特表2016-526486IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-526486(P2016-526486A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(54)【発明の名称】厚肉ワークピースにおける高破壊靱性の溶接部
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/30 20060101AFI20160808BHJP
   B23K 35/368 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
   B23K35/30 320A
   B23K35/368 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-524901(P2016-524901)
(86)(22)【出願日】2014年7月8日
(85)【翻訳文提出日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】IB2014001296
(87)【国際公開番号】WO2015004517
(87)【国際公開日】20150115
(31)【優先権主張番号】61/843,827
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/324,320
(32)【優先日】2014年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】キーガン,ジェームズ,エム
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン,バドリ,ケイ
(72)【発明者】
【氏名】オグボーン,ジョナサン,エス
(72)【発明者】
【氏名】パンデイ,ラドヒカ
【テーマコード(参考)】
4E084
【Fターム(参考)】
4E084AA02
4E084BA03
4E084BA04
4E084BA05
4E084BA09
4E084CA03
4E084CA04
4E084DA09
4E084GA03
(57)【要約】
フラックスコアード溶接電極及びその使用の方法の実施形態を開示する。フラックスコアード溶接電極は、フラックスコアードアーク溶接部、特に厚肉の溶着物の脆弱性を抑制する。厚肉(例えば、約1インチ〜約6インチ)のフラックスコアードアーク溶接部の脆弱性の抑制は、(現在市販されている電極に比べて)ニオビウム及びバナジウムが化学組成から低減されているか又は完全に除去された化学組成を有するフラックスコアード溶接電極を用いることで実現される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚肉ワークピースにおいて高破壊靱性の溶接部を生成するためのフラックスコアード溶接電極であって、当該フラックスコアード溶接電極は、粒子状のコアと、該粒子状のコアを取り囲む金属シースとを含み、
当該フラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成が約0.007重量%以下のニオビウム及び約0.009重量%以下のバナジウムを含むように前記金属シースの化学組成及び前記粒子状のコアの化学組成が選択される、フラックスコアード溶接電極。
【請求項2】
前記溶着物の組成は、0.02〜0.09重量%の炭素と、1〜2重量%のマンガンと、0.2〜0.9重量%のケイ素と、0.007重量%以下のニオビウムと、0.009重量%以下のバナジウムと、0.15重量%以下のチタンと、0.01重量%以下のホウ素と、2重量%以下のニッケルと、0.8重量%以下のモリブデンとをさらに含む、請求項1に記載のフラックスコアード溶接電極。
【請求項3】
前記溶着物の組成は、0.03〜0.08重量%の炭素と、1.1〜1.8重量%のマンガンと、0.3〜0.7重量%のケイ素と、0.007重量%以下のニオビウムと、0.009重量%以下のバナジウムと、0.02〜0.11重量%のチタンと、0.0005〜0.009重量%のホウ素と、1.3重量%以下のニッケルと、0.6重量%以下のモリブデンとをさらに含む、請求項1又は2に記載のフラックスコアード溶接電極。
【請求項4】
前記溶着物の組成は、0.04〜0.07重量%の炭素と、1.25〜1.5重量%のマンガンと、0.35〜0.55重量%のケイ素と、0.007重量%以下のニオビウムと、0.009重量%以下のバナジウムと、0.04〜0.09重量%のチタンと、0.003〜0.008重量%のホウ素と、0.6〜1.3重量%のニッケルと、0.3重量%以下のモリブデンとをさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフラックスコアード溶接電極。
【請求項5】
前記溶着物の組成はニオビウムを含まない及び/又は
前記溶着物の組成はバナジウムを含まない、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフラックスコアード溶接電極。
【請求項6】
前記溶着物の組成に含まれるニオビウム及びバナジウムの合計量は0.016重量%以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフラックスコアード溶接電極。
【請求項7】
前記溶着物の組成に含まれるニオビウム及びバナジウムの合計量は0.01重量%以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフラックスコアード溶接電極。
【請求項8】
溶接法を用いて第1の鉄ベースのワークピースを第2の鉄ベースのワークピースに接合する方法であって、該第1の鉄ベースのワークピース及び該第2の鉄ベースのワークピースのそれぞれは12mm〜160mmの範囲の厚さを有し、当該方法は、
フラックスコアードアーク溶接法を用いて、少なくとも10の溶接パスを有する溶着物を形成するステップであって、該溶着物が前記第1の鉄ベースのワークピースと前記第2の鉄ベースのワークピースとを接合するステップ、
を含み、
前記溶着物は約1インチ〜約6インチの厚さを有し、
前記フラックスコアード溶接電極により生成される前記溶着物の組成が約0.007重量%以下のニオビウム及び約0.009重量%以下のバナジウムを含むように前記金属シースの化学組成及び前記粒子状のコアの化学組成が選択され、き裂先端開口変位で測定される前記溶着物の破壊靱性は約0℃の温度及び延性モード破壊で少なくとも約0.35mmである、方法。
【請求項9】
前記溶着物の組成は、0.03〜0.08重量%の炭素と、1.1〜1.8重量%のマンガンと、0.3〜0.7重量%のケイ素と、0.007重量%以下のニオビウムと、0.009重量%以下のバナジウムと、0.02〜0.11重量%のチタンと、0.0005〜0.009重量%のホウ素と、1.3重量%以下のニッケルと、0.6重量%以下のモリブデンとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶着物の組成はニオビウムを含まない及び/又は
前記溶着物の組成はバナジウムを含まない、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶着物は約2インチ〜約5インチの範囲の厚さを有する、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶着物は約3.5インチ〜約4.5インチの範囲の厚さを有する、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の鉄ベースのワークピース及び前記第2の鉄ベースのワークピースはフェライト鋼であり及び/又は
前記第1の鉄ベースのワークピース及び前記第2の鉄ベースのワークピースは516グレード70鋼であり及び/又は
前記溶着物は針状フェライト構造を有する、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶着物の酸素含有量は600ppm未満である、請求項8乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記形成するステップはシールドガスをさらに用いる、請求項8乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記シールドガスは約60体積%〜約90体積%のアルゴン及び約10体積%〜約40体積%の二酸化炭素を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年7月8日に出願された「厚肉ワークピースにおける高破壊靱性の溶接部」と題する米国仮特許出願第61/843827号の優先権及び利益を主張する。係る出願の開示の全ては参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、請求項1に記載の、厚肉ワークピース(thick workpiece)において高破壊靱性の溶接部(high fracture toughness welds)を作成するためのフラックスコアード溶接電極と、請求項8に記載の、溶接法を用いて第1の鉄ベースのワークピースを第2の鉄ベースのワークピースに接合する方法とに関する。厚肉溶接用途、例えば、厚さが1インチ〜6インチの溶接部に有用な溶接組成(welding composition)
【背景技術】
【0003】
管状の部材同士を溶接することによって作られる構造物の製造には困難な課題がある。特に、T、Y及びK接合における溶接部(weld)としては、ストレスの多い荷重(stressful load)に確実に耐えることができる強固な接合部(即ち、良好な溶接金属の「靱性」を有する)を提供するために一般に数回のパスを要する厚肉の溶接部が必要になる。この課題は一般的にオフショア構造物の製造において存在する。
【0004】
歴史的に、溶接部の靱性はシャルピーVノッチ試験(「シャルピーV」)を用いて評価されていた。シャルピーV試験には、通常10mm×10mmのサンプルにおいて溶接部を作ることと、溶接部に機械加工を施して切り欠き部を形成することと、振り子式衝撃試験装置を用いて切り欠き部の所でサンプルを破壊することとを伴う。衝撃後の振り子の高さを測定することによって、サンプルを破壊する際に吸収されたエネルギーが算出される。厚肉(例えば約1インチ〜約6インチ)の溶着物(weld deposits)の場合、10mm×10mmのサンプルはその様な厚肉の溶着物の品質を反映するには細すぎるため、シャルピーV試験によって得られる溶接完全性(weld integrity)に関するデータが不十分なことがある。厚肉の溶着物には数回のパスが必要になることが多く、そのような厚肉部分では脆性挙動を示す傾向にある(図1及び図2参照)。数回の溶接パスによって、溶着物の各パス上で対応する数の加熱及び冷却周期がもたらされる。き裂先端開口変位(「CTOD」)試験を用いて測定した材料の破壊靱性は、材料の延性又は脆性挙動を判断する上でより分かり易い。
【0005】
一般に、オフショア構造物に見られるフェライト鋼は、高温での延性挙動から低温での脆性挙動へと挙動の変化を示し、延性から脆性への遷移が特定の温度(即ち、遷移温度)で劇的なものになる。この遷移温度は脆性破壊に対する材料の耐性を判断する上でのパラメータになり得る。用途の要件により定義される特定の温度で材料(基材又は溶接部に関わらず)が延性挙動を示すことが構造仕様(structural specifications)で一般的に求められる傾向にあるため、材料の遷移温度は重要である。例えば、北極地方で用いられる構造物の場合、溶接部を含む構造物の延性挙動を判断するためのテスト温度として通常−60℃が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2785285号明細書
【特許文献2】米国特許第2944142号明細書
【特許文献3】米国特許第3534390号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
良好な溶接結果を得るために、請求項1に記載の、厚肉ワークピースにおいて高破壊靱性の溶接部を作成するためのフラックスコアード溶接電極と、請求項8に記載の、溶接法を用いて第1の鉄ベースのワークピースを第2の鉄ベースのワークピースに接合する方法とを説明する。本発明のさらなる実施形態及び好ましい実施形態は従属項の主題である。第1の例示の実施形態では、フラックスコアード溶接法を用いて、厚肉で且つ鉄ベースのワークピースにおいて高破壊靱性の溶接部を生成するためのフラックスコアード溶接電極に関する。当該フラックスコアード溶接電極は、粒子状のコアと、該粒子状のコアを取り囲む金属シースとを含む。当該フラックスコアード溶接電極から生成される溶着物の組成(weld deposit composition)が約0.007重量%以下のニオビウム及び約0.009重量%以下のバナジウムを含むように金属シースの化学組成及び粒子状のコアの化学組成が選択される。前記溶接法は、き裂先端開口変位で測定される破壊靱性が約0℃の温度及び延性モード破壊(ductile mode of fracture)で少なくとも約0.35mmの溶着物を約1インチ〜約6インチの範囲の厚さを有する溶接継手において作ることができる。
【0008】
第2の例示の実施形態では、溶接法を用いて第1の鋼材(piece of steel)を第2の鋼材に接合する方法に関する。第1の鋼材及び第2の鋼材のそれぞれは約12mm〜約160mmの範囲の厚さを有する。当該方法は、フラックスコアードアーク溶接法を用いて、少なくとも10の溶接パス(weld passes)を有する溶着物を形成するステップを含む。溶着物は第1の鋼材と第2の鋼材とを接合する。溶着物は約1インチ〜約6インチの厚さを有する。フラックスコアード溶接電極により生成される前記溶着物の組成が約0.007重量%以下のニオビウム及び約0.009重量%以下のバナジウムを含むように前記金属シースの化学組成及び前記粒子状のコアの化学組成が選択される。前記溶接法は、き裂先端開口変位で測定される破壊靱性が約0℃の温度及び延性モード破壊で少なくとも約0.35mmの溶着物を約1インチ〜約6インチの範囲の厚さを有する溶接継手において作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は異なる温度におけるフェライト鋼の延性挙動から脆性挙動への図である。
【図2】図2は延性挙動と脆性挙動との差を示すための荷重対CTODのグラフを示す図である。
【図3】図3は意図的にニオビウム及びバナジウムが存在するFCAW-G溶接部における析出の順番を示す図である。
【図4】図4はSR−12M及びHD−12Mのサンプルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一般的発明概念を包含する実施形態は様々な形態を取り得るが、以下では、本開示は例示にすぎず、特定の実施形態に限定されることを意図したものでないという理解の下で様々な実施形態を説明する。
【0011】
別段定めがない限り、本願にて用いられる技術用語及び科学用語の全ては、本開示が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を持つ。図面中の線、層及び領域の厚さは明確にするために誇張されている場合がある。なお、図面全体を通して見られる同様の参照符号は同様の要素を示す。本願では、「上面(top)」、「底面(bottom)」、「前方(front)」、「後方(back)」、「側方(side)」、「上側(upper)」、「下側(under)」等の用語を説明を目的としてのみ用いている。層、区域、領域又はパネルといったある要素が別の要素「上(on)」にあると言及されている場合、該ある要素は別の要素上に直接存在するか又は介在要素が存在し得る。要素又は層が別の要素又は層に「隣接」しているか又は「対向」していると説明されている場合、該ある要素又は層は別の要素又は層に直接隣接しているか又は直接対向しているか又は介在要素が存在し得ることが分かる。層又は要素といったある要素が別の要素の上にあると言及されている場合、該ある要素は直接的に別の要素の上にあるか又は介在要素が存在し得ることが分かる。
【0012】
溶着物中の元素の重量パーセント(及びその範囲)が本開示の全体を通して記載されているが、当業者であれば、その元素の重量パーセントは必ずしも元素の形態にある元素の重量パーセントを記載したものではなく、溶着物中であらゆる形態で存在する元素(元素形態、組成物内等)の重量パーセントを記載したものであることが容易に分かる。
【0013】
本発明のフラックスコアード溶接電極は、該電極により生成される溶着物(即ち、溶接されるワークピースから物質が提供されることなしに)が本願に記載の組成を有するように調製される。当該技術分野で理解されているように、溶接電極の溶着物の組成は他の汚染源から何ら汚染されることなく生成された溶接部の組成である。電極を用いてワークピースを溶接する場合に得られる溶接金属の化学組成とは通常異なる。そのような溶接金属は、ワークピースに起因する成分を10%、20%、30%又はそれ以上も含み得る。
【0014】
フラックスコアードアーク溶接法を用いて厚肉のフェライト鋼のワークピースにおいて高破壊靱性の完全な溶接部(complete weld)を生成するためのフラックスコアード溶接電極に関する。この文脈で「完全な溶接部」とは、その厚さが溶接されるワークピースの厚さの少なくとも80%である溶接部を意味することが分かる。一般的に、溶接部の厚さはワークピースの厚さの少なくとも90%である。よりさらに一般的には、溶接部の厚さはワークピースの厚さの少なくとも100%、少なくとも110%又はそれ以上である。
【0015】
この文脈で「厚肉(thick)」とは、厚さ(最小次元)が少なくとも約1インチ(2.54cm)である、溶接部が作られるワークピースの部分を意味することが分かる。また、中空状のワークピースに関連して「厚さ(thickness)」とは、ワークピースの全体的な厚さではなくその壁部の厚さを意味することが分かる。最小厚さの点に関して、先に示したように、本発明は、厚さが少なくとも1インチのフェライト鋼のワークピースを溶接する上で特に適用可能である。他の実施形態では、ワークピースの最小厚さは2インチ、3インチ、4インチ、5インチ又はそれ以上であり得る。最大厚さに関して言えば、実用的な最大厚さは存在しない。即ち、本発明の溶接法は、他のあらゆるアーク溶接法で溶接可能な任意の厚さのフェライト鋼のワークピースを溶接するのに用いることができる。しかしながら、実際問題として、この最大厚さは通常約8インチ以下、より一般的には約7インチ以下又は6インチ以下である。本開示に関連する「厚さ」という用語は、溶接面に対して垂直な方向における溶着物の寸法(measurement)である。
【0016】
本発明によれば、溶接電極により生成される溶着物の組成が約0.007重量%以下のニオビウム及び約0.009重量%以下のバナジウムを含み、溶着物の組成中のニオビウム及びバナジウムの合計量が約0.016重量%以下である場合、この種のワークピースにおいて作られる溶接部は向上した破壊靱性を呈することが見出された。この文脈で「溶着物の組成」とは、溶接される金属ワークピースによって汚染されることなく溶接電極が溶融し凝固した場合に生成される組成を意味することが分かる。
【0017】
第1の例示の実施形態では、フラックスコアード溶接法を用いて厚肉の鉄ベースのワークピースにおいて高破壊靱性の溶接部を生成するためのフラックスコアード溶接電極に関する。フラックスコアード溶接電極は粒子状のコアと、該粒子状のコアを取り囲む金属シースとを含む。フラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成が鉄と、約0.007重量%以下のニオビウムと、約0.009重量%以下のバナジウムとを含むように金属シースの化学組成及び粒子状のコアの化学組成が選択される。前記溶接法は、き裂先端開口変位で測定される破壊靱性が約0℃の温度及び延性モード破壊で少なくとも約0.35mmの溶着物を約1インチ〜約6インチの範囲の厚さを有する溶接継手において作ることができる。
【0018】
第2の例示の実施形態では、溶接法を用いて第1の鋼材を第2の鋼材に接合する方法に関する。第1の鋼材及び第2の鋼材のそれぞれは約12mm〜約160mmの範囲の厚さを有する。当該方法は、フラックスコアードアーク溶接法を用いて、少なくとも10の溶接パスを有する溶着物を形成するステップを含む。溶着物は第1の鋼材と第2の鋼材とを接合する。溶着物は約1インチ〜約6インチの厚さを有する。フラックスコアード溶接電極により生成される前記溶着物の組成が約0.007重量%以下のニオビウム及び約0.009重量%以下のバナジウムを含むように金属シースの化学組成及び粒子状のコアの化学組成が選択される。前記溶接法は、き裂先端開口変位で測定される破壊靱性が約0℃の温度及び延性モード破壊で少なくとも約0.35mmの溶着物を約1インチ〜約6インチの範囲の厚さを有する溶接継手において作ることができる。
【0019】
厚肉溶接用途のためのフラックスコアード溶接電極の化学組成に関する。本開示のオフショア構造物、より具体的にはオフショアオイルリグの製造に特に有用である。オフショア構造物は一般にフェライト鋼である516グレード70鋼(516 grade 70 steel)から作られる。一般的なオフショア構造体は、数箇所が溶接されて複雑な鉄鋼構造を形成する厚さが約12mm〜約160mmの鋼材を用いて60〜80ksiの降伏強度を有するように規定されている。
【0020】
いくつかの構造的な鉄鋼用途では厚肉の溶接部が必要になる。例えば、オフショア構造物の構造的な製作は地上の建造物の施工と同様に梁と梁(beam-to- beam)及び柱と梁(beam-to-column)の双方であり得る。オフショア構造物は一般に幾つかの管状体を接合することが必要になる。管状接合(tubular connection)は、管状体の配置に応じてT、Y又はK接合の何れかに分類されるのが一般的である。T、Y又はK接合は構造的に安定した接合部を生成するために複数の溶接金属のパスを通常必要とする継手を形成する。パスの数は約10〜約100と異なり、それには約20〜約100が含まれ、約30〜約100が含まれる。複数のパスは、後続のパスによって溶着物が繰り返し加熱及び冷却されることに起因する溶着物が受ける複雑な熱サイクルを生み出しがちである。これは、小さな部分でシミュレートするのが困難であるとともに、全体的な溶接プロセスの間に生じる欠陥を評価するのが困難な微細構造変化をもたらす。
【0021】
本開示の全ての実施形態では、ワイヤの形態であり得るフラックスコアード電極を用いて溶接金属が堆積される。フラックスコアード電極は、合金化のためにマンガン、ケイ素、炭素及びモリブデンが意図的に添加されたルチル(即ち二酸化チタン)ベースのフラックスを提供する。チタン及びマンガンの添加はフラックスコアード電極によって提供され、脱酸化を提供し得る。
【0022】
アーク溶接は、溶接する金属を溶融するために用いられる熱が電気アークに起因する溶接の一種である。一般に、アーク溶接には、溶接する金属から溶接部が全体的に形成されるもの(「自生(autogenous)」溶接)及び溶接部の大部分が溶接フィラー材料に起因するもの(「非自生」溶接)という2つの広義のカテゴリーが存在する。
【0023】
アーク溶接工は、溶着物に不純分物が入らないように注意を払うのが一般的である。アーク溶接では、大気中の酸素及び/又は窒素によって溶融溶接金属が汚染されるのを防止するために、シールドガスを用いること及びフラックスを用いるこという2つの基本的なアプローチが取られる。所望により、これら2つの基本的なアプローチを組み合わせることができる。自生溶接でシールドガスを用いる場合、使用される非消耗電極は通常タングステンでできていることからそのプロセスは通常ガスタングステン溶接(「GTAW」)又はタングステン不活性ガス(TIG)溶接と呼ばれる。シールドガスを非自生溶接で用いる場合、そのプロセスは通常ガス金属アーク溶接(「GMAW」)と呼ばれ、シールドガスが不活性の場合はガス金属アーク溶接のサブカテゴリーである金属不活性ガス(「MIG」)溶接と呼ばれ、シールドガスが反応性の場合は金属活性ガス(「MAG」)溶接と呼ばれる。大気汚染を防止するための他方の技術、即ちフラックスを用いることは自生溶接では通常用いられないが、特定の用途では2つの組み合わせが要求されることがある。
【0024】
非自生溶接では、フラックスを用いて大気汚染を防止するために3つの異なるアプローチが用いられている。1つのアプローチでは、フラックスが別に供給されるフィラー材料の表面に被覆される。ロッド又はステック状の溶接フィラー材料が手動で溶接箇所に供給される手動金属アーク溶接(「MMA」)(「ステック」又はシールド金属アーク溶接(「SMAW」)ともいう)はこのアプローチの良い例である。
【0025】
サブマージアーク溶接(「SAW」)と呼ばれる第2のアプローチでは、溶接すべき継ぎ目をフラックスの実質的な層で覆うことで大気汚染が防止される。電極とワークピースとの間に生じるアークが完全にフラックスの中で浸漬されるように消耗電極がフラックスの中で動かされる。溶接アークからの熱はフラックスを溶融し、それによって溶融フラックス層が生成される。溶融フラックス層は溶接金属を大気汚染から保護し、スパッタ及び火花を防止し、アーク溶接の間に通常生じる強烈な紫外線放射及びヒュームを抑制する。溶融フラックス層は電気導電性になるため、ワークピースと電極との間に電流路を提供する。
【0026】
非自生溶接においてフラックスを用いて大気汚染を防止するための第3のアプローチはフラックスコアード溶接(「FCAW」)として知られている。FCAWでは、フィラー材料として消耗電極が用いられる。そのような消耗電極は中空の筒状シースの形を有し、そのシースの内部にフラックスが収容されている。2つの異なる種類のFCAWが用いられる。時折「デュアルシールド(dual shield)」溶接と呼ばれるセルフシールドFCAW(「FCAW−S」)では、必要な溶接ガスを溶接温度で生成する成分がフラックスに含まれているためシールドガスは用いられない。ガスアシストFCAW(「FCAW−G」)ではシールドガスが用いられる。特定の実施形態では、本願開示の方法はガスアシストフラックスコアードアーク溶接が用いられる。
【0027】
本開示のフラックスコアード溶接電極のシールドガスを用いながら溶接できる。特定の実施形態では、シールドガスはアルゴン及び二酸化炭素を含む。特定の実施形態では、シールドガスは約60体積%〜約90体積%のアルゴンと、約10体積%〜約40体積%の二酸化炭素とを含む。特定の実施形態では、シールドガスは約75体積パーセントのアルゴンと、約25体積%の二酸化炭素とを含む。
【0028】
本開示のFCAW−G法を用いて堆積した溶接金属が、溶接したままの状態(as-welded condition)(即ち、追加の熱処理を施さない状態)の厚肉溶接部に対して優れた破壊靱性を提供することができるように調製される。理論に拘束されるものではないが、溶接金属の優れた靱性を促進するものと考えられる要因は、微細構造(fine microstructure)(例えば針状フェライト)及び低酸素含有量(例えば酸素濃度<約600ppm)である。これら2つの要因を制御することで、溶接したままの状態(即ち、熱処理なしの状態又は熱処理を施す前の状態)で許容可能な靱性を提供する溶接金属が生成される傾向にある。しかしながら、本開示に従って作られる溶接部には、所望により、溶接部内の残留応力をさらに解消するための追加の熱処理を施すことができる。
【0029】
溶接したままの状態及び溶接後に熱処理を施した状態の双方で溶接金属の良好な靱性を得るには、炭素及び窒素に対する親和性が高い所定の元素の存在を最小限に留めることが望ましい。炭素及び窒素は溶着物内の格子間元素であり、それらの元素の原子が小さいことから「素早く拡散するもの(fast-diffuser)」と考えられる。炭素及び窒素は、溶接後の熱処理の間に溶着物内を移動できる能力を有する。特定の実施形態では、炭化物及び窒化物を形成するためにチタンが存在する。
【0030】
本開示の全ての実施形態では、フラックスコアード溶接電極、ひいては溶着物内に存在するニオビウム及びバナジウムが低減されているか又は完全に除去されている。ニオビウム及びバナジウムは、炭素及び窒素に対する親和性が高い一般的な2つの捕捉元素である。現在市販されている製品を用いた溶着物におけるニオビウム及びバナジウムの一般的な濃度は、平均で、ニオビウムが約0.016重量%で、バナジウムが約0.025重量%であり、ニオビウム及びバナジウムの合計量は一般に平均で約0.04重量%である。
【0031】
フラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成のニオビウムの濃度が、溶着物の約0.007重量%未満になるように(これには、溶着物の約0.006重量%未満が含まれ、溶着物の約0.005重量%未満が含まれ、溶着物の約0.004重量%未満が含まれ、溶着物の0重量%(即ちニオビウムを含まない)が含まれる)金属シースの化学組成及び粒子状コアの化学組成が選択される。
【0032】
フラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成のバナジウムの濃度が、溶着物の約0.009重量%未満となるように(これには、溶着物の約0.008重量%未満が含まれ、溶着物の約0.007重量%未満が含まれ、溶着物の約0.006重量%未満が含まれ、溶着物の0重量%(即ちバナジウムを含まない)が含まれる)金属シースの化学組成及び粒子状コアの化学組成が選択される。
【0033】
溶着物の組成に含まれるニオビウム及びバナジウムの合計は0.016重量%以下であり得る(これにはニオビウム及びバナジウムの合計が0.01重量%以下であることを含む)。特に好ましい実施形態では、溶着物はニオビウム及びバナジウムを含まない。
【0034】
FCAW−G法を用いて堆積した溶接部内に形成され得る3種類の析出物(precipitates)が存在する。図3は、温度に応じた析出物の順番のグラフを示す。最初に形成される析出物は炭窒化チタン(TiCN)である。この析出物は非常に高い温度で形成され、1500℃よりも高い温度で完全なものとなることが予測される。第2に形成される析出物はバナジウム、チタン及びニオビウムを多く含む複合炭化物である(「Nb/V析出物」)。最後に形成される析出物はセメンタイトとしても知られる炭化鉄である。ニオビウム及びバナジウムの存在によって複合炭化物の形成が安定化する。複数のパスが積み重ねられることによって大々的に再加熱を受けるとともに、溶接後に熱処理が施され得る溶接部ではセメンタイトの溶解、複合炭化物の再析出及び/又は粗大化が生じる。
【0035】
そのため、Nb/V析出物は2つの点から溶接部の靱性に影響を与え得る。理論に拘束されるものではないが、Nb/V析出物は溶着物中に存在する他の組成物に比べて固有靱性(intrinsic toughness)(即ち脆性)が非常に低いため、溶接部内に存在する応力によって分解がもたらされる。Nb/V析出物は溶接後の熱処理の間に粗大化する傾向もある。これは、熱処理の間にフェライト粒が成長するのを抑制するのにNb/V析出物があまり有効でないことを意味する。粒子の成長に起因する粒子の粗大化も溶接部の靱性に影響を与える。
【0036】
Nb/V析出物の前述した効果は厚肉部分の溶接の間に通常増大する。厚肉部分を溶接する場合、先の溶接パスが後の溶接パスによって繰り返し加熱されることに加えて、厚肉部分内に高レベルの残留応力が存在するため、厚肉部分の溶接の間にNb/V析出物が成長する機会がより多く存在する。薄肉の溶接部分は応力を緩和するのに役立つ自由表面(free surface)を有する傾向にあるが、厚肉の溶接部分(例えば、溶接部の厚さが約1インチ〜約6インチ)では応力緩和が妨げられる傾向にあり、厚肉の溶着物内で三軸応力状態(tri-axial states of stress)が生じる。三軸応力状態は、構造物の延性に重要な塑性流動を妨げる傾向がある。本願で説明したように、本開示の熱力学的にモデル化した結果、炭化チタン及びNb/V析出物の析出を生じさせることを示したニオビウム及びバナジウムの存在を制限するものである。本願でさらに説明する本開示のシャルピーVノッチ試験及びき裂先端開口変位(「CTOD」)試験の双方で延性挙動を呈する。
【0037】
本開示のフラックスコアード溶接電極の特定の例えば、特許文献1(Bernard)、特許文献2(Sjoman)及び特許文献3(Woods)において示されるように平坦な金属ストリップを先ずU字状に形成することから始まる従来の方法で作られ得る。そして、粒子状のフラックス、合金元素及び/又は他のコア充填材料をU字状内に堆積し、一連の成形ロールにより金属ストリップを筒状に閉じる。通常、形成された筒は、一連のダイスに通されて断面が最終的な所望の直径に低減され、その後、形成された電極は好適な供給潤滑油でコーティングされ、スプールに巻かれ、配送及び使用のために梱包される。
【0038】
金属シースは、約0.01重量%〜約0.1重量%の炭素、約0.2重量%〜約0.6重量のマンガン、約0.03重量%〜約0.1重量%のケイ素、約0.02重量%以下のリン及び約0.025%以下の硫黄を含む合金から作ることができる。そのような合金の具体的な例は、微粒子完全キルド(fine grained, fully killed)(アルミニウム又はケイ素キルド)鋼として当該分野で一般的に記載されており、SAE/AISI1008及び1010を含む。これらの合金は市販のストリップ状のものが容易に入手可能であり、それらはフラックスコアード電極の実施形態の製造を簡便及び低コストなものにするのに役立つ。
【0039】
本発明のフラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成は炭素を含む。溶着物の組成中に炭素が存在することで溶着物の強度及び硬化性が向上する。それに加えて、固溶体中に炭素が存在することによって、鉄ベースの金属においてフェライト変形が抑制される傾向にあり、炭素が欠如した場合よりも粗大化が素早く生じる傾向にある柔らかいフェライト微細構造とは対照的により微細な針状微細構造がもたらされる。特定の実施形態では、溶着物の組成は約0.02重量%〜約0.09重量%の炭素を含み、これには、約0.03重量%〜約0.08重量%の炭素が含まれ、約0.04重量%〜約0.07重量%の炭素が含まれる。
【0040】
本発明のフラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成はマンガンを含む。溶接部内にマンガンが存在することで、微細構造が改善され、強度が向上し、溶着物の硬化性が高まることに加えて溶接池が脱酸化される。特定の実施形態では、溶着物の組成は約1重量%〜約2重量%のマンガンを含み、これには約1.1重量%〜約1.8重量%のマンガンが含まれ、約1.25重量%〜約1.5重量%のマンガンが含まれる。
【0041】
本発明のフラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成はケイ素を含む。溶着物の組成中のケイ素の存在は、溶融池の脱酸化及び溶融金属の粘度の低下に役立つ。特定の実施形態では、溶着物の組成は約0.2重量%〜約0.9重量%のケイ素を含み、これには約0.3重量%〜約0.7重量%のケイ素が含まれ、約0.35重量%〜約0.55重量%のケイ素が含まれる。
【0042】
本発明のフラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成はチタンを含む。チタンは溶接池の脱酸化を助けるために通常添加される。特定の実施形態では、溶着物の組成は、約0.15重量%以下のチタンを含み、これには約0.02重量%〜約0.11重量%のチタンが含まれ、約0.04重量%〜約0.09重量%のチタンが含まれる。
【0043】
本発明のフラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成はホウ素を含む。溶着物の組成中のホウ素の存在によって、溶着物内で針状フェライトの形成が促進されるため粒状構造の改善に役立つ。特定の実施形態では、溶着物の組成は約0.01重量%以下のホウ素を含み、これには約0.0005重量%〜約0.009重量%のホウ素が含まれ、約0.003重量%〜約0.008重量%のホウ素が含まれる。
【0044】
本発明のフラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成はニッケルを含む。溶着物の組成中のニッケルの存在は、溶接部の強度を高め、特に溶着物の低温衝撃靱性を改善するのに役立つ。特定の実施形態では、溶着物の組成は約2重量%以下のニッケルを含み、これには約1.3重量%以下のニッケルが含まれ、約0.6重量%〜約1.3重量%のニッケルが含まれる。
【0045】
本発明のフラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成はモリブデンを含む。溶接物の組成中のモリブデンの存在は溶着物の強度及び硬化性の向上に役立つ。特定の実施形態では、溶着物の組成は約0.8重量%以下のモリブデンを含み、これには約0.6重量%以下のモリブデンが含まれ、約0.3重量%以下のモリブデンが含まれる。
【0046】
本発明のフラックスコアード溶接電極により生成される溶着物の組成は鉄を含む。一般に、鉄は溶着物の重量パーセントの大半を占める(即ち、鉄が占める割合が約90重量%〜約99重量%)。特定の実施形態では、溶着物の組成中に存在する鉄の量は約90重量%より多く、これには約93重量%より多い鉄が含まれ、約95重量%より多い鉄が含まれ、約97重量%より多い鉄が含まれ、約99重量%以下の鉄が含まれる。
【0047】
溶着物の組成中には他の元素も存在し得る。「微量不純物」又は「混入物」として知られる他の元素としては硫黄、窒素、酸素、アルミニウム、ヒ素、カルシウム、カドミウム、コバルト、クロム、銅、リン、鉛、アンチモン、スズ、タンタル、タングステン及びジルコニウムが挙げられる。一般に、微細不純物が占める割合は溶着物の組成の1重量%以下であり、これには0.8重量%以下が含まれ、0.5重量%以下が含まれ、0.2重量%以下が含まれ、0.1重量%以下が含まれ、0.08重量%以下が含まれ、少なくとも約0.06重量%が含まれる。
【0048】
特定の実施形態では、本開示のフラックスコアード溶接電極の粒子状のコアは、本願で説明したように炭素及び窒素に対する親和性がないか親和性が小さい成分で構成される。溶着物の化学組成の例示の実施形態を下記表1に示す。表1に記載の個々の各限定は、本開示の実施形態のいずれかと置換可能であるとともに、組み込むことができると解釈すべきである。
【0049】
【表1】
溶着物は針状フェライト構造を有し得る。溶着物の酸素含有量は約600ppm未満であり、これには約300ppm未満が含まれ、約100ppm未満が含まれる。
【0050】
本願で述べたように、本開示のフェライト鋼から作られ得るオフショア構造物の製造に特に適用可能であることが予測される。第1のワークピース及び第2のワークピースのうちのいずれか又は第1のワークピース及び第2のワークピースの双方が、516グレード70鋼であり得るフェライト鋼である。特定の実施形態では、第1の鉄ベースのワークピース及び第2の鉄ベースのワークピースのうちのいずれか又は第1の鉄ベースのワークピース及び第2の鉄ベースのワークピースの双方は管状(即ち筒状)のワークピースである。
【0051】
CTOD試験は、厚肉(例えば、約1インチ〜約6インチ)の溶接部、特にオフショア構造物のための脆性挙動に対する溶接金属の耐性を判断する方法として普及が進んでいる。CTOD試験は脆性き裂伝搬に対する材料の耐性を評価するために設計されたものである。CTOD試験は、溶接部内に存在し得るか又は製造間に生じる欠陥を模倣するために制御曲げ加工(controlled bending)によって関心領域(例えば溶接部)に亀裂を導入することを伴う。そして、モード1型の荷重(即ち純引張)を模倣するために非常に明確に定義された応力状態を加えることによって導入した亀裂に荷重を加えて破壊する(loaded to failure)。
【0052】
CTOD試験では、材料の靱性を人工的に高める自由表面の降伏を防止するため「平面ひずみ」状態を課すためにサンプルの寸法が規定されている。CTOD試験は一般に溶接継手の「全厚(full-thickness)」で行われる。即ち、厚さが約100mmのプレートは、厚さが約100mmのCTOD標本を有する。それに比べて、シャルピーV試験は10mm×10mmのサンプルを用い、溶接継手の比較的小さな部分しかサンプルが取れない。
【0053】
溶接法は、き裂先端開口変位で測定される破壊靱性が約0℃の温度及び延性モード破壊で少なくとも約0.35mmの溶着物を約1インチ〜約6インチの範囲の厚さを有する溶接継手において作ることができる。溶接法は、き裂先端開口変位で測定される破壊靱性が約−10℃の温度及び延性モード破壊で少なくとも約0.35mmの溶着物を約1インチ〜約6インチの範囲の厚さを有する溶接継手において作ることが可能であり得る。溶接法は、き裂先端開口変位で測定される破壊靱性が約−20℃の温度及び延性モード破壊で少なくとも約0.25mmの溶着物を約1インチ〜約6インチの範囲の厚さを有する溶接継手において作ることが可能であり得る。
【0054】
図4は、第1の例示の実施形態及び第2の例示の実施形態で定義された実施形態における様々な温度での衝撃吸収エネルギーを比較する。HD−12Mのサンプルに比べて改善された衝撃吸収エネルギーを示すSR−12Mのサンプルは約0.001重量%〜約0.005重量%のニオビウム及び約0.003〜約0.007重量%のバナジウムを含み、より具体的には約0.003重量%のニオビウム及び約0.005重量%のバナジウムを含み、表1の実施形態3でさらに明記されている。
【0055】
本願において言及されている特許は、本開示の文中で参照により組み込まれると具体的に明記されているか否かに関わらず参照により本願に組み込まれる。
【0056】
本明細書又は特許請求の範囲で「包含する(include、includes、including)」という用語が用いられている場合、該用語は用いられた場合に請求項における接続語として解釈されるため、それらは「含む(comprising)」という用語と同様に包括的であることを意図している。さらに、「又は(or)」という用語が用いられている場合(例えばA又はB)、それは「A若しくはB又はA及びB」を意味することを意図する。出願人が「A及びBの双方ではなくA又はBのどちらか」を示すことを意図する場合には、「A及びBの双方ではなくA又はBのどちらか」という用語が用いられる。そのため、本願における「又は」という用語の使用は包含的な使用であって排他的な使用ではない。ブライアン・A・ガーナ―著「A Dictionary of Modern Legal Usage 624」(第2版、1995年)参照。本明細書又は特許請求の範囲で「内(in)」又は「内へ(into)」という用語が用いられている場合、それは「〜上(on)」又は「〜上へと(onto)」をさらに意味することを意図している。さらに、本明細書又は特許請求の範囲で「連結」という用語が用いられている場合、「直接連結」されていることだけを意味するのではなく1つ又は複数の別の構成要素を通じて「間接的に連結」されていることも意味する。本開示では不定冠詞「a」又は「an」は単数及び複数の双方を含むとみなされる。反対に、複数のアイテムへの言及は適宜単数を含む。
【0057】
本願で開示の範囲及びパラメータの全ては、その中で想定及び包含される任意の及び全ての部分的な範囲と、終点間の全ての数とを含むものと理解される。例えば、「1〜10」の範囲が記載されている場合、この範囲には最小値1と最大値10との間(最小値及び最大値を含む)の任意の及び全ての部分的な範囲が含まれるものと考えられる。即ち、最小値1又はそれ以上から始まり(例えば1〜6.1)、最大値10又はそれ以下で終わる(例えば、2.3〜9.4、3〜8、4〜7)全ての部分的な範囲、そして最終的には範囲内に含まれる各数(1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10)が含まれる。
【0058】
一般的発明概念を、その様々な例示の実施形態を少なくとも部分的に説明することにより解説してきた。これらの例示の実施形態をかなり詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限するか又は限定することを出願人は何ら意図していない。さらに、様々な発明概念を互いに組み合わせて用いてもよい(例えば、第1、第2、第3、第4等の例示の実施形態のうちの1つ以上を組み合わせて用いてもよい)。それに加えて、開示された特定の実施形態に関係するものとして記載された任意の特定の要素は、その特定の要素を含めることが実施形態で明示された文言と矛盾する場合を除いて、開示された全ての実施形態と共に用いることができると解釈すべきである。当業者であればさらなる利点及び変更が容易に分かる。従って、本開示はその広範な態様において本願で提示した具体的な詳細、図示説明した代表的な装置又は例示に限定されない。従って、一般的発明概念の精神又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細から離れられ得る。
【国際調査報告】

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