技術分野
中性子発生用ターゲット、中性子発生装置、中性子発生用ターゲットの製造方法及び中性子発生方法
発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋
しかしながら、中性子発生標的材としてリチウムを用いると、リチウムが陽子入射によって半減期が約53日の放射性同位元素であるベリリウム−7に変わってしまうという問題がある。また、管理の難しい放射性物質であるトリチウムも発生してしまう。さらにリチウムは融点が約180度と低く、大電流の陽子入射に対して長時間安定的に使用することが困難であり、BNCTなどの医療用の大強度中性子発生用の中性子発生標的材として用いることができない。
これに対し、ベリリウムは融点が高く安定的であるという特徴を有する。例えば非特許文献2には、中程度のエネルギー(〜30MeV)の陽子をベリリウムからなる中性子発生標的材に入射させることで効率的に中性子を発生させることができることが記載されている。しかしながら、中程度のエネルギーを有する陽子をベリリウムに照射すると、ベリリウム自体が放射化してしまうという問題や、周囲の装置を構成する部材を放射化してしまうという問題があり、BNCTなどの医療用の大強度中性子発生用の中性子発生標的材として用いることができない。
またベリリウムと陽子の反応により中性子を発生させようとすると、ブリスタリングが生じるという課題もある。ブリスタリングとは、入射した陽子が、材質内で電子と結合して水素化し、この水素が蓄積し、膨張することで部材を破損する現象をいう。ブリスタリングは、入射した陽子と材質中の電子の結合であるため、陽子が停止する部分で最も発生しやすい。例えば、低エネルギー(〜15MeV、特に〜10MeVが好ましい)の陽子とベリリウムを反応させようとすると、15MeV以下の陽子はベリリウム内での飛程(ブラッグ・ピーク発生深さ)が2mm以下である。そのため、ブリスタリングを抑制するためには、ベリリウムを2mmよりも薄くする必要がある。しかしながら、この厚みでは加速器の真空窓としては強度が十分では無い。例えば、特許文献4〜7に記載されたベリリウムと炭素材料を組み合わせた中性子発生標的材では、十分にブリスタリングの発生を抑制することができなかった。
また特許文献8では、水素拡散性を有する材料からなる金属層を、中性子発生源に陽子が入射する面と反対側の面に配置することで、ブリスタリングの発生を抑制している。しかしながら、金属層で水素を拡散させてしまうと、拡散した水素が中性子発生源内に侵入し、ブリスタリングの発生を促す恐れがある。すなわち、十分なブリスタリングの抑制を実現できるとは言えなかった。
さらに、BNCTの治療に求められる中性子強度(ビーム孔位置で熱外中性子束:1×10
9 (cm
−2 s
−1 )以上)を発生させるためには5mA以上の大電流をベリリウムに入射する必要があり(入射パワーで約50kW程度)、大きな熱負荷を生じるという問題があった。
例えば、特許文献8に記載の中性子発生源では、得られる中性子の発生強度が1×10
6〜7 (cm
−2 s
−1 )程度であり、BNCTの治療に求められる中性子強度を実現できていない。すなわち、当該中性子発生源は、入射パワーで約50kW程度の陽子の入射を想定していないことがわかる。
すなわち低エネルギーの陽子(〜15MeV、特に〜10MeVが好ましい)とベリリウムとの反応によってBNCTにも適用可能な大強度の中性子を発生させるためには、50kW程度の高エネルギーの陽子入射による熱負荷に対応でき、さらにブリスタリングによるベリリウム等の破損も抑制し、長時間安定的に中性子を発生できるターゲットが切に求められていた。
本発明は問題に鑑みてなされたものであり、低エネルギーの陽子の照射でも安定的かつ効率的に中性子を発生することができ、ブリスタリングの発生を抑制できる中性子発生用ターゲット、中性子発生装置及び中性子発生方法を提供することを目的とする。またこのような中性子の発生を可能とする中性子発生用ターゲットの製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋
本発明者は、鋭意検討の結果、陽子を衝突させて中性子を発生させるベリリウムを含む中性子発生標的材と、水素を蓄積可能な金属またはその合金からなる耐ブリスタリング中間材と、中性子発生標的材及び耐ブリスタリング中間材を冷却する冷却用ヒートシンクとを順に備え、中性子発生標的材の厚みを所定の厚みとすることにより、ブリスタリングを生じさせることなく、安定的かつ効率的に中性子を発生することができることを見出・・・ 続きを
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【発明の効果】
本発明の中性子発生用ターゲット、中性子発生装置及び中性子発生方法を用いることで、ブリスタリングを生じせることなく、安定的かつ効率的に中性子を発生することができる。また本発明の中性子発生用ターゲットの製造方法を用いることで、ブリスタリングを生じせることなく、安定的かつ効率的に中性子を発生することができる中性子発生用ターゲットを適切に製造することができる。
この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]
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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋
【図1】 本発明の一態様にかかる中性子発生用ターゲットを模式的に示した図である。
【図2】 入射した陽子のエネルギーに対するブラックピークの深さ及び発熱量を図示したグラフである。
【図3】 本発明の一態様に係る中性子発生装置を模式的に示した図である。
【図4】 本発明の一態様に係る中性子発生装置の中性子発生用ターゲット付近を拡大した断面模式図である。
【図5】 実施例1〜4の中性子発生用ターゲットの接合界面の断面図である。図示左側が光学顕微鏡画像であり、図示右側が反射電子像である。
【図6】 実施例1のニオブ(耐ブリスタリング中間材)と銅(冷却用ヒートシールド)の接合界面をさらに拡大した電子顕微鏡画像である。
【図7】 実施例1の中性子発生用ターゲットの熱伝導特性を測定する実験の概略模式図を示す。
【図8】 レーザーフラッシュ法を用いて赤外線ヒートカメラが測定した中性子発生標的材と反対側の温度上昇を示す。
【図9】 大熱量をベリリウム層側に照射した場合の温度分布についてのシミュレーション結果を示す。
1…中性子発生標的材、2…耐ブリスタリング中間材、3…冷却ヒートシールド、3A…流路、10…中性子発生用ターゲット、11…高速中性子フィルター、12…モデレータ、13…コリメータ、14…ビーム孔、20…加速器、21…高周波四重極加速器、22…ドリフトチューブ型線形加速器(DTL)、30…イオン源、40…赤外線ヒートカメラ、100…中性子発生装置
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