特許6206322IP Force 特許公報全文掲載

技術分野

自動車用ラジエター等の熱交換器に用いられる、ろう付け性と耐サグ性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法に関するものである。

発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋

確かに、通常のDC鋳造スラブから通常の行程を経て製造されたアルミニウム合金製フィン材では、Fe含有量が0.5%を超えると、鋳造時に生成するAl−(Fe・Mn)−Si等の金属間化合物が比較的粗大になりやすく、ろう付け加熱時に形成する再結晶組織の結晶粒が細かくなるために耐エロージョン性が劣化して、ろう付け性が低下する傾向にある。しかしながら、近年では、アルミニウム製品のリサイクルによるスクラップ材の再利用が進んでおり、スクラップ配合率が高い場合には、Fe、Si、Mn等の混入を避けることが困難になりつつある。したがって、Fe、Si、Mn等の含有量が比較的高い組成においても、優れたろう付け性を発揮できるアルミニウム合金フィン材の開発が望まれている。 本願発明は、このような従来法における課題を解決するために案出されたものであり、熱交換器用のアルミニウム合金フィン材において、Fe含有量が0.5%以上の組成においても、低コストで、しかも優れたろう付け性と耐サグ性を有するアルミニウム合金フィン材およびその製造方法を提供することを目的とするものである。 例えば、固相線温度は、ろう付け加熱時にエロージョンを発生させるか否かの指標となり得るが、耐エロージョン性は、固相線温度のみによって決まるものではない。ろう付け性は、ろう付け前におけるフィン材の金属組織、すなわち、鋳造時に生成するAl−(Fe・Mn)−Si等の密度と粒径分布、マトリックスにおけるMn固溶量、冷延焼鈍材であれば、焼鈍による加工組織の回復の度合い等の因子にも影響される。すなわち、これらの因子が複雑に絡み合って、ろう付け性に影響を及ぼすと考えられる。
ところで、フィン材に残存する集積した転位(結晶欠陥)や、ろう付け加熱時に生成する結晶粒界には、溶融したろう材が浸透してエロージョンを発生させる。したがって、ろう付け時に生成する再結晶粒の結晶粒径は、大きい方が耐エロージョン性に優れたフィン材であるといえる。ところが一方で、ろう付け時に生成する再結晶粒の結晶粒径が大きくなりすぎると、耐サグ性が低下することもよく知られている。つまり、フィン材の耐エロージョン性と耐サグ性の両方の特性を向上させるためには、ろう付け時に再結晶組織を発現させることは勿論のこと、再結晶粒の結晶粒径を適度なサイズに制御する技術が必要となる。 このように、ろう付け時に生成する再結晶粒の結晶粒径を測定すれば、フィン材の耐エロージョン性について間接的に評価することが可能である。しかしながら、ろう付け加熱を想定したフィン材のみの加熱試験によって、金属組織を再結晶化させて再結晶粒の結晶粒径を測定する試験方法では、結果のバラツキが大きく再現性が良好ではない。
そこで、本発明者らは、ろう付け性と耐サグ性に優れたフィン材を開発する過程で、後述するように、コルゲート状のフィン材を用いて、ろう付け加熱試験を行い、ろう付け前の板厚に対するろう付け後の板厚(最小板厚)を測定して、板厚残存率を算出して、ろう付け性を評価することで、本願発明を完成させた。
なお、ろう付け性とは、広義には、例えば、溶融ろう材によるフィレットの形成状態なども含まれると解されるが、本明細書においては、特に断りのない限り、フィン材の耐エロージョン性と同義の取り扱いとする。

課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明のろう付け性と耐サグ性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材は、その目的を達成するために、質量%で、Si:0.6〜1.6%、Fe:0.5〜1.2%、Mn:1.2〜2.6%、Zn:0.4〜3.0%、Cu:0.2%未満を含み、残部不可避的不純物とAlからなり、不純物としてのMgを0.05%未満に限定し、ろう付け加熱前の抗張力が160〜260MPaであり、ろう付け加熱前の抗張力と0.2%・・・ 続きを知財ポータルサイト IP Force にログインして見る
【発明の効果】
本発明のろう付け性と耐サグ性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材は、前記成分組成を有するアルミニウム合金溶湯を、薄スラブ連続鋳造機を用いて厚み2〜15mmの薄スラブを連続的に鋳造するため、鋳造時の凝固速度がスラブ1/4厚み位置で40〜1000℃/秒と比較的速く、Al−(Fe・Mn)−Si等の金属間化合物が均一に分散された鋳塊組織が得られる。この薄スラブに対して冷間圧延、中間焼鈍、最終圧延、最終焼鈍をこの順に施すことで、ろう付け加熱前の抗張力が160〜260MPa、ろう付け加熱前の抗張力と0.2%耐力との差が10〜50MPaに調整されている。したがって、この冷延焼鈍材は、適度な強度を有するとともに、成形加工時のスプリングバック量が小さく、形状凍結性にも優れている。さらに、比較的低温で最終焼鈍処理を施して、最終冷延によって導入された加工歪を適度に回復させているため、ろう付け加熱によって再結晶化が完了して、粒径500μm以上の再結晶粒からなる再結晶組織とすることができ、ろう付け性と耐サグ性に優れたアルミニウム合金フィン材を得ることができる。
したがって、本発明により、熱交換器用アルミニウム合金フィン材が効率よく生産されるとともに、ろう付け性と耐サグ性に優れたアルミニウム合金フィン材が廉価で提供される。

この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]

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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋

【図1】ろう付け加熱試験後のフィン材の断面写真(ろう付け性良好な例)

【図2】ろう付け加熱試験後のフィン材の断面写真(ろう付け性不良な例)

選択図 図1出願人が指定した本件の代表的な図

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