(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】パルス信号設定装置、レーダ装置、パルス信号設定方法及びパルス信号設定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/22 20060101AFI20151201BHJP
G01S 13/60 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
G01S13/22
G01S13/60 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2014-512441(P2014-512441)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-102603(P2012-102603)
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大 浩司
(72)【発明者】
【氏名】奥西 哲
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB04
5J070AC02
5J070AC06
5J070AE02
5J070AE04
5J070AF05
5J070AH34
5J070AK22
5J070AK35
5J070BA01
(57)【要約】
【課題】パルスペア法を用いて、レーダ装置に対する物標の相対速度を短時間で正確に得ることである。
【解決手段】パルス幅と繰り返し周波数と最大スタガ率とに関するデータを取得するデータ取得部491と、パルスペア処理の対象となるスイープの範囲の平均送信間隔と送信回毎の送信間隔との差によって速度一定の物標に対するパルスペア処理で生じる位相変化の当該スイープの範囲での総和が0又は0に近似できる特定のスタガパターンを出力するスタガパターン出力部492と、データ取得部491から与えられるパルス幅と繰り返し周波数と最大スタガ率及び、スタガパターン出力部492から出力される特定のスタガパターンを用いて、パルス信号の送信間隔を設定する設定部493とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信したパルス信号に対する物標からの反射波に係る複素受信信号を所定のスイープ数毎に位相変化量を算出してパルスペア処理を行うレーダ装置に適用されるパルス信号設定装置であって、 所定の繰返し周期を持つ基準送信タイミングに対して、所定時間だけ異なる設定送信タイミングを設定する設定部を備え、 前記設定部は、前記設定送信タイミングで送信されるパルス信号の前記所定のスイープ数毎の位相変化量と前記基準送信タイミングで送信されるパルス信号の前記所定のスイープ数毎の位相変化量とが略等しくなるように前記設定送信タイミングを設定することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパルス信号設定装置であって、 前記設定部は、前記所定のスイープ数毎に位相誤差を打ち消すように前記設定送信タイミングの組合せであるスタガパターンを生成するスタガパターン出力部を備え、 前記設定部は、前記スタガパターンに基づいて前記設定送信タイミングを設定することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記所定のスイープ数毎の前記位相誤差の総和が略ゼロとなるように前記スタガパターンを生成することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項4】
請求項2に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記所定のスイープ数毎のexp(jφm)の総和の偏角が略ゼロとなるスタガパターンを出力することを特徴とするパルス信号設定装置。 ただし、jは虚数単位を表し、φmはm番目(mは自然数)の前記設定送信タイミングに対応する前記複素受信信号の位相変化量と、前記所定のスイープ数での前記複素受信信号の平均位相変化量との差を表す。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記設定送信タイミングの各送信間隔と前記所定の繰返し周期との差の3乗の総和が0になるスタガパターンを出力することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、絶対値が同じ正負の実数のペアを複数組用いて形成されているスタガパターンを出力することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか一項に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記特定のスタガパターンを複数記憶している記憶部と、 前記記憶部に記憶されている複数のスタガパターンから1つを選択する選択部とを有することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか一項に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記特定のスタガパターンの条件に当て嵌まるパターンを生成するパターン生成部を有し、パターン生成部が生成するパターンに基づいて無作為にスタガパターンを出力することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項9】
送信したパルス信号に対する物標からの反射波に係る複素受信信号を出力する送受信装置と、 前記送受信装置が送信するパルス信号を設定する請求項1から8のいずれかに記載のパルス信号設定装置を含み、前記送受信装置が出力する複素受信信号のパルスペア処理を行ない、物標の相対速度を推定する信号処理装置と、を備えるレーダ装置。
【請求項10】
送信したパルス信号に対する物標からの反射波に係る複素受信信号を所定のスイープ数毎に位相変化量を算出してパルスペア処理を行うレーダ装置に適用されるパルス信号設定方法であって、 所定の繰返し周期を持つ基準送信タイミングに対して、所定時間だけ異なる設定送信タイミングを設定する設定ステップを備え、 前記設定ステップでは、前記設定送信タイミングで送信されるパルス信号の前記所定のスイープ数毎の位相変化量と前記基準送信タイミングで送信されるパルス信号の前記所定のスイープ数毎の位相変化量とが略等しくなるように前記設定送信タイミングが設定されることを特徴とするパルス信号設定方法。
【請求項11】
送信したパルス信号に対する物標からの反射波に係る複素受信信号を所定のスイープ数毎にパルスペア処理するレーダ装置に適用されるパルス信号設定装置であって、 所定の繰り返し周期の基準送信タイミングが入力され、 前記基準送信タイミングに対して所定時間だけ異なる設定送信タイミングを設定する設定部を備え、 前記所定時間は、前記設定送信タイミングで送信されるパルス信号の前記所定のスイープ数における位相変化量が、前記基準送信タイミングで送信されるパルス信号の前記所定のスイープ数における位相変化量と略等しくなる時間であることを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項12】
請求項11に記載のパルス信号設定装置であって、 前記設定部は、前記所定のスイープ数毎に位相誤差を打ち消すように前記設定送信タイミングの組合せであるスタガパターンを生成するスタガパターン出力部を備え、 前記設定部は、前記スタガパターンに基づいて前記設定送信タイミングを設定することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項13】
請求項12に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記所定のスイープ数毎の前記位相誤差の総和が略ゼロとなるように前記スタガパターンを生成することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項14】
請求項12に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記所定のスイープ数毎のexp(jφm)の総和の偏角が略ゼロとなるスタガパターンを出力することを特徴とするパルス信号設定装置。 ただし、jは虚数単位を表し、φmはm番目(mは自然数)の前記設定送信タイミングに対応する前記複素受信信号の位相変化量と、前記所定のスイープ数での前記複素受信信号の平均位相変化量との差を表す。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記設定送信タイミングの各送信間隔と前記所定の繰返し周期との差の3乗の総和が0になるスタガパターンを出力することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項16】
請求項15に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、絶対値が同じ正負の実数のペアを複数組用いて形成されているスタガパターンを出力することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項17】
請求項12から16のいずれか一項に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記特定のスタガパターンを複数記憶している記憶部と、 前記記憶部に記憶されている複数のスタガパターンから1つを選択する選択部とを有することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項18】
請求項12から17のいずれか一項に記載のパルス信号設定装置であって、 前記スタガパターン出力部は、前記特定のスタガパターンの条件に当て嵌まるパターンを生成するパターン生成部を有し、パターン生成部が生成するパターンに基づいて無作為にスタガパターンを出力することを特徴とするパルス信号設定装置。
【請求項19】
送信したパルス信号に対する物標からの反射波に係る複素受信信号を出力する送受信装置と、 前記送受信装置が送信するパルス信号を設定する請求項11から18のいずれかに記載のパルス信号設定装置を含み、前記送受信装置が出力する複素受信信号のパルスペア処理を行ない、物標の相対速度を推定する信号処理装置と、を備えるレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置において繰り返し送信されるパルス信号の送信間隔を設定するためのパルス信号設定装置、そのようなパルス信号設定装置を含むレーダ装置、パルス信号設定方法及びパルス信号設定プログラム
【背景技術】
【0002】
レーダ装置では一般に、発射された電波の反射波をとらえることによって物標(航空機や船舶など)が検出され、検出された物標がディスプレイ上に表示される。船舶などに搭載されるレーダ装置では、自船周辺に存在する船舶(他船)から出力される電波によるレーダ装置間での相互干渉の影響を抑制する必要が生じる。このようなレーダ装置間での相互干渉の影響を抑制する手段の一つとして、特許文献1(特許第3561497号公報)などに記載されているスタガトリガ方式が知られている。スタガは、スイープ間で干渉信号の受信時刻の重複を避けるために、任意のパターンに基づいてパルス信号の送信間隔を変化させる処理である。
【0003】
ところで、船舶の衝突事故を予防するためには、自船周辺に存在する他船の位置及び、自船に対する他船の接近速度を操船者が知ることが重要である。ここで、接近速度は他船の相対速度の半径方向成分を表す。他船の接近速度を算出する方法の一つにパルスペア法(自己相関法ともいう)がある。パルスペア法は、送信周期間における複素受信信号の複素自己相関係数を計算し、この結果に基づいて他船の接近速度を算出する方法である。このパルスペア法は、映像上に他船の航跡を表示するエコートレイルや複数回のスキャンで得られる反射波の信号強度に基づいて他船の速度を計算する自動衝突予防援助装置(ARPA)に比べると、短い時間で接近速度を見積もることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パルスペア法は一定の送信周期でパルス信号を送信することを前提とした処理方法である。そのため、スタガトリガ方式で得られる複素受信信号に対してパルスペア法を適用すると、スタガにともなうサンプリング時刻のシフトにより、送信ごとの位相変化量にずれが生じる。この位相変化量のずれ(位相誤差)から他船の接近速度の推定値に誤差が発生する。以下では、この誤差をたんに速度誤差とよぶ。
【0005】
本発明の目的は、パルスペア法を用いて、レーダ装置に対する物標の相対速度を短時間で正確に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
の課題を解決するためのパルス信号設定装置は、送信したパルス信号に対する物標からの反射波に係る複素受信信号を所定のスイープ数毎に位相変化量を算出してパルスペア処理を行うレーダ装置に適用されるパルス信号設定装置であって、所定の繰返し周期を持つ基準送信タイミングに対して、所定時間だけ異なる設定送信タイミングを設定する設定部を備え、設定部は、設定送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量と基準送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量とが略等しくなるように設定送信タイミングを設定することを特徴とするものである。
【0007】
また、の課題を解決するためのパルス信号設定装置は、送信したパルス信号に対する物標からの反射波に係る複素受信信号を所定のスイープ数毎にパルスペア処理するレーダ装置に適用されるパルス信号設定装置であって、所定の繰り返し周期の基準送信タイミングが入力され、基準送信タイミングに対して所定時間だけ異なる設定送信タイミングを設定する設定部を備え、所定時間は、設定送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数における位相変化量が、基準送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数における位相変化量と略等しくなる時間であることを特徴とするものである。
【0008】
このパルス信号設定装置によれば、設定部が、設定送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量と基準送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量とが略等しくなるように設定送信タイミングを設定するので、所定のスイープ数毎の位相変化量によってパルスペア処理のおいて生じている位相誤差を略ゼロにすることができる。その結果、パルスペア処理によって推定される速度において、位相誤差にともなう速度誤差の発生を抑制することができる。
【0009】
設定部が、設定送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量と基準送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量とが略等しくなるように設定送信タイミングを設定するというのを言い換えれば、次のようになる。すなわち、基準送信タイミングに対して設定送信タイミングが異なる所定時間を、設定送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数における位相変化量が、基準送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数における位相変化量と略等しくなる時間に設定するということである。
【0010】
の課題を解決するためのパルス信号設定方法は、送信したパルス信号に対する物標からの反射波に係る複素受信信号を所定のスイープ数毎に位相変化量を算出してパルスペア処理を行うレーダ装置に適用されるパルス信号設定方法であって、所定の繰返し周期を持つ基準送信タイミングに対して、所定時間だけ異なる設定送信タイミングを設定する設定ステップを備え、設定ステップでは、設定信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量と基準送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量とが略等しくなるように設定送信タイミングが設定されることを特徴とするものである。
【0011】
このパルス信号設定方法によれば、設定ステップにおいて、設定送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量と基準送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量とが略等しくなるように設定送信タイミングが設定されるので、所定のスイープ数毎の位相変化量によってパルスペア処理のおいて生じている位相誤差を略ゼロにすることができる。その結果、パルスペア処理によって推定される速度において、位相誤差にともなう速度誤差の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パルスペア処理によって推定される速度において、位相誤差にともなう速度誤差の発生を抑制でき、レーダ装置に対する物標の相対速度を、パルスペア法を用いて短時間で正確に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1レーダ装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】図1に示されているスタガパターン設定装置の周辺の構成を示すブロック図。
【図3】送信信号発生器の設定信号を説明するためのタイミングチャート。
【図4】(a)スタガパターンの一例を説明するための概念図。(b)スタガパターンの第2の例を説明するための概念図。(c)スタガパターンの第3の例を説明するための概念図。(d)スタガパターンの第4の例を説明するための概念図。
【図5】スタガパターンを用いた送信間隔パターンの作成手順を示す概念図。
【図6】パルス信号の送信間隔の設定手順を示すフローチャート。
【図7】最大スタガ率に対する速度誤差の変化を示すグラフ。
【図8】第2スタガパターン設定装置の周辺の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態> 以下、本発明の第1レーダ装置について図面を用いて説明する。図1は、船舶用レーダ装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置10は、例えば船舶などに設けられ、海上の他船やブイ、陸地などの物標を検出するための船舶用レーダ装置である。図1に示されているように、このレーダ装置10は、アンテナ20、送受信装置30、信号処理部40および表示装置50を備えている。
【0015】
以下、レーダ装置10を構成する各要素について詳細に説明する。ここでは、レーダ装置の一例として船舶用レーダ装置について説明するが、本発明は、パルス状電波(パルス信号)を送信した後に物標からの反射波(物標信号)を含む受信信号を受信するレーダ装置に適用することができ、例えば、気象レーダ、港湾監視レーダ等の他の用途のレーダ装置にも適用することができる。このようなレーダ装置には、送信機に半導体増幅器を用いる固体化レーダ装置だけでなく、マグネトロンレーダ装置も含まれる。
【0016】
〔アンテナ20の構成〕 このレーダ装置10において、アンテナ20は、鋭い指向性を持ったパルス信号のビームを送信するとともに、その周囲にある物標からの反射波を受信する。ビーム幅は、例えば2度に設定される。アンテナ20は、水平面内で回転しながら、の送信と受信を繰り返す。回転数は、例えば24rpmである。アンテナ20が1回転する間に行う処理の単位を1スキャンという。また、パルス信号を送信してから次のパルス信号を送信する直前までの期間における送信と受信の動作をスイープという。1スイープの時間、すなわち平均送信周期(平均送信間隔)は、例えば1msである。そして、1スイープ当たりの受信データ数をサンプル点数という。
【0017】
アンテナ20では、パルス信号を、ある方向へ集中して発射することで、物標からの反射波(物標信号)を含む受信信号を受信する。受信信号は、物標信号成分のほか、クラッタや他のレーダ装置からの電波干渉波や受信機雑音などの成分を含む場合もある。
【0018】
アンテナ20から物標までの距離は、その物標信号を含む受信信号の受信時間と、当該受信信号に対応するパルス信号の送信時間との時間差から求められる。また、物標の方位は、対応するパルス信号を送信するときのアンテナ20の方位から求められる。
【0019】
〔送受信装置30の構成〕 送受信装置30は、パルス信号を生成してアンテナ20へ送出する。また、送受信装置30は、アンテナ20から受信信号を取り込み、受信信号を周波数変換する。この実施形態では、送受信装置30は、送信信号発生器31、送信機32、局部発振器33、送受切換器34および周波数変換器35を備える。
【0020】
送信信号発生器31は、異なる時間間隔で、中間周波数のパルス信号を生成して送信機32へ出力する。中間周波数のパルス信号を異なる時間間隔で発生することにより、パルス信号の送信間隔が変化する(スタガトリガ方式)。送信信号発生器31は、後述するスタガパターン設定装置から与えられる設定信号Stに応じた時間間隔でパルス信号を発生する。
【0021】
この実施形態において、送信信号発生器31が生成するパルス信号は、例えば、チャープ信号として知られている周波数変調信号とするが、送信信号発生器31が位相変調信号や無変調のパルスを生成する場合にも、レーダ装置10は同様の構成をとることが可能である。なお、送信信号発生器31によって生成されるパルス信号の送信間隔やパルス幅Wなどは、表示装置50において設定されるレーダ映像の表示距離などに応じて変更される。
【0022】
送信機32は、送信信号発生器31の出力信号を局部発振器33から出力されるローカル信号と混合し、送信信号発生器31の出力信号を周波数変換して送受切換器34へ出力する。送信機32の出力信号の周波数帯は、例えば、3GHz帯または9GHz帯などである。
【0023】
送受切換器34は、アンテナ20と接続可能な構成となっている。送受切換器34は、アンテナ20と送受信装置30との間の信号の切り換えを行う。すなわち、この送受切換器34では、送信時には、パルス信号が受信回路(すなわち周波数変換器35)に回り込まないようにし、受信時には、受信信号が送信回路(すなわち送信機32)に回り込まないようにする。送受切換器34としては、例えば、サーキュレータ(Circulator)等の電子部品が用いられる。
【0024】
周波数変換器35は、送受切換器34を介してアンテナ20から出力される受信信号を取り込む。そして、周波数変換器35は、受信信号を局部発振器33から出力されるローカル信号と混合し、送受切換器34の出力信号を中間周波数に変換して後段の信号処理部40へ出力する。
【0025】
なお、図1の送受信装置30では、増幅器やフィルタの図示を省略している。
【0026】
〔信号処理部40の構成〕 信号処理部40は、受信信号をデジタル信号に変換して信号処理を行う。そのために、この実施形態では、信号処理部40は、A/D(Analog to Digital)変換器41、直交検波部42、パルス圧縮部43、速度推定部44、船速補正部45、振幅算出部46、振幅平滑部47、表示制御部48及びスタガパターン設定装置49を備える。信号処理部40あるいはその一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデジタル回路で実現することが可能である。
【0027】
A/D変換器41は、周波数変換器35(送受信装置30)から出力されるアナログ値の中間周波数信号をデジタル信号に変換する。
【0028】
直交検波部42は、A/D変換器41から出力されるデジタル値の中間周波数信号を直交検波する。
【0029】
具体的には、直交検波部42は、A/D変換器41の出力の受信データから、I(In-Phase)信号およびこれとπ/2だけ位相の異なるQ(Quadrature)信号を生成する。ここで、I信号,Q信号(以下、適宜「I」,「Q」と略記する。)はそれぞれ受信データの複素エンベロープ信号の実数部,虚数部である。以下では、複素エンベロープ信号を単に複素受信信号という。複素受信信号の振幅は、(I
2+Q
2)
1/2で表され、複素受信信号の位相は、tan
−1(Q/I)で表される。
【0030】
パルス圧縮部43は、例えば、フーリエ変換部、マッチドフィルタ、逆フーリエ変換部を含み、直交検波部42からの出力信号(I,Q)をパルス圧縮する。パルス圧縮部43において、出力信号(I,Q)はフーリエ変換されて離散化され、複数区間に分割されて周波数領域でパルス圧縮処理が行なわれる。その後に、逆フーリエ変換、および重複加算されることで、パルス圧縮信号が算出される。パルス圧縮信号はI信号、Q信号で表される。以下ではパルス圧縮信号を複素数のデータ(I+jQ)として扱う。この複素数のデータを受信データとよぶ。1スキャンあたりの送受信の回数(=スイープ数)をK、1スイープあたりの受信データ数をNとする。k番目(0≦k≦K-1)のスイープでn番目(0≦n≦N-1)にサンプリングされる受信データをS[k,n]で表す。kはアンテナ方位に対応し,nは距離に対応する。以下では、kを方位番号、nを距離番号とよぶ。
【0031】
速度推定部44は、パルス圧縮部43が出力する受信データS[k,n](0≦k≦K-1,0≦n≦N-1)にパルスペア法を適用して(パルスペア処理を行なって)、各座標(k、n)での速度推定値を算出する。以下、この速度推定値を速度データといい、V[k,n] (0≦k≦K-1,0≦n≦N-1)で表す。パルスペア法は(1)式で表される。ただし、λは送信周波数の波長、PRI
aveは方位番号kがk-(K
P-1)≦k≦k+(K
P-1)の範囲における平均送信間隔、K
Pはパルスペア法の処理データ半幅、arg[・]は複素数の偏角を表す。なお、平均送信間隔PRI
aveは、パルスペア処理の対象となるスイープの範囲(k-(K
P-1)≦k≦k+(K
P-1))の平均値で与えられる。
【0033】
船速補正部45は、速度推定部44が出力する各速度データV[k,n] (0≦k≦K-1,0≦n≦N-1)に対して船速補正処理を施す。例えば、各速度データV[k,n] (0≦k≦K-1,0≦n≦N-1)から、各時点でのアンテナ速度や自船の速度などをもとに補正して、物標の絶対速度を算出する。
【0034】
振幅算出部46は、各受信データS[k,n]の振幅を算出する。振幅算出部46で算出される振幅値を振幅データといい、A[k,n](0≦k≦K-1,0≦n≦N-1)で表す。
【0035】
振幅平滑部47は、振幅算出部46から出力される振幅データA[k,n]に方位方向の移動平均処理を施す。振幅平滑部47において移動平均処理が施されたデータを平滑後振幅データといい、A
s[k,n](0≦k≦K-1,0≦n≦N-1)で表す。この移動平均処理は、次式で表される。ただし、K
Sは移動平均処理の処理データ半幅を表す。
【0037】
表示制御部48は、船速補正部45から出力される補正後の速度データ(0≦k≦K-1,0≦n≦N-1)及び平滑後振幅データA
s[k,n](0≦k≦K-1,0≦n≦N-1)に対して、振幅閾値処理と速度閾値処理を実行する。
【0038】
振幅閾値処理は、予め設定されている閾値を超える振幅を持つデータを物標のデータとして認識する処理である。従って、閾値よりも小さい振幅しか持たないデータは雑音として表示の対象から除去される。また、速度閾値処理は、振幅閾値処理において物標らしいと認識されたデータについて、その速度ベクトルの長さが所定の閾値を超えるものを移動目標として認識する処理である。従って、閾値よりも小さい速度しか持たないデータは固定している物標として表示の対象から除去される。
【0039】
表示制御部48は、振幅閾値処理と速度閾値処理を実行することにより得られるデータを、移動目標のデータとして表示装置50に出力する。表示装置50では、表示制御部48から与えられるデータに基づいて移動目標を表示する。
【0040】
また、表示装置50は、レーダ装置10で計測する距離範囲やレンジなどを入力できるように構成されている。表示制御部48には、距離範囲やレンジなど入力データが表示装置50から入力される。表示制御部48では、表示装置50からの入力データに基づいて、最大スタガ率J
maxと繰り返し周波数PRFとパルス幅Wをスタガパターン設定装置49に出力する。この明細書において、最大スタガ率J
maxは、平均送信間隔PRI
aveに対する最大スタガ間隔ΔT
maxの比で定義される。ここで、スタガ間隔は各送信間隔と平均送信間隔との差で表される。例えば、パルス信号の平均送信間隔PRI
aveに対して、最も長い送信間隔T
maxがPRI
ave+ΔT
maxで与えられるとき、最大スタガ率J
maxは、J
max=ΔT
max÷PRI
ave×100である。なお、一般にスタガ率Jは、スタガ間隔ΔTを用いて、J=ΔT÷PRI
ave×100で与えられる。
【0041】
スタガパターン設定装置49は、最大スタガ率J
maxと繰り返し周波数PRFとパルス幅Wから設定信号Stを生成して、発信信号発生器31に設定信号Stを出力する。
【0042】
〔スタガパターン設定装置49の構成〕 スタガパターン設定装置49は、図2に示されているように、データ取得部491とスタガパターン出力部492と設定部493とを備えている。データ取得部491は、最大スタガ率J
maxと繰り返し周波数PRFとパルス幅Wを示す入力データを表示制御部48から取得する。取得した入力データに基づいて、最大スタガ率J
maxと繰り返し周波数PRFとパルス幅Wを設定部493に与える。
【0043】
スタガパターン出力部492には、メモリ49aが割り当てられている。図2には、スタガパターン出力部492がメモリ49aを内部に有する場合が例示されているが、スタガパターン出力部492は、メモリ49aをスタガパターン出力部492の外部に有していてもよい。このメモリ49aは、複数種類のスタガパターンを記憶している。このメモリ49aに記憶されているスタガバターンについては、後ほど詳しく説明する。スタガパターン出力部492は、メモリ49aに記憶されている複数のスタガパターンの中から1つのスタガパターンを選択して設定部493に対して出力する。
【0044】
設定部493は、データ取得部491で取得した最大スタガ率J
maxと繰り返し周波数PRFとパルス幅W及び、スタガパターン出力部492から出力されたスタガパターンから、図3に示されている設定信号Stを生成して送信信号発生器31に出力する。設定信号Stは、一般に、パルス信号PS毎に送信間隔Tが変化する。換言すると、一般的に、図3のn−1番目のパルス信号PS
n-1とn番目のパルス信号PS
nとの送信間隔T
nが、m−1番目のパルス信号PS
m-1とm番目のパルス信号PS
mとの送信間隔T
mとは異なるものになる。ただし、特定の2つのスタガ間隔が同じになることはあり得る。n番目の送信間隔T
nは、n番目のスタガ間隔ΔT
nと平均送信間隔PRI
aveとを用いて、T
n=PRI
ave+ΔT
nのように表される。
【0045】
〔スタガパターンの説明〕 次に、スタガパターン出力部492から出力されるスタガパターンについて説明する。図4には、従来のスタガパターンの例と本発明のスタガパターンの例(所定のスイープ数が8の場合の例)が示されている。図4(a)に示されているスタガパターンは、第1項から第8項までの(8つのスイープ毎の)各項の数値を3乗して、3乗した数値の総和が0になるように第1項から第8項までの数値が選定されている。
【0046】
一方、図4(b)に示されている従来のスタガパターンは、第1項から第8項までの各項の数値を3乗して、3乗した数値の総和が0にはならない。図4(b)の例では、第1項から第8項までの各項の数値を3乗して、3乗した数値の総和を求めると、108になる。
【0047】
図4(a)のスタガパターンを一般化して示すと、図4(c)のように表せる。図4(c)及び図4(d)のアルファベットの小文字が示すのは実数の絶対値である。ただし、信号処理装置40でデータ処理することを考えるとデータ量を少なくするためにアルファベットの小文字が示すものは正の整数であることが好ましい。図4(c)のスタガパターンとは各値が対応する項が異なるスタガパターンが図4(d)に示されている。図4(c)と図4(d)とを比較して分かるように、スタガパターンを構成する数値の並ぶ順序が異なってもよい。
【0048】
図5には、図4(a)に記載されているスタガパターンを用いて送信間隔パターン(PRIパターン)を作成する手順が概念的に示されている。図5に示されているPRIパターンは、最大スタガ率16%、最小スタガ間隔20μsの条件で、作成されたものである。図5のスタガなしPRIパターンをスタガ間隔パターンだけ変化させることにより、図5のスタガありPRIパターンを指示する設定信号Stが図2のスタガパターン出力部49から出力される。このスタガパターン出力部49の設定信号Stを受けた送受信装置30では、図5のスタガありPRIパターンの送信間隔でパルス信号PSの送信が繰り返される。最小スタガ間隔ΔT
minは次式で表される。
【0050】
上述のようなスタガパターンを用いた設定手順について図6を用いて簡単に説明する。まず、スタガパターン設定装置49のデータ取得部491が、パルス幅Wと繰り返し周波数PRFと最大スタガ率J
maxとに関するデータを取得する(ステップS1)。次に、exp(jφ
n)の総和の偏角が0となるか又は0に近似できるスタガパターンを出力する(ステップS2)。スタガパターン出力部492が、例えば、図4(a)や図4(b)に示されているゼロ奇数乗和パターンを多数記憶しているメモリ49aからスタガパターンを一つ選択する。ここで、ゼロ奇数乗和パターンとは、パルスペア法の処理データ幅2K
P−1のスイープ範囲(所定のスイープ数)において、各送信間隔と平均送信間隔との差ΔT
mの奇数乗の総和が0となるスタガパターンをいう。次に、データ取得部491から与えられるパルス幅Wと繰り返し周波数PRFと最大スタガ率とJ
max及び、スタガパターン出力部492から出力されるスタガパターンを用いて、設定部493が送信信号発生器31に出力してパルス信号の送信間隔を設定する(ステップS3)。
【0051】
<特徴> (1)以上説明したように、本実施形態のスタガパターンは、パルスペア処理の対象となるスイープ範囲において(所定のスイープ数毎に)、各送信間隔(設定送信タイミングの各送信間隔)と平均送信間隔(基準送信タイミングの所定の繰返し周期)との差ΔT
mを3乗して、3乗した数値の総和を求めると0になる。これを数式で示すと、(2)式になる。
【0053】
(1)式において、arg[・]内をzとおくと、zは(3)式で表される。ただし、φ
aveはパルスペア処理の対象となるスイープ範囲(所定のスイープ数)における物標からの受信信号の平均位相変化量を表し、φ
mはm番目(mは自然数)の送信間隔に対応する物標からの受信信号の位相変化量とφ
aveとの差を表す。
【0055】
スタガトリガ方式を用いない場合、(3)式のφ
mはいずれもゼロとなる。したがって、スタガにともなう位相誤差δφは、(4)式で与えられる。
【0059】
(5)式の右辺の分子αは、exp(jφ
m)をφ
m=0においてテイラー展開し、かつφ
m=2πf
dΔT
mを代入して、次式で与えられる。ただし、f
dは物標の速度に対応するドップラ周波数を表す。
【0061】
(2)式が成り立っているときには、(5)式のαは0又は0に近似された値となるため、位相誤差δφは、0又は0に近似された値を取る。従って、(2)式を満たすスタガパターンを用いることによって位相誤差δφを極めて小さな値にすることができる。
【0062】
もちろん、(2)式を満たす場合であっても(5)式が0にならない場合がある。例えば、スタガパターンが、-2、-2,−2,−1,−1,−1,3,0のような場合である。しかし、(2)式を満足させることにより、従来に比べて位相誤差δφを小さくすることはできる。位相誤差δφをなくすためには、(4)式の右辺、すなわちexp(jφ
n)の総和の偏角が0になる、例えば図4(c)や図4(d)に示したような特定のスタガパターンを用いる。ここで、jは虚数単位を表し、φ
mはm番目(mは自然数)の送信間隔に対応する物標からの反射信号の位相変化量と、パルスペア処理の対象となるスイープ範囲内の平均送信間隔に対応する物標からの反射信号の平均位相変化量との差を表す。
【0063】
換言すれば、(4)式の右辺は、パルスペア処理の対象となるスイープの範囲の平均送信間隔と送信回毎の送信間隔との差によって速度一定の物標に対するパルスペア処理で生じる位相変化の当該スイープの範囲(所定のスイープ数)での総和である。
【0064】
従って、各送信間隔と平均送信間隔との差(ΔT
m)の奇数乗の総和がいずれも0となるようなスタガパターンを用いると、exp(jφ
m)の総和の偏角を0にすることができる。また、各送信間隔と平均送信間隔との差(ΔT
m)の3乗の総和が0になるスタガパターンを用いるとexp(jφ
m)の総和の偏角を0に近似することができる。なお、各送信間隔と平均送信間隔との差(ΔT
m)の1乗の総和はスタガパターンによらず常にゼロとなる。
【0065】
以上のように、exp(jφ
m)の総和の偏角が0となるか、あるいは偏角を0に近似することができるスタガパターンを用いると、スタガに起因する速度誤差を0又はほぼ0にすることができる。
【0066】
図7は、最大スタガ率に対する速度誤差の変化を示すグラフである。図7に示されている2つの曲線は、図4(a)に示されているゼロ奇数乗和パターンを用いた場合の変化と、図4(b)に示されている非ゼロ奇数乗和パターン(各送信間隔と平均送信間隔との差ΔT
mの奇数乗の総和が0とならないスタガパターン)を用いた場合の変化を示している。ただし、平均送信間隔を500μs、物標の速度を30knot,K
Pを5としている。
【0067】
図7に△で示されている非ゼロ奇数乗和パターンでは、最大スタガ率が上がるにつれて、速度誤差は増大する。一方、図7に○で示されているゼロ奇数乗和パターンでは、64%以下の最大スタガ率に対して速度誤差が0になる。理論的には、ゼロ奇数乗和パターンは100%以下の任意の最大スタガ率に対して速度誤差がゼロとなる。
【0068】
ところで、スタガパターン設定装置49は請求項1のパルス信号設定装置に相当し、設定部493は請求項1の設定部に相当し、請求項1に記載されている基準送信タイミングは、例えば、図5に示されているスタガなしPRIパターンがスタガパターン出力部492から設定部493に入力されたときに設定信号Stが出力されるタイミングに対応している。一方、請求項1に記載されている設定送信タイミングは、例えば、図5に示されているスタガありPRIパターンがスタガパターン出力部492から設定部493に入力されたときに設定信号Stが出力されるタイミングに対応している。従って、請求項1に記載されている設定送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量と基準送信タイミングで送信されるパルス信号の所定のスイープ数毎の位相変化量とが略等しくなれば、上述の式(2)の左の項の値が0又は0に近似する値をとることになる。
【0069】
例えば、図5のスタガなしPRIパターンの間隔は500μsであるが、この500μsが所定の繰返し周期に対応している。これに対して、所定の時間だけ異なる設定送信タイミングの所定の時間とは、スタガ間隔パターンの各時間である。例えば、PRI番号1の基準送信タイミングからPRI番号2の基準送信タイミングまでが500μsであるのに対し、PRI番号1の設定送信タイミングからPRI番号2の設定送信タイミングまでが480μsであるから、20μsだけ異なることになる。
【0070】
(2)各送信間隔と平均送信間隔との差ΔT
mの奇数乗の総和が0となるスタガパターンとしては、図4(c)や図4(d)に示されているように、組毎に絶対値が異なる正負の実数のペア(−aとa、-bとb、-cとc、-dとd)を複数組用いて形成されているスタガパターンを用いることができる。この場合には、複雑な計算が不要で、スタガパターンの形成が容易になる。
【0071】
(3)スタガパターンをメモリ49aに記憶させておくことにより、スタガパターンを生成するための計算を省くことができるので、スタガパターン出力部492の応答を速くすることができる。
【0072】
<変形例1−1> 実施形態の信号処理装置40に、見張り機能を追加してもよい。そのために、信号処理装置40の表示制御部48に、速度データと振幅データに基づいて、「所定値(例えば1.5NM)以内の距離に、所定速度(例えば3ノット)以上の接近速度をもつ物体」が存在するか否かを識別する機能を付加する。前述の条件を満たす物標が存在する場合には、例えば、表示制御部48が表示装置50のブザーを制御してブザー音を発生させる。
【0073】
<変形例1−2> 実施形態では、データ取得部46aが最大スタガ率J
maxと繰り返し周波数PRFとパルス幅Wのデータを直接取得する場合について説明したが、データ取得部46aが取得するデータは、最大スタガ率J
maxと繰り返し周波数PRFとパルス幅Wを間接的に認知できるものであってもよい。例えば、レーダ装置10で計測する距離範囲やレンジなどを取得して、データ取得部46aが最大スタガ率J
maxと繰り返し周波数PRFとパルス幅Wを計算するように構成されてもよい。最大スタガ率J
maxと繰り返し周波数PRFとパルス幅Wとに関するデータは、これらに関する情報を含むデータであればよい。
【0074】
<変形例1−3> 実施形態では、exp(jφ
n)の総和の偏角を0に近似して設定するために、テイラー展開を用いる方法について説明したが、テイラー展開以外の方法を用いてもよい。
【0075】
<変形例1−4> 実施形態のレーダ装置10では、スタガパターン設定装置49をハードウエアで構成した場合について説明したが、スタガパターン設定装置49のデータ取得部491やスタガパターン出力部492や設定部493の機能をソフトウエアによって実現するようにしてもよい。この場合には、ROM等の記録媒体からプログラムを読み込んだCPU等の制御装置が、スタガパターン設定装置49のデータ取得部491やスタガパターン出力部492や設定部493の機能を実現する。<第2実施形態> 以下、本発明の第2レーダ装置について図面を用いて説明する。図8は、第2船舶用レーダ装置のスタガパターン設定装置周辺の構成を示すブロック図である。船舶用レーダ装置10Aのスタガパターン設定装置49Aは、図8に示されているように、データ取得部491とスタガパターン出力部492Aと設定部493とを備えている。
【0076】
第2船舶用レーダ装置の構成が第1実施形態の船舶用レーダ装置の構成と異なる点は、スタガパターン出力部492Aの構成である。第1実施形態のスタガパターン出力部492には、メモリ49aが割り当てられ、複数種類のスタガパターンが予め記憶されている。一方、第2実施形態のスタガパターン出力部492Aは、スタガパターンを発生するパターン生成部49bを備えている。パターン生成部49bは、例えば図4(c)に示されているように、絶対値が同じ整数のペアを発生する。パターン生成部49bが発生するペアの絶対値は、例えば1ずつ大きくなるように設定されている。スタガパターン出力部492Aは、パターン生成部49bが所定の個数だけ整数のペアを発生すると、内部で乱数を発生して各整数の順番を入れ換える。それにより、スタガパターン出力部492Aは、複数通りのスタガパターンの中から毎回任意のパターンを出力することができる。
【0077】
第2実施形態のレーダ装置10Aの信号処理部40Aのスタガパターン設定装置49A以外の構成については、第1実施形態のレーダ装置10の信号処理部40のスタガパターン設定装置49以外の構成と同じに構成できるので、説明を省略する。
【0078】
<特徴> 第2実施形態では、スタガパターンをパターン生成部49bによって生成するので、スタガパターン出力部492Aの出力し得るスタガパターンの種類を増やすことができ、船舶の混み合う領域でも干渉する可能性を非常に小さくすることができる。
【0079】
なお、メモリ49aとパターン生成部49bとの違いからくる効果を除いて、第2実施形態のレーダ装置10Aも第1実施形態のレーダ装置10と同様の効果を奏する。
【0080】
<変形例2−1> 実施形態のレーダ装置10Aでは、スタガパターン設定装置49Aをハードウエアで構成した場合について説明したが、スタガパターン設定装置49Aのデータ取得部491やスタガパターン出力部492Aや設定部493の機能をソフトウエアによって実現するようにしてもよい。この場合には、ROM等の記録媒体からプログラムを読み込んだCPU等の制御装置が、スタガパターン設定装置49Aのデータ取得部491やスタガパターン出力部492Aや設定部493の機能を実現する。
【符号の説明】
【0081】
10,10A レーダ装置20 アンテナ30 送受信装置31 送信信号発生器40,40A 信号処理部49,49A スタガパターン設定装置50 表示装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特許第3561497号公報
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【国際調査報告】