(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月10日
【発行日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】タングステン化合物の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 34/36 20060101AFI20151120BHJP
C22B 3/24 20060101ALI20151120BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20151120BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
C22B34/36
C22B3/00 K
C22B7/00 D
B01J20/24 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
【出願番号】特願2014-509233(P2014-509233)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-102699(P2012-102699)
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-212554(P2012-212554)
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-10269(P2013-10269)
(32)【優先日】2013年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺師 吉健
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雅英
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴彦
【テーマコード(参考)】
4G066
4K001
【Fターム(参考)】
4G066AB29B
4G066BA09
4G066CA46
4G066DA07
4K001AA29
4K001BA22
4K001CA15
4K001DB08
4K001DB22
4K001DB35
(57)【要約】
【課題】
タングステンを含有する被処理物から、微生物を使用した簡単な処理工程で環境負荷を低減しつつ効率良くタングステンを回収する。
【解決手段】
タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、タングステン化合物溶液に微生物を投入し、タングステン化合物溶液を酸性に調整して微生物にタングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、タングステン化合物イオンを吸着した微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程とを有するタングステン化合物の回収方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、
前記タングステン化合物溶液に微生物を投入し、前記タングステン化合物溶液を酸性に調整して前記微生物に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、
前記タングステン化合物イオンを吸着した前記微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程と、を有することを特徴とするタングステン化合物の回収方法。
【請求項2】
前記吸着工程において、前記タングステン化合物溶液のpHを1〜4に調整することを特徴とする請求項1記載のタングステン化合物の回収方法。
【請求項3】
前記微生物がバクテリアであることを特徴とする請求項1または2に記載のタングステン化合物の回収方法。
【請求項4】
前記微生物が酵母であることを特徴とする請求項1または2に記載のタングステン化合物の回収方法。
【請求項5】
前記タングステン化合物が、タングステン酸化物であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のタングステン化合物の回収方法。
【請求項6】
前記被処理物が、超硬合金であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のタングステン化合物の回収方法。
【請求項7】
前記微生物を粉末状として、前記タングステン化合物溶液に投入することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のタングステン化合物の回収方法。
【請求項8】
前記回収洗浄工程の後に、さらに回収した前記微生物を乾燥、熱処理してタングステン化合物を得る工程と、を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のタングステン化合物の回収方法。
【請求項9】
前記回収洗浄工程の後に、さらに回収した前記微生物を、脱離用液に投入して中性またはアルカリ性に調整し、前記微生物から前記タングステン化合物イオンを脱離させる工程と、
前記脱離用液から前記微生物を分離し、前記脱離用液中の前記タングステン化合物イオンを熱分解してタングステン化合物を得る工程と、を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のタングステン化合物の回収方法。
【請求項10】
回収した前記タングステン化合物をさらに還元する還元工程を有することを特徴とする請求項8または9に記載のタングステン化合物の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超硬工具などのタングステンを含有する被処理物のタングステン成分を簡単な処理工程で効率良く回収するタングステン化合物の回収方法
【背景技術】
【0002】
超硬質合金は、超硬質な性質に基づいて切削工具などに多く使用されているが、タングステン、コバルト、タンタル、ニオブなどの高価な希少元素を含んでいるので、そのスクラップから希少元素をできるだけ多く回収することが望まれている。
【0003】
スクラップ超硬工具のリサイクル方法は、大きく分けて固形のスクラップを構成成分のまま粉末に再生する直接法と、スクラップを化学的に溶解し、後に構成成分毎に分離回収する間接法の二つに分類される。
【0004】
直接法の代表例は亜鉛処理法である(たとえば、特許文献1を参照)。この方法は化学薬品や水溶液を使用せず、亜鉛も回収再利用が可能で、エネルギー消費も少ない点で優れおり、処理設備への投資額もあまり大きくなく、小規模で工業生産が成り立つ利点がある。しかし、直接法ではスクラップがそのままの組成で回収されるため、予め選別をしっかりと行う必要があり、選別コストが負担となって、プロセスコストの利点を減じている。また、生産比率が高い切削工具の被覆層成分が同時に回収されるため再生材の品質が低下する問題がある。その為、新粉に混ぜて使用する必要がある等、適用制限があるのが大きな問題であり、適用範囲を拡大できる用途を同時に開発することが課題となっている。
【0005】
間接法である湿式化学処理法では、スクラップのリサイクル工程に鉱石精錬のプロセスを適用させる方法が一般的である(たとえば、特許文献2を参照)。超硬合金のスクラップはWC、Coを主成分とするため、図3に示すように、アルカリ抽出法やアルカリ溶解法によりNa
2WO
4の水溶液を作製し、超硬合金の添加元素として含まれるCo、Ti、Ta、Nb、Cr、V等のタングステン以外の不純物を、pH調整や硫化などにより難溶性の化合物として沈殿させ、ろ過して除去する。ろ過したNa
2WO
4の水溶液から、タングステン分離抽出し、アンモニアを加えて加熱、濃縮することによりパラタングステン酸アンモニウム(APT)を晶析し、これを熱分解することにより酸化タングステンを精製する。
【0006】
なお、アルカリ抽出法は、スクラップを予め酸化焙焼した後にNaOH水溶液でアルカリ抽出するものであり、研削スラッジなどの粉状のソフトスクラップの処理に適している。一方、アルカリ溶解法は、スクラップをNaNO
3、Na
2SO
4、Na
2CO
3等のナトリウム塩の溶融塩を用いて酸化すると同時に溶解するものであり、固形のハードスクラップの処理に適している。
【0007】
アルカリ溶解法を用いた従来工法では、たとえば酸化タングステンを得るために以下のようなプロセスが行われている。
(1)溶融塩溶解により生成したNa
2WO
4を水に溶解してNa
2WO
4水溶液を得る。なお、鉱石精錬では鉱石中に含まれるSiO
2、As、P、Mo等も溶解されるので、pH調整や硫化などの方法によりこれらの不純物を難溶性の化合物として沈殿させ、濾過して除去する。また、廃超硬工具のリサイクルでは、超硬合金の添加元素として含まれるCo、Ti、Ta、Nb、Cr、V等のタングステン以外の不純物を、pH調整や硫化などの方法により難溶性の化合物として沈殿させ、ろ過して除去する。
(2)Na
2WO
4水溶液にCaCl
2を加え、CaWO
4の沈殿を形成し、このCaWO
4のスラリーを水洗してNa成分を除去する。
(3)CaWO
4のスラリーにHClを加え、タングステン酸(H
2WO
4)の沈殿を生成し、このH
2WO
4スラリーを水洗してCaイオンを除去する。
(4)H
2WO
4にNH
4OHを加え、(NH
4)
2WO
4の水溶液を生成する。
(5)この水溶液を加熱・濃縮することにより、パラタングステン酸アンモニウム(APT)を晶出させる。
(6)APTを熱分解して酸化タングステン(WO
3)を得る。
【0008】
なお、Na
2WO
4水溶液を(NH
4)
2WO
4水溶液に変換する工程として、溶媒抽出法やイオン交換法なども行われている。
【0009】
湿式化学処理法を用いた場合、亜鉛処理法とは異なり鉱石精錬と同等の品質が得られ、リサイクルしたタングステンを利用制限なしに再使用できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平03−020445号公報
【特許文献2】特開2004−002927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来工法では、Na
2WO
4の水溶液からタングステンを化学的に精製する過程で、種々の化学薬品や水、イオン交換樹脂などを多量に必要とし、工数も多く煩雑なため、環境への負荷とエネルギー消費が多いという問題があった。また廃液量も多く、大規模な廃液処理設備や、イオン交換樹脂の再生工程なども必要となるという問題があった。
【0012】
本発明は、従来の湿式化学処理法におけるのような問題を解決するものであり、超硬工具などのタングステンを含有する被処理物から、微生物を使用した簡単な処理工程で環境負荷を低減しつつ効率良くタングステンを回収できるタングステン化合物の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のタングステン化合物の回収方法は、タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン溶液を得る工程と、前記タングステン溶液に微生物を投入し、前記タングステン溶液のpHを酸性に調整して前記微生物に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、前記タングステン化合物イオンを吸着した前記微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタングステン化合物の回収方法によれば、超硬工具などのタングステンを含有する被処理物から微生物を使用した簡単な処理工程で環境負荷を低減しつつ効率良くタングステンを回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態であるタングステン化合物の回収方法の概略を示すフローチャートである。
【図2】本発明の第2の実施形態であるタングステン化合物の回収方法の概略を示すフローチャートである。
【図3】従来のタングステン化合物の回収方法の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態として、図1に基づいて、超硬質合金スクラップから酸化タングステンを回収する方法について具体的に説明する。超硬質合金スクラップとは、金属タングステンや炭化タングステン(WC)等を主成分とする超硬質合金を用いた超硬工具の製造工程において生じるスクラップや使用済み工具などのハードスクラップのほか、研削スラッジなどの粉状のソフトスクラップが挙げられる。一般に超硬工具は、金属タングステンや炭化タングステン等の複合炭化物を主体とし、鉄、ニッケル、コバルト、銅などを結合相とし、必要に応じて添加物成分としてTiC、TaC、NbC、VC、Cr
3C
2等を含む超硬合金によって製造されており、具体的には、切削工具(チップ、ドリル、エンドミル等)、金型(成形ロール、成形型等)、土木鉱山用工具(石油掘削用工具、岩石粉砕用工具等)などがある。
【0017】
まず、このような超硬質合金スクラップの金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る。この時、予め酸化焙焼したスクラップをたとえばNaOH水溶液でアルカリ抽出してもよいし、NaNO
3、Na
2SO
4、Na
2CO
3等のナトリウム塩の溶融塩を用いて酸化すると同時に溶解するアルカリ溶解法を用いてもよい。たとえば、ソフトスクラップは反応性が高く制御が難しいためアルカリ抽出法を用いることが好ましく、ハードスクラップは酸化焙焼により表面部分しか酸化できないため、アルカリ溶解法を用いることが好ましい。
【0018】
このようにして得られたタングステン化合物溶液に、微生物を投入する。微生物としては、たとえば、E.coli(Escherichia coli)、Bacillus sp、Thiobacillus ferrooxidans、Streptomyces rimosus、Pseudomonas sp、Arthrobacter nicotianae、Shewanella algae、Shewanella oneidensisなどのバクテリアや、Saccharomyces cerevisiae,Schizosaccharomyces pombe, Candida albicans, Yarrowia lipolytica, Pichia pastoris, Hansenula polymorpha, Kluyveromyces lactis,酒かすや焼酎かすなどに含まれる酵母を用いることができる。中でも、酒かすや焼酎かすは、アルコール飲料などを製造する工程からの廃棄物として存在するために、資源の有効活用ができるとともに非常に安価に入手でき管理も容易であるため、さらに低コストでタングステンの回収を実現できる。
【0019】
たとえば、タングステン濃度を0.1〜10mmol/lに調整したタングステン化合物溶液に、E.coli(大腸菌)などの微生物を微生物濃度1×10
14〜1×10
17cells/m
3となるように投入する。温度は微生物の活動温度に応じて調整すればよく、通常は室温で構わない。微生物を投入したタングステン化合物溶液を、塩酸などを用いて酸性に調整することで、微生物の表面にアニオンであるタングステン化合物イオンを吸着させる(吸着工程)。
【0020】
ここで、本実施形態では、実験の結果、E.coli等のバクテリアよりも焼酎かす等の酵母のほうが、短い反応時間でタングステンを吸着し、かつ微生物の細胞1つ当たりが吸着できるタングステン量が増すことがわかっている。そのため、酵母のほうがバクテリアよりもタングステンの回収効率が高い。
【0021】
また、本実施形態では、微生物を濃縮した状態、特に、培養後の微生物を乾燥させた粉末状態でタングステン化合物溶液中に添加してもよい。実験の結果、この微生物を濃縮または粉末状態とすることにより、微生物の細胞1つに吸着できるタングステン量である平衡吸着量が高くなることがわかっている。ここで、平衡吸着量(qe:mmol/g)とは、吸着平衡状態に達した時の吸着量を示す。
【0022】
さらに、微生物を濃縮または粉末状態とすると、大容量の微生物貯蔵タンクが不要となるために、微生物の保管が容易であり、被処理物の処理量増加への対応も可能である。
【0023】
次に、タングステン化合物イオンを吸着した微生物を、遠心分離等の手段により脱水し、純水洗浄するなどして不純物を除去(回収洗浄工程)することで、容易にタングステン化合物を濃縮することができる。その後、たとえばタングステン化合物イオンを吸着した微生物を、たとえば大気中で300℃以上の温度で焼却するなどしてタングステン化合物を酸化することで、酸化タングステンが得られる。また、たとえば還元雰囲気にて500℃以上の温度で熱処理することで、タングステン化合物を還元・炭化して炭化タングステンを得ることができる。
【0024】
このように、本実施形態では、多段階の工程や多量の薬品が必要であった溶媒抽出法や溶離工程や樹脂の再生工程が必要なイオン交換法などのタングステンの分離抽出工程、およびそれに続くAPT化工程に替えて、微生物を用いた吸着法(バイオソープション)を利用することにより、工数を低減することができると同時に、使用する薬品量や廃液量が少ないため低コストでタングステン化合物を回収することができる。特に、酵母はアルコール飲料などを製造する工程からの廃棄物として非常に安価に入手でき管理も容易なため、微生物として酵母を用いることで、さらに低コストのタングステン化合物回収工程を実現できる。
【0025】
なお、吸着工程におけるタングステン化合物溶液のpHは4以下、好ましくは1〜3とすることで、タングステン化合物の回収率を高めることができ好ましい。たとえば、微生物としてE.coliを用いた場合にはpHを1〜3に調整すればよく、酵母を用いた場合にはpHを1〜4に調整すればよい。
【0026】
本実施形態によれば、超硬質合金スクラップとしてWC−Co系合金スクラップを用いて酸化焙焼、抽出法にてタングステンを回収する方法において、酸化焙焼によって、金属成分をアルカリ溶液に溶出させる際に、WCをアルカリ溶液に溶出できる形態に変化させる。WC−Co系合金スクラップを酸化焙焼して、WCとCoとをCoWO
4とWO
3とに変化させる。このとき、本実施形態によれば、磁石を用いて超硬質合金スクラップの焙焼物の焙焼度合いを確認することができる。すなわち、焙焼物が磁石に引き付けられない場合には、Coが存在しないかまたは存在量が少なく、焙焼によって完全に、またはほとんど酸化された既焙焼物と判断でき、焙焼物が磁石に引き付けられる場合には、特定量のCoが存在していることを示しており、焙焼によっても酸化されず内部に未焙焼部分が存在する未焙焼物と判断できる。このように、酸化度合いによって、焙焼物を既焙焼物と未焙焼物とに分離することができる。
【0027】
かかる方法を用いれば、見た目等で判別が難しい焙焼物の酸化の度合いの確認、および既焙焼物と未焙焼物との分離が容易である。また、この分離方法を用いることにより、未焙焼物が次工程であるアルカリ抽出工程に供給されることが少なくなることから、反応槽が未焙焼物によって傷ついて劣化するのを抑制することができるとともに、未焙焼物は回収されないため、未焙焼物を減らすことによってWの回収率を向上させることができる。さらに、未焙焼物は次工程のアルカリ抽出工程で濾別する必要があり、濾別に要する時間を短縮できるとともに、未焙焼物のみを分離して再度焙焼することができるので、焙焼装置の容量を小さくすることができる。
【0028】
なお、磁石を用いて既焙焼物と未焙焼物とを分離するには、焙焼工程を経た後の焙焼物を容器に入れたり、搬送ベルト上に載せたりするなどした状態で、焙焼物に磁力を作用させて分離すればよく、また、分離や分離後の回収を自動化することもできる。また、磁石としては永久磁石や電磁石を用いることができるが、電磁石のほうが強い磁力を発生するため、タングステンの回収装置を小型化できる。また、焙焼物を入れる容器を電磁石製とし、焙焼物を入れた後に通電させて未焙焼物を引き付け、引き付けられなかった既焙焼物を取り出して回収し、その後、電磁石への通電を止めて未焙焼物を取り出して回収すれば、容易に既焙焼物と未焙焼物とを分離できる。また、電磁石を用いた他の例としては、ロータリーキルン装置の焙焼物の取り出し口に電磁石を取り付け、焙焼物の取り出し時に電磁石により未焙焼物のみを引き付けて、引き付けられなかった既焙焼物を取り出せば、既焙焼物と未焙焼物との分離が可能となり、その後、電磁石の通電を止めた後に未焙焼物をロータリーキルン内に戻せば作業効率が向上する。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、図2に基づいて、超硬質合金スクラップから酸化タングステンを回収する方法について具体的に説明する。
【0030】
第1の実施形態と大きく異なる点は、投入した微生物を回収し、再利用する点である。最初に、第1の実施形態と同様に、超硬質合金スクラップの金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得、この溶液に前述のバクテリアや酵母等の微生物を投入し、微生物を投入したタングステン化合物溶液を、塩酸などを用いて酸性に調整することにより、微生物の表面にタングステン化合物イオンを吸着させる(吸着工程)。
【0031】
次に、タングステン化合物イオンを吸着した微生物を、遠心分離等の手段により脱水するとともに不純物を除去(回収洗浄工程)することで、タングステン化合物イオンを吸着した微生物を濃縮する。その後、濃縮したタングステン化合物イオンを吸着した微生物を純水などの脱離用液に投入して懸濁液を作成し、この懸濁液にNH
4Cl等のアンモニア溶液を加えることにより懸濁液を中性またはアルカリ性にする。懸濁液を中性またはアルカリ性、たとえばpH7以上にすることにより、タングステン化合物イオンが微生物から脱離用液中に脱離する。このとき、懸濁液をpH10以上とすることにより3分以内に80%以上のタングステン化合物イオンを微生物から脱離させることができる。
【0032】
次に、微生物と、この微生物から離脱したタングステン化合物イオンとを含む懸濁液を遠心分離やフィルターろ過を行うことにより、微生物と、タングステン化合物イオンを含む脱離用液とに分離する。
【0033】
その後、タングステン化合物イオンを含む脱離用液を加熱濃縮することにより、タングステン化合物をパラタングステン酸アンモニウム(APT)として晶析させる。その後、ATPを熱分解することにより、ATPを酸化して酸化タングステンを得ることができる。また、さらに得られた酸化タングステンを還元雰囲気中で熱処理して炭化することにより、炭化タングステンを得ることができる。
【0034】
このように、第2の実施形態においては、多段階の工程や多量の薬品が必要であった溶媒抽出法や溶離工程や樹脂の再生工程が必要なイオン交換法などのタングステンの分離抽出工程に替えて、微生物を用いた吸着法(バイオソープション)および脱着法(デソープション)を利用することにより、工数を低減することができると同時に、使用する薬品量や廃液量が少ないため低コストでタングステン化合物を回収することができる。また、第2の実施形態においては、微生物を再利用することができるので、微生物の廃棄に係るコストが不要になる他、微生物の調達費用(培養)、大量保管も低減することができる。
【実施例1】
【0035】
使用済の超硬合金製の切削インサートを粉砕して酸化焙焼し、酸化焙焼された既焙焼物をアルカリ溶液(NaOH水溶液)に溶出させ、タングステンイオンが溶解した表1の濃度のタングステン化合物含有溶液を得た。このタングステン化合物含有溶液を表1の温度およびpHに調整し、表1の添加形態で表1の濃度のE.coliを投入して、溶液を撹拌した。
【0036】
E.coliを投入してから3分後と60分後の溶液中のタングステン濃度を測定し、微生物を投入する前の溶液中のタングステン濃度に対して減じた割合(微生物投入前の溶液中のタングステン濃度−微生物投入後の溶液中のタングステン濃度)/微生物投入前の溶液中のタングステン濃度×100)(%)をE.coliがタングステンを吸着したタングステン(W)回収率として見積もった。結果は表1に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1の結果から明らかな通り、タングステン化合物溶液を中性にしてE.coliを添加した試料No.I−12以外は、E.coliの添加によってタングステン化合物含有溶液中のタングステン濃度が低くなり、E.coliがタングステンを吸着することがわかった。
【実施例2】
【0039】
実施例1と同様にして表2の濃度とpHのタングステン化合物含有溶液を調整し、23℃で表2の添加形態で酵母の微生物濃度が7×10
14cells/m
3の焼酎かすを投入して、溶液を撹拌した。焼酎かすを投入してから3分後と60分後の溶液中のタングステン濃度を測定し、微生物を投入する前の溶液中のタングステン濃度に対して減じた割合を焼酎かすがタングステンを吸着したタングステン(W)回収率として見積もった。結果は表2に示した。
【0040】
【表2】
【0041】
表2の結果から明らかな通り、焼酎かすの添加によってタングステン化合物含有溶液中のタングステン濃度が低くなり、焼酎かすがタングステンを吸着することがわかった。また、表1、2を比較すると、実施例2の焼酎かすを用いたほうが、低い微生物濃度の微生物の添加にも関わらず、高タングステン濃度のタングステン化合物含有溶液から短時間で高いタングステンの吸着ができ、タングステンの回収が可能となることがわかる。
【国際調査報告】