特許7916309IP Force 特許公報全文掲載

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ミトコンドリア疾患又は機能障害、特にミトコンドリア複合体I欠損症に関連するものを処置するための新しい薬理学的ツールを提供する。

課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明者らは、機能性胃腸障害に使用される平滑筋弛緩剤として主に公知である薬理学的化合物であるアルベリン(ALV)が、ミトコンドリアの機能障害又は疾患、特に複合体I欠損症に関連する欠陥を処置するための有力な候補であることを示した。本出願は、低毒性を示しながら、広範囲のミトコンドリア疾患に効果的であることを明らかにする。

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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋

【図1】 ヒトにおける病原性NDUFV1 A341V変異体を模倣したポドスポラ・アンセリナnuo-51遺伝子における熱感受性変異A357Vの増殖速度における影響を示す図である。
【図2】 ヒトにおける病原性NDUFV1 A341V変異体を模倣したポドスポラ・アンセリナnuo-51遺伝子における熱感受性変異A357Vの31.5℃での呼吸(O2)及び複合体I活性(CI)における効果を示す図である。CS:クエン酸シンターゼ活性。アスタリスク(**又は***)は、野生型株(WT)に対する統計的有意差を示す。
【図3】 ヒト病原性変異NDUFV1A341Vを模倣したポドスポラ・アンセリナのnuo-51A357V変異体の、33℃での熱感受性増殖におけるDMSO(C)と比較したALV(A)及び4-ヒドロキシALV(B)の影響を示す図である。
【図4】 31.5℃でのnuo-51A357V(NDUFV1)、28℃でのΔnuo-19(NDUFS7)及びnd2-nd3(ND)変異株の増殖速度における種々の濃度のALV(0.001~10μM;VEH=0)の影響を示す図である。アスタリスク(*又は**)は、未処理培養物に対する統計的有意差を示す(VEH=ビヒクル)。
【図5】 31.5℃でのnuo-51A357V(NDUFV1)のO2消費速度におけるALV 1μMの影響を示す図である。アスタリスク(**)は、未処理培養物に対する統計的有意差を示す(VEH=ビヒクル)。
【図6】 31.5℃でのnuo-51A357V(NDUFV1)の複合体I活性(CI)におけるALV 1μMの影響を示す図である。アスタリスク(***)は、未処理培養物に対する統計的有意差を示す(VEH=ビヒクル)。CS:クエン酸シンターゼ活性。
【図7】 C. エレガンスnuo-1A352V(NDUFV1)変異子孫におけるALV 1μMの影響を示す図である。アスタリスク(**)は、未処理培養物に対する統計的有意差を示す。
【図8】 NDUFV1又はNDUFS8 RNAiに曝露された野生型蠕虫の子孫におけるALV 1μMの影響を示す図である。アスタリスク(**)は、未処理培養物に対する統計的有意差を示す。
【図9】 複合ヘテロ接合性変異c1162+2A>C及びc.1156C>T(p.Arg386Cys)を有するNDUFV1変異細胞の増殖に無毒性である最大ALV濃度の決定を示す図である。30nM~30μMのALV濃度の範囲。
【図10】 複合ヘテロ接合性変異c.1162+2A>C及びc.1156C>T(p.Arg386Cys)を有するNDUFV1変異細胞のクエン酸シンターゼ活性における活性ALV濃度の決定を示す図である。アスタリスク(*)は、未処理細胞(ビヒクル)に対する統計的有意差を示す。
【図11】 複合ヘテロ接合性変異c.1162+2A>C及びc.1156C>T(p.Arg386Cys)を有するNDUFV1変異細胞の複合体I酵素活性における活性ALV濃度の決定を示す図である。アスタリスク(*又は**又は***)は、未処理細胞(ビヒクル)に対する統計的有意差を示す。
【図12】 複合ヘテロ接合変異c.1162+2A>C及びc.1156C>T(p.Arg386Cys)を有するNDUFV1変異細胞のクエン酸シンターゼ活性(CS)に関して標準化された複合体I酵素活性(CI)における活性ALV濃度の決定を示す図である。アスタリスク(*又は**)は、未処理細胞(ビヒクル)に対する統計的有意差を示す。
【図13】 m.14484T>C(p.Met64Val)ミトコンドリアDNA変異を有するND6変異細胞の増殖に無毒性である最大ALV濃度の決定を示す図である。30nM~10μMのALV濃度の範囲。Veh:ビヒクル。n=4+/-SEM。*P<0.05。
【図14】 Alvの存在下におけるND6変異体の複合体I酵素活性の測定を示す図である。(A):異なる濃度のAlvで48時間処理した後に、ND6細胞株のクエン酸シンターゼにより標準化。(B):ND6変異細胞株のクエン酸シンターゼ活性の酵素測定。n=4+/-SEM。*P<0.05。
【図15】 Alvによる48時間曝露した後の対照線維芽細胞、NDUFV1及びND6変異線維芽細胞株の乳酸産生の決定を示す図である。(A)、対照細胞; NDUFV1(B)及びND6(C)。(A)及び(B): n=3。(C): n=4+/-SEM。*P<0.05。
【図16】 ハロー試験で検出した場合、固形呼吸培地上での種々の変異酵母株の増殖におけるアルベリンの影響を示す図である。
【図17】 taz1変異酵母株の呼吸成長欠損の抑制をもたらすALV濃度の活性範囲の決定を示す図である。
(実施例1~5) ポドスポラ・アンセリナモデル 実施例1~5で使用される糸状菌であるポドスポラ・アンセリナ株は、ミトコンドリア疾患をもたらす複合体IのNDUFV1サブユニットにおけるヒト変異をモデリングする特異的変異を含有する。この株は、31.5℃を超える非許容温度で成長欠陥を示す。 ポドスポラ・アンセリナ変異株: 〇nuo-51 A357V→ノーセオスリシン耐性カセット(NatR)と関連して、S野生型株のnuo-51遺伝子にA357V変異を導入した。ヒトNDUFV1A341V疾患を完全に模倣するために、NDI-1及びAOX遺伝子を不活化した(El-Khouryら、2008)。 株の遺伝子型:S, mat-, nuo-51 A357V, Δndi-1, Δaox, NatR, HygroR 〇nd2-nd3→Wa32-LL株は、対応するサブユニットND2及びND3のレベルを下方制御する、ミトコンドリア共転写ユニットnd2/nd3の5'-UTRに組み込まれたミトコンドリアプラスミドを有する(Maasら、2007)。 〇Δnuo-19→ヒトPSST(NDUFS7)サブユニットのホモログをコードする遺伝子は、S野生型株において不活化された(Maasら、2010)。 (実施例1) ヒトにおける病原性変異NDUFV1A341Vを模倣するポドスポラ・アンセリナnuo-51遺伝子における熱感受性変異A357Vの増殖速度(1)、呼吸及び複合体I活性(2)における影響 材料及び方法 菌糸体は、子嚢胞子から開始して、28℃にて固体合成M2培地を含有するペトリディッシュ上で増殖させる。培養物は、菌糸体の小片から固体合成培地(M2、http://podospora.i2bc.paris-saclay.fr/)上で増殖させる。増殖速度は、1日あたりの菌糸成長のセンチメートルで測定される。図1では、増殖速度は野生型と比較して表されている。 酸素消費について、31.5℃で増殖させた菌糸体の40mg試料を、Oxytherm装置(Hansatech電極)に導入する。2分間の登録後、試料を回収し、Bradfordタンパク質アッセイ(Biorad)によりタンパク質含量を推定する。呼吸は、消費された酸素のnmol/分/μgタンパク質として登録され、次に野生型と比較して表される。各株につき少なくとも3つの試料を実験ごとに調べた。実験を少なくとも5回繰り返した。 0.4Mスクロース緩衝液中で菌糸体とガラスビーズを混合し、分別遠心分離した後に得られた粗ミトコンドリア上で複合体I活性(CI)を行った。ロテノンの存在下及び非存在下でのNADH消費速度を、NADH及びキノン添加から始まる25μgのミトコンドリアを用いた分光光度法(340~380nm)により記録した。クエン酸シンターゼ活性(CS)を、クエン酸シンターゼ活性に対するNADHデヒドロゲナーゼ-ロテノン感受性活性(CI/CS)として複合体I活性を表すために、ミトコンドリアの同等試料で決定した。 結果 結果を図1、図2に示す。 nuo-51A357V株は、野生型株と比較して熱感受性であり、31.5℃では増殖速度の30%の減少であり、33℃では増殖しない(図1)。 nuo-51A357V変異株は、酸素消費量が40%減少し、複合体I活性が70%低下する(図2)。 (実施例2) NDUFV1A341Vのヒト病原性変異を模倣するポドスポラ・アンセリナのnuo-51A357V変異体の熱感受性増殖におけるALV及び4-ヒドロキシALVの影響 材料及び方法 分子(ALV、4-ヒドロキシALV及びDMSO)を、薬物滴下試験により、nuo-51A357V変異株の熱感受性成長欠陥を回復するそれらの能力について試験した。28℃のM2プレート上で2日間の培養からかき取られた変異体菌糸体を、FastPrep装置中で混合し、新鮮な四角プレート上に広げた。次に、6mmセルロースディスクを落とし、DMSO中の10mMで種々の化合物でスポットし、プレートを33℃でインキュベートした。4~6日以内に、フィルター周囲の増殖の推定再開(すなわち、ハロー)が観察される。 結果 結果を図3に示す。 クエン酸アルベリン(A:左上隅)及びアルベリンの分解経路の最初の代謝物である4-ヒドロキシアルベリン(B:右上隅)は、毒性を示さずにnuo-51A357V変異株の増殖を回復させる。両方の化合物で同じ効果が観察されたという事実は、クエン酸アルベリンという化合物では活性のあるアルベリンであることを示す。 (実施例3) nuo-51A357V(NDUFV1)、Δnuo-19(NDUFS7)及びnd2-nd3(ND)変異株の増殖速度におけるALVの影響 材料及び方法 変異株は、種々の濃度のALVの存在下で31.5℃(実施例1において決定した)、3~6日で増殖させた熱感受性nuo-51A357V株を除き、28℃で増殖された。増殖速度は、実施例1に記載したように計算した。 実験は少なくとも三重にして行われた。処理対未処理の培養物(VEH)の差を標準偏差(誤差バー)に従って評価した。 結果 データを図4に示す。 nuo-51 A357V及びnd2-nd3変異株は、ALVの存在下で増加した増殖速度を示す。逆に、ALVはΔnuo-19株の増殖速度を増加させない(機能的複合体Iの完全な不存在)。5つの独立した実験から決定された最適なALV用量反応は、nuo-51 A357V株について1μMであり、さらなる実験に使用される。毒性は10μM以下では検出することができない。 (実施例4) nuo-51A357V(NDUFV1)のO2消費速度におけるALVの影響 材料及び方法 nuo-51 A357V変異株を、ALVの非存在下(VEH)又は1μM ALVの存在下(実施例3で決定した最適濃度)、31.5℃で増殖させ、40mg菌糸体を、実施例1に記載されるように、Oxytherm装置(Hansatech電極)に導入した。 実験は少なくとも5回行い、誤差バーは標準偏差を表す。処理対未処理の培養物(VEH)の差は、Pearsonのカイ二乗検定を用いて評価し、有意なp値は<0.05であった。 結果 結果を図5に示す。 nuo-51 A357V変異体の呼吸速度は、1μMのALVの存在下で有意に増加する。 (実施例5) nuo-51A357V(NDUFV1)の複合体I活性におけるALVの影響 材料及び方法 nuo-51 A357V変異株を、ALV(1μM)の存在下又は非存在下(VEH)、31.5℃で増殖させ、ロテノン感受性NADHデヒドロゲナーゼ活性を、実施例1に記載されるように、粗ミトコンドリア抽出物で決定した。 実験は少なくとも5回行い、誤差バーは標準偏差を表した。 処理対未処理の培養物(VEH)の差は、Pearsonのカイ二乗検定を用いて評価し、有意なp値は<0.05であった。 結果 結果を図6に示す。 nuo-51 A357V変異体の複合体I活性は、1μM ALVの存在下で有意に増加する。 (実施例6~7) シノラブディス・エレガンス(caenorhabditis elegans)モデル 実施例6~7で使用されるC. エレガンス線虫は、Caenorhabditis Genetics Center(CGC)コンソーシアムの野生型BRISTOL N2株である。ヒトにおける病原性変異NDUFV1A341Vを模倣する、nuo-1A352V変異(Δnuo-1、ex:nuo-1(A352V))を有する変異株LB25は、B. Lemire(カナダ; Grad and Lemire, 2004)によって構築された。 (実施例6) C. エレガンスnuo-1A352V (NDUFV1)子孫におけるALVの影響 材料及び方法 1μMのALV有り又は無でL1段階から発生させた個々のL4動物(F0)をマイクロプレート内の別々のウェルに移し、産卵中、毎日モニタリングし、新鮮なウェルに移し、それらを子孫から分離しておいた。孵化2~3日後、子孫の成体(F1-成体)を計数した。 30を超えるF0-成体の子孫を3つの独立した実験で実験により記録し、誤差バーは標準偏差を表す。処理細胞対未処理細胞間の差は、スチューデントt検定を用いて評価され、有意なp値は<0.05であった。 結果 結果を図7に示す。 培地中での1μMのALVの存在下、nuo-1A352V蠕虫の成虫子孫、すなわちF0-成体によって得られたF1-成体の数が有意に増加する(p=0.02)。 (実施例7) NDUFV1又はNDUFS8 RNAiに曝露された野生型蠕虫の子孫におけるALVの影響 材料及び方法 野生型蠕虫(N2)におけるNDUFV1又はNDUFS8の発現低下は、給餌法(Kamath RS and Ahringer J., 2003)によるRNAiによって達成された。野生型蠕虫は、RNAi条件下、1μM ALVの存在下又は非存在下で、L1段階からL4段階まで同期的に発生させた。次に、個々のL4動物をマイクロプレート中の別々のウェル(同じ培地及びRNAi条件)に移し、次の3~7日以内にモニタリングした。 NDUFV1(C09H10.3)のRNAi及びNDUFS8(T20H4.5)のRNAiは、幼虫の子孫を与えることができるF0成体をほとんど生じさせない。したがって、幼虫の子孫を与えることができるF0-成体の数をモニタリングした。30を超えるF0-成体の子孫を3つの独立した実験で記録した(t検定、p=0.02)。RNAiの効率はリアルタイムqRT-PCR(RNAi条件下でF0-成体におけるNDUFV1又はNDUFS8の20%残存mRNA)により決定した。 結果 結果を図8に示す。 NDUFV1(Nモジュールの一部)又はNDUFS8(Qモジュールの一部)の発現を低下させるRNAi条件下、ALV 1μMは子孫を増加させることができる。 (実施例8~12) ヒト細胞モデル アルベリン(ALV)は、P. アンセリナ変異株及び蠕虫変異体に基づいて正の効果を有することが判明したため、次に患者由来のヒト変異細胞で試験した:複合体I変異を有する皮膚線維芽細胞(c.1162+2A>C、c.1156C>TのNDUFV1変異;(p.Arg386Cys))を実施例8及び9に使用した。 (実施例8) 複合ヘテロ接合性変異c.1162+2A>C及びc.1156C>T(p.Arg386Cys)を有するNDUFV1線維芽細胞変異細胞の細胞増殖におけるALV(30nM~30μMの濃度)の影響 材料及び方法 Lemanら(2015)に記載されるように、10%ウシ胎児血清、1%グルタミンを補充した低グルコース培地(0.5g/l)DMEM-F12中、24ウェルプレートにおいてNDUFVI変異線維芽細胞を培養した。IncuCyte(登録商標)生細胞分析システムデバイスのCCDカメラを用いて、自動化された方法で、同じ細胞密度で播種されたウェルにおいて、5% CO2の存在下、37℃で、96時間、増殖及びコンフルエンスをリアルタイムでモニタリングした。変異細胞を、ビヒクルに対して異なる濃度のALV(30nM~30μM)で処理した。増殖時間-経過は、細胞コンフルエンスに従った濃度依存的な処理効果を明らかにした。 結果 結果を図9に示す。 異なるALV薬物濃度(30nM~30μM)に曝露した複合ヘテロ接合変異c.1162+2A>C及びc.1156C>T(p.Arg386Cys)を有するNDUFV1変異線維芽細胞の細胞増殖は、ビヒクルと比較して10μM及び30μM濃度のALVで減少したことを表す。 (実施例9) 複合ヘテロ接合性変異c1162+2A>C及びc1156C>T(p.Arg386Cys)を有するNDUFV1線維芽細胞変異細胞上の複合体I酵素活性上の活性ALV濃度の決定 材料及び方法 複合体I欠損症の原因となるNDUFV1複合ヘテロ接合性変異を有する複合体I変異体細胞を、他の文献(Lemanら、2015)に記載されるように、5% CO2の存在下、37℃で10%ウシ胎児血清、1%グルタミン及び50μg/mlウリジンを補充した標準DMEM高グルコース培地(4.5g/L)又は低グルコース(0.5g/L)中で培養した。薬物濃度の効果を最適化するために、細胞を、48時間、種々の濃度の10nM~10μMのアルベリン又はビヒクル(DMSO)を補充した低グルコース-培地0.5g/lにシフトさせた(解糖ではなくOXPHOSに依存するよう細胞に強制するため)。 複合体Iの酵素活性は、記載されるように(Lemanら、2015; Desquiret-Dumasら、2012)、UVmc2分光光度計(SAFAS)上で37℃にて測定された。複合体Iの酵素活性について、50万個の細胞を超音波処理(5秒に6サイクル)し、次に反応培地(KH2PO4 100mM、pH7.4、KCN 1mM、NaN3 2mM、BSA 1mg/ml、ユビキノン-1 0.1mM及びDCPIP 0.075mM)中、37℃でインキュベートした。0.15mMのNADHを添加して反応を開始し、DCPIPの消失速度を600nmで2分間測定した。非特異的活性はロテノン(5μM)の存在下で決定した。 複合体Iの酵素活性はミトコンドリア質量のマーカーとして考えられるクエン酸シンターゼ(CS)活性に関して標準化された。5,5'-ジチオビス2-ニトロ安息香酸(DTNB) 0.15mM、オキサロ酢酸0.5mM、アセチルcoA 0.3mM、triton X100 0.1%で構成される予め温められた反応混合物に、10万個の細胞を添加することによりクエン酸シンターゼ活性を測定し、412nmにおけるCoA-SHの出現速度をDTNB還元後に評価した。 実験は少なくとも三重にして行われ、誤差バーは標準偏差を表す。処理細胞対未処理細胞(DMSO)の差は、スチューデントのt検定を用いて評価され、有意なp値は<0.05であった。 結果 結果を図10~図12に示す。アスタリスク(*、**又は***)は、未処理細胞(ビヒクル)に対する統計的有意差を示す。 データは、ALVが、100nM及び300nMの濃度で、NDUFV1変異細胞の複合体I酵素活性に有益な効果を有し、300nMから最大10μMのALV濃度が、変異細胞における複合体Iの活性に有害な影響を及ぼさないことを示す。 (実施例10) MT-ND6遺伝子中のm.14484T>C(p.Met64Val)を有するND6線維芽細胞変異細胞株の細胞増殖におけるALV(30nM~10μMの濃度)の影響 複合体Iは核ゲノムとミトコンドリアゲノムにコードされる。Alvは核にコードされたサブユニットであるNDUFV1の変異を有する線維芽細胞において正の効果を有することが示されたため、次に、LHON疾患の原因であることが示されるホモプラスミックm.14484T>C(p.Met64Val)ミトコンドリアDNA変異を有する線維芽細胞複合体I欠損細胞で試験した。 材料及び方法 ND6変異線維芽細胞を、Lemanら(2015)に記載されるように、10%ウシ胎児血清、1%グルタミンを補充した低グルコース培地(0.5g/l)DMEM-F12中、24ウェルプレート中で培養した。IncuCyte(登録商標)生細胞分析システムデバイスのCCDカメラを用いて自動化した方法で、同じ細胞密度で播種したウェルにおいて、5% CO2存在下、37℃で96時間、増殖及びコンフルエンスをリアルタイムでモニタリングした。変異細胞を、ビヒクルに対して異なる濃度のALV(30nM~10μM)で処理した。増殖時間-経過は、細胞コンフルエンスに従った濃度依存的な処理効果を明らかにした。 結果 結果を図13に示す。 異なるALV薬物濃度(30nM~10μM)に曝露したホモプラスミックm.14484T>C(p.Met64Val)ミトコンドリアDNA変異を有するND6変異線維芽細胞の細胞増殖は、30、100及び300nMの濃度で変化しなかった。しかしながら、ビヒクルと比較して1μM以上のALV濃度では、倍加時間の有意な増加(すなわち、細胞増殖の減少)が観察された。 (実施例11) Alv処理後のホモプラスミックm.14484T>C(p.Met64Val)ミトコンドリアDNA変異を有するND6変異細胞株に対する複合体I酵素活性の測定 材料及び方法 複合体I欠損症の原因となるホモプラスミックm.14484T>C(p.Met64Val)ミトコンドリアDNA変異体を有する複合体I変異体細胞を、他の文献に記載されるように(Lemanら, 2015)、5% CO2の存在下、37℃で10%ウシ胎児血清、1%グルタミン及び50μg/mlウリジンを補充した標準DMEM高グルコース培地(4.5g/L)又は低グルコース(0.5g/L)中で培養した。薬物濃度の効果を最適化するために、細胞を、48時間、種々の濃度の30nM~10μMのアルベリン又はビヒクル(DMSO)を補充した低グルコース-培地0.5g/lにシフトさせた(解糖ではなくOXPHOSに依存するよう細胞に強制するため)。 複合体Iの酵素活性は、記載されるように(Lemanら、2015; Desquiret-Dumasら、2012)、UVmc2分光光度計(SAFAS)上で37℃にて測定された。複合体Iの酵素活性について、50万個の細胞を超音波処理(5秒で6サイクル)し、次に反応培地(KH2PO4 100mM、pH7.4、KCN 1mM、NaN3 2mM、BSA 1mg/ml、ユビキノン-1 0.1mM及びDCPIP 0.075mM)中、37℃でインキュベートした。0.15mMのNADHを添加して反応を開始し、DCPIPの消失速度を600nmで2分間測定した。非特異的活性はロテノン(5μM)の存在下で決定した。 複合体Iの酵素活性はミトコンドリア質量のマーカーとして考えられるクエン酸シンターゼ(CS)活性に関して標準化された。5,5'-ジチオビス2-ニトロ安息香酸(DTNB) 0.15mM、オキサロ酢酸0.5mM、アセチルcoA 0.3mM、triton X100 0.1%で構成される予め温められた反応混合物に、10万個の細胞を添加することによりクエン酸シンターゼ活性を測定し、412nmにおけるCoA-SHの出現速度をDTNB還元後に評価した。 実験は少なくとも三重にして行われ、誤差バーは標準偏差を表す。処理細胞対未処理細胞(DMSO)の差は、スチューデントのt検定を用いて評価され、有意なp値は<0.05であった。 結果 結果を図14に示す。アスタリスク(*)は、未処理細胞(ビヒクル)に対する統計的有意差を示す。 データは、30nM及び300nMの濃度のALVが、クエン酸シンターゼ活性に標準されたND6変異細胞の複合体I酵素活性に有益な効果を有することを明らかにする。 (実施例12) 30nM~10μMの異なる濃度のAlvに曝露されたNDUFV1及びND6変異細胞株における乳酸産生の決定 変異細胞株は、対照細胞と比較して優先的な嫌気的解糖代謝を有する。乳酸産生の決定は、30nM~10μMの異なる濃度のAlvの存在下で48時間の曝露後に評価された。 材料及び方法 合計15,000細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種し、5% CO2の存在下、37℃で増殖させた。24時間後、細胞を30nM~10μMの異なる濃度のAlvで処理した。48時間後、上清を回収し、製造業者に従って乳酸決定キット(Abcamキットab65330)を用いて乳酸をアッセイした。乳酸濃度は、マイクロプレート分光光度計(CLARIOstar装置、BMG Labtech)を用いて測定した。 結果 結果を図15に示す。 Alvは対照線維芽細胞株(図15A)及びNDUFV1細胞株(図15B)の乳酸産生を変化させなかった。ND6細胞株(図15C)の乳酸産生は、ビヒクルと比較して、1μM及び3μMの濃度で有意に増加した。 (実施例13~14) 他のミトコンドリア酵母変異体におけるアルベリンの有効性 (実施例13) 種々の変異酵母株の増殖におけるアルベリンの影響 材料及び方法 酵母変異株: W303-1A株において、TAZ1のオープンリーディングフレームをTRP1のものに置換することにより、taz1Δ酵母株を構築した(MATa ade 2-1 ura3-1 his311,15 trp1-1 leu2-3,112 can1-100)(de Taffin de Tilques, M.ら、2018)。 W303-1A株において、SYM1のオープンリーディングフレームをkanMX6のものに置換することにより、sym1Δ酵母株を構築した(MATa ade 2-1 ura3-1 his311,15 trp1-1 leu2-3,112 can1-100)。 fmc1 MC6 MATa ade2-1 his3-11,15 trp1-1 leu2-3,112 ura3-1 fmc1::HIS3 [Δi ER OR] (Schwimmer, C.ら、2005)。 NARP MR14 MATa ade2-1 his3-11,15 trp1-1 leu2-3,112 ura3-1 CAN1 arg8::HIS3 ρ+ atp6-L183R (Rak, M.ら、2007)。 shy1Δ酵母株は、W303-1A株において、SHY1のオープンリーディングフレームをHISのものに置換することによって構築した(MATa ade 2-1 ura3-1 his311,15 trp1-1 leu2-3,112 can1-100) (Barrientos, A.ら、2002)。 液体YPDリッチ発酵培地(1%酵母抽出物、0.5%バックトペプトン、2%グルコース)中で0.5 OD600で増殖させた種々の酵母変異株の200μLを、寒天ベース固体呼吸培地上に広げた: fmc1、shy1及びNARP変異体についてはYPG(1%酵母抽出物、0.5%バックトペプトン、2%グリセロール)、又はtaz1及びsym1変異体についてはYPE(1%酵母抽出物、0.5%バックトペプトン、2%エタノール)のいずれかである。次に、小さな滅菌フィルターを寒天表面に置き、100nmolのアルベリン(ALV)をフィルターに添加した。次に、プレートを、shy1変異体について28℃で、又はfmc1、taz1、sym1及びNARP変異体について36℃で4~5日間インキュベートし、その後、スキャンした。DMSO、複合ビヒクルを陰性対照として用いる。 結果 図16に示されるように、増強された増殖のハローは、ALVがスポットされたフィルターの周囲で観察され、ALVがミトコンドリア疾患の試験されたすべての酵母モデルにおいて有効であることを示す。 (実施例14) taz1変異酵母株の呼吸成長欠陥の抑制をもたらすALV濃度の活性範囲の決定 材料及び方法 指数関数的に増殖した細胞を、ALV濃度を増加させながら、補充されたか又はされていない新鮮な非発酵性YPG培地に接種した。これらのアッセイは、バイオスクリーンデバイス内の96ウェルプレートで行われた。経時的に細胞密度を追跡し、呼吸成長欠陥を抑制するALV能力に関してのALVの最適濃度と、ALVが毒性を示す濃度の両方を決定した。taz1細胞を、炭素源として2%グリセロールを含有する液体培地中で70時間増殖させ、ALV濃度を増加させた(100pMから100μM)。 結果 図17に示されるように、100pMから10μMで、増加した呼吸成長が観察され、治療域が非常に大きいことを示す。毒性は100μMから見出されている。 (参考文献) Barrientos A, Korr D, Tzagoloff A. Shy1p is necessary for full expression of mitochondrial COX1 in the yeast model of Leigh's syndrome. EMBO J. 2002 Jan 15;21(1-2):43-52. Barth PG, Van den Bogert C, Bolhuis PA, Scholte HR, van Gennip AH, Schutgens RB, Ketel AG. X-linked cardioskeletal myopathy and neutropenia (Barth syndrome): respiratory-chain abnormalities in cultured fibroblasts. J Inherit Metab Dis. 1996;19(2):157-60. Desquiret-Dumas V, Gueguen N, BarthM, Chevrollier A, HancockS, Wallace DC, Amati-Bonneau P, HenrionD, Bonneau D, Reynier P, Procaccio V. Metabolically induced heteroplasmy shifting and L-arginine treatment reduce the energetic defect in a neuronal-like model of MELAS (2012) Biochimica et Biophysica Acta Molecular Basis of Disease. 1822(6):1019-29. De Taffin de Tilques M, Lasserre JP, Godard F, Sardin E, Bouhier M, Le Guedard M, Kucharczyk R, Petit PX, Testet E, di Rago JP, Tribouillard-Tanvier D. Decreasing cytosolic translation is beneficial to yeast and human Tafazzin-deficient cells. Microb Cell. 2018 Feb 18;5(5):220-232. El-Khoury R, Sellem CH, Coppin E, Boivin A, Maas MF, Debuchy R, Sainsard-Chanet A. Gene deletion and allelic replacement in the filamentous fungus Podospora anserina. (2008) Curr Genet. 53:249-58. Gorman GS, Schaefer AM, Ng Y, Gomez N, Blakely EL, Alston CL, Feeney C, Horvath R, Yu-Wai-Man P, Chinnery PF, Taylor RW, Turnbull DM, McFarland R. Prevalence of nuclear and mitochondrial DNA mutations related to adult mitochondrial disease. Ann Neurol. 2015 May; 77(5):753-9. Grad LI and Lemire BD. (2004) Mitochondrial complex I mutations in Caenorhabditis elegans produce cytochrome c oxidase deficiency, oxidative stress and vitamin-responsive lactic acidosis. Hum. Mol. Genet. 13(3):303-14. Johns DR, Neufeld MJ, Park RD. An ND-6 mitochondrial DNA mutation associated with Leber hereditary optic neuropathy. Biochem Biophys Res Commun. 1992 Sep 30;187(3):1551-7. Kamath RS and Ahringer J. (2003) Genome-wide RNAi screening in Caenorhabditis elegans. Methods 30(4) :313-21. Leman G, Gueguen N, Desquiret-Dumas V, Kane MS, Wettervald C, Chupin S, Chevrollier A, Lebre AS, Bonnefont JP, Barth M, Amati-Bonneau P, Verny C, Henrion D, Bonneau D, Reynier P, Procaccio V. Assembly defects induce oxidative stress in inherited mitochondrial complex I deficiency. Int J Biochem Cell Biol. 2015 May 27; 65:91-103. Maas MF, Sellem CH, Hoekstra RF, Debets AJ, Sainsard-Chanet A. (2007) Integration of a pAL2-1 homologous mitochondrial plasmid associated with life span extension in Podospora anserina. Fungal Genet Biol.; 44(7):659-71. Maas MF, Sellem CH, Krause F, Dencher NA, Sainsard-Chanet A. (2010) Molecular gene therapy: overexpression of the alternative NADH dehydrogenase NDI1 restores overall physiology in a fungal model of respiratory complex I deficiency. J Mol Biol.; 399(1):31-40. Procaccio V, Wallace D.C. Late-onset Leigh syndrome in a patient with mitochondrial complex I NDUFS8 mutations. Neurology (2004) 62:1899. Rak M, Tetaud E, Duvezin-Caubet S, Ezkurdia N, Bietenhader M, Rytka J, di Rago JP. A yeast model of the neurogenic ataxia retinitis pigmentosa (NARP) T8993G mutation in the mitochondrial ATP synthase-6 gene. J Biol Chem. 2007 Nov 23;282(47):34039-47. Sarzi E, Brown M, Lebon S, Chretien D, Munnich A, Rotig A, Procaccio V. A novel recurrent mtDNA mutation in ND3 gene causing Leigh syndrome and dystonia. American Journal of Medical Genetics (2007) 143: 33-41. Schon EA, Santra S, Pallotti F, Girvin ME. Pathogenesis of primary defects in mitochondrial ATP synthesis. Semin Cell Dev Biol. 2001 Dec;12(6):441-8. Schuelke M, et al. Mutant NDUFV1 subunit of mitochondrial complex I causes leukodystrophy and myoclonic epilepsy. Nat Genet. 1999; 21(3):260-61. Schwimmer C, Lefebvre-Legendre L, Rak M, Devin A, Slonimski PP, di Rago JP, Rigoulet M. Increasing mitochondrial substrate-level phosphorylation can rescue respiratory growth of an ATP synthase-deficient yeast. J Biol Chem. 2005 Sep 2;280(35):30751-9. Spinazzola A, Viscomi C, Fernandez-Vizarra E, Carrara F, D'Adamo P, Calvo S, Marsano RM, Donnini C, Weiher H, Strisciuglio P, Parini R, Sarzi E, Chan A, DiMauro S, Rotig A, Gasparini P, Ferrero I, Mootha VK, Tiranti V, Zeviani M. MPV17 encodes an inner mitochondrial membrane protein and is mutated in infantile hepatic mitochondrial DNA depletion. Nat Genet. 2006 May;38(5):570-5. Wang, K., Takahashi, Y., Gao, Z.-L., Wang, G.-X., Chen, X.-W., Goto, J., Lou, J.-N., Tsuji, S. Mitochondrial ND3 as the novel causative gene for Leber hereditary optic neuropathy and dystonia. Neurogenetics. 10: 337-345, 2009.

代表図 図1本件の代表的な図

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