技術分野
蒸着材料を加熱して溶融、蒸発させその蒸発分子を基板表面に堆積させて薄膜を成長させるために使用される蒸着源坩堝
発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋
ところで、の図6に示すような従来の分子線源セルの坩堝3においては、前記坩堝3の外側に設置したヒーター5により坩堝3の内部を加熱するようにしているため、図6の二点鎖線で示す温度分布のように、前記ヒーター5に近い坩堝3内の周辺部分の蒸着材料は比較的短時間内に十分に昇温するのに対して前記ヒーター5から離れた坩堝3内の中央部分の蒸着材料はなかなか昇温しないなど、特に坩堝3内の周辺側と中心側との間で昇温ムラが生じてしまっていた。
そのため、特に有機物などの熱伝導率が低い非金属材料を蒸着させる場合などにおいて、また近年の大型の坩堝を使用する場合などにおいては、坩堝内の蒸着材料全体の温度が均等になるまでに長時間の待機時間が必要となり、その待機時間が律速となって薄膜形成装置の稼働率が低下してしまうという問題があった。また、の長い待機時間中に蒸着材料の一部が蒸発してしまい、蒸着材料の利用効率が低下してしまうという問題もあった。さらにまた、前述のような昇温ムラが生じた坩堝3内の高温部分の蒸着材料の中には材料劣化が原因と見られる蒸発速度の低下などが発生する場合があり基板上に形成された薄膜の品質低下という問題も生じていた。
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、ヒーターによる加熱時に坩堝内の蒸着材料に昇温ムラが生じることがないようにして、坩堝内の蒸着材料全体が均等に昇温するまでの待機時間を短縮化し、以って薄膜形成装置の稼働率を向上させ、蒸着材料の利用効率を向上させ、さらには基板上に形成される薄膜の品質低下を防止することができる蒸着源坩堝を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋
このような課題を解決するための本発明による蒸着源坩堝は、外側に配置されたヒーターからの熱により内部の蒸着材料を加熱するための蒸着源坩堝であって、前記坩堝の内壁面の互いに対向する部分をそれぞれ繋ぐ複数の直線状の金属製の棒又は細線が平面視で互いに交差し且つ側面視でも互いに交差するように配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
本発明においては、一つ又は複数の金属(合金を含む)製の棒、細線又は帯状体を、坩堝の内壁面と坩堝内の水平方向における略中央部分とを繋ぐように配置するようにしたので、坩堝の外側からのヒーターの熱が、坩堝の内壁面に接触又は接合されている、熱伝導率の高い金属製の棒、細線又は帯状体により、坩堝内の内壁面側の蒸着材料だけでなく略中央部分側の蒸着材料にも効率的に伝えられ、坩堝内の蒸着材料の全体がムラなく均一に昇温されるようになるので、坩堝内の蒸着材料全体の温度が均等に昇温されるまでの待機時間が従来よりも大幅に削減される。よって、本発明によれば、坩堝内の蒸着材料全体の温度が均等に昇温されるまでの待機時間が大幅に短縮される結果、薄膜形成装置の稼働率を大幅に向上させることが可能になり、従来の長い待機時間中に蒸着材料が蒸発してしまうことを無くして蒸着材料の利用効率を向上させることができるようになり、さらに従来の長い待機時間中に坩堝内の高温に加熱された部分の蒸着材料に劣化が生じて基板上に形成される薄膜の品質低下が生じてしまうことも有効に防止できるようになる。
また、本発明において、複数の金属製の棒、細線又は帯状体を、坩堝の内壁面の互いに対向する部分をそれぞれ繋ぐように、平面視で互いに交差するように、且つ上下方向の高さが互いに異なるように配置するようにしたときは、坩堝内に複数の金属製の棒、細線又は帯状体を言わば略格子状又は略網の目状に張り巡らさせることができるので、ヒーターからの熱により坩堝内の蒸着材料全体を確実に昇温ムラなく均等に昇温させることが可能になる。
また、本発明において、前記一つ又は複数の金属製の棒、細線又は帯状体を、坩堝内の上下方向における略中央部分から底部までの領域においてのみ配置するようにしたときは、ほとんどの場合において蒸着材料が坩堝内に収容されるのは前記坩堝内の上下方向における略中央部分から底部までの領域内であることから、ほとんどの場合に坩堝内の蒸着材料の全体を均等に昇温させることが可能になると共に、坩堝内の上下方向における略中央部分から上方の放出口までの領域には金属製の棒、細線又は帯状体が配置されていないので、坩堝内の蒸着材料が加熱、蒸発されて蒸発分子が放出口の方向に移動するときに金属製の棒、細線又は帯状体がそのスムーズな移動を阻害することが無くなるという効果が得られる。
さらに、本発明において、前記金属製の棒、細線又は帯状体を坩堝の内壁面に対して例えば溶接などにより固定的に配置するときは、坩堝内で前記金属製の棒、細線又は帯状体が脱落するなどの心配がなく安定的に装置を作動させることができると共に内壁面からの熱を確実に坩堝内の全体に伝えることができる。他方、本発明において、前記金属製の棒、細線又は帯状体を坩堝の内壁面に対して着脱自在に配置するときは、前記金属製の棒、細線又は帯状体を容易に坩堝から取り外すことができるので坩堝のメンテナンスなどが極めて容易に行えるようになる。
この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]
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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋
【図1】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の一蒸着源坩堝の外観を示す側面図及び正面図である。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ図1の蒸着源坩堝の側断面図及び正面から見た断面図、(c)は図1の蒸着源坩堝の平面図である。
【図3】本実施形態の効果を確認するために本発明者が行った実験内容を説明するための図である。
【図4】本実施形態の効果を確認するために本発明者が行った実験結果を説明するための図である。
【図5】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の他の蒸着源坩堝を説明するための図である。
【図6】従来の真空チャンバ内において基板表面に薄膜を形成するための薄膜形成装置に使用される分子線源セルを示す断面図である。
11,21,31 坩堝
11a,21a,31a 内壁面
11b,21b,31b 底部
12,13,22,23,32,33 金属棒
14,24,34 放出口
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