(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下実施例と記す)を、図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、共通する部分には同一の符号を付しており、同一符号の部分に対して重複した説明を省略する。
【0013】
[汚染水処理装置]
まず、本発明の一実施例に係る汚染水処理装置の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、汚染水処理装置を示す模式図である。
【0014】
汚染水処理装置4は、汚染水を収納し、遮光性を有する密閉容器42と、その内部に配置される紫外線ランプ43から構成される。
図1に示すように更に、磁気処理器41と対流板441、442を備えてもよい。本実施例では、磁気処理器41と対流板441、442を備えた汚染水処理装置4について説明する。以下、各構成部について説明する。
【0015】
容器42には、汚染水が所定量だけ入れられており、開閉弁(図示せず)により密閉されている。また、紫外線ランプ43以外の光が入らないよう、遮光性を有する素材で構成される。汚染水処理装置4を構成する容器42は1個でもよいが、
図1に示すように、2個、または3個以上であってもよい。本実施例では、容器42を2個備えた汚染水処理装置4を用いる。
【0016】
容器42の形状や大きさは、特に限定されないが、内部の汚染水が紫外線ランプ43の光に充分に当たるような形状及び大きさで構成されることが好ましい。容器42は、例えば、円筒状で直径が300mm、その直径部分の長手方向の長さが300mmで構成され、左右の配管(直径が50mm)と滑らかに結合するような形状とすることができる。また、複数の容器42を繋げる配管の直径も同様に50mmとする。
【0017】
容器42の内部に配置される紫外線ランプ43は、200nm〜400nm程の波長の紫外線を照射できるランプを使用する。紫外線ランプ43の光が汚染水にできるだけ当たるようにするため、表面積が広いU字型の紫外線ランプ43を使用することが好ましい。また、1個の容器42内に複数本の紫外線ランプ43を設置することが更に好ましい。それにより、紫外線を汚染水に万遍なく当てやすくなる。本実施例では、1個の容器42内に2本以上の紫外線ランプ43を使用する。
【0018】
制御装置(制御盤)44は、上記の紫外線ランプ43を調整する。紫外線の照射時間や、電源のオン、オフを自動で行うように制御することができる。例えば、容器42内に汚染水が入り、密閉された後に紫外線ランプ43の電源がオンになり、容器42から排出した後に、電源がオフになるように自動制御してもよい。
【0019】
また、
図1に示すように容器42の内部に、汚染水が対流するように対流板441、442を備えてもよい。対流板441、442は、それぞれ1枚の平板を捩じることで構成される。汚染水はポンプから汲み上げられた後に、矢印で示すように容器42の長手方向に流れるが、対流板441、442の凹凸部に当たることで、左右、上下に流動し、繰り返し紫外線ランプ43の紫外線に当たるようになる。それにより、汚染水を紫外線ランプ43の紫外線に充分に当てることができ、汚染水の汚染物質に作用する。
【0020】
汚染水処理装置4は、更に磁気処理器41を備えてもよい。磁気処理器41は、容器43に汚染水を供給する配管の外周に、配管を挟んで対面する磁石相互の極性が異なるように配置された永久磁石で構成される。永久磁石は1対(N極とS極)でもよいが、複数あることが好ましい。このように構成することで、配管を通る汚染水に金属粉末が混合している場合でも有効に除去できる。また、容器42を繋げる配管にも磁気処理器41を備えてもよい。
【0021】
[汚染水処理システム]
次に汚染水処理装置4を備えた汚染水処理システム1の構成について、
図2と
図3を参照して説明する。
図2は汚染水処理システム1の全体構成を示す概略図であり、
図3は、汚染水処理システム1の除去方法を示す説明図である。
【0022】
図2に示すように、汚染水処理システム1は、汚染水を貯える貯水タンク(汚染タンク)2と、前述の汚染水処理装置4と、これを通過した後の処理水を保管する保管タンク5と、保管タンク5を通過した後の液体を保管して放流する回収タンク7から構成される。また、
図2に示すように、汚染水処理システム1は、更に液体シンチレーションカウンタ6と、ガスクロマトグラフ8を備えてもよい。本実施例では、それらを備えた汚染水処理システム1について説明する。
【0023】
貯水タンク(汚染水タンク)2には、汚染水が蓄えられており、密閉されている。貯水タンク2の汚染水はポンプ3の駆動により、配管を通って汚染水処理装置4に所定量、供給される(
図3のS11)。汚染水処理装置4の入口部付近と出口部付近の配管には開閉弁10、11が設けられており、汚染水が汚染水処理装置4に供給されるとき、開閉弁10は開いており、供給が終わった後に閉じられる。このとき、開閉弁11は閉じた状態である。
【0024】
汚染水処理装置4に供給された汚染水は、磁気処理器41が備わった配管(S12)を通過し、容器42内の紫外線ランプ43の紫外線に万遍なく照射される(S13)。所定時間経過した後、汚染水は保管タンク5に供給される(S14)。保管タンク5の入口付近には、開閉弁11が配管に設けられており、汚染水処理装置4を通過した処理水が供給される際に開閉弁11が開けられる。保管タンク5は密閉されており、所定量の処理水が一時的に保管される。
【0025】
保管タンク5は、液体検査用(又は測定用)の配管と繋がる構成としてもよい。その配管の開閉弁を開くことにより、所定量の処理水を取り出すことができる。取り出した処理水は、密閉容器に入れられ、例えば液体シンチレーションカウンタ6で検査する(S15)。質量計を用いて処理水の質量を量ることもできる。また、保管タンク5は、回収タンク7にも配管を介して繋がっている。それぞれの配管には開閉弁12、13が設けられており、必要に応じて開閉される。処理水を検査する際には、開閉弁12が開けられ、開閉弁13は閉じており、回収タンク7に処理水を供給する際には、開閉弁13が開けられ、開閉弁12は閉じている。
【0026】
回収タンク7は、保管タンク5と配管を介して繋がっており、開閉弁13又は16を開けることにより、保管タンク5に保管された処理水が供給される(S16)。回収タンク7は密閉されており、保管タンク5で検査済の処理水が保管される。検査の結果、汚染物質の除去が好適になされていた場合には、開閉弁14が開けられ、放流用の配管を介して処理水が海等に放流される。
【0027】
また、汚染物質の除去が好適になされていた場合には、次の処理水は保管タンク5を介さず、汚染水処理装置4から直接、回収タンク7に供給するようにしてもよい。その場合には、汚染水処理装置4と回収タンク7を繋ぐ配管と開閉弁が設けられ(図示せず)、開閉弁を開けることにより、処理水が回収タンク7に供給される。
【0028】
さらに、回収タンク7は、気体検査用の配管と繋がる構成としてもよい。その配管の開閉弁15を開くことにより、所定量の気体を取り出すことができる。取り出した気体は、密閉容器に入れられ、例えばガスクロマトグラフ8で検査する(S17)。ガスクロマトグラフ8で検査した結果、気体が水素の場合にはタンクに回収し、燃料として使用することもできる。
【0029】
以上のように、汚染水処理システム1が構成される。なお、本実施例は一例であり、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、保管タンク5と回収タンク7をまとめて1つのタンクとしてもよいし、保管タンク5で検査した処理水の処理が充分でない場合には、再度、汚染水処理装置4に処理水を供給する構成としてもよい。
【0030】
〔重水素水(D
2O)を用いた実験〕
トリチウム(
3H)は、時間が経つと、以下の式のように弱いβ線を放射しながら崩壊を起こしてヘリウム(
3He)に変わる放射性同位体である。
【0032】
トリチウムはヘリウム(
3He)と電子(e
−)と、反電子ニュートリノに崩壊される。トリチウムの原子核は、陽子1つと中性子2つであるが、ヘリウム(
3He)の原子核は、陽子2つと中性子1つからなる。β崩壊により、トリチウムの中性子の1つが陽子1つに変わる。陽子の質量(約1.673×10
−27kg)と中性子の質量(約1.675×10
−27kg)は異なるため、崩壊により全体の質量は、非常に微量ではあるが変化する。トリチウム水に本発明の汚染水処理装置の紫外線を照射した後、全体の質量が変化していれば、崩壊が起きたことが確認できる。ただし、自然に崩壊した分や密閉状態を充分に考慮しなければならない。
【0033】
トリチウム水を使用した実験は困難であるため、本実施例では二重水素(D
2)を遮光した密閉容器に入れて、紫外線を充分に当てる実験を行なった。二重水素においてもトリチウムのように、中性子の1つが陽子1つに変わるような変化が起きれば、全体の質量が非常に微量ではあるが変化し、それにより崩壊が起きたことが確認できる。
【0034】
本実施例では、重水素水(D
2O)として、市販の重水(関東化学株式会社製、99.8%D)を用いた。この重水素水(D
2O)100gと、軽水(H
20)900gを混合した液体を遮光した密閉容器に入れて、容器内の紫外線ランプで照射する。5分間照射した後に、密閉容器の液体を安定同位体比測定装置で検査(SIサイエンス株式会社による検査)した結果、重水素水(D
2O)の割合が全体の9.04%となっていた。照射前の重水素水(D
2O)の割合は、100g(重水素)/(100+900)g(全体)であるから、10.0%である。実際には、軽水(H
20)中にも0.015%の割合で重水素が含まれているため、10.0%よりも多くなる。従って、紫外線ランプの照射により、重水素水(D
2O)の割合が減ったことが確認できた。
【0035】
また、全体の質量を計量したところ、紫外線ランプで照射する前と比較して、微量ではあるが減少が確認された。前述のように、中性子の質量は陽子の質量よりもわずかに少ないため、重水素の中性子の1つが陽子1つに変わることがあれば、全体の質量は非常に微量ではあるが減少する。
【0036】
本実験で確認できたことは、紫外線ランプを重水素水(D
2O)と軽水の混合液に5分間照射することで、重水素水(D
2O)の割合が減った。同様な現象はトリチウム水でも起こり得ると思われるが、厳密にはβ線を計測し、崩壊を確かめる必要がある。
【0037】
〔汚染水処理方法〕
次に、本発明の汚染水処理方法について説明する。本実施例の汚染水処理方法には、福島原発付近の汚沼を使用する。この汚沼には、トリチウム、ストロンチウム、セシウムが含有されていると推測される。これらを含む汚沼の保管には、特許第5832019号に記載の「放射線遮蔽容器」を使用する。また、放射線量の測定には、環境放射線モニタ(HORIBA PA1000)を使用する。
【0038】
まず、準備として上記の汚沼が運び込まれる前の実験室内の放射線量、すなわち自然放射線量を測定した。測定は実験開始前に5回、実験終了後に5回測定し、それぞれの平均値を算出した後、全体の平均値を算出した。実験開始前の平均値は、0.0626マイクロシーベルト(以下、μsv)、実験終了後の平均値は、0.0648μsvであり、全体の平均値は、0.0637μsvであった。また、保管容器から汚沼20gを取り出し、水1.1リットルを加えて、実験に使用する汚染水を作成した。この汚染水の放射線量は、0.149μsvであり、この値から実験室内の平均放射線量0.0637μsvを差し引いた実質的な放射線量(以下、汚染水濃度)は、0.0853μsvであった。
【0039】
図4は、本発明の一実施例である汚染水処理方法を示す説明図である。
図4(A)に示すように、実験用の放射線遮蔽容器50(遮光性を有する密閉容器)を実験台53に置き、放射線遮蔽容器50の円筒状の中心部51(空洞)内に汚染水が入った容器52を入れる。放射線遮蔽容器50は、例えば、直径200mm、高さ500mmの円筒形である。また、中心部51の直径は140mmであり、放射線遮蔽容器50の外壁の厚さは30mmである。環境放射線モニタを実験台53上の放射線遮蔽容器50付近の測定位置Aに設置し、放射線量を5回測定したところ、平均値は、0.0876μsvであった。この値から実験室内の平均放射線量0.0637μsvを差し引いた実質的な汚染水濃度は、0.0239μsvである。実質的な汚染水濃度0.0853μsvと比べて測定位置Aの汚染水濃度が低いのは、放射線遮蔽容器50の影響である。以下の実験では、この測定位置Aの汚染水濃度を基準値として汚染水濃度の増減を調べる。
【0040】
次に紫外線ランプ43を汚染水が入った容器52に入れる。
図4(B)に示すように、本実施例では汚染水が入った容器52内に紫外線ランプ43を直接入れるのではなく、紫外線を通す石英ガラス管54を容器52内に入れ、紫外線ランプ43をその中に入れて紫外線を汚染水に照射する構成とする。容器52内に紫外線ランプ43を直接入れる構成としてもよい。紫外線ランプ43は、200nm〜400nm程の波長の紫外線を照射できるランプであれば、いかなるランプを使用してもよいが、本実施例では254nmの波長の紫外線(100V、200W)を照射できる紫外線ランプ43を使用する。また、紫外線ランプ43の光が汚染水にできるだけ当たるようにするため、表面積が広いU字型の紫外線ランプ43を使用する。なお、紫外線ランプ43の照度は、点灯から4分後に6300lx、8分後に10500lx、13分後に14400lx、14分後に14300lxとなり、それ以降、照度の値は変わらず安定した。
【0041】
紫外線ランプ43を汚染水に照射する際には、汚染水が万遍なく紫外線に照射されるように、放射線遮蔽容器50を揺動又は紫外線ランプ43を揺動して汚染水を対流させる。放射線遮蔽容器50を揺動する代わりに、汚染水が入った容器52又はその中の石英ガラス管54を揺動させてもよい。また、これらの揺動は手動でもよいし、前述の汚染水処理装置4と同様にポンプと対流板を使用して揺動させてもよい。
【0042】
汚染水を対流させて、紫外線ランプ43を照射し、3分〜30分経過後の実験台53の測定位置Aにおける放射線量を5回測定した結果を表1に示す。また、表1には、5回の平均放射線量と、その値から実験室内の平均放射線量0.0637μsvを差し引いた実質的な汚染水濃度も示す。
【0044】
表1の値から、放射線量の多少の増減はあるものの、時間の経過と共に実質的な汚染水濃度は少しずつ減少し、30分経過後には実質的な汚染水濃度(平均値)は0.0165μsvとなり、紫外線ランプ43を照射する前の実質的な汚染水濃度(平均値)0.0239μsvと比べて減少していることがわかる。
【0045】
また、表1から3〜30分経過後の実質的な汚染水濃度の平均値は、0.0194μsvと算出される。紫外線ランプ43を照射する前の実質的な汚染水濃度(平均値)0.0239μsvと比較し、減少率を計算すると以下のようになる。
【0047】
数1より、3〜30分経過後の放射線量の減少率は、18.82%であることがわかる。さらに、30分経過後の実質的な汚染水濃度の平均値は、0.0165μsvと紫外線ランプ43を照射する前の実質的な汚染水濃度(平均値)0.0239μsvを比較して減少率を計算すると以下のようになる。
【0049】
数2より、30分経過後の放射線量の減少率は、30.96%となった。従って、30分経過後は、それ以前よりも放射線量の減少率が高くなることがわかる。また、本実施例では、100V、200Wの紫外線ランプ43を使用したが、よりワット数の高い紫外線ランプを使用することで、放射線量の減少率が高くなることが推測される。
【0050】
図5は、上記の汚染水処理方法を使用した実験の測定結果を示すグラフである。縦軸は実質的な汚染水濃度(μsv)、横軸は経過時間(分)を表す。一番上の折線グラフは、100V、200Wの紫外線ランプ43を使用した場合、上記の表1で示した結果である。グラフには、参考のため前述の照度(lx)も示す。上記の表1では、30分経過までしか載せていないが、45分経過まで測定すると、
図5に示すように更に放射線量が減少することがわかる。また、紫外線ランプ43が400W、600W、800W、1000Wの場合には、更に放射線量が減少することがわかり、紫外線ランプ43の電力が高くなる程、より効果的に減少することがわかる。
【0051】
以上、説明してきた様に、本発明の汚染水処理装置と汚染水処理システム、汚染水処理方法は、強力な紫外線を万遍なく汚染水に照射するため、汚染水に含まれる有害物質を好適に除去し得る構成となっている。また、強力な紫外線を使用しているため、汚染水の脱臭効果や殺菌効果、有機物分解の効果等も期待できる。
【0052】
なお、上述した実施例の汚染水処理装置と汚染水処理システム、及び汚染水処理方法は、一例であり、その構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。例えば、本実施例の汚染水処理方法は、
図4に示す装置を使用したものであるが、汚染水処理装置を使用して実施してもよく、その他の装置を使用して実施することもできる。