(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332642
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】静電気保護素子用ペースト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01C 7/10 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
H01C7/10
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-203128(P2015-203128)
(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公開番号】特開2016-143884(P2016-143884A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年10月23日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0014275
(32)【優先日】2015年1月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コー、ボン セオク
(72)【発明者】
【氏名】コー、クン ホ
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ジュン ウーク
【審査官】
竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−36169(JP,A)
【文献】
特公昭63−30763(JP,B2)
【文献】
特表2001−523040(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/065043(WO,A1)
【文献】
特開2009−88168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C7/02−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝導性粒子と、
水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末と、
有機バインダーと、
を含む、静電気保護素子用ペースト。
【請求項2】
前記伝導性粒子は、マンガン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、ニッケル、コバルト、アルミニウム、クロムのうちいずれか一つ又は二つ以上の金属粉末である、請求項1に記載の静電気保護素子用ペースト。
【請求項3】
前記水酸化物の形態のナノセラミック粉末は、Al(OH)3又はMg(OH)2のうちいずれか一つである、請求項1または2に記載の静電気保護素子用ペースト。
【請求項4】
前記水和物の形態のナノセラミック粉末は、Al2O3・(H2O)3である、請求項1から3のいずれか1項に記載の静電気保護素子用ペースト。
【請求項5】
前記炭酸塩の形態のナノセラミック粉末は、Na2CO3である、請求項1から4のいずれか1項に記載の静電気保護素子用ペースト。
【請求項6】
前記ホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末は、B(OH)4−である、請求項1から5のいずれか1項に記載の静電気保護素子用ペースト。
【請求項7】
前記有機バインダーは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂のうちいずれか一つである、請求項1から6のいずれか1項に記載の静電気保護素子用ペースト。
【請求項8】
前記伝導性粒子のサイズは、8μm以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載の静電気保護素子用ペースト。
【請求項9】
伝導性粒子、及び水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末を用意する段階と、
前記伝導性粒子と前記ナノセラミック粉末を有機バインダーと混合して伝導性粒子−ナノセラミック粉末混合物を製造する段階と、
前記伝導性粒子−ナノセラミック粉末混合物に溶剤を投入して公自転ミキシングする段階と、
を含む、静電気保護素子用ペーストの製造方法。
【請求項10】
前記伝導性粒子は、マンガン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、ニッケル、コバルト、アルミニウム、クロムのうちいずれか一つ又は二つ以上の金属粉末である、請求項9に記載の静電気保護素子用ペーストの製造方法。
【請求項11】
前記ナノセラミック粉末は、Al(OH)3、Mg(OH)2、Al2O3・(H2O)3、Na2CO3及びB(OH)4−のうちいずれか一つ又は二つ以上の混合粉末である、請求項9または10に記載の静電気保護素子用ペーストの製造方法。
【請求項12】
前記有機バインダーは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂のうちいずれか一つである、請求項9から11のいずれか1項に記載の静電気保護素子用ペーストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気保護素子用ペースト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品のサイズの減少に伴い搭載部品の装着密度が増加し、高性能及び体積減少のためにICのような集積回路の搭載が増加するにつれて、電子製品に対するESD(Electro−Static Discharge)保護対策の必要性が次第に増加している。また、最近では、スマートフォンとタブレットPCのような携帯用製品の種類及び普及が進み、各携帯用製品の間又は携帯用製品とPCの間にUSB、Direct cableなどの製品間のデータ通信のための連結機能が含まれることにより、電力段のみならず信号連結部におけるサージ(surge)の発生率が増加している。
【0003】
これに対する対策として、従来はバリスタ(varistor)のような静電気保護素子を用いたが、バリスタ(varistor)はキャパシタンス(capacitance)値が大きいという短所がある。最近のデータ通信量の増加によってデータの伝送速度及び伝送量も大きく増加したが、ESD部品のキャパシタンス(capacitance)値が大きい場合は信号の歪み及びノイズ(noise)の発生によって正常なデータ伝送が妨げられる。よって、高速のデータ伝送のために、低いキャパシタンス(capacitance)値を有し且つ優れたESD保護特性を有する製品が求められている。
【0004】
ESD(Electro−Static Discharge)は、電子システム及びICのような集積回路の使用によって現れる不可避な現象の一つである。ESDが発生すると、数百ナノ秒(seconds)以内に数アンペア(A、Ampere)のピーク(peak)電流が発生し、これを数十ナノ秒(seconds)以内にグランド(GND、Ground)などの保護回路に伝達しないと、発生した高電流がICなどの集積回路に流れて、製品の機能の劣化又は破壊を起こす。また、ICのような集積回路は、回路の線幅が数十〜数百ナノメートルと非常に微細であることから、サージ(Surge)が発生する場合は深刻な損傷及び機能低下が発生するため、静電気保護素子の使用が必須とされている。
【0005】
回路内に搭載される部品を保護するための静電気保護素子には、大きく四つの方法が用いられている。第一に、ZnOのように半導体特性を有する金属酸化物と電極の焼結体で構成される素子として積層型チップバリスタ(ChipVaristor)を用いる方法がある。しかしながら、バリスタ(Varistor)は、印加電圧が一定の値以上となると、電流が大幅に発生して流れる特性を有するが、シート成形と電極印刷、積層及び焼結などの工程を経ることから、製造工程が複雑であり、キャパシタンス(capacitance)が大きいため、高速のデータ伝送には適していないという問題がある。
【0006】
第二に、放電型素子を用いる方法があり、放電ギャップの距離、一緒に密封されているガス(Gas)の種類及び圧力などで放電特性を調節することができる。しかしながら、この素子は、静電放電特性には優れるが、形態が複雑であり、表面実装用素子としてはサイズを減らすことが困難であるため、適用に限界があり、また、作動原理は簡単であるが、耐久性に問題がある。第三に、放電ギャップを形成し、ギャップの間隔によって放電電圧を調整する方法がある。しかしながら、この場合、外部の湿度及びガスによって導体に汚染が生じることにより、放電電圧が変化する可能性があり、放電時に基板の炭化によって電極が短絡する可能性もある。
【0007】
よって、このような問題を解決し、低電圧における絶縁特性を改善するために、放電ギャップに、金属又は金属酸化物とレジンを混合したペーストを塗布する方法もある。このようなペーストの製作に用いられる金属酸化物はZnOのように半導体特性を有さなければならず、金属の場合は金属の表面に酸化皮膜を形成させて一定の電圧となるまで絶縁特性を維持させることが必要である。
【0008】
ESDペースト組成物の作動電圧を低くするためには、ESD組成物内の伝導性粒子間の距離を減らすことが必要である。このためには、伝導性粒子のサイズを増加させるか、組成物内に添加されるポリマーの量を減らすか、又は伝導性粒子の添加量を増加させて伝導性粒子の比率を増加させる必要がある。しかしながら、この場合は、伝導性粒子間の距離が減少した分だけESDペースト(paste)がターンオン(turn−on)されたときに発生する熱によって伝導性粒子の表面の絶縁膜が損傷されたり伝導性粒子が溶融されたりして、
図2a、
図2bのように電流経路(current path)が形成される問題が発生する可能性が高まる。
【0009】
これを防止するために、従来は、ESDペースト(Paste)組成物にナノサイズの絶縁性粒子を添加することにより伝導性粒子間の距離を維持してショート(short)を防止しようとしたが、実際には、静電気などの高電圧の発生時に生じる放電熱が及ぶ範囲がより大きいため、不良を効果的に防止することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第2012−0092137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の静電気保護素子の上記多様な短所を解決するためになされたものであり、耐久性が向上した静電気保護素子を製造することができるように伝導性粒子と、水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末と、有機バインダーと、を含む静電気保護素子用ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的を達成するために、伝導性粒子と、水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末と、有機バインダーと、を含む静電気保護素子用ペーストが提供される。
【0013】
上記伝導性粒子は、マンガン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、ニッケル、コバルト、アルミニウム、クロムのうちいずれか一つ以上の金属粉末であればよく、上記水酸化物の形態のナノセラミック粉末は、Al(OH)
3又はMg(OH)
2であればよく、上記水和物の形態のナノセラミック粉末は、Al
2O
3・(H
2O)
3であればよい。
【0014】
また、上記炭酸塩の形態のナノセラミック粉末は、Na
2CO
3であればよく、上記ホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末は、B(OH)
4−であればよく、上記有機バインダーは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂のうちいずれか一つであればよい。
【0015】
本発明の他の目的を達成するために、伝導性粒子、及び水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末を用意する段階と、上記伝導性粒子と上記ナノセラミック粉末を有機バインダーと混合して伝導性粒子−ナノセラミック粉末混合物を製造する段階と、上記伝導性粒子−ナノセラミック混合物に溶剤を投入して公自転ミキシングする段階と、を含む静電気保護素子用ペーストの製造方法が提供される。
【0016】
上記伝導性粒子は、マンガン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、ニッケル、コバルト、アルミニウム、クロムのうちいずれか一つ又は二つ以上の金属粉末であればよく、上記ナノセラミック粉末は、Al(OH)
3、Mg(OH)
2、Al
2O
3・(H
2O)
3、Na
2CO
3及びB(OH)
4−のうちいずれか一つ又は二つ以上の混合粉末であればよく、上記有機バインダーは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂のうちいずれか一つであればよい。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明による静電気保護素子用ペーストは、従来の静電気保護素子用ペーストに含まれるナノサイズのセラミック粉末の代わりに又はナノサイズのセラミック粉末と共に水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末を含み、上記水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末が熱を受ける場合は下記化学式1のようにセラミック元素に結合されたH
2O、OH又はCO
3などの官能基が分離されながら周辺の熱を吸収し放出されたH
2O、CO
2などの粒子が劣化を防止する役割をする。
【0018】
したがって、本発明による静電気保護素子用ペーストを用いて静電気保護素子を製造する場合、耐久性が向上した静電気保護素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例による静電気保護素子用ペーストを含む静電気保護素子の断面図である。
【
図2a】静電気放電後に生じた電流経路(current−path)の走査顕微鏡写真である。
【
図2b】静電気放電後に生じた電流経路(current−path)の走査顕微鏡写真の拡大図である。
【
図3】本発明の実施例による静電気保護素子用ペーストの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0021】
本発明の一実施例による静電気保護素子用ペーストは、伝導性粒子と、水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末と、有機バインダーと、を含むことができる。
【0022】
本実施例による静電気保護素子用ペーストの場合、従来の静電気保護素子用ペーストに含まれるナノサイズのセラミック粉末の代わりに水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末を含むか又はナノサイズのセラミック粉末と共に水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末を含み、上記水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末が熱を受ける場合は下記化学式1、2のようにセラミック元素に結合されたH
2O、OH又はCO
3などの官能基が分離されながら周辺の熱を吸収し放出されたH
2O、CO
2などの粒子が劣化を防止する役割をする。
【0025】
したがって、上記水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末を含む静電気保護素子用ペーストは、外部の静電気の発生時に放電によるペースト内の高分子樹脂の損傷、伝導性カーボンの生成による絶縁抵抗の減少及び漏れ電流(leakage current)の増加などの不良を防止することができる。
【0026】
上記伝導性粒子は、マンガン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、ニッケル、コバルト、アルミニウム、クロムのうちいずれか一つ以上の金属粉末であればよいが、これに限定されない。
【0027】
上記伝導性粒子のサイズは8μm以下であることが好ましい。伝導性粒子のサイズが8μmを超える場合は、2回以上のESD放電によって電流経路(current path)が生じる不良が発生する可能性がある。
【0028】
上記水酸化物の形態のナノセラミック粉末は、Al(OH)
3又はMg(OH)
2であればよく、上記水和物の形態のナノセラミック粉末は、Al
2O
3・(H
2O)
3であればよく、上記炭酸塩の形態のナノセラミック粉末は、Na
2CO
3であればよく、上記ホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末は、B(OH)
4−であればよい。
【0029】
上記有機バインダーは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂のうちいずれか一つであればよいが、これに限定されない。
【0030】
本実施例による静電気保護素子用ペーストは、チップバリスタなどの静電気保護素子に用いられることができる。
【0031】
図1は、本発明の実施例による静電気保護素子用ペーストを含む静電気保護素子の断面図である。
【0032】
図1を参照すると、一般の静電気保護素子100の場合、内部電極300が形成された素子本体200と、内部電極300に電気的に連結されて形成される外部電極400との構成を有し、素子本体200を形成する過程で内部電極300の間に本実施例の静電気保護素子用ペーストを用いることができる。
【0033】
また、印刷回路基板内に静電気保護回路を内蔵する場合に、内部電極間の空間に本実施例の静電気保護素子用ペーストを用いることもできる。これにより、前述したように、外部の静電気の発生時に放電によるペースト内の高分子樹脂の損傷、伝導性カーボンの生成による絶縁抵抗の減少及び漏れ電流(leakage current)の増加などの不良を防止することができる。
【0034】
図3は、本発明の実施例による静電気保護素子用ペーストの製造方法のフローチャートである。
【0035】
図3を参照すると、本実施例による静電気保護素子用ペーストの製造方法は、伝導性粒子、及び水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末を用意する段階と、上記伝導性粒子と上記ナノセラミック粉末を有機バインダーと混合して伝導性粒子−ナノセラミック粉末混合物を製造する段階と、伝導性粒子−ナノセラミック混合物に溶剤を投入して公自転ミキシングする段階と、を含むことができる。
【0036】
伝導性粒子、及び水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末を用意する段階においては、伝導性粒子である金属粉末、ナノセラミック粉末及び無機物Hydrateなどを一定の添加比でそれぞれ秤量した後、ボールミル(Ball−mill)、アペックスミル(Apex−mill)又は3−ロールミル(3−roll−mill)などを用いてバインダーと混合する。
【0037】
上記金属粉末は、マンガン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、ニッケル、コバルト、アルミニウム、クロムのうちいずれか一つ以上であればよく、高粘度ペースト(paste)の場合は、3−ロールミル(3−roll−mill)を用いて構成粒子とバインダーを混合することがより効果的である。
【0038】
上記水酸化物の形態のナノセラミック粉末は、Al(OH)
3又はMg(OH)
2であればよく、上記水和物の形態のナノセラミック粉末は、Al
2O
3・(H
2O)
3であればよく、炭酸塩の形態のナノセラミック粉末は、Na
2CO
3であればよく、上記ホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末は、B(OH)
4−であればよい。
【0039】
伝導性粒子と上記ナノセラミック粉末を有機バインダーと混合して伝導性粒子−ナノセラミック粉末混合物を製造する段階においては、上記伝導性粒子である金属粉末と上記水酸化物、水和物、炭酸塩又はホウ酸塩の形態のナノセラミック粉末に有機バインダーを混合して伝導性粒子−ナノセラミック混合物を製造することができる。
【0040】
上記有機バインダーは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂のうちいずれか一つであればよいが、これに限定されない。
【0041】
伝導性粒子−ナノセラミック混合物に溶剤を投入して公自転ミキシングする段階においては、上記伝導性粒子−ナノセラミック混合物に溶剤を投入して粘度を調節し、公自転ミキシングにより上記投入された溶剤を分散しながらペースト内の気泡を除去して静電気保護素子用ペーストを完成することができる。
【0042】
完成された静電気保護素子用ペーストを、ESD機能をする電極上にスクリーン印刷(screen printing)又はディスペンシング(dispensing)などの方法で塗布した後、150〜200℃の温度で一定時間硬化過程を経て静電気保護素子を完成することができる。
【0043】
本実施例において、静電気保護素子は、独立した電子部品、例えば、チップバリスタなどに限定されず、印刷回路基板内のESD電極の間に塗布する方法で形成されることもできる。
【0044】
<比較例>
まず、8μm以下のサイズを有するアルミニウム(Al)とニッケル(Ni)を混合した伝導性粉末とAl
2O
3ナノセラミック粉末を一定の比率で秤量して用意した後、シリコン樹脂及び溶剤と混合する。上記Al
2O
3ナノセラミック粉末及びシリコン樹脂の分散には、ボールミル(Ball−mill)、アペックスミル(Apex−mill)、又は3−ロールミル(3−roll−mill)などの方法を用いることができるが、本比較例では、高粘度分散に有利な3−ロールミルを用いる。
【0045】
上記Al
2O
3ナノセラミック粉末及び上記シリコン樹脂の混合が完了した後には溶剤をさらに投入し、印刷又は塗布に適した粘度に調節する。
【0046】
その後、公自転ミキシングにより、追加投入された溶剤を分散し、ペースト内の気泡を除去して静電気保護素子用ペーストを完成する。
【0047】
次に、上記静電気保護素子用ペーストを、ESD特性の評価のために製作された基板に一定のギャップ(gap)で分離されて左右対称に配置された電極上にスクリーン印刷又はディスパーシング(dispersing)などの方法で塗布した後、200℃の温度で一定時間硬化過程を経る。
【0048】
次に、IEC61000−4−2規格により8kVでESD Gun Testを行う。この際、8kVのESD衝撃を10回の単位で印加し、5Vにおける漏れ電流(leakage current)不良を観察した。
【0049】
<実施例>
まず、8μm以下のサイズを有するアルミニウム(Al)とニッケル(Ni)を混合した伝導性粉末とAl
2O
3・(H
2O)
3ナノセラミック粉末を一定の比率で秤量して用意した後、シリコン樹脂及び溶剤と混合する。上記Al
2O
3・(H
2O)
3ナノセラミック粉末及びシリコン樹脂の分散には、ボールミル(Ball−mill)、アペックスミル(Apex−mill)、又は3−ロールミル(3−roll−mill)などの方法を用いることができるが、本実施例では、高粘度分散に有利な3−ロールミルを用いる。
【0050】
上記Al
2O
3・(H
2O)
3ナノセラミック粉末及び上記シリコン樹脂の混合が完了した後には溶剤をさらに投入し、印刷又は塗布に適した粘度に調節する。
【0051】
その後、公自転ミキシングにより、追加投入された溶剤を分散し、ペースト内の気泡を除去して静電気保護素子用ペーストを完成する。
【0052】
次に、Al
2O
3・(H
2O)
3ナノセラミック粉末と伝導性金属粒子及びシリコン樹脂を含む静電気保護素子用ペーストを内部電極の間に塗布して静電気保護素子20個を製造する。
【0053】
次に、IEC61000−4−2規格により8kVでESD Gun Testを行う。この際、8kVのESD衝撃を10回の単位で印加し、5Vにおける漏れ電流(leakage current)不良を観察した。
【0055】
上記表1は、水和物の形態のナノセラミック粉末の適用による静電気保護素子の耐久性評価結果のデータを示すものである。
【0056】
表1を参照すると、実施例であるAl
2O
3・(H
2O)
3ナノセラミック粉末を含むペーストで製造された静電気保護素子は、500回以上のESD Gun Testでも漏れ電流(leakage current)不良が発生しないのに対し、比較例であるAl
2O
3ナノセラミック粉末を含むペーストで製造された静電気保護素子は、10回以上のESD Gun Testで不良が発生し始め、100回以上のTestでは75%以上の素子に漏れ電流(leakage current)不良が発生することが分かる。
【0057】
したがって、本発明の実施例による静電気保護素子は、数回のESD放電が繰り返される場合でも漏れ電流(leakage current)不良が発生することなく静電気保護機能を維持することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0059】
100 静電気保護素子
200 素子本体
300 内部電極
400 外部電極