技術分野
フレキシブルな高分子フィルムをリジッドな仮支持用無機基板に仮固定し積層体として、次いで高分子フィルム上に各種電子デバイスを形成した後に、高分子フィルムを電子デバイス部ごと剥離して、フレキシブル電子デバイスを得る製造技術に関する。
情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダー、高速情報処理装置等における電子部品として、半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子などの機能素子(デバイス)が用いられるが、これらは従来、ガラス、シリコンウエハ、セラミック基材等の無機基板上にて形成ないし搭載されるのが一般的であった。しかし、近年、電子部品の軽量化、小型・薄型化、フレキシビリティ化が求められるなか、高分子フィルム上に各種機能素子を形成する試みがなされている。
各種機能素子を高分子フィルム表面に形成するにあたっては、高分子フィルムの特性であるフレキシビリティを利用した、いわゆるロール・トゥ・ロールプロセスにて加工することが理想とされる。しかしながら、半導体産業、MEMS産業、ディスプレイ産業等の業界においては、これまでウエハベースまたはガラス基板ベース等のリジッドな平面基板を対象としたプロセス技術が主流であった。そこで、既存インフラを利用して各種機能素子を高分子フィルム表面に形成するために、高分子フィルムを無機物(ガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属板など)からなるリジッドな支持体に貼り合わせておき、所望の素子を形成した後に支持体から剥離するというプロセスが考案された。
一般に機能素子を形成する工程においては、比較的高温が用いられることが多い。例えば、ポリシリコンや酸化物半導体などの機能素子の形成においては200〜500℃程度の温度域が用いられる。低温ポリシリコン薄膜トランジスターの作製においては脱水素化のために450℃程度の加熱が必要になる場合がある。水素化アモルファスシリコン薄膜の作製においても200〜300℃程度の温度域が必要になる。ここに例示した温度域は、無機材料にとってはさほど高い温度ではないが、高分子フィルムや、一般に高分子フィルムの貼り合わせに利用される接着剤にとっては、相当に高い温度であると云わざるを得ない。先に述べた高分子フィルムを無機基板に貼り合わせ、機能素子形成後に剥離するという手法に於いて、用いられる高分子フィルムや貼り合わせに用いられる接着剤、粘着剤にも十分な耐熱性が求められる所以であるが、現実問題としてかかる高温域にて実用に耐える高分子フィルムは限られており、また、従来の貼り合わせ用接着剤、粘着剤に至っては十分な耐熱性を有したものがないのが現状であった。
高分子フィルムを無機基板に仮貼り付けする耐熱接着手段が得られないため、かかる用途においては、無機基板上に高分子フィルムの溶液、ないし前駆体溶液を塗布して無機基板上で乾燥・硬化させてフィルム化して当該用途に使用する技術が知られている。しかしながら、かかる手段により得られる高分子膜は、脆く裂けやすいため、無機基板から剥離する際に機能素子を破壊してしまう場合が多い。特に大面積のデバイスを剥離することは極めて難度が高く、およそ工業的に成り立つ歩留まりを得ることはできない。
本発明者らは、このような事情に鑑み、機能素子を形成するための高分子フィルムと支持体との積層体として、耐熱性に優れ強靭で薄膜化が可能なポリイミドフィルムを、カップリング剤を介して無機物からなる支持体(無機層)に貼り合わせてなる積層体を提案した(特許文献1〜3)。
高分子フィルムは元来、柔軟な素材であり、多少の伸縮や曲げ伸ばしに支障はない。一方で高分子フィルム上に形成された電子デバイスは、多くの場合、無機物からなる導電体、半導体、を所定のパターンにて組み合わせた微細な構造を有しており、微小な伸縮や曲げ伸ばしといったストレスによって、その構造は破壊され、デバイスとしての特性は損なわれてしまう。かかるストレスは、電子デバイスを高分子フィルムごと、無機基板から剥離するときに生じやすい。
そこで本発明者らは、さらに改良を重ね、カップリング剤処理を行った無機基板に、部分的に不活性化処理を行い、カップリング剤の活性度の高い部分と低い部分を形成し、高分子フィルムを貼り合わせた際に、比較的剥離しにくい良接着部分と、比較的剥離しやすい易剥離部とを作り、易剥離部に電子デバイスを形成し、高分子フィルムの易剥離部/良接着部との境目に切り込みを入れて、易剥離部のみを剥離することにより、電子デバイスに与えるストレスを減じた状態にて剥離可能とする技術を提案した(特許文献4)。
発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋
上述した特許文献1〜4に記載の積層体によれば、所謂接着剤、粘着剤的な要素を用いることなく、高分子フィルムと無機基板との貼り合わせが可能となり、さらにその積層体は薄膜デバイスを製作するに必要な高温に暴露されても、高分子フィルムの剥離は生じない。従って当該積層体を、従来のガラス板やシリコンウエハなどの無機物の基板上に直接電子デバイスを形成するプロセスに供することが可能となる。
さらに良接着部と易剥離部を設けることにより、高分子フィルム上に形成した電子デバイスを、高分子フィルムごと無機基板から比較的容易に剥離することができる技術の提案により、フレキシブルな電子デバイスの実現可能性は高まったと考えられる。しかしながら、かかる技術の提案においても、必ずしも全ての問題点が解決されたわけではない。
特許文献4に提案された技術において、カップリング剤を塗布した無機基板に不活性化処理を行い、カップリング剤層の活性度を変化させた場合、良接着部分と易剥離部分との接着強度差が生じ、部分的に切り込みを入れて易剥離層のみを剥離することが比較的容易になる。
しかしながら、接着力が比較的小さくなったとしても、硬質な基板から柔軟な高分子フィルムを剥離する場合には、高分子フィルムに変形が生じ、その結果、電子デバイス部も変形するため、常に電子デバイスの破壊が生じる危険が存在して生産性が低下する、という新たな課題を本願発明者らは見出した。以下に述べるように、高分子フィルムの伸張変形と曲げ・圧縮変形は2律背反の関係にあり、両者を同時に低減させつつ高分子フィルムを無機基板から剥離することは非常に困難である。
<高分子フィルムの伸長変形>
剥離の際の剥離角度、すなわち、無機基板と剥離されるフィルムが成す角度は、大きな方が剥離しやすい。剥離の際には、高分子フィルムを引っ張る力により高分子フィルムに張力が加わり、高分子フィルムは微小な伸びを生ずる訳であるが、高分子フィルム上に形成された電子デバイスは、この微小な伸びにより容易に破壊される。一般に剥離角度が90度の場合が、剥離に要する力と、高分子フィルムに加わる引っ張り力が等しくなるため、剥離時の高分子フィルムの伸びを最小に押さえることが出来る。
<高分子フィルムの曲げ・圧縮変形>
一方、剥離角度が90度近傍となると、高分子フィルムには大きな曲げ応力が加わる。特に、電子デバイスが形成された高分子フィルムの表面側には強い曲げと、圧縮応力が加わり、伸長された場合と同様に電子デバイスの破壊が生ずる場合がある。
剥離角度を鋭角化することにより、電子デバイス部の曲げと圧縮応力は小さくなるが、反面、剥離力すなわち、高分子フィルムを引っ張る力の垂直成分は小さくなり、剥離に支障を来すようになる。十分な剥離力(引っ張り力の垂直成分)を得るためには引っ張り力を上げざるを得ず、その場合にはフィルムの伸長力が大となり、電子デバイスの伸びによる破壊が生じ易くなる。
課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋
以上、述べてきたように、高分子フィルムを無機板に仮接着してデバイス加工を行い、無機基板から高分子フィルムを剥離することによりフレキシブル電子デバイスを製造する方法においては、無機基板からの高分子フィルムの剥離工程に大きな問題があり、特にその剥離角度と、高分子フィルムに加える引っ張り力によっては、電子デバイスに伸長応力、曲げ応力、圧縮応力が加わるために、良好な剥離性と、フレキシブル電子デバイス・・・ 続きを
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【発明の効果】
本発明により、高分子フィルムを無機板に仮接着してデバイス加工を行い、無機基板から高分子フィルムを剥離することによりフレキシブル電子デバイスを製造する方法において、電子デバイスを破壊することなく安全に剥離が可能となり、良好な剥離性と、フレキシブル電子デバイスの歩留まり向上を実現することができる。より好適には、高分子フィルムと無機基板との接着力が所定の範囲にある場合において、さらに良好な剥離性を得ることが可能である。
この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]
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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋
【図1】 図1は本発明の剥離時の状況を示した模式図である。
1 高分子フィルム
2 ガラス基板
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