(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス流路において付勢部材よりもガス供給対象側に位置し、ガス供給対象側からガス供給源側へのガス流通によって閉状態になる逆止弁を備えたことを特徴とする請求項1記載のガス漏洩抑制アダプタ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るガス漏洩抑制アダプタ(以下、単にアダプタと称する)は、単なる押出し棒により一方向弁を開状態にする弁機構とは異なるものであり、筒状の側壁による直線状のガス流路を有したガス供給管を備えたものであって、そのガス流路に設けた一方向弁の弁部材を、ガス流路における一方向弁よりも供給対象側に設けられた付勢部材により、供給対象側から供給源側に付勢して、一方向弁を開状態にできるものである。また、ガス供給管の側壁においては、付勢部材の支持部と弾接部との間の位置で側壁厚さが薄い薄壁部を有したものであり、アダプタや当該アダプタに近接する各種ガス供給機器(圧力調整器や高圧ホース等)に対し、例えば地震や雪塊等の落下により意図しない衝撃が加わった場合には、側壁の薄壁部の周辺(例えばガス供給管の両端側に接続される各種ガス供給機器)等と比較すると、当該薄壁部が折損し易くなっている。
【0014】
すなわち、本実施形態のアダプタは、前述のようにアダプタやガス供給機器等に対し意図しない衝撃が加わって薄壁部が折損した場合には、付勢部材が一方向弁から供給対象側に離反し弁部材を付勢できなくなり、これにより一方向弁が閉状態になってガス漏れが抑制されることになる。
【0015】
ここで、例えば特許文献1のような構造の弁機構と比較すると、当該弁機構が折損した場合には、前述したように押出し棒のフィンが流路内で引っ掛かる等により、当該押出し棒が一方向弁から離反しないことも考えられる。また、弁機構が不完全に折損した場合、例えば弁機構の流路が分断されずほぼ連続した状態で当該弁機構に亀裂が形成されガス漏れが発生し得るような場合には、押出し棒が流路内で傾斜する程度で殆ど移動しないことも考えられる。
【0016】
一方、本実施形態のアダプタによれば、付勢部材は前述のようなフィンを持たず比較的簡易な構造(押出し棒と比較して簡易構造)であり、薄壁部が折損した場合、付勢部材はガス流路で引っ掛かることなく一方向弁から供給対象側に離反し、これにより一方向弁が閉状態になり易くガス漏れを抑制できることになる。また、前述のように不完全に折損した場合であっても、付勢部材が湾曲し弁部材に対する付勢力が低下するため、完全に折損した場合のように一方向弁が閉状態になり易く、ガス漏れを抑制できることになる。
【0017】
本実施形態のアダプタは、前述したように薄壁部を有した側壁によるガス流路に一方向弁や付勢部材を備えたものであれば良く、例えばガス供給機器分野等の各種分野で一般的に知られている技術を適用して適宜変更することが可能であり、その一例として以下に示す具体例が挙げられる。
【0018】
[実施例1]
<実施例1のアダプタの構成例>
図1〜
図5に示すアダプタ10は、本実施形態の一例を示すものであって、ガス容器(LPガスボンベ等)2を供給源とするガス供給設備に適用、例えば
図4等に示すように、ガス容器2と当該ガス容器2よりも低圧の供給対象側に位置するガス供給機器(例えば
図4では圧力調整器3)との間に適用可能なものである。まず概略説明すると、アダプタ10は、主に、筒状の側壁11による直線状のガス流路12を有したガス供給管1と、ガス流路12の供給源(本実施例1ではガス容器2)側から図外の供給対象側(例えば
図5ではガス流通口31側)へのガス流通を開閉する一方向弁4と、ガス流路12において一方向弁4よりも供給対象側に位置し当該ガス流路12方向(すなわち側壁11の軸心方向)に延在した付勢部材5と、を備えている。
【0019】
このように構成されたアダプタ10は、例えばガス容器2の上部側コック20から突出形成された筒状接続部25のガス取出口21と、圧力調整器(単段調整器等)3の供給源側に位置する筒状接続部30のガス流通口31と、の間に設けられ、当該アダプタ10とガス取出口21および圧力調整器3との間において固定具等を適宜適用して接続固定し、ガス漏れを抑制した構造(例えば後述するインレット螺子やスリーブ等を用いた接続固定構造)とすることが挙げられる。
【0020】
ここで、圧力調整器3のようなガス供給機器に組み込まれた従来のガス漏洩抑制装置に着目すると、その従来のガス漏洩抑制装置が損傷した場合にはガス供給機器自体を交換することになり、交換費用等のコストがかかってしまうことになる。また、ガス供給機器における検定満了期間が経過しなければ、交換することできない場合もある。
【0021】
一方、アダプタ10のようなアダプタ構造によれば、たとえ損傷したとしても正常なアダプタ10だけを交換すれば良く、その交換作業も比較的容易であり、種々のコスト低減に貢献でき、また検定満了期間を考慮する必要もなくなる。
【0022】
<ガス供給管1の一例>
ガス供給管1は、例えばガス供給機器用の各種配管(所謂インレットパイプ等)に適用されている材料を加工して形成することができるものであって、ガス取出口21とガス流通口31との間で延在する筒状の側壁11を有し、その側壁11の内側を当該側壁11の軸心方向に貫通した直線状のガス流路12が形成されており、側壁11の供給源側端部11a側をガス取出口21に接続して、供給対象側端部11b側をガス流通口31に接続することにより、ガス容器2内のガスがガス流路12を介してガス取出口21側からガス流通口31側へガス流通するように構成された形態を適用できる。本実施例1のガス流路12においては、供給源側から供給対象側に近づくに連れて段階的に狭められた形状であり、各段階毎に段差面(後述の段差面12a,12b、および弁座42)が形成されている。
【0023】
側壁11の中央部11cにおいては、後述する付勢部材5の支持部52と弾接部53との間の位置に、側壁厚さが薄い薄壁部11dが形成されている。この薄壁部11dは、例えば側壁11の中央部11cの外周面において、その外周面の周方向に沿って延在する溝状の切り欠き部11eを形成して構成することができる。この切り欠き部11eは、例えば切り欠き部11e内の内壁面の横断面形状がV字状、U字状、コ字状等の種々の形状に形成されたものであっても良い。また、切り欠き部11eは、前述のように薄壁部11dを構成するもので意図しない大きな衝撃等により折損し易い形状であれば良く、例えば中央部11cの外周面の周方向に沿って連続した形状に限定されず、断続して延在する形状であっても良い。
【0024】
側壁11の供給源側端部11a側とガス取出口21とは、側壁11の中央部
11cに取り付け可能なインレット締結螺子6を用いて接続することができる。このインレット締結螺子6においては、側壁11の中央部11cが貫装可能な形状の筒状部61を有し、側壁11および筒状部61の各中心軸を回転軸として当該側壁11と相対的に回転可能となるように、側壁11の中央部11cに取り付けられている。インレット締結螺子6の供給源側端部11a側の外周面には、雄螺子部6aが形成され、例えば
図5に示すように側壁11の供給源側端部11a側をガス取出口21内に嵌挿した状態で、当該ガス取出口21内の内壁面22に形成された雌螺子部23と螺合(側壁11および筒状部61の各中心軸を回転軸として回転して螺合)できるように構成されている。また、インレット締結螺子6の供給対象側端部11b側においては、必要に応じて工具等を適用しながらインレット締結螺子6を回転し易くするために、
図3等に示すように多面構造の形状(例えば六角ナット形状)に形成しても良い。
【0025】
側壁11の供給源側端部11a側には、当該側壁11の外周側方向にフランジ状に突出しガス取出口21内側に嵌挿可能な形状の拡径部13が形成され、この拡径部13により、前述のようにインレット締結螺子6とガス取出口21内の雌螺子部23とが螺合した状態でガス供給管1が圧力調整器3側に抜けないように抑制できる。また、拡径部13から側壁11の供給源側端部11a方向に対し当該側壁11の軸心側に近接するように傾斜したテーパー面14を形成し、当該側壁11の供給源側端部11a側を先細り形状にした場合には、当該供給源側端部11a側をガス取出口21内に嵌挿し易くなる。さらに、側壁11の供給源側端部11aとガス取出口21内の内壁面22との係合面(図示省略)にシール部材を介在させることにより、筒状接続部25と側壁11との間のシール性や密着性等を高めることが可能となる。例えばテーパー面14が係合面となる場合には、
図1等に示すようにテーパー面14にOリング等のシール部材15を装着しておくことが挙げられる。
【0026】
側壁11の供給対象側端部11b側とガス流通口31とは、筒状のスリーブ7やインレット締結螺子8(例えばインレット締結螺子6と同様の形状のもの)を用いて接続することができる。スリーブ7においては、当該スリーブ7の両端側から側壁11の供給対象側端部11b側および圧力調整器3の筒状接続部30をそれぞれ嵌挿可能な形状の筒状部71が形成されている。筒状部71内のガス供給管1側には、雌螺子部7aが形成され、側壁11の供給対象側端部11bの外周面に形成された雄螺子部11fと螺合できるように構成されている。
【0027】
インレット締結螺子8は、前述のインレット締結螺子6と同様の形状のものを適用でき、例えば圧力調整器3の筒状接続部30の中央部3aが貫装可能な形状の筒状部81を有し、筒状接続部30と相対的に回転可能となるように当該筒状接続部30の中央部3aに取り付けられている。このインレット締結螺子8のガス流通口31側の外周面には、雄螺子部8aが形成され、例えば
図5に示すように筒状接続部30のガス流通口31側をスリーブ7内に嵌挿した状態で、当該スリーブ7の筒状部71内の圧力調整器3側に形成された雌螺子部7bと螺合(筒状接続部30および筒状部71の各中心軸を回転軸として回転して螺合)できるように構成されている。また、インレット締結螺子8の圧力調整器3側においては、インレット締結螺子6と同様に、
図3等に示すような多面構造の形状(例えば六角ナット形状)に形成しても良い。
【0028】
筒状接続部30のガス流通口31側においては、前述の側壁11の供給源側端部11a側と同様に拡径部32が形成され、この拡径部32により、前述のようにインレット締結螺子8と筒状部71内の雌螺子部7bとが螺合した状態で筒状接続部30が圧力調整器3側に抜けないように抑制できる。また、筒状接続部30のガス流通口31側は、先細り形状となるようにテーパー面33を形成して筒状部71内に嵌挿し易くしたり、筒状部71内との係合面にシール部材を介在(例えば
図5等に示すようにテーパー面33にOリング等のシール部材34を装着)させてスリーブ7と筒状接続部30との間のシール性や密着性等を高めたりしても良い。
【0029】
なお、インレット締結螺子6やスリーブ7は、側壁11の薄壁部11dを包覆しないように適用し、その薄壁部11dの折損し易さを妨げないようにすることが好ましい。
【0030】
<一方向弁4の一例>
一方向弁4は、ガス流路12において当該ガス流路12方向に可動自在な弁部材41や、その弁部材41の供給対象側に位置する弁座42を有したものであって、弁部材41の可動によりガス流路12の供給源側から供給対象側へのガス流通を開閉できるように構成された形態を適用できる。
【0031】
弁部材41は、例えば
図1,
図5に示すような球状(あるいはプラグ形状等)でガス流路12の供給源側端部11a側に装填できるものであって、側壁11の内壁面11gの供給源側端部11a側で弁部材41よりも供給対象側の位置から当該側壁11の軸心側に突出した環状の段差面からなる弁座42に対して接離するように可動し、その可動によって一方向弁4を開閉する形態が適用される。ガス流路12における弁部材41の供給源側に、ガス流路12のガス流通を妨げないような形状の通気性部材43を装填しておくことにより、前述のようにガス流路12に装填された弁部材41がガス流路12の供給源側から排出されないように抑制できる。
【0032】
通気性部材43としては、例えば
図1や
図6に示すように、複数個の通気孔43aが穿設された円盤状部43bと、その円盤状部43bの径方向に突出形成された複数個の係合部43cと、を有したものであって、側壁11の内壁面11gの供給源側端部11a側で弁部材41よりも供給源側の位置から当該側壁11の軸心側に突出した環状の段差面12aに設置(係合部43cと段差面12aとが当接するように係合して設置)できるものが適用される。
【0033】
<付勢部材5の一例>
付勢部材5は、ガス流路12における一方向弁4の供給対象側に位置し、弁部材41を供給対象側から供給源側に付勢して当該一方向弁4を開状態にできるように構成された形態を適用できる。例えば
図1,
図5,
図7等に示すように、ガス流路12方向に延在し横断面積が当該ガス流路12の横断面積よりも小さい弾性部51と、前記弾性部51の供給対象側端部に形成され前記ガス流路12における一方向弁4の供給対象側に固定支持される支持部52と、前記弾性部51の供給源側端部に形成され前記弁部材41の供給対象側に弾接する弾接部53と、を有したものが挙げられ、ガス流路12の供給源側から装填して所定位置に配置される。
【0034】
このような付勢部材5の場合、例えば長尺線状で横断面積がガス流路12の横断面積よりも小さい金属材料を用いることにより、前記の弾性部51,支持部52,弾接部53が一体となるように形成できる。具体例としては、前記金属材料の中央部側において、ガス流路12方向に沿って延在するように加工して、直線状の弾性部51を形成できる。このような弾性部51によれば、ガス流路12に対しガス流通を妨げないように位置することが容易となる。また、弾性部51がガス流路12方向に対して直線状に延在することにより、支持部52と弾接部53との間の距離を保つように突っ張った姿勢(以下、突っ張り姿勢)が保持される傾向となり、弁部材41が弾接部53を介して供給源側に付勢され、一方向弁4が開状態になり易くなる。前記の突っ張り姿勢は、例えば
図1等に示すように内壁面11gに沿って配置することにより保持し易くなる。
【0035】
前記金属材料の一端側(供給対象側)においては、ガス流路12の軸心を中心軸として所定の巻数で巻回加工(例えばガス流路12の横断面に沿って巻回された状態となるように加工)することにより、コイル状の支持部52を形成できる。この支持部52は、例えば側壁11の供給対象側端部11b側で薄壁部11dよりも供給対象側の位置から当該側壁11の軸心側に突出した環状の段差面12bに固定支持できる。このような支持構造により、支持部52は、段差面12bの環状方向に沿ってコイル状に延在し、ガス流路12に対しガス流通を妨げないように位置(コイル軸心側をガス流通させるように位置)することが容易となる。また、支持部52において、段差面12bの位置の内壁面11gよりも大きい径のコイル状に巻回して形成された場合には、付勢部材5をガス流路12内に対しスクリュー状に回転させて捩りながら装填することになり、段差面12bに対して締り嵌めされて、より安定して固定支持され易くなる。
【0036】
前記金属材料の他端側(供給源側)においては、ガス流路12の軸心を直交する直線を中心軸として所定の巻数で巻回加工(例えばガス流路12の縦断面に沿って巻回された状態となるように加工)することにより、コイル状の弾接部53を形成できる。この弾接部53は、弁座42の軸心側を貫通できる大きさのコイル状に巻回して、弁部材41を供給源側に付勢できるように形成されれば良いため、大きくなり過ぎないようにコイル巻き数等を適宜設定することにより、ガス流路12に対しガス流通を妨げないように位置することが容易となる。また、弾接部53は、弾接しながら弁部材41を供給源側に付勢するため、その付勢による弁部材41に対する衝撃を軽減することができる。
【0037】
以上示したような付勢部材5によれば、例えば前述した弁機構のようにフィンを有した複雑な構造の押出し棒と比較すると、シンプルな構造であるため製造し易く、製品コストの低減に貢献することも可能となる。また、付勢部材5による付勢力は、適宜調整可能、例えば前述のような長尺線状の金属材料を適用した場合には金属材料の種類や径を適宜設定することにより調整可能である。例えば、ガス容器2からのガス流量に応じて付勢部材5の付勢力を設定した場合には、所定のガス流量を超えた場合に一方向弁4が閉状態となるようにすることもでき、一方向弁4をガス過流出抑制弁として機能させることも可能である。
【0038】
<アダプタ10の折損の一例>
例えば
図4等に示すように、ガス容器2と当該ガス容器2よりも低圧の供給対象側に位置するガス供給機器(例えば
図4では圧力調整器3)との間にアダプタ10を適用し、そのアダプタ10や当該アダプタ10周辺のガス供給機器に対して意図しない衝撃が加わった場合には、その衝撃による応力は薄壁部11dに集中し易くなる。これにより、前記のような衝撃による応力が所定の大きさを超える場合において、例えばアダプタ10の薄壁部11d以外の箇所が損傷する前に、当該アダプタ10を薄壁部11dにて意図的に折損させることができる。
【0039】
アダプタ10が薄壁部11dにて折損すると、例えば
図8に示すように、薄壁部11dを境界にしてガス供給管1が2つに分離し、付勢部材5が一方向弁4から離反して、これにより一方向弁4が閉状態になるため、アダプタ10の供給源側(ガス容器2側)が当該アダプタ10の供給対象側より高圧な状態であっても、ガス容器2からのガスのガス漏れを抑制することが可能となる。
【0040】
また、例えば前記の折損が不完全でガス供給管1が十分に分離しない場合であっても、付勢部材5の弾性部51が湾曲し易いため、弾性部51の突っ張り姿勢が変形し、弁部材41を付勢する付勢力が抑制される。すなわち、一方向弁4が閉状態になり易くなるため、
図8に示した場合と同様に、ガス容器2からのガスのガス漏れを抑制することが可能となる。
【0041】
[実施例2]
<実施例2のアダプタの構成例>
図9〜
図11に示すアダプタ100(
図10ではアダプタ100a,100b;以下、適宜略してアダプタ100)は、本実施形態の他例を示すものであり、実施例1に示したような単にガス容器2を供給源とするガス供給設備に適用できるだけでなく、複数個の供給源を有したガス供給設備にも適用可能なものである。以下、実施例1と同様なものには同一符号を付する等により、その詳細な説明を適宜省略する。
【0042】
アダプタ100は、アダプタ10と同様の構成を有するものであって、例えば
図10に示すように、ガス容器2,2aが各種ガス供給機器(自動切
替調整器90や高圧ホース9a,9b等)を介して連結されたガス供給設備において、ガス容器2,2aと、当該ガス容器2,2aよりも低圧の供給対象側に位置するガス供給機器(例えば
図10ではそれぞれ高圧ホース9a,9b)と、の間にそれぞれ適用される。
【0043】
まずアダプタ100を概略説明すると、
図9に示すように、主に、筒状の側壁11による直線状のガス流路12を有したガス供給管1と、ガス流路12の供給源側(アダプタ100aの場合はガス容器2側、アダプタ100bの場合はガス容器2a側)から図外の供給対象側(例えば
図10ではそれぞれ高圧ホース9a,9bを介して供給対象側)へのガス流通を開閉する一方向弁4と、ガス流路12において一方向弁4よりも供給対象側に位置し当該ガス流路12方向(すなわち側壁11の軸心方向)に延在した付勢部材5と、を備えている。
【0044】
また、ガス流路12における付勢部材5よりも供給対象側の位置には、供給対象側から供給源側(アダプタ100aの場合はガス容器2側、アダプタ100bの場合はガス容器2a側)へのガス流通によって閉状態になる逆止弁40が備えられている。この逆止弁40においては、前述のように供給対象側から供給源側へのガス流通によって閉状態になるものであれば、種々の形態のものを適用することができる。その一例としては、
図9に示すように、ガス流路12において当該ガス流路12方向に可動自在な弁部材44や、その弁部材44の供給源側に位置する弁座45を有したものであって、弁部材44の可動によりガス流路12の供給対象側から供給源側へのガス流通を開閉できるように構成された形態が挙げられる。
【0045】
弁部材44および弁座45においては、それぞれ一方向弁4の弁部材41および弁座42と同様のものを適用することができる。例えば弁部材44の場合、
図9に示すような球状(あるいはプラグ形状等)でガス流路12の供給対象側端部11b側に装填できるものであって、側壁11の内壁面11gの供給対象側端部11b側で弁部材44よりも供給源側の位置から当該側壁11の軸心側に突出した環状の段差面からなる弁座45に対して接離するように可動し、その可動によって逆止弁40を開閉する形態が挙げられる。なお、
図9の弁座42,45においてはテーパ状の段差面によって形成されている。
【0046】
ガス流路12における弁部材44の供給対象側には、ガス流路12に装填された弁部材44がガス流路12の供給対象側から排出されないように抑制するストッパー46が設けられる。このストッパー46は、ガス流路12のガス流通を妨げずに弁部材44の排出を抑制できるような形状であれば良く、例えば前述の通気性部材43と同様の形状のものや、付勢部材5の支持部52と同様の形状のものを適用することが挙げられる。
【0047】
このように構成されたアダプタ100は、例えば
図10に示すように、ガス容器2,2aの各上部側コック20のガス取出口21と、高圧ホース9a,9bにおける供給源側のそれぞれの一端部9aa,9baと、の間にそれぞれ設けられる。高圧ホース9a,9bの他端部9ab,9bbにおいては、それぞれ自動切替調整器90の一次圧力調整部90a側に接続される。自動切替調整器90の二次圧力調整部90bと供給源側との間においては、例えば
図10に示すように、検査孔付螺子ガス栓91a,ドレン部91b,供給管91c,ガスメータ91d,供給管91e等の各種ガス供給機器を設けることが挙げられる。
【0048】
また、本実施例2のガス取出口21、アダプタ100、高圧ホース9aおよび9b、自動切替調整器90、各種ガス供給機器のそれぞれの接続固定構造においても、実施例1と同様に固定具等を適宜適用することにより、ガス漏れを抑制した構造とすることが挙げられる。
【0049】
<自動切替調整器90の一例>
自動切替調整器90においては、前述のように複数の供給源をアダプタ100や高圧ホース9a,9b等の各種ガス供給機器を介して連結し、供給対象に対するガス供給を中断することなく、各供給源の何れかを交換可能にする一般的な形態を適用することが可能である。例えば
図11に示すように、ガス容器2,2aからのガスが流入する一次圧力調整部90aの各流路92a,92bと、二次圧力調整部90bと、の間にそれぞれ開閉弁93a,93bを有したものであって、二次圧力調整部
90bに設けられた弾接体95が開閉弁93a,93bに接離(
図11では弁棒94a,94bに対して接離)することにより、開閉弁93a,93bが各々開閉して図中の白抜き矢印のようにガス流通する形態が挙げられる。
【0050】
図11の弾接体95においては、開閉弁93a,93bに対向する弾接部95a,95bが段違い状に形成(
図11では、弾接部95aが弾接部95bよりも突出するように形成)されており、二次圧力調整部90cのガス圧Pβ(供給対象側のガス圧に相当)に応じて開閉弁93a,93bとの間の距離が変化するように、且つ当該弾性体の姿勢が切替レバー90cによって変化し弾接部95a,95bの位置が入れ替え自在となるように、弾性部95cを介して弾性支持されている。
【0051】
自動切替調整器90の操作例としては、以下に示す一例が挙げられる。例えば
図11(A)においては、ガス容器2aを補助的容器(予備容器)としガス容器2を使用側容器として、一次圧力調整部90aの各流路92a,92のガス圧Pα,Pγが略同一でそれぞれガス圧Pβよりも大きい場合(例えばガス容器2,2aそれぞれにガスが略均等に十分貯蔵されている場合)であって、弾接体95の姿勢においては弾接部95aが開閉弁93aに弾接し弾接部95bが開閉弁93bから離反した姿勢であり、当該ガス容器2のガスのみを供給対象側にガス流通させている状態である。
【0052】
この状態から、ガス容器2のガスが消費されてガス圧Pαが低下しガス圧Pγも低下すると、
図11(B)に示すように弾接体95が開閉弁93a,93bに接近(弾接部95bが開閉弁93bに弾接)して開閉弁93bが開き始め、ガス容器2aからのガスが供給対象側に対し補助的にガス流通し始めることになる。
【0053】
次に、切替レバー90cの操作により弾接体95の姿勢を変えて弾接部95a,95bの位置を入れ替えると、
図11(C)に示すように開閉弁93aが閉状態で開閉弁93bが開状態となり、ガス容器2aのガスのみが供給対象側にガス流通することになる。これにより、供給対象に対するガス供給を中断することなく、ガス消費されたガス容器2を交換(ガスを貯蔵したガス容器2と交換)することができる。そして、
図11(D)においては、ガス容器2aが使用側容器となりガス容器2が補助的容器(予備容器)として機能することになる。
【0054】
なお、切替レバー90cを誤って操作した状態で前記のようにガス消費されたガス容器を交換、例えば
図10のガス供給設備において
図11(B)に示すような状態でガス容器2を交換作業(
図10の設備でガス容器2とアダプタ100aとの間を分離する作業)してしまい、アダプタ100bの一方向弁4が閉状態にならずガス過流出抑制弁としても機能しない場合において、ガス容器2aのガスが自動切替調整器90等を介してアダプタ100a側にガス流通し得る状態になったとしても、アダプタ100aと高圧ホース9aとが接続されていれば、逆止弁40が機能することにより、当該ガス容器2aからガスのガス漏れを抑制することが可能となる。
【0055】
<アダプタ100の折損の一例>
アダプタ100は、複数個のガス供給源を有したガス供給設備に適用、例えば
図10等に示したように、ガス容器2および2aを各種ガス供給機器(自動切
替調整器90や高圧ホース9a,9b等)を介して連結されたガス供給設備に適用し、そのアダプタ100や当該アダプタ100周辺のガス供給機器に対して意図しない衝撃が加わった場合には、実施例1と同様に、当該衝撃による応力が薄壁部11dに集中し易くなる。これにより、前記のような衝撃による応力が所定の大きさを超える場合において、例えばアダプタ100の薄壁部11d以外の箇所が損傷する前に、当該アダプタ100を薄壁部11dにて意図的に折損させることができる。
【0056】
例えばアダプタ100a,100bがそれぞれ薄壁部11dにて折損すると、薄壁部11dを境界にしてガス供給管1が2つに分離(例えばアダプタ100aが
図10の点線部で示すように分離)し、付勢部材5が一方向弁4から離反して、これにより一方向弁4が閉状態になるため、たとえアダプタ100a,100bの供給源側(ガス容器2,2a側)が当該アダプタ100a,100bの供給対象側より高圧な状態であっても、ガス容器2,2aからのガスのガス漏れを抑制することが可能となる。アダプタ100a,100bの折損が不完全でガス供給管1が十分に分離しない場合であっても、付勢部材5の弾性部51が湾曲し易いため、弾性部51の突っ張り姿勢が変形し、弁部材41を付勢する付勢力が抑制される。すなわち、一方向弁4が閉状態になり易くなるため、実施例1と同様に、ガス容器2,2aからのガスのガス漏れを抑制することが可能となる。
【0057】
また、アダプタ100の何れか一方が折損、例えばアダプタ100bが折損せずアダプタ100aのみが
図10の点線部で示すように折損して分離し、アダプタ100bの一方向弁4が閉状態にならずガス過流出抑制弁としても機能しない場合において、ガス容器2aのガスが自動切替調整器90等を介してアダプタ100a側にガス流通し得る状態(例えば
図10および
図11(B)に示す状態)であっても、アダプタ100aの逆止弁40が機能することにより、自動切替調整器90を介したガス容器2aからのガスのガス漏れを抑制することができる。
【0058】
[本実施形態のアダプタの検証]
<アダプタ10,100の折損に係る強度計算の一例>
ここで、
図12に示したようなアダプタ10において、スリーブ7側(すなわち圧力調整器3側)に所定の破断荷重Pを加えた場合を想定し、薄壁部11dの最大曲げモーメントMおよび破断荷重Pを求めることにより、薄壁部11dの強度を検証した。この検証においては、スリーブ7側に接続される圧力調整器3に加えられ得る耐静荷重の基準値を50N・m以上とし、アダプタ10の薄壁部11dの設計目標強度を60〜110N・mとした。また、薄壁部11dの内径d1,外径d2をそれぞれ4.2mm,11.2mmとし、薄壁部11dとスリーブ7の供給対象側端部との間の距離Lを33mmとした。
【0059】
まず、薄壁部11dの断面積A,断面二次モーメントI,断面係数σは、それぞれ以下に示すように求めることができる。
【0060】
・断面積A=π/4(d2^2−d1^2)=84.67mm
・断面二次モーメントI=π/64(d2^4−d1^4)=757.13
・断面係数σ=π/32((d2^4−d1^4)/d2)=135.20mm
3
そして、C3604引張り強さZの実力値,最大曲げモーメントM(すなわちσ*Z)の実力値,ヤング率を求めたところ、それぞれ50kg/mm
2,66N・m(6760kg・mm),1×10
8という結果が得られた。最大曲げモーメントMの実力値が66N・mであることに着目すると、アダプタ10の薄壁部11dが設計目標強度範囲内となっていることが判る。破断荷重P(すなわちM/L)の実力値においては、2009N(204.8kg)であった。なお、JIS H 3100に準拠したC3604引張り強さZ,最大曲げモーメントM,破断荷重Pを求めたところ、それぞれ34.2kg/mm
2,45N・m(4624kg・mm),1374N(140.1kg)であった。
【0061】
<アダプタ10,100に圧力調整器3を接続した場合の一例>
次に、
図4に示したようなアダプタ10に圧力調整器3を接続した場合において、所定の破断荷重P1を加えた場合を想定し、薄壁部11dの破断強度および破断荷重P1を求めることにより、薄壁部11dの強度を検証した。なお、圧力調整器3の長さL1,当該圧力調整器3の端部から薄壁部11dまでの距離L2を、それぞれ130mm,185mmとした。また、圧力調整器3内のインレットパイプの破断強度(モーメント)は130N・m(実測値)とする。
【0062】
その結果、荷重P1が357N(=66N・m/0.185)の場合に薄壁部11dが折損して破断することを確認できた。この時、圧力調整器3内のインレットパイプに加わるモーメントは46N・m(=357N*0.13m)であり、圧力調整器3内のインレットパイプには当該インレットパイプ自体の破断強度の36%(46/130*100)しか加わらないことが判った。すなわち、圧力調整器3のインレットパイプの破断等が起こる前に、アダプタ10の薄壁部11dが先に破断することが読み取れる。
【0063】
<アダプタ10,100に張力式高圧ホースを接続した場合の一例>
次に、
図4に示したような構造において圧力調整器3の替わりに張力式高圧ホース(例えば
図10の高圧ホース9a,9b)を接続し、所定の破断荷重P2を加えた場合を想定し、薄壁部11dの破断強度および破断荷重P2を求めることにより、薄壁部11dの強度を検証した。なお、張力式高圧ホースの長さ,当該張力式高圧ホースの端部から薄壁部11dまでの距離は、それぞれ圧力調整器3の場合と同様にL1(=130mm),L2(=185mm)とした。また、張力式高圧ホースの破断強度(モーメント)は42N・m(実測値)とする。
【0064】
その結果、荷重P2が611N(=66N・m/0.108)の場合に薄壁部11dが折損して破断することを確認できた。この時、張力式高圧ホースの継手部に加わるモーメントは15.3N・m(=611N*0.025m)であり、張力式高圧ホースの継手部には当該継手部自体の破断強度の36%(15.3/42×100)しか加わらないことが判った。すなわち、張力式高圧ホースの継手部の破断等が起こる前に、アダプタ10の薄壁部11dが先に破断することが読み取れる。
【0065】
アダプタ100の薄壁部11dの強度においても、アダプタ10の場合と同様の方法で破断荷重P,P1,P2を求めて各検証(アダプタ10の替わりにアダプタ100を適用した各検証)を行ったところ、当該アダプタ10と同様の検証結果が得られたことを確認できた。
【0066】
以上示した各検証結果により、例えば本実施形態によるアダプタに圧力調整器や張力式高圧ホース等の各種ガス供給機器を接続し、そのガス供給機器に地震や雪塊等の落下により意図しない衝撃が加わった場合には、強度計算上、本実施形態のアダプタにおいては薄壁部が先に破断(例えば単段調整器・高圧ホース破断強度の36%の力でアダプタが先に破断)することが判明した。
【0067】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。例えば、特許文献1等に基づいて多彩に変更することが可能であり、本実施形態で示したような作用効果を奏するものであれば良い。
【0068】
付勢部材5において、弾性部51,支持部52,弾接部53のうち少なくとも何れかが、ガス供給管1やガス供給機器に適用される材料よりも低融点の低融点材料を適用した場合、例えば火災発生等によりガス供給機器等が高温雰囲気下に曝されると付勢部材5が溶融し易く、この溶融により一方向弁4が閉状態になるため、ガス漏洩の抑制に貢献できることになる。