(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年7月2日
【発行日】2021年10月21日
(54)【発明の名称】異常診断装置、異常診断方法、異常診断プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20210924BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2020-562244(P2020-562244)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年12月27日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】茂木 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】河野 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】長島 瞳
(72)【発明者】
【氏名】日下部 匠
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA18
3C223BA03
3C223CC02
3C223EB02
3C223FF04
3C223FF13
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3C223FF26
3C223FF35
3C223GG03
3C223HH02
(57)【要約】
異常診断装置は、複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを診断対象システムから取得する取得部と、複数のデータセットを含む抽出元データを格納する記憶部と、診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて抽出条件を決定し、抽出元データから学習データを抽出する抽出部と、学習データからパターン認識手法に用いられる学習情報を作成する作成部と、学習情報に基づいて、診断対象データが異常であるか否かを判断する診断部と、を備え、複数のデータセットのそれぞれは、診断対象システムが正常な状態である場合の複数の項目のパラメータ値を含み、抽出部は、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットを学習データとして抽出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン認識手法を用いて診断対象システムに係る異常診断を行う異常診断装置であって、
複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを前記診断対象システムから取得する取得部と、
複数のデータセットを含む抽出元データを格納する記憶部と、
前記診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて前記抽出条件を決定し、前記抽出元データから学習データを抽出する抽出部と、
前記学習データから前記パターン認識手法に用いられる学習情報を作成する作成部と、
前記学習情報に基づいて、前記診断対象データが異常であるか否かを判断する診断部と、
を備え、
前記複数のデータセットのそれぞれは、前記診断対象システムが正常な状態である場合の前記複数の項目のパラメータ値を含み、
前記抽出部は、前記抽出元データに含まれる前記複数のデータセットのうち、前記抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットを前記学習データとして抽出する、異常診断装置。
【請求項2】
前記記憶部に格納されている前記抽出元データを更新する更新部をさらに備え、
前記更新部は、正常なデータセットを前記抽出元データに追加することで、前記抽出元データを更新する、請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記基準は、前記診断対象データの診断時に近い順である、請求項1又は請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記抽出部は、前記診断対象システムの正常な状態が変化した場合、前記抽出元データに含まれる前記複数のデータセットのうち、前記診断対象システムの正常な状態が変化した後のデータセットから前記学習データを抽出する、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項5】
パターン認識手法を用いて診断対象システムに係る異常診断を行う異常診断装置が実行する異常診断方法であって、
複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを前記診断対象システムから取得するステップと、
前記診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて前記抽出条件を決定するステップと、
複数のデータセットを含む抽出元データから学習データを抽出するステップと、
前記学習データから前記パターン認識手法に用いられる学習情報を作成するステップと、
前記学習情報に基づいて、前記診断対象データが異常であるか否かを判断するステップと、
を備え、
前記複数のデータセットのそれぞれは、前記診断対象システムが正常な状態である場合の前記複数の項目のパラメータ値を含み、
前記抽出するステップでは、前記抽出元データに含まれる前記複数のデータセットのうち、前記抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットが前記学習データとして抽出される、異常診断方法。
【請求項6】
パターン認識手法を用いて診断対象システムに係る異常診断をコンピュータに実行させる異常診断プログラムであって、
複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを前記診断対象システムから取得するステップと、
前記診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて前記抽出条件を決定するステップと、
複数のデータセットを含む抽出元データから学習データを抽出するステップと、
前記学習データから前記パターン認識手法に用いられる学習情報を作成するステップと、
前記学習情報に基づいて、前記診断対象データが異常であるか否かを判断するステップと、
を前記コンピュータに実行させ、
前記複数のデータセットのそれぞれは、前記診断対象システムが正常な状態である場合の前記複数の項目のパラメータ値を含み、
前記抽出するステップでは、前記抽出元データに含まれる前記複数のデータセットのうち、前記抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットが前記学習データとして抽出される、異常診断プログラム。
【請求項7】
パターン認識手法を用いて診断対象システムに係る異常診断をコンピュータに実行させる異常診断プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを前記診断対象システムから取得するステップと、
前記診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて前記抽出条件を決定するステップと、
複数のデータセットを含む抽出元データから学習データを抽出するステップと、
前記学習データから前記パターン認識手法に用いられる学習情報を作成するステップと、
前記学習情報に基づいて、前記診断対象データが異常であるか否かを判断するステップと、
を前記コンピュータに実行させ、
前記複数のデータセットのそれぞれは、前記診断対象システムが正常な状態である場合の前記複数の項目のパラメータ値を含み、
前記抽出するステップでは、前記抽出元データに含まれる前記複数のデータセットのうち、前記抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットが前記学習データとして抽出される、異常診断プログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
異常診断装置、異常診断方法、異常診断プログラム、及び記録媒体
【背景技術】
【0002】
複数の機器が動作するプラント等の機械システムでは、複数のセンサ等を用いてシステムの状態が計測され、計測されたデータを用いて機械システムに問題が生じているか等の異常診断を行うことが一般的である。近年、機械システムにおける異常診断を高精度に行うことを目的として、パターン認識技術を用いた分析方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、機械システムの状況変化に応じた異常診断を行うことを目的として、過去の機械システムの状態を示す複数のデータセットから抽出条件を満たすデータセットを学習データとして抽出し、学習データから作成された学習情報に基づいて異常診断を行う異常診断装置が記載されている。この異常診断装置では、診断対象データに含まれるパラメータ値と、学習データの抽出条件を決定するための抽出条件情報と、を組み合わせて、学習データの抽出条件を決定することで、診断対象データに応じて学習データを動的に選択している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−102826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の異常診断装置では、抽出条件を満たすデータセットを学習データとしているので、学習データに含まれるデータセットの数が抽出条件に応じて変化し得る。学習データに含まれるデータセットの数が多いと、学習情報の作成等に時間を要するので、異常診断の効率が低下するおそれがある。
【0006】
診断対象システムの状況に応じた異常診断を行いつつ、診断に要する時間の増加を抑制可能な異常診断装置、異常診断方法、異常診断プログラム、及び記録媒体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る異常診断装置は、パターン認識手法を用いて診断対象システムに係る異常診断を行う装置である。この異常診断装置は、複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを診断対象システムから取得する取得部と、複数のデータセットを含む抽出元データを格納する記憶部と、診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて抽出条件を決定し、抽出元データから学習データを抽出する抽出部と、学習データからパターン認識手法に用いられる学習情報を作成する作成部と、学習情報に基づいて、診断対象データが異常であるか否かを判断する診断部と、を備える。複数のデータセットのそれぞれは、診断対象システムが正常な状態である場合の複数の項目のパラメータ値を含む。抽出部は、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットを学習データとして抽出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、診断対象システムの状況に応じた異常診断を行いつつ、診断に要する時間の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、一異常診断装置の機能ブロックを示す図である。
【図2】図2は、図1の異常診断装置が行う異常診断方法の一連の処理を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図1の異常診断装置が行う抽出元データの更新処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、異常診断プログラムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。
【0011】
[1]実施形態の概要
本開示の一側面に係る異常診断装置は、パターン認識手法を用いて診断対象システムに係る異常診断を行う装置である。この異常診断装置は、複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを診断対象システムから取得する取得部と、複数のデータセットを含む抽出元データを格納する記憶部と、診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて抽出条件を決定し、抽出元データから学習データを抽出する抽出部と、学習データからパターン認識手法に用いられる学習情報を作成する作成部と、学習情報に基づいて、診断対象データが異常であるか否かを判断する診断部と、を備える。複数のデータセットのそれぞれは、診断対象システムが正常な状態である場合の複数の項目のパラメータ値を含む。抽出部は、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットを学習データとして抽出する。
【0012】
本開示の別の側面に係る異常診断方法は、パターン認識手法を用いて診断対象システムに係る異常診断を行う異常診断装置が実行する方法である。この異常診断方法は、複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを診断対象システムから取得するステップと、診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて抽出条件を決定するステップと、複数のデータセットを含む抽出元データから学習データを抽出するステップと、学習データからパターン認識手法に用いられる学習情報を作成するステップと、学習情報に基づいて、診断対象データが異常であるか否かを判断するステップと、を備える。複数のデータセットのそれぞれは、診断対象システムが正常な状態である場合の複数の項目のパラメータ値を含む。抽出するステップでは、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットが学習データとして抽出される。
【0013】
本開示のさらに別の側面に係る異常診断プログラムは、パターン認識手法を用いて診断対象システムに係る異常診断をコンピュータに実行させるプログラムである。この異常診断プログラムは、複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを診断対象システムから取得するステップと、診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて抽出条件を決定するステップと、複数のデータセットを含む抽出元データから学習データを抽出するステップと、学習データからパターン認識手法に用いられる学習情報を作成するステップと、学習情報に基づいて、診断対象データが異常であるか否かを判断するステップと、をコンピュータに実行させる。複数のデータセットのそれぞれは、診断対象システムが正常な状態である場合の複数の項目のパラメータ値を含む。抽出するステップでは、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットが学習データとして抽出される。
【0014】
本開示のさらに別の側面に係る記録媒体は、パターン認識手法を用いて診断対象システムに係る異常診断をコンピュータに実行させる異常診断プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。この異常診断プログラムは、複数の項目のパラメータ値を含む診断対象データを診断対象システムから取得するステップと、診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて抽出条件を決定するステップと、複数のデータセットを含む抽出元データから学習データを抽出するステップと、学習データからパターン認識手法に用いられる学習情報を作成するステップと、学習情報に基づいて、診断対象データが異常であるか否かを判断するステップと、をコンピュータに実行させる。複数のデータセットのそれぞれは、診断対象システムが正常な状態である場合の複数の項目のパラメータ値を含む。抽出するステップでは、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットが学習データとして抽出される。
【0015】
異常診断装置、異常診断方法、異常診断プログラム、及び記録媒体では、診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて抽出条件が決定され、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの群を予め定められた基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットが学習データとして抽出される。このように、学習データの抽出には、診断対象データによって決定された抽出条件が用いられるので、診断対象データの異常診断に適した学習データが抽出され、この学習データによってパターン認識手法に用いられる学習情報が作成される。このため、診断対象システムの状況が変化した場合でも、診断対象データに応じた学習情報を用いて異常診断が行われるので、診断対象システムの状況に応じた異常診断を行うことができる。また、上限数までのデータセットが学習データとして抽出されるので、学習データに含まれるデータセットの数が上限数に制限される。このため、学習情報の作成等に要する時間の増加を抑制することができる。その結果、診断対象システムの状況に応じた異常診断を行いつつ、診断に要する時間の増加を抑制することが可能となる。
【0016】
異常診断装置は、記憶部に格納されている抽出元データを更新する更新部をさらに備えてもよい。更新部は、正常なデータセットを抽出元データに追加することで、抽出元データを更新してもよい。この場合、抽出元データに含まれるデータセットの数が増加するので、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち抽出条件を満たすデータセットの数が上限数以上となる可能性を高めることができる。これにより、異常診断の精度が低下することを抑制することが可能となる。
【0017】
基準は、診断対象データの診断時に近い順であってもよい。診断対象システムの状況は、時間の経過とともに徐々に変化し得る。このため、抽出元データに含まれる複数のデータセットが診断時に対して古い場合、診断対象データが正常であったとしても、異常と診断されるおそれがある。これに対し、診断時に近いデータセットが学習データとして用いられるので、異常診断の精度が低下することを抑制することが可能となる。
【0018】
抽出部は、診断対象システムの正常な状態が変化した場合、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、診断対象システムの正常な状態が変化した後のデータセットから学習データを抽出してもよい。この場合、正常な状態が変化する前のデータセットが除外された上で、学習データが抽出されるので、抽出条件を満たすデータセットの探索に要する時間を低減することができる。
【0019】
[2]実施形態の例示
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、一異常診断装置の機能ブロックを示す図である。図1に示される異常診断装置1は、パターン認識手法を用いて機械システム2に係る異常診断を行う装置である。異常診断装置1は、機械システム2及び外部装置3と通信可能に接続されている。パターン認識手法は、異常診断の対象となる診断対象データが示すパターンが正常であるか否かを、学習データにより形成される学習情報に基づいて判断する手法である。パターン認識手法の例としては、MT法(Mahalanobis-Taguchi Method)、RT法(Recognition-Taguchi Method)、誤圧法(標準化誤圧法)、RE法(再構成誤差法)、SBL(Sparse Bayesian Learning)、主成分分析、重回帰分析、及びロジスティック回帰分析(多変量解析)等が挙げられる。パターン認識手法は、これらに限定されない。
【0021】
機械システム2は、診断対象となるシステムである。機械システム2としては、例えば、ガスタービン、航空エンジン、及び真空炉等の機械システムが挙げられる。機械システム2には、機械システム2の動作状況を確認するために、複数のセンサが取り付けられている。機械システム2は、複数の項目それぞれのパラメータ値を含むデータセットを診断対象データとして異常診断装置1に送信する。データセットは、サンプルデータとも称される。
【0022】
項目は、機械システム2の特徴量である。項目の例としては、機械システム2が備える複数種の機器(バルブ、及びポンプ等)の制御値、指令値、及び応答値、並びに、機械システム2に設けられた複数のセンサによって検出された各センサ値が挙げられる。パラメータ値の項目数は、例えば数百以上である。
【0023】
なお、サンプルデータ(データセット)には、機械システム2の内部状況によって変化するパラメータ値だけでなく、機械システム2の外部状況によって変化するパラメータ値が含まれる場合がある。機械システム2の外部状況によって変化するパラメータ値とは、外部の装置等によって指定された値、及び外部環境に係る情報を示す値であって、機械システム2における制御に由来する値とは異なる。このようなパラメータ値の例としては、機械システム2の周辺の温度、及び特定の機器の出力設定値等が挙げられる。一方、機械システム2の内部状況によって変化するパラメータ値とは、機械システム2の動作によって変化するパラメータ値である。このようなパラメータ値の例としては、機械システム2に設けられたセンサのセンサ値が挙げられる。機械システム2の異常診断には、少なくとも内部状況によって変化するパラメータ値が用いられる。
【0024】
外部装置3は、例えば、ディスプレイ等により構成され、異常診断装置1による診断結果を出力する機能を有する。
【0025】
異常診断装置1は、物理的には、プロセッサ10と、記憶装置20と、を備えている。
【0026】
記憶装置20は、例えば、RAM(Random Access Memory)、半導体メモリ、及びハードディスク装置といったデータの読み書きが可能な記録媒体によって構成される。記憶装置20は、蓄積データ記憶部21(記憶部)と、学習情報記憶部22と、異常診断プログラムPと、を備えている。
【0027】
蓄積データ記憶部21は、学習データとして利用される可能性のあるデータセットの群である抽出元データを格納している。抽出元データは、複数のデータセットを含む。複数のデータセットのそれぞれは、機械システム2が正常な状態である場合のサンプルデータであり、正常状態における複数の項目のパラメータ値を含む。複数のデータセットのそれぞれは、機械システム2から過去に送信されたサンプルデータである。複数のデータセットのそれぞれは、当該データセットが取得された時刻を示す時刻情報、及び当該データセットが正常であるか異常であるかを示す状態フラグ等を含む。
【0028】
なお、抽出元データは、機械システム2から送信されたサンプルデータだけでなく、他のデータを含んでもよい。すなわち、抽出元データは、機械システム2とは異なる機械システム(例えば、別サイトに存在する同系統の設備等)から取得されたデータ、及び機械システム2を模したシステムにおける特定の環境条件でのシミュレーション結果等を含んでもよい。
【0029】
学習情報記憶部22は、後述の作成部13で作成された学習情報を一時的に保持する。学習情報は、パターン認識手法に用いられる情報である。詳細は後述するが、異常診断装置1では、後述の診断対象データを機械システム2から取得する度に学習情報が作成される。学習情報記憶部22は、異常診断の都度作成される学習情報を一時的に保持すると共に、異常診断に係る一連の処理が終了すると、異常診断に用いられた学習情報を消去する。
【0030】
プロセッサ10の例としては、CPU(Central Processing Unit)、マイクロコントローラ、及びDSP(Digital Signal Processor)が挙げられる。プロセッサ10は、シングルプロセッサでもよく、マルチプロセッサでもよい。プロセッサ10は、機能的には、取得部11と、抽出部12と、作成部13と、診断部14と、出力部15と、更新部16と、を備えている。プロセッサ10が記憶装置20に記憶されている異常診断プログラムPを読み出して実行することにより、取得部11、抽出部12、作成部13、診断部14、出力部15、及び更新部16の各機能が実現される。異常診断プログラムPの具体的な構成については後述する。
【0031】
取得部11は、診断対象データを機械システム2から取得する。取得部11は、取得した診断対象データを抽出部12及び診断部14に出力する。
【0032】
抽出部12は、取得部11から受け取った診断対象データと、抽出部12に予め設定された条件設定情報と、に基づいて、抽出元データから学習データを抽出する。具体的には、抽出部12は、診断対象データと条件設定情報とを用いて学習データの抽出条件を決定する。抽出部12は、蓄積データ記憶部21に格納されている抽出元データを蓄積データ記憶部21から読み出し、抽出条件に基づいて、抽出元データから学習データを抽出する。抽出部12は、抽出した学習データを作成部13に出力する。
【0033】
ここで、抽出条件の決定方法について詳細に説明する。条件設定情報は、学習データの抽出条件を決定するための情報であって、データセットを構成する複数の項目に含まれる1以上の項目に関する条件を示す。条件設定情報は、例えば、項目を一意に識別可能な項目ID(Identifier)と、項目IDによって示される項目のパラメータ値に対する条件を示す条件情報と、を含む。抽出部12は、条件設定情報に含まれる項目IDによって示される項目のパラメータ値を診断対象データから取得し、当該パラメータ値と条件設定情報に含まれる条件情報によって示される条件とを用いて抽出条件を決定する。
【0034】
例えば、項目IDによって示される項目が「吸気温度」であり、条件情報によって示される条件が「±2度」であるとする。診断対象データの吸気温度(のパラメータ値)が「20度」である場合、抽出条件は、「吸気温度(のパラメータ値)が18度以上であり、かつ、22度以下であること」と決定される。例えば、項目IDによって示される項目が「設定出力」であり、条件情報によって示される条件が「±1MW(メガワット)」であるとする。診断対象データの出力(のパラメータ値)が「10MW」である場合、抽出条件は、「設定出力(のパラメータ値)が9MW以上であり、かつ、11MW以下であること」と決定される。
【0035】
このように、条件設定情報とは、抽出条件を決めるための条件に係る部分を具体的に示した情報であって、診断対象データに含まれる特定のパラメータ値を利用することで、学習データの抽出条件を決定する情報である。なお、診断対象データに含まれる特定のパラメータ値を利用せず、「パラメータCのパラメータ値が10〜30であること」というように抽出条件を設定することも可能である。しかし、機械システム2から取得した診断対象データの状況を考慮せずに学習データが抽出されるので、診断対象データとの関連性が低い学習情報が作成される。したがって、異常診断装置1では、診断対象データに含まれるパラメータ値と、学習データの抽出条件を決定するための条件設定情報と、を組み合わせて、学習データの抽出条件を決定する構成が採用される。
【0036】
なお、条件設定情報において、条件が設定される項目としては、機械システム2の状況を特定することが可能な項目が選択される。状況には、例えば、機械システム2の運転モード(運転及び非運転等)、並びに、季節等による機械システム2の環境状況が含まれる。このような項目のパラメータ値を学習データの抽出に利用することで、機械システム2が置かれている状況が類似しているデータセットが抽出元データから抽出され得る。
【0037】
条件設定情報は、異常診断装置1の操作者等によって予め設定される。抽出部12は、複数の条件設定情報を保持してもよい。この場合、抽出部12は、診断対象データに応じて、複数の条件設定情報から学習データの抽出に利用する条件設定情報を選択してもよい。例えば、抽出部12は、診断対象データの取得時間帯に応じて、学習データの抽出に利用する条件設定情報を選択してもよい。抽出部12は、操作者の指定に従って、学習データの抽出に利用する条件設定情報を選択してもよい。
【0038】
続いて、学習データの抽出方法について詳細に説明する。抽出部12は、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットを抽出元データから抽出する。抽出部12は、抽出条件を満たすデータセットの群を、予め定められた基準であるソート基準でソートし(並び替え)、先頭から予め定められた上限数(上限値)分のデータセットを学習データとして抽出する。
【0039】
ソート基準として、例えば、基準時点から近い順が用いられる。基準時点の例としては、機械システム2の診断時、及び機械システム2の出荷時が挙げられる。基準時点として診断時が用いられる場合には、抽出部12は、抽出条件を満たすデータセットの群を日付(日時)の新しい順(つまり、診断対象データの診断時刻に近い順)にソートする。基準時点として機械システム2の出荷時が用いられる場合には、抽出部12は、抽出条件を満たすデータセットの群を日付(日時)の古い順に(つまり、機械システム2の出荷時から順に)ソートする。
【0040】
ソート基準として、基準値との差分の小さい順が用いられてもよい。基準値の例としては、診断対象データに含まれる複数の項目のうちのある項目のパラメータ値が挙げられる。具体的には、抽出部12は、複数の項目のうちのある項目について、診断対象データに含まれるパラメータ値との差分(差の絶対値)が小さい順に、抽出条件を満たすデータセットの群をソートする。このような項目として、例えば、設定出力が用いられる。また、吸気温度等の外部環境を示す項目が選択されてもよい。ソート基準として、異常度スコアの小さい順が用いられてもよい。
【0041】
上限数は、統計量を十分に説明可能な数であり、例えば、検定統計量である。抽出件数が大きいほど診断精度は向上するものの、抽出件数がある程度大きくなると、それ以上増えたとしても、診断精度はほとんど変化しなくなる。一方、抽出件数が大きいほど、処理時間が掛かる。このため、上限数は、例えば1000件程度に設定される。なお、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの数が上限数以下となる場合がある。この場合、抽出部12は、抽出条件を満たすデータセットのすべてを学習データとして抽出する。
【0042】
作成部13は、抽出部12から受け取った学習データから、診断対象データに対応した学習情報を作成する。異常診断装置1がMT法を用いて診断を行う場合、学習情報は、単位空間(MT法の場合には、マハラノビス空間)を示す情報、及び異常診断を行うための判断基準を示す情報である。作成部13は、学習情報を学習情報記憶部22に出力し、学習情報を学習情報記憶部22に格納する。
【0043】
なお、作成部13は、学習情報の作成を行う際に、その学習情報が信頼性を有するか否かを評価する。例えば、診断対象データに基づいて抽出された学習データの抽出件数が少ない場合、又は、抽出元データに含まれるデータセットの総数に対する学習データの割合である抽出割合が少ない場合、抽出元データにおいて診断対象データが稀な種類(外部状況)のデータであるか、抽出元データとは異なる外部状況下で診断対象データが取得された可能性がある。このような場合には、抽出された学習データに基づいて作成される学習情報は、診断対象データに対して適切でない可能性があるので、学習情報を利用した異常診断の精度が低下するおそれがある。
【0044】
したがって、作成部13は、抽出件数又は抽出割合等に基づいて、学習情報の信頼性が高いか否かを評価する。例えば、作成部13は、抽出件数と予め設定された下限値(下限数)とを比較することで、学習情報に信頼性があるか否かを判断する。下限値は、上限数よりも小さい値である。具体的には、作成部13は、抽出件数が下限値以上である場合に、学習情報の信頼性は高いと判断し、抽出件数が下限値未満である場合に、学習情報の信頼性は低いと判断する。
【0045】
作成部13は、抽出割合と予め設定された別の下限値とを比較することで、学習情報の信頼性が高いか否かを判断してもよい。具体的には、作成部13は、抽出割合が別の下限値以上である場合に、学習情報の信頼性は高いと判断し、抽出割合が別の下限値未満である場合に、学習情報の信頼性は低いと判断する。
【0046】
作成部13が学習情報の信頼性に問題がある(信頼性が低い)と判断した場合には、異常診断装置1は、以降の処理を中止して異常診断自体を行わなくてもよい。作成部13が学習情報の信頼性に問題がある(信頼性が低い)と判断した場合に、異常診断装置1は、信頼性が低いことを示すアラートを行うことを前提として、以降の異常診断に係る処理を行ってもよい。また、これらの処理が組み合わされてもよい。
【0047】
診断部14は、作成部13によって作成された学習情報に基づいて、診断対象データが異常であるか否か(すなわち、機械システム2が異常であるか否か)を判断する。具体的には、診断部14は、学習情報記憶部22から学習情報を読み出し、機械システム2から取得した診断対象データについて、学習情報に基づいて、サンプルデータの診断のために必要な数値(異常度スコア)等の算出を行う。異常診断装置1がMT法を用いて診断を行う場合、診断部14は、診断対象データと学習情報とに基づいて、異常度スコアとしてマハラノビス距離を算出する。
【0048】
診断部14は、算出結果に基づき、診断対象データが異常であるか否かを判断する。診断部14は、例えば、異常度スコアと、予め設定されている診断閾値と、を比較することによって、機械システム2が異常であるか否かを判断する。診断部14は、異常度スコアが診断閾値よりも大きい場合、機械システム2(診断対象データ)が異常であると判断する。診断部14は、異常度スコアが診断閾値以下である場合、機械システム2(診断対象データ)が正常であると判断する。診断部14は、機械システム2(診断対象データ)が正常であるか異常であるかを示す診断結果を出力部15に出力する。
【0049】
出力部15は、診断部14から受け取った診断結果を出力する。本実施形態では、出力部15は、外部装置3に診断結果を出力する。出力部15は、診断部14による診断結果と学習情報に関連する情報とを組み合わせて外部装置3に出力してもよい。出力部15は、予め定められた出力形式に対応させて診断結果及び関連情報を準備し、それらの情報を外部装置3に出力する。出力部15は、診断対象データを診断結果とともに更新部16に出力してもよい。
【0050】
更新部16は、蓄積データ記憶部21に格納されている抽出元データを更新する。更新部16は、1以上の正常なデータセットを取得し、正常なデータセットを抽出元データに追加することで、抽出元データを更新する。更新部16は、例えば、異常診断装置1の操作者が入力装置を用いて異常診断装置1に入力したデータセットを、正常なデータセットとして取得してもよい。更新部16は、機械システム2から複数のデータセットを順次取得し、複数のデータセットのうちの正常を示す状態フラグが付されたデータセットを正常なデータセットとして取得してもよい。
【0051】
例えば、異常診断装置1の操作者が、入力装置を用いて機械システム2が正常であった期間(正常期間)を異常診断装置1に入力する。更新部16は、異常診断装置1に入力された複数のデータセットのうち、機械システム2の正常期間に得られたデータセットに対して、正常を示すように状態フラグを設定する。更新部16は、診断部14の診断結果に応じて状態フラグを設定してもよい。
【0052】
更新部16は、更新タイミングで抽出元データを更新する。更新タイミングは、特定のイベントが発生したことを検出したタイミングである。特定のイベントの例としては、機械システム2のメンテナンスが完了したこと、抽出元データを前回更新してから一定時間が経過したこと、連続する所定数の診断対象データの異常度スコアが診断閾値よりも大きいこと、及び操作者が入力装置を用いて更新指示を異常診断装置1に入力したことが挙げられる。つまり、抽出元データは、自動更新されてもよく、手動更新されてもよい。
【0053】
次に、図2を参照しながら、異常診断装置1が行う異常診断方法について説明する。図2は、図1の異常診断装置が行う異常診断方法の一連の処理を示すフローチャートである。図2に示される一連の処理は、例えば、機械システム2において診断対象データが得られるごとに開始される。
【0054】
まず、取得部11が機械システム2から診断対象データを取得する(ステップS01)。そして、取得部11は、取得した診断対象データを抽出部12及び診断部14に出力する。
【0055】
続いて、抽出部12は、取得部11から診断対象データを受け取ると、保持している複数の条件設定情報から、診断対象データに対応した条件設定情報を選択する。そして、抽出部12は、診断対象データと条件設定情報とを用いて学習データの抽出条件を決定する(ステップS02)。
【0056】
続いて、抽出部12は、蓄積データ記憶部21に格納されている抽出元データを蓄積データ記憶部21から読み出し、抽出条件に基づいて、抽出元データから学習データを抽出する(ステップS03)。具体的には、抽出部12は、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットを抽出元データから抽出する。そして、抽出部12は、抽出条件を満たすデータセットの群を、ソート基準でソートし(並び替え)、先頭から上限数までのデータセットを学習データとして抽出する。そして、抽出部12は、抽出した学習データを作成部13に出力する。
【0057】
続いて、作成部13は、抽出部12から学習データを受け取ると、学習情報の信頼性を評価することを目的として、学習データとして抽出されたデータセットの数が下限値以上であるか否かを判断する(ステップS04)。作成部13は、抽出されたデータセットの数が下限値未満であると判断した場合(ステップS04;NO)、学習情報を作成したとしても信頼性が低いと判断し、以降の処理を中止するか、又はアラートを通知する(ステップS05)。そして、異常診断装置1が行う異常診断方法の一連の処理が終了する。
【0058】
一方、ステップS04において、作成部13は、抽出されたデータセットの数が下限値以上であると判断した場合(ステップS04;YES)、学習データから、診断対象データに対応した学習情報を作成する(ステップS06)。なお、作成部13は、ステップS05においてアラートを通知した後、異常診断自体を継続してもよい。この場合、作成部13は、抽出されたデータセットの数が下限値以上であると判断した場合(ステップS04;YES)と同様に、学習情報を作成する(ステップS06)。
【0059】
続いて、作成部13は、作成した学習情報が適切であるか否かを判断する(ステップS07)。例えば、抽出したデータセットの数は十分であったものの、抽出条件が不適切であるために、学習データとして用いられるデータセットが極端に偏っている場合等に、学習情報は適切でないと判断され得る。作成部13には、学習情報が適切であるか否かの判断基準が予め設定されている。作成部13は、その判断基準に基づいて、学習情報が適切であるか否かを判断する。作成部13は、学習情報が適切でないと判断した場合(ステップS07;NO)、以降の処理を中止する。そして、異常診断装置1が行う異常診断方法の一連の処理が終了する。
【0060】
一方、ステップS07において、作成部13は、学習情報が適切であると判断した場合(ステップS07;YES)、学習情報を学習情報記憶部22に出力し、学習情報を学習情報記憶部22に格納する。そして、作成部13は、学習情報記憶部22に学習情報を格納した後に、学習情報の作成処理が終了したことを診断部14に通知する。なお、作成部13は、学習情報の作成を中止した場合にも、学習情報の作成を中止したことを診断部14に通知する。
【0061】
続いて、診断部14は、作成部13から学習情報の作成処理が終了した旨の通知を受けると、学習情報に基づいて、診断対象データの異常診断を行う(ステップS08)。具体的には、診断部14は、学習情報記憶部22から学習情報を読み出して、診断対象データと学習情報とを用いて異常度スコア等を算出する。そして、診断部14は、算出結果(異常度スコア)に基づいて、診断対象データが異常であるか否かを判断する。そして、診断部14は、診断対象データが正常であるか異常であるかを示す診断結果を出力部15に出力する。
【0062】
続いて、出力部15は、診断部14から診断結果を受け取ると、診断結果を出力する(ステップS09)。本実施形態では、出力部15は、診断結果に所望の加工を行った上で、外部装置3に診断結果を出力する。このとき、出力部15は、学習情報記憶部22に格納されている学習情報を消去してもよい。また、出力部15は、診断対象データを診断結果とともに更新部16に出力してもよい。なお、学習情報の作成が中止された場合には異常診断自体が行われないので、診断部14は、異常診断が中止されたことを示す診断結果を出力部15に出力し、出力部15は、外部装置3等に異常診断が行われなかったことを通知する。以上により、異常診断装置1が行う異常診断方法の一連の処理が終了する。
【0063】
次に、図3を参照しながら、抽出元データの更新処理について説明する。図3は、図1の異常診断装置が行う抽出元データの更新処理を示すフローチャートである。図3に示される一連の処理は、例えば、機械システム2からデータセットが送信されたことにより開始される。
【0064】
まず、更新部16がデータセットを取得する(ステップS11)。更新部16は、例えば、機械システム2から複数のデータセットを順次取得する。そして、更新部16は、取得した複数のデータセットのそれぞれに状態フラグを設定する(ステップS12)。例えば、異常診断装置1の操作者が、入力装置を用いて機械システム2の正常期間を異常診断装置1に入力する。更新部16は、異常診断装置1に入力された複数のデータセットのうち、機械システム2の正常期間に得られたデータセットに対して、正常を示すように状態フラグを設定する。更新部16は、診断部14の診断結果に応じて状態フラグを設定してもよい。
【0065】
続いて、更新部16は、更新タイミングであるか否かを判断する(ステップS13)。更新部16は、例えば、機械システム2のメンテナンスのような特定のイベントが発生した場合に、更新タイミングであると判断する(ステップS13;YES)。そして、更新部16は、抽出元データを更新する(ステップS14)。具体的には、更新部16は、ステップS11において取得された複数のデータセットのうち、正常を示す状態フラグが付されたデータセットを正常なデータセットとして取得し、正常なデータセットを抽出元データに追加することで、抽出元データを更新する。そして、更新部16は、一連の処理を再び行う。
【0066】
一方、ステップS13において、更新部16は、更新タイミングでないと判断した場合(ステップS13;NO)、抽出元データの更新を行うことなく、一連の処理を再び行う。
【0067】
このように、更新タイミングごとに、正常を示す状態フラグが付されたデータセットが抽出元データに追加され、抽出元データに含まれるデータセットの数が増加する。
【0068】
次に、図4を参照しながら、コンピュータを異常診断装置1として機能させるための異常診断プログラムPを説明する。図4は、異常診断プログラムの構成を示す図である。
【0069】
図4に示されるように、異常診断プログラムPは、メインモジュールP10、取得モジュールP11、抽出モジュールP12、作成モジュールP13、診断モジュールP14、出力モジュールP15、及び更新モジュールP16を備える。メインモジュールP10は、異常診断に係る処理を統括的に制御する部分である。取得モジュールP11、抽出モジュールP12、作成モジュールP13、診断モジュールP14、出力モジュールP15、及び更新モジュールP16を実行することにより実現される機能はそれぞれ、実施形態における取得部11、抽出部12、作成部13、診断部14、出力部15、及び更新部16の機能と同様である。
【0070】
異常診断プログラムPは、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及び半導体メモリ等の有形の記録媒体に固定的に記録された状態で提供されてもよい。異常診断プログラムPは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0071】
次に、異常診断装置1、異常診断方法、異常診断プログラムP、及び記録媒体の作用効果を説明する。
【0072】
機械システム2の状況は、メンテナンス、季節、及び機械システム2の運転モード等によって変化し得るので、1つの機械システム2であっても、様々な正常な状態を取り得る。例えば、一定期間のデータセットを学習データとして用いて学習情報を作成し、機械システム2の異常診断を行う構成では、機械システム2のある1つの正常な状態において取得されたデータセットから学習情報が作成され、機械システム2の異常診断が行われる。このため、機械システム2の別の正常な状態において取得された診断対象データを異常であると診断する、いわゆる誤検知が発生するおそれがある。一方、一定期間の範囲を拡大することで、機械システム2の複数の正常な状態において取得されたデータセットを用いて学習情報を作成することも考えられる。この場合、異常な状態の機械システム2から取得された診断対象データを正常であると診断する、いわゆる未検知が発生するおそれがある。誤検知及び未検知を低減するために、機械システム2の状況(正常状態)ごとに学習情報を作り分けることも考えられる。しかしながら、機械システム2の状況は連続的に変化することがあり、複数のデータセットを各状況に応じた学習データにクラスタリングすることは困難である。
【0073】
これに対し、異常診断装置1、異常診断方法、異常診断プログラムP、及び記録媒体では、診断対象データと抽出条件を決定するための条件設定情報とを用いて抽出条件が決定され、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの群をソート基準で並び替えた場合の先頭から上限数までのデータセットが学習データとして抽出される。学習データの抽出には、診断対象データによって決定された抽出条件が用いられるので、診断対象データの異常診断に適した学習データが抽出され、この学習データによってパターン認識手法に用いられる学習情報が作成される。このため、機械システム2の状況が変化した場合でも、診断対象データに応じた学習情報を用いて異常診断が行われるので、誤検知及び未検知が生じる可能性を低減することができる。つまり、機械システム2の状況に応じた異常診断を行うことができる。また、学習情報は、診断対象データに応じて作成されるので、診断の度に学習情報が動的に作成される。このため、機械システム2のあらゆる状況に応じて学習情報を予め作成しておく必要がない。
【0074】
また、上限数までのデータセットが学習データとして抽出されるので、学習データに含まれるデータセットの数が上限数に制限される。このため、学習情報の作成等に要する時間の増加を抑制することができる。その結果、機械システム2の状況に応じた異常診断を行いつつ、診断に要する時間の増加を抑制することが可能となる。
【0075】
一方、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの数が上限数よりも少ない場合、学習データに含まれるデータセットの数が少なくなるので、異常診断の精度が低下するおそれがある。これに対し、異常診断装置1、異常診断方法、異常診断プログラムP、及び記録媒体では、正常なデータセットを抽出元データに追加することで、抽出元データが更新される。このため、抽出元データに含まれるデータセットの数が増加するので、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち抽出条件を満たすデータセットの数が上限数以上となる可能性を高めることができる。これにより、異常診断の精度が低下することを抑制することが可能となる。
【0076】
機械システム2の状況は、時間の経過とともに徐々に変化し得る。このため、抽出元データに含まれる複数のデータセットが診断時に対して古い場合、診断対象データが正常であったとしても、異常と診断されるおそれがある。これに対し、ソート基準として、診断対象データの診断時に近い順が用いられた場合、診断時により近いデータセットが学習データとして用いられるので、異常診断の精度が低下することを抑制することが可能となる。また、抽出元データに新しいデータセットが追加されることで、異常診断の精度が低下することをより一層抑制することが可能となる。
【0077】
抽出元データの更新は、異常診断装置1において自動で行われ得る。この場合、更新作業の負荷を削減することができるので、異常診断装置1の運用コストを低減しながら、異常診断の精度を維持することが可能となる。
【0078】
ソート基準として、機械システム2の出荷時に近い順が用いられた場合、機械システム2の出荷時からの劣化を診断することが可能となる。ソート基準として、異常度スコアの小さい順が用いられた場合、正常である可能性が高いデータセットを用いて異常診断が行われるので、異常診断の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0079】
なお、本開示に係る異常診断装置、異常診断方法、異常診断プログラム、及び記録媒体は実施形態に限定されない。
【0080】
例えば、実施形態では、異常診断装置1は1台の装置により構成されているが、異常診断装置1は複数の装置により構成されてもよい。
【0081】
プロセッサ10に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0082】
図1に示された機能ブロックの区分は、一例であって、異常診断装置1は、その機能に応じて、別の機能ブロックに区分されてもよい。また、異常診断装置1の各機能部は、さらに細分化されてもよく、いくつかの機能部が1つの機能部に結合されてもよい。
【0083】
抽出元データに含まれるデータセットの数が多くなると、抽出条件を満たすデータセットの探索に時間が掛かる。このため、蓄積データ記憶部21は、抽出元データに含まれる複数のデータセットをソート基準で並べ替え、並び替えられたデータセットの配列の先頭のデータセットから予め定められた数のデータセットごとに複数のテーブルに分割して、抽出元データを保持してもよい。ここでは、各テーブルを、配列順に、1番目のテーブル、2番目のテーブル・・・等と称することとする。
【0084】
この場合、抽出部12は、複数のテーブルのうち、1番目のテーブルから順にテーブルを1つずつ選択し、選択されたテーブルに含まれる複数のデータセットから抽出条件を満たすデータセットを抽出する。このとき、抽出されたデータセットの数が上限数に達していなければ、抽出部12は、次のテーブルを選択し、選択されたテーブルに含まれる複数のデータセットから抽出条件を満たすデータセットを抽出する。抽出されたデータセットの数が上限数に達するか、すべてのテーブルが選択されるまで、上述の処理が繰り返される。この構成によれば、抽出条件を満たすデータセットの探索に要する時間を低減することができる。
【0085】
また、機械システム2の正常な状態は、外的要因によって変化し得る。例えば、機械システム2のメンテナンスが行われた場合には、機械システム2の正常な状態は変化し得る。機械システム2のメンテナンスの例としては、機械システム2に設けられているセンサの交換が挙げられる。このため、抽出元データに格納されている各データセットは、正常な状態が変化する前のデータセットであるか正常な状態が変化した後のデータセットであるかを示す変更フラグをさらに含んでもよい。変更フラグは、デフォルトで正常な状態が変化した後のデータセットであることを示す。機械システム2のメンテナンスが行われた場合には、更新部16は、メンテナンス完了時点よりも前の時刻を示す時刻情報を有するデータセットの変更フラグを、正常な状態が変化する前のデータセットを示すように設定する。そして、抽出部12は、変更フラグを参照して、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、正常な状態が変化した後のデータセットから、学習データを抽出してもよい。あるいは、更新部16は、正常な状態が変化する前のデータセットを抽出元データから削除することで、抽出元データを更新してもよい。
【0086】
この構成によれば、正常な状態が変化する前のデータセットが除外された上で、学習データが抽出されるので、抽出条件を満たすデータセットの探索に要する時間を低減することができる。また、正常な状態が変化する前のデータセットを抽出元データから削除することで、蓄積データ記憶部21に保持されるデータセットの数を減らすことができ、蓄積データ記憶部21の容量を削減することが可能となる。
【0087】
異常診断装置1の操作者が入力装置を用いて蓄積データ記憶部21に格納されているデータセットの状態フラグを変更可能に構成されていてもよい。例えば、誤検知であることが判明した場合に、状態フラグが異常であることを示すように変更されてもよい。
【0088】
抽出部12は、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの数が上限数に達しなかった場合に、抽出条件を満たすデータセットの数が上限数以上となるように抽出条件を緩和してもよい。例えば、抽出条件が「吸気温度(のパラメータ値)が18度以上であり、かつ、22度以下であること」であり、この抽出条件を満たすデータセットの数が上限数に達しなかった場合、抽出部12は、抽出条件を「吸気温度(のパラメータ値)が17度以上であり、かつ、23度以下であること」に変更してもよい。つまり、抽出部12は、抽出条件の範囲を拡大してもよい。これにより、学習データに含まれるデータセットの数を上限数とすることができるので、異常診断の精度が低下することを抑制することが可能となる。
【0089】
抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの数が上限数に達しなかった場合に、以下の処理が行われてもよい。まず、抽出部12は、抽出幅をより広く取ることで、データセットが抽出されるようにする。そして、作成部13は、抽出されたデータセットを用い、単回帰及び重回帰等を行うことで、判定対象センサの値、及びその分散を推定する。そして、診断部14は、推定されたセンサ値及び分散を学習情報として、異常度スコア(マハラノビス距離)を算出する。
【0090】
実施形態では、抽出部12は、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの群を抽出した上で、データセットの群をソート基準でソートし、ソートされたデータセットの群の先頭から上限数分のデータセットを学習データとして抽出している。学習データの抽出方法はこれに限られない。
【0091】
例えば、抽出元データに含まれる複数のデータセットのうち、抽出条件を満たすデータセットの数が上限数以下である場合、抽出部12は、ソートを行うことなく、抽出条件を満たすデータセットを学習データとして抽出してもよい。
【0092】
抽出部12は、抽出元データに含まれる複数のデータセットをソート基準でソートしてから、ソートされた複数のデータセットの先頭から順に抽出条件を満たすか否かを判断してもよい。この場合、抽出部12は、抽出条件を満たすデータセットの数が上限数に達すると、上限数のデータセットを学習データとして抽出する。
【符号の説明】
【0093】
1 異常診断装置
2 機械システム(診断対象システム)
3 外部装置
10 プロセッサ
11 取得部
12 抽出部
13 作成部
14 診断部
15 出力部
16 更新部
20 記憶装置
21 蓄積データ記憶部(記憶部)
22 学習情報記憶部
P 異常診断プログラム
【国際調査報告】