(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953176
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】直流電動機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 5/14 20060101AFI20160707BHJP
H02K 13/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
H02K5/14 A
H02K13/00 T
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-175730(P2012-175730)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-36481(P2014-36481A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001340
【氏名又は名称】マーレエレクトリックドライブズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井原 大貴
(72)【発明者】
【氏名】志田 晃一
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−201185(JP,A)
【文献】
実開平01−146754(JP,U)
【文献】
再公表特許第2003/088452(JP,A1)
【文献】
特開2002−320360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00− 5/26
H02K13/00−13/14
H01R39/00−39/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状に形成されたケースと、このケースの開口部を覆うブラシプレートと、前記ケース内に収容され電機子および整流子を有する回転子と、前記整流子にばね手段により押し付けられるブラシと、一端部にリア軸受を、その中間部にフロント軸受が取り付けられ、前記電機子をこれらリア軸受及びフロント軸受間に固定して取りつけた回転軸とを有するブラシ付きの直流電動機の製造方法において、
前記ばね手段を保持するばねホルダを有し、
前記ブラシプレートを樹脂製とし、
この樹脂製のブラシプレートに、前記ブラシを保持する貫通穴が形成されたブラシホルダと、このブラシホルダの貫通穴の端部を閉塞する前記ばねホルダが前記ブラシホルダの長手方向に移動するのを規制する一対の飛び出し規制壁部とを一体成型し、
前記ブラシホルダの一方の側面にこのブラシホルダに貫挿されるブラシに固定されたピッグテイルが移動可能であって外径端側が開放された溝を形成するとともに、前記ブラシホルダの外径端側面に前記ばねホルダが当接する当接面を形成し、
前記ブラシホルダの両側面であって外径側の天井面に近い側にばねホルダを係止する引掛け部を形成し、
前記ばねホルダは、前記ブラシホルダの当接面に当接する押え板部と、その左右の上端側に形成された引掛け部と、押え板部の中央部に配置したばね端保持部を有し、
前記貫通穴に、前記ブラシを挿入した後、前記ばね端保持部に固定したばね手段を挿入し、ばね手段を圧縮しながら、前記ブラシホルダの当接面と前記飛び出し規制壁部とで前記ばねホルダを保持した状態で、前記ばねホルダの押え板部を前記ブラシホルダの当接面に当接させ、前記ブラシホルダとばねホルダの引掛け部を互いに係止することを特徴とする直流電動機の製造方法。
【請求項2】
一対の前記飛び出し規制壁部は、対称にほぼL字状に形成されており、その外周部は前記ブラシプレートの外周部とほぼ同一であることを特徴とする請求項1に記載の直流電動機の製造方法。
【請求項3】
前記ばねホルダに形成した前記引掛け部は、J字状であって先端部に係止部を有し、前記ブラシホルダに形成した前記引掛け部は前記ばねホルダの係止部に係止する凸状の係止部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の直流電動機の製造方法。
【請求項4】
前記ばねホルダの前記引掛け部はこの押え板部からほぼ直角に突き出ており、前記押え板部の左右両端側であって下部に一対の前記飛び出し規制壁部の溝に保持される押え壁部を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の直流電動機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流電動機
の製造方法に係り、特に車両用のブレーキ装置に用いて好適なブラシ付き
の直流電動機
の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータにおけるブラシ保持構造の例が、特許文献1及び特許文献2に記載されている。この公報に記載のブラシ保持構造では、ブラシとブラシスプリングとをブラシ保持部に簡単に組み付け固定するとともに確実に固定できるようにするため、ブラシ保持部とキャップとを以下のように係合している。
【0003】
すなわち、ブラシ保持部の外周側端部の両側に被係止部が設けられ、この被係止部の内周側外面に凹状係合部が設けられている。キャップの両側には係止部が設けられ、この係止部の外周側外面には凸条係合部が設けられている。そして、ブラシ保持部の被係止部の凹状とキャップの係止部の凸状とが組み合わされて係合する。これにより、キャップにブラシスプリングから径方向外周向きの付勢力が加わっても、キャップが弾性変形して上記係合が外れる事態を生じることがなく、確実に係止状態が維持される。
【0004】
また、特許文献2に記載の電動モータでは、安定した接圧でブラシをコンミュテータに接触させるために、ブラシ収容部に収容されたブラシをスプリングで半径方向に押し、そのスプリングをストッパで押す構成となっている。具体的には、電動モータが、ヨークの周壁部の開口に装着されるブラシホルダと、ブラシホルダに設けられコンミュテータへ接触するブラシが挿入されるブラシ収容部と、ブラシをコンミュテータ側に付勢するブラシスプリングと、ブラシおよびブラシスプリングを抜け止め保持するストッパとを備え、ブラシホルダが装着された状態で、周壁部とブラシ収容部のストッパとの間に間隙を形成した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−320360号公報
【特許文献2】特開2008−154415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び特許文献2に記載の電動モータでは、ブラシホルダ内に収容されたブラシをばね手段により付勢し、このばね手段がブラシホルダから抜け出るのを防止するために、キャップ手段としてばね抜け止め手段をブラシホルダに係止している。その際、特許文献1に記載の電動モータでは、キャップが弾性変形して係止部が緩むのを防止するために、ブラシホルダとキャップの係止部の相対変位があってもキャップが抜けないように、半径方向に食い込んだ嵌合状態となっている。また、特許文献2に記載の電動モータでは、ストッパがブラシホルダの段差部を左右両側から挟みこんでストッパの抜けを防止する構成となっている。
【0007】
しかしながら、これらいずれの電動モータにおいても、ブラシをブラシホルダに組み付け後に、キャップ部材(ストッパ)になんらかの外力が作用しまたは経年変化により部材そのものが変化して、キャップ部材が半径方向に移動する可能性については、十分には考慮されていない。キャップ部材が半径方向に移動すると、ブラシへの付勢力が変化する恐れが生じ、電力供給が不安定になる場合もある。
【0008】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、ブラシ付きの直流電動機
の製造方法において、組み立て後のブラシへの付勢力を安定させることを目的とする。本発明の他の目的は、上記目的に加え、電動モータの製作を容易にし、電動モータの組立性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の特徴は、カップ状に形成されたケースと、このケースの開口部を覆うブラシプレートと、前記ケース内に収容され電機子および整流子を有する回転子と、前記整流子にばね手段により押し付けられるブラシと、一端部にリア軸受を、その中間部にフロント軸受が取り付けられ、前記電機子をこれらリア軸受及びフロント軸受間に固定して取りつけた回転軸とを有するブラシ付きの直流電動機
の製造方法において、前記ばね手段を保持するばねホルダを有し、前記ブラシプレートを樹脂製とし、この樹脂製のブラシプレートに、前記ブラシを保持する貫通穴が形成されたブラシホルダと、このブラシホルダの貫通穴の端部を閉塞する前記ばねホルダが前記ブラシホルダの長手方向に移動するのを規制する一対の飛び出し規制壁部とを一体成型し、前記ブラシホルダの一方の側面にこのブラシホルダに貫挿されるブラシに固定されたピッグテイルが移動可能であって外径端側が開放された溝を形成するとともに、前記ブラシホルダの外径端側面に前記ばねホルダが当接する当接面を形成し、前記ブラシホルダの両側面であって外径側の天井面に近い側にばねホルダを係止する引掛け部を形成し、前記ばねホルダは、前記ブラシホルダの当接面に当接する押え板部と、その左右の上端側に形成された引掛け部と、押え板部の中央部に配置したばね端保持部を有し、前記貫通穴に、前記ブラシを挿入した後、前記ばね端保持部に固定したばね手段を挿入し、ばね手段を圧縮しながら、前記ブラシホルダの当接面と前記飛び出し規制壁部とで前記ばねホルダを保持した状態で、前記ばねホルダの押え板部を前記ブラシホルダの当接面に当接させ、前記ブラシホルダとばねホルダの引掛け部を互いに係止するように
したことにある。
【0010】
そしてこの特徴において、前記ブラシホルダの一方の側面に、このブラシホルダに貫挿されるブラシに固定されたピッグテイルが移動可能であって外径端側が開放された溝を形成するのがよく、一対の前記飛び出し規制壁部は、対称にほぼL字状に形成されており、その外周部は前記ブラシプレートの外周部とほぼ同一であることが望ましい。
【0011】
また、上記特徴において、前記ばねホルダに形成した前記引掛け部は、J字状であって先端部に係止部を有し、前記ブラシホルダに形成した前記引掛け部は前記ばねホルダの係止部に係止する凸状の係止部を有するのがよく、前記ばねホルダは前記ブラシホルダの貫通穴を閉塞する押え板部を有し、前記ばねホルダの前記引掛け部はこの押え板部からほぼ直角に突き出ており、前記押え板部の左右両端側であって下部に一対の前記飛び出し規制壁部の溝に保持される押え壁部を形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブラシ付き電動モータのブラシをブラシホルダに収容し、さらにこのブラシをコイルばねで付勢する際に、コイルばねをブラシホルダに保持するばねホルダの半径方向の移動を規制する手段を、ブラシホルダを一体成型するブラシプレートに形成したので、組み立て後のブラシへの付勢力を安定させることが可能になる。また、ブラシプレートに上記規制手段を一体形成可能なので、製作容易であり組み立て性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る直流電動機の一実施例の縦断面図である。
【
図2】
図1に示した直流電動機が備えるブラシプレートの前後斜視図および正面図である。
【
図3】
図2に示したブラシプレートの要部拡大図およびブラシホルダの3面図である。
【
図4】
図1に示した直流電動機が備えるばねホルダの斜視図および正面図、側面図である。
【
図5】
図3、4に示したブラシホルダとばねホルダとを用いて組み付ける様子を示す図で、組み付け途中および組み付け後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例を、図面を用いて説明する。
図1は本発明に係る直流電動機の一実施例の縦断面図である。
図2は、
図1に示した直流電動機100が備えるブラシプレート17の図であり、
図2(a)はその斜め前方からの斜視図、
図2(b)は斜め後方からの斜視図、
図2(c)は後方からの正面図である。
図1に示した直流電動機は、車両が備えるアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)に用いられるものであるが、本発明はABSに使用するものに限らない。
【0015】
本実施例に係る直流電動機100は、ブラシ付き直流電動機である。プレス加工等により鉄板をほぼカップ状に形成したケース(ヨーク)11の周壁部12には、この電動機100の界磁を構成する環状の永久磁石16が固定されている。そして、ケース11と永久磁石16とが、この電動機100の固定子を構成する。この永久磁石16と対向して、電機子43が配置されている。電機子43は、型抜きした珪素鋼板等を積層して形成された積層鋼板(コア)41と、この積層鋼板41に形成された凸極に巻回された巻線42とを有している。なお、積層鋼板41の外表面側はモールド樹脂によりモールドされ、絶縁性を確保している。
【0016】
巻線42が巻回された積層鋼板41は、回転軸32に取り付けられ、回転軸32の回転に伴い電動機100の一端側に取り付けられたポンプ95を回転駆動する。回転軸32の端部は、ケース11の底部(
図1(a)では左端部)中央部にプレス加工等で形成したリア軸受保持部13に保持したリア側転がり軸受34に支持されている。ここで、リア軸受保持部13は、ケース11の内側に凸の形状に形成されている。
【0017】
巻線42に電力を供給するために、回転軸32には整流子22が取り付けられている。詳細を後述するように、整流子22には2個のブラシ21がコイルばね74(
図2(c)参照)により付勢されている。ブラシ21は、ブラシプレート17に取り付けた端子25a、25bに電気的に接続されている。端子25a、25bは、ブラシプレート17の円筒部83により、絶縁状態を保護される。
【0018】
ケース11の開口部は、ブラシプレート17で覆われており、ブラシプレート17はケース11に気密に嵌合している。ブラシプレート17の中央部には、フロント側転がり軸受33を保持するための開口部が形成されており、回転軸32に固定されたフロント側転がり軸受33を保持する。ケース11の外周部にはフランジ14が形成されており、このフランジ14に形成したポンプ取付穴15にボルトを挿入してポンプ95を取り付ける。
【0019】
ここで、ブラシプレート17は樹脂製であり、端子25a、25bと一体成形されている。端子25a、25bはいずれも、一方端部側が矩形状をしており、その矩形状部が凸形状の突起部26a、26bを形成している。この端子25a、25bの突起部26a、26bに、ブラシ21に端部を固定され、ピッグテイルガイド73でガイドされたピッグテイル75が取り付けられる。端子25a、25bの他端側は、コネクタ部を形成している。
【0020】
端子25a、25bは、スポット溶接またはフュージングが可能で導電性材料である鋼板や銅板をプレス等で型抜きした後、プレス等で先端部に凸形状が、中間部に90度折り曲げ形状が形成されている。端子25a、25bの中間部分は配線部として形成されており、リング状に形成されるブラシプレート17のリング部内に納まる形状となっている。端子25a、25bのコネクタ部は2枚がほぼ平行であって円筒状に形成されており、ポンプ95の給電部への接続に使用される。このコネクタ部は、駆動するポンプ95に応じてその軸方向長さが決定される。
【0021】
ブラシプレート17には、ほぼ90度の間隔をおいて、半径方向に延びる2個のブラシホルダ72がブラシプレート17と樹脂一体成型されている。ブラシホルダ72には、
図2(c)に断面で示すように、ピッグテイル75が接続されたブラシ21が収容されている。ブラシ21はコイルばね74で半径方向に付勢されている。コイルばね74の外径側端部は、ばねホルダ63に保持されている。
【0022】
次に本発明の特徴的構成であるブラシホルダ72周りの詳細を、
図3を用いて説明する。
図3(b)はブラシホルダ72周りの斜視図であり、
図3(a)、(c)はそれぞれブラシホルダ72の左及び右側面図、
図3(d)はブラシホルダ72の外径端側からの正面図である。ブラシホルダ72、直流電動機100の半径方向に長い直方体状をしている。ブラシホルダ72の中心部には、長手方向(半径方向)に延び、ブラシ21を挿入する断面円形状の孔72eが貫通して形成されている。ブラシホルダ72の一方の側面(
図3では左側面)には外径端から内径端近傍まで延びる溝52が形成されている。この溝52は、ピッグテイル75を取り出すのに用いられる(
図2(c)参照)。
【0023】
ブラシホルダ72のピッグテイル用溝52が形成された側面であって外径側には、天井面72eに近い側にばねホルダ63と係止させるための引掛け部51がブラシホルダ72と一体形成されている。引掛け部51はブラシホルダ72の幅方向(周方向)に等厚の形状である。
【0024】
引掛け部51は、外径側端部から内径側に行くにつれてブラシプレート17の底面から遠ざかる傾斜面51aと、この傾斜面51aに続く水平面51bと、水平面51bの内径側端部に形成された垂直面51cと、垂直面51cの下端部から外径側に続く係止面51dとを備えている。水平面51bおよび垂直面51c、係止面51dで囲まれた部分は、凸状の係止部51eを構成する。一方、ピッグテイル用溝52よりもブラシプレート17の底面17b側には、引掛け部51と同じ幅で引掛け部51の底面51fと同じ半径方向長さを有するほぼ直方体状の当接部53がブラシホルダ72と一体に形成されている。
【0025】
ブラシホルダ72の他の側面(
図3では右側)にも、左側側面と同様の引掛け部54が構成されている。この引掛け部54は、左側側面の引掛け部51と当接部53とが溝52で中断されているのと異なり、上から下まで一体に形成されている。つまり、上部には、外径側端部から内径側に行くにつれてブラシプレート17の底面から遠ざかる傾斜面54aと、この傾斜面54aに続く水平面54bと、水平面54bの内径側端部に形成された垂直面54cと、垂直面54cの下端部から外径側に続く係止面54dとを備えている。水平面54bおよび垂直面54c、係止面54dで囲まれた部分は、凸状の係止部54dを構成する。係止面54dの外径端側から底面17bまで垂直面54fが形成されている。左右の引掛け部51、54の幅方向長さはほぼ同一である。
【0026】
ブラシホルダ72の外径端側面である当接面72dの形状は、ピッグテイル用溝52部を除けば、左右対称形状であり、上下にそれぞれブラシ21の形状に合わせた面出し部72a、72bが形成されている。ブラシプレート17の最外周部であって、左右対称に飛び出し抑制壁部61、62がブラシプレート17と樹脂一体形成されている。ブラシプレート61、62は、ほぼL字型の構造であり、ブラシプレート17の底面17bから所定高さの位置まで形成されている。
【0027】
飛び出し抑制壁部61は、ブラシプレート17の外周端を外径端としブラシホルダ72の当接面72dにほぼ平行な面を内径側端とする周壁部61aと、周壁部61aに直角な方向に延びる径方向壁部61bとを有する。同様に、飛び出し抑制壁部62は、周方向に延びる周壁部62aとこの周壁部62aに直角な方向に延びる径方向壁部62bとを有している。後述するように、この飛び出し抑制壁部61、62はブラシホルダ72の当接面72dとの間で、ばねホルダ63を規制する部材として作用する。
【0028】
次に、上記のように構成したブラシホルダ72に係合するばねホルダ63の詳細を、
図4を用いて説明する。
図4(a)は、ばねホルダ63の斜視図であり、
図4(b)はばねホルダ63の正面図、
図4(c)は右側面図である。ばねホルダ63は、垂直な平板部であってブラシホルダ72の当接面72dに当接する押え板部63cと、ばねホルダ63の左右端部であって上部に設けられた一対の引掛け部64、65と、押え板部の中央部に配置されたばね端保持部66を有している。
【0029】
押え板部63cは、ブラシホルダ72の当接面72dに当接し、ブラシホルダ72に形成された孔72eの端面を完全に塞ぐことができる大きさになっている。押え板部63cの左右両側であって下端部には、左右に突き出た押え壁部63a、63bが形成されている。押え壁部63a、63bの高さは、ブラシプレート17と一体形成した飛び出し抑制壁部61,62の高さよりも高くなっている。また、左右の押え壁部63a、63bの端面間の距離は、L字状に形成された飛び出し抑制壁部61、62のL字の内側角部間の距離に等しいか、わずかに短くなっている。
【0030】
押え板部63cの上端側に形成される2つの引掛け部64、65は同一形状をしており、共に押え板部63cに対して直角に水平方向に延びている。引掛け部64、65は、水平方向に延びる水平部64a、65aと、水平部64a、65aに対しほぼ垂直下向きに延びる垂直部64b、65bと、垂直部64b、65bに対し直角方向であって押え板部63c側に戻る先細り形状の係止部64c、65cとを有しており、全体としてJ字状になっている。垂直部64b、65bの背面側、すなわち押え板部63c側の当接面64d、65dは、ブラシホルダ72の左右両側部に形成した引掛け部51、54の係止面51d、54dに当接する面である。
【0031】
押え板部63cの中央部に円筒状に形成されたばね端保持部66は、押え板部63c側に形成した円筒部66aと、この円筒部66aに続くわずかに先窄まりの円錐形状のテーパー部66bとを有している。ばね端保持部66は、ブラシ21に付勢するコイルばね74を組み立て時に安定して保持するために設けられており、テーパー部66bはコイルばね74をばねホルダ63に取り付けやすくするためのガイドとして作用する。ばね端保持部66の軸方向長さは、コイルばね74が外れないような長さであって、組み立て性および小型化の観点からできるだけブラシホルダ72の長手方向に短い長さとする。
【0032】
このように構成したブラシホルダ72を一体成型したブラシプレート17と、ばねホルダ63とを用いてブラシ21を組み立てる様子を、
図5を用いて説明する。
図5(a)は、ブラシ21を組み立て中の様子を示しており、
図5(b)はブラシ21を組み立て完了後の様子を示している。
【0033】
ブラシホルダ72に形成した孔72eに、面出し部72a、72bをガイドとしてブラシ21を挿入する。その際、ブラシ21に固定したピッグテイル75を、ブラシホルダ72の側面に形成した溝52をガイドにして移動させることが可能であり、ブラシ21をブラシホルダ72の長手方向に滑らかに移動できる。一方、ばねホルダ63の中央部に形成したばね端保持部66に、テーパー部66bをガイドにしてコイルばね74の一端側を円筒部66aに固定する。
【0034】
次に、コイルばね74の他端側を、ブラシホルダ72に形成した孔72eに挿入する。この状態が、
図5(a)の状態である。コイルばね74を圧縮し、ばねホルダ63をブラシホルダ72の当接面72d側に近付ける。その際、最初にばねホルダ63の下部の左右両側に形成した押え壁部63b、63aを、飛び出し抑制壁部61、62の2つの壁部61a、61b;62a、62bが形成するL字状の溝内に保持する。
【0035】
次いで、ばねホルダ63の引掛け部64、65を、ブラシホルダ72の左右両側に形成した引掛け部51、54の傾斜面51a、54aおよび水平面51b、54bをガイドとして滑らせる。最後に、ばねホルダ63の係止部64c、65cがブラシホルダ72の引掛け部51、54の係止面51d、54dに噛み合うことにより、ブラシホルダ72側の引掛け部51、54の垂直面51c、54cとばねホルダ63側の引掛け部64、65の当接面64d、65dが当接し、コイルばね74を確実にブラシホルダ72内に保持する。また、ばねホルダ63のブラシホルダ72からの抜け落ちが防止される。この状態が、
図5(b)の状態である。
【0036】
以上説明したように本実施例によれば、ブラシホルダとばねホルダの双方に形成した引掛け部が互いに係止し合うので、確実にコイルばねをブラシホルダに保持できる。また、ばねホルダがコイルばねの長手方向、すなわち直流電動機の半径方向に移動するのを飛び出し抑制壁部が規制するので、ばねホルダが弾性変形したり、外力が加わったりしても、ばねホルダとブラシホルダとの当接が保たれる。したがって、組み立て後にブラシに加わる付勢力が安定する。さ
らに、ばねホルダとブラシプレートに一体成型した飛び出し抑制壁部という簡単な構造を採用しているので、製作性および組み立て性が向上する。また、ブラシホルダの側部にピッグテイルの取り出し用溝を設けているので、ピッグテイルをブラシホルダの上面から取り出す必要がなく、直流電動機の軸方向長さが長くなるのを回避できる。
【0037】
なお、上記実施例では2ブラシ構造を説明したが、4ブラシ構造に変更することや、ブラシの配置やピッグテイル75の溶接またはフュージング位置を自由に変更可能である。さらに、上記実施例では、コイルばねでブラシに付勢しているが、付勢手段はコイルばねに限るものではなく、ブラシホルダの長手方向に付勢できるものであれば種々の形態を採用できる。
【符号の説明】
【0038】
11…ケース(ヨーク)、12…周壁部、13…リア軸受保持部、14…フランジ、15…ポンプ取り付け穴、16…永久磁石、17…ブラシプレート、17b…ブラシホルダ底面、21…ブラシ、22…整流子、24…一体型端子、25a、25b…端子、26a、26b…(端子)突起部、32…回転軸、33…フロント側転がり軸受、33a…外輪、33b…内輪、33c…鋼球、34…リア側転がり軸受、41…積層鋼板、42…巻線、43…電機子、51…引掛け部、51a…傾斜面、51b…水平面、51c…垂直面、51d…係止面、51e…係止部、51f…底面、52…ピッグテイル用溝、53…当接部、54…引掛け部、54a…傾斜面、54b…水平面、54c…垂直面、54d…係止面、54e…係止部、54f…垂直面、61…飛び出し抑制壁部、61a…周壁部、61b…径方向壁部、62…飛び出し抑制壁部、62a…周壁部、62b…径方向壁部、63…ばねホルダ、63a、63b…押え壁部、63c…押え板部、64…引掛け部、64a…水平部、64b…垂直部、64c…係止部、64d…当接面、65…引掛け部、65a…水平部、65b…垂直部、65c…係止部、65d…当接面、66…ばね端保持部、66a…円筒部、66b…テーパー部、72…ブラシホルダ、72a、72b…面出し部、72c…天井面、72d…当接面、72e…孔、73…ピッグテイルガイド、74…コイルばね(ばね手段)、75…ピッグテイル、83…コネクタ部、95…ポンプ、100…直流電動機。