技術分野
電子機能ないし電気機能を衣服に組み込んで使用する衣服型のウェアラブル電子機器に関し、さらに詳しくは、伸縮性を有する電気配線を有し、自然な使用感、着用感のあるウェアラブル・スマート・デバイスに関する。
さらに本発明は、自然な使用感、着用感のあるウェアラブル・スマート・デバイスを実現するために必要な、伸縮性を有する電気配線を形成するために用いられる導電ペースト
発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋
伸縮性の導体組成物を用いて衣服を構成する布帛に印刷法を用いて配線を形成する場合には、類似の技術、たえば導電ペーストを用いたメンブレン回路の形成技術と比較して様々な相違点があり、それらが技術的困難性につながっている。比較的寸法精度が高く、かつ十分な平面性を有するポリエステルフィルムなどの基材とは事なり、布帛表面は相当に凸凹であり、かつ柔軟性を有するために寸法精度は低く、なおかつ厚さ方向にも柔軟であるため印刷厚による変形も生じ、およそ高精細な配線パターンを形成することは困難である。かかる問題点に対しては布帛に最初に下地層を設けて、布帛の繊維間の運動自由度を制限することが先に示した特許文献3に開示された発明の趣旨である。特許文献3においても全ての困難性が解決されているわけではない
伸縮性導体組成物は、主として金属系導電粒子と柔軟性樹脂から構成されるものである。このような伸縮性導体としては、ゴムなどの架橋型エラストマーを樹脂バインダーとして用い、カーボンブラックや金属粒子を配合した組成物が一般に知られている。このような伸縮性導体組成物は、金属系導電粒子と架橋型エラストマーの前駆体に必要に応じて溶剤などを混合溶解分散して得られるペーストないしスラリーを介して形成される。ペーストとした場合にはスクリーン印刷などで配線パターンを形成することが容易となる。しかしながら、このような架橋型のエラストマーを樹脂バインダーに用いた場合は、ペーストの乾燥硬化過程にてバインダー樹脂に架橋構造を付与する必要があるため、比較的高い処理温度が必要であるため、硬化課程でエッジがだれるため、配線間隙を狭くすることが難しくなっている。一方でこのような柔軟性を有する材料の基材としては、当然ながら柔軟性を有する材料が好ましいが、そのような材料は一般に耐熱性が低いため、かかる架橋構造を硬化課程で形成するタイプの材料には使いがたい。
布帛に下地層を形成した後に導電ペーストを印刷する場合も同様で、下地層は布帛表面にある程度の平滑性を与え、と同時に布帛を構成する繊維間を結合させて自由度を制限する役割を有する。下地層を構成する樹脂成分は、樹脂自体に柔軟性が必要であるため、必ずしも耐熱性が高いわけではなく、架橋反応が十分に行われる温度に暴露された場合に樹脂が溶融軟化して不具合を生じる懸念がある。また、導電ペーストに含有される架橋剤が、硬化課程において下地層に拡散し、下地層内において架橋反応を生じる場合があり、下地層の柔軟性が当初の状態よりも低下してしまう場合がある。
他方、導電ペーストに架橋剤を配合しない場合には、架橋反応温度まで温度を上げる必要が無く、被印刷
基 材の材料選択幅が広くなるが、塗膜が架橋されず塗膜強度が不十分のため繰返し伸長時の抵抗上昇が大きくなる。また、低温での乾燥では、乾燥不十分となり易く、残留溶剤により十分な塗膜物性が得られない事や、あるいは衣服として着用した場合に皮膚刺激等の問題が生じることが懸念される。
結果として、かかる伸縮性導体組成物による電気配線を有するウェアラブル・スマート・デバイスは、広めの配線幅と広めの配線間とせざるを得ず、そのため、配線形成部がゴワゴワとした感触となり、太めの配線であるが故に、金属糸などの導電性繊維を用いた配線に比較して耐繰り返し曲げ性、耐繰り返し捻り性に劣る物となっていた。
課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、以下の発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の構成を持つ。
[1]20%伸張を10回繰り返しても導通を維持できる伸縮性導体組成物からなる伸縮性電気配線を有するウェアラブル・スマート・デバイスにおいて、該電気配線の非伸張時の線間幅が50μm以上1mm以下であり、かつ、電気配線の幅/厚さの比が1から50の範囲であることを特徴とする伸・・・ 続きを
知財ポータルサイト IP Force にログインして見る
【発明の効果】
本発明におけるウェアラブル・スマート・デバイスは、伸縮性の導体組成物からなる電気配線を有する衣服型の機器であり、該伸縮性の導体組成物からなる電気配線の、配線間が50μm以上1mm未満で、電気配線の幅/厚さで定義されるアスペクト比が1から50の範囲という比較的微細な配線を有するものであり、好ましくは該配線の幅が50μm以上1mm以下であり、該配線は好ましくは厚さが3μm以上200μm
以下 であり、さらに好ましくは該配線を構成する伸縮性導体組成物の非伸張時の比抵抗が1×10
-3 Ωcm以下であることを特徴としている。
本発明で用いられる配合系の伸縮性の導体組成物は、繰り返し伸縮や繰り返し曲げにより粒子間の接触状態が変化し、導電性が低下することが知られている。しかし、本発明を応用すれば、所定の配線電流容量を確保するために必要な配線断面積を、単一の太い配線路ではなく、総和が同じ配線断面積となるように、複数の細い配線に分割して設置することにより、同程度の電流容量を維持し、耐繰り返し曲げ性、耐繰り返し捻り性に優れる配線を得ることができる。耐繰り返し曲げ性、耐繰り返し捻り性の向上については、一般的な導線を用いた電線の例からも容易に類推できる。が、さらに驚くべき事に、本発明の構成は耐繰り返し伸縮性についても改善が認められている。本発明者らは、かかる効果については、配線路が微分割されると同時に、配線に用いられる伸縮性導電組成物のバインダー成分が非架橋型エラストマーであり、低温で乾燥硬化されていることの複合的な効果であると解釈している。
また、本発明における効果は、配線の耐洗濯性向上にも寄与している。洗濯時の配線部には伸張変形と圧縮変形とが繰り返し加わる。導電フィラーとバインダー樹脂から成る伸縮性導体組成物は特に圧縮による座屈破壊を生じやすく、そのために耐洗濯性に問題が出ることが多い。しかしながら本発明における様に、配線を適度な配線間隔を以て分割することにより、配線部分の幅方向の圧縮への耐性が大幅に向上し、結果として洗濯耐久性が改善されるものと、本発明者らは解釈している。
電気配線を組み込んだ衣服においては、着用時の配線部の違和感が問題となっている。金属細線を縫い込んだ配線を有する衣服を着用した場合に違和感が大きいのは容易に想像されるところである。
架橋型のエラストマー樹脂をバインダーに用いた伸縮性導体形成用の導電ペーストを印刷、乾燥硬化する際の乾燥硬化温度を高く設定した場合には樹脂成分の架橋反応が進行する過程において樹脂粘度が一時的に低下する現象が生じる。これは、架橋反応がスムースに行われるためには樹脂のポリマー鎖が十分な運動性を有することが必要であり、必然的に樹脂粘度が低下した状態を経る必要があるためである。この樹脂粘度の一時的な低下は、配線パターンのエッジのダレを引き起こし、配線の断面形状が初期に成形された形状から変形してしまい、より端的には、初期に微細線形状に成形したとしても硬化課程で線幅が太るため、結果的に微細線パターンを得ることが困難となる。
本発明では非架橋
型 のエラストマー樹脂をバインダーに用いるため、まず、このような問題を回避することができる。しかしながら、乾燥温度を下げた場合には塗膜が架橋されないため、塗膜強度が弱くなり伸長時の抵抗上昇が大きくなる。また、乾燥不十分となり、高沸点溶剤を用いた場合、溶剤成分が残りやすい。低温乾燥に対応するためには架橋せずとも塗膜強度を強くし、スクリーン印刷可能かつ塗膜中に溶剤が残存しないような組成にする必要がある。低沸点溶剤を使用する対策は印刷中のペースト粘度の上昇を招きやすく、印刷時にかすれ等が発生しやすくなる。一方で高沸点溶剤の使用は残留溶剤に関わるさまざまな問題を引き起こす懸念を有している。本発明における伸縮性導体形成用ペーストにおいては特定のDBP吸油量を有するカーボンブラックを所定量含有することにより、塗膜強度を高めて伸長時の抵抗上昇を抑制することができ、かつ、残留溶剤に起因する塗膜の不具合を回避することが出来る。これは、溶剤の残留分を特定のカーボンブラックが吸収し、樹脂系内に存在する自由溶剤分が減じられているためであると考えられる。
本発明では特定のカーボンブラックがの懸念を払拭してくれるため、低温硬化でありながら、塗膜の強度を向上させつつ、比較的高沸点の溶剤を用いることができる。高沸点の溶剤の使用は印刷時の作業性において、ペースト粘度の変化低減、版乾きの問題を回避、さらには印刷版への裏移りが減り、ペースト粘度の上昇も顕著には見られないため作業性が向上する。作業性の向上とあいまって、乾燥温度の低下によりペーストエッジのダレが抑えられるため、細線印刷性が改善される。結果として、本発明における導電ペーストを用いることにより線幅300μm以下、好ましくは180μm以下の線幅の印刷が可能であり、さらに線間隔が150μm以下、好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下の微細パターンを印刷可能となる。
本発明ような伸縮性導体組成物のシートないしフィルムで構成された配線路は比較的薄いため、違和感は小さいが、本発明ではさらに配線を細線に細分化することにより、配線部のしなやかさを向上させ、違和感のない自然な着用感を実現できる。
この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]
知財ポータルサイト IP Force にログインして確認する (無料)
この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋
【図1】 本発明の実施例における電極表面層の印刷パターンである。
【図2】 本発明の実施例におけるカバーコート層の印刷パターンである。
【図3】 本発明の実施例における導電層の印刷パターンである。
【図4】 本発明の実施例における下地層の印刷パターンである。
【図5】 本発明の比較例における導電層の印刷パターンである。
【図6】 本発明の電気配線形成プロセスの一例を示す概略模式図である。(直接印刷)
【図7】 本発明の電気配線形成プロセスの一例を示す概略模式図である。(転写法)
【図8】 本発明の配線部の断面の一例を示す概略模式図である。(直接印刷)
【図9】 本発明の配線部の断面の一例を示す概略模式図である。(転写法)
【図10】 従来の配線部の断面を示す概略模式図である(直接印刷)
【図11】 本発明の電極部の断面の一例を示す概略模式図である(直接印刷)
【図12】 本発明の電極部の断面の一例を示す概略模式図である(直接印刷)
【図13】 本発明の電極部の断面の一例を示す概略模式図である(転写法)
【図14】 本発明の電極部の断面の一例を示す概略模式図である(転写法)
1 仮支持体
2 ファブリック(基材)
3 下地層
4 導電層
5 絶縁層(カバーコート層)
6 電極表面層(カーボン層)
7 離型フィルム
8 接着層(ホットメルト層)
11 心拍検出用電極
12 デバイス装着用電極
13 配線部
全ての図面はログインすると無料で閲覧できます。ログイン・ユーザー登録