特開2018-39860IP Force 特許公報全文掲載

技術分野

近年、地球温暖化対策のため、二酸化炭素の排出を抑制する材料を使用することが求められている。このため、動植物や微生物により生合成される物質であって、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解されるカーボンニュートラルな環境循環型材料が注目されている。環境循環型材料を利用すれば、数十年サイクルで二酸化炭素の固定と排出を繰り返す二酸化炭素の循環サイクルを形成することができるため、地球温暖化の原因である二酸化炭素の増加を防止することができる。 環境循環型材料の一つとして、微生物由来のポリヒドロキシアルカノエート(本明細書においては以下「PHA」と略す)がある。PHAはヒドロキシアルカン酸を構成単位とする天然のポリエステルであり、好気性及び嫌気性のいずれの微生物によっても分解されるため、環境に優しいプラスチックである。また、耐水性やガスバリア性に優れていることから、機能性材料としても注目されている。さらには、糖や脂質等の食糧資源だけてなく、余剰の廃棄される有機物や非可食性の植物油からも微生物の発酵生産によって生合成されるため、可食性の天然資源と競合せず生産できるという利点も有している。また、供給炭素源や培養条件を調整することにより、様々な重合度や共重合体組成とすることができ、引張強度、融点、ガラス転移点、柔軟性等の諸物性を制御することも可能である。 PHAの中でも、構成単位として炭素数が6〜14個の3−ヒドロキシアルカン酸を構成単位とするPHAは、中鎖のPHA(以下「mcl-PHA」という)に分類されるものであり、寄託微生物シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)(FERM P-16953号)が属するシュードモナス属の微生物により効率よく生合成されることが知られている。 mcl−PHAは、融点が40〜70℃、ガラス転移点が−40〜−20℃の透明で軟質の樹脂であって、柔らかくて透明であるという特性を有している。このため、mcl−PHAは包装材料、食品用資材、建築・土木資材、農業・園芸資材、医療用資材、吸着・担体・ろ過材料等の幅広い分野に利用可能と考えられており、その成形技術の確立が望まれている。
一方、構成単位として炭素数が3〜5個の3−ヒドロキシアルカン酸を構成単位とするPHAは、短鎖のPHA(以下「scl-PHA」と略す)に分類されるものであり、融点が150℃以上となる。 mcl−PHAには、結晶化が非常に遅いという問題があり、このため、成形加工時に溶融状態からの固形化が遅くなって成形が困難となったり、固形化されたとしても成形金型からの離型スピード等が遅くなり、生産性が悪くなるという欠点があった。 従来、一般的なポリエステルの結晶化速度を改善する方法として、シリカ、タルク、クレー、アルミナ、マイカ、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、酸化スズインジウム、酸化アンチモンスズ、炭酸カルシウムおよびゼオライト等の無機化合物を核生成剤として添加する方法が開示されている(特許文献1)。また、特許文献2には、PHAの結晶性改善剤として、アミド、芳香族エステル、直鎖ジエステル、ウレタン、スルホン、酒石酸芳香族基を有するエステル誘導体、またはこれらの混合物が挙げられている。さらに、特許文献3には、エリトリトール、D−アラビトール、リビトール、キシリトール、ガラクチトール、D−マンニトール、L−マンニトール、myo−イノシトール、scyllo−イノシトール、マルチトール、及びラクチトールからなる群より選択される糖アルコール類がPHAの結晶性改善剤として開示されている。

要約特許出願時に添付された[要約書]

【課題】樹脂成分としてmcl−PHAを含み、結晶化速度が速く、成形加工性に優れたポリエステル樹脂組成物及びそれに用いる結晶核剤を提供する。
【解決手段】本発明のポリエステル樹脂組成物は、微生物由来のポリ3−ヒドロキシアルカン酸100重量部に対し、粉砕されたセルロース繊維が3重量部以上30重量部以下添加されている。前記ポリ3−ヒドロキシアルカン酸は、炭素数が6以上14以下の3−ヒドロキシアルカン酸の重合物であることが好ましい。前記粉砕されたセルロース繊維は、繊維幅が2μm以下であって、且つ、繊維長が80μm以下であることが好ましい。
【選択図】なし

発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明は、従来の実情に鑑みてなされたものであって、樹脂成分として微生物由来のポリ3−ヒドロキシアルカン酸を含み、結晶化速度が速く、成形加工性に優れたポリエステル樹脂組成物及びそれに用いる結晶核剤を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明者は、課題解決のために、ポリ3−ヒドロキシアルカン酸のための結晶核剤としてセルロース繊維を用いることにより、樹脂成分のみならず結晶核剤に至るまで、材料全てがカーボンニュートラルな環境循環型材料からなるポリエステル樹脂組成物とすることを考えた。そして、さらに鋭意研究を行った結果、セルロース繊維をそのまま用いるのではなく、粉砕することによって、透明性や生分解性をそれほど損なうことなく、・・・ 続きを知財ポータルサイト IP Force にログインして見る
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性を有するため、成形体とすることができる。また、本発明の樹脂組成物によって形成された成形体は、良好な耐水性、柔軟性、透明性、生分解性、生体適合性等を有しており、農業用材料、医療用材料等として好適に使用することができる。また、植物資源を原料とした微生物由来の樹脂であるため、地球温暖化の抑制に貢献できる素材として、従来の石油由来の樹脂に代替できる。

この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]

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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋

【図1】粉砕したセルロース繊維のFE-SEM写真である。

【図2】ベンゾイル化セルロース繊維の赤外吸収スペクトルである。

【図3】アセチル化セルロース繊維の赤外吸収スペクトルである。

【図4】実施例5〜7及び比較例2についてのDSCの測定結果を示すチャートである。

【図5】種苗シートの断面模式図である。

1…保持体(樹脂成形体)   2…紙シート   3…大豆の種子

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