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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】磁性トレーサー組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/12 20060101AFI20230118BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A61K49/12
A61K49/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529568
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 AU2020051264
(87)【国際公開番号】W WO2021097537
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】2019904407
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522198885
【氏名又は名称】フェロノヴァ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FERRONOVA PTY LTD
【住所又は居所原語表記】BDO Advisory,Level 7,420 King William Road,Adelaide,South Australia,5000 Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バートレット,スチュワート ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,メラニー ルース マリア
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】カズンズ,エイダン
(72)【発明者】
【氏名】ファム,ティ ハン グエン
(72)【発明者】
【氏名】ホケット,ブライアン スタンレー
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085HH01
4C085HH11
4C085JJ03
4C085KA03
4C085KA27
4C085KB08
4C085KB68
4C085KB74
4C085KB78
4C085LL18
(57)【要約】
本明細書には、被験体への投与に適した薬理学的に許容される磁性ナノ粒子が開示される。磁性ナノ粒子は、薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングを有する。ポリマー組成物コーティングは、液体への磁性ナノ粒子の分散を促進するポリマー性立体安定化剤を含み、ポリマー性立体安定化剤は、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性立体安定化剤を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)立体安定化ポリマーセグメントを含む。ポリマー組成物コーティングはまた、ポリマー性標的化部分であって、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性標的化部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)分散液の投与時に被験体において特定の部位を選択的に標的化するための1つ以上の標的化基を含むポリマー性標的化部分と、場合により、ポリマー性発光部分であって、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性発光部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)ナノ粒子のインビボでの位置視覚化を可能にする、光または光に応答して音響シグナルを発生させるための1つ以上の発光性基を含む、ポリマー性発光部分を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体への投与に適した薬理学的に許容される磁性ナノ粒子であって、前記磁性ナノ粒子は、薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングを有しており、前記ポリマー組成物は、
(i)液体への前記磁性ナノ粒子の分散を促進するポリマー性立体安定化剤であって、前記ポリマー性立体安定化剤は、(i)前記磁性ナノ粒子に前記ポリマー性立体安定化剤を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーを含む立体安定化ポリマーセグメントを含み、前記固定ポリマーセグメントは前記立体安定化ポリマーセグメントとは異なる、ポリマー性立体安定化剤と、
(ii)ポリマー性標的化部分であって、(i)前記磁性ナノ粒子に前記ポリマー性標的化部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、(ii)ポリアクリルアミドからなる連結ポリマーセグメントであって、前記固定ポリマーセグメントは前記連結ポリマーセグメントとは異なる、連結ポリマーセグメント、ならびに(iii)単糖受容体を選択的に標的化するための単糖基、ならびに前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するための抗体、抗体フラグメント、および阻害剤から選択される1つ以上の標的化基を含む、ポリマー性標的化部分と、を含む、
薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項2】
前記ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーが、約8~約60個の被重合アクリルアミド単位と、約2~約10個の被重合アルキレンオキシド単位とを含む、請求項1に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項3】
前記連結ポリマーセグメントは、約10~約100個の被重合アクリルアミド単位からなる、請求項1または2に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項4】
前記連結ポリマーセグメントは、前記安定化ポリマーセグメントよりも多くの被重合モノマー残基単位を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項5】
被験体への投与に適した薬理学的に許容される磁性ナノ粒子であって、前記磁性ナノ粒子は、薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングを有しており、前記ポリマー組成物は、
(i)液体への前記磁性ナノ粒子の分散を促進するポリマー性立体安定化剤であって、前記ポリマー性立体安定化剤は、(i)前記磁性ナノ粒子に前記ポリマー性立体安定化剤を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)10~70個の被重合モノマー残基単位を有する立体安定化ポリマーセグメントを含み、前記固定ポリマーセグメントは前記立体安定化ポリマーセグメントとは異なる、ポリマー性立体安定化剤と、
(ii)ポリマー性標的化部分であって、(i)前記磁性ナノ粒子に前記ポリマー性標的化部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、(ii)10~100個の被重合モノマー残基単位を有する連結ポリマーセグメントであって、前記固定ポリマーセグメントは前記連結ポリマーセグメントとは異なり、前記連結ポリマーセグメントは、前記立体安定化ポリマーセグメントよりも多くの被重合モノマー残基単位を有する、連結ポリマーセグメント、ならびに(iii)単糖受容体を選択的に標的化するための単糖基、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するための抗体、抗体フラグメント、および阻害剤から選択される、1つ以上の標的化基を含む、ポリマー性標的化部分と、を含む、
薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項6】
前記立体安定化ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーを含む、請求項5に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項7】
前記連結ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミドからなる、請求項5または6に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項8】
前記ポリマー組成物は、さらに、(iii)ポリマー性発光部分であって、(i)前記磁性ナノ粒子に前記ポリマー性発光部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、(ii)連結ポリマーセグメントであって、前記固定ポリマーセグメントは前記連結ポリマーセグメントとは異なる、連結ポリマーセグメント、および(iii)前記磁性ナノ粒子のインビボでの位置視覚化を可能にする、光または光に応答して音響シグナルを発生させるための1つ以上の発光性基を含む、ポリマー性発光部分を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項9】
前記ポリマー性発光部分の前記連結ポリマーセグメントは、(i)前記立体安定化ポリマーセグメントよりも多くの被重合モノマー残基単位と、(ii)約10~約100個の被重合モノマー残基単位とを有する、請求項8に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項10】
前記ポリマー性発光部分の前記連結ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミドからなる、請求項8または9に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項11】
前記ポリマー組成物は、さらに、(iv)ポリマーに共有結合しない発光性基を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項12】
前記発光性基は、インドシアニングリーン、スルホ-Cy3、スルホ-Cy5、およびスルホ-Cy7から選択される、請求項8~11のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項13】
前記磁性ナノ粒子は、鉄(Fe)、マグヘマイト(γ-Fe)、マグネタイト(Fe)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項14】
前記1つ以上の標的化基は、マンノースおよびグルコースから選択される単糖であるか、または前記1つ以上の標的化基は、阻害剤であり、前記阻害剤は、Lys-Urea-Gluである、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項15】
前記磁性ナノ粒子および超常磁性ナノ粒子である、請求項1~14のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子。
【請求項16】
被験体への投与に適した組成物であって、前記組成物は、薬理学的に許容される液体担体中に請求項1~15のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子を含む、組成物。
【請求項17】
被験体への診断適用を行うための、請求項1~15のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子、または請求項16に記載の組成物の使用。
【請求項18】
被験体においてがんを検出する際に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子、または請求項16に記載の組成物の使用。
【請求項19】
センチネルリンパ節を検出するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子、または請求項16に記載の組成物の使用。
【請求項20】
被験体においてがんを検出するための方法であって、前記方法は、
(i)請求項1~15のいずれか一項に記載の薬理学的に許容される磁性ナノ粒子、または請求項16に記載の組成物を前記被験体に投与することと、
(ii)前記被験体において前記磁性ナノ粒子を検出することと、を含み、
磁性ナノ粒子の局在化が、前記被験体においてがんに冒されている組織の存在を示す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、磁性粒子、磁性粒子を含む組成物、および診断用途でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
任意の固形腫瘍がんの最も重要な予防/診断因子の1つは、がんの病期である。原発性腫瘍に収まっているがんの場合、原発性腫瘍のみの手術または切除が根治性であると想定される。したがって、そのがんが、リンパ節の付近、他のリンパ節、または遠隔部位に拡散しているかどうかを知ることは、患者の予後を決定し、治療経路を知らせるのに重要である。手術の根治療法にもかかわらず、限局していると現時点で診断される多くの固形腫瘍がんは、手術のみでは根治せず、再発し、限局したがんの米国での5年相対生存率は、食道がんではわずか45%であり、肺および気管支がんでは56%、膀胱がんでは69%、結腸直腸がんでは90%、ならびに子宮頸がんでは92%である。
【0003】
ほとんどの固形腫瘍がんの場合、予備病期判定は、磁気共鳴画像診断(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、陽電子放出断層撮影(PET)、および単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)を含む放射線医学のためのオプションを伴う、非侵襲性医療用画像診断によって行われる。一般的に、これらの技術は、リンパ節における大きな転移を高い特異性で検出することができるが、感度は、比較的低く、PET/CTの56%からMRIの65%までの範囲である。PET/CTの感度は、微小転移(2mm未満の転移)についてはわずか11%まで落ちる。超小型磁性酸化鉄ナノ粒子(USPION)を、MRI造影剤として使用することができ、MRI感度の98%までの改善を示す。
【0004】
医療用画像診断の制限に起因して、診断評価の第2の段階は、典型的には、手術の一部として行われる。第2の段階は、多くのリンパ節の除去を必要とする場合があり、次いで、それを病理学によって評価する。各リンパ節の評価は、典型的には、リンパ節の単一切除に対する標準的なヘマトキシリン-エオジン(H&E)染色である。この方法は、がんによっては、患者の15~44%において微小転移を見落とすことが示されている。センチネルリンパ節が特定された場合、改善された外科的病期判断が可能である。センチネルリンパ節は、がんを排出する最初の1つ以上のリンパ節と仮想されるものであり、転移したがん細胞が到達する最初の臓器であると仮定される。したがって、センチネルリンパ節は、がんの拡散、診断、および治療において重要な役割を果たし、センチネル節が、腫瘍転移または孤立した腫瘍細胞を含まない場合には、そのがんは、限局性であると推定され、原発性腫瘍の除去のみで根治すると仮定される。
【0005】
乳がんおよび黒色腫において、センチネルリンパ節生検(SLNB)法は、画像診断によってN0と臨床的に評価された患者の病期判断に対して、正確であり、かつ信頼性が高いことが示されており、非常に高いセンチネル節特定率および低い偽陰性率(FNR)を有する。センチネルリンパ節生検は、腫瘍の周囲にトレーサーを注射することと、画像診断および外科装置を使用して、リンパ管を通ってセンチネル節までのトレーサーの流れをモニタリングすることと、病理学による詳細な分析のためにセンチネル節を外科的に取り出すこととを含む。乳がんおよび黒色腫においてテクネチウム-99m放射性同位体、リンパ節シンチグラフィー画像診断、および青色染料を使用した特定率は、非常に高く(96%~100%)、偽陰性率は、非常に低かった(1.5%~2.6%)。乳がんおよび黒色腫におけるSLNBの成功は、これらのがんにおいて限局した疾患を有すると診断された患者の相対生存率アウトカムを有意に改善し、5年相対生存率は、ほぼ100%である。
【0006】
より複雑ながんにおいて、SLNBの技術および用途に伴う問題によって、低い特定率および高い偽陰性率(FNR)が生じる。テクネチウム-99mトレーサーは、リンパ節シンチグラフィーまたはSPECT/CTを使用して画像診断され、空間分解能は±10~15mmと良くない。これにより、センチネル節が注射部位および原発性腫瘍に近接している場合に、センチネル節を覆い隠す「シャインスルー」と呼ばれる現象が起こり、偽陰性が起こる。胃がんにおいて、FNRは、青色染料、放射線標識コロイド、およびこの2つの技術の組み合わせについて、それぞれ34.7%、18.5%、および13.1%であると概算される。肺がんにおいて、センチネル節は、患者の概算19.4%で検出することができず、感度は87%であり、偽陰性率が29.9%である。結腸直腸がんにおいて、SLNBの偽陰性率は、25~36%であると概算される。
【0007】
超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)は、例えば、カルボキシ-デキストランでコーティングされた酸化鉄粒子に基づき、乳がんSLNBに適用されており、その技術は、放射性同位体および青色染料に劣らないことが示されている。この方法も、テクネチウム-99mの空間分解能の課題を克服すると想定される。しかし、前立腺がんに適用されると、特定される節の数は、センチネル節を通って第2および第3のエシェロン節へと移動する粒子に起因して、およそ18である。センチネル節を特定するためのSPIONの使用は、いくつかの用途では依然として無力である。
【0008】
さらに、有効な磁性ナノ粒子に基づく診断の開発は、ナノ粒子の特定の有害な特徴または挙動によって複雑化する場合がある。例えば、ナノ粒子の溶液または分散液は、一般的に、ナノ粒子が集塊化または凝集する傾向があり、それにより、複雑化するか、または診断の有効性が損なわれる。このような凝集は、時にはインビボで起こることがあり、または患者への投与後に起こることがある。SPIONコアからのコーティングの分解は、注射部位でのSPIONの凝集または肝臓および脾臓における粒子の集合も引き起こす場合があり、多くの場合、注射部位に数年間にわたって留まる。
【0009】
がんの病期判断を行う新規な非外科的方法は、PET分子画像診断を使用して開発され、PET同位体は、特定のがん細胞に親和性を有する分子またはモノクローナル抗体とコンジュゲート化する。近年、PET-PSMAは、静脈内注射を使用した前立腺がんの病期判断に臨床的に適用されているが、この技術は、リンパ節における微小転移を検出することができない。したがって、広範囲骨盤リンパ節郭清(extended pelvic lymph node dissection:ePLND)は、顕著な副作用を有する侵襲的な手術であるにもかかわらず、前立腺がんの病期判断において依然として代表的なものである。PET標的化画像診断に伴うさらなる問題の1つは、使用される放射性同位体の短い半減期(ガリウム-68が68分間、またはフッ素-18が109分間)である。短い半減期に起因して、このがん細胞を標的化する方法は、トレーサーの循環時間が迅速である必要があるため、小さなリガンドに限定される。前立腺がんの場合のJ591などの大きなモノクローナル抗体は、長い血液循環時間を有するが、好ましい放射性同位体と共に実行することができない。
【0010】
分子標的化画像診断の可能な代替的な方法は、腫瘍周辺への注射を使用することであり、これにより、高容積のトレーサーがリンパ節を通って移動することに起因して、小さな転移の検出を改善し得る。しかい、この方法は、リンパ系全体を通るPETトレーサーの移動およびクリアランスに依存し、がん細胞に結合したトレーサーのみがリンパ節内に留まる。リンパ系を通る移動は、小さなリガンドについて少なくとも24時間かかり、モノクローナル抗体ではさらに長くなる。したがって、この方法は、短い半減期のPETトレーサーでは実行することができない。
【0011】
分子標的化PETトレーサーは、前立腺がんなどの種々のがんにおいて原発性病変を検出するためにも適用されている。しかし、PET画像診断の限定された空間分解能により可能なのは原発性病変のグロスマッピングのみであり、MRI、赤外光、または光音響によるガイダンスの下での腫瘍の正確な切除を可能にするには不十分である。フォーカルセラピーのための正確な切除のために、非放射性MRIに適合可能なトレーサーが必要とされている。
【0012】
多くのがん適応症におけるがんの病期判断は、残念なことに、依然として最適なものとはいえない。SPION、テクネチウム-99m、染料、およびPETトレーサーの使用は、ある程度の有望性を示しているが、依然として対処する必要がある多くの問題が存在する。
【0013】
従来技術の材料および方法の不利益または欠点のうちの1つ以上を克服または軽減する、がんの病期判断を行うための新規な材料/組成物および方法が依然として必要である。特に、センチネルリンパ節特定の観点で、がんの改善された病期判断を可能にする材料/組成物が必要である。これに代えて、またはこれに加えて、従来技術の材料および方法の有用な代替物を提供する、がんの病期判断を行うための材料/組成物および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、被験体への投与に適した薬理学的に許容される磁性ナノ粒子であって、磁性ナノ粒子は、薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングを有しており、ポリマー組成物は、(i)液体への磁性ナノ粒子の分散を促進するポリマー性立体安定化剤であって、ポリマー性立体安定化剤は、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性立体安定化剤を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーを含む立体安定化ポリマーセグメントを含み、固定ポリマーセグメントは立体安定化ポリマーセグメントとは異なる、ポリマー性立体安定化剤と、(ii)ポリマー性標的化部分であって、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性標的化部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、(ii)ポリアクリルアミドからなる連結ポリマーセグメントであって、固定ポリマーセグメントは連結ポリマーセグメントとは異なる、連結ポリマーセグメント、ならびに(iii)単糖受容体を選択的に標的化するための単糖基、ならびに前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するための抗体、抗体フラグメント、および阻害剤から選択される1つ以上の標的化基を含む、ポリマー性標的化部分と、を含む、薬理学的に許容される磁性ナノ粒子を提供する。
【0015】
本発明はまた、被験体への投与に適した薬理学的に許容される磁性ナノ粒子であって、磁性ナノ粒子は、薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングを有しており、ポリマー組成物は、(i)液体への磁性ナノ粒子の分散を促進するポリマー性立体安定化剤であって、ポリマー性立体安定化剤は、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性立体安定化剤を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)10~70個の被重合(polymerised)モノマー残基単位を有する立体安定化ポリマーセグメントを含み、固定ポリマーセグメントは立体安定化ポリマーセグメントとは異なる、ポリマー性立体安定化剤と、(ii)ポリマー性標的化部分であって、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性標的化部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、(ii)15~100個の被重合モノマー残基単位を有する連結ポリマーセグメントであって、固定ポリマーセグメントは連結ポリマーセグメントとは異なり、連結ポリマーセグメントは、立体安定化ポリマーセグメントよりも多くの被重合モノマー残基単位を有する、連結ポリマーセグメント、ならびに(iii)単糖受容体を選択的に標的化するための単糖基、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するための抗体、抗体フラグメント、および阻害剤から選択される、1つ以上の標的化基を含む、ポリマー性標的化部分と、を含む、薬理学的に許容される磁性ナノ粒子を提供する。
【0016】
一実施形態では、ポリマー組成物は、さらに、(iii)ポリマー性発光部分であって、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性発光部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、(ii)連結ポリマーセグメントであって、固定ポリマーセグメントは連結ポリマーセグメントとは異なる、連結ポリマーセグメント、および(iii)磁性ナノ粒子のインビボでの位置視覚化を可能にする、光または光に応答して音響(acoustic)シグナルを発生させるための1つ以上の発光性基を含む、ポリマー性発光部分を含む。
【0017】
本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子は、被験体への投与に適した組成物の一部分を形成してもよい。
【0018】
センチネルリンパ節マッピングのために使用される場合、本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子、または薬理学的に許容される磁性ナノ粒子を含む組成物は、有利なことに、高解像度MRI画像診断を補助し、センチネル節においてより効率的に保持され、および/または既存の外科装置(例えば、赤外線カメラおよび既存の磁力計)を用いて容易に特定することができる。さらに、リンパ節または原発性腫瘍においてがんを標的化するために使用される場合、本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子、または薬理学的に許容される磁性ナノ粒子を含む組成物は、既存のSPIONよりも、がん細胞への改善された結合を有し、有利なことに、非放射性であり、短い循環時間またはリンパクリアランス時間に依存せず、腫瘍周辺への注射を補助するための高い空間分解能を有し、全身注射を補助するための改善された血中半減期を有し、および/またはインビボで実質的に分解しない。
【0019】
理論により束縛されることを望まないが、本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子は、磁性ナノ粒子をコーティングする固有のポリマー組成物を少なくとも通り抜けて、それらの有利な特性を示すと考えられる。このポリマー組成物コーティングは、ポリマー性標的化部分と組み合わせて、液体への磁性ナノ粒子の分散を促進する立体安定化剤を少なくとも含む。立体安定化剤およびポリマー性標的化部分は両方とも、それぞれのエンティティを磁性ナノ粒子に結合する固定ポリマーセグメントを含む。これらの固定ポリマーセグメントは、有利なことに、例えば、インビボでの液体環境に配置されたとき、立体安定化剤およびポリマー性標的化部分の両方が磁性ナノ粒子に固定されたまま維持されるのに非常に有効であることがわかった。これにより、ひいては、インビボでの液体環境において、その中で磁性ナノ粒子を分散した形態に維持するのが容易になる。当業者は、インビボでの液体環境における磁性ナノ粒子の凝集が、診断用途において有害であることを理解するだろう。
【0020】
磁性ナノ粒子のポリマー組成物コーティングはまた、センチネル節中に保持されるその改善された能力において、重要な役割を果たすと考えられる。例えばインビボでの液体環境内の付与された改善された分散効果と共に相乗的に働くと、ここでも理論により束縛されることを望まないが、ポリマー組成物コーティングの立体安定化剤およびポリマー性標的化部分によって果たされる二重の役割が、マクロファージにおけるタンパク質吸着およびその後の細胞取り込みが起こりにくい表面環境を作り出すと考えられる。当業者は、このような磁性ナノ粒子へのタンパク質吸着が、標的化効率を低下させ、次いで、センチネル節を通りエシェロン節への移動を増加させることを理解するだろう。驚くべきことに、ポリマー組成物コーティングは、磁性ナノ粒子に、センチネル節における磁性ナノ粒子の保持を改善することがわかっている効果である標的化効率を相乗的に増強させる、改善された分散能およびステルス特性の固有の組み合わせを与えると考えられる。
【0021】
本発明に由来し得る1つ以上の利点を、少なくとも立体安定化および連結ポリマーセグメントを構成するポリマー組成の選択、および/または立体安定化および連結ポリマーセグメントを構成する被重合モノマー残基単位の数の選択によって調整することができることがわかっている。
【0022】
したがって、本発明はまた、本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子を含む、被験体への投与に適した組成物組成物を提供する。
【0023】
本発明に係る組成物は、薬理学的に許容される液体担体中に、薬理学的に許容される磁性ナノ粒子が存在してもよい。
【0024】
本発明はさらに、薬理学的に許容される液体担体中に本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子を含む、被験体への投与に適した組成物を提供する。
【0025】
本発明は、被験体への投与に適した組成物であって、この組成物は、(i)(ii)薬理学的に許容される液体担体中に、(i)薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングを有する、薬理学的に許容される磁性ナノ粒子を含み、ポリマー組成物は、(i)液体担体への磁性ナノ粒子の分散を促進するポリマー性立体安定化剤であって、ポリマー性立体安定化剤は、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性立体安定化剤を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーを含む立体安定化ポリマーセグメントを含み、固定ポリマーセグメントは立体安定化ポリマーセグメントとは異なる、ポリマー性立体安定化剤と、(ii)ポリマー性標的化部分であって、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性標的化部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、(ii)ポリアクリルアミドからなる連結ポリマーセグメントであって、固定ポリマーセグメントは連結ポリマーセグメントとは異なる、連結ポリマーセグメント、ならびに(iii)単糖受容体を選択的に標的化するための単糖基、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するための抗体、抗体フラグメント、および阻害剤から選択される1つ以上の標的化基を含む、ポリマー性標的化部分と、を含む、組成物を提供する。
【0026】
本発明はまた、被験体への投与に適した組成物であって、この組成物は、(i)(ii)薬理学的に許容される液体担体中に、(i)薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングを有する、薬理学的に許容される磁性ナノ粒子を含み、ポリマー組成物は、(i)液体担体への磁性ナノ粒子の分散を促進するポリマー性立体安定化剤であって、ポリマー性立体安定化剤は、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性立体安定化剤を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)10~70個の被重合モノマー残基単位を有する立体安定化ポリマーセグメントを含み、固定ポリマーセグメントは立体安定化ポリマーセグメントとは異なる、ポリマー性立体安定化剤と、(ii)ポリマー性標的化部分であって、(i)磁性ナノ粒子にポリマー性標的化部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、(ii)15~100個の被重合モノマー残基単位を有する連結ポリマーセグメントであって、固定ポリマーセグメントは連結ポリマーセグメントとは異なり、連結ポリマーセグメントは、立体安定化ポリマーセグメントよりも多くの被重合モノマー残基単位を有する、連結ポリマーセグメント、ならびに(iii)単糖受容体を選択的に標的化するための単糖基、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するための抗体、抗体フラグメント、および阻害剤から選択される、1つ以上の標的化基を含む、ポリマー性標的化部分と、を含む、組成物を提供する。
【0027】
1つ以上の標的化基は、当然ながら、磁性ナノ粒子、または磁性ナノ粒子を含む組成物の投与時に被験体において単糖受容体または前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するためのものである。
【0028】
本発明は、さらに、被験体に対して診断用途を行うための本発明に係る本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子または本発明に係る組成物の使用を提供する。
【0029】
適切な診断用途の例としては、磁気共鳴画像診断、がん手術およびリンパ節転移の視覚化が挙げられる。
【0030】
本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子および組成物を、限定されないが、超音波、X線、光学画像診断、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、および磁気共鳴画像診断(MRI)を含むインビボでの画像診断技術と組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子および組成物は、有利なことに、被験体に投与した後にナノ粒子を保持する組織(例えば、リンパ節)の検出を可能にする。この検出を使用して、がんの特定の形態に冒され得る組織を特定することができる。薬理学的に許容される磁性ナノ粒子は、有利なことに、センチネルリンパ節の改善された保持を示すことが発見された。当業者が理解するように、センチネルリンパ節は、がんを排出する仮想上の最初のリンパ節またはリンパ節の群である。したがって、センチネルリンパ節が、腫瘍からがん細胞が転移することによって最初に達する標的臓器であると仮定される。したがって、薬理学的に許容される磁性ナノ粒子は、センチネルリンパ節の検出、ならびに特定の腫瘍に関連するセンチネルリンパ節の特定、取り出し、および分析を含むSLNB手順の一部としての使用による、改善されたがん病期判断を与えることができる。
【0032】
本発明はまた、インビボでの画像診断のための本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子および組成物の使用を提供する。
【0033】
本発明はまた、インビボでの画像診断に使用するための本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子および組成物を提供する。
【0034】
本発明はまた、がんの検出に使用するための本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子および組成物を提供する。
【0035】
本発明はさらに、センチネルリンパ節の検出のための本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子および組成物の使用を提供する。
【0036】
本発明はまた、センチネルリンパ節の検出において使用するための本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子および組成物を提供する。
【0037】
本発明はまた、被験体においてがんを検出するための方法であって、この方法は、本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子または組成物を被験体に投与することと、磁性ナノ粒子を検出することと、を含み、磁性ナノ粒子の局在化が、被験体においてがんに冒されている組織の存在を示す、方法を提供する。
【0038】
本発明は、さらに、がんを有する被験体を治療するための方法であって、この方法は、本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子または組成物を被験体に投与することと、磁性粒子を検出することと、被験体を、がんを有するものとして特定することであって、磁性粒子の局在化が、被験体においてがんに冒されている組織の存在を示す、特定することと、(iii)においてがんを有すると特定された被験体を、がんのための治療で治療することと、を含む、方法を提供する。
【0039】
本発明のさらなる態様および実施形態を概説し、以下にさらに詳細に説明する。
【0040】
本開示の実施形態は、添付の非限定的な図面を参照しつつ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本開示の実施形態に係るコーティングされたナノ粒子を示す模式図である。
図2】実施例1に従って合成されたコーティングされたナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真および制限視野回折(マグネタイトに対してインデックスされる)を示す。
図3】実施例2に従って生成されたコーティングされたナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。
図4】実施例2に従って生成されたコーティングされたナノ粒子の粒度分布(TEMから)を示す。
図5】実施例2に従って生成されたコーティングされたナノ粒子の流体力学的サイズ分布(動的光散乱から)を示す。
図6】実施例5に従って合成されたコーティングされたナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。
図7】実施例5に従って生成されたコーティングされたナノ粒子の粒度分布(TEMから)を示す。
図8】実施例5に従って生成されたコーティングされたナノ粒子の流体力学的サイズ分布(動的光散乱から)を示す。
図9】30分間および5時間にわたるセンチネルリンパ節への取り込みを示す第1のブタのMRIスキャンを示す。
図10】30分間および5時間にわたるセンチネルリンパ節への取り込みを示す第2のブタのMRIスキャンを示す。
図11】シエンナ(Sienna)+(登録商標)ナノ粒子(青色の左の棒グラフ)およびマンノースコーティングされたナノ粒子(赤色の右の棒グラフ)について、注射したFe用量(mg)にノーマライズされた節におけるプローブシグナルを示す一連のプロットである。
図12】シエンナ+(登録商標)ナノ粒子(青色の左の棒グラフ)およびマンノースコーティングされたナノ粒子(赤色の右の棒グラフ)について、注射したFe用量(mg)にノーマライズされた平均プローブシグナルのプロットを示す。
図13】シエンナ+(登録商標)およびマンノースコーティングされたナノ粒子の舌注射の後のウサギの注射部位からの磁気シグナルに対する注射したFeの質量のプロットを示す。
図14】シエンナ+(登録商標)およびマンノースコーティングされたナノ粒子の舌注射の後のウサギの注射部位からの磁気シグナルに対する注射したFeの質量のプロットを示す。
図15】シエンナ+(登録商標)およびマンノースコーティングされたナノ粒子について、ブタの後肢におけるセンチネルリンパ節からの磁気シグナルに対する注射したFeの質量のプロットを示す。
図16】シエンナ+(登録商標)およびマンノースコーティングされたナノ粒子について、磁気シグナルに対する注射したFeの質量のプロットを示す。
図17】シエンナ+(登録商標)およびマンノースコーティングされたナノ粒子について、Fe用量に対してノーマライズされた注射した体積を用いた、SLNにおけるプローブシグナルのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書では、当業者がよく知っているいくつかの用語が使用される。しかしながら、明確性のために、いくつかの用語を定義する。
【0043】
本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子は、薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングを有する。簡便にするために、これらの薬理学的に許容される磁性ナノ粒子は、本明細書では、単純に「コーティングされたナノ粒子」と記載する場合がある。
【0044】
本明細書で使用される場合、「非置換」という用語は、置換基が存在しないか、または侑一の置換基が水素であることを意味する。
【0045】
「場合により置換されていてもよい」という用語は、本明細書全体で使用される場合、その基が、1つ以上の非水素置換基でさらに置換または縮合(縮合多環系を形成するように)されていてもよく、またはされていなくてもよいことを示す。特定の実施形態では、置換基は、ハロゲン、=O、=S、-CN、-NO、-CF、-OCF、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、シクロアルキルアルケニル、ヘテロシクロアルキルアルケニル、アリールアルケニル、ヘテロアリールアルケニル、シクロアルキルヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルヘテロアルキル、アリールヘテロアルキル、ヘテロアリールヘテロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルオキシシクロアルキル、アルキルオキシヘテロシクロアルキル、アルキルオキシアリール、アルキルオキシヘテロアリール、アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、シクロアルケニルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルケニルオキシ、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アミノスルフィニルアミノアルキル、-C(=O)OH、-C(=O)R、-C(=O)OR、C(=O)NR、C(=NOH)R、C(=NR)NR、NR、NRC(=O)R、NRC(=O)OR、NRC(=O)NR、NRC(=NR)NR°R、NRSO、-SR、SONR、-OR、OC(=O)NR、OC(=O)Rおよびアシルからなる群から独立して選択される1つ以上の基であり、ここで、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、C~C12アルキル、C~C12ハロアルキル、C~C12アルケニル、C~C12アルキニル、C~C10ヘテロアルキル、C~C12シクロアルキル、C~C12シクロアルケニル、C~C12ヘテロシクロアルキル、C~C12ヘテロシクロアルケニル、C~C18アリール、C~C18ヘテロアリール、およびアシルからなる群から選択されるか、またはR、R、RおよびRのうちのいずれか2つ以上が、それらが接続する原子と一緒に合わさって、3~12個の環原子を有するヘテロ環式環系を形成する。
【0046】
複数の実施形態では、各任意要素の置換基は、ハロゲン、=O、=S、-CN、-NO、-CF、-OCF、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルオキシアリール、アルキルオキシヘテロアリール、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、シクロアルケニルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルケニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、アミノアルキル、-COOH、-SH、およびアシルからなる群から独立して選択される。
【0047】
特に適切な任意要素の置換基の例としては、F、Cl、Br、I、CH、CHCH、OH、OCH、CF、OCF、NO、NH、およびCNが挙げられる。
【0048】
これに代えて、同じ部分の上の2つの任意要素の置換基は、一緒に合わさる場合、接続して、場合により置換されていてもよい部分に接続した縮合環状置換基を形成してもよい。したがって、場合により置換されていてもよいという用語は、縮合環、例えば、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、またはヘテロアリール環を含む。
【0049】
以下の置換基の数の定義では、「この基は、末端基または架橋基であってもよい」と述べられる。このことは、この用語の使用が、その基が分子の2つの他の部分の間のリンカーである状況、および末端部分である状況を包含することを意図することを示すことを意図している。アルキルという用語を一例として使用すると、いくつかの刊行物は、架橋基について「アルキレン」という用語を使用し、したがって、これらの他の刊行物では、「アルキル」(末端基)と「アルキレン」(架橋基)との区別が存在する。本出願では、このような区別はなされず、ほとんどの基が、架橋基または末端基のいずれかであってもよい。
【0050】
「アシル」は、R-C(=O)-基を意味し、ここで、R基は、本明細書に定義されるアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基であってもよい。アシルの例としては、アセチルおよびベンゾイルが挙げられる。この基は、末端基または架橋基であってもよい。この基が末端基である場合、カルボニル炭素によって分子の残りの部分に結合する。
【0051】
ある基または基の群としての「アルキル」は、特に断りのない限り、直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素基、好ましくは、C~C12アルキル、より好ましくは、C~C10アルキル、最も好ましくは、C~Cアルキルを指す。適切な直鎖および分枝鎖のC~Cアルキル置換基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ヘキシルなどが挙げられる。この基は、末端基または架橋基であってもよい。
【0052】
本明細書で使用される「アミノ酸」およびこの用語の変形語は、以下の表に示される20個の天然に存在するアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、多くの場合、例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニン、ならびに他の非天然アミノ酸を含め、インビボで翻訳後に修飾される。さらに、「アミノ酸」という用語は、D-アミノ酸およびL-アミノ酸の両方を含む。
【表1】
【0053】
ある基または基の群としての「アリール」は、(i)場合により置換されていてもよい単環または縮合した多環の芳香族炭素環(全てが炭素である環原子を有する環構造)、好ましくは、環あたり5~12個の原子を有するものを示す(アリール基の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる)、(ii)フェニルおよびC~CシクロアルキルまたはC~Cシクロアルケニル基が、一緒に縮合され、環状構造を形成する、場合により置換されていてもよい部分的に飽和の二環芳香族炭素環部分、例えば、テトラヒドロナフチル、インデニルまたはインダニルを示す。この基は、末端基または架橋基であってもよい。典型的には、アリール基は、C~C18アリール基である。
【0054】
「ハロゲン」は、塩素、フッ素、臭素、またはヨウ素を指す。
【0055】
開示される実施形態の化合物のいくつかは、単一の立体異性体、ラセミ体、ならびに/あるいはエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物として存在してもよい。このような全ての単一の立体異性体、ラセミ体、およびその混合物は、記載され、請求項に記載される主題の範囲内であることが意図される。異性体形態、例えば、ジアステレオマー、エナンチオマー、および幾何異性体は、当業者に既知の物理的および/または化学的方法によって分離することができる。
【0056】
これに加えて、本明細書に記載される式および組成物は、該当する場合に、化合物の溶媒和形態および非溶媒和形態を包含することを意図している。したがって、それぞれの式は、水和形態および非水和形態を含む、示された構造を有する化合物を含む。
【0057】
「約」および「およそ」という用語は、当業者によって決定される場合、特定の値についての許容される範囲内であることを意味し、これは、一部には、その値がどのように測定または決定されるか(例えば、測定システムの限界)に依存する。例えば、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、およびより好ましくはさらに1%までの範囲を意味し得る。これに代えて、特に生体系またはプロセスに関して、この用語は、好ましくは、ある値の5倍以内、より好ましくは、2倍以内の桁の範囲内を意味し得る。特に断りのない限り、「約」という用語は、特定の値の許容される誤差範囲内、例えば、±1~20%、好ましくは、±1~10%、より好ましくは、±1~5%であることを意味する。
【0058】
ある値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間のそれぞれの間に入る値、ならびに任意の他の述べられている値または述べられている範囲の中のその中に入る値が、本開示内に包含されると理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、このより小さな範囲中に含まれていてもよく、その述べられている範囲中の任意の具体的に除外されている限界にさらされる、本開示内にも包含される。その述べられている範囲が、その限界の一方または両方を含む場合、それらに含まれる限界の両方のいずれかを除外した範囲も、本開示に含まれる。
【0059】
ある項目のリスト「のうちの少なくとも1つ」と称する句は、単一のメンバーを含め、これらの項目のいずれかの組み合わせを指す。一例として、「a、b、またはcのうちの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、およびa-b-cを包含することが意図される。
【0060】
「薬学的に許容される塩」という用語は、上に特定される化合物の所望な生物学的活性を保持する塩を指し、薬学的に許容される酸付加塩および塩基付加塩を含む。式Iの化合物の適切な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸から、または有機酸から調製されてもよい。このような無機酸の例は、塩酸、硫酸およびリン酸である。適切な有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、ヘテロ環のカルボン酸およびスルホン酸の群の有機酸から選択されてもよく、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸である。薬学的に許容される塩に関するさらなる情報は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、19th Edition、Mack Publishing Co.、Easton、PA 1995に見出され得る。固体である薬剤の場合には、化合物、薬剤および塩が、異なる結晶性形態または多型形態で存在していてもよく、その全てが、本開示および特定される式の範囲内であることが意図されることが当業者によって理解される。
【0061】
「プロドラッグ」は、生体系内で、通常は代謝手段によって(例えば、加水分解、還元または酸化によって)所望な化合物への変換を受ける化合物を意味する。例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物のエステルプロドラッグは、インビボでの加水分解によって親分子に変換可能であってもよい。ヒドロキシル基を含有する化合物の適切なエステルは、例えば、酢酸エステル、クエン酸エステル、乳酸エステル、酒石酸エステル、マロン酸エステル、シュウ酸エステル、サリチル酸エステル、プロピオン酸エステル、コハク酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、メチレン-ビス-P-ヒドロキシナフトエ酸エステル、ゲンチジン酸エステル、イセチオン酸エステル、ジ-p-トルオイル酒石酸エステル、メタンスルホン酸エステル、エタンスルホン酸エステル、ベンゼンスルホン酸エステル、p-トルエンスルホン酸エステル、シクロヘキシルスルファミン酸エステルおよびキナ酸エステルである。別の例として、カルボキシ基を含有する化合物のエステルプロドラッグは、インビボでの加水分解によって親分子に変換可能であってもよい。エステルプロドラッグの例は、Leinweber、1987によって記載されるものである。同様に、アミノ基を含有する化合物のアシルプロドラッグは、インビボでの加水分解によって親分子に変換可能であってもよい。アミンを含む、これらの官能基および他の官能基についてのプロドラッグの例は、Borchardt et al.、2007に提供される。
【0062】
「治療有効量」または「有効量」という用語は、有益または望ましい臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。有効量は、典型的には、疾患状態の進行を和らげ、軽減し、安定化させ、逆行させ、遅らせるか、または遅延させるのに十分である。有効量は、治療される被験体の健康および身体的状態、治療される被験体の分類群、望ましい結果の低度、組成物の配合、医学的状況の評価、ならびに他の関連因子に応じて変動してもよい。有効量は、通常の治験によって決定することができる比較的広い範囲に入ると予想される。
【0063】
「機能的等価物」という用語は、本明細書に記載される化合物のバリアントを含むことが意図される。例えば、所与のペプチドまたはタンパク質アイソフォームの一次構造、二次構造、三次構造または四次構造が、原型的なペプチドまたはタンパク質とは異なっているが、この分子が生物学的活性を維持するように、ペプチドおよびタンパク質が、アイソフォームを有していてもよいことが理解されるだろう。アイソフォームは、集合体内の正常な対立遺伝子変動を生じていてもよく、例えば、アミノ酸の置換、欠失、付加、切断、または複製などの変異を含んでいてもよい。転写のレベルで生成するバリアントも、「機能的等価物」という用語に含まれる。
【0064】
本明細書に記載されるコーティングされたナノ粒子は、被験体への投与に適している。「被験体」という用語は、限定されないが、霊長類(例えば、ヒト)、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、またはマウスを含む動物を指す。「被験体」および「患者」という用語は、例えば、哺乳動物被験体、例えば、ヒトを参照しつつ、本明細書で相互に置き換え可能に使用される。特定の実施形態では、コーティングされたナノ粒子は、組織への注射のために製剤化される。
【0065】
本明細書に記載されるコーティングされたナノ粒子は、薬理学的に許容され、このことは、コーティングされたナノ粒子を含有する任意の組成物の他の成分と適合性であり、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、または他の問題もしくは合併症なく、投与される被験体の組織または臓器との接触において使用するのに適していることを意味する。
【0066】
「薬理学的に許容される」とは、一般的に、コーティングされたナノ粒子、コーティングポリマー組成物、液体担体、または組成物の他の構成要素が、それ自体で被験体への投与に適していることを意味する。言い換えると、コーティングされたナノ粒子、液体担体、または組成物の他の構成要素の被験体への投与は、アレルギー応答および疾患状態を含め、許容されない毒性を引き起こさない。
【0067】
単なる目安として、当業者は、政府または州政府の規制機関によって承認されるか、または動物、より特定的にはヒトにおいて使用するための米国薬局方または他の一般的に認識される薬局方に列挙されるエンティティとして「薬理学的に許容される」と考えられてもよい。
【0068】
とはいえ、当業者は、被験体への投与のためのコーティングされたナノ粒子、またはコーティングされたナノ粒子を含む組成物の適合性は、所与の構成成分が薬理学的に許容されるとみなされるとみなされるかどうかにかかわらず、ある程度まで、選択される投与様式に依存することを理解するだろう。したがって、投与様式は、所与の組成物が、被験体への投与に適しているか、または薬理学的に許容されるかどうかを評価するときに考慮する必要があるだろう。
【0069】
コーティングされたナノ粒子、またはコーティングされたナノ粒子を含む組成物は、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、皮内、筋肉内、眼内、髄腔内、脳内、および鼻腔内を含め、被験体に任意の適切な手段によって投与されてもよい。コーティングされたナノ粒子、またはコーティングされたナノ粒子を含む組成物はまた、腫瘍内に、および/または腫瘍の1つ以上のセグメントに隣接する組織内に、直接的に投与されてもよい。
【0070】
コーティングされたナノ粒子は、注射可能な使用に適した形態で提供されてもよく、例えば、滅菌水性分散液、および滅菌の注射可能な分散液のその場での調製のための滅菌粉末が挙げられる。
【0071】
磁性「ナノ粒子」は、約200nm未満、または約150nm未満、または約100nm未満の少なくとも1つの寸法を有する、ミクロン未満の粒子である。一実施形態では、磁性ナノ粒子の全ての寸法は、約100nm未満である。
【0072】
磁性ナノ粒子は、一次粒子の形態であってもよく、または一次粒子の形態または凝集であってもよい。一実施形態では、磁性ナノ粒子は、一次粒子の形態である。
【0073】
疑いを避けるために、本明細書における磁性ナノ粒子の「サイズ」に対する言及は、所与の粒子の最大寸法に基づき、粒子の平均サイズ(少なくとも約50数量%)を示すことを意図している。
【0074】
磁性ナノ粒子自体のサイズは、本明細書では透過型電子顕微鏡(TEM)によって決定される。
【0075】
疑いを避けるために、磁性ナノ粒子が、一次粒子の凝集物の形態である場合、このような材料のサイズに対する言及は、凝集物を形成する一次粒子ではなく、凝集物の最大寸法に対する言及であることが意図される。
【0076】
いくつかの実施形態では、磁性ナノ粒子が凝集物を形成する場合、凝集物のサイズは、100nmを超えていてもよい。
【0077】
磁性ナノ粒子は、一般的に、約100nm未満、約50nm未満、または約25nm未満のサイズを有する。
【0078】
特定の実施形態では、磁性ナノ粒子は、少なくとも1つの寸法において約50nm未満のサイズを有する。特定の実施形態では、磁性ナノ粒子は、少なくとも1つの寸法または全ての寸法において、約10nm~約80nm、または約10nm~約50nm、または約25nm~約30nmの範囲の粒径を有する。
【0079】
一実施形態では、磁性ナノ粒子は、約6、8、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90または100nmのサイズを有する。
【0080】
本発明に従って使用されるナノ粒子は、磁性である。磁性ナノ粒子は、一般的に、強磁性、フェリ磁性または超常磁性の特性を示す。
【0081】
磁性ナノ粒子は、磁性材料から作られるか、または磁性材料を含む。
【0082】
適切な磁性材料の例としては、限定されないが、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、ガドリニウム、上述のいずれかの酸化物または水酸化物、および上述のいずれかの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、磁性ナノ粒子は、鉄および/またはその酸化物もしくは水酸化物を含む。適切な酸化鉄磁性材料としては、マグヘマイト(γ-Fe)およびマグネタイト(Fe)が挙げられる。
【0083】
一実施形態では、磁性ナノ粒子は、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、ガドリニウム、およびその酸化物または水酸化物のうちの1つ以上を含む。
【0084】
別の実施形態では、磁性ナノ粒子は、鉄(Fe)、マグヘマイト(γ-Fe)、マグネタイト(Fe)またはそれらの組み合わせを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、磁性ナノ粒子は、粒径が50nm未満、例えば1~40nmのマグネタイト(Fe)またはマグヘマイト(γ-Fe)であるか、またはこれらを含む。
【0086】
磁性ナノ粒子は、磁性金属酸化物シェルによって包まれる金属(例えば、鉄)の形態、例えば、コアの周囲のマグヘマイト(γ-Fe)シェルであってもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、磁性ナノ粒子は、一般式MO・Feのフェライト(ここで、Mは、二価の金属、例えば、Fe、Co、Ni、Mn、Be、Mg、Ca、Ba、Sr、Cu、Zn、Pt、Gd、またはこれらの混合物である)、または一般式MO・6Feのマグネトプランバイト型酸化物(ここで、Mは、大きな二価イオン、金属性鉄、コバルトまたはニッケル)であるか、またはこれらを含む。加えて、磁性ナノ粒子は、純粋なFe、Zn、Ni、Cr、CoもしくはGd、またはこれらの酸化物もしくは水酸化物の粒子であり得る。これに代えて、磁性ナノ粒子は、これらのいずれかの混合物であり得る。
【0088】
いくつかの用途では、超常磁性である磁性ナノ粒子を使用することが望ましい場合がある。本明細書で使用される場合、「超常磁性」という用語は、(i)保磁力、(ii)残留磁気、または(iii)適用される磁場の変化率が準静的であるヒステリシスループといった特性を有しない磁性材料を意味することが意図される。
【0089】
磁性ナノ粒子は、本明細書に記載されるポリマー組成物コーティングを有する。したがって、コーティングされたナノ粒子は、ポリマー組成物コーティングを有する磁性材料コアを有するものとして記載されてもよい。
【0090】
コーティングされたナノ粒子はまた、金属コアを有するものとして記載されてもよい。金属コアは、任意の種類の磁性材料であってもよく、または任意の種類の磁性材料を含んでいてもよい。
【0091】
磁性ナノ粒子は、薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングによってコーティングされるか、または包まれる。この観点で、「コーティングされた」、「コーティング」または「によって包まれる」という用語は、ポリマー組成物が、磁性材料コアの外側表面の少なくとも一部分を覆うか、または包み、その包まれたものと相互作用することを意味する。薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティング(以下にさらに詳細に記載される)のポリマー性立体安定化剤および標的化部分構成成分は、固定ポリマーセグメントによって磁性材料コアに結合する。
【0092】
本発明に従って使用される磁性ナノ粒子は、簡便には、当該技術分野で知られている技術を使用して調製されてもよい。
【0093】
本発明によれば、ポリマー性立体安定化剤は、液体への磁性ナノ粒子の分散を促進する。この観点で「促進する」とは、ポリマー性立体安定化剤が存在しない状態では、磁性ナノ粒子が、羊毛状の塊を形成し、凝集し、または液体担体から堆積物として沈降することを意味する。言い換えると、ポリマー性立体安定化剤は、液体内で磁性ナノ粒子を分散した状態に維持するように機能する。
【0094】
ポリマー性「立体」安定化剤であるとは、液体への磁性ナノ粒子の分散が、立体反発力の結果として生じることを意味する。とはいえ、ポリマー性立体安定化剤には、ポリマーの安定化も補助する静電反発力も存在し得る。しかし、当業者は、比較的高いイオン強度を有する液体においてなんらかの安定化機能が存在する場合、静電力がほとんど提供されないことが理解されるだろう。したがって、本発明に従って使用されるポリマー性立体安定化剤の立体安定化機能は、磁性ナノ粒子を、液体中で分散した状態で維持されるか、または安定なままであることを可能にする際に、重要な役割を果たす。
【0095】
本発明に従って使用されるポリマー性立体安定化剤は、液体において、特に、インビボでの液体環境において、磁性ナノ粒子の分散を促進するのに特に有効であることがわかっている。
【0096】
本発明に従って使用されるポリマー組成物コーティングのいくつかの構成成分は、ポリマー性であるか、ポリマーセグメントを有する。「ポリマー性」である、または「ポリマーセグメント」を有するとは、その成分が、モノマーの重合に由来するポリマー鎖を含むことを意味する。したがって、ポリマー性成分またはポリマーセグメントは、被重合モノマー残基単位を含むか、またはこれらから作られる。ポリマー性成分またはポリマーセグメントは、任意の適切な重合技術によって調製することができる。一実施形態では、本明細書に記載されるポリマーセグメント(例えば、固定する、立体安定化する、および連結する)は、エチレン性不飽和モノマーの重合によって調製される。ポリマー鎖は、これら(例えば、標的化基または発光性基)に共有結合的に接続した非ポリマー性成分を(およびある程度)有していてもよい。
【0097】
本発明はまた、診断および/または治療用途で使用するための被験体への投与に適した薬理学的に許容されるコーティングされたナノ粒子であって、コーティングされたナノ粒子が、薬理学的に許容されるポリマー組成物コーティングによって包まれる金属コアを含み、ポリマー組成物コーティングが、
液体へのナノ粒子の分散を促進するポリマー性立体安定化剤であって、立体安定化剤が、(i)金属コアに立体安定化剤を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)立体安定化ポリマーセグメントを含む、ポリマー性立体安定化剤、ならびに
ポリマー性標的化部分であって、(i)金属コアに標的化部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)分散液の投与時に被験体において特定の部位を選択的に標的化するための1つ以上の標的化基を含むポリマー性標的化部分、および
ポリマー性発光部分であって、(i)ナノ粒子に発光部分を結合する1つ以上の結合基を有する固定ポリマーセグメント、および(ii)ナノ粒子のインビボでの位置視覚化を可能にする、光または光に応答して音響シグナルを発生させるための1つ以上の発光性基を含むポリマー性発光部分
のうちの一方または両方を含む、薬理学的に許容されるコーティングされたナノ粒子を提供する。
【0098】
いくつかの実施形態では、ポリマー性標的化部分および発光部分は、立体安定化剤で使用される立体安定化ポリマーセグメントを含まない。
【0099】
ポリマー性標的化部分および発光部分は、それぞれ、連結ポリマーセグメントを含んでいてもよい。
【0100】
本発明に従って使用されるポリマー性立体安定化剤は、立体安定化ポリマーセグメントを含む。
【0101】
立体安定化ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO))、ポリオキサマー、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノ-エチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアミド、ポリスルホン酸化ジビニルベンゼン、ポリ-L-リジン、ポリアスパルテート、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアスパルテート、ポリ無水マレイン酸、ポリマレイン酸、または上述のうちの2つ以上のコポリマーを含んでいてもよい。
【0102】
立体安定化ポリマーセグメントが、ポリアルキレンオキシドを含む場合、ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびそれらの誘導体から選択されてもよい。ポリアルキレンオキシドポリマーは、アルキル基で末端保護されていてもよい。アルキル基は、C~Cアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基であってもよい。
【0103】
立体安定化ポリマーセグメントは、一般的に、約70個未満の被重合モノマー残基単位を含み、特定の実施形態では、約40~約60個の被重合モノマー残基単位、例えば、ポリマーセグメント全体を構成する約50個の被重合モノマー残基単位を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、立体安定化ポリマーセグメントは、約10~約70個の被重合モノマー残基単位を含む。
【0105】
立体安定化ポリマーセグメントは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。
【0106】
一実施形態では、立体安定化ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーを含むか、またはこれらからなる。このブロックコポリマーは、約8~約60個の被重合アクリルアミド単位と、約2~約10個の被重合アルキレンオキシド単位とを含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0107】
別の実施形態では、立体安定化ポリマーセグメントは、約10~約13個の被重合アルキレンオキシド単位を含む。
【0108】
当業者は、被重合アルキレンオキシド単位が、ポリアルキレンオキシドを提供することを理解するだろう。
【0109】
本発明に従って使用されるポリマー性立体安定化剤、ポリマー性標的化部分およびポリマー性発光部分は、それぞれ固定ポリマーセグメントを含む。
【0110】
「固定ポリマーセグメント」とは、ポリマー鎖であり、磁性ナノ粒子の表面に対して親和性を有し、1つ以上の結合基を介して磁性ナノ粒子に所与のエンティティを固定するように機能する、所与のポリマー性エンティティ(すなわち、ポリマー性立体安定化剤、ポリマー性標的化部分およびポリマー性発光部分)のセグメントまたは領域を意味する。1つ以上の結合基は、ポリマー鎖骨格の一部分を形成するか、または1つ以上の結合基は、ポリマー鎖骨格に対するペンダントであってもよい。結合基は、磁性ナノ粒子に対する結合親和性を有する任意の原子または分子であり得る。例えば、結合基は、鉄または酸化鉄に対する結合親和性を有する任意の原子または分子であり得る。使用可能な適切な結合基としては、1つ以上のリン(P)原子を含む基、1つ以上の酸素(O)原子を含む基、1つ以上の硫黄(S)原子を含む基、1つ以上の窒素(N)原子を含む基、および上述の原子のうちのいずれか2つ以上を含む基が挙げられる。
【0111】
一実施形態では、固定ポリマーセグメントは、リン酸基、ホスホン酸基、ジメルカプトコハク酸(DMSA)基、硫酸基、スルホン酸基、カテコール基、カルボン酸基、アミン基、およびシラン基から選択される1つ以上の結合基を含む。
【0112】
ポリマーセグメントであるとは、固定セグメントが、被重合モノマー残基を含むことが理解されるだろう。特に、セグメントは、磁性ナノ粒子に対して所望な結合親和性を生じさせる被重合モノマー残基を含む。固定ポリマーセグメントを構成する被重合モノマー残基は、同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0113】
固定セグメントが、磁性ナノ粒子との結合相互作用のための複数の部位を存在させる能力が、少なくとも一部には、ポリマー性立体安定化剤によって提供される優れた安定化特性を生じさせると考えられる。
【0114】
固定セグメントは、それぞれが磁性ナノ粒子と結合するための部位を提供する少なくとも2個の被重合モノマー残基を有していてもよく、または少なくとも3個、または少なくとも5個、または少なくとも7個、または少なくとも10個のこのような被重合モノマー残基を有していてもよい。固定セグメントを構成する被重合モノマー残基の全てが、必ずしも、磁性ナノ粒子との結合相互作用を生じることが必要なわけではないが、一般的に、固定セグメントを構成する被重合モノマー残基の全てではない場合には、大部分が、磁性ナノ粒子との結合相互作用を生じることが好ましい。
【0115】
したがって、固定ポリマーセグメントは、所与のエンティティを磁性ナノ粒子に選択的に固定する複数の部位を有するものとして記載されてもよい。
【0116】
所望な固定効果を提供するために、固定ポリマーセグメントは、磁性ナノ粒子に対して結合親和性を有する。固定セグメントが粒子状材料に結合する具体的な様式は、特に重要ではないが、例えば、静電力、水素結合、イオン電荷、ファンデルワールス力、またはそれらの任意の組み合わせを使用してもよい。固定ポリマーセグメントによって提供される特定の利点は、ナノ粒子との結合相互作用のための複数の部位を提供することができることである。したがって、所与の結合部位のみが、磁性ナノ粒子と比較的弱い相互作用を提供する場合でさえ、セグメント内のこのような複数の部位の存在が、全体として磁性ナノ粒子と強固に結合することが可能である。
【0117】
必要な固定ポリマーセグメントは、一般的に、結合する磁性ナノ粒子の性質によって記述される。当業者は、所与の磁性ナノ粒子の表面と結合する適切な固定ポリマーセグメントを選択することができるだろう。
【0118】
当業者は、固定ポリマーセグメントとして使用され得る種々のポリマーを、重合して、このようなポリマーを形成し得るモノマーと同様に、理解するだろう。例えば、適切なポリマーとしては、限定されないが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリイタコン酸、ポリ-p-スチレンカルボン酸、ポリ-p-スチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリモノアクリルオキシエチルホスフェート、ポリ-2-(メチルアクリロイルオキシ)エチルホスフェート、ポリエタクリル酸、ポリ-α-クロロアクリル酸、ポリクロトン酸、ポリフマル酸、ポリシトラコン酸、ポリメサコン酸、ポリマレイン酸、ポリ-2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレート、対応するポリ-3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレート、疎水性アクリレートおよびメタクリレートポリマー、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ならびにそれらのコポリマーが挙げられる。したがって、固定ポリマーセグメントを形成するために使用され得る適切なモノマーとしては、限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、p-スチレンカルボン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、モノアクリルオキシエチルホスフェート、2-(メチルアクリロイルオキシ)エチルホスフェート、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、マレイン酸、2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレート、対応する3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレート、スチレン、疎水性アクリレートおよびメタクリレートモノマー、ジメチルアミノエチルメタクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0119】
固定ポリマーセグメントは、約1~約20個のホスホン酸基、例えば、1個のホスホン酸基、2個のホスホン酸基、3個のホスホン酸基、4個のホスホン酸基、5個のホスホン酸基、6個のホスホン酸基、7個のホスホン酸基、8個のホスホン酸基、9個のホスホン酸基または10個のホスホン酸基、11個のホスホン酸基、12個のホスホン酸基、13個のホスホン酸基、14個のホスホン酸基、15個のホスホン酸基、16個のホスホン酸基、17個のホスホン酸基、18個のホスホン酸基、19個のホスホン酸基、または20個のホスホン酸基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、固定ポリマーセグメントは、20個より多いホスホン酸基を含んでいてもよい。特定の実施形態では、固定ポリマーセグメントは、5個のホスホン酸基を含む。
【0120】
固定ポリマーセグメントは、1種類のモノマー、または2つ以上の異なるモノマーの組み合わせの重合によって形成されてもよい。したがって、固定ポリマーセグメントは、ホモポリマーセグメントであってもよく、またはコポリマーセグメントであってもよい。
【0121】
集合的に固定ポリマーセグメントを形成する被重合モノマー単位の数には特に制限はないが、本発明のいくつかの実施形態では、比較的低い数平均分子量を有することが望ましいだろう。固定ポリマーセグメントは、約50個未満、または約40個未満、または約30個未満、または約5~約25個、または約5~約15個の被重合モノマー残基単位(セグメント全体を構成する)を含んでいてもよい。
【0122】
一実施形態では、固定ポリマーセグメントは、1~約30個の被重合モノマー残基単位を含む。
【0123】
一実施形態では、固定ポリマーセグメントは、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの被重合残基から構成される。
【0124】
いくつかの実施形態では、固定ポリマーセグメントが、ポリマー性立体安定化剤、ポリマー性標的化部分またはポリマー性発光部分を形成するように、立体安定化ポリマーセグメントまたは連結ポリマーセグメントのいずれかに共有結合することが理解されるだろう。
【0125】
ポリマー性標的化部分および発光性標的化部分(使用される場合)は、連結ポリマーセグメントを含んでいてもよい。示されるように、連結ポリマーセグメントは、固定ポリマーセグメントに共有結合する。「連結」ポリマーセグメントであるとは、標的化基または発光性基のいずれかに固定ポリマーセグメントを連結または接続するポリマー鎖であることを意味する。したがって、これらの標的化基または発光性基は、一般的に、連結ポリマーセグメントに共有結合する。連結ポリマーセグメントはまた、磁性ナノ粒子から標的化基または発光性基が離れるように分離し、移動するように機能し、それによって、例えば、標的細胞上の受容体に対して標的化基がさらに接近可能な場合、これらをより機能的なものにする。
【0126】
連結ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリアルキレンオキシド、ポリオキサマー、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノ-エチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアミド、ポリスルホン酸化ジビニルベンゼン、ポリ-L-リジン、ポリアスパルテート、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアスパルテート、ポリ無水マレイン酸、ポリマレイン酸、または上述のうちのいずれかのコポリマーを含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0127】
特定の実施形態では、連結ポリマーセグメントは、約100個未満の被重合モノマー残基単位を有し、特定の実施形態では、約50~約80個の被重合モノマー残基単位、例えば、ポリマーセグメント全体を構成する約70個の被重合モノマー残基単位を有する。
【0128】
一実施形態では、連結ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミドからなる。
【0129】
別の実施形態では、連結ポリマーセグメントは、約10~約100個の被重合モノマー残基単位を含むか、またはこれらから構成される。
【0130】
連結ポリマーセグメントのさらなる実施形態では、ポリマー性標的化部分および発光性標的化部分の一方または両方は、立体安定化ポリマーセグメントよりも多くの被重合モノマー残基単位を有する。例えば、連結ポリマーセグメントは、立体安定化ポリマーセグメントよりも少なくとも2個、または少なくとも4個、少なくとも6個、または少なくとも8個、または少なくとも10個、または少なくとも12個、または少なくとも14個、または少なくとも16個、または少なくとも18個、または少なくとも20個、またはそれより多い被重合モノマー残基単位を有していてもよい。連結ポリマーセグメントは、立体安定化ポリマーセグメントよりも約5~約70個、または約5~約60個、または約5~約40個、または約5~約20個、または約40~約70個、または約50~約70個、またはそれより多くの被重合モノマー残基単位を有していてもよい。
【0131】
理論により束縛されることを望まないが、立体安定化ポリマーセグメントよりも多くの被重合モノマー残基単位を有する連結ポリマーセグメントが、マクロファージにおけるタンパク質吸着およびその後の細胞取り込みが起こりにくい平面環境の生成において役割を果たすことを提供すると考えられる。ひいては、センチネル節においてコーティングされたナノ粒子の保持を改善すると考えられる。
【0132】
ポリマー性標的化部分およびポリマー性発光部分はそれぞれ、それぞれが1つ以上の標的化基または1つ以上の発光性基を含む。これらの標的化基および発光性基は、一般的に、それぞれの部分の連結ポリマーセグメントに共有結合する。
【0133】
1つ以上の標的化基は、コーティングされたナノ粒子の投与時に被験体においてリンパ節またはがん細胞を選択的に標的化することが可能である。適切な標的化基としては、単糖基、抗体、抗体フラグメント、リガンド、および阻害剤が挙げられる。間質は、主に絡まったコラーゲン線維およびグリコサミノグリカンで構成されており、主要なグリコサミノグリカンは、負に帯電したヒアルロン酸である。したがって、中性または正味の負の電荷を保有するコーティングされたナノ粒子は、ナノ粒子の間質への移動を促進すると予想される。また、コーティングされたナノ粒子は、水チャンネルを介して間質を通って移動する。したがって、ナノ粒子を親水性材料で包むことで、ナノ粒子を疎水性材料で覆う場合よりも効率的に移動させ得る。
【0134】
適切な標的化単糖基の例としては、限定されないが、マンノースおよびグルコースが挙げられる。適切な標的化抗体および阻害剤の例としては、限定されないが、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的化する抗体、抗体フラグメントまたは阻害剤、例えば、Lys-Urea-GluおよびJ591、CD147標的(頭頸部特異的)、上皮成長因子受容体(EGFR)抗体または阻害剤(多くの固形腫瘍がんを標的化するために使用される)、セツキシマブ(結腸直腸がん、非小細胞肺がんおよび頭頸部がんを含む固形腫瘍を標的化するために使用される)、ならびにパニツムマブ(以前はABX-EGF、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、および頭頸部がんを含む固形腫瘍を標的化するために使用される)が挙げられる。
【0135】
一実施形態では、1つ以上の標的化基は、単糖受容体を選択的に標的化するための単糖基、ならびに前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するための抗体、抗体フラグメント、および阻害剤から選択される。
【0136】
別の実施形態では、1つ以上の標的化基は、単糖受容体を選択的に標的化するための単糖基、ならびに前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するための抗体フラグメントおよび阻害剤から選択される。
【0137】
さらに別の実施形態では、1つ以上の標的化基は、単糖受容体を選択的に標的化するための単糖基、ならびに前立腺特異的膜抗原(PSMA)を選択的に標的化するための阻害剤から選択される。
【0138】
さらなる実施形態では、1つ以上の標的化基は、阻害剤であり、その阻害剤は、Lys-Urea-Gluである。
【0139】
別の実施形態では、1つ以上の標的化基は、マンノースおよびグルコースから選択される単糖である。
【0140】
1つ以上の発光性基は、いくつかの形態の刺激の後に所望な波長で電磁放射線または音響エネルギーを発生させる任意の化学エンティティであり得る。発光性基は、化学発光性(例えば、生物発光性)、電界発光性、光発光性、放射線発光性または熱発光性であってもよい。特定の実施形態では、発光性基は、光子の吸収後に特定の波長で光を発生させる光発光性基である。光発光性基は、蛍光性またはリン光性であってもよい。
【0141】
特定の実施形態では、発光性基は、シアニン染料の群に属する蛍光性基である。適切な蛍光性基としては、インドシアニングリーン(ICG;ナトリウム 4-[2-[(1E,3E,5E,7Z)-7-[1,1-ジメチル-3-(4-スルホナトブチル)ベンゾ[e]インドール-2-イリデン]ヘプタ-1,3,5-トリエニル]-1,1-ジメチルベンゾ[e]インドール-3-イウム-3-イル]ブタン-1-スルホネート)、IR染料、例えば、IRdye 800、およびスルホシアニン染料、例えば、スルホ-Cy3、スルホ-Cy5、およびスルホ-Cy7が挙げられる。適切な染料は、例えば、Lumiprobe Corporation、Hunt Valley、Maryland、USAから市販されている。
【0142】
一実施形態では、発光性基は、インドシアニングリーン、スルホ-Cy3、スルホ-Cy5、およびスルホ-Cy7から選択される。
【0143】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、さらに、(iv)ポリマーに共有結合していない発光性基を含む。ポリマーに共有結合していない発光性基とは、その発光性基が、ポリマー性発光部分の一部分を形成しておらず、それ自体が発光性基としてポリマー組成物中に存在することを意味する。この目的のための適切な発光性基としては、本明細書に記載されるものが挙げられる。
【0144】
特定の実施形態では、ポリマー組成物コーティングは、少なくとも1つのポリマー性立体安定化剤と、少なくとも1つのポリマー性標的化部分とを含む。他の実施形態では、ポリマー組成物コーティングは、少なくとも1つのポリマー性立体安定化剤と、少なくとも1つのポリマー性発光部分とを含む。他の実施形態では、ポリマー組成物コーティングは、少なくとも1つのポリマー性立体安定化剤と、少なくとも1つのポリマー性標的化部分と、少なくとも1つのポリマー性発光部分とを含む。
【0145】
コーティングされたナノ粒子、またはコーティングされたナノ粒子を含む組成物の療法での使用の一例は、高感度の放射線療法である。
【0146】
コーティングされたナノ粒子、またはコーティングされたナノ粒子を含む組成物の診断での使用の例としては、磁気共鳴画像診断、がん手術、およびリンパ節転移の視覚化における使用が挙げられる。
【0147】
本発明は、診断および/または治療用画像診断用途において使用するための被験体への投与に適した組成物であって、この組成物は、薬理学的に許容される液体担体に分散した本明細書に記載される薬理学的に許容されるコーティングされたナノ粒子を含む組成物を提供する。
【0148】
コーティングされたナノ粒子、またはコーティングされたナノ粒子を含む組成物を、限定されないが、超音波、X線、光学画像診断、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、および磁気共鳴画像診断(MRI)を含むインビボでの画像診断技術と組み合わせて使用することができる。
【0149】
1つの用途において、コーティングされたナノ粒子、およびコーティングされたナノ粒子を含む組成物は、被験体へのナノ粒子の注射時にコーティングされたナノ粒子を取り込む組織(例えば、リンパ節)の検出を可能にする。これを使用して、がんの特定の形態に冒され得る組織を特定することができる。センチネルリンパ節は、がんを排出する仮想上の最初のリンパ節またはリンパ節の群である。センチネルリンパ節が、腫瘍からがん細胞が転移することによって最初に達する標的臓器であると仮定される。したがって、コーティングされたナノ粒子、およびコーティングされたナノ粒子を含む組成物を、センチネルリンパ節の検出のために使用することができ、特定の腫瘍のセンチネルリンパ節の特定、取り出し、および分析を含むセンチネル節手順の一部分として使用することができる。
【0150】
したがって、インビボでの画像診断のためのコーティングされたナノ粒子、またはコーティングされたナノ粒子を含む組成物の使用も提供される。
【0151】
さらに、センチネルリンパ節を検出するためのコーティングされたナノ粒子、またはコーティングされたナノ粒子を含む組成物の使用が提供される。
【0152】
インビボでの画像診断技術は、被験体においてコーティングされたナノ粒子の位置検出または視覚化を少なくとも可能にし、したがって、センチネルリンパ節および/またはがんに冒されている組織の検出または特定を可能にする。
【0153】
一実施形態では、インビボでの画像診断は、超音波、X線、光学画像診断、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、および磁気共鳴画像診断(MRI)からなる群から選択される。
【0154】
したがって、本発明はまた、被験体においてがんを検出するための方法であって、この方法は、本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子または組成物を被験体に投与することと、磁性ナノ粒子を検出することと、を含み、磁性ナノ粒子の局在化が、被験体においてがんに冒されている組織の存在を示す、方法を提供する。
【0155】
本発明は、さらに、がんを有する被験体を治療するための方法であって、この方法は、本発明に係る薬理学的に許容される磁性ナノ粒子または組成物を被験体に投与することと、磁性ナノ粒子を検出することと、被験体を、がんを有するものとして特定することであって、磁性粒子の局在化が、被験体においてがんに冒されている組織の存在を示す、特定することと、(iii)においてがんを有すると特定された被験体を、がんのための治療で治療することと、を含む、方法を提供する。
【0156】
一実施形態では、ポリマー性立体安定化剤は、一般式Z-A-S-[S]-[Y]を有するものとして記載されてもよく、式中、Aは、金属/磁性コアに結合することが可能な1つ以上の結合基を含む固定ポリマーセグメントを含み、Sは、液体中のコーティングされたナノ粒子の凝集を最小限に抑えることが可能な第1の立体安定化ポリマーセグメントを含み、Sは、第2の立体安定化ポリマーセグメントであり、望ましい生物学的特徴を増強するように使用され、ZおよびYは、ポリマー末端基であり、[ ]は、その基が存在してもよく、または存在しなくてもよいことを示している。
【0157】
一実施形態では、ポリマー性標的化部分は、一般式Z-A-L-Tを有するものとして記載されてもよく、式中、Aは、金属/磁性コアに結合することが可能な1つ以上の結合基を含む固定ポリマーセグメントを含み、Lは、金属/磁性コアから離れてTを移動させるために使用される連結ポリマーセグメントを含み、Tは、コーティングされたナノ粒子の投与時に被験体においてリンパ節またはがん細胞を選択的に標的化することが可能な1つ以上の標的化基であり、Zは、ポリマー末端基である。
【0158】
一実施形態では、ポリマー性発光部分は、一般式-A-L-Fを有するものとして記載されてもよく、式中、Aは、金属/磁性コアに結合することが可能な1つ以上の結合基を含む固定ポリマーセグメントを含み、Lは、金属/磁性コアから離れてFを移動させるために使用される連結ポリマーセグメントを含み、Fは、コーティングされたナノ粒子のインビボでの視覚化のために光を発生させることが可能な1つ以上の発光性基である。
【0159】
本明細書で使用される場合、ポリマーは、式-X-を有し、式中、「-」は、2つの基が作動可能に連結されるような、2つの基の間の結合を示している。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、第1の要素および第2の要素が、機能的な関係で配置されるような、第2の要素に対する第1の要素の連結を指す。結合は、2つの基またはポリマーセグメントの間の直接的な結合であってもよい。これに代えて、示されている結合は、2つの基またはポリマーセグメントの間の間接的な結合であってもよく、2つの示されている基またはセグメントの間に、さらなる基またはポリマーセグメントが存在していてもよい。例えば、式「-A-S-」を有するポリマーセグメントは、その範囲内に、式「-A-S-」を有するポリマーセグメントと、さらに式-A-B-S-(式中、Bは、ポリマーまたはポリマーセグメントの特性に実質的に影響を及ぼさないポリマーセグメントの任意の群であり得る)を有するポリマーセグメントも含む。
【0160】
ポリマー性立体安定化剤、ポリマー性標的化部分およびポリマー性発光部分は、ポリマー組成物コーティングが、それぞれの別個のポリマー部分の混合物を含むような、別個のポリマーエンティティである。
【0161】
立体安定化ポリマーSおよび/またはSセグメントは、ポリマーの堅牢性を改善するための特定の特徴を有する第1のポリマーセグメントと、ポリマーの生物学的特徴を改善させるための第2のポリマーセグメントとを含有していてもよい。例えば、第2のポリマーセグメントは、血液循環半減期を増加させ得る。
【0162】
連結ポリマーセグメントLおよび/またはLは、好ましくは、ポリマーセグメントの堅牢性を改善し、立体安定化ポリマーセグメントとは異なるポリマーセグメントである。
【0163】
ポリマー組成物コーティングは、一般式Z-A-S-[S]-[Y]を有する少なくとも1つのポリマー性立体安定化剤を含んでいてもよく、式中、Aは、金属コアに結合することが可能な1つ以上の結合基を含む固定ポリマーセグメントを含み、Sは、溶液中のコーティングされたナノ粒子の凝集を最小限に抑えるために最適化された立体安定化ポリマーセグメントを含み、Sは、血液循環半減期の増加などの生物学的相互作用のために最適化された立体安定化ポリマーセグメントを含み、ZおよびYは、ポリマー末端基であり、[ ]は、その基が存在してもよく、または存在しなくてもよいことを示している。
【0164】
固定ポリマーセグメント(A)は、金属/磁性コアへの結合を可能にする1つ以上の結合基を含む。1つ以上の結合基は、ポリマー骨格の一部であってもよく、または1つ以上の結合基は、ポリマー骨格の側鎖に接続するペンダント基であってもよい。結合基は、金属/磁性コア中の材料に対する結合親和性を有する任意の元素または分子であり得る。例えば、結合基は、鉄または酸化鉄に対する結合親和性を有する任意の元素または分子であり得る。使用可能な適切な結合基としては、1つ以上のリン(P)原子を含む基、1つ以上の酸素(O)原子を含む基、1つ以上の硫黄(S)原子を含む基、1つ以上の窒素(N)原子を含む基、および上述の原子のうちのいずれか2つ以上を含む基が挙げられる。使用可能な特に適切な結合基としては、リン酸基、ホスホン酸基、ジメルカプトコハク酸(DMSA)基、硫酸基、スルホン酸基、カテコール基、カルボキシル基、アミン基、およびシラン基が挙げられる。
【0165】
適切なリン酸基は、一般式-OP(O)(OH)を有する。
【0166】
適切なホスホン酸基は、一般式-P(O)(OH)を有する。
【0167】
適切なジメルカプトコハク酸(DMSA)基は、一般式:
【化1】
を有する。
【0168】
適切な硫酸基は、一般式-OS(O)OHを有する。
【0169】
適切なスルホン酸基は、一般式-S(O)OHを有する。
【0170】
適切なカテコール基は、一般式:
【化2】
を有する。
【0171】
適切なカルボキシル基は、一般式-C(O)OHを有する。
【0172】
適切なアミン基は、一般式-NHを有する。
【0173】
適切なシラン基は、一般式-Si(OH)を有する。
【0174】
固定ポリマーセグメント(A)は、2つ以上の異なる結合基を含んでいてもよい。
【0175】
固定ポリマーセグメント(A)は、1つより多い結合基を含んでいてもよく、金属/磁性コアに対する固定ポリマーセグメント(A)の結合親和性は、存在する結合基の数が増えるにつれて増加し得ると予想される。理想的には、固定ポリマーセグメント(A)は、金属/磁性コアとの結合相互作用のための複数の部位を提供する。固定ポリマーセグメント(A)内に複数の結合部位が存在することで、全体として金属/磁性コアに強固に結合することが可能になる。非限定的な例として、本願発明者らは、ホスホン酸基が鉄ナノ粒子に結合することを示している。リン酸結合基の場合には、各固定ポリマーセグメント(A)は、約1~約20個のホスホン酸基、例えば、1個のホスホン酸基、2個のホスホン酸基、3個のホスホン酸基、4個のホスホン酸基、5個のホスホン酸基、6個のホスホン酸基、7個のホスホン酸基、8個のホスホン酸基、9個のホスホン酸基または10個のホスホン酸基、11個のホスホン酸基、12個のホスホン酸基、13個のホスホン酸基、14個のホスホン酸基、15個のホスホン酸基、16個のホスホン酸基、17個のホスホン酸基、18個のホスホン酸基、19個のホスホン酸基または20個のホスホン酸基を含有していてもよい。いくつかの実施形態では、固定ポリマーセグメント(A)は、20個より多いホスホン酸基を含有していてもよい。特定の実施形態では、各固定ポリマーセグメント(A)は、5個のホスホン酸基を含有する。
【0176】
固定ポリマーセグメント(A)は、ポリマー骨格を有する。固定ポリマーセグメント(A)は、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーに由来していてもよい。場合により、2つ以上の異なるポリマーを、組成物中の固定ポリマーセグメント(AおよびA’)として使用してもよい。
【0177】
固定ポリマーセグメント(A)は、一般式I:
【化3】
を有していてもよく、
式中、
は、H、ハロゲン、場合により置換されていてもよいC~Cアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールからなる群から選択され、
およびXは、それぞれ独立して、O、S、およびNからなる群から選択され、
は、結合であるか、または場合により置換されていてもよいC~Cアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールから選択される基であり、
BGは、本明細書に定義される通りの結合基であり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20からなる群から選択される整数である。
【0178】
特定の実施形態では、Rは、場合により置換されていてもよいC~Cアルキルである。特定の具体的な実施形態では、Rは、CHである。
【0179】
特定の実施形態では、Xは、Oである。
【0180】
特定の実施形態では、Xは、Oである。
【0181】
特定の実施形態では、Rは、場合により置換されていてもよいC~Cアルキルである。特定の具体的な実施形態では、Rは、-(CH-である。
【0182】
特定の実施形態では、BGは、リン酸結合基である。特定の具体的な実施形態では、BGは、-P(O)(OH)である。
【0183】
特定の実施形態では、nは、5である。
【0184】
上述のことから、特定の実施形態では、固定ポリマーセグメント(A)が、式:
【化4】
を有することは明らかであろう。
【0185】
第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、溶液中のコーティングされたナノ粒子の凝集を最小限に抑えることが可能なポリマーセグメントである。第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)の作用様式について、なんらかの1つの具体的な理論によって束縛されることを意図していないが、第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)が、金属/磁性コア材料およびその周囲にある液体環境の両方と相互作用し、静電および/または立体反発力の結果として粒子状材料を分散した状態に維持するのに役立つと予想される。
【0186】
第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、ポリマー骨格を有する。第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)の化学官能性は、特に重要なわけではなく、例えば、第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、ポリアクリルアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリアルキレンオキシド、ポリオキサマー、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノ-エチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアミド、ポリスルホン酸化ジビニルベンゼン、ポリ-L-リジン、ポリアスパルテート、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアスパルテート、ポリ無水マレイン酸、ポリマレイン酸、または上述のうちのいずれかのコポリマーであってもよい。
【0187】
考察されているように、第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)の機能は、静電および/または立体反発力の結果として、磁性ナノ粒子を分散した状態に維持するのに役立つことである。この理由のために、立体的に安定化するポリマーセグメント(S)の長さは、必要な立体反発力を提供するのに十分なものである必要がある。また、固定ポリマーセグメント(A)と、存在する場合には第2の立体安定化ポリマーセグメント(S)も、必要な静電および/または立体反発力に寄与する長さおよび/または機能性を有することを考慮する必要がある。この理由のために、特定の実施形態では、第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、約70個未満の被重合モノマー残基単位を有し、特定の実施形態では、約40~約60個の被重合モノマー残基単位、例えば、ポリマーセグメント全体を構成する約50個の被重合モノマー残基単位を有する。特定の実施形態では、第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、約1,000g/mol~約10,000g/molの分子量を有する。
【0188】
特定の実施形態では、第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、一般式II:
【化5】
を有し、
式中、
は、H、ハロゲン、場合により置換されていてもよいC~Cアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールからなる群から選択され、
およびXは、それぞれ独立して、O、S、およびNからなる群から選択され、
mは、40~70の整数である。
【0189】
特定の実施形態では、Rは、Hである。
【0190】
特定の実施形態では、Xは、Oである。
【0191】
特定の実施形態では、Xは、NRであり、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、H、場合により置換されていてもよいアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールからなる群から選択される。
【0192】
特定の実施形態では、mは、50である。
【0193】
上述のことから、特定の実施形態では、第1の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、式:
【化6】
を有することが明らかであろう。
【0194】
第2の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、ポリマー骨格を含む。第2の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、コーティングされたナノ粒子上に比較的親水性の表面を形成してもよく、このことは、コーティングされたナノ粒子の表面が、水溶液で濡れることが可能であり、生物学的材料とのインビボでの相互作用を優先的に最適化する(例えば、血液循環半減期を最大にすることが必要な場所で相互作用を最小限に抑える)ことを意味している。
【0195】
第2の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、ポリアルキレンオキシドポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポロキサマーおよびポロキサミン(ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマー)、およびそのアルキル末端が保護された誘導体から選択されるポリマー鎖を含んでいてもよい。第2の安定化ポリマーセグメント(S)はまた、ペンダント親水性基を有する比較的疎水性のポリマー骨格を含んでいてもよい。あらゆる場合に、ポリマーセグメント(S)は、-COH、-CORN、-SOH、-OSOH、-SORN、-SORN、-OP(OH)、-P(OH)、-PO(OH)、-OH、-ORN、-(OCH-CHR)-OH、-CONH、CONHR’、CONR’R’’、-NR’R’’、-N+R’R’’R’’’からなる群から選択される1つ以上の親水性ペンダント基を含んでいてもよく、ここで、Rは、C~Cアルキルから選択され、wは、1~10であり、R’、R’’およびR’’’は、独立して、アルキルおよびアリールから選択され、これらは、-COH、-SOH、-OSOH、-OH、-(COCHCHR)-OH、-CONH、-SORおよびSOR、ならびにこれらの塩から選択される1つ以上の親水性置換基で場合により置換されていてもよく、Rおよびwは、上に定義される通りである。
【0196】
特定の実施形態では、第2の安定化ポリマーセグメント(S)は、ポリアルキレンオキシドポリマーを含む。ポリアルキレンオキシドポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびそれらの誘導体から選択されてもよい。ポリアルキレンオキシドポリマーは、アルキル基で末端保護されていてもよい。アルキル基は、C~Cアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基であってもよい。
【0197】
特定の実施形態では、第2の立体安定化ポリマーセグメント(S)は、一般式III:
【化7】
を有し、
式中、pは、10~30の整数であり、qは、1、2および3から選択される整数である。
【0198】
特定の実施形態では、qは、1である。他の特定の実施形態では、qは、2である。
【0199】
特定の実施形態では、pは、15~25、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25の整数である。
【0200】
上述のことから、特定の実施形態では、ポリマー性立体安定化剤は、ポリホスフェート/ポリアクリルアミド/PEOポリマーであることは明らかであろう。ポリホスフェート/ポリアクリルアミド/PEOポリマーは、特定の実施形態では、式:
【化8】
を有し、
式中、X、X、X、X、R、R、R、BG、n、m、p、qは、本明細書で既に定義した通りであり、Zは、ポリマー鎖末端基、例えば、RAFT剤に由来するトリチオカーボネートであり、Yは、ポリマー末端基、例えば、アルキル基であり、Dは、リンカー基、例えば、-アルキル-C(O)-基である。
【0201】
特定の具体的な実施形態では、ポリマー性立体安定化剤は、式:
【化9】
を有する。
【0202】
特定の実施形態では、一般式Z-A-S-[S]-[Y]を有するポリマー性立体安定化剤は、可逆的付加開裂連鎖移動(reversible addition fragmentation chain transfer:RAFT)重合によって形成される。これらの実施形態では、ZおよびYポリマー末端基は、使用される特定のRAFT剤に由来していてもよい。例えば、Z基は、RAFT剤に由来するトリチオカーボネート基であってもよい。トリチオカーボネート基は、アルキルトリチオカーボネート基、例えば、メチルトリチオカーボネート基であってもよい。
【0203】
ポリマー性立体安定化剤に加えて、ポリマー組成物コーティングはまた、一般式Z-A-L-Tを有するポリマー性標的化部分を含んでいてもよい。ポリマー性標的化部分は、コーティングされたナノ粒子が投与される被験体においてリンパ節またはがん細胞を標的化する。
【0204】
固定ポリマーセグメント(A)は、ポリマー骨格を有する。固定ポリマーセグメント(A)は、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーに由来していてもよい。
【0205】
固定ポリマーセグメント(A)は、一般式IV:
【化10】
を有していてもよく、
式中、
は、H、ハロゲン、場合により置換されていてもよいC~Cアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールからなる群から選択され、
およびXは、それぞれ独立して、O、S、およびNからなる群から選択され、
は、結合であるか、または場合により置換されていてもよいC~Cアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールから選択される基であり、
BGは、本明細書に定義される通りの結合基であり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から選択される整数である。
【0206】
特定の実施形態では、Rは、場合により置換されていてもよいC~Cアルキルである。特定の具体的な実施形態では、Rは、CHである。
【0207】
特定の実施形態では、Xは、Oである。
【0208】
特定の実施形態では、Xは、Oである。
【0209】
特定の実施形態では、Rは、場合により置換されていてもよいC~Cアルキルである。特定の具体的な実施形態では、Rは、-(CH-である。
【0210】
特定の実施形態では、BGは、リン酸結合基である。特定の具体的な実施形態では、BGは、-P(O)(OH)である。
【0211】
特定の実施形態では、nは、5である。
【0212】
上述のことから、特定の実施形態では、固定ポリマーセグメント(A)は、式:
【化11】
を有することは明らかであろう。
【0213】
連結ポリマーセグメント(L)は、ポリマー骨格を有する。連結ポリマーセグメント(L)は、ポリアクリルアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリアルキレンオキシド、ポリオキサマー、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノ-エチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアミド、ポリスルホン酸化ジビニルベンゼン、ポリ-L-リジン、ポリアスパルテート、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアスパルテート、ポリ無水マレイン酸、ポリマレイン酸、または上述のうちのいずれかのコポリマーであってもよい。
【0214】
特定の実施形態では、連結ポリマーセグメント(L)は、約100個未満の被重合モノマー残基単位を有し、特定の実施形態では、約50~約80個の被重合モノマー残基単位、例えば、ポリマーセグメント全体を構成する約70個の被重合モノマー残基単位を有する。連結ポリマーは、標的化基(T)を金属コアから離れるように移動させ、標的細胞上の受容体に接近可能なようにする。
【0215】
特定の実施形態では、連結ポリマーセグメント(L)は、一般式V:
【化12】
を有し、
式中、
は、H、ハロゲン、場合により置換されていてもよいC~Cアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールからなる群から選択され、
およびXは、それぞれ独立して、O、S、およびNからなる群から選択され、
mは、50~80の整数である。
【0216】
特定の実施形態では、Rは、Hである。
【0217】
特定の実施形態では、Xは、Oである。
【0218】
特定の実施形態では、Xは、NR10であり、ここで、RおよびR10は、それぞれ独立して、H、場合により置換されていてもよいアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールからなる群から選択される。
【0219】
特定の実施形態では、mは、70である。
【0220】
上述のことから、特定の実施形態では、連結ポリマーセグメント(L)は、式:
【化13】
を有することは明らかであろう。
【0221】
Tは、コーティングされたナノ粒子の投与時に被験体においてリンパ節またはがん細胞を選択的に標的化することが可能な1つ以上の標的化基である。適切な標的化基としては、単糖基、前立腺特異的膜抗原(PSMA)標的化基、例えば、抗体、抗体フラグメント、リガンド、および阻害剤が挙げられる。間質は、主に絡まったコラーゲン線維およびグリコサミノグリカンで構成されており、主要なグリコサミノグリカンは、負に帯電したヒアルロン酸である。したがって、中性または正味の負の電荷を保有するコーティングされたナノ粒子は、ナノ粒子の間質への移動を促進すると予想される。また、コーティングされたナノ粒子は、水チャンネルを介して間質を通って移動する。したがって、ナノ粒子を親水性材料で包むことで、ナノ粒子を疎水性材料で包む場合よりも効率的に移動させ得る。適切な単糖基の例としては、限定されないが、マンノースおよびグルコースが挙げられる。適切な抗体および阻害剤の例としては、限定されないが、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的化する抗体、抗体フラグメントまたは阻害剤、例えば、Lys-Urea-GluおよびJ591、CD147標的(頭頸部特異的)、上皮成長因子受容体(EGFR)抗体または阻害剤(多くの固形腫瘍がんを標的化するために使用される)、セツキシマブ(結腸直腸がん、非小細胞肺がんおよび頭頸部がんを含む固形腫瘍を標的化するために使用される)、ならびにパニツムマブ(以前はABX-EGF、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、および頭頸部がんを含む固形腫瘍を標的化するために使用される)が挙げられる。適切なPSMA標的化基の例としては、限定されないが、PSMAを標的化する抗体、PSMAを標的化する抗体フラグメントおよび阻害剤(例えば、Lys-Urea-Glu)が挙げられる。
【0222】
ポリマー組成物コーティングは、任意の適切な量で、ポリマー性立体安定化剤と、ポリマー性標的化部分とを含有していてもよい。例えば、ポリマー組成物コーティングは、10%~90%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と、90%~10%(重量/重量)のポリマー性標的化部分とを含有していてもよい。特定の実施形態では、ポリマー組成物コーティングは、10%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と90%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、15%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と85%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、20%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と80%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、25%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と75%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、30%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と70%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、35%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と65%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、40%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と60%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、45%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と55%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、50%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と50%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、55%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と45%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、60%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と40%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、65%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と35%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、70%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と30%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、75%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と25%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、80%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と20%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、85%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と15%(重量/重量)のポリマー性標的化部分、または90%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と10%(重量/重量)のポリマー性標的化部分を含有する。特定の具体的な実施形態では、ポリマー組成物コーティングは、70%(重量/重量)のポリマー性立体安定化剤と、30%(重量/重量)のポリマー性標的化部分とを含有する。
【0223】
ポリマー性標的化部分に加えて、またはポリマー性標的化部分の代替物として、ポリマー組成物コーティングはまた、一般式-A-L-Fを有するポリマー性発光部分を含んでいてもよく、式中、Aは、金属/磁性コアに結合することが可能な1つ以上の結合基を含む固定ポリマーセグメントを含み、Lは、連結ポリマーセグメントを含み、Fは、コーティングされたナノ粒子のインビボでの視覚化のために電磁放射線を発生させることが可能な1つ以上の発光性基である。連結ポリマーセグメント(L)は、発光性基(F)を金属/磁性コアから離れるように空間をあけ、金属コアによって発生した光の吸収を最小限に抑える。
【0224】
固定ポリマーセグメント(A)は、一般式VI:
【化14】
を有していてもよく、
式中、
11は、H、ハロゲン、場合により置換されていてもよいC~Cアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールからなる群から選択され、
およびX10は、それぞれ独立して、O、S、およびNからなる群から選択され、
12は、結合であるか、または場合により置換されていてもよいC~Cアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールから選択され、
BGは、本明細書に定義される通りの結合基であり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から選択される整数である。
【0225】
特定の実施形態では、R11は、場合により置換されていてもよいC~Cアルキルである。特定の具体的な実施形態では、Rは、CHである。
【0226】
特定の実施形態では、Xは、Oである。
【0227】
特定の実施形態では、X10は、Oである。
【0228】
特定の実施形態では、R12は、場合により置換されていてもよいC~Cアルキルである。特定の具体的な実施形態では、Rは、-(CH-である。
【0229】
特定の実施形態では、BGは、リン酸結合基である。特定の具体的な実施形態では、BGは、-P(O)(OH)である。
【0230】
特定の実施形態では、nは、5である。
【0231】
上述のことから、特定の実施形態では、固定ポリマーセグメント(A)は、式:
【化15】
を有することが明らかであろう。
【0232】
連結ポリマーセグメント(L)は、ポリマー骨格を有する。連結ポリマーセグメント(L)は、ポリアクリルアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリアルキレンオキシド、ポリオキサマー、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノ-エチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアミド、ポリスルホン酸化ジビニルベンゼン、ポリ-L-リジン、ポリアスパルテート、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアスパルテート、ポリ無水マレイン酸、ポリマレイン酸、または上述のうちのいずれかのコポリマーであってもよい。
【0233】
特定の実施形態では、連結ポリマーセグメント(L)は、約100個未満の被重合モノマー残基単位を有し、特定の実施形態では、約50~約80個の被重合モノマー残基単位、例えば、ポリマーセグメント全体を構成する約70個の被重合モノマー残基単位を有する。
【0234】
特定の実施形態では、連結ポリマーセグメント(L)は、一般式VII:
【化16】
式中、
13は、H、ハロゲン、場合により置換されていてもよいC~Cアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールからなる群から選択され、
11およびX12は、それぞれ独立して、O、S、およびNからなる群から選択され、
mは、50~80の整数である。
【0235】
特定の実施形態では、R13は、Hである。
【0236】
特定の実施形態では、X11は、Oである。
【0237】
特定の実施形態では、X12は、NR1415であり、R14およびR15は、それぞれ独立して、H、場合により置換されていてもよいアルキル、および場合により置換されていてもよいアリールからなる群から選択される。
【0238】
特定の実施形態では、mは、70である。
【0239】
上述のことから、特定の実施形態では、連結ポリマーセグメント(L)は、式:
【化17】
を有することが明らかであろう。
【0240】
ポリマー性発光部分は、コーティングされたナノ粒子のインビボでの視覚化のために電磁放射線または音響エネルギーを発生させることが可能な1つ以上の発光性基(F)を含む。発光性基(F)は、コーティングされたナノ粒子のインビボでの視覚化をリアルタイムで可能にする。
【0241】
発光性基(F)は、いくつかの形態の刺激の後に所望な波長で電磁放射線または音響エネルギーを発生させる任意の化学エンティティであり得る。発光性基(F)は、化学発光性(例えば、生物発光性)、電界発光性、光発光性、放射線発光性または熱発光性であってもよい。特定の実施形態では、発光性基(F)は、光子の吸収後に特定の波長で光を発生させる光発光性基である。光発光性基は、蛍光性またはリン光性であってもよい。
【0242】
特定の実施形態では、発光性基(F)は、シアニン染料の群に属する蛍光性基である。適切な蛍光性基としては、インドシアニングリーン(ICG;ナトリウム 4-[2-[(1E,3E,5E,7Z)-7-[1,1-ジメチル-3-(4-スルホナトブチル)ベンゾ[e]インドール-2-イリデン]ヘプタ-1,3,5-トリエニル]-1,1-ジメチルベンゾ[e]インドール-3-イウム-3-イル]ブタン-1-スルホネート)、IR染料、例えば、IRdye 800、およびスルホシアニン染料、例えば、スルホ-Cy3、スルホ-Cy5、およびスルホ-Cy7が挙げられる。適切な染料は、例えば、Lumiprobe Corporation、Hunt Valley、Maryland、USAから市販されている。
【0243】
発光性基(F)を使用して、既知の外科装置と組み合わせて、インビボでコーティングされたナノ粒子を視覚化してもよい。任意の1つ以上の既知の蛍光または音響画像診断技術を、この目的に使用することができる。
【0244】
特定の実施形態では、ポリマー性発光部分は、ポリマー組成物コーティング中に、少なくとも約1重量%の量で存在する。特定の実施形態では、ポリマー性発光部分は、ポリマー組成物コーティング中に、約1重量%~約90重量%、例えば、約30重量%の量で存在する。
【0245】
本明細書では、被験体への投与に適した組成物も提供される。組成物は、診断および/または治療用画像診断用途において用途が見出される。組成物は、薬理学的に許容される液体、またはいわゆる液体担体中に本明細書に記載されるコーティングされたナノ粒子を含む。コーティングされたナノ粒子は、典型的には、薬理学的に許容される液体中に分散される。
【0246】
薬理学的に許容される液体は、1つ以上の異なる液体から構成されてもよい。適切な薬理学的に許容される液体は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、21st ed.;Lippincott Williams &amp;Wilkins:Philadelphia、PA、2005;Handbook of Pharmaceutical Excipients、6th ed Rowe et al.編集;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2009;Handbook of Pharmaceutical Additives、3rd ed Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation、2nd ed Gibson Ed.;CRC Press LLC:Boca Raton、FL、2009に記載される。水または生理食塩水溶液、ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、多くの場合、液体担体として、特に注射可能な組成物のために使用される。
【0247】
本発明の組成物は、当該技術分野で知られている1つ以上の薬理学的に許容される添加剤を含んでいてもよい。例えば、液体担体は、1つ以上の添加剤、例えば、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、緩衝液、電解質、防腐剤および着色剤を含んでいてもよい。
【0248】
液体担体およびその中の任意の添加剤(存在する場合)の特定の性質は、一部には、組成物の意図された用途に依存するだろう。当業者は、組成物の意図された用途のために適切な液体担体および添加剤(存在する場合)を選択することが可能であろう。
【0249】
組成物(例えば、本明細書に記載されるもの)において、コーティングされたナノ粒子分散が、医療用ナノ粒子が液体担体全体に分散したままであることを意味する「安定な」ままであることが重要である。理想的には、組成物は、被験体への投与前および投与後の両方に、安定なままである。本明細書に記載されるコーティングされたナノ粒子は、一般的に、薬理学的に許容される液体担体中に配置された場合に凝集しない。本明細書で使用される場合、「凝集物」という用語は、電子顕微鏡または動的光散乱によって決定される場合、粒子の非アモルファス性クラスターまたは集合体を指す。
【0250】
本明細書に記載されるコーティングされたナノ粒子(典型的には、本明細書に記載される組成物の一部分としての)は、適切な場合に、診断有効量で投与されてもよい。診断有効量は、所望な投薬レジメンに従って投与される場合、診断、治療および/または評価される特定の状態の発生もしくは進行を含む、所望な診断効果を達成する量を含むことが意図される。
【0251】
主治医によって決定することができることを達成するのに適切な投薬量および投薬レジメンは、治療もしくは診断される特定の状態、状態の重篤度、ならびに被験体の一般的な年齢、健康および体重に依存していてもよい。
【0252】
投薬は、数分間、数時間、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間の間隔で、またはこれらの期間のいずれか1つにわたって連続的に行われてもよい。粒子状材料自体の適切な投薬量は、投薬量当たり、約0.1ng/体重1kg~1g/体重1kgの範囲内にあってもよい。投薬量は、投薬量当たり、1μg~1g/体重1kgの範囲であってもよく、例えば、投薬量当たり、1ug~10mg/体重1kgの範囲であってもよい。一実施形態では、投薬量は、投薬量当たり、1ug~1mg/体重1kgの範囲であってもよい。別の実施形態では、投薬量は、投薬量当たり、1ug~250ug/体重1kgの範囲であってもよい。さらに別の実施形態では、投薬量は、投薬量当たり、1ug~100ug/体重1kg、例えば、投薬量当たり、50ug/体重1kgまでの範囲であってもよい。
【0253】
本発明に係る組成物は、単回用量または一連の用量で投与されてもよい。
【0254】
本発明に係る組成物が非経口投与に適している場合、一般的に、酸化防止剤、緩衝液、殺菌剤、または組成物を意図された被験体の血液と等張性にする溶質のうちの1つ以上を含有し得る水性または非水性の等張性の滅菌注射用液の形態である。このような組成物は、単回用量または複数回用量の密閉された容器(例えば、アンプルおよびバイアル)で存在していてもよい。
【0255】
投与時に、本発明に係る組成物は、多くの場合、インビボで希釈される。例えば、組成物が非経口で投与される場合、希釈を行うことができる。その場合に、組成物の液体担体は、その全体にコーティングされたナノ粒子が分散されるその周囲にある液体環境が、元々の液体担体よりも、インビボ液体(すなわち、被験体内の生物学的液体/流体)のより代表的なものとなるように、インビボで希釈されてもよい。例えば、非経口で投与されると、組成物からの粒子状材料は、より適切には、組成物の元々の液体担体よりも血液全体で分散していると記載され得る。これらの条件下で、インビボ液体担体(すなわち、被験体内の生物学的液体/流体)全体に分散しているような、コーティングされたナノ粒子を指すのが簡便な場合がある。本発明に係る組成物の液体と、インビボ液体担体との間のなんらかの組成差を除き、組成物の液体担体に関連する本明細書に記載される物質はまた、一般的に、インビボ液体担体に適用される。
【0256】
当業者は、本発明に従って使用される分散したコーティングされたナノ粒子が、液体担体内で、流体力学的直径で存在することが理解されるだろう。流体力学的直径は、磁性ナノ粒子自体、ならびにナノ粒子に関連する少なくともポリマー性立体安定化剤および標的化部分に由来する距離またはサイズである。したがって、分散したコーティングされたナノ粒子の流体力学的直径は、磁性ナノ粒子と、少なくともポリマー性立体安定化剤および標的化部分との組み合わせによって得られる直径を表すとみることができる。分散したコーティングされたナノ粒子が、対照的な形状を有する場合、流体力学的直径は、分散したコーティングされたナノ粒子によって示される最大の流体力学的直径を有するものであると考えられる。
【0257】
一実施形態では、分散したコーティングされたナノ粒子の流体力学的直径は、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約25nm未満、または約15nm未満である。
【0258】
さらなる実施形態では、分散したコーティングされたナノ粒子の流体力学的直径は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または300nmである。
【0259】
疑いを避けるために、分散したコーティングされたナノ粒子の「流体力学的直径」との本明細書での言及は、分散したコーティングされたナノ粒子の平均直径(少なくとも約50数量%)を示すことを意図している。分散したコーティングされたナノ粒子の流体力学的直径は、本明細書では、動的光散乱(dynamic light scattering:DLS)によって決定される。
【0260】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるコーティングされたナノ粒子は、約30nm~約150nm、例えば、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、または約150nmの平均流体力学半径(average hydrodynamic radius:Rh)(すなわち、流体力学的直径の半分)を有する。特定の具体的な実施形態では、本明細書に記載されるコーティングされたナノ粒子は、約90nmの平均流体力学半径(Rh)を有する。当業者によって理解されるように、コーティングされたナノ粒子の平均流体力学半径(Rh)はまた、動的光散乱(DLS)によって決定することができる。
【0261】
ナノ粒子のサイズは、リンパ節におけるその局在化の観点で重要な場合がある。デンドリマーに基づく1つの研究は、約9nmより大きな直径を有する材料が、リンパ系に入る傾向があり、一方、約6nmより小さな直径を有する材料は、血液内に排出される傾向があることを示唆している。したがって、10~100nmの流体力学的直径を有するコーティングされたナノ粒子は、間質を通って効率的に移動し、毛細リンパ管、および最終的にはリンパ節に入ることを可能にするのに適切であろう。
【0262】
非常に小さな磁性ナノ粒子は、リンパ節において転移を画像診断するために以前から使用されてきた。MRI、PETまたはCTを使用した現在の磁性ナノ粒子画像診断技術は、感度が良くない。例えば、出願人の知識の限りでは、PETを用いた11%の感度は、微小転移(直径が2mm未満の腫瘍沈着)を検出するために現時点で最良である。非常に小さな超常磁性酸化鉄ナノ粒子(USPION)(コア直径が10nm未満、例えば、6~8nm、Rhが20~30nm)を使用した、他者によるいくつかの最近の研究が存在し、MRIを用いた感度89%~98%の感度が示されている。USPIONは、T1およびT2のMRI画像の両方を増強し、一方、より大きなナノ粒子(10nmより大きいコア直径)は、T2のMRI画像のみを増強する。
【0263】
本発明に係るコーティングされたナノ粒子、およびコーティングされたナノ粒子を含む組成物を、限定されないが、超音波、X線、光学画像診断、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、および磁気共鳴画像診断(MRI)を含むインビボでの画像診断技術と組み合わせて使用することができる。
【0264】
1つの用途において、コーティングされたナノ粒子は、被験体への組成物の注射時にコーティングされたナノ粒子を取り込み、保持する組織(例えば、リンパ節)の検出を可能にする、マンノースの標的化基、およびそれを含む組成物を含む。この手順を使用して、がんの特定の形態に冒されている可能性が最も高い組織を特定することができる。センチネルリンパ節は、がんを排出する仮想上の最初のリンパ節またはリンパ節の群である。センチネルリンパ節は、腫瘍からがん細胞が転移することによって最初に達する標的臓器であると仮定される。したがって、コーティングされたナノ粒子、およびコーティングされたナノ粒子を含む組成物を、センチネルリンパ節の検出のために使用することができ、特定の腫瘍のセンチネルリンパ節の特定、取り出し、および分析を含むセンチネル節手順の一部分として使用することができる。
【0265】
別の用途において、コーティングされたナノ粒子は、PSMA標的化基(例えば、抗体フラグメントまたは阻害剤)を含み、これらを含む組成物は、被験体への組成物の注射時にコーティングされたナノ粒子を取り込む、PSMAを過剰発現する組織(例えば、前立腺がん)の検出を可能にする。この手順を使用して、前立腺がんに冒されている組織を特定することができる。したがって、コーティングされたナノ粒子、およびコーティングされたナノ粒子を含む組成物を、患者における前立腺がんの検出に使用することができ、前立腺がん細胞を切除するための病巣療法の一部分として、手術中に、全ての前立腺がん病変が、前立腺摘除術などの手術手順の一部として除去されるかどうかを評価するために、また、手術もしくは放射線療法のいずれかの計画のためにリンパ節において前立腺がんを検出するために、使用することができる。
【0266】
(実施例)
実施例1:ポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)を使用した、酸化鉄ナノ粒子水溶液の調製
【0267】
第a部)有機溶液中の磁性粒子の調製
【0268】
Fe(オレエート)(3.6g)、オレイン酸(0.64mL)およびオクタデセン(25mL)を、3口丸底フラスコ中で合わせ、高減圧下、120℃で2時間撹拌した。この反応フラスコを、流れる窒素気体に開放し、320℃まで加熱した。1時間後、反応物を150℃まで冷却し、空気に開放した。反応物を空気中、120℃で18時間撹拌した。溶液を250mL丸底フラスコに移し、Fe(オレエート)(14.0g)およびオレイルアミン(100mL)を反応物に加えた。混合物を120℃で2時間排気し、次いで、流れる窒素気体に開放した。混合物を320℃まで加熱し、その温度に1時間保持した。このフラスコを150℃まで冷却し、空気に開放した。混合物を空気中、120℃で24時間撹拌した。粒子を、トルエンを用いて1:1に希釈し、遠心分離処理によって集めた。
【0269】
第b部)ポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)の合成
【0270】
2-(((ブチルチオ)カルボノチオイル)-チオ)-プロパン酸(0.5g)、アクリルアミド(10.4g)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.050g)、ジオキサン(20g)および水(30g)を合わせ、窒素気体で脱気した。混合物を3時間かけて70℃まで加熱する。[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸および4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を、この反応混合物に加え、混合物を窒素気体で脱気した。混合物を4時間かけて70℃まで加熱した。混合物を、アセトン200mLに加えることによって、ポリマーを沈殿させた。固形分を濾過によって集め、アセトンで3回洗浄する。粗ポリマーを、水に溶解し、アセトンで沈殿させた後、濾過し、アセトンによって洗浄することによって精製する。固体を高減圧オーブン中、40℃で24時間乾燥させる。
【0271】
第c部)水への酸化鉄ナノ粒子の移動および安定化
【0272】
粒子を、超音波をかけつつ、テトラヒドロフランに分散させ、磁気的に分離した。この粒子を、超音波をかけつつ、1M塩酸に2分間かけて分散させた。粒子を、磁気分離によって集め、エタノールおよびアセトンで洗浄し、1:1の水:エタノール混合物に分散させた。ポリマーを水に分散させ、水酸化ナトリウムを用いてpH5に調整した。溶液を1分間超音波処理し、次いで、水酸化ナトリウムを用いてpHを7.4に調整した。溶液を一晩撹拌した。粒子を遠心分離処理によって集め、テトラヒドロフランに分散させ、磁気的に分離した後、アセトンで洗浄し、乾燥させることによって精製した。粒子を水に懸濁させ、凝集物を遠心分離処理によって除去した。
【0273】
実施例2:ポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-マンノースおよびポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-ブロック(ポリエチレングリコール)を使用した、酸化鉄ナノ粒子水溶液の調製
【0274】
第a部)マグヘマイト粒子の合成方法
【0275】
マグネタイト粒子を、Massart法(アルカリ性媒体および酸性媒体における水性磁性液体の調製。IEEE Transaction on Magnetics,1981.MAG-17(2):p.1247-1248)に従って調製した。典型的な反応では、FeCl・6HO(0.432g)を塩酸(1M、0.8mL)に溶解し、FeSO・7HO(0.232g)を、別個に塩酸(1M、0.4mL)に溶解した。この2つの溶液を混合し、10mLのHOで希釈した。溶液を撹拌し、1.5mLのアンモニア溶液(28%重量/重量)を、1時間かけてゆっくりと加えた。反応物の色が橙色から黒色へと変化し、沈殿が生成した。撹拌をさらに1時間続け、次いで、沈殿を沈降させ、液体をデカンテーションした。粒子を水で2回洗浄した。粒子を、Fe(NO・9HO(0.302g)の硝酸(1M、5.0mL)溶液に分散させ、90℃で1時間加熱しながら撹拌することによって、マグネタイトをマグヘマイトへと酸化した。溶液は、黒色から、マグヘマイトの形成を示す橙色/褐色へと変化した。粒子を沈降させ、液体をデカンテーションした。粒子溶液を水で2回洗浄し、次いで、5mLの水を用いた音波処理によって分散させた。
【0276】
第b部)ポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-ブロック(ポリエチレングリコール)の合成
【0277】
アクリルアミド(7.3g)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.050g)、メトキシポリエチレングリコール修飾された2-{[ブチルスルファニル)カボノチオイル]スルファニル}プロパン酸(2.0g)、ジオキサン(15g)および水(30g)の溶液を、丸底フラスコ中で調製する。溶液を磁気的に撹拌し、窒素気体を15分間パージした後、3時間かけて70℃まで加熱する。混合物を冷却させ、次いで、空気に開放し、[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸(2.0g)および4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.050g)を反応混合物に加えた。反応物を磁気的に撹拌し、窒素気体を15分間パージした後、4時間かけて70℃まで加熱した。反応混合物を冷却し、コニカルフラスコ中、混合物を200mLのアセトンにゆっくりと加えることによって、ポリマーを沈殿させた。高減圧濾過によって固体を集め、アセトンで3回洗浄した。粗ポリマーを、水に溶解し、アセトンにゆっくりと加えることによって沈殿させることによって精製した。精製されたポリマーを、高減圧濾過によって集め、アセトンで洗浄した。固体を高減圧オーブン中、40℃で24時間乾燥させた。
【0278】
第c部)ポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-マンノースの合成
【0279】
実施例1bからのポリアクリルアミドポリマー(1.0g)を、アミノフェニルマンノース(0.050g)、MES水和物(0.98g)および水(40mL)と合わせ、撹拌して溶解させた。EDC・HCl(0.16g)およびNaOH(1M、0.1mL)を加え、反応混合物を20時間撹拌する。ポリマーを、3kDa分子量カットオフを有する遠心分離フィルターを使用して精製し、保持された部分を10mLの水で3回洗浄する。生成物を集め、凍結乾燥させる。
【0280】
第d部)ポリマーの混合物を使用した粒子安定化
【0281】
2.0gのポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-ブロック(ポリエチレングリコール)および1.0gのポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-マンノースを50mLの水に溶解し、音波処理する。NaOH(0.1M)を用い、pHを4に調整する。Massart法(5重量%固形分、100g)に従ったSPION懸濁液を、ポリマー溶液に加える。10分後、NaOH(0.1M)を用いてpHを5.5に調整し、音波処理を行った。30分後、NaOH(0.1M)を用いてpHを7.0に調整する。音波処理を合計で1時間続けた。懸濁液を透析によって精製し、生理食塩水で希釈して、20mg Fe/mLの等張性溶液を得る。
【0282】
実施例3:PEGphosでコーティングされた鉄-コア粒子
【0283】
第a部)鉄コア酸化鉄シェル粒子の合成
【0284】
[Fe(C)(C)](0.6g)をガラスサンプルバイアルに計量し、窒素で脱気する。オレイルアミン(3.0mL)およびパラフィン(8.0mL)を窒素で脱気し、バイアルに加える。完全に溶解するまで、混合物を撹拌する。窒素下、溶液をガラス加圧容器に移す。このガラス加圧容器に2barの水素気体を投入し、110℃にあらかじめ加熱しておいたオーブン中に配置する。40時間後、温度を0.1℃/分の速度で130℃まで上昇させ、この温度で24時間保持する。オーブンから瓶を取り出し、冷却させ、空気に開放する。トルエンを加え、混合物を、溶解するまで50℃で音波処理する。混合物を、4000rpmで20分間遠心分離処理することによって精製し、固体を0.5:20のオレイルアミン:トルエンに分散する。
【0285】
第b部)メトキシ-ポリ(エチレングリコール)-ホスフェートを有するコーティングされた粒子
【0286】
第a部)からの粒子溶液を、4000rpmで20分間遠心分離処理することによって精製する。上澄みを除去し、ペレットを空気流下で乾燥させる。粒子を、20mg/mLで別個にジクロロメタンに分散させ、mPEG-ホスフェート(Mw=5000)をジクロロメタン中、40mg/mLで分散する。溶解したら、粒子溶液をポリマー溶液に加え、サンプルを、ボルテックスシェーカー中、20分間混合した。等しい体積のトロメタミン緩衝液(pH9.0、120g/L)を加え、溶液を分液漏斗に移した。同じ体積のヘキサンを溶液に加え、溶液を混合し、粒子を水層に移す。同じ体積のトロメタミン緩衝液(pH8.0、1.2g/L)を溶液に加えた。溶液を混合し、分離させる。水層を集め、ヘキサンで2回洗浄した。残留ヘキサンをエバポレーションによって除去し、溶液を、10kDa Mw遠心分離フィルターを使用して精製し、トロメタミン緩衝液(pH8.0、1.2g/L)で2回洗浄する。最終濃縮物を、トロメタミン緩衝液(pH7.5、0.6g/L)で分散させる。
【0287】
実施例4:蛍光性タグでコーティングされた標的化磁性粒子の合成
【0288】
第a部)蛍光性ポリマーの合成
【0289】
実施例1b)からのポリマー(0.5g)を、ICGアミン(0.076g)、MES水和物(0.49g)および水(20mL)と合わせ、撹拌して溶解させる。EDC・HCl(0.08g)およびNaOH(1M、0.05mL)を加え、反応混合物を20時間撹拌する。ポリマーを、3kDa分子量カットオフを有する遠心分離フィルターを使用して精製し、保持された部分を10mLの水で3回洗浄した。生成物を集め、凍結乾燥させる。
【0290】
第b部)磁性粒子のコーティングおよび生理食塩水溶液への移動
【0291】
PEGポリマー(1.42g)、マンノースポリアクリルアミドポリマー(1.0g)およびポリアクリルアミドICGポリマー(0.72g)を50mLの水に溶解し、音波処理する。NaOH(0.1M)を用い、pHを4に調整する。Massart法(5重量%固形分、100g)に従ったSPION懸濁液をポリマー溶液に加える。10分後、NaOH(0.1M)を用いてpHを5.5に調整する。30分後、NaOH(0.1M)を用いてpHを7.0に調整する。音波処理を合計で1時間続ける。懸濁液を透析によって精製し、生理食塩水で希釈して、等張性溶液を得る。
【0292】
実施例5:取り込み率を制御するための、様々な粒径を有する磁性トレーサーの合成
【0293】
第a部)小さな磁性粒子の合成
【0294】
マグヘマイト粒子を、共沈殿法を使用して生成した。典型的な反応では、FeCl・6HO(0.22g)を水(6.0mL)に溶解した。FeSO・7HO(0.12g)を水(6.0mL)に別個に溶解した。この2つの溶液を混合し、20μLの塩酸(37重量/重量%)を加えた。溶液を撹拌し、0.75mLのアンモニア溶液(28重量/重量%)を迅速に加えた。溶液を、20%の出力で超音波プローブを使用して18分間混合した。溶液を沈降させ、上澄みをデカンテーションした。沈殿を水で2回洗浄した。粒子を、Fe(NO・9HO(0.850g)の硝酸(1M、6.0mL)溶液に分散させ、1時間かけて90℃まで加熱しながら撹拌することによって、マグネタイトをマグヘマイトへと酸化した。粒子を沈降させ、液体をデカンテーションした。粒子溶液を水で2回洗浄し、次いで、4mLの水を用いた音波処理によって分散させた。粒子を透過型電子顕微鏡によって分析し、9.35±2.2nmの平均直径を有することがわかった。
【0295】
第b部)ポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-ブロック(ポリエチレングリコール)およびポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-マンノースの混合物を用いた粒子安定化
【0296】
40.0mgのポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-ブロック(ポリエチレングリコール)および20.0mgのポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)-マンノースを、1mLの水に溶解し、音波処理する。NaOH(0.1M)を用いてpHを4に調整する。実施例5aに従ったSPION懸濁液をポリマー溶液に加え、10分間超音波処理した。NaOH(0.1M)を用いてpHを6に調整した。さらなる10分間の超音波処理の後、NaOH(0.1M)を用いてpHを7.0に調整した。音波処理を合計で30分間続けた。懸濁液を遠心分離濾過によって精製し、生理食塩水で希釈して、20mg Fe/mLの等張性溶液を得た。透過型電子顕微鏡によって分析し、粒子が20.0±5.2nmの平均直径を有することがわかった。動的光散乱による分析によって、89.8nmの流体力学的直径を得た。
【0297】
第c部)2つのサイズの粒子を合わせる
【0298】
実施例5b)からの非常に小さな酸化鉄粒子を、実施例2d)からの酸化鉄粒子と合わせた。2つの溶液を、同じ濃度になるまで希釈し、1:1の比率で混合した。得られた混合物を透過型電子顕微鏡によって分析し、13.26±6.7nmの平均粒子直径を有する二峰性分布を有することがわかった。動的光散乱による分析によって、95.7nmの流体力学的直径を得た。
【0299】
実施例6:ポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)を用いた磁性粒子のコーティング
【0300】
第a部)磁性粒子の合成
【0301】
Fe(オレエート)(2.8g)、オレイルアミン(3.1mL)およびドコサン(10mL)を、3口丸底フラスコ中で合わせ、高減圧下、50℃で15分間撹拌した。この反応フラスコを、流れる窒素気体に開放し、320℃まで加熱した。1時間後、反応物を室温まで自然に冷却させた。トリメチルアミン N-オキシド(3mg)を、1mLの粒子溶液と共に、トルエン(5mL)に加えた。溶液を90℃で18時間撹拌した。粒子を遠心分離によって集め、次いで、1:3のオレイン酸:トルエン(1mL)に再分散させた。
【0302】
第b部)コーティングのための粒子の調製
【0303】
酢酸緩衝液溶液(1mL)pH5.0を加え、溶液を40℃で1時間撹拌した。粒子を遠心分離によって集め、1mLのトルエンに分散させた。tert-ブタノール(0.7mL)、ポリビニルピロリドン(100mcLの40重量%水溶液)、炭酸カリウム(50mcL、5重量%水溶液の)および過マンガン酸カリウム/過ヨウ素酸ナトリウム溶液(0.4mL)の酸化溶液。酸化溶液をトルエン溶液に加え、30分間撹拌させる。溶液をトルエン(2mL)および水(2mL)で希釈し、有機層を除去する。水層をヘキサンで洗浄し、次いで、遠心分離フィルター(50kDa)に移し、水で2回洗浄する。
【0304】
第c部)水への磁性粒子の移動
【0305】
第1b部)からのポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック-ポリ(アクリルアミド)を水に溶解し、2重量%溶液を得た。水酸化ナトリウムを用い、pHを5.0に調整した。第b部からのナノ粒子溶液を1mLになるまで希釈し、撹拌したポリマー溶液に加えた。溶液を1時間撹拌し、次いで、水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7.0に調整した後、20時間撹拌した。粒子を遠心分離濾過(50kDa)によって精製し、等張性リン酸化緩衝生理食塩水で希釈し、リン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄した。
【0306】
実施例7:様々なポリマーを有するトレーサーの安定性試験
【0307】
水、リン酸緩衝生理食塩水または生理食塩水に分散させ、15~30分間で120℃まで加熱することによって、3つの異なるトレーサーの安定性を試験した。2つのサンプルを、(i)実施例3に従ったmPEG-ホスホネート、または(ii)5個のホスホネート固定基のいずれかであり、45個のポリエチレングリコールモノマー単位を有する単一のポリマーを用いて試験した。実施例2に従った安定化ポリマーおよび標的化ポリマーの混合物を使用して、1つのサンプル(iii)を試験した。トレーサー(i)および(ii)は、ナノ粒子の全てが容器の底に沈殿し、その上に透明な溶液を有する、凝集を示した。トレーサー(iii)は、視覚的な凝集の徴候なく、十分に分散したままであった。トレーサー(iii)に対する動的光散乱測定は、流体力学的直径の増加を示さなかった。
【0308】
実施例8:受容体への標的化基の結合
【0309】
マンノース受容体に対する種々のトレーサー上の標的化基の結合を、ConAドットブロットアッセイを使用して試験した。15個のアクリルアミドモノマー単位および3個のポリエチレングリコール単位、50個のアクリルアミド単位および3個のポリエチレングリコール単位、ならびに50個のアクリルアミド単位および16個のポリエチレングリコール単位を有する安定化ポリマーを使用し、実施例3に従って粒子を合成した。全ての場合に、70個のアクリルアミド単位を有する同じ標的化ポリマーを使用した。粒子を、30%の標的化ポリマーおよび70%の安定化ポリマーを有するポリマーを用いてコーティングした。マンノース受容体結合を、ConAドットブロットアッセイを使用して、リン酸緩衝生理食塩水中の粒子溶液、または10%血清と混合した粒子溶液を使用して試験した。血清が存在しない状態で、トレーサーは全て、ConAタンパク質への顕著な結合を示した。血清存在下では、安定化ポリマーの長さが最も短い場合に、最大結合を含む変動する結合が観察され、安定化ポリマーが最も長い場合に、最小の結合が観察された。
【0310】
実施例9:センチネルリンパ節特定のためのトレーサーを使用した動物試験
【0311】
第a部)ブタにおけるセンチネルリンパ節のためのMRIトレーサーとしての磁性ナノ粒子溶液の試験
【0312】
Large Whiteブタへの注射によるセンチネルリンパ節特定に使用するために、磁性ナノ粒子トレーサーの生理食塩水溶液を試験した。MRIスキャンを、Siemens 3.0 T MRIを使用して得た。1回の中心部注射と、中心部位の周囲に分布した4回の四分儀注射の20mg Fe/mL磁性ナノ粒子溶液0.2mLの5回の注射を、舌に注射した。ひづめから12cmの後肢への注射も、同様の5回の注射パターンで行った。直後の5分間と、その後の1時間ごとに2分間、注射部位にマッサージを行った。MRIスキャンを、注射から30分後および5時間後に繰り返した。センチネルリンパ節を、両方のスキャンにおいて特定した。
【0313】
第b部)ブタにおいてセンチネルリンパ節への磁性トレーサー溶液の取り込みおよび検出
【0314】
磁性ナノ粒子をLarge Whiteブタの後肢に注射した。第d部)からの0.5mLのナノ粒子溶液を、ひづめから12cmの四分儀に注射し、直後の5分間と、その後の1時間ごとに2分間、注射部位にマッサージを行った。MRIスキャンを、30分後にSiemens 3.0 T MRIを使用して得た。第2の動物において、同じ注射を行い、スキャンを、30分後および5時間後に得た。両方の動物のセンチネルリンパ節を切除し、節への取り込みを、占有権を有する磁気検出器を使用して測定した。
【0315】
第c部)ウサギにおけるセンチネルリンパ節への磁気トレーサー溶液の取り込みおよび検出、ならびに注射部位からのクリアランス
【0316】
磁性ナノ粒子を、New Zealand White非近交ウサギを用いて試験することによって、リンパ節への取り込み、および注射部位からのクリアランスについて試験した。6mg Fe/mL磁性ナノ粒子溶液0.1mLの5回の注射を、中心点の周囲に分布した舌に注射した。動物のMRIスキャンを、注射前および手術前に獲得した。2時間後または24時間後に手術を行い、占有権を有する磁気検出器を使用してセンチネルリンパ節への取り込みおよび注射部位からのクリアランスを測定した。
【0317】
結果
【0318】
実施例に従って調製され、コーティング組成物中にマンノースを含有する磁性ナノ粒子(本明細書で以下「マンノース粒子」)が、用量(Feのmg数)について補正された場合に、シエンナ+(登録商標)(すなわち、Sysmex Europe GmbHから市販の超常磁性酸化鉄粒子)を上回ることが観察された。
【0319】
マンノース粒子が、第2のエシェロン節へと流れないが、シエンナ+(登録商標)およびマンノースを含まない粒子は流れることも観察された。
【0320】
体積が大きな方がシグナルが低下するため、より高い濃度のトレーサー組成物が、よりよく機能し、したがって、より高濃度で安定な粒子(例えば、本開示で記載されるもの)が有益であることも観察された。
【0321】
トレーサー性能の比較
【0322】
比較試験において、以下のトレーサー組成物を評価した。
・シエンナ+(登録商標)ナノ粒子、および
・本開示に従って調製されたマンノース粒子。
【0323】
この試験は、各部位について、SLN取り込み、第2のエシェロン節へのフロースルー、および平均での注射部位シグナルであった。平均は、一般的な「SLNと注射部位」の比較についても調べた。結果を、注射用量(Feの質量)に対してノーマライズした。
【0324】
結果
【0325】
マンノース粒子が、より下側のエシェロン節に流れないことが観察された。
【0326】
節におけるプローブシグナル
【0327】
ある範囲の部位についての平均シグナルを比較し、全ての値を、濃度(プローブシグナル/mg Feでの合計注射用量)に対してノーマライズした。
【0328】
結果
【0329】
結果を図13に示す。
【0330】
節におけるプローブシグナル-平均シグナル
【0331】
次いで、データを、SLNおよび注射部位(2つの重要な測定基準)からの平均シグナルへと単純化した。結果を図14に示す。
【0332】
平均で、マンノースからのSLNシグナルは最良であった。
【0333】
シエンナ+(登録商標)およびマンノース粒子のクリアランス
【0334】
シエンナ+(登録商標)およびマンノース粒子を使用して、ウサギにおいて2.5~24時間にわたって、クリアランス試験を行った。
【0335】
また、シエンナ+(登録商標)およびマンノース粒子を使用して、ブタにおいて1~6時間にわたって、クリアランス試験を行った。
【0336】
注射部位および節のプローブシグナル(注射したFe用量に対してノーマライズされた)を比較し、これらの期間にわたる、およそのクリアランス/取り込み率を観察した。
【0337】
結果
【0338】
シエンナ+(登録商標)は、迅速に排泄され始めたが、短時間の後に平坦化する。マンノース粒子は、一定速度で節へと排泄される。
【0339】
長期間クリアランス(ウサギデータ)
【0340】
シエンナ+(登録商標)およびマンノース粒子を使用して、ウサギからの舌注射部位シグナルを、経時的に測定した(図15)。
【0341】
結果
【0342】
シエンナ+(登録商標)は、短い期間(2.5時間)での迅速なクリアランスを示し、24時間のウィンドウにわたって、よりゆっくりとしたクリアランス速度を示した(直線の傾き)。マンノース粒子は、24時間にわたって、一定のクリアランス速度を有する。
【0343】
長期間SLN取り込み(ウサギデータ)
【0344】
シエンナ+(登録商標)およびマンノース粒子を使用して、ウサギからの頭部SLNシグナルを、経時的に測定した(図16)。
【0345】
結果
【0346】
シエンナ+(登録商標)は、初期の迅速な取り込み(2.5時間)を示したが、経時的にゆっくりとした傾きを示した。マンノース粒子は、増加する傾きを示し、このことは、単位時間当たりのセンチネル節へのより迅速な取り込みを示している。
【0347】
短期間SLN取り込み(ブタデータ)
【0348】
ブタの肢SLNにおける0.5mLのシエンナ+(登録商標)およびマンノース粒子についての1~6時間の取り込みシグナルを比較した(図17)。
【0349】
結果
【0350】
再び、シエンナ+(登録商標)は、注射後により迅速な初期取り込みを有しているが、迅速に平坦化し、2時間後にほとんど変化を示さない。マンノース粒子の取り込みは、経時的に一貫して増加し、このことは、注射部位からの信頼性高いクリアランスを示している。
【0351】
シエンナ+(登録商標)およびマンノースの投薬量
【0352】
完全なプローブシグナルを、鉄含有量の質量を変化させるにつれて、観察した(ノーマライズされていない)。鉄質量に対してノーマライズされたシグナルも、トレーサーの体積が増加するにつれて、観察された。
【0353】
結果
【0354】
注射した鉄質量を増加させると、両方のトレーサーについて同様の速度でシグナルが増加した。注射した用量の体積を増加させると、シグナルが低下した。したがって、少ない体積を必要とする、より高い濃度で安定なトレーサーが望ましい。
【0355】
Feの質量を用いたプローブシグナル
【0356】
シエンナ+(登録商標)およびマンノース粒子について、完全なプローブシグナル(Fe質量についてノーマライズされていない)を、注射した投薬量を変化させるにつれて、観察した(図18)。
【0357】
結果
【0358】
シエンナ+(登録商標)およびマンノース粒子は、両方とも、より低い用量(30mg未満)で顕著に同様であった。2mLの量(24mgのマンノース粒子に対する、58mgのシエンナ+(登録商標))は、各トレーサーについて、最も高い生シグナルを与えた。最高用量(3mL)について、観察されたシグナルの低下は、組織損傷に起因するものであろう。より低い体積の注射を可能にする、より高い濃度が望ましく、例えば、本開示によって実行可能となる濃度が望ましい。
【0359】
用量体積を用いたプローブシグナル
【0360】
次いで、注射したFeの質量について、データをノーマライズし、SLNシグナルが体積に伴ってどのように変化するかをみた(図19)。
【0361】
結果
【0362】
シエンナ+(登録商標)およびマンノース粒子SLNシグナルは両方とも、注射した体積が増加するにつれて、低下する。この効果は、シエンナ+(登録商標)において、より明らかであった。このデータに基づき、より高い濃度、より低い体積が好ましい。
【0363】
実施例10:PSMAポリマー性標的化部分を含むポリマー組成物コーティングを有する磁性ナノ粒子
【0364】
10nmの平均コアサイズのオレイルアミンコーティングされたFe3O4ナノ粒子を、有機溶媒中の鉄(III)アセチルアセトネートの熱分解によって調製する。テトラヒドロフラン(THF)に分散したオレイルアミンコーティングされた粒子を、プローブ音波処理(1分、50%振幅)下、ポリマーのTHF溶液に滴下して加え、このポリマー溶液は、2:1の比率のポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック(ポリエチレングリコール)(Mn11、000)およびポリ[(モノアクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸-ブロック(ポリエチレングリコール)-Glu-urea-Lys(Mn11、000)からなっていた。10:1の比率のポリマー対ナノ粒子を使用する。表面リガンドの完全な交換を達成するために、溶液を50℃まで加熱し、磁気撹拌しつつ、この温度で24時間維持する。完了したら、反応物を室温まで冷却し、過剰なヘキサンおよび遠心分離(5分、3500RPM)を使用して、サンプルを沈殿させる。サンプルを元々の体積のTHFに再懸濁させ、ヘキサン沈殿し、遠心分離処理し、上澄みを除去することによって、この工程を3回繰り返す。最後に、空気流を使用してサンプルを軽く乾燥させ、MilliQ水に再懸濁させる。過剰なポリマーを除去するために、100kDa Amicon超遠心分離フィルターを使用して(5分、3500RPM)MilliQ水でサンプルを3回洗浄する。生理学的緩衝液への移動のために、サンプルを1.8%NaClまたは2×PBSと1:1の体積比で混合し、0.9%のNaClまたはPBS中、安定なナノ粒子コロイド溶液を得る。
【0365】
生理学的緩衝液中のPSMA標的化基で官能基化したFe3O4ナノ粒子のコロイド安定性を、動的光散乱を使用して測定する。PSMA標的化基に対する標的化能を、ヒト前立腺がん細胞(LNCaP細胞株)において、インビトロで粒子取り込みを調べることによって評価する。PSMAを発現しない細胞株を、陰性対照として使用する。PSMAを発現する細胞株が、PSMA標的化基で官能基化したナノ粒子を優先的に取り込むことが注目された。
【0366】
次いで、同所性前立腺腫瘍を有するマウスおよび腫瘍を有しないマウスの両方の尾静脈に、4mg/kgの用量を使用して、粒子を注射した。24時間後、マウスを安楽死させ、前立腺を取り出し、獣医師が検査した。前立腺を、Prussianブルー染色を使用して染色し、ナノ粒子中の鉄を視覚化し、PSMA標的化ナノ粒子が、前立腺腫瘍に優先的に結合するかどうかを決定した。標的化基によって官能基化されたナノ粒子が、腫瘍の境界に取り込まれ、血管に沿ってある程度浸透することが注目された。対照マウスを用いると、明らかな染色はなかった。
【0367】
本開示が、記載される特定の用途への使用に制限されないことは当業者に理解されるだろう。本明細書に記載されるか、または示される特定の要素および/または特徴に関し、その好ましい実施形態で本開示が制限されない。本開示は、開示される1つ以上の実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲によって示され、定義される本開示の範囲から逸脱することなく、多くの再配置、変更および置き換えが可能であることが理解されるだろう。
【0368】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体で、その内容が他のものを必要としない限り、「含む(comprise)」および「含む(include)」という用語、ならびに例えば「含む(comprising)」および「含む(including)」といった変形語は、述べられている整数または整数の群を含むが、任意の他の整数または整数の群を除外しないことを暗示すると理解される。
【0369】
この明細書における任意の従来技術に対する言及は、このような従来技術が共通の一般的な知識の一部分を形成するというなんらかの示唆の形態の認容ではなく、そのように解釈すべきではない。
【0370】
以下の特許請求の範囲が、仮の請求項のみであり、可能な請求項の例として提供され、本出願に基づく任意の将来の特許出願において請求され得る範囲を限定することを意図していないことに留意されたい。本発明をさらに定義するか、または再定義するように、その後の日付での例の請求項から、整数を加えてもよく、または省いてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】