特許5825653IP Force 特許公報全文掲載

技術分野

優れたフィラーとしての機能が注目されているものの、親水性の物質であることから、樹脂等への分散が難しく、現状では、その利用が促進されていない微細なセルロース繊維の広範な利用の実現を可能にする新たな技術に関し、具体的には、高分子分散剤を用いてセルロースに処理して、セルロースの樹脂分散性を高めた易分散性セルロース組成物の製造方法、これに用いる水系の分散処理剤の製造方法、易分散性セルロース組成物、これを用いたセルロース分散樹脂組成物を提供する技術

要約特許出願時に添付された[要約書]

ナノセルロースの表面改質等を行うことなく、簡便で効率的な方法で、水を主媒体とした系で、顔料等の微細な疎水性物質を分散させるために開発された高分子分散剤を、親水性の物質であるセルロースに処理し、樹脂等の疎水性物質中にセルロースを容易に分散させる技術の提供を目的とし、該目的を、樹脂親和性セグメントAと、セルロース吸着性セグメントBとを有するブロック共重合体構造を有する高分子分散剤を親水性有機溶剤溶液に溶解し、これに界面活性剤を添加し、その後に水を添加することで高分子分散剤を含有した水系の分散処理剤を作製し、得られた水系の分散処理剤を、含水状態又は乾燥状態のセルロースに添加して易分散性セルロース組成物を得る製造方法、これに用いる水系の分散処理剤の製造方法、易分散性セルロース組成物、これを用いたセルロース分散樹脂組成物によって解決する。

発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋

前記した従来例ではいずれも、分散剤として低分子化合物を用いてナノセルロースの分散性向上を試みている。これに対し、本発明者らは、顔料等の微細な疎水性物質を樹脂や、水系媒体中に分散させるために開発されてきた高分子分散剤を、簡便で、多量の有機溶剤を使用することがない環境にも配慮した方法で、親水性物質であるセルロースに適用することができれば、実用化に向けて非常に有用であるとの認識を持つに至った。ここで、セルロースの汎用樹脂への分散に、高分子分散剤を用いることができれば、以下に挙げるような技術的な利点があると考えられる。まず、モノマー設計により多種多様な構造の高分子設計が可能であるので、目的、用途に応じた分子設計が可能になる点である。すなわち、高分子分散剤として無数の構造の設計が可能なため、モノマー設計によって、分散させる樹脂の種類等に適合させた、より高性能の分散剤の合成が期待できる。高分子分散剤としては、オレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマーなど、様々な種類のものが使用できると考えられる。その中で、特にアクリル系ポリマーは、穏和な条件で重合が可能で比較的容易にポリマーを得ることができ、また、多種多様なアクリル系モノマーが存在するため、配合上無数の組成を選択し、目的、用途に応じた分子設計がし易いため、より有用であることが予想される。 更に、アクリル系ポリマーを高分子分散剤として用いる場合、その構造としてブロック共重合体構造とすることが、以下の理由から、有用であると考えられる。ブロック共重合体は、構成成分の異なる、2種類以上のポリマーセグメントが1本のポリマー鎖に含まれた構造であるため、モノマー組成を工夫することで、それぞれのポリマーセグメントに異なる機能性を付与できるという利点がある。例えば、異なるモノマー組成(成分)からなるA鎖とB鎖からなるA−B型ブロック共重合体を例にとれば、ポリマーセグメントA(A鎖)として汎用性樹脂と親和性の高い成分を有するものとし、一方で、ポリマーセグメントB(B鎖)としてセルロースと吸着性の高い成分を有するものとなるようにブロック共重合体を設計できれば、分散剤として利用することで、A鎖とB鎖とがそれぞれ効果的に作用して、汎用性樹脂中におけるセルロースの凝集抑制、分散安定化が期待できると考えられる。すなわち、樹脂親和性セグメントA及びセルロース吸着性セグメントBを有するブロック共重合体をセルロース分散樹脂組成物の分散剤として用いた場合、セルロースの分散性が良好となり、フィラーとして機械的強度を十分に高めることが期待できる。 本発明者らは、高分子分散剤の機能を十分に発揮させるためには、高分子分散剤のセルロースへの処理方法が重要となると考えた。前記した技術にもあるように、高分子分散剤による分散は、セルロースの凝集塊の発生を抑えることが、良好な分散を達成するための前提条件となる。このため、良好な分散状態を達成したセルロース分散樹脂組成物を得るための前処理方法として、セルロースを凝集させることなく、如何にセルロースに高分子分散剤を処理するかが重要となる。具体的な方法として、例えば、水不溶性のアクリルポリマーを高分子分散剤としてセルロースに処理する場合は、水不溶のために高分子分散剤を有機溶剤に溶解させて、セルロースに添加する工程が必要になると考えられる。しかし、このような、水を含んだ状態のセルロースに、有機溶剤に溶解した高分子分散剤を添加した場合は、水の存在によって高分子分散剤が析出し、セルロースに効果的に作用しない恐れがある。一方、水ではなく、高分子分散剤を溶解させる有機溶剤を含んだ状態のセルロースに高分子分散剤を添加した場合は、析出させることなく高分子分散剤をセルロースに処理できるが、ろ過や乾燥などによって多量の有機溶剤を除去する必要が生じるという別の問題が生じる。また、この場合は、この点に加え、更に、セルロースは水酸基を多数有しており親水性が強いため、有機溶剤が含まれることによりセルロースが凝集し、十分なセルロースの分散状態が得られない恐れがある。そこで、使用する有機溶剤の量を少なくでき、水を主媒体とした系で、簡便で、効率的に高分子分散剤をセルロースに処理し、セルロースを樹脂に対して易分散性とできる方法の開発が待望される。 本発明は、前記の背景を鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術のように、ナノセルロースの表面改質や、ナノセルロースへの官能基導入といったことを行うことなく、従来、顔料等の微細な疎水性物質を分散させるために開発されてきた高分子分散剤による分散を、簡便な方法で親水性の物質であるセルロースに適用可能なものにし、多量の有機溶剤を使用せず、水を主媒体とした系で、簡便で効率的に高分子分散剤をセルロースに処理し、樹脂等の疎水性物質中にセルロースを容易に分散させることができる易分散性セルロース組成物を提供すること、更には、これによって有用なセルロース分散樹脂組成物の提供を可能にすることにある。

課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高分子分散剤を用いてセルロース分散樹脂組成物を得る際に必要となる、樹脂等の疎水性物質中にセルロースを容易に分散可能にした易分散性セルロース組成物を、多量の有機溶媒を用いることなく、極めて簡便な方法で得る方法を見出し、これによって、高分子分散剤を親水性の物質であるセルロースに適用可能にでき、セルロースの凝集塊の発生を抑えつつ、良好なセルロ・・・ 続きを知財ポータルサイト IP Force にログインして見る
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂中に良好な状態でセルロースが分散された状態のセルロース分散樹脂組成物を得るのに有用で、簡便な方法で、使用する有機溶剤の量を少なくでき、水を主媒体とした系で高分子分散剤をセルロースに処理することを可能にした、セルロース用の水系の分散処理剤、更に、易分散性セルロース組成物が提供される。より具体的には、界面活性剤を用いた簡便な方法で、セルロース用として有用な高分子分散剤を含む水系の分散処理剤を安定に作製することができる。この水系の分散処理剤は、セルロースが、含水状態又は乾燥状態のいずれであっても用いることができる有用なものである。すなわち、本発明によれば、従来、疎水性の顔料等に適用してきた高分子分散剤を、親水性の物質であるセルロースに処理する工程において、主成分の溶剤として水で実施することができ、有機溶剤によるセルロース凝集を抑制しながら高分子分散剤をセルロースに処理でき、簡便で効率的に、易分散性セルロース組成物の提供が可能になる。この結果、再生が可能な天然素材であり、優れたフィラーとしての機能が注目されているものの、親水性の物質であることから、汎用樹脂である熱可塑性樹脂等への分散が難しく、現状では、その利用が促進されていない微細なセルロース繊維の広範な利用の実現が可能になる。

この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]

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