(上流、下流、又はイントロン内)に導入することができる。例えば、in vivo又はin vitroで変異導入、欠失及び/又は置換により、内因性プロモーターを変えることができる。
【0152】
ベクター及び宿主細胞
本発明は、単離された核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子操作される宿主細胞、及び技術分野において周知である組換え技術による少なくとも1つの抗TNFα抗体の産生にも関する。
【0153】
ポリヌクレオチドは、任意選択的に、宿主の増殖についての選択マーカーを含有するベクターに連結することができる。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物内、又は荷電脂質との複合体内に導入される。ベクターがウイルスである場合、適切なパッケージング細胞株を用いてin vitroでこれをパッケージングし、その後、宿主細胞内に形質導入することができる。
【0154】
DNA挿入物は、適切なプロモーターに機能的に連結されるべきである。発現コンストラクトは、転写開始部位、転写終結部位、及び転写された領域内に、翻訳のためのリボソーム結合部位を更に含む。構築により発現する成熟した転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるべきmRNAの最後に適切に位置する開始及び終止コドン(例えば、UAA、UGA、又はUAG)で始まる翻訳を含み、哺乳動物細胞又は真核生物細胞の発現ではUAA及びUAGが好ましい。
【0155】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含むが、これは任意である。かかるマーカーは、例えば、真核細胞の培養のためのメトトレキサート(methotrexate、MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase、DHFR、米国特許第4,399,216号;同第4,634,665号;同第4,656,134号;同第4,956,288号;同第5,149,636号;同第5,179,017号、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、マイコフェノール酸又はグルタミンシンセターゼ(GS)(米国特許第5,122,464号;同第5,770,359号;同第5,827,739号)抵抗性遺伝子、並びに大腸菌及び他の細菌又は原核生物における培養のためのテトラサイクリン又はアンピシリン抵抗性遺伝子を含むが、これらに限定されない(上記特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。上記の宿主細胞に対して適切な培養培地及び条件は、技術分野において既知である。適切なベクターは、当事者にとって容易に明白となるであろう。宿主細胞へのベクターコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、カチオン性脂質介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染又は他の既知の方法により影響を受け得る。このような方法は技術分野において既知であり、多く記述されている。
【0156】
本発明の方法に使用される少なくとも1つの抗体は、融合タンパク質などの修飾された形態で発現され得、分泌シグナルだけでなく、異種に由来する追加の機能領域も含み得る。例えば、追加のアミノ酸領域、特に荷電アミノ酸を抗体のN末端に追加して、精製中又は後続の処理及び保存中の、宿主細胞における安定性及び持続性を改善することができる。また、ペプチド部分を本発明の抗体に追加して、精製を促進することもできる。抗体又は少なくとも1つのその断片の最終調製前に、かかる領域を除去することができる。このような方法は、多くの標準的な実験室マニュアルに記載されており、この方法は技術分野において既知であり、多く記述されている。
【0157】
当業者であれば、本発明の方法に使用されるタンパク質をコードする核酸の発現に利用可能な多数の発現系について精通している。あるいは、核酸は、抗体をコードする内因性DNAを含有する宿主細胞内で、(操作により)オン切換えすることにより、宿主細胞中で発現させることができる。このような方法は、例えば、米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号、及び同第5,733,761号に記載されているように、技術分野において既知である。
【0158】
抗体、その特定された部分又は変異体の産生にとって有用な細胞は、哺乳動物細胞である。哺乳類細胞系は、細胞の単層の形態で培養されることが多いが、細胞はまた、例えば、振盪フラスコ又はバイオリアクター内の懸濁液中で増殖するように適応させることもできる。インタクトなグリコシル化タンパク質を発現可能な多くの好適な宿主細胞株が当該技術分野において開発されており、これにはCOS−1(例えばATCC(登録商標)CRL1650)、COS−7(例えばATCC(登録商標)CRL−1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC(登録商標)CCL−10)、BSC−1(例えばATCC(登録商標)CCL−26)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、Heo G2、P3X63Ag8.653、Sp2/0−Ag14、HeLa細胞などが挙げられ、これらは例えば、American Type Culture Collection,Manassas,Va(www.atcc.org)から容易に入手できる。特定の実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、並びに骨髄腫及びリンパ腫細胞などのリンパ系に由来する(lymphoid origin)細胞、例えば、CHO−K1細胞、P3X63Ag8.653細胞(ATCC(登録商標)CRL−1580)及びSp2/0−Ag14細胞(ATCC(登録商標)CRL−1581)が挙げられる。
【0159】
これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモーター(例えば、後期又は初期SV40プロモーター、CMVプロモーター(米国特許第5,168,062号;同第5,385,839号)、HSV tkプロモーター、pgk(ホスホグリセラートキナーゼ)プロモーター、EF−1αプロモーター(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモーター;エンハンサー、並びに/又はリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えば、SV40ラージT Agポリ付加部位)、及び転写終結配列などのプロセシング情報部位などであるがこれらに限定されない、発現制御配列のうちの1つ又は2つ以上を含み得る。本発明の核酸又はタンパク質の生成に有用な他の細胞は既知であり、並びに/あるいは例えば、American Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas(www.atcc.org)又は他の既知の若しくは商業的供給源から入手可能である。
【0160】
真核宿主細胞が利用されるとき、典型的には、ベクター内にポリアデニル化配列又は転写終結配列が組み込まれる。終結配列の一例は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来するポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシングのための配列も、同様に含むことができる。スプライシング配列の例は、SV40に由来するVP1イントロンである(Spragueら、「Expression of a recombinant DNA gene coding for the vesicular stomatitis virus nucleocapsid protein」J.Virol.45:773−781(1983年))。加えて、当該技術分野において既知であるように、宿主細胞における複製を制御するための遺伝子配列をベクターに組み込むことができる。
【0161】
CHO細胞株
他にもいくつかの哺乳動物細胞株が利用可能性であるものの、現在生産されている治療用組換えタンパク質のほとんどは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で作成されている(Jayapal KPら、「Recombinant protein theo rapeutics from CHO cells−20 years and counting.」Chem.Eng.Prog.2007年;103:40−47;Kunert R、Reinhart D.「Advances in recombinant antibody manufacturing.」Appl Microbiol Biotechnol.2016年;100(8):3451−61)。それらの強みは、例えば、付着細胞としての又は懸濁液中での堅牢な増殖、無血清培地及び合成培地への適応性、高い生産性、並びに治療用の組換えタンパク質の産生についてこれまでに法的な承認が確立されていること、が挙げられる。これらはまた、非常に遺伝子改変を受け入れやすく、細胞のトランスフェクション、組換えタンパク質発現、及びクローン選択の方法は十分に特徴付けられる。CHO細胞はまた、ヒトに適合する翻訳後修飾を提供することができる。本明細書で使用するとき、「CHO細胞」としては、例えば、CHO−DG44、CHO−Kl、CHO−M、CHO−S、CHO GSノックアウト、並びにこれらの改変及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
CHO細胞におけるクローニング及び発現。
CHO細胞での発現に一般的に使用されるベクターの一種に、pC4がある。プラスミドpC4は、プラスミドpSV2−dhfr(ATCC(登録商標)37146)の誘導体である。このプラスミドは、SV40初期プロモーターの制御下でマウスDHFR遺伝子を含有する。ジヒドロ葉酸の活性を欠損しており、これらのプラスミドでトランスフェクトされるチャイニーズハムスター卵巣細胞又はその他の細胞は、化学療法剤メトトレキサートを添加した選択培地(例えば、α−MEM、Life Technologies、Gaithersburg、MD)で細胞を増殖させることによって選択することができる。メトトレキサート(MTX)に対して耐性を有する細胞におけるDHFR遺伝子の増幅は、十分に実証されている(例えば、F.W.Altら、「Selective multiplication of dihydrofolate reductase genes in methotrexate−resistant variants of cultured murine cells.」J.Biol.Chem.253:1357−1370(1978年);並びにM.J.Page及びM.A.Sydenham、「High level expression of the humanized monoclonal antibody Campath−1H in Chinese hamster ovary cells.」Biotechnology 9:64−68(1991年))。MTX濃度が上昇する(increasing concentrations)中で成長した細胞は、DHFR遺伝子が増幅される結果として、標的酵素であるDHFRを過剰生産することにより、薬物に対する耐性を発達させる。第2の遺伝子がDHFR遺伝子に連結されている場合、通常、共増幅され、過剰発現される。このアプローチを使用して、増幅遺伝子の1,000を超えるコピーを有する細胞株を開発できることが、当該技術分野において知られている。続いて、メトトレキサートを取り除いたときに、宿主細胞の1つ以上の染色体に組み込まれた増幅遺伝子を含有する細胞株が得られる。
【0163】
対象遺伝子を発現させるために、プラスミドpC4は、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復(LTR)の強力なプロモーター(Cullenら、「Functional analysis of the transcription region located within the avian retroviral long terminal repeat.」Molec.Cell.Biol.5:438−447(1985年))と、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の最初期遺伝子のエンハンサーから単離されたフラグメント(Boshartら、「A very strong enhancer is located upstream of an immediate early gene of human cytomegalovirus.」Cell 41:521−530(1985年))とを含む。プロモーターの下流は、遺伝子の組み込みを可能にするBamHI、XbaI及びAsp718制限酵素切断部位である。これらのクローニング部位の後に、プラスミドは、ラットのプレプロインスリン遺伝子の3’イントロン及びポリアデニル化部位を含有する。他の高効率のプロモーター、例えば、ヒトβアクチンプロモーター、SV40初期若しくは後期プロモーター、又は他のレトロウイルス、例えばHIV及びHTLVIに由来する長い末端反復も発現に使用することができる。クロンテックのTet−Off及びTet−On遺伝子発現系並びに同様の系を使用して、哺乳動物細胞において調節された方法でタンパク質を発現することもできる(M.Gossen、及びH.Bujard、「Tight control of gene expression in mammalian cells by tetracycline−responsive promoters.」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−5551(1992年))。mRNAのポリアデニル化のために、例えば、ヒト成長ホルモン遺伝子又はグロビン遺伝子からの他のシグナルも使用することができる。染色体に組み込まれた目的の遺伝子を有する安定した細胞株は、gpt、G418又はハイグロマイシンなどの選択マーカーとの共トランスフェクションにより選択することもできる。最初に1つを超える選択マーカー、例えばG418、に加えてメトトレキサートを使用するのが有利である。
【0164】
一般的な精製方法
抗TNF抗体αは、プロテインA精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ及びレクチンクロマトグラフィが挙げられるがこれらに限定されない既知の方法により、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)を精製に利用することもできる。
【0165】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」又は「複数の抗体」は、2009年のバイオロジクス価格競争・イノベーション法(BPCI Act)並びに同様の世界的な法律及び規則で承認されたバイオシミラー抗体分子を含む。BPCI Actの下で、抗体は、臨床的に不活性な成分がわずかに違っていたとしても、基準品と「非常に類似」しており、安全性、純度、効力の点で基準品と同等の臨床結果が得られると「期待される」ことをデータが示す場合、バイオシミラーであることが実証され得る(R.Dolinar、F.Lavernia、及びS.Edelman.「A GUIDE TO FOLLOW−ON BIOLOGICS AND BIOSIMILARS WITH A FOCUS ON INSULIN.」Endocrine Practice:2018年2月、24巻、No.2、195−204ページ)。これらのバイオシミラー抗体分子は、出願人がイノベーターの基準品の臨床データに依拠して法的な承認を確保する、短縮された承認経路を提供する。臨床試験の成功に基づいてFDAに承認されたオリジナルのイノベーター参照抗体と比較して、バイオシミラー抗体分子は、本明細書では、「フォローオン生物学的」であると呼ばれる。本明細書に提示されるように、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)は、臨床試験の成功に基づいてFDAに承認されたオリジナルのイノベーター参照抗TNFα抗体である。ゴリムマブは、2009年から米国で販売されている。
【0166】
本明細書で使用するとき、用語「抗原結合断片」は、例えば、二重特異性抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)
2、二重特異性dsFv(dsFv−dsFv’)、ジスルフィドにより安定化した二重特異性抗体(ds二重特異性抗体)、単鎖抗体分子(scFv)、単一ドメイン抗体(sdab)scFv二量体(二価二重特異性抗体)、1つ又は2つ以上のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、又は抗原には結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体断片などの抗体断片を指す。抗原結合断片は、親抗体又は親抗体断片が結合する同じ抗原に結合することができる。特定の実施形態によると、抗原結合断片は、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域、及びFdセグメント(すなわち、Fab断片に含まれる重鎖の部分)を含む。他の特定の実施形態によると、抗原結合断片は、Fab及びF(ab’)を含む。
【0167】
製造プロセスの概要
SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)は、連続的な細胞の灌流培養、続いて精製を含む9段階のプロセスで製造される。製造工程の概要は、
図39に示されている。
【0168】
本明細書で使用するとき、用語「培養」、「培養する」、「培養された」、及び「細胞培養物」は、細胞集団の生存及び/又は増殖に好適な条件下で培地中に懸濁される細胞集団を指す。当業者には文脈から明らかであるように、本明細書で使用されるこれらの用語はまた、細胞集団と、当該集団が懸濁される培地とを含む組み合わせを指す。細胞培養物は、例えば、バッチ、フェドバッチ又は灌流細胞培養法などによって増殖させた細胞を含む。特定の実施形態では、細胞培養物は、哺乳動物細胞培養物である。
【0169】
本発明で使用するための細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒト胚性腎細胞(HEK細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK細胞、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0細胞及びSp2/0細胞)、及びヒト網膜細胞(例えば、PER.C6細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
本明細書で使用するとき、用語「合成培地」、「複数の合成培地」、「ハイブリドーマ用合成培地」、又は「ハイブリドーマ用の複数の合成培地」は、全ての成分の同一性及び濃度が既知である合成増殖培地を指す。合成培地は、細菌、酵母、動物、又は植物抽出物、動物血清又は血漿を含まないが、個々の植物又は動物由来の構成成分(例えば、タンパク質、ポリペプチドなど)を含んでも含まなくてもよい。合成培地は、増殖を支えるのに必要なリン酸塩、硫酸塩などの無機塩を含んでもよい。炭素源は規定されており、通常、グルコース、ラクトース、ガラクトースなどの糖、又はグリセロール、乳酸、アセテートなどの他の化合物である。特定の化学的に規定された培地はまた、バッファとしてリン酸塩を使用するが、クエン酸塩、トリエタノールアミンなどの他のバッファを使用してもよい。市販の化学的に規定された培地の例としては、サーモフィッシャーのCDハイブリドーマ培地及びCDハイブリドーマAGT(商標)培地、様々なダルベッコ改変イーグル(DME)培地(シグマアルドリッチ社;SAFC Bioscienses,Inc)、ハムの栄養混合液(シグマアルドリッチ社;SAFC Bioscienses,Inc)、これらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。化学的に規定された培地を調製する方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第6,171,825号及び同第6,936,441号、国際公開第2007/077217号、並びに米国特許出願公開第2008/0009040号及び同第2007/0212770号に既知である。
【0171】
本明細書で使用するとき、用語「バイオリアクター」は、細胞培養物の増殖に有用な任意の容器を指す。バイオリアクターは、細胞の培養に有用であるものであるならば、任意の大きさであってもよい。特定の実施形態では、このような細胞は哺乳動物細胞である。典型的には、バイオリアクターは、少なくとも1リットルであり、10、100、250、500、1,000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットル以上、又はこれらの間の任意の体積であってもよい。培養期間中、pH及び温度を含むがこれらに限定されない、バイオリアクターの内部条件を任意に制御することができる。バイオリアクターは、本発明の培養条件下で培地に懸濁された哺乳動物細胞培養物を保持するのに好適な、ガラス、プラスチック、又は金属を含む、任意の材料から構成することができる。本明細書で使用するとき、用語「産生バイオリアクター」は、対象とするポリペプチド又は糖タンパク質の産生に使用される最終バイオリアクターを指す。産生バイオリアクターの体積は、典型的には少なくとも500リットルであり、1,000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットル以上、又はこれらの間の任意の体積であってもよい。当業者であれば、本発明の実施に使用するのに好適なバイオリアクターを選択することができるであろう。
【0172】
段階1及び2において、前培養、細胞増殖、及び細胞産生が行われる。段階1では、ゴリムマブのHC及びLC配列を発現しているトランスフェクトされたSp2/0細胞の単一のワーキングセルバンクバイアルから前培養を開始し、培養フラスコ、使い捨て培養バッグ、及び内部スピンフィルタを備えた50L灌流播種バイオリアクター又はオルタネーティング・タンジェンタル・フロー(alternating tangential flow)中空糸フィルタ(ATF)細胞保持システムを備えた200L灌流播種バイオリアクターのいずれかで細胞を増殖させる。500L又は1000Lの産生バイオリアクターの接種に必要な細胞密度及び体積が得られるまで細胞を培養する。段階2では、ATFシステムを使用して、500L又は1000Lの産生バイオリアクター内で細胞培養物を連続的に灌流する。細胞培養透過液(回収物)をATFシステムから回収し、細胞はバイオリアクターに戻し、培養物には新鮮な培地を補充する。バイオリアクターから除去されたバイオマスを、ATFシステムから回収した回収物と組み合わせ、次いで、更なる処理のためにプールされた回収物を生成するために、清澄化してもよい。
【0173】
細胞培養回収物からのゴリムマブの精製は、段階3〜8において、アフィニティ及びイオン交換クロマトグラフィ工程と、可能性のあるウイルス汚染を不活化又は除去する工程(溶媒/洗剤処理及びウイルス除去濾過)とを組み合わせて行われる。段階3では、回収及び/又はプールされた回収物を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを使用して清澄化及び精製する。得られた直接的な生成物捕集(DPC)溶出液は、更なる処理まで凍結する。段階4で、解凍後、DPC溶出液を濾過し、プールし、その後、段階5でトリ−n−ブチルホスファート(TNBP)及びポリソルベート80(PS80)で処理して、存在する可能性があり脂質エンベロープを有する任意のウイルスを不活性化する。
【0174】
段階6では、陽イオン交換クロマトグラフィを用いて、TNBP及びPS80試薬並びに不純物をゴリムマブ生成物から除去する。ゴリムマブ生成物は、DNA、存在する可能性のあるウイルス、及び不純物を除去するために、段階7において陰イオン交換クロマトグラフィを使用して更に精製される。段階8では、精製したゴリムマブ生成物を希釈し、ウイルス捕捉性フィルタを通して濾過する。
【0175】
ゴリムマブの最終調製は、段階9で行われる。限外濾過工程はゴリムマブ生成物を濃縮し、透析濾過工程により、製剤賦形剤が添加され、プロセス中のバッファ塩が除去される。PS 80を添加し、製剤化されたバルクとして凍結保存するために、バルク中間体をポリカーボネート容器に濾過する。
【0176】
バッチは、特性及び品質が均一であることが意図され、規定された製造サイクル中に製造された材料、中間体、又は最終製品として定義される。用語「バッチ」は、以下に適用される:
・前培養
・50Lの播種用リアクター/500Lの産生用バイオリアクター
・200Lの播種用バイオリアクター
・1000Lの産生用バイオリアクター
・直接的な生成物捕集
・下流処理
【0177】
製造プロセスの複数の段階中に、様々なバッチ番号が割り当てられる。以下の要約は、バッチとして定義される製造プロセスの複数の段階について与えられる。
【0178】
製造プロセスにおける第1段階は、ワーキングセルバンク(WCB)バイアルからの前培養の開始である。各前培養又はバックアップ前培養は、バッチとして識別される。
【0179】
前培養物が接種基準を満たす場合、50Lの播種用バイオリアクターに前培養物を移し、1つの50Lの播種用バイオリアクターの前培養物を1つの500Lの産生用バイオリアクターに移し、50Lのバイオリアクターと500Lのバイオリアクターとの各組み合わせをバッチとして識別する。バイオリアクターから取り出したバイオマスを、ATFシステムから回収した回収物と組み合わせ、次いで、更なる処理のためにプールされた回収物を生成するために清澄化してもよい。1つの500Lバイオリアクターに由来する全ての細胞培養上清回収物又はプールされた回収物は、バイオリアクターのバッチ番号に加えて、特定の回収物に対応する拡張番号(例えば、001、002など)を付される。
【0180】
前培養物を200Lの播種用バイオリアクターに移し、1つの200Lの播種用バイオリアクターの内容物を1つの1000Lの産生用バイオリアクターに移すこともできる。各個々の200L及び1000Lのバイオリアクターは、バッチとして同定される。1つの1000Lのバイオリアクターに由来する全ての細胞培養上清回収物は、バイオリアクターのバッチ番号に加えて、特定の回収物に対応する拡張番号(例えば、001、002など)を付される。
【0181】
複数のバイオリアクターからの細胞培養上清回収物のプールは、直接的な生成物捕集(DPC)のプロテインAクロマトグラフィ工程で精製することができる。DPCの稼働はそれぞれ、バッチとして識別される。DPCには、直径28、40、60又は80cmのカラムが使用されてもよい。各バッチは、異なる量のゴリムマブ出発物質を含んでもよく、ゴリムマブ出発物質の量に基づいて異なる直径のカラムが使用される。複数のDPCバッチをプールして下流処理(DSP)バッチを開始する。この処理バッチは、様々な量のゴリムマブについて開始することができる。
【0182】
バルク製造プロセスは、プロテインAクロマトグラフィによる更なる処理(段階3)のために、プロセス内管理の受入基準を満たす任意の回収物をプールしておくことができる。同様に、下流バッチを開始するために、プロセス内管理の仕様を満たす任意のDPCバッチをプールすることができる(段階4)。しかし、DPCプールに寄与する細胞培養回収物の質量加重平均した日齢は、15〜51日(両端を含む)でなければならない。
【0183】
DPCプールの質量加重平均した日齢は、各回収物によって与えられたゴリムマブの質量に回収日数を乗じた値の合計を、DPCプールのゴリムマブの総質量で除算した値として定義される:
【0184】
【数16】
【0185】
式中、mは、各回収物によってプールに与えられたゴリムマブの質量であり、dは、回収物ロットの回収が完了した際のバイオリアクターの日数である。
【0186】
入力(すなわち、プロセスパラメータ)及び出力(すなわち、プロセス内管理[IPC]及びプロセスモニタリング試験[PMT])の両方を含むプロセス変数は、プロセス及び製品の一貫性を確保するために、製造プロセス全体を通じて管理され、生産バッチ記録へと文書化されている。
【0187】
製造プロセス及びプロセス管理の詳細な説明
ステージ1
前培養及び増殖
SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の産生における第1の段階は、ゴリムマブのHC及びLC配列を発現するトランスフェクトされたSp2/0細胞のワーキングセルバンク(WCB)バイアルからの前培養の開始並びに培養フラスコ、使い捨て培養バッグ、及び50又は200Lの播種用バイオリアクターにおける細胞培養物の増殖である。500又は1000Lの産生用バイオリアクターへの接種に必要な細胞密度及び体積が得られるまで細胞を培養する。
【0188】
製造手順
WCBからの凍結バイアルを解凍し、6mMのL−グルタミン、0.5mg/Lのミコフェノール酸、2.5mg/Lのヒポキサンチン、及び50mg/Lのキサンチンを添加したハイブリドーマ用同性培地(CDH−A培地)で、0.2〜0.4×10
6個(VC)/mLの播種密度になるように希釈した。解凍時の培養物生存率は≧50%なければならない。初期の継代は、バッチ記録に規定される範囲内で温度及びCO
2を制御した加湿CO
2インキュベーター内の培養フラスコに維持される。培養物を、0.6×10
6個VC/mLの最小細胞密度が得られるまで2〜3日間インキュベートする。
【0189】
スケールアップは、培養フラスコ及び使い捨て培養バッグ内で培養物を連続的に増殖させることによって達成される。各継代は、CDH−A培地で希釈することによって、0.2〜0.4×10
6個VC/mLの細胞密度で開始される。各増殖工程で、継代培養を、0.6×10
6個VC/mLの最小細胞密度が得られるまで2〜3日間インキュベートする。使い捨て培養バッグで、≧0.8×10
6個VC/mL及び≧80%の培養物生存率で十分な培養量が達成されたら、培養物を50L又は200Lの播種バイオリアクターに接種してもよい。
【0190】
各前培養継代を、生存細胞密度(VSD)、培養物生存率、及び顕微鏡検査のためにサンプリングする。50又は200Lの播種バイオリアクターへの接種前に、前培養物をバイオバーデン測定のためにサンプリングする。前培養は、解凍後最大30日間維持され得る。微生物汚染が検出されるか、又は最大持続時間を超過した場合、前培養を終了する。播種用バイオリアクターへの接種時にバックアップ用の前培養が保持されてもよく、又は当該前培養は、新しいWCBバイアルを解凍して開始されてもよい。バックアップ用の前培養物は、上述のように増殖され、初代培養と同じプロセス内管理及び操作パラメータに供される。必要に応じて50又は200Lの播種用バイオリアクターに接種するために、バックアップ用の前培養物を維持し、使用することができる。
【0191】
前培養物が接種基準を満たす場合、使い捨て培養バッグの内容物を50又は200Lの播種用バイオリアクターに移し、≧0.3×10
6個の播種密度を達成する。50又は200Lの播種用バイオリアクターに、CDH−A培養培地を供給し、最大稼働量で灌流モードで操作する。培養物は、細胞増殖を支えるよう、pH、温度、及び溶存酸素濃度について制御される。50又は200Lの播種用バイオリアクターの培養物を、≧80%培養物生存率で≧2.0×10
6個VC/mLの細胞密度が得られるまで増殖させる。50又は200L播種用バイオリアクターの培養物を、VCD、培養物生存率、及び顕微鏡検査のためのプロセスを通してサンプリングする。500又は1000Lの産生用バイオリアクターの接種前に、50又は200Lの播種用バイオリアクターをバイオバーデン測定のためにサンプリングする。50又は200Lの播種用バイオリアクターのVCDが≧2.0×10
6個VC/mLに達し、500又は1000Lの産生用バイオリアクターの接種の準備ができていない場合、50Lの播種用バイオリアクターの接種後6日及び200Lの播種用バイオリアクターの接種後7日を最大培養期間として、灌流モードで培養を継続することができる。微生物汚染が検出されるか、又は最大持続時間を超過した場合、50又は200Lの播種用バイオリアクターの操作を終了する。
【0192】
段階2
バイオリアクター産生
製造プロセスにおける第2段階は、500L又は1000Lの産生用バイオリアクターにおける、細胞の灌流培養である。オルタネーティング・タンジェンタル・フロー(ATF)中空糸の細胞保持装置を介して細胞を保持しながら、産生用バイオリアクターから細胞培養物の透過液(permeate)(回収物)を回収し、培養物には新鮮な培地を補充する。
【0193】
製造手順
500L又は1000Lの産生用バイオリアクターの接種は、50又は200Lの播種用バイオリアクターの内容物を、6mMのL−グルタミン、0.5mg/Lのミコフェノール酸、2.5mg/Lのヒポキサンチン、及び50mg/Lのキサンチンを添加したハイブリドーマ用合成培地(CDH−A培地)を含む500又は1000Lの産生用バイオリアクターに移すことによって行う。移される体積は、≧0.3×10
6個生存細胞(VC)/mLの播種密度をもたらすのに十分なものでなければならない。培養物を34.0〜38.0℃の温度、6.80〜7.40のpH及び10〜80%の溶存酸素濃度で維持する。生存細胞密度(VCD)、培養物生存率、バイオバーデン、及び免疫グロブリンG(IgG)濃度の測定のために、500又は1000Lの生産用プロセス全体を通してサンプリングを行う。
【0194】
接種後、培養物への培地の供給量は、最大供給量に達するまで、所定のスケジュールに従って増加される。最大供給量は、1日当たり0.80〜1.50の反応器体積に制御される。バイオリアクターの最大稼働量に達したなら、ATF系を使用して灌流を開始して、透過液から細胞を分離する。ATFフィルタを通して透過液を連続的に回収する一方で、細胞培養をATF系とバイオリアクターとの間で循環させる。ATF透過液は、バイオプロセス容器(BPC)に回収される。
【0195】
VCDが≧8.5×10
6個VC/mLに達したとき、但し500又は1000Lの産生用バイオリアクターの接種後15日目までに、バイオリアクターへの培地供給を、CDH−Aから、6mMのL−グルタミン、0.5mg/Lのミコフェノール酸、2.5mg/Lのヒポキサンチン、50mg/Lのキサンチン、及び10mMの酢酸ナトリウムを添加したCDハイブリドーマ用培地(CDH−B培地)に切り替える。バイオリアクター内の生存細胞の密度は、培養物から可変量でバイオマス流を除去することによって、少なくとも12.0×10
6個VC/mLの目標値に制御される。
【0196】
バイオリアクターから除去されたバイオマスは、廃棄されてもよく、又はATF透過液と共に組み合わせられて、濾過によって清澄化されてもよい。
【0197】
ATF透過液は、回収物流と表される。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を回収物流に5〜20mMの濃度まで添加する。回収物は、バイオリアクターから回収した後、バイオプロセス容器(BPC)にて、2〜8℃の環境下で、最長21日間保存される。直接的な生成物の捕集前に、各回収物のBPCに対し、IgG濃度、エンドトキシン、及びバイオバーデンの測定のためにサンプリングする(段階3)。
【0198】
500又は1000Lの産生用バイオリアクターにおける細胞の灌流培養操作は、接種後最大60日間継続する。500又は1000Lの産生用バイオリアクターの稼働の最終日に、培養物をマイコプラズマ及び外来性ウイルスについての試験のためにサンプリングする。バイオリアクターのIgG濃度をモニタリングし、情報のみを報告する。
【0199】
段階3
直接的な生成物捕集(DPC)
段階3では、1つ又は複数の500L又は1000Lの産生用バイオリアクターからの回収物は、MabSelect(商標)(GE Health care Bio−Sciences、ピッツバーグ、ペンシルベニア州、米国)プロテインAアフィニティクロマトグラフィカラム及び自動クロマトグラフィスキッドを使用して精製する。ゴリムマブ生成物は、回収物から捕捉され、培地成分及び宿主細胞に関連する不純物(例えば、DNA及び宿主細胞タンパク質)を含むプロセス関連不純物、並びに存在する可能性のあるウイルスが除去される。得られた直接的な生成物捕集(DPC)の溶出液は、更なる処理まで凍結する。
【0200】
プロテインAカラムの調製及び再生
充填を回収する前に、MabSelect(商標)プロテインAカラムを、50mMのリン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、0.1%のポリソルベート80(PS80)、pH7.3(平衡化バッファ)で平衡化する。カラムが平衡化されていることを確認するために、カラム溶出液をpH及び導電率についてモニタリングする。
【0201】
使用後、6MのグアニジンHClを適用し、続いて0.1Mのクエン酸ナトリウム(pH3.5)ですすぎ、続いて平衡化バッファで洗浄することによって、MabSelect(商標)プロテインAカラムを再生することができる。平衡化バッファ、続いて6MのグアニジンHCl、続いて平衡化バッファ、続いて0.1Mのクエン酸ナトリウム(pH3.5)、続いて平衡化バッファを適用することを含む再生手順も代替として使用され得る。必要に応じて、MabSelect(商標)樹脂を20%エタノールに保存する。
【0202】
製造手順
回収物を0.45μmフィルタに通し、20〜50g/Lの充填速度でプロテインAカラムに充填する。280nm(A
280)での紫外線吸光度が経路長1mm当たり≦100mAUに戻るまで平衡化バッファでカラムを洗浄した後、結合したゴリムマブ生成物を有するカラムを、2〜6カラム体積(CV)の更なる平衡化バッファで洗浄する。その後、4.5〜7.0CVの0.1Mのクエン酸ナトリウム(pH5.0)で中間洗浄を行う。
【0203】
ゴリムマブ生成物を、0.1Mのクエン酸ナトリウム(pH3.5)バッファを使用して溶出する。溶出生成物の回収は、≧50mAU/mm経路長の上昇A
280−信号で開始し、≧50mAU/mm経路長の下降A
280−信号で停止する。充填、洗浄、及び溶出中に適用する流速は、150〜500cm/hとする。
【0204】
回収後、1.0Mのトリスバッファ(未滴定)及び必要に応じて1.0Mのクエン酸(未滴定)を添加することにより、ゴリムマブDPC溶出液をpH6.0〜6.5に中和する。pH調整中、DPC溶出液を混合して溶液の均質性を確保する。pH調整したゴリムマブDPC溶出液を、0.2μm濾過の前にバイオバーデンについての分析のためにサンプリングする。第2の0.2μm濾過は、第1の0.2μm濾過の際に使用した0.2μmフィルタの状態(integrity)についての試験が失敗した場合に、実施され得る。
【0205】
濾過DPC溶出液を、ポリカーボネート容器に小分けする。濾過したDPC溶出液を、モノマー含有量、バイオバーデン、エンドトキシン、及びタンパク質濃度の分析のためにサンプリングする(ここから工程収率が計算され、工程収率は≧55%であるべきである)。濾過したDPC溶出液を、≦−40℃で保存する前に、15〜25℃で≦48時間及び2〜8℃で≦168時間の累計時間にわたって保持することができる。
【0206】
段階4
直接的な生成物捕集(DPC)の溶出物の解凍及びプール
段階4では、複数の直接的な生成物捕集(DPC)溶出液を解凍し、濾過し、溶媒/洗剤処理前にプールする。
【0207】
製造手順
DPC溶出液を、DPCプールの質量加重平均の日齢が15〜51日(両端を含む)になるように選択する。凍結したDPC溶出液を15〜25℃で解凍する。視認される氷が溶出液に含まれていなければ、解凍は完了していると考えられる。解凍は120時間を超えてはならない。解凍、プール、混合後、プールしたDPC溶出液のpHを試験し、必要に応じて、1.0Mのトリス(未滴定)又は1.0Mのクエン酸(未滴定)のいずれかを添加することにより、5.9〜6.5のpHに調整する。最終pHに達した後、プールしたDPC溶出液をバイオバーデンについての分析のためにサンプリングする。プールのタンパク質濃度は、総プール体積及びプール中の総タンパク質重量(g)に基づいて計算される。次いで、プールしたDPC溶出液を、混合容器内に0.2μmで濾過する。濾過し、プールしたDPC溶出液を、段階5で更に処理する前に、15〜25℃で≦48時間及び2〜8℃で≦168時間の累計時間にわたって保持することができる。
【0208】
段階5
DPC溶出液の溶媒/洗剤(S/D)処理
段階5では、プールした直接的な生成物捕集(DPC)の溶出液を、トリ−n−ブチルホスファート(TNBP)及びポリソルベート80(PS80)(溶媒/洗剤[S/D]処理)と共にインキュベートして、存在する可能性があり脂質エンベロープを有する任意のウイルスを不活性化する。
【0209】
製造手順
0.08〜0.12(v/v)の比が達成されるまで、2%TNBP/10%PS80(w/w)を含むS/Dストック溶液を、プールしたDPC溶出液が入っている混合容器に移す。溶液を混合して溶液の均質性を確保し、次いで不活性化容器内に移す。移した後、15〜25℃の温度で少なくとも90分間インキュベートすることによってウイルスの不活性化が達成される。S/D処理されたゴリムマブ生成物の陽イオン交換クロマトグラフィカラムへの充填(段階6)は、S/D−化学物質の添加の≦20時間後に完了する(段階5)。
【0210】
段階6
陽イオン交換クロマトグラフィ
段階6では、溶媒/洗剤(S/D)で処理した段階5の材料を、UNOsphere S(商標)(Bio−Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、米国)陽イオン交換クロマトグラフィカラム及び自動クロマトグラフィスキッドを使用して精製する。段階6は、製品からS/Dプロセスの化学物質(トリ−n−ブチルホスファート[TNBP]及びポリソルベート80[PS80])及び他の不純物を除去するように設計されている。
【0211】
クロマトグラフィカラムの調製及び再生
充填前に、充填カラムを、30mMのリン酸ナトリウム、pH6.5のバッファ(平衡化バッファ)で平衡化する。カラムが平衡化されていることを確認するために、カラム溶出液をpH及び導電率についてモニタリングする。
【0212】
使用後、UNOsphere S(商標)陽イオン交換カラムを、50mMのトリス、1.0MのNaCl、pH7.6〜8.0のバッファで洗浄し、続いて1.0MのNaOHを使用して殺菌することにより再生し、必要に応じて溶液(0.1MのNaOH)に保存する。
【0213】
製造手順
充填中、S/D処理した生成物を水でインラインで希釈して、1.5〜4.5mS/cmの充填導電率を達成する。カラムを35〜55gのゴリムマブ/Lの充填率に充填した後、カラムを1.6〜6.7カラム体積(CV)の平衡化バッファで洗浄し、その後、5.2〜9.8CVの50mMのトリス、pH7.6〜8.0のバッファで洗浄する。
【0214】
次いで、50mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.6〜8.0のバッファを使用して、材料を陽イオン交換カラムから溶出する。溶出生成物の回収は、≧30mAU/mm経路長の280nm(A
280)での上昇紫外吸光度で開始し、≧75mAU/mm経路長の下降A
280で停止する。充填、洗浄、及び溶出中に適用する流速は、45〜150cm/hとする。
【0215】
溶出した材料を、バイオバーデン、HCP、残留プロテインA、凝集体、及びタンパク質濃度の分析のためにサンプリングする。工程収率は、タンパク質濃度から計算され、≧80%を満たさなければならない。次いで、生成物を、段階7で更に処理する前に0.2μmで濾過する。
【0216】
あるいは、溶出した材料を、バイオバーデン測定のためサンプリングし、生成物を0.2μmで濾過し、HCP、残留プロテインA、凝集体、及びタンパク質濃度の分析のためにサンプリングする。工程収率は、タンパク質濃度から計算され、≧80%を満たさなければならない。次いで、材料を段階7で更に処理する。
【0217】
管理された室温(15〜25℃)での70〜90時間の製造操作範囲(manufacturing operating range、MOR)より、ゴリムマブの段階6〜8の累計処理時間及び保持時間について立証された許容範囲(proven acceptable range、PAR)は115時間以下である。累計処理時間及び保持時間は、段階6の生成物溶出の終了時から始まり、段階9の生成物濃縮の開始時に終了すると規定され、アクティブなプロセス工程及び段階間の中間保持時間を含む。3段階では材料の条件が変化しないため、段階6、7、又は8の個々の段階に個別の限界は設定されていない。したがって、プロセス管理は、3段階にわたる累計時間に基づく。
【0218】
段階7
陰イオン交換樹脂
段階7では、段階6の材料を、Q Sepharose(商標)XL(GE Health care Bio−Sciences、ピッツバーグ、ペンシルベニア州、米国)陰イオン交換クロマトグラフィカラム及び自動クロマトグラフィスキッドを使用して精製する。ゴリムマブは樹脂を通って流れる一方で、DNA、他の不純物、及びウイルス(存在する場合)は保持される。
【0219】
クロマトグラフィカラムの調製及び再生
充填前に、陰イオン交換カラムを、50mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.6〜8.0(平衡化バッファ)で平衡化する。カラムが平衡化されていることを確認するために、カラム溶出液をpH及び導電率についてモニタリングする。
【0220】
使用後、Q Sepharose(商標)XL陰イオン交換クロマトグラフィカラムを、50mMのトリス、1.0MのNaCl、pH7.6〜8.0バッファで洗浄し、続いて2.0MのNaOHを使用して殺菌し、WFI、3.0M KCl、及びWFIで連続したすすぎを行うことにより再生し、又は(Janssen Biologics BV[JBV]のみで)1.0MのNaOH/1.0MのNaClを使用して殺菌し、WFIですすぐことにより再生し、必要に応じてカラムを溶液(0.1MのNaOH)で保存する。
【0221】
製造手順
陽イオン交換クロマトグラフィ(段階6)によって精製された材料を、50〜250cm/hの充填速度及び50〜150g/Lの充填率で陰イオン交換カラムに装填する。ゴリムマブはカラムを通って流れ(非結合モード)、280nm(A
280)での紫外線吸光度が≧30mAU/mm経路長まで上昇した時点で回収される。充填後、カラムを50〜250cm/hの流量の平衡化バッファで洗浄する。生成物フロースルーの回収は、A
280の読み取りが≧80mAU/mm経路長に戻るまで継続する。
【0222】
フロースルーを、バイオバーデン及びタンパク質濃度の分析のためにサンプリングする。工程収率は、タンパク質濃度から計算され、≧80%を満たさなければならない。次いで、材料を、段階8で更に処理する前に0.2μmで濾過する。
【0223】
あるいは、フロースルーを、バイオバーデンの分析のためにサンプリングし、次いで、材料を、0.2μmで濾過し、タンパク質濃度の測定のためにサンプリングする。工程収率は、タンパク質濃度から計算され、≧80%を満たさなければならない。その後、段階8の処理に必要であれば、材料を50mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.6〜8.0で希釈して≦6.5g/Lのタンパク質濃度にし、段階8で更に処理する前に混合する。
【0224】
管理された室温(15〜25℃)での70〜90時間の製造操作範囲(MOR)より、ゴリムマブの段階6〜8の累計処理時間及び保持時間について立証された許容範囲(PAR)は115時間以下である。累計処理時間及び保持時間は、段階6の生成物溶出の終了時から始まり、段階9の生成物濃縮の開始時に終了すると規定され、アクティブなプロセス工程及び段階間の中間保持時間を含む。プロセス管理が3段階にわたる累計時間に基づいているため、段階6、7、又は8の個々の段階に個別の限界は設定されていない。
【0225】
段階8
ウイルス除去濾過
段階8では、陰イオン交換クロマトグラフィによって精製された段階7の材料を、NFP(商標)ウイルス保持フィルタを通して濾過する。この工程は、存在する可能性のある小型ウイルス及び大型ウイルスの両方を除去することを目的とする。
【0226】
NFP(商標)フィルタ調製
使用前に、NFP(商標)フィルタをNFP(商標)濾過システムに取り付け、注入用水(WFI)でフラッシュし、オートクレーブ処理する。オートクレーブ処理後、フィルタをWFIでフラッシュし、次いで、水透過性について試験する。フィルタを、50mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.6〜8.0のバッファで平衡化する。NFP(商標)フィルタが平衡化されていることを確認するために、濾液をpH及び導電率についてモニタリングする。
【0227】
生成物の濾過及びバッファのすすぎ後、NFP(商標)フィルタに対し個別にその状態(integrity)についての試験を行う。
【0228】
製造手順
必要に応じて、生成物濾過の前に、陰イオン交換クロマトグラフィ(段階7)で精製した生成物を、50mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.6〜8.0で希釈して、≦6.5g/Lのタンパク質濃度にする。希釈後、生成物溶液を混合し、その後、0.2μmフィルタを通して濾過する。
【0229】
次いでこの希釈した生成物は、≦3.1バールの圧力を用い、平衡化されたNFP(商標)フィルタを通して濾過する。≦725g/m
2の膜負荷を適用する。初期生成物の濾過流速は、プロセスの生成物濾過の開始から20分以内に記録することができる。初期生成物の濾過流速は、生成物濾過の開始後に、9フィルタについて≦154L以内、又は10フィルタについて≦171L以内で記録することができる。初期流速(流速減衰0%として定義される)からの減少が74%を超えないことを確認するために、流速減衰をモニタリングする。流速減衰が74%の限界(流速減衰限界として定義される)に達する場合、フィルタを分離して、そのフィルタへの生成物充填を停止させることができる。分離されたフィルタは、バッファフラッシュ工程、後充填のためにインラインに戻される。濾過中、流速減衰が74%の限界(流速減衰限界として定義される)に達する場合、濾過を停止し、バッファのフラッシングを即座に実行することができる。
【0230】
濾過が完了したならば、フィルタを含むシステムは、濾過圧力≦3.1バールを用いて、合計≦10.1L/m
2の50mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.6〜8.0のバッファでフラッシングする。バッファを回収し、残りのNFP(商標)−濾過生成物と組み合わせ、混合し、バイオバーデン及びタンパク質濃度の測定のためにサンプリングする。工程収率は、タンパク質濃度から計算され、≧90%を満たさなければならない。次いで、組み合わせたNFP(商標)−濾液を0.2μmフィルタを通して濾過した後、段階9で更なる処理を行う。
【0231】
段階7で希釈された材料を、NFP(商標)濾過の直前にバイオバーデンの分析のためにサンプリングすることができる。濾過が完了したならば、フィルタを含むシステムは、濾過圧力≦3.1バールを用いて、合計≦10.1L/m
2の50mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.6〜8.0のバッファでフラッシングする。バッファフラッシュを回収し、残りのNFP(商標)濾過材料と組み合わせ、混合し、タンパク質濃度の分析のためにサンプリングする。工程収率は、タンパク質濃度から計算され、段階9における更なる処理の前に≧90%を満たさしなければならない。
【0232】
管理された室温(15〜25℃)での70〜90時間の製造操作範囲(MOR)より、ゴリムマブの段階6〜8の累計処理時間及び保持時間について立証された許容範囲(PAR)は115時間以下である。累計処理時間及び保持時間は、段階6の溶出の終了時から始まり、段階9の濃縮の開始時に終了すると定義され、アクティブなプロセス工程及び段階間の中間保持時間を含む。プロセス管理が3段階にわたる累計時間に基づいているため、段階6、7、又は8の個々の段階に個別の限界は設定されていない。
【0233】
段階9
製剤化されたバルク(FB)を得るための濃縮及び透析濾過
段階9では、段階8の材料を濃縮し、透析濾過して、製剤賦形剤を添加する。その後、ポリソルベート80(PS80)を、濃縮及び透析濾過したゴリムマブ溶液に添加し、製剤化されたバルク(FB)を得る。
【0234】
限外濾過システム調製
使用前に、膜を含む限外濾過システムを、50mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.6〜8.0のバッファで平衡化する。膜が平衡化されていることを確認するために、濾液及び保持液をモニタリングする。
【0235】
使用後、膜を含む限外濾過システムは、注入用の水(WFI)及び1.0MのNaOHでフラッシングすることにより殺菌される。次いで、当該システムにWFIを通してフラッシュし、標準化された透水性試験を実施する。必要に応じて、システム及び膜は適切な溶液に保存される。
【0236】
製造手順
ウイルス除去濾過(段階8)により精製されたゴリムマブ生成物を40〜90g/Lに濃縮し、8〜12透析濾過体積の10mMのヒスチジン、4.5%のソルビトール、pH5.3のバッファ(透析濾過バッファ)を使用して透析濾過する。バッファ交換が完全に行われたことを確認するために、透析濾過後、濾液のpH、導電率、及び浸透圧を試験する。バッファの交換後、溶液を≦180g/Lに過剰濃縮し、次いで、システムを空にして回収する。濃縮、透析濾過、及び過剰濃縮の間、供給圧力及び保持液圧力は、それぞれ≦2.8バール及び≦2.1バールになるように制御することができる。あるいは、膜貫通圧力(TMP)は、濃縮、透析濾過、及び過剰濃縮の間、≦2.5バールで制御することができる。保持タンクの温度を≦35℃になるようにモニタリングする。
【0237】
過剰濃縮したゴリムマブ生成物のタンパク質濃度を決定した後、希釈に必要とされる、計算された量の≦100%の透析濾過バッファを使用してバッファフラッシュを用い、残りの生成物をシステムから回収する。回収したバッファフラッシュ及び過剰濃縮したゴリムマブ生成物の組み合わせのタンパク質濃度を決定した後、希釈に必要とされる、計算された量の≦100%の透析濾過バッファを添加することにより、生成物の濃度を生成物の濃度を更に調整する。収率をモニタリングする。≧90%である必要がある。
【0238】
次いで、FBは、10mMのヒスチジン、4.5%のソルビトール、pH5.3のバッファ中の1%のPS80を、0.013〜0.017%(v/v)のバッファ対生成物比で、濃縮及び透析濾過したゴリムマブ生成物に添加することにより調製される。添加後、ゴリムマブ生成物を混合して溶液の均質性を確保する。FBをバイオバーデンの分析のためにサンプリングし、プレフィルタを使用して濾過し、続いて0.2μmで濾過してポリカーボネート容器に入れる。生成物サンプルを、ゴリムマブオリゴ糖IPC試験及びFB放出試験のために採取する。オリゴ糖組成物を、蛍光検出を用いて、順相陰イオン交換HPLCによって分析する。最後の0.2μmでの濾過の前及び/又は後に、FBを、15〜25℃又は2〜8℃で合計≦120時間保持してから40℃で保存することができる。
【0239】
実施例6−SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の製造に使用される、クロマトグラフィカラムへの、ガンマ分布の推移分析(GDTA)法の適用
この実施例は、抗TNF抗体、例えば、抗TNFα抗体SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の製造中の精製における、クロマトグラフィカラム、例えば、段階3でのプロテインAアフィニティクロマトグラフィカラム、段階6での陽イオン交換クロマトグラフィカラム、及び段階7での陰イオン交換クロマトグラフィカラムへのGDTA法の適用を記載する。
【0240】
段階3−プロテインAアフィニティクロマトグラフィカラム
段階3では、MabSelect(商標)プロテインAアフィニティクロマトグラフィカラムを使用し、分析されたトランジションフロントは、例えば、溶出フロント(
図40)、グアニジンHClでの殺菌中に生成されるフロント(
図41)、及び0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH3.5での殺菌後のすすぎ中に生成されるフロント(
図42)を含む。示される結果は、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の160バッチの分析を表す。傾向の予備評価は、カラム性能において明らかないくらかのドリフト及びカラム充填間で観察されたいくらかの差違を示す。将来的にリアルタイムでプロセスをモニタリングするためのGDTA法を実施する際に使用するための管理限界を確立することを目的として、他の利用可能なバッチ情報及びカラム性能データとの比較を含む、このデータの完全な分析を完了させる。
【0241】
段階6−陽イオン交換クロマトグラフィカラム
段階6では、UNOsphere S(商標)陽イオン交換クロマトグラフィカラムを使用して、分析されたトランジションフロントは、例えば、溶媒/洗剤(S/D)処理した材料の充填中に生成されるフロント(
図43)、溶出中に生成されるフロント(
図44)、及びストリップの間に生成されるフロント(
図45)を含む。示される結果は、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の72バッチの分析を表す。傾向の予備評価は、カラム性能で明らかないくらかのドリフト及びカラム充填間で観察されたいくらかの差違を示す。将来的にリアルタイムでプロセスをモニタリングするためのGDTA法を実施する際に使用するための管理限界を確立することを目的として、他の利用可能なバッチ情報及びカラム性能データとの比較を含む、このデータの完全な分析を完了させる。
【0242】
段階7−陰イオン交換クロマトグラフィカラム
段階7では、Q Sepharose(商標)XL陰イオン交換クロマトグラフィカラムを使用して分析されたトランジションフロントは、例えば、水酸化ナトリウムで洗浄する間に生成されるフロント(
図46)及びストリップの間に生成されるフロント(
図47)を含む。示される結果は、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の71バッチの分析を表す。傾向の予備評価は、カラム性能で明らかないくらかのドリフト及びカラム充填間で観察されたいくらかの差違を示す。将来的にリアルタイムでプロセスをモニタリングするためのGDTA法を実施する際に使用するための管理限界を確立することを目的として、他の利用可能なバッチ情報及びカラム性能データとの比較を含む、このデータの完全な分析を完了させる。
【0243】
好ましい実施形態を本明細書で詳細に描写及び説明するが、本発明の趣旨から逸脱することなく様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることは、当業者には明らかであろう。