(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年1月5日
【発行日】2018年4月12日
(54)【発明の名称】魚鱗加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20180316BHJP
C07K 1/00 20060101ALI20180316BHJP
A23J 3/06 20060101ALI20180316BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20180316BHJP
【FI】
A23L17/00 Z
C07K1/00
A23J3/06
C07K14/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2017-526344(P2017-526344)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-133553(P2015-133553)
(32)【優先日】2015年7月2日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390008497
【氏名又は名称】日本電熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】門 雅莉
(72)【発明者】
【氏名】松田 博幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 千人
【テーマコード(参考)】
4B042
4H045
【Fターム(参考)】
4B042AC10
4B042AD39
4B042AG12
4B042AH04
4B042AK01
4B042AK03
4B042AP03
4B042AP06
4B042AP15
4B042AP17
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4B042AP30
4H045AA20
4H045CA52
4H045EA01
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA15
(57)【要約】
魚鱗を短時間で低分子化して効率よく魚鱗加工物を得る魚鱗加工物の製造方法を提供することを課題とする。
解決手段として、本発明に係る魚鱗加工物の製造方法は、魚鱗を飽和蒸気下で加圧蒸煮処理した後、大気圧に開放して爆砕する工程を含むことを特徴とする。前記加圧蒸煮処理の条件を変えることによって、異なる魚鱗加工物を得ることができる。この場合に、加圧蒸煮処理の処理温度を一定にし、処理時間を変えるか、もしくは処理時間を一定にし、処理温度を変えるようにすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚鱗を飽和蒸気下で加圧蒸煮処理した後、大気圧に開放して爆砕する工程を含むことを特徴とする魚鱗加工物の製造方法。
【請求項2】
あらかじめ脱灰処理した魚鱗を用いることを特徴とする請求項1記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項3】
脱灰処理していない生鱗を用いることを特徴とする請求項1記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項4】
前記加圧蒸煮処理の条件を変えることによって、異なる魚鱗加工物を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項5】
前記加圧蒸煮処理の処理温度を一定にし、処理時間を変えることを特徴とする請求項4記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項6】
前記加圧蒸煮処理の処理時間を一定にし、処理温度を変えることを特徴とする請求項4記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項7】
魚鱗加工物がコラーゲンペプチドであって、
前記爆砕することによって液状物を得る工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項8】
前記液状物を乾燥して固形状のコラーゲンペプチドを得る乾燥工程を含むことを特徴とする請求項7記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項9】
魚鱗加工物がゼラチンであって、
前記爆砕することによって得られたゲル状物に水を添加して加熱し、液状物を得る工程と、
該液状物から固形分を除去する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項10】
魚鱗加工物がゼラチンであって、
前記爆砕することによって液状物を得る工程と、
該液状物から固形分を除去する工程を含むことを特徴とする請求項3記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項11】
前記固形分を除去して得られた液状物を乾燥して固形状のゼラチンを得る乾燥工程を含むことを特徴とする請求項9または10記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項12】
魚鱗加工物が糖タンパク質であって、
前記爆砕することによって得られた粘性のある液状物にアルコールを添加して沈殿物を生成する工程と、
該沈殿物を取り出す工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項13】
前記沈殿物を乾燥して固形状の糖タンパク質を得る乾燥工程を含むことを特徴とする請求項12記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項14】
魚鱗加工物が多糖であって、
前記爆砕することによって得られた粘性のある液状物にアルコールを添加して沈殿物を生成する工程と、
該沈殿物を取り出す工程と、
前記取り出した沈殿物に水を加えて溶液とする工程と、
得られた前記溶液に有機溶剤もしくは塩化カルシウムを添加して混合溶液を形成する混合工程と、
該混合溶液を遠心分離処理して、少なくとも多糖溶液層、タンパク質層の2層に分離する工程と、
前記多糖溶液層部分を取り出して多糖溶液を得る工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項15】
取り出した前記多糖溶液を乾燥して固形状の多糖を得る乾燥工程を含むことを特徴とする請求項14記載の魚鱗加工物の製造方法。
【請求項16】
前記混合工程において、前記有機溶剤にクロロホルムとブタノールの混合溶剤を用いることを特徴とする請求項14または15記載の魚鱗加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチン、糖タンパク質、多糖、コラーゲンペプチドからなる魚鱗加工物の製造方法
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは動物の体を構成する主要なタンパク質であり、約10万の分子量をもつ3本のポリペプチド鎖(α鎖)で構成されている。コラーゲンを加熱変性させたものがゼラチンであり、ゼラチンの分子量をさらに小さくしたものがコラーゲンペプチドである。これらコラーゲン、ゼラチンやコラーゲンペプチドは、医療分野、化粧品、食品や健康補助食品分野での利用が増えている。
ゼラチンやコラーゲンペプチドを工業的に生産する際の原料は、主に牛骨、牛皮、豚皮、鶏骨などの動物由来の原料が用いられてきた。しかし、BSE問題の発生などにより、近年では魚由来の原料が着目されている。
特許文献1には、魚鱗を原料として用いるゼラチンの製造方法が、また特許文献2には魚鱗を原料として用いるコラーゲンペプチドの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−59568号公報
【特許文献2】特開2006−89号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、魚鱗原料を湿式粉砕した後、脱灰処理することなく、100℃未満の温度の水に浸漬して、魚鱗中のゼラチンを抽出するゼラチンの製造方法が開示されている。しかし、この方法では、長時間を要するという課題がある。
特許文献2には、脱灰処理した後に、酵素分解してコラーゲンペプチドを得る製造方法が開示されているが、この方法も酵素分解に要する時間が数時間から数十時間を要するという課題がある。
そこで、本発明は課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、魚鱗を短時間で低分子化して効率よく魚鱗加工物を得る魚鱗加工物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係る魚鱗加工物の製造方法は、魚鱗を飽和蒸気下で加圧蒸煮処理した後、大気圧に開放して爆砕(以下蒸煮爆砕処理ということがある)する工程を含むことを特徴とする。
魚鱗は、あらかじめ脱灰処理してもよいし、脱灰処理しない魚鱗(生鱗)をそのまま蒸煮爆砕処理してもよい。
前記加圧蒸煮処理の条件を変えることによって、異なる魚鱗加工物を得ることができる。この場合に、加圧蒸煮処理の処理温度を一定にし、処理時間を変えるか、もしくは処理時間を一定にし、処理温度を変えるようにすることができる。
加圧蒸煮処理の条件を緩くする(処理温度が一定の場合は処理時間を短くするか、または処理時間が一定の場合は処理温度を低くする)ことによって、ゼラチンを得ることができる。
加圧蒸煮処理の条件を中程度にする(処理温度が一定の場合は処理時間を中程度にするか、または処理時間が一定の場合は処理温度を中程度にする)ことによって、糖タンパク質および多糖を得ることができる。
また、加圧蒸煮処理の条件を厳しくする(処理温度が一定の場合は処理時間を長くするか、または処理時間が一定の場合は処理温度を高くする)ことによって、魚鱗を低分子化し、コラーゲンペプチドを得ることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、魚鱗を蒸煮爆砕処理することによって、ゼラチン、糖タンパク質、多糖もしくはコラーゲンペプチドの低分子化した魚鱗加工物を短時間で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】蒸煮爆砕処理装置の概略を示す説明図である。
【図2】魚鱗から目的物(ゼラチン、糖タンパク質、多糖、コラーゲンペプチド)を製造するプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本実施の形態は、前記のように、魚鱗を飽和蒸気下で加圧蒸煮処理した後、大気圧に開放して爆砕する工程を含む。このように、魚鱗を蒸煮爆砕処理することによって、魚鱗を低分子化するものであるため、魚鱗加工物を短時間で得ることができる。
蒸煮爆砕処理とは、魚鱗を圧力容器に入れ、高圧・高温の水蒸気で蒸煮し、加圧・加熱後、瞬時に圧力を大気圧に開放する処理をいう。これにより、高温高圧下で魚鱗の組織内に浸透した水蒸気が大気圧に開放される際に急激に膨張し、魚鱗は粉砕される。この蒸煮爆砕処理は、機械粉砕以上の微細化が可能となることが特徴である。原料の魚鱗は加圧蒸煮処理中に水分を含むことになる。この加圧蒸煮処理の条件の違いにより、魚鱗はゲル状、粘性のある液体、あるいは液状となる。
【0009】
図1は、蒸煮爆砕処理装置10の概略を示す説明図である。蒸煮爆砕処理装置10は公知のものでよいので、以下簡単に説明する。
12はボイラであり、純水器13によってナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの不純物が除去された水(水道水)がポンプ14によって送り込まれ、高温・高圧の蒸気に蒸気化される。15はリアクターであり、ホッパー16から原料たる魚鱗が投入される。
この時、バルブ17は開、バルブ18、19は閉となっている。
所定量の魚鱗がリアクター15内に投入されると、バルブ17が閉、バルブ18が開とされ、リアクター15内に高温・高圧の蒸気が導入され、所定時間、加圧蒸煮処理がなされる。
所定時間、加圧蒸煮処理がなされた後、バルブ18が閉じられ、バルブ19が開かれて、魚鱗はパイプ20を通じて受け槽21内に急激に排出される。魚鱗は受け槽21内で急激に大気下におかれ、爆砕されることになる。なお、22はサイレンサーである。蒸煮爆砕処理後の魚鱗は取り出し口23から取り出される。
【0010】
魚鱗はあらかじめ脱灰処理(魚鱗に含まれるカルシウム成分などを化学的に除去する処理)を行ったものを用いるのが好ましいが、脱灰処理しない魚鱗(生鱗)を用いてもよい。
加圧蒸煮処理の処理温度が高すぎると焦げによる変色が強くなり、逆に処理温度が低すぎると魚鱗の分解が不十分となる。あらかじめ脱灰処理を行った魚鱗を原料として、処理温度を変えて実験したところ、飽和蒸気の温度を200℃(圧力は約1.5MPa)に設定した時に最もよい結果が得られた。また、脱灰処理しない魚鱗(生鱗)を原料として、処理温度を変えて実験したところ、飽和蒸気の温度を190℃(圧力は約1.3MPa)に設定した時に最もよい結果が得られた。この実験の過程で、加圧蒸煮処理の処理時間を変化させるだけで、同じ材料(魚鱗)から違う目的物(ゼラチン、糖タンパク質、多糖、コラーゲンペプチド)が得られることを見出した。
【0011】
また、加圧蒸煮処理の処理時間を一定とし、飽和蒸気の温度を変化させても同様の結果が得られることを見出した。
具体的には、加圧蒸煮処理の処理温度を一定とする場合は、ゼラチンを抽出する場合は処理時間を短く、糖タンパク質および多糖を抽出する場合は処理時間を中程度に、コラーゲンペプチドを抽出する場合は処理時間を長くすればよいことがわかった。
また、加圧蒸煮処理の処理時間を一定とする場合は、ゼラチンを抽出する場合は処理温度を低く、糖タンパク質および多糖を抽出する場合は処理温度を中程度に、コラーゲンペプチドを抽出する場合は処理温度を高くすればよいことがわかった。
【0012】
のように、加圧蒸煮処理の条件を厳しくすることによって、魚鱗をより低分子にまで分解でき、液状のコラーゲンペプチドを得ることができる。この液状のものを例えば凍結乾燥することで、固形状のコラーゲンペプチドを得ることができる。
【0013】
のように、加圧蒸煮処理の条件を緩くすることによって、魚鱗の分解度は低くなり、ゲル状物が得られる。このゲル状物に水を添加して加熱し、液状物とし、この液状物から固形分を除去することによって液状のゼラチンが得られる。この液状ゼラチンを例えば凍結乾燥することによって固形状のゼラチンとすることができる。なお、脱灰処理をしない生鱗を用いた場合には、加圧蒸煮処理および爆砕処理をすることによって、沈殿物および液状物が得られる。この液状物から固形分を除去することによって液状のゼラチンが得られる。この液状ゼラチンを例えば凍結乾燥することによって固形状のゼラチンとすることができる。
【0014】
のように、加圧蒸煮処理の条件を中程度の条件とすることによって、粘性の高い液状物が得られる。この粘性のある液状物にアルコールを添加して沈殿物を生成させ、この沈殿物を取り出した後に例えば凍結乾燥することで、固形状の糖タンパク質を得ることができる。
人によってはタンパク質の成分がアレルギーをおこす原因となるため、糖タンパク質からタンパク質を分離することが更に望ましい。
そこで、沈殿物に水を加えて溶液とし、得られた溶液に有機溶剤もしくは塩化カルシウムを添加して混合し、この混合溶液を遠心分離処理して、少なくとも多糖溶液層、タンパク質層の2層に分離し、この多糖溶液層部分を取り出して多糖溶液を得ることができる。この取り出した多糖溶液を例えば凍結乾燥することによって固形状の多糖を得ることができる。
【実施例】
【0015】
以下では、魚鱗としてバラマンディ(学名Lates calcarifer)の魚鱗を使用して、ゼラチン、糖タンパク質、多糖、コラーゲンペプチドを抽出した実施例を示す。
バラマンディはインド太平洋の熱帯域に分布する大型肉食魚である。成魚は全長2mに達し、東南アジアでは食用のため、各地で養殖がされている。
【実施例1】
【0016】
以下では、加圧蒸煮処理の温度を200℃で一定とし、処理時間を変えた例を示す。なお、実施例1〜実施例3においては、バラマンディの魚鱗は、洗浄および脱灰処理を行った後に乾燥させたものを使用した。
<ゼラチン>
加圧蒸煮処理の処理時間が30秒〜1分の範囲ではゼラチンが得られた。
例えば、加圧蒸煮処理を30秒行って得られた試料は、処理直後はゲル状であった。この試料に10倍量の蒸留水を添加して60℃で10分間加熱し、次いで遠心分離装置にかけて液体成分を取り出した。この液体成分を4℃に冷やしたところゲル状となり、常温に戻すと液体になった。
前記液体成分を凍結乾燥処理して得られた固形状の試料を後記するような前処理をした後、アミノ酸自動分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製L-8900BH)で成分を分析したところ、コラーゲンに特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンの含有が認められた。さらに、アミノ酸の1000残基あたりの比率を確認すると、グリシンが全体の約1/3であり、またアラニン、ヒドロキシプロリン、プロリンの合計が全体の約1/3であって、コラーゲンに特有の比率を示していた。これらのことから、ゼラチンが得られたと判断した。
ゼラチンとしては、液体状のままでもよいが、取扱い性から、固形状とするのが好適である。
【0017】
なお、前記アミノ酸自動分析の前処理は次のようにして行った。
前処理を行う試料に20%塩酸を添加して、110℃の電気炉に入れ、24時間放置した。これにより、タンパク質がアミノ酸に分解される。この酸分解した試料をエバポレータに入れ乾燥させた(この際に塩酸が除去される)。次いで、0.02Nの塩酸を加えて50mLの溶液にし、次いで、0.2μmのフィルターでろ過し、不純物を取り除いて得られた溶液を用いてアミノ酸分析を行った。以下の実施例におけるアミノ酸自動分析における前処理もと同様の処理で行った。
【0018】
表1に加圧蒸煮処理時間によるゼラチンの収率を示す。処理時間が15秒では魚鱗の分解が不十分であり、ゼラチンの収率も悪かった。逆に処理時間が1分を超えると、糖タンパク質が混在する割合が増えると推測される。
【表1】
脱灰処理した魚鱗を蒸煮爆砕処理し、処理物に蒸留水を添加してゼラチンを抽出。
【実施例2】
【0019】
<糖タンパク質および多糖>
加圧蒸煮処理の処理時間が2分〜15分の範囲では糖タンパク質および多糖が得られた。
例えば5分で加圧蒸煮処理し、爆砕して得られた試料は、処理直後は粘性のある液状であった。これを4℃に冷やしてもゲル化しなかったため、エタノールを添加したところ沈殿物が得られた。この試料に前記前処理をした後、アミノ酸自動分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製L-8900BH)で成分を分析したところ、コラーゲンに特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンの含有が認められた。さらに、アミノ酸の1000残基あたりの比率を確認すると、グリシンが全体の約1/3であり、またアラニン、ヒドロキシプロリン、プロリンの合計が全体の約1/3であって、コラーゲンに特有の比率を示していた。
【0020】
前記蒸煮爆砕処理後の、粘性の高い液体にエタノールを加え、遠心分離装置にかけて沈殿物を得た。得られた沈殿物に蒸留水を添加して水溶液とした。この水溶液に有機溶剤(クロロホルム4:ブタノール1の混合溶剤)を添加して混合した。これによりタンパク質が分離される。この混合物を遠心分離装置にかけて、多糖溶液/タンパク質/有機溶剤の三層に分離した。この多糖溶液部分を取り出して凍結乾燥して固形状にした。
なお有機溶剤の代わりに塩化カルシウムを、水溶液の重量の5%程度添加してタンパク質を分離するようにしてもよい。この場合、混合物を遠心分離装置にかけると多糖溶液/タンパク質の二層に分離される。この多糖溶液部分を取り出して凍結乾燥して固形状にすればよい。
この固形状の試料を前処理した後、分子量分布をサイズ排除クロマトグラフ法で調べた。この試料の分子量(数平均分子量)は数百〜数万の範囲であった。これらのことから多糖が得られたと判断した。
多糖としては、液体状のままでもよいが、取扱い性から、固形状とするのが好適である。
なお、の工程においてタンパク質を分離する前のものが糖タンパク質である。前記蒸煮爆砕処理後の、粘性の高い液体にエタノールを加え、遠心分離装置にかけて得られた沈殿物を取り出して凍結乾燥することで、固形状の糖タンパク質を得ることができる。
【0021】
表2に多糖の分子量分布を示す。
【表2】
【0022】
表3に加圧蒸煮処理時間による糖タンパク質の収率を示す。
【表3】
脱灰処理した魚鱗を蒸煮爆砕処理し、処理物にエタノールを添加して糖タンパク質を抽出。
【実施例3】
【0023】
<コラーゲンペプチド>
加圧蒸煮処理の処理時間が20分〜30分の範囲ではコラーゲンペプチドが得られた。
例えば、加圧蒸煮処理30分で得られた試料は、処理直後は液状であった。これを4℃に冷やしてもゲル化しなかった。また、エタノールを添加しても沈殿物は得られなかった。
この試料に前記前処理をした後、アミノ酸自動分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製L-8900BH)で成分を分析したところ、コラーゲンに特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンの含有が認められた。さらに、アミノ酸の1000残基あたりの比率を確認すると、グリシンが全体の約1/3であり、またアラニン、ヒドロキシプロリン、プロリンの合計が全体の約1/3であって、コラーゲンに特有の比率を示していた。
また、この試料の分子量分布をサイズ排除クロマトグラフ法で調べたところ、分子量は数百〜数千(低分子量)の範囲であった。これらのことからコラーゲンペプチドが得られたと判断した。
蒸煮爆砕処理後の液状物をそのまま乾燥することによって、塩酸や水酸化ナトリウムなどの化学物質や酵素を使用することなく固形状のコラーゲンペプチドが得られる。
なお、コラーゲンペプチドとしては、液体状のままでもよいが、取扱い性から、乾燥して固形状とするのが好適である。
【0024】
表4にコラーゲンペプチドの分子量分布を示す。
【表4】
【0025】
表5に加圧蒸煮処理時間によるコラーゲンペプチドの収率を示す。処理時間が20分未満では糖タンパク質が混在する割合が増えると推測される。また、処理時間が30分を超えると焦げによる着色が強くなると推測される。
【表5】
脱灰処理した魚鱗を蒸煮爆砕処理し、処理物よりコラーゲンペプチドを抽出。
【0026】
図2に、脱灰処理した魚鱗から目的物(ゼラチン、糖タンパク質、多糖、コラーゲンペプチド)を製造するプロセスを示す。各工程において、蒸煮爆砕処理までの工程は同じであるが、加圧蒸煮処理の条件によって、得られる目的物が変わる。蒸煮爆砕処理後の各工程は前記したので、説明を省略する。
なお、精製工程では、最終製品の用途により必要とされるレベルまで純度を上げる。具体的には、精製工程では必要に応じて、脱色の目的で過酸化水素を使用したり、脱色や脱臭の目的で活性炭を使用したり、不純物を除去する目的でイオン交換樹脂を使用する等の処理を行う。目的物は、保管や運搬などの取り扱い性を考慮して固形状に加工しているが、必要に応じて、前記のように、固形状にする前の状態(液体)で製品とすることも可能である。実施例では凍結乾燥によって目的物を乾燥しているが、他の乾燥法(熱風乾燥や噴霧乾燥など)を用いてもよい。
【0027】
次に、実施例4〜実施例6においては、バラマンディの魚鱗は、洗浄のみを行った生鱗を使用した。生鱗は含水率が約49%であるため、収率の計算においては生鱗を乾燥させた時の相当重量を基準とした。生鱗を原料とする場合、加圧蒸煮処理後の処理物中に魚鱗の主な成分であるリン酸カルシウムなどが含まれるため、あらかじめ脱灰処理を行った乾燥魚鱗を原料とする場合と比較して収率が悪くなる。なお、爆砕処理後の工程は、脱灰処理を行った魚鱗を用いた場合の処理と若干異なるが、ほとんど同じである。
以下では、加圧蒸煮処理の温度を190℃で一定とし、処理時間を変えた例を主として示す。
【実施例4】
【0028】
<ゼラチン>
加圧蒸煮処理の処理時間が30秒から2分の範囲でゼラチンが得られた。
例えば、加圧蒸煮処理を1分行って得られた試料は、処理直後は液状であった。この試料を60℃で10分間加熱し、次いで遠心分離装置にかけて液体成分を取り出した。この液体成分を4℃に冷やしたところゲル状となり、常温に戻すと液体となった。
前記液体成分を凍結乾燥処理して得られた固形状の試料を後記するような前処理をした後、アミノ酸自動分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製L-8900BH)で成分を分析したところ、コラーゲンに特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンの含有が認められた。さらに、アミノ酸の1000残基あたりの比率を確認すると、グリシンが全体の約1/3であり、またアラニン、ヒドロキシプロリン、プロリンの合計が全体の約1/3であって、コラーゲンに特有の比率を示していた。これらのことから、ゼラチンが得られたと判断した。
ゼラチンとしては、液体状のままでもよいが、取扱い性から、固形状とするのが好適である。
【0029】
なお、前記アミノ酸自動分析の前処理は実施例1と同様に次のようにして行った。
前処理を行う試料に20%塩酸を添加して、110℃の電気炉に入れ、24時間放置した。これにより、タンパク質がアミノ酸に分解される。この酸分解した試料をエバポレータに入れ乾燥させた(この際に塩酸が除去される)。次いで、0.02Nの塩酸を加えて50mLの溶液にし、次いで、0.2μmのフィルターでろ過し、不純物を取り除いて得られた溶液を用いてアミノ酸分析を行った。以下の実施例におけるアミノ酸自動分析における前処理もと同様の処理で行った。
【0030】
得られたゼラチンの分子量分布を表6に示す。
【表6】
【0031】
収率(処理温度一定、処理時間変更)を表7に示す。
【表7】
【0032】
処理時間を一定、処理温度を変更した場合の収率を表8に示す。
【表8】
【実施例5】
【0033】
<多糖>
加圧蒸煮処理の処理時間が5分〜10分の範囲では糖タンパク質および多糖が得られた。
例えば5分で加圧蒸煮処理し、爆砕して得られた試料は、処理直後は粘性のある液状であった。これを4℃に冷やしてもゲル化しなかったため、エタノールを添加したところ沈殿物が得られた。この試料に前記前処理をした後、アミノ酸自動分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製L-8900BH)で成分を分析したところ、コラーゲンに特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンの含有が認められた。さらに、アミノ酸の1000残基あたりの比率を確認すると、グリシンが全体の約1/3であり、またアラニン、ヒドロキシプロリン、プロリンの合計が全体の約1/3であって、コラーゲンに特有の比率を示していた。
【0034】
前記蒸煮爆砕処理後の、粘性のある液状物を遠心分離装置にかけて沈殿物を除去し、液体部分を取り出した。その液体にエタノールを加え、遠心分離装置にかけて沈殿物を得た。得られた沈殿物に蒸留水を添加して水溶液とした。この水溶液に水溶液の重量の5%にあたる量の塩化カルシウムを添加して、80℃で1時間加熱した。これによりタンパク質が分離される。この混合物を遠心分離装置にかけて、多糖溶液/タンパク質の2層に分離した。この多糖溶液部分を取り出して凍結乾燥して固形状にした。
【0035】
収率(処理温度一定、処理時間変更)を表9に示す。
【表9】
処理温度、処理時間を変更した場合の収率を表10に示す。
【表10】
【実施例6】
【0036】
<コラーゲンペプチド>
加圧蒸煮処理時間が20分〜40分の範囲ではコラーゲンペプチドが得られた。
例えば、加圧蒸煮処理20分で得られた試料は、処理直後は液状であった。これを4℃に冷やしてもゲル化しなかった。またエタノールを添加しても沈殿物は得られなかった。
この試料に前記前処理をした後、アミノ酸自動分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製L-8900BH)で成分を分析したところ、コラーゲンに特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンの含有が認められた。さらに、アミノ酸の1000残基あたりの比率を確認すると、グリシンが全体の約1/3であり、またアラニン、ヒドロキシプロリン、プロリンの合計が全体の約1/3であって、コラーゲンに特有の比率を示していた。
また、この試料の分子量分布をサイズ排除クロマトグラフ法で調べたところ、分子量は数百〜数千(低分子量)の範囲であった。これらのことからコラーゲンペプチドが得られたと判断した。
蒸煮爆砕処理後の液状物を遠心分離機にかけて沈殿物を除去し、液体部分を取り出した。この液体部分を乾燥することによって、固形状のコラーゲンペプチドが得られる。
なお、コラーゲンペプチドとしては、液体状のままでもよいが、取扱い性から、乾燥して固形状とするのが好適である。
【0037】
得られたコラーゲンペプチドの分子量分布を表11に示す。
【表11】
【0038】
収率(処理温度一定、処理時間変更)を表12に示す。
【表12】
【0039】
処理時間を一定、処理温度を変更した場合の収率を表13に示す。
【表13】
【0040】
なお、以上の各実施例では、原料としてバラマンディの魚鱗を使用したが、テラピアやタイなど、海水魚、淡水魚を問わず、各種の魚鱗を原料として使用できる。
【国際調査報告】