特許5975352IP Force 特許公報全文掲載

技術分野

癌幹細胞特異的プロモーターを備える組換アデノウイルスベクターに関する。特に、本発明は癌幹細胞で特異的に複製可能なアデノウイルスベクターに関する。また、本発明は、該ベクターを利用した癌幹細胞の同定方法、癌の診断方法及び治療方法に関する。本発明は、アデノウイルスベクターを有効成分として含有する癌の診断薬及び治療薬

発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋

癌幹細胞を標的とした効率的な治療方法等は未だ報告されていない。また、抗体等を用いた癌幹細胞を特異的に同定する方法においては、細胞表面への抗体の接触が求められることから、癌組織内部に存在する癌幹細胞を標識することができず、癌組織内部についても同定可能なより効果的な標識方法が求められていた。 よって、本発明は、新規でかつ効率的な癌幹細胞を標的とした癌の治療方法及び癌幹細胞の標識方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明者らは、癌幹細胞で特異的に活性が高く、治療目的や診断目的で利用可能なプロモーターについて鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことにCaCo−2細胞と比較してCD133の発現が同程度か低いにもかかわらず、癌幹細胞ではCD133のプロモーター活性が非常に強くそのままで十分治療及び診断目的に利用できることを見出した。また、本発明者らはCD133プロモーターを増殖型アデノウイルスベクター(以下・・・ 続きを知財ポータルサイト IP Force にログインして見る
【発明の効果】
本発明のウイルスベクターは癌幹細胞に特異的に、所望の遺伝子を発現することができる。また、本発明のウイルスベクターを癌幹細胞特異的なウイルス増殖を誘導する増殖型ウイルスとすることによって、腫瘍(癌幹細胞)溶解性の治療効果を獲得できる。更に、本発明のウイルスベクターに標識遺伝子あるいは治療遺伝子を搭載することによって、ウイルス感染後に癌幹細胞を可視化あるいは治療効果を誘導あるいは増強することができる。よって、本発明の腫瘍溶解性ウイルスベクターに標識遺伝子あるいは治療遺伝子を搭載することによって、治療抵抗性の原因となる癌幹細胞を標的としてウイルスの腫瘍溶解性効果あるいはまた治療遺伝子にて傷害を与えると同時に、癌幹細胞の存在を可視化することができる。このことから、癌幹細胞の存在を指標とした癌治療効果の評価に利用できる他、癌幹細胞を外科的に切除する際の指標とすることができる。また本発明のウイルスベクター自身によって癌幹細胞を標的して治療することができる。これまで、癌幹細胞を特異的に同定したり、あるいは癌幹細胞を特異的に治療する技術は、ウイルスベクターに限らず存在しない。よって癌幹細胞を選択的に同定することができる本発明のウイルスベクターによって、癌幹細胞に対する効果的な治療薬、治療技術を、効率よく開発することができる。また本発明のウイルスベクターによって、癌患者の診断時あるいは治療前に、浸潤・転移能が高い悪性化原因の癌幹細胞を癌患者の体内で描出・可視化・同定でき、癌幹細胞の割合や存在場所がわかれば、画期的な癌患者の予後判定法、治療部位や治療法に関する画期的な選択法などができることになる。また癌幹細胞は、抗癌剤や放射線という既存の治療法には抵抗性であり、治療後の癌幹細胞の残存が癌の再発に繋がり、患者さんの予後不良と致死性を決定する主要原因と考えられている。よって本発明のウイルスベクターを用い、治療後に癌患者さんの体内の癌幹細胞を体内で同定・可視化・検出することによって、癌の患者さんの治療法の有効性に関する画期的な評価技術、また治療後の癌再発へ対応できる画期的な診断・治療法の確立、また治療後の癌幹細胞の残存のモニターができることになる。よって癌幹細胞を選択的に診断・治療できる本発明のウイルスベクターは癌の悪性化の診断と悪性化の原因細胞を治療可能とすることで、のような癌患者への全く新しい診断、治療技術が多数産出し、癌の診断、治療が大きく向上することになる。よって、本発明のウイルスベクターは、様々な癌幹細胞を標的とした診断と治療に利用することができ、臨床における治療難治性の癌の根治と、再発予防を実現することができる。

この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]

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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋

【図1】ヒト神経癌幹細胞(human glioblastoma stem cells:以下同じ)X01GBSにおけるネスチン、ビメンチン、CD133、及びβIIIチューブリン(Tuj1)の発現を細胞免疫染色により確認した結果を示す。図中の各写真において、左上はDAPIを示す青色色素を示し、右上はそれぞれネスチン、ビメンチン、CD133、及びβIIIチューブリンの存在を示す緑色色素を示す。また、左下は顕微鏡観察写真を示し、右下は他の3枚の写真の全てを合成した写真を示す。

【図2】ヒト神経癌幹細胞X01GBS、大腸癌細胞(Caco−2)及びヒトiPS細胞におけるCD133の発現をウエスタンブロッティングにより確認した結果を示す。「120kDa CD133」はCD133を示し、「42kDa β−actin」はコントロールとしてのβ−アクチンを示す。

【図3】ヒト神経癌幹細胞X01GBSにおけるCD133(+)細胞含量をフローサイトメトリにより測定した結果を示す。左図はフローサイトメトリに流す全細胞集団を示し、同図において、横軸(FS Lin)は、前方散乱光(Forward Scatter:FS)で細胞の大きさを反映し、縦軸(SS Lin)は側方散乱光(Side Scatter:SS)で細胞の形態や核、顆粒などの細胞内部構造を反映する。また、左図中の数値(%)は、R1で示す楕円中細胞集団に含まれる細胞数の全細胞数に対する割合を示す。また、右図はR1細胞集団にCD133(+)細胞含量を示す。同図において、横軸(PE Log)はCD133(+)細胞含量を示し、縦軸(FITC Log)は、特に意味なし。右図中の数値(CD133(+) 20.18%)は、R1細胞集団にCD133(+)細胞の割合を示す。

【図4】CD133陰性の細胞である正常細胞のWI−38(線維芽細胞)、CD133発現の陽性細胞株であるCaco−2(大腸がん)、X01GBS、X01GBDにおけるCD133の発現をフローサイトメトリで測定した結果を示す。上段は、陰性コントロールとしてIgG抗体を用いた結果を示し、下段は抗CD133抗体を用いた結果を示す。縦軸(Side Scatter)は、側方散乱光によるデータを示し、細胞の形態や核、顆粒などの細胞内部構造を反映するものである。図中の数値(%)は、四角で囲まれた細胞集団に含まれる細胞数の全細胞数に対する割合を示す。

【図5】CD133陰性の細胞である正常細胞のWI−38(線維芽細胞)、CD133発現の陽性細胞株であるCaco−2(大腸がん)、X01GBS、X01GBDにおけるCD133のmRNAの発現レベルを示す。写真は、RT−PCR法を行った後に電気泳動の結果を示し、グラフは定量的RT−PCRの結果を示す。「HPRT」は、コントロール遺伝子として用いたハウスキーピング遺伝子HPRTを示す。グラフの縦軸は、HPRTのmRNAの発現量に対するCD133のmRNAの発現量の比を示す。

【図6】ヒト神経癌幹細胞の濃縮分画であるX01GBS細胞からセルソーターにてCD133発現の陽性細胞と陰性細胞を分取し、それぞれの分画においてCD133 mRNA発現レベルを、RT−PCRならびに定量的RT−PCR法で調べた結果を示す。左上図は、セルソーターでの分取したそれぞれの分画を示す。「CD133(−)」はCD133発現陰性細胞の分画を示し、「CD133(+)」はCD133発現陽性細胞の分画を示す。左下写真は、RT−PCR法を行った後に電気泳動の結果を示す。右下のグラフは定量的RT−PCRの結果を示す。「HPRT」は、コントロール遺伝子として用いたハウスキーピング遺伝子HPRTを示す。グラフの縦軸は、HPRTのmRNAの発現量に対するCD133のmRNAの発現量の比を示す。

【図7】CD133の各プロモーターの活性を測定するためのレポータアッセイ用アデノウイルスベクターの概略図と名称を示す。CD133の各プロモーターの下流にLacZを連結し、E1領域欠損する(ΔE1)アデノウイルスベクター(pAdHM4)に組み込んだ。

【図8】ヒト神経癌幹細胞X01GBSにおける、CD133の各プロモーターの活性を示す。図中の縦軸はβ−ガラクトシダーゼ活性(プロモータ活性)を示し、横軸は、LacZの発現に使用した各プロモーターを組み込んだアデノウイルスの種類を示す。横軸において、pr1、pr2、pr3、pr4及びpr5は、それぞれ順にCD133プロモーター1、プロモーター2、プロモーター3、プロモーター4、及びプロモーター5を示す(以下の図において同じ)。

【図9】ヒト神経癌幹細胞X01GBS細胞における、CD133の各プロモーターの活性を示す。図中の縦軸はβ−ガラクトシダーゼ活性(プロモータ活性)を示し、横軸は、LacZの発現に使用した各プロモーターを組み込んだアデノウイルスの種類を示す。

【図10】ヒト神経癌幹細胞から分化した癌細胞を濃縮した分画のX01GBD細胞における、CD133の各プロモーターの活性を示す。図中の縦軸はβ−ガラクトシダーゼ活性(プロモータ活性)を示し、横軸は、LacZの発現に使用した各プロモーターを組み込んだアデノウイルスの種類を示す。

【図11】ヒト神経癌幹細胞X01GBSにおけるCD133の各プロモーターと対照用非特異的RSVプロモーターの活性とCD133(+)細胞との相関をフローサイトメトリで確認した結果を示す。図中、横軸はLacZ活性(CD133各プロモーター活性)を、縦軸はPEで標識した抗CD133抗体でCD133(+)細胞を示す。図6に示す数値(%)は、右上の領域R7内に相関する細胞の割合を示す。

【図12】ヒト神経癌幹細胞X01GBS細胞におけるCD133の各プロモーター活性と対照用非特異的RSVプロモーターの活性を比較した図を示す。図中、横軸はLacZ活性(CD133プロモータ活性)を、縦軸は側方散乱光(Side Scatter:SS)を示す。図12に示す数値(%)は、四角で囲った領域に含まれるLacZ発現細胞の全細胞数に対する割合を示す。

【図13】ヒト神経癌幹細胞X01GBS細胞、及びヒト神経癌幹細胞から分化した癌細胞を濃縮した分画のX01GBD細胞におけるCD133の各プロモーター活性を比較した図を示す。図中、横軸はLacZ活性(CD133プロモータ活性)を、縦軸は側方散乱光(Side Scatter:SS)を示す。図13に示す数値(%)は、四角で囲った領域に含まれるLacZ発現細胞の全細胞数に対する割合を示す。

【図14】癌幹細胞に特異的増殖型アデノウイルスベクター(CD133反応性m−CRA「Ad.hCD133pr5−m−CRA」で表記、以下においても同じ)の構造を示す。図中、CD133pr1〜5は、CD133プロモーター1〜5のいずれかを意味する。

【図15】ヒト神経癌幹細胞X01GBS細胞におけるアデノウイルスの導入効率を示す。非増殖型アデノウイルスベクター(Ad.CA−EGFP)をX01GBS細胞へ感染してから24時間後の写真で示す。図中、上から順に「EGFP」はEGFPの発現を検出した写真を、「Phase」は顕微鏡写真を、「Merge」は先の2種類の写真を合成した写真でEGFPの細胞内発現を示す(図16においても同じ)。また、図の上部の数値は観察した倍率を示す。

【図16】ヒト神経癌幹細胞X01GBS細胞におけるhCD133pr5−m−CRAの細胞殺傷効果を細胞形態で示す。Ad.hCD133pr5−m−CRAをMOI 1でX01GBSに感染させ、感染から1,2,3,4及び5日後に200倍の顕微鏡で観察した結果を示す。図の上部の数値(Day)は感染からの経過日数を示す。図の下部の「CPE」は細胞変性効果(cytopathic effect)を示し、「Sphere」は細胞塊形成の程度を意味する。

【図17】ヒト神経癌幹細胞X01GBS細胞におけるAd.hCD133pr5−m−CRAの細胞殺傷効果を生存細胞数で示すグラフである。Ad.hCD133pr5−m−CRA、Ad.CA−EGFP及びAd.RSV−dE1.3をMOI 1、3、及び10でヒト神経癌幹細胞X01GBSに感染後、5日目に生存細胞数を測定した結果を示す。図中縦軸は非処理群と比較した場合の生細胞数の割合(%)を示し、横軸はウイルスの感染条件(MOI)を示す。

【図18】ヒト神経癌幹細胞X01GBS細胞、及びヒト神経癌幹細胞から分化した癌細胞を濃縮した分画のX01GBDにおけるAd.hCD133pr5−m−CRAの細胞殺傷効果を生存細胞数で示すグラフである。図中縦軸は非処理群と比較した場合の生細胞数の割合(%)を示し、横軸はウイルスの感染条件(MOI)を示す。

【図19】1×106と1×105のX01GBS細胞をNOD/SCID免疫不全マウスの4ヶ所に、1×106の分化X01GBD細胞をNOD/SCID免疫不全マウスの3ヶ所に皮下移植し、10週間後、肉眼的に認識できる腫瘍結節の形成の割合を評価した結果を示す。グラフの縦軸は腫瘍体積(mm3)を示し、横軸は移植した細胞の種類及び数を示す。3種類の写真は、いずれも1×106細胞(右)と1×105細胞(左)のX01GBS細胞を移植したNOD/SCID免疫不全マウスの結果を示す。下の写真は各マウスから採取された腫瘍塊である。

選択図 図1出願人が指定した本件の代表的な図

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