特表2016-517829IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-517829(P2016-517829A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(54)【発明の名称】車両の乗員保護手段を制御するための装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/0136 20060101AFI20160523BHJP
【FI】
   B60R21/0136
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-513282(P2016-513282)
(86)(22)【出願日】2014年5月6日
(85)【翻訳文提出日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】EP2014059152
(87)【国際公開番号】WO2014184041
(87)【国際公開日】20141120
(31)【優先権主張番号】102013208686.5
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒ,シモン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】アジャノヴィク,ムスタファ
(72)【発明者】
【氏名】ニッツチク,ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ギュンター
(57)【要約】
本発明は、車両(1)の乗員保護手段(30)を制御するための装置(5)であって、少なくとも1つの物理的変数を検出する少なくとも1つのセンサユニット(20,22,24,26,28)と、検出された少なくとも1つの物理的変数から、衝突に特徴的な信号波形を生成する評価・制御ユニットとを備え、生成された信号波形における車両(1)のエネルギー低下特性に依存して、少なくとも1つの時間フェーズを決定し、衝突分類および乗員保護手段(30)の起動決定のために評価する装置に関する。評価・制御ユニット(10)は、第1時間フェーズの終わりを表す信号波形における少なくとも1つの特徴的な第1時点を求め、少なくとも1つの特徴的な時点を起点として、エネルギー低下の少なくとも1つの特徴を逆行的に計算し、評価・制御ユニット(10)は、衝突分類を行い、逆行的に計算した少なくとも1つの特徴に依存して乗員保護(30)の起動決定を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員保護手段を制御するための装置であって、
少なくとも1つの物理量を検出する少なくとも1つのセンサユニット(20,22,24,26,28)と、検出された少なくとも1つの物理量から、衝突を示す信号波形(Acc)を生成する評価・制御ユニット(10)とを備え、
該評価・制御ユニット(10)が、生成された信号波形(K1,K4〜K10)における車両(1)のエネルギー低下特性に依存して、少なくとも1つの時間フェーズ(P1,P2)を決定し、衝突分類および乗員保護手段(20)の起動決定のために評価する、前記装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、第1時間フェーズ(P1)の終わりを表す前記信号波形(K1,K4〜K10)における少なくとも1つの特徴的な第1時点(tp)を求め、少なくとも1つの前記特徴的な第1時点(tp)を起点として、エネルギー低下の少なくとも1つの特徴(amax,amin,A,A1,A2,Dv1,Dv2,tp−t1,t2−t1,G)を逆行的に計算し、
前記評価・制御ユニット(10)が、逆行的に計算した少なくとも1つの前記特徴(amax,amin,A,A1,A2,Dv1,Dv2,tp-t1,t2-t1,G)に依存して、衝突分類を行い、乗員保護手段(30)の起動決定を行うこと、を特徴とする車両の乗員保護手段を制御するための装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
エネルギー低下特性の前記第1時間フェーズ(P1)が、前記車両(1)の外側の衝撃吸収部によって決定される、装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記信号波形における局所的な最大値(amax)を検出する、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記信号波形における前記局所的な最大値(amax)を少なくとも1つの閾値と比較し、比較により硬い衝突または軟らかい衝突を検出する、装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記局所的な最大値(amax)に依存して、前記信号波形(K1,K4,K5,K6)における前記特徴的な第1時点(tp)を求める、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記局所的な最大値(amax)に対し絶対的にあるいはそれとは相対的に、信号の低下または積分された信号の低下によって、前記特徴的な第1時点(tp)を求める、装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記少なくとも1つの信号波形を異なる度合いでフィルタ処理し、生成されたフィルタ曲線(K8,K9)を、前記特徴的な第1時点(tp)を検出するために互いに比較する、装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記特徴的な第1時点(tp)を勾配計算によって求める、装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記第1フェーズ(P1)において達した最大の力レベル(amax)、前記第1フェーズ(P1)において低下した速度(Dv1)、前記第1フェーズ(P1)の前記信号波形(K1,K4〜K10)の部分的範囲にわたる積分、前記第1フェーズ(P1)の持続時間(t1〜tp)、前記信号波形(K1,K4,K5)の上昇時間(t2−t1)、前記第1フェーズ(P1)の前記信号波形(K10)の勾配(G)、の少なくとも1つを逆行的に計算する、装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記第1フェーズ(P1)に対し逆行的に計算した特徴(amax,amin,A,A1,A2,Dv1,tp−t1,t2−t1,G)、および中間の量(a1,a2,Thd(amax,t))、の少なくとも1つを、さらに評価するために論理的および/または数学的に互いに組み合わせ、および/または関連づける、装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記信号波形(K1,K4〜K10)における第2時間フェーズ(P2)の終わりを表す特徴的な第2時点によって、前記第1フェーズ(P1)に続く第2フェーズ(P2)を定める、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記信号波形(K1,K4〜K10)における前記特徴的な第2時点を、前記特徴的な第1時点(tp)後に生じる局所的な最大値に依存して、互いに異なるフィルタ曲線によって、勾配計算によって、前記特徴的な第1時点(tp)からの固定の期間、前記特徴的な第1時点(tp)からの固定の速度低下(Dv2)、所定の総速度低下(Dv)、の少なくとも1つによって求める、装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記第2時間フェーズ(P2)において低下した速度(Dv2)および/または第2時間フェーズ(P2)における最小の力レベル(a_min)を逆行的に計算する、装置。
【請求項14】
請求項11から13までのいずれか一項に記載の装置において、
前記評価・制御ユニット(10)が、前記第1および第2フェーズ(P1,P2)について逆行的に計算した特徴(amax,amin,A,A1,A2,Dv1,Dv2,tp−t1,t2−t1,G)および/または中間の量(a1,a2,Thd(amax,t))を、さらに評価するために論理的および/または数学的に相互に組み合わせ、および/または関連づける、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前提部分に記載の車両の乗員保護手段を制御するための装置
【背景技術】
【0002】
エアバッグ制御器における前面衝突の検出は、一般に車両長手方向において感知する加速度センサに基づいており、これらの加速度センサは、例えば、トンネル部の中央に配置されているが、車両周縁部の位置、例えば前端部または両方のセンターピラーなどに対称的に配置されていることもある。硬い障害物(例えば壁)に衝突した場合には、同じ速度で軟らかい障害物に衝突した場合よりも高い加速度信号が測定されるが、軟らかい障害物に衝突した場合にも保持手段もしくは乗員保護手段を作動する必要がある。したがって、軟らかい障害物に対する急激な衝突(例えば、ODB衝突、ユーロNCAP)と硬い障害物に対する緩やかな衝突(起動されることが望ましくない)とを区別するために、乗員保護手段における起動アルゴリズムに対し高い要求が課されている(例えばAZT安全性テスト)。
【0003】
付加的なセンサ装置、例えばアップフロントセンサー、車両横方向において感知する加速度センサ、固体伝搬音センサ、予測的なセンサ装置、または車両固有速度を使用することにより、両方の衝突タイプを区別することが可能である。これら検出法の欠点は付加的なコスト(センサ)装置であり、自車両の速度を使用した場合には衝突相手の速度が考慮されず、したがって誤った有効衝突速度を前提としてしまうことである。
【0004】
この場合に使用される起動アルゴリズムは、測定された加速度信号の他に、処理されたセンサ信号も利用する。処理されるこれらの特徴の意味および目的は、特に、測定された最新の加速度値の他に、衝突履歴を起動特性に関連づけることである。処理されるこれらの特徴は、例えば、衝突時に移動する物体の速度低下もしくは前進を反映する適宜な開始および停止条件を備える第1または第2加速度積分、固定された時間にわたる速度低下を反映する開始‐停止条件なしにスライドする窓積分、他の方法でローパスフィルタ処理された加速度信号、および/または信号のダイナミクスについての基準である事前処理された加速度信号の値または値の平方根に関する積分/または窓積分である。これら全ての特徴では、衝突プロセスにおいて連続的に特徴が計算されることが共通している。したがって、最新の特徴的な値は、衝突の履歴全体を考慮している。衝突分類および乗員保護手段の起動決定を行うためには、最新の特徴的な値が閾値と、または特徴の組合せが特徴マップと、連続的に比較される。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006038348号明細書には、少なくとも1つのセンサユニットおよび評価・制御ユニットを備える衝突分類装置が開示されている。この装置は、少なくとも1つのセンサユニットによって検出された信号を衝突分類のために評価する。この場合、少なくとも1つのセンサユニットが車両の中央領域に配置されており、少なくとも1つのセンサユニットによって検出された信号が、対応する車両の既知の物理的特性を考慮して評価・制御ユニットによって評価される。評価・制御ユニットは、検出された信号の波形において少なくとも2つの時間フェーズを決定し、車両前部の外側領域が障害物に衝突したことを示す少なくとも1つの高い信号振幅を伴う第1フェーズ後に、実質的に平坦な信号波形を伴う第2フェーズが続くことが、検出された信号波形の評価によって明らかになった場合には、例えば斜め衝突、オフセット衝突および/またはポスト衝突に該当する第1の衝突形式であると推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006038348号
【発明の概要】
【0007】
これに対して、独立請求項1の特徴を備える車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置は、持続的な特徴計算または衝突開始から始まる特徴計算によって衝突プロセスもしくは衝突履歴に関する情報を得るのではなく、衝突プロセスの特定のいくつかの時点における衝突プロセスの逆行的な評価を行う、という利点を有する。したがって、衝突の加速度値が、十分に長い時間にわたってリングバッファに供給された状態で保持される。このような衝突プロセスについての特徴形成が、「塗りつぶされた」積分特徴を含んでいるだけではなく、有利には、後から見てはじめて可能となる極めて具体的な信号特徴および信号形態を検出することを可能にする。これらの信号特徴は、物理的な衝突モデルによってより適切に実証することもでき、したがって、衝突を識別するためにより適しており、例えばエアバッグ、シートベルトテンショナなどの乗員保護システムのより正確でロバストな作動を可能にする。
【0008】
従来のアルゴリズムにおいて持続的に行われる特徴計算は、これらの特徴に衝突履歴が「塗りつぶされて」再現されるという欠点を有する。例えば、所定の時点で同じ加速度値および等しい第1積分を示す多数の異なる加速度信号波形が考えられる。したがって、異なる物理的な衝突事象に属する様々な加速度プロセスを互いに区別することはできない。したがって、乗員保護システムの最適な起動を行うことはできない。
【0009】
本発明の核心は、信号の波形において、1つまたはいくつかの特徴的な時点を検出することである。これらの時点は、エネルギー低下の種々異なるフェーズによって特定される。エネルギー低下の第1フェーズは、バンパーおよびクラッシュボックスなどの前端の衝撃吸収部の変形によって決まる。したがって、好ましい特徴的な第1時点は第1エネルギー低下の終わりであり、第1エネルギー低下の終わりは、信号の急降下または十分に長い平坦域によって検出することができる。同様に、信号低下の他のフェーズを定めてもよい。特徴的な時点では、十分に長い時間にわたって加速度データを記憶しているリングバッファからこれまでのエネルギー低下の様々な特徴が逆行的に計算される。これらの特徴は評価され、所定の特徴組合せにより衝突分類が行われ、乗員保護システムのための起動決定が行われる。
【0010】
有利には、第1エネルギー低下の逆行的な評価は、継続的な特徴計算よりも遥かに正確な特徴計算を可能にする。さらに第1エネルギー低下の逆行的な評価は、適合的もしくは適応的な特徴を計算することを可能にし、これにより第1のエネルギー低下における所定の特徴を特徴計算に組み込むことができるこれらの特徴は、衝撃吸収部における所定の変形プロセスの結果なので、これらの特徴から衝突の速度、および、例えば硬い、軟らかい、完全なオーバラップ、オフセットなどの衝突のタイプを、従来のアルゴリズムの場合よりも正確に判定することができる。これにより、有利にはより正確でロバストな衝突分類が可能となる。
【0011】
車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置の車両長手方向において感知する、トンネル部の中央の加速度センサだけではなく、車両周縁部に対称的に分配され、車両長手方向に感知する他の加速度センサを評価することもできる。したがって、例えば、センターピラーの領域に、車両の左側および右側にそれぞれ1つのセンサを配置してもよい。さらに、車両横方向に感知するセンサを評価の際に使用することもできる。複数のセンサを評価する場合には、センサ信号を個別に評価し、続いて特徴を統合することにより、平均値信号を計算する場合よりも正確な衝突識別が可能になる。異なる車両方向において感知する加速度センサを個別に評価し、続いて特徴を統合することにより、有利には斜め衝突の検出も可能になる。
【0012】
車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置の単独で使用することができるだけではなく、連続的な特徴計算および特徴評価を行う従来の装置と組み合わせて使用することもできる。
【0013】
少なくとも1つの物理量を検出する少なくとも1つのセンサユニットと、検出された少なくとも1つの物理量から、衝突に特徴的な信号の波形を生成する評価・制御ユニットとを備える車両の乗員保護手段を制御するための装置を提供する。この場合、評価・制御ユニットは、生成された信号波形における車両のエネルギー低下特性に依存して、少なくとも1つの時間フェーズを決定し、衝突分類および乗員保護手段の起動決定のためにこの時間フェーズを評価する。本発明によれば、評価・制御ユニットは、信号波形において第1フェーズの終わりを表す少なくとも1つの特徴的な第1時点を求め、この少なくとも1つの特徴的な第1時点を起点として、エネルギー低下の少なくとも1つの特徴を逆行的に計算する。評価・制御ユニットは、逆行的に計算した少なくとも1つの特徴に依存して、衝突分類を行い、乗員保護手段の起動決定を行う。
【0014】
従属請求項に記載の手段および他の実施形態により、独立請求項1に記載されている車両の乗員保護手段を制御するための装置の有利な改良形態が可能である。
【0015】
供給された加速度信号から、特に軟らかい衝突についても力レベルの波形の第1の特徴的な変化が検出されることは、特に有利である。これに基づいて、車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置の衝突タイプ「硬い・軟らかい」の確実な識別を可能にする。さらに、車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置の付加的なセンサ装置(コスト)なしに、また起こり得る誤った衝突速度を考慮することなしに、軟らかい衝突をより適切に検出し、これに基づいて乗員保護手段の起動決定を最適化することを可能にする。
【0016】
車両の衝撃吸収部の構造により、衝突について種々異なる力レベルが設定される。硬い障害物との衝突時には、自車両の構造のみが変形し、力レベルの波形を容易に検出することができるが、軟らかい衝突時には、自車両も相手も変形する。この場合、衝撃吸収部の剛性変化に応じて、自身の変形のフェーズは相手の変形のフェーズと入れ替わる。相手の変形は、測定された加速度信号波形の平坦域として現れる。車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置の実施形態では、変形フェーズのこのような変化を、衝突に特徴的な信号波形を評価することによって検出することができる。衝突タイプ「硬い・軟らかい」の識別により、既存の起動アルゴリズムの起動閾値を、軟らかい衝突の場合のより低い信号波形に適合させることができる。代替的には、衝突タイプ「硬い・軟らかい」に応じて、様々な特徴または確認の組合せもしくは「起動プロセス」を起動決定のために用いることができる。
【0017】
本発明による装置の有利な構成では、エネルギー低下特性の第1時間フェーズが車両の外側の衝撃吸収部によって決定される。外側の衝撃吸収部は、例えばバンパークロスビームおよびバンパークロスビームと長手方向ビームとの間に配置されたクラッシュボックスを含む。
【0018】
車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置の別の有利な構成では、評価・制御ユニットは、信号波形における局所的な最大値を検出する。評価・制御ユニットは、信号波形における局所的な最大値を、例えば少なくとも1つの閾値と比較し、この比較により、硬い衝突または軟らかい衝突を検出することができる。第1フェーズにおける最大値が、例えば硬い衝突を表す第1閾値を超えるときには、評価・制御ユニットは硬い衝突を検出する。第1フェーズにおける最大値が、軟らかい衝突を表す第2閾値を超えるが、第1閾値未満である場合には、評価・制御ユニットは軟らかい衝突を検出する。
【0019】
本発明による装置の別の有利な構成では、評価・制御ユニットは、局所的な最大値に依存して信号波形における特徴的な第1時点を求める。特徴的な第1時点の依存性は、例えば局所的な最大値が生じた後に下回るべき閾値によって、局所的な最大値に対して絶対的なものとしてあるいは相対的なものとして設定することができる。評価・制御ユニットは、例えば信号低下または積分された信号の低下によって、局所的な最大値に対して絶対的なものとしてあるいは相対的なものとして、特徴的な第1時点を求めることができる。さらに、特徴的な第1時点を求めるために局所的な最大値の発生前後の所定の期間を設定することができる。
【0020】
付加的または代替的には、評価・制御ユニットは、少なくとも1つの信号波形を異なる度合いでフィルタ処理し、生成されたフィルタ曲線を、特徴的な第1時点を検出するために互いに比較することができる。さらに、評価・制御ユニットは、勾配計算によって特徴的な第1時点を求めることができる。
【0021】
本発明による装置の別の有利な構成では、評価・制御ユニットは衝突分類および起動決定のための特徴として、第1フェーズにおいて達した最大力レベルおよび/または第1フェーズにおいて低下した速度および/または第1フェーズの信号波形の部分的範囲にわたる積分および/または第1フェーズの持続時間および/または信号波形の上昇時間および/または第1フェーズの信号波形の勾配を逆行的に計算する。さらに、評価・制御ユニットは、第1フェーズのために逆行的に計算した特徴および/または中間量をさらに評価するために論理的および/または数学的に互いに組み合わせ、および/または関連づけることができる。
【0022】
本発明による装置の別の有利な構成では、評価・制御ユニットは信号波形における第2時間フェーズの終わりを表す特徴的な第2時点により、第1フェーズに続く第2フェーズを定めることができる。この場合、評価・制御ユニットは、信号波形における特徴的な第2時点を、特徴的な第1時点後に生じる局所的な最大値に依存して、および/または様々なフィルタ曲線によって、および/または勾配計算によって、および/または特徴的な第1時点からの固定された期間および/または特徴的な第1時点からの固定された速度低下および/または所定の総速度低下によって求めることができる。さらに、評価・制御ユニットは、第2時間フェーズにおいて低下した速度および/または第2時間フェーズにおける最小力レベルを逆行的に計算することができる。
【0023】
本発明による装置の別の有利な構成では、評価・制御ユニットは、第1および第2フェーズについて逆行的に計算した特徴および/または中間量を、さらなる評価のために論理的および/または数学的に相互に組み合わせ、および/または関連づけることができる。
【0024】
本発明の実施例を図面に示し、以下に詳細に説明する。図面では同じ符号は、同じもしくは類似の機能を実施する構成要素もしくは部材を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置の実施例を示す概略的なブロック図である。
【図2】図1の車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置によって生成され、評価される、衝突に特徴的な信号波形を示す概略図である。
【図3】車両の乗員保護手段を制御するための従来の装置によって生成され、評価される、硬い衝突時の衝突に特徴的な信号波形を示す概略図である。
【図4】車両の乗員保護手段を制御するための従来の装置によって生成され、評価される、軟らかい衝突時の衝突に特徴的な信号波形を示す概略図である。
【図5】車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置によって生成され、評価される、硬い衝突時の衝突に特徴的な信号波形を示す概略図である。
【図6】図1に示した車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置によって生成され、評価される、軟らかい衝突時の衝突に特徴的な信号波形を示す概略図である。
【図7】図1に示した車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置の起動プロセスを示す概略図である。
【図8】図1に示した車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置が、変形フェーズの変化を信号低下により検出する場合の、衝突に特徴的な信号波形を示す概略図である。
【図9】図1に示した車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置が、変形フェーズの変化を積分された信号の低下により検出する場合の、衝突に特徴的な信号波形を示す概略図である。
【図10】図1に示した車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置が、変形フェーズの変化をフィルタ比較によって検出する場合の、衝突に特徴的な信号波形の2つのフィルタ曲線を示す概略図である。
【図11】図1に示した車両の乗員保護手段を制御するための本発明による装置が、変形フェーズの変化を勾配法によって検出する場合の、衝突に特徴的な信号波形を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
車両の衝撃吸収部は、一般に、異なる力レベルを有するように構成されている。すなわち、衝撃吸収部の前端部の構造は最小力レベルを備え、後部の構造は最大力レベルを備える。したがって、衝撃吸収部が変形した場合には、力レベルおよび測定される加速度が変化する。硬い障害物に対する衝突時には自身の構造のみが変形し、力レベルの変化に際しては、変形したばかりの構造の塑性変形によって常に力の急降下を示す。軟らかい衝突時には、自車両も相手の車両も変形する。この場合、衝撃吸収部の剛性変化に応じて自身の変形のフェーズと相手の変形のフェーズとが入れ替わる。達した力レベルは、自身の変形から相手の変形への移行時に幾分低下することが多く、この場合、相手の変形のフェーズでは一定のレベル(平坦域)に留まる。
【0027】
図1および図2に示されているように、車両1の乗員保護手段30を制御するための本発明による装置5の図示の実施例は、少なくとも1つの物理量を検出する少なくとも1つのセンサユニット20,22,24,26,28と、検出された少なくとも1つの物理量から衝突に特徴的な少なくとも1つの信号波形Accを生成する評価・制御ユニット10とを含む。評価・制御ユニット10は、生成された信号波形Accにおける車両1のエネルギー低下特性に依存して、少なくとも1つの時間フェーズP1,P2を決定し、衝突分類および乗員保護手段30の起動決定のために評価する。
【0028】
本発明によれば、評価・制御ユニット10は、信号波形Accにおいて第1時間フェーズP1の終わりを表す少なくとも1つの特徴的な第1時点tpを求め、少なくとも1つの特徴的な第1時点tpを起点として、エネルギー低下の少なくとも1つの特徴amax,amin,A,t2−t1,tp−t1を逆行的に計算する。評価・制御ユニット10は、逆行的に計算した少なくとも1つの特徴amax,amin,A,t2−t1,tp−t1に依存して、衝突分類および乗員保護手段30のための起動決定を行う。図示の実施例では、4つのセンサユニット20,22,24,26,28が設けられており、これらのセンサユニットのうち、第1センサユニット22は車両フロント部に配置されており、第2および第3センサユニット24,26は車両側部に配置されており、第4センサユニット28は車両1の中央に配置されている。センサユニット20,22,24,26,28は、例えば加速度センサを含み、これらの加速度センサは、少なくとも1つの所定の空間方向、例えば、車両長手方向、車両高さ方向、または車両横方向の加速度を検出する。
【0029】
衝突プロセスを評価するためには、加速度センサによって検出された信号を適切にフィルタ処理し、測定された信号から共振、雑音、および他の不都合な作用を除去することは有意義である。このようにして残った信号は、衝突時に車両1の衝撃吸収部において起きた「巨視的な」変形プロセスを反映している。図示の実施例では、評価・制御ユニット10は、センサユニット20,22,24,26,28によって検出された信号を評価のために十分な持続時間にわたって記憶する少なくとも1つの内部リングバッファ12を含む。代替的に、少なくとも1つのリングバッファ12を評価・制御ユニット10の外に配置してもよく、例えば個々のセンサユニット20,22,24,26,28内に配置してもよい。
【0030】
特徴的な第1時点tpを定めるためには、特に、例えばバンパークロスビームおよびクラッシュボックスなどで生じる第1エネルギー低下が適している。この第1エネルギー低下は良好な再現可能性により適しており、第1エネルギー低下から、衝突タイプおよび衝突速度を推定することができ、とりわけ、要求される起動時間も時間的にこの領域にあたり、後方に位置する構造、例えば長手方向ビームの変形を待つまでもない。
【0031】
それぞれの変形プロセスは、弾性変形、塑性変形、次いで亀裂もしくは折れ曲りの連続によって特徴づけられている。したがって、特徴的な第1のエネルギー低下は、例えば、バンパークロスビームおよびクラッシュボックスにおいて典型的なように、所定の最小力レベルaminを超え、続いて信号の十分な急降下が生じていることによって検出される。この急降下は、達した最大力レベルamaxに対し絶対的にあるいはそれとは相対的に評価してもよい。図2にさらに示されているように、達した最大値amaxに対して、例えば25%の(すなわち、75%への)急降下を、第1閾値a1として、特徴的な第1時点tpを求めるために計算することもできる。最小力レベルaminおよび所要の(相対的な)信号急降下a1についての正確な値が、特に有利には調節可能なパラメータとして供給されている。
【0032】
次いで、エネルギー低下の第1フェーズP1として、衝突開始t0から時点tpで検出された力急降下までの時間範囲が示されている。代替的には、衝突開始時点の小さい信号を除外することもでき、信号波形K1が所定の第2閾値a2に達する時点t1からエネルギー低下の第1フェーズP1を開始してもよい。第1閾値a1と同様に、この第2閾値a2は、エネルギー低下の第1フェーズP1で達した最大値amaxに対し絶対的なものとしてあるいはそれとは相対的なものとして定めてもよい。図2では、例えば、達した最大値amaxの25%の相対閾値が、この第1フェーズP1の開始として選択されている。
【0033】
代替的には、エネルギー低下の第1フェーズP1、ひいては衝突プロセスの特徴的な第1時点tpを検出するために、他の方法を用いることも可能である。次に図7〜図10を参照して、特徴的な第1時点tpを検出するための他の方法を説明する。
【0034】
エネルギー低下の第1フェーズP1から幾つかの物理的特徴を推定することができ、これらの特徴は、起こった変形プロセスに特徴的であり、したがって、衝突タイプおよび衝突速度を推定することを可能にする。したがって、例えば、検出された加速度の最大値amax(衝撃吸収部で達した力レベルを表す)、および/または第1フェーズP1の加速度値(低下した速度Dv1を表す)に関する積分、および/または第1エネルギー低下の部分的範囲A,A1,A2に関する積分および/または持続時間(tp−t1)もしくは第1エネルギー低下の第1フェーズP1の幅および/または上昇時間(t2−t1)および/または勾配Gおよび/または第1エネルギー低下の信号形態および/またはこれらの特徴の組合せ、例えば、個々の特徴の相互関係などを計算し、評価のために使用することができる。
【0035】
図3および図4には、それぞれ上昇時間(t2−t1)の従来の検出法が示されている。この場合、持続時間(t2−t1)が検出され、持続時間(t2−t1)は、固定された下側の閾値Lo_thdから固定された上側の閾値Up_thdへ上昇させるために、適切にフィルタ処理された加速度信号K2,K3を必要とする。下側の閾値Lo_thdは、アルゴリズムの開始閾値と同一視することができる場合が多い。持続時間(t2−t1)は、時間カウンタによって直接に検出するか、または加速度信号K2、K3と下側の閾値Lo_thdとの間の第1面積A1または上側の閾値Up_thdと加速度値K2,K3との間の第2面積A2によって間接的に求めることができる。
【0036】
この方法は、硬い壁に対する衝突を表す第1信号波形K2の例について図3に概略的に示されており、軟らかい障害物への衝突を表す第2信号波形の例については図4に示されている。閾値Up_thd,Lo_thdは、この場合、硬い衝突時の上昇を正確に求めるために設けられている。しかしながら、これらの閾値Up_thd,Lo_thdは固定されているので、軟らかい衝突時の上昇を評価するためには不都合である。軟らかい衝突は、力波形K3において、軟らかい障害物の撓みにより生じる急峻な初期の上昇を示すが、その後は平坦域を示す。したがって、固定された閾値に対する評価は、軟らかい衝突の場合には著しく大きい上昇時間をもたらし、それ故、衝突速度もしくは衝突閾値を評価するために適した基準ではない。
【0037】
これに対して、図5には、信号波形K4の上昇時間(t2−t1)の逆行的および適合的な検出法を示している。この場合、まず特徴的な第1時点tpにおけるエネルギー低下の第1フェーズP1の終わりを待つ必要がある。第1フェーズP1が終わったときには、上昇評価は、逆行的に、適合された閾値a1,a2によって行うことができる。ここで、エネルギー低下の第1フェーズP1で達した最大値amaxに関連して下側の閾値a2および上側の閾値a1を選択することが特に有利である。したがって、例えば信号波形K4の最大値amaxの25%から75%までの上昇の持続時間(t2−t1)を求めることができ、上側もしくは第1の閾値a1は、特徴的な第1時点tpを表す閾値と同一である。特に有利には、閾値a1,a2,aminのための正確な百分率値が、調節可能なパラメータとして供給されている。
【0038】
エネルギー低下の第1フェーズP1に適合されたこの特徴選択によって、図6に示した軟らかい衝突の信号波形K6においても、信号波形の第1の局所的な最大値amaxに関連して求めた短い上昇時間(t2−t1)により、急速な加速度上昇を正確に検出することができる。上昇時間(t2−t1)は、この場合にも時間カウンタによって直接に求めてもよいし、または斜線の面積A1,A2を計算することによって間接的に求めてもよい。閾値a1,a2は、信号波形K5において達した局所的な最大値amax自体によって設定されているので、これらの面積A1,A2は、正確な時間検出のために、同様に局所的な最大値amaxの値によって正規化されている。
【0039】
このようにして求めた上昇時間(t2−t1)から、等式(G1):
【数1】
にしたがって単純な商をとることにより、勾配Gを求めることができる。
図示の実施例については:
【数2】
が成り立つ。
【0040】
幾つかの衝突タイプ(例えば、ODB)については、所要の起動時間は、エネルギー低下の第1フェーズP1の終わりにおける特徴的な第1時点tpよりも遅い。したがって、正確でロバストな起動決定のためには、早めに衝突分類を行い、まだ残されている時間をさらなる評価のために利用することには意味がある。
【0041】
エネルギー低下の第2フェーズP2は、様々な形態で定めることができる。例えば、エネルギー低下の第2フェーズP2の終わりを表す特徴的な第2時点の検出は、エネルギー低下の第1フェーズP1の終わり時における特徴的な第1時点の検出と同様に行うこともでき、および/または第1フェーズP1の終わりにおける特徴的な第1時点tpからの固定された時間によって行うこともでき、および/または第1フェーズP1の終わりにおける特徴的な第1時点tpからの固定された加速度低下Dv2によって行うこともできる。代替的には、衝突プロセスにおいて全体として所定の総加速度低下Dvに達するまで待つこともできる。この場合、第1フェーズP1において強度の速度低下Dv1を被った衝突においては、第2フェーズP2はそれに対応して持続がより短くなり、またその反対もいえる。
【0042】
第2フェーズP2におけるエネルギー低下の特徴として、例えば、エネルギー低下の第1フェーズP1の場合と同様の特徴を計算してもよい。したがって、例えば、第2フェーズP2において、検出された加速度を加算し、第2フェーズP2における速度低下Dv2を計算してもよい。特に、第2フェーズP2における加速度最小値aminを求めてもよい。
【0043】
さらに、第1フェーズP1および第2フェーズP2を共に評価する特徴を生成することもできる。特に、適宜な部分的特徴の比率もしくは商は、加速プロセスの均一性についての推定を可能にする。したがって、例えば第2フェーズP2における速度低下Dv2と第1フェーズP1における速度低下Dv1との比率、および/または第2フェーズP2における速度低下Dv2と総速度低下Dvとの比率、および/または第2フェーズP2における加速度最大値amaxと第1フェーズP1における加速度最大値amaxとの比率、および/または第2フェーズP2における平均加速度と第1フェーズP1における平均加速度との比率、および/または第2フェーズP2における平均加速度と第1フェーズP1における加速度最大値amaxとの比率、および/または第2フェーズP2における加速度最小値aminと第1フェーズP1における加速度最大値amaxとの比率、および/または第1フェーズP1における加速度最大値amaxと第2フェーズにおける加速度最小値aminとの間の差と、第1フェーズP1における加速度最大値amaxとの比率を特徴として計算し、衝突分類および起動決定のために評価することができる。同様に、さらに別の衝突フェーズを定めてもよい。
【0044】
衝突を識別するために全ての特徴を使用してもよい。個々の衝突タイプを正確に検出することができるように、特徴の組合せを評価することが最適である。例えば、100%のオーバラップや20km/hを超える速度による硬い衝突は、加速度最大値amaxの値が大きいこと、上昇時間(t2−t1)の値が小さいこと、およびエネルギー低下の第1フェーズP1の持続時間(t2−t1)の値が小さいことによって、起動されない状況とは区別される。軟らかい障害物へのオフセット衝突(ODB)は、例えば、エネルギー低下の第1フェーズP1の上昇時間(t2−t1)の値が小さいこと、エネルギー低下の第2フェーズPsの最小値が小さいこと、および第2フェーズP2における速度低下Dv2と第1フェーズP1における速度低下Dv1との比率の値が大きいことによって、起動されない状況とは区別される。したがって、求めた様々な特徴を閾値と比較する、特徴的な衝突タイプを、いわゆる「起動プロセス」に統合する、という提案である。この場合、特徴確認の結果を論理的に結びつけることができる。このような起動プロセスの例が図7に示されている。
【0045】
比率もしくは商によって示された全ての特徴について、除算を回避することもでき、この場合、閾値比較(特徴=分子/分母>閾値?)において、分母は閾値側に乗算する。すなわち、閾値確認は、(分子>閾値・分母?)の形式で実施するか、または閾値は他の方法で分母の関数として変更する。
【0046】
このような起動プロセスの出力は、直接または間接的に、乗員保護手段30を制御するために使用することができる。この場合、間接的な制御は、例えば、所定の衝突タイプのための所要の起動時間に計算時点ではまだ達していない場合にこの所定の衝突タイプにおける起動を遅延させること、および/または、連続的に計算される特徴によって作動する従来のアルゴリズムの特徴と組み合わせることを含む。この組合せは、本発明による特徴計算の結果に基づいて、例えば論理的な「ANDゲート」および/または従来のアルゴリズムにおける閾値適合によって行うことができる。
【0047】
図7に示されているように、図示の起動プロセスでは第1の特徴として、求めた局所的な最大値amaxが第1閾値Thd1よりも大きいかどうかを検査する。第2の特徴として、上昇時間(t2−t1)が第2閾値Thd2よりも小さいかどうか検査する。第3の特徴として、第1フェーズP1の持続時間(tp−t1)が第3閾値Thd3よりも短いかどうか検査する。第4の特徴として、第2および第3の特徴が論理OR関数によって互いに関連づける。第5の特徴として、第1フェーズP1における速度低下Dv1が第4閾値Thd4よりも大きいかどうか検査する。第6の特徴として、第2フェーズP2における速度低下Dv2が第5閾値Thd5よりも大きいかどうか検査する。乗員保護手段のための起動信号を生成するために、図示の起動プロセスの実施例では、第1の特徴、第4の特徴、第5の特徴、および第6の特徴を論理AND関数によって互いに関連づけ、論理AND関数によって関連づけた特性が真である場合にのみ起動信号を生成する。
【0048】
上述のように、硬い衝突時の力レベルの変化を、十分に大きい信号急降下によって簡単に検出することができる。軟らかい衝突時には、部分的にのみ措置をとる。なぜなら、力急降下は必ずしも十分に明確ではなく、力の平坦域が生じることが多いからである。そこで、次に変形フェーズのこのような変化を検出するための他の幾つかの方法を説明する。
【0049】
図8に示されているように、第1の検出法は、図示の信号波形K6における最大値amaxに対する信号低下を、絶対的に(すなわちamax−a)、または相対的に(すなわち(amax−a)/amax)、閾値Thd(amax,t)と比較することに基づいている。例えば検出された加速度を表す信号波形K6が、最大値amaxに関連した、時間に依存する閾値より低下したときに変化を検出する。この閾値Thd(amax,t)は、最大値amaxに達してからの時間の増加に伴って適切に引き上げ、これにより検出を可能にする。すなわち、第1不等式(U1):
【数3】
【数4】
が満たされた場合には、変形フェーズの変化を検出する。
【0050】
相対的な信号低下を評価する第2不等式(U2)は、第3不等式(U3):
【数5】
に変形することもできる.
第3不等式(U3)から、第4不等式(U4);
【数6】
による一般式が得られる。
【0051】
したがって、信号低下が、達した最大値amaxおよび最大値amaxが達してからの時間tに依存した閾値F(amax,t)を超えたときには、変形フェーズの変化および特徴的な第1時点tpを検出する。図8ではより見やすくするために、第4不等式(U4)が第5不等式(U5):
【数7】
に変形されている。すなわち、加速度aは、達した最大値amaxおよび最大値amaxが達してからの時間tに依存した閾値Thd(amax,t)未満に低下する必要がある。典型的には、最大値amaxの上昇および時間tの経過に伴い閾値Thd(amax,t)は増大する。最大値amaxに達するまでの時間tの代わりに、衝突プロセスにおいて増大する他の特徴、例えば、加速度の第1または第2の積分によって閾値Thd(amax,t)を変化させることもできる。
【0052】
最大値amaxの代わりに、不等式(U4)および(U5)における閾値を、これまでの信号波形K6の「信号強度」によって測定される他の特徴、例えば平均的な加速度によって変化させることもできる。
【0053】
図9に示されているように、第2の検出法は、信号波形K7の積分された信号の低下に基づいている。この実施形態では、信号波形K7の信号低下(amax−a)の最新の値だけではなく、この値の積分Aも評価される。例えば、加算された信号差(amax−a)が所定の閾値を超えたときに変形フェーズの変化を検出することができる。これは、図示の実施例では、特徴的な第1時点tpに該当する。この場合、任意の長さの時間にわたって、または評価・制御ユニット10のリングバッファ12による窓処理によって加算を行うことができる。最適には、この閾値も到達した信号最大値に対して変更する。すなわち、変化検出は、第6不等式(U6):
【数8】
によって得られる。
【0054】
最大値amaxの代わりに、これまでの信号波形K7の信号強度に関して、例えば平均的な加速度または積分された加速度を求めることもできる。したがって、一般的な形式では、この検出は第7不等式(U7):
【数9】
から得られる。この場合、式{ai}は、事象開始からの全ての加速度値もしくはこれらの加速度値から推定される特徴を含む。
【0055】
図10に示されているように、第3の検出法は、フィルタ比較に基づいている。力レベル変化の第3の検出は、異なる度合いでフィルタ処理された加速度値を比較することである。図10では、第1の信号波形K8は第1のフィルタ曲線を表し、第2の信号波形K9は第2のフィルタ曲線を表す。この場合、フィルタ処理は、一般的なローパスフィルタまたは所定の窓長で正規化された種々異なる長さの窓積分によって行うことができる。第2信号波形K9においてより強くフィルタ処理された信号が、第1信号波形K8におけるより弱くフィルタ処理された信号の値に到達するか、またはこの値を超える時点が、特徴的な第1時点tpに相当する。
【0056】
短い蓄積時間によって弱くフィルタ処理された信号は、長い蓄積時間によってより強くフィルタ処理された信号よりも衝突開始時の信号上昇に対して迅速に反応する。しかしながら、衝突プロセスにおいて、より強くフィルタ処理された信号がより弱くフィルタ処理された信号に到達したときには、フィルタ処理されたそれら両方の信号は、それぞれの「蓄積時間」に同じ高さの平均値を示すことを意味する。これは、一定の加速度もしくは力の平坦域の指標である。図10に示されているように、両方の信号波形K8,K9は、特徴的な第1時点tpにおいて、同じ高さの平均値を示す。第8不等式(U8):
【数10】
は、考えられる単純な確認を示す。この場合、aK8は第1信号波形K8の値を表し、aK9は、第2信号波形K9の値を表す。当然ながら、ここでもより複雑な基準が考えられる。したがって、例えば、幾つかの連続する周期にわたって、より強くフィルタ処理された信号がより弱くフィルタ処理された信号に十分に近付けば十分な場合もある。
【0057】
図11に示されているように、第4の検出法は勾配法に基づいている。この方法は、信号波形K10の極めて小さい信号上昇もしくは勾配Gを検出することに基づいている。最適には、この勾配Gは複数の周期にわたって評価する。すなわち、信号差(ai−a(i−1))を複数の周期にわたって検出する。これは差(ai−a(i−n))の検出に等しい。さらに、勾配Gは、達した加速度レベルに関連づける。すなわち、最後のn周期の信号波形K10の上昇が、達した加速度レベルに依存した閾値より低下したときに、変形フェーズの平坦域、ひいては変化を検出する。したがって、このような相対的な勾配は、第2方程式(G2):
【数11】
によって得られる。
【0058】
この場合、信号上昇は、n周期にわたって、最新の加速度またはn周期の前の加速度の平均値に関連して設定される。代替的には、第3方程式(G3):
【数12】
が示すように、最後のn周期の真の平均値で正規化してもよい。
【0059】
この場合、係数1/(n+1)は簡略化のために除去してもよい。代替的には、平均的な加速度による正規化を省略してもよい。したがって、(正規化された)勾配が第9不等式(U9):
【数13】
にしたがって、所定の閾値より低下したときには平坦域を検出することができる。
【0060】
除算を回避するために、勾配の正規化の代わりに、第10不等式(U10):
【数14】
に示されているように、正規化されていない勾配を、考察した値の平均的な加速度によって計算された閾値、またはより一般的には、これらの値の関数である閾値と比較することもできる。
【0061】
より一般的には、事象開始からの全ての加速度値およびこれらの加速度値から推定される特徴、例えば速度低下Dvなどに基づいて閾値を変化させることもできる。
【0062】
特に第4の検出法は、検出のために信号急降下が必要ではなく、信号が幾分上昇した場合にもまだ検出が可能であるという利点を有する。このようなことは、最初の2つの検出法では可能ではなく、第3検出法では、フィルタ差が十分に小さい場合にのみ可能である。
【0063】
ここで説明した全ての検出法では、所定の最低加速度レベルaminを超えたときにのみ衝突プロセスにおけるレベル変化を検出することが有意義である。ここで説明した変形フェーズの変化を検出するための方法は、これまでの信号もしくは加速度プロセスからの逆行的な特徴計算に関連して使用することができる。しかしながら、軟らかい障害物に対する衝突時には、第1変形フェーズの終わりは、検出によって可能となる自身の変形から相手の変形への変化によって特徴づけられる。
【0064】
変形フェーズの変化を検出する方法は、特に軟らかい衝突を検出するために適している。それにもかかわらず、これらの条件は、単に信号急降下によって検出することができる硬い衝突によっても満たされる。しかしながら、硬い衝突時には自身の構造のみが変形するので、検出される力レベルは所定の高い値にある。これに対して、相手の車両への侵入を伴う軟らかい衝突時には、このような高い力レベルは得られない。したがって、達した力レベルamaxを簡単に付加的に確認することにより、硬い衝突と軟らかい衝突とを識別することができる。硬い衝突は、力レベル変化が検出され、力レベルもしくは最大値amaxが第1閾値より上のときに生じている。軟らかい衝突は、力レベル変化が検出され、力レベルもしくは最大値amaxが第2閾値より下のときに生じている。この場合、第1閾値は第2閾値に対応していてもよい。
【0065】
この衝突タイプ「硬い/軟らかい」の識別は、軟らかい衝突に関して主要アルゴリズムの起動閾値を調整することができるように、直接または間接的に、例えば、他の検出方法と組み合わせて使用することもできる。使用される信号特徴を保持して閾値を調整することの他に、軟らかい衝突を検出する場合には軟らかい衝突のための別個の「起動プロセス」に切り換え、これらの起動プロセスにおいて他の信号特徴または特徴組合せを閾値と比較することも可能である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際調査報告】

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