特許6378529IP Force 特許公報全文掲載

技術分野

遺伝性疾患の検出方法に関し、具体的には、常染色体劣性遺伝型のシャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease:CMT)の疾患原因遺伝子の検出に関する。 なお、本発明に関わる研究は鹿児島大学医学部倫理委員会の審査による承認を経て行われており、遺伝子検査を実施したすべての患者およびそれらの家族に対し、本研究に参加するためにインフォームドコンセントを行い、書面にて同意を得ている。

発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋

CMTの発症頻度はおおよそ2,500人に1人といわれ、病型別の発症頻度についてもいくつかの報告があるが、原因遺伝子が全て同定されていないため、もっとも頻度の高いCMT1A症例(PMP22重複等)を除き、現在の遺伝子診断で原因を同定できる症例は70%以下である。更に、欧米とは異なり、日本では脱髄型のCMT1Aの頻度が低く、軸索型および中間型のCMTでは検査による陽性率はかなり低いものとなっている。 また、これまでに報告されている原因遺伝子の機能が多岐にわたり、疾患のメカニズムは未解明であり、適切な治療方法も未だ見出されていない。 一方、CMTの臨床的診断は、神経内科医もしくは小児科医による診察・検査によって行われ、臨床経過や神経学的所見、血液検査や神経伝導検査、神経画像検査を含む検査所見、家族歴等を考慮して総合的に行われているが、患者によって症状の出方が一様ではないこと等から、確定的な診断は容易ではない。 CMTと類似する症状・経過を有する疾患は多く、緩徐進行性の多発末梢神経障害を呈する症例はすべて鑑別の対象となる。たとえば、慢性炎症性多発神経根炎や多巣性運動ニューロパチー、糖尿病多発ニューロパチー、アルコール性ニューロパチーなどがある。慢性炎症性多発神経根炎や多巣性運動ニューロパチーは免疫療法により治療可能な疾患である。糖尿病多発ニューロパチーやアルコール性ニューロパチーは適切な基礎疾患の治療や生活指導などにより症状の改善や進行抑制などの期待できる。CMT患者はこのような疾患と誤診されることも少なくなく、間違った治療選択をしてしまう危険性がある。正確な診断に基づかずに投薬治療等を行うことで、症状を悪化させる場合も想定される。したがって、CMT患者は遺伝子診断により確定診断されることが望ましい。 従って、原因不明のCMT症例、特に軸索型および中間型のCMTについて新たな原因遺伝子を発見することが、この疾患の診断、予防および治療のために望まれている。原因遺伝子を更に特定することによって、疾患の原因不明がもたらす患者・家族への不安を軽減し、予後を予測し、正しい診療・治療を選択することにつなげることが可能となる。また、疾患の病態解明、創薬研究や遺伝子治療など新しい治療法の開発へとつなげることもできる。 臨床的にCMTと診断された患者について遺伝子検査を行うことの意義としては、
1.診断を確定できる(誤診を減少させる)こと、
2.疾患の予後、合併症などを予測できること、例えば、GJB1変異によるCMTXは、難聴や中枢神経症状を来す症例も報告(Takashima H, et al: Acta Neurol Scand 2003)されており、登山(高地環境)や感染症が中枢神経症状の発現誘発因子であるなどの報告(Henry L, et al: Annals of Neurology 2002)があることから、患者へ具体的な日常生活指導を行うことができること、
3.神経生検などの侵襲的な検査を回避できること、および
4.適切な治療法の選択、治験参加機会を提供することができること
等が挙げられる。PMP22重複によるCMT1A患者に対しては、すでにアスコルビン酸などの治験が行われている。

課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明者等は、大規模な数のCMT症例から原因未同定の症例を抽出し、これまでにない膨大な症例数のエクソーム解析の変異データから、独自に開発した「疾患候補遺伝子絞り込みシステム(Disease candidate gene narrowing-down system)」を用い、常染色体劣性遺伝型CMTの新規原因遺伝子の探索を試みた。
【発明の効果】
本発明により、従来はCMTであるとの遺伝子診断が不可能であった症例について、原因遺伝子を特定することが可能となると共に、発症前の個体における将来の発症の可能性を予測すること、また変異がヘテロ接合性であるために発症することはない個体においても、変異遺伝子を保有するとの情報に基づいて後の世代における発症の可能性を予測することを可能とする。更に、変異を有さない遺伝子を用いた遺伝子治療を利用すれば、発症を予防、症状を軽減することが期待される。 原因遺伝子として新たな遺伝子を追加することによって、原因不明がもたらす患者・家族への不安を軽減し、予後を予測し、正しい診療・治療を選択することが可能となり、また、疾患の病態解明、創薬研究や遺伝子治療など新しい治療法の開発にも寄与することができる。 尚、発症前または初期段階での疾患の検出をすることは可能であるが、発症前診断については、遺伝医学関連学会が制定した『遺伝学的検査に関するガイドライン』のV.3.A.発症前診断に記載事項に準じて実施すべきである。

この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]

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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋

【図1】マイクロアレイおよびエクソーム解析を用いた症例の選別の流れを示す。

【図2】「疾患候補絞り込みシステム」による常染色体劣性遺伝型変異の絞り込みを説明する。

【図3】MME遺伝子変異を有する5家系(患者ID:4590、4229、4309、3676、4185)の家族歴を示す。

【図4】MME遺伝子がコードするネプリライシンの模式図と変異部位を示す。

【図5】MME遺伝子変異を有する患者(患者ID:3676)の家族歴および家族間でのMME遺伝子のスプライス供給部位におけるヌクレオチド配列の違いを示す。

【図6A】FAT3遺伝子変異を有する患者(患者ID:3743)の家族歴および家族間でのFAT3遺伝子のヌクレオチド配列およびコードされたアミノ酸の違いを示す。

【図6B】FAT3遺伝子変異を有する患者(患者ID:3887)の家族歴および家族間でのFAT3遺伝子のヌクレオチド配列およびコードされたアミノ酸の違いを示す。

【図7A】SELRC1遺伝子変異を有する患者(患者ID:4040)の家族歴および家族間でのSELRC1遺伝子のヌクレオチド配列およびコードされたアミノ酸の違いを示す。

【図7B】SELRC1遺伝子がコードするアミノ酸配列中のAsp6を含む部分配列の種間比較を示す。

【図7C】SELRC1遺伝子変異を有する患者(患者ID:4040)の脳MRI像を示す。

【図8A】SELRC1遺伝子変異を有する患者(患者ID:4348)の家族歴および家族間でのSELRC1遺伝子のヌクレオチド配列およびコードされたアミノ酸の違いを示す。

【図8B】SELRC1遺伝子がコードするアミノ酸配列中のArg39を含む部分配列の種間比較を示す。

【図8C】SELRC1遺伝子変異を有する患者(患者ID:4348)の脳MRI像を示す。

選択図 図1出願人が指定した本件の代表的な図

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