【実施例】
【0040】
例1
結果
【0041】
器官全体のパッシブクリアリングおよび免疫染色のための方法
【0042】
いくらかの実施態様では、厚い組織は三つの主要なステップにおいてイメージングのために光学的に透明にされる。まず最初に、組織は、生体高分子を安定化するために、ヒドロゲル単量体に架橋およびハイブリダイズされる。第二に、組織脂質はイオン性洗剤(イオン性界面活性剤)(群、複数可の意)を用いて組織-ヒドロゲルマトリクスから抽出される。第三に、クリアにされた組織は、イメージングのために、または長期保存のためにRIMSにおいて埋め込まれる。全身クリアリングは主な目的であったが、小さな、または特に脆弱な標本および器官の処理が、穏やかな、受動的なクリアリングプロトコルによって達成されることが最良であろうと認められた。PACTは、脳、脊髄、腎臓、心臓、肺、および腸、またはヒト組織生検を含め、齧歯類の器官全体、それらの1-3mmの厚さのセクションを透明にするために開発された。クリアリング速度は部分的には、界面活性剤ミセルによる脂質の溶媒和の速度、および組織における界面活性剤ミセルの拡散の速度に依存する〔Hoffman(ホフマン)、2002〕。しかし、加えられた力が、組織、たとえば、CLARITYのETCの電界などのようなものを通じてそれらの拡散を加速しない限り(Chungら、2013;Tomerら、2014)、大きなミセルによる脂質抽出は比較的遅い。異なる洗剤を、3日間のインキュベーションにわたって3mmの冠状マウス脳ブロックを受動的にクリアリングする能力について種々の濃度にてテストした。すべての濃度でのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、他の界面活性剤に関して脂質溶媒和および脳組織からの除去について優れ、およびさらにわずか8%SDSの濃度は、全体の3mmのブロックにわたって一様なクリアリングを達成した(図7A)。
【0043】
組織ヒドロゲルの架橋密度における低下が、その後の免疫組織化学の間に、厚い、高度に有髄の、または線維性の組織への脂質抽出および高分子浸透の双方を促進するという仮説が立てられた。これを試験するため、3mm脳セクションは、ホルムアルデヒド、アクリルアミド、およびビス-アクリルアミドの様々な組合せ、および濃度を用いて注入し、脱気し、および37℃で重合させた。組織クリアリングの効率(図1A)および抗体浸透の深さ(図1B)は、ホルムアルデヒドおよびアクリルアミドのより一層低い濃度を使用したとき、およびビス-アクリルアミド、CLARITYで使用されるアクリルアミド架橋剤(Tomerら、2014年)がヒドロゲルモノマーのカクテルから除外されたときに著しく増加した。より一層低いアクリルアミド濃度を用いて調製した組織ヒドロゲルにおける組織の透明性での質的な増加を観察する際(図1A)、異なるPACT組織調製物を、最小限の架橋スキームが、組織形態および分子情報を保存するのに十分であったことを確かにするために、クリアリングの間にタンパク質の損失、組織の完全性、および体重および容量での変化についてアッセイした。SDSクリアリング緩衝剤中に組織から溶出されたタンパク質の量は、4%PFAで固定したもの、コントロールとしてPBSにおいてインキュベーションしたクリアにされていない組織サンプル(A0P4)、および4%のアクリルアミド(A4P0)を用いて、または4%アクリルアミドプラス4%PFA(A4P4)を用いて調製したそれらのクリア組織ヒドロゲルマトリクスとの間で統計的に区別できなかった(図1C)。注目すべきは、すべてのヒドロゲル包埋サンプルについて8%SDSクリアリング溶液に記録されるタンパク質の量は、4%PFAだけで保存され、およびPBS-0.1%トリトン(Triton)X-100、マイルド洗剤含有緩衝剤においてインキュベーションしたサンプルについてのタンパク質損失よりも少なかった(mg合計重量当たり0.57±0.11mg)。このことは、ヒドロゲルモノマーが効果的に架橋し、および組織タンパク質を安定化させることを意味し、それはさらに未重合の、8%SDSにおいてインキュベーションされるPFA固定組織が乏しいタンパク質保持量を示した(mg合計重量当たり0.63±0.02mgタンパク質損失)知見によって支持される(図1C)。
【0044】
PACT組織における分子含量の保存に関するこれらの結果を確証するために、ネイティブのeYFP蛍光の相対レベルを視覚化し、およびThy1-eYFPトランスジェニックマウスからのPACT脳サンプルで定量した。平均蛍光強度での減少は、双方のヒドロゲル調剤物(A4P0、A2P0)の下で観察された一方、PACTサンプルは、一旦蛍光測定値が組織の膨張について正規化され(図7C)、クリアにされていない組織に関して匹敵する合計強度を示した(図1D)。実際、単独でアクリルアミドを用いて調製したヒドロゲル組織マトリックス(A4P0)はA4P4対応物上にそれぞれ、組織重量および容量の変化を、〜174%および〜223%で示した(図1E)。しかし、クリアリング溶液からマウンティング媒体への組織サンプルの移動の際、PACTサンプルは数時間以内にその元のサイズに戻って縮小した(図9D)。この組織の伸長-収縮は以前の脳クリアリングプロトコルにおいて記録されており(Chungら、2013;Hamaら、2011;Susakiら、2014b)、そこでは、これらのサイズの変化が、次善ではあるが、総体の組織形態または細胞構造に負の影響を与えると考えられないと結論された。組織の拡張を制限するように仮定されている組織ヒドロゲルマトリクスでの架橋密度におけるPFAの効果を視覚化するために、PACTクリア脳スライスを、走査型電子顕微鏡(SEM)を介して画像化した(図7B)。A2P0マトリクスが最大の細孔サイズをもち、次いでA4P0が続き、一方で、A4P4が最小の視覚化細孔サイズをもつことが注目された;細孔サイズは、より一層大きな細孔を有する組織ヒドロゲルマトリクスにおいて、より一層速い高分子拡散時間を伴う拡散速度に直接影響を与える。PACT処理およびマウンティングの間に組織の変形(すなわち、伸縮)が、慣習的な組織学的処理に関して、サンプルの全体的な細胞の組織化またはタンパク質含量に影響を与えるとは考えられなかった(図1F-1L)。したがって、A4P0は、クリアリング速度、タンパク質の保持、および中間細孔サイズの組織の間でPACTを与えるそのバランスについて選定し、それは組織学の間に巨大分子組織浸透に資する。
【0045】
PACT試薬は組織学および内因性蛍光色素に適合する
【0046】
遺伝子的にコードされた蛍光タンパク質からの信号強度がPACT処理全体に保存されたことを確認するために、厚さ1mmのThy1-eYFPの組織セクションを、A4P0ハイブリダイズし、PACT-クリアリングし、および共焦点顕微鏡法を用いてイメージ化した。PACTクリアリング、そして重要なことには、厚いサンプルについての遅いイメージ取得時間にもかかわらず、遺伝子的に発現されたeYFPがサンプルを通して容易に検出された(図1F、1H)。また、組織ハイドロゲルマトリクスは依然として、厚い、クリアにされたセクションの均一なニッスル(Nissl)染色を許した(図1Fで、図1Gにおいてクリアにされていない80μmのセクションに比べられる)。ニッスル染色(赤)によって明らかにされたように、全体的な組織構造は、クリアにされた、およびクリアにされていないセクションの間で一定のままであったが、それは組織の連続的な腫脹、および次いで収縮が永久的な組織の変形を引き起こしたことの懸念を和らげる。
【0047】
組織サンプルの構造的完全性を維持するものを含む自然なタンパク質が、クリアリングの間に組織ハイドロゲルマトリクスによって保持されるばかりでなく(図1C、1F、1H)、またクリアにされた組織ブロックは、様々な普通の組織学的マーカー(例は、抗体、小分子、mRNAのプローブ)を使って、ペプチドおよび核酸エピトープのラベリングを可能にするのに十分に高分子透過性であった。たとえば、ニッスル(Nissl)のほかに、マウスの脳および脊髄からの1mmのPACTセクションは、アンチチロシン(antityrosine)ヒドロキシラーゼ(TH)(図1I);グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)、ネズミ免疫グロブリンG(IgG)、およびイオン化カルシウム結合性アダプター分子1(Iba1)(図1J)に対する抗体で免疫標識された。これらのターゲット部分は、多種多様な細胞位置:膜局在および細胞質ゾル、神経単位および非神経の抗原を占める抗原を表す。PACTのクリアリングは、すべてのラベルが単一光子蛍光イメージングの間に全体の1mmセクションを横切って簡単に分解されたように、組織サンプルにおいて光散乱を減少させた。
【0048】
同様にPACT方法論が末梢組織に効果的であったことを確認するため、Thy1-eYFPマウスの腎臓、心臓、肺、および腸を切除し、クリアリングし、および抗インテグリン抗体、アクリジンオレンジ(AO)、および/またはSYTO24で標識した(図1K)。中央の器官サンプルにおいて観察されるように(図1F、1H-J)、小分子染料および抗体は等しく末梢器官の1-3mm厚のA4P0架橋し、およびPACT-クリアされたセクションを通して急速に拡散した。厚いセクションの完全な免疫標識のための時間は、組織タイプ、ヒドロゲル細孔サイズ(図7B)、および脂質の除去の程度(図1A、7A)を含むいくつかの要因に依存する一方、均一な抗体の浸透は、PACTサンプルを通じて7-12日間のインキュベーションを伴って達成された。しかしながら、唯一に小分子蛍光染料でのラベリングを必要とする研究のために、一つは、単一の一晩中から3日間のそれぞれのインキュベーションにより1-3mmのPACT脳セクションの迅速な染色を得ることができる。いくらかの末梢組織は、さらに高速に染色され、そこでは、区分されていない(unsectioned)マウスの腸組織(〜400um厚)における個々の核のAOラベリングは、1時間未満で達成された(図1K)。次の問題は、PACTが病理学的サンプルに適用できるかどうかを決定することであった。ヒトの皮膚がんの生検(図8A)は、クリアリングされ、そして腫瘍細胞を視覚化するために、パンサイトケラチン(pan-cytokeratin)を用いて染色した(図1L、図8B-C)。要するに、全体のPACT-クリア組織ブロックは、標準的な免疫組織化学的方法および慣習的な蛍光顕微鏡法を用い、分子照合(molecular interrogation)に対して細胞下レベルに至るまでアクセス可能であった。
【0049】
PACTが、単一のmRNA転写産物を視覚化するために確立された手順に適合するかどうかを定めるために、PACT処理組織を単一分子蛍光イン・シトゥーのハイブリダイゼーション、smFISHに供した〔Femino(フェミノ)ら、1998;Raj(ラジ)ら、2008〕。smFISHの方法論は、固定細胞における高い特異性を有する単一のRNA分子の検出が可能であり、そしてその高い感度は、RNA存在量および細胞内局在化の測定を許容する。しかし、組織セクションにおけるsmFISHは、組織の自家蛍光により生じるノイズ比に対する低い信号のために依然として課題のままである。ここでは、厚さ100μmのクリアマウス脳セクションにおけるβアクチン転写物は、βアクチンmRNAに向けて24のAlexa 594標識20マーのオリゴヌクレオチドプローブを用いて標識された。組織サンプルは、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を含有する培地においてスライドに取り付けられ、そして単一光子顕微鏡法を介してイメージ化した。βアクチン転写物は、確かにPACTおよびsmFISH処理中の神経単位の細胞質において保持され、および蛍光の単一点は、細胞においてのβアクチンの高コピー数およびイメージ化された脳セクションのかなりの厚さにもかかわらず、区別することができた〔Buxbaum(バクスボーム)ら、2014;Rajら、2008〕(図2A)。PACT組織は、クリアにされていない組織に関して組織を通じて回折限界スポットの著しく増加したコントラストを示した(図2C)。smFISH強度は、PACTクリアの、およびクリアにされていない組織の間にほとんど違いが認められなかったことが確認され、その一方では、バックグラウンド強度は著しく減少した(図2、A-B、2Dおよび2E、8D)。これらの知見は、PACTクリア組織において見られるノイズ比に対するsmFISHシグナルでの増加と一緒になって、厚いサンプルにおけるバックグラウンド自己蛍光がクリアにされていない組織においてsmFISHシグナルを不明瞭にする主な要因であることを示唆する。
【0050】
クリア組織のイメージングおよび長期貯蔵のための屈折率マッチング溶液のためのレシピ
【0051】
効果的なイメージングは、異種組織内の屈折率(RI)の変動を低減し、そして組織、マウンティング媒体およびレンズ浸漬媒体インターフェースの間のRIミスマッチを軽減するマウンティング媒体におけるサンプルの浸漬に依存する。伝統的な生成物の法外なコストおよび制限された利用に応じて、より一層安価な代替物を処方し:屈折率マッチング溶液のために、RIMSを、組織イメージングのために適切なRI(RI=1.38-1.49)、生物学的安全性、および組織保存のための生体適合性と共にした(補足的実験手順を参照)。RIMSをテストするために、PACT処理されたサンプルを、80%グリセロール、FocusClear、またはリム(RIMS)においてマウントし、そして次いで、同一の条件の下でイメージ化した(図9A)。RIMSは、蛍光顕微鏡法のために良好な光学的透明性を提供し(図9C)、および3ヶ月の期間にわたりeYFPシグナルの最小のクエンチング(消光)を引き起こした(図9E)。その性能はFocusClearと同等かそれよりも良好であるように思われ(図9A)、そしてそれはマウンティングコストの>10倍の減少を提供するので、RIMSはすべてのその後のPACTおよび8のPARSの実験のために採用された。正確なRIMSの調剤物は、組織サンプルのRIに対してケース特異的様式において最適化することができる(図9B)。
【0052】
成体げっ歯類での脈管構造を使用する全身のクリアリング
【0053】
PACTプロトコルは、最終的な組織ヒドロゲルを生成し、そしてタンパク質の保存、クリアリングの速さおよび容易さ、および光学的クラリティーの良好な組合せをもたらすために、4%アクリルアミドモノマー溶液を用いる。しかし、受動的拡散は、大容量または生物全体のクリアリングのために遅く、法外である。また、アクリルアミドヒドロゲルが洗浄剤クリアリングフェーズの間に著しく膨潤することが認められた(図1A、7C)。ほとんどのクリアリングプロトコルに共通する、これらの二つの欠点は、クリアリングを高速化するために、およびまた、クリアリングの間に組織の拡張を最小限にするために代替方法論の開発を促した。既存の脈管構造ネットワークは、心臓灌流固定において規則正しく行われるように〔Gage(ゲージ)ら、2012;Jonkers(ジョンカーズ)ら、1984〕、イン・シトゥーで全体固定およびクリアリング手順を実行することによって組織に直接に薬剤を導入するために、利用された。この方法は、イン・シトゥーでの灌流支援薬剤放出(Perfusion-Assisted Agent Release)(またはPARS)と呼ばれる。PARSは、ヒドロゲルモノマーおよびクリアリング溶液を直接注入するために、動物の無傷の脈管構造を利用し、それらは次いで関心がある組織全体に拡散する。主要な血管および全体の生物の微小脈管構造が灌流液によってアクセスされたかどうかの両方を調査するために〔Leong(リョン)およびLing(リング)、1990;Li(リー)ら、2012〕、マウス免疫グロブリンに対するAlexaFluor 647共役抗体(図10B、右)またはGFAPに対するAtto(アト)488共役ナノボディ(図10B、左)は、24時間の心臓カテーテルを通して灌流再循環された。マウス脳脈管構造は、広範に標識され、血管の灌流液に対するアクセス性を説明する(図10B)。エキストラ脈管構造(extravasculature)のGFAPラベリングによって示されるように(図10B)、灌流液はまた、周囲の組織に拡散することが観察された。
【0054】
PACT試薬を、脳のCSF中に、または全身の脈管構造を通して数日から数週間、再循環させるために、閉ループ灌流システムが開発された。このカスタムPARSチャンバーを使用して(図10A)、CSF中に8%SDSの連続的な頭蓋内灌流を、PARS-CSFと呼ばれる方法を介して(図3)、4日目に全脳(wholebrain)クリアリングを達成した(図3A-3B)。くも膜下槽(大槽)中、より一層尾側にカニューレを挿入することにより(図3A、右)、ラットの脊髄(図3B)の全長のクリアリングを与えた。次に、AAV9-eGFP注入した成体マウスを、嗅球の真上に挿入する硬膜下カニューレ(図3A、左側)を用いて、そして37℃にて8%SDSを再循環させることでの4日後に調製し、無髄鞘の、および密に有髄の双方のマウスの脳領域のCSF近くでの循環(皮質、視床下部の大部分、ベントリクル(脳室)および脊髄に近い領域)が透明化された。個々のニューロン、神経プロセス(神経突起)、およびグリア細胞のGFPラベリングは、脳を通じてはっきりと見えた(図3C)。
【0055】
PARS-CSFの同じ灌流クリアリング方法が、イン・シトゥーでの全体のクリアリングにまで拡張することができることが決定された。さらに、脂質抽出および抗体拡散の間の組織での圧力勾配の適用は、それぞれ、個々の切除した全器官のPACTベースのクリアリングに関するクリアリングおよび免疫ラベリングステップを加速する追加された利益を保持することができる。クリアリング試薬は、全身の脈管構造を通して循環され(タイムライン、図4A参照)、すべての末梢器官の、およびそれぞれ、1週間および2週間以内に達成される中枢神経系の完全なクリアリングを伴い、マウスおよびラットについて同様である(図4B-4D、13)。PARSの灌流液の最小のタンパク質含有量、およびA0P4注入されたマウスからの灌流液のより一層高いタンパク質含有量(図4E)は、全生物ヒドロゲル重合が総器官の構造および高分子含量を安定化するために必要かつ十分であることを示唆した。PARSが、多重の器官におけるまばらに標識された細胞において局在された蛍光タンパク質発現を視覚化することに適合性であったことを確認するために、GFP導入遺伝子を、アデノ随伴ウイルス(AAV)の全身投与により送った。AAV9:CAG-eGFP(図5D)またはAAV9BD1:CAG-eGFP、AAV9の変形物でAAV9と同程度にCNSニューロンに形質導入を生じさせるが、減少したアストロサイト(星状細胞)および肝細胞の形質導入を見せるもの(図5E)は、成体マウスにおいて脈管構造を介して送られた。脳および肝臓の両方において、自然eGFP発現は容易に検出可能であり、およびAAV9に比べてAAV9BD1による肝細胞の減少した形質導入が容易に検出された(図5D対5E)。
【0056】
PACTに比較して、PARSの処理中の組織の容量変化は、筋骨格構造、たとえば、頭蓋骨、脊柱、および筋肉の壁などのようなものは、組織の拡張を物理的に制約するので、減少するであろうことが予想された。確かに、げっ歯類の脳のPARSベースのクリアリング(図4C-4D、11A)は、クリアリング中に限られたヒドロゲルの膨潤および組織の拡張を達成した。PARS処理された脳は、PBSまたはRIMSにおいて頭蓋骨および配置からの抽出後、わずかに膨潤するが(図11A)、ニューロンの形態における総変化がPARS処理およびポストPARS拡張の結果として発生したことを示唆する証拠はなかった(図5B)。それにもかかわらず、RIMSにおいての組織膨潤の緩和はRIMSマウンティングに先立って一晩4%PFAにおいて後固定PARSサンプルを通して試みられた。全体的な組織構造が容量変化によって変わる程度を評価するために、クリアにされていない、PARS-クリアの、および後固定されたPARS-クリアサンプルの異なる脳領域内の細胞間の距離および平均細胞サイズ(皮質、線条体、視床)を測定した(図11B)。個々の領域がPARS処理またはRIMSのインキュベーションによって差動的(特異的)に影響を受けうることが予想され;たとえば、灌流関連頭蓋内圧から生じる任意の剪断力は、より一層少ない有髄組織にしかより一層大きな害を発揮させないか、またはベントリクル・コラプス(室虚脱)を引き起こしうる。固定後PARSサンプルは増加した細胞サイズおよびPARSサンプル全体で検出された細胞間の距離を著しく妨げた。アッセイしたすべての脳領域におけるクリアにされていない、および後固定したサンプルとの間の細胞サイズまたは細胞間の間隔に有意差はなかった(図11B)。
【0057】
全-生物PARSはオルガン・バイ・オルガンファッションでの表現型検査(表現型分類)およびイメージングを可能にする
【0058】
次いで全身PARS処理およびラベリング後、主要な器官を摘出し、厚切片にし、共焦点顕微鏡検査法を使用して画像化した(図5、6、12)。Thy1-eYFPマウスのPARS-クリア全脳(図5A-B)および脊髄(図5C)を画像化し、そして、PARS処理が、全器官を、細胞分解能(cellular resolution)と共に深部組織構造を視覚化することが可能であった範囲にまで、光学的に透明にすることが決定された。それぞれ、クリアにされた全脳(図5A-B)および腎臓(図6B)にわたる個々のニューロンおよびネフロンの可視化を通して、この光学的透明度は達成され、その一方、微細な細胞構造は、部分的には、組織構造を安定化させること、タンパク質含量および内因性蛍光を保存すること、および細胞内および細胞組織成分との間の空間的関係を維持することにおいてイン・シトゥー組織ヒドロゲル重合での成功により、無傷のままにされると考えられる(図5A-B)。たとえば、個々のネフロンの個々の蛍光標識された糸球体は、分離され、それは無傷の脈管構造を介して末梢器官にアクセスするPARSの能力を確立する(図6B、12)。
【0059】
重要なことには、これには、同様にすべての免疫組織化学的溶液で、ブロッキング(遮断)溶液、プライマリおよび蛍光標識二次抗体カクテル、または蛍光標識された小分子、および洗浄バッファーを含むものの提供が含まれる。PARSを用いる免疫標識は、標的特異的で、末梢器官全体に均一に分布し、そしてPARS処理マウス腎臓切片におけるチューブリンおよびDRAQ5標識によって(図5B)、およびレクチンを伴う肝臓、肺、膵臓、繊維状アクチンプローブファロイジン、および核酸染色DAPIにおける血管の灌流ベースの標識によって(図12)示されるように、低いバックグラウンドを示した。
【0060】
例2
論考
【0061】
いくらかの実施態様において、本発明は、PARS、蛍光およびタンパク質ベースの信号および組織構造を保ちながら、無傷の全生物を、単一細胞分解能を用いて画像化するために透明にする方法を教示する。出発点、CLARITY法(Chungら、2013)は、イン・トートーで(in toto、全体として、)、3D細胞配置およびコネクトームを解明するための脳の処理プラットフォームを科学者に提供した。膨大な数の研究室がCLARITY前10年に新しいクリーニング試薬について以前に報告しているが、しかし、これらの試薬の多くは、非常に高度にアプリケーション特異的または組織特異的であった(表1にまとめる)。これとは対照的に、CLARITYは、組織保存(ヒドロゲル埋め込み)およびクリアリング効率(電気泳動的な組織のクリアリング、ETC)に関係する二つの広く適用可能な技術を導入し、そのどちらも、設計、または再設計に組み込まれ、他のクリアリング手法であることができた。
【0062】
伝統的に、組織を透明にすることは、他のクリアリングプロトコル(Hamaら、2011)で報告されているように、数週から数月(weeks-to-months)のオーダーでの溶媒インキュベーションを要求したプロセスであった。しかし、ETCは、組織クリアリングの速度だけが、急速に組織を可溶化するそれらの能力について、有機溶媒の大きなパネルをアッセイすることにより加速されることができたという一般的な見解に挑戦した。多くの場合、これらのスクリーンにおいて試験された候補溶媒は、急速な組織のクリアリングを達成したが、組織構造を損なう(Hamaら、2011)か、またはネイティブの蛍光を消した(Beckerら、2012;Erturkら、2012;Susakiら、2014b)。CLARITYによって導入された試薬は比較すると緩やかではあるが、高速クリアリングのために必要なETCのステップは実装が複雑であり、そしてサンプルの加熱からの組織劣化を引き起こす。これらの課題は、受動CLARITYの使用によってバイパスすることができる(Tomerら、2014)が、クリアリングの遅い速度は、スケールアップのために、または全身マッピングのために、その技術を非実用的にする。
【0063】
依然として、マイルド洗剤および蛍光ノンクエンチング試薬を、全体に使用しながら急速に生物全体をクリアすることを目標として、PARSはCLARITYの基本原則に基づき開発されたが、ETCについての必要性を回避することを目的とし、その一方、受動拡散を介するよりも速いクリアリングが維持された。まず最初に、クリアリング薬剤は、受動的CLARITYについてビスアクリルアミドを除去すること、および洗剤濃度を8%SDS(PACT試薬)まで増加させることによって改変した。組織クリアリングステップは、高速脂質抽出を駆動するCLARITYによって使用される電気泳動力が、灌流ベースの圧力勾配と交換されたように再設計した。無傷の組織血管系を通したPACT試薬の制御された流れは、最も末梢の器官を2-3日以内に光学的に透明な組織に変換し、その一方 全マウスおよび全ラットの脳は、1-2週間以内に透明にされる。また加えて、イン・シトゥーでのクリアリングの自己完結型の性質はまた、モノマー注入および脂質除去の間に組織拡大を減少させた。
【0064】
PARSは、全器官および全生物の高い表現型コンテンツを伴うマッピングを可能にする。このことを考慮して、大規模な組織ブロックの迅速な、低解像度のスキャンが、smFISHを含む、遅くて、高い表現型コンテンツの分析の価値がある制限区域へ研究者を向けることができ;長期的な蛍光マーカーを保存する方法は、この点で特に価値がある。双方のPACTおよびPARSの方法論は、元のCLARITYプロセスに関連してスケーラブルで、費用対効果が高く、そして他のモデル生物またはヒト組織に対して伝達性(transferrable)であると思われる。確かに、PARSは、げっ歯類で心臓灌流を使用して描かれた一方で、全体的な方法論はまた、十分に大きな血管が潅流ルート、たとえば、分離されたヒト組織を含む、より一層大きな、より一層高等な哺乳動物において全器官の灌流などのようなものを作り出すために利用可能である実例にも適用することができた。PARSは、クリアリングの増加した速度および組織損傷を伴わない減少した膨張を達成する一方(表1)、本方法の別の重要な強さはその拡張性にある。データは、たとえば、PARSが、全身デリバリー後の複数の器官における細胞レベルでのAAV媒介性形質導入を評価するために用いることができることを実証する。
【0065】
個々の組織をセクション(区画)する必要性を排除することによって、PARSのアプローチは、目的の細胞型における最適な発現のための膨大な数のAAV血清型および/または遺伝子調節エレメントをスクリーニングするための努力を促進する可能性がある。スクリーニングのスループットおよび速度を改善することに加えて、PARSベースの全身的な方法はまた、アンダーサンプリングエラーによる標的組織におけるAAV導入を過小評価する危険性を中和する可能性がある。同様に、PARSは、それらの標的全器官における末梢神経の理解を向上させることができる。たとえば、迷走神経などのような複雑な長距離繊維束の正確な地図〔George(ジョージ)ら、2000〕は、既存の治療法での情報改善を助け、またはたとえば、バイオエレクトロニクス薬〔Famm(ファム)、2013〕などのようなまったく新規な治療戦略の開発に拍車をかけることができる。PARSはまた、脳から体の相互接続において、オフターゲット(的外れの)およびオンターゲット(的確な)薬剤についての全身スクリーニング実験で、およびたとえば、腫瘍細胞または幹細胞などのような希薄な要素についての全器官マッピングで、生物医学研究を促進することができる。最後に、PARS方法は、細胞充填(cell-filling)内骨格構造と適合性である。PARSをTEMPEST、-CLARITYに対する前駆体と組み合わせることで〔DeisserothおよびGradinaru(グラディンアル)、2014〕、興味のある集団内の長期にわたるケラチンフィラメントのイン・ビボ発現(それらは、形態学のロイヤルブループリントを維持しながら、細胞それら自体よりも長く残る)は、正確な事後の定量および脳中の長縮退細胞のマッピングを容易にすることができる。
【0066】
ここで導入する方法は、固有の循環系を用いることによって、生物全体に組織のクリアリングおよび表現型を拡大するためにCLARITYにおいてプライアーワーク(事前の仕事)を構築する。血管網が均一ではないので、不均一な灌流の流れが導かれ、目的の器官は異なる速度でクリアにされる。
【0067】
血液脳関門は、末梢に関連して、たとえば、脳に対する抗体〔150kDa(キロダルトン)〕などのような、特に大きな分子の効率的な灌流ベースのトランスポートへの課題を提示する可能性がある。いずれかの特定の理論に縛られることは望まないが、灌流効率を改善するために、一つの解決策は、おそらく、免疫標識のためのより一層小さな抗体の足場を開発(または既に利用可能なときには利用)することであろうが;これらには、免疫グロブリンのフラグメント-抗原結合形式(Fab〜50kDa)、ナノボディ、ラクダ科の動物の抗体由来の単一ドメイン抗体が含まれ、それらのより一層小さいサイズ(〜12-15kDa)は組織透過性を促進する〔Harmsen(ハームセン)およびDe Haard(デ・ハード)、2007〕。
【0068】
改良されたイメージングプラットフォームはまた、最近の組織のクリアリング研究を補完するであろう。〔Beckerら、2012;Chungら、2013;Dodtら、2007;Erturkら、2012;ErturkおよびBradke(ブラケ)、2013;Hamaら、2011;Keら、2013a;Kuwajimaら、2013b;Susakiら、2014a〕。厚いクリア組織における細胞および細胞内情報を取得するために、屈折率整合(refractive index matched)、長作動距離対物レンズを利用し、一方で、まだ、高い開口数が維持されることが重要である。スキャンスピードは、完全に画像化されるのに多くの日数を採用するクリア組織ブロックを伴う追加の障壁であり-共鳴スキャナまたは光シート顕微鏡(Tomerら、2014)は、高解像度データを保持しながらプロセスを加速することができる。
【0069】
脳および末梢器官〔Birmingham(バーミンガム)ら、2014〕との間のリンクでの関心の高まりを考えると、無傷のままの脳および末梢器官の間の構造的な接続と共に、全身の未分割ビューを持つことが重要である。PARSおよび実現技術(ナノボディ、イメージングプラットフォーム)の開発により、脳のコネクトームを作り出すための神経科学者の包括的な目標を容易にするためだけでなく、脳から体およびバックコネクトームならびに体内の他のすべての器官系の表現型、健康または病気のものの解明を容易にすることも可能であろう。
【0070】
追加的適用
【0071】
この技術での熟練した者は、器官の拡大を制約する複数の方法があることを理解するであろう。単に、非制限的な例として、3D(三次元)プリンティング(印刷)によって簡単に製造することができるように、スロットまたはメッシュの成形チャンバーにおいて組織を包むことを介し、器官の拡大を強いることは、ハイブリッドPACT-PARSクリアリング手順の実行を可能にすることができた。
【0072】
さらに、そのようなチャンバーは、カバーガラスのグレードのガラス(cover-slip grade glass)または光ファイバーで作られた場合〔Willis(ウィリス)ら、2012〕、イメージングは、完全に囲いを除く必要性を伴わずに進めることができ、サンプルはその元の形状およびサイズを保持することができる。実際、PARSは、げっ歯類において心臓灌流を用いて、ここに説明したが、全体的な方法論はまた、分離されたヒト組織を含め、十分に大きな血管が、より一層大きな、より一層高次な哺乳類において、たとえば、全器官灌流などのような潅流ルートを作り出すために利用可能である例で適用することができる。
【0073】
さらに、技術の適用には、ウイルスの拡散マッピングおよび末梢神経系のマッピングが含まれる。
【0074】
別の重要な考慮事項は、高速パラレルクリアリング/標識のために、必要に応じてPARSチャンバーが何度でも複製することができるということである。
【0075】
PARSのためのプローブの開発
【0076】
灌流効率を向上させるために、一つの解決策は、免疫標識のためのより一層小さい抗体足場を開発すること(またはすでに利用可能なときには利用すること)である。これらには、免疫グロブリンのフラグメント-抗原結合形式(Fab〜50kDa)、およびナノボディ(〜12-15kDa)、ラクダ科動物の抗体に由来する単一ドメイン抗体が含まれ、そのより一層小さなサイズは、組織透過性を促進する(HarmsenおよびDe Haard、2007)。生物医学的用途のために関連する人間のエピトープに対する大規模なナノ抗体ライブラリーを構築する研究者の現在の仕事は、研究が希薄なターゲットの敏感な標識に依存する科学者によるCLARITY、PARS、CUBIC、および他の同様な方法の採用を奨励する。当業者は、さらに、モノボディが、ここで記載する本発明の方法および組成物と組み合わせて使用することができることを理解するであろう。
【0077】
PARSおよびPACTによって唯一に可能にされた追加的なバイオメディカル応用
【0078】
PARSは、末梢神経のそれらの標的器官での本発明者らの理解を洗練させることができ、ならびに、脳-体の相互接続のマッピングが容易になる。前者に関し、たとえば、迷走神経などのような複雑な長距離繊維束の正確な地図(Georgeら、2000)は、既存の治療での情報改善を助け、またはまったく新規な治療上の戦略の、たとえば、バイオエレクトロニクス(生物電子工学)薬などのようなもののための開発に拍車をかけることができる(Famm、2013)。ここでは、潜在的なアプリケーションには、どのようにして神経回路が末梢器官での痛みを検出し〔Iyer(アイヤル)ら、2014〕、または周辺におけるがんアウトカム(がん転帰)を変調させるかの研究が含まれる〔Magnon(マグノン)ら、2013〕。後者に関し、神経活動はまた、周辺可塑性および運動機能に計り知れない影響をもちうる。たとえば、運動前野刺激はオリゴデンドロゲネシス(oligodendrogenesis)および髄鞘形成を誘発することが示されており、そしてこのナーブ(神経組織、nerve-)および神経可塑性は、対応する肢〔Gibson(ギブソン)ら2014〕の改良された運動機能と相関する。たとえば、脱髄障害(多発性硬化症、または外傷性脳損傷後の病変)などのような、識別可能な神経解剖学的病理学、または行動心理学的な病理学(自閉症)によって特徴付けられる疾患において、PARSは、たとえば、それぞれ、末梢神経脱髄〔Zoukos(ズーコス)ら、1992〕または末梢免疫活性化(peripheral immunoactivation)〔Hsiao(シャオ)ら、2012;HsiaoおよびPatterson(パターソン)、2011;Lucas(ルーカス)ら、2006;Zoukosら、1992〕などのような、疾患の周辺症状のためにパンする(pan)のに使用することができる。神経発達に関連する脳と体の相互接続の他の最近の描写は、自閉症(Hsiaoら、2013)または不安〔Foster(フォスター)およびMcVey Neufeld(マクベイ・ノイフェルド)、2013〕の挙動についての胎盤-胎児接続(HsiaoおよびPatterson、2012)、脳-腸軸(brain - gut axis)、および腸内微生物叢〔Flight(フライト)、2014〕である。
【0079】
同様に、多くの周辺解剖学的マップは、全器官の枠組みの中で微細なスケールの分解能を欠いている。たとえば、研究では、バイオフィルムの形成は、中耳の感染症〔Hall-Stoodley(ホール-ストゥッドレイ)ら、2006〕およびカテーテル関連尿路感染症〔Cole(コール)ら、2014〕のように、周囲の厚い細胞外重合体物質およびバイオフィルムにおける異なる層の高い複雑性のために、ヒトにおける多くの慢性感染症と関連していたことを示したが、組織内のバイオフィルムの構造を画像化するための方法はいまだに制限される〔Ramsey(ラムジー)およびWozniak(ウォズニアック)、2005;Tan(タン)ら、2014〕。しかしながら、そのような撮像能力は、非常に有益であろうが、人間の体内で有害な細菌感染を除去するために、抗生物質が容易にバイオフィルムに浸透することはできないことが報告された〔Georgeら、2009;Jain(ジェイン)ら、2008〕。加えて、末梢組織の構造情報の高解像度もまた、本発明者らが、たとえば、小腸陰窩において位置する腸管幹細胞の微小環境シグナル伝達調節のためのように、組織において時々まばらに埋め込まれる幹細胞ニッチを研究するのに役立つ〔Bach(バッハ)ら、2000;Barry(バリー)ら、2013〕。
【0080】
重要なことには、PARSはまた、オフターゲットおよびオンターゲット結合のために、ならびにそれらの薬物動態学-薬力学(PK/PD)特性の定性的な決定のための方法として投与された薬剤の体内分布を画像化するための治療学の全身スクリーニングを容易にすることができる。同様な線に沿って、ここに提示するデータは、PARSが、全身性の配送後の複数の器官における細胞レベルでのAAV媒介形質導入を評価するために使用することができることを実証する。個々の組織を用意し、およびセクションにする必要性を排除することによって、PARSのアプローチは、目的の細胞タイプにおける最適な発現のための多膨大な数のAAV血清型および/または遺伝子調節エレメントをスクリーニングするための努力を促進することができた。また、PARSを用いる全器官のスクリーニングは、このPK/PDスクリーニングのスループット(処理量)を向上させることができるだけでなく、アンダーサンプリング誤差による標的組織におけるAAV形質導入を過小評価する危険性を打ち消す可能性があった。
【0081】
迅速に全器官の表現型をクリアにする能力はまた、生物医学研究を進め、および組織病理学における変化を監視することによって、疾患の進行の研究を容易にすることができる。PARSの医学的に関連する使用は、たとえば、疾患や発達状態の間に起こる進行性の全身の生理学的変化、または腫瘍構造のマッピングの、それぞれのような、病理学的または診断目的のための全体の器官または全生物のマッピングへのその応用において蓄えられる(Birminghamら、2014)。さまざまな3D腫瘍イメージングプラットフォームは、がん進行をトラッキングすることについて報告された〔Colomba(コロンバ)およびRidley(リドリー)、2014〕。これらの新しいプラットフォームにもかかわらず、および医学での解剖学的病理学の実証済みの診断ユーティリティにもかかわらず〔たとえば、腫瘍マージン(Fukamachiら、2010)〕、新鮮で、そして凍結された生検試料の慣習的な組織学的処理およびセクション化は、コストおよび時間の制約があるので、標準のままである。ほとんどの場合、セクションのある画分だけが、視覚化され、それは重要な特色および潜在的誤診のアンダーサンプリングをもたらすことがある(Zarboら、2005)。で強調したように、組織標本のPACT-またはPARS-ベースのクリアリングは、これらのリスクを相殺するのに役立つことができた。さらに、PARSはまた、動物モデル、特に、組織レベルの血管新生における全腫瘍の形態の、細胞およびサブセルラーの詳細において腫瘍全体での不均一性(たとえば、マージン対コア)、および、重要なことに、生物全体にわたる転移巣の研究を可能にすることができる。腫瘍クリアリング〔3DISCO(Erturkら、2012b)〕のための方法は、以前に記載したが、使いやすさを有する全生物へのRIMS-2およびPARSのスケーラビリティにおける蛍光マーカーのための長寿命化は、PARSを好ましい代替性にする(表1)。
【0082】
最後に、PARSの方法は、細胞充填内骨格(cell-filling endoskeletal)構造に適合する。たとえば、目下の神経変性研究(パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、脳卒中)での一つのボトルネックは、ずっと以前に死んだ、およびマクロファージによって取り払われたものを視覚化することは不可能なため、げっ歯類モデルにおいて縮退細胞(変性細胞)の分布を正確にマッピングすることが困難である。さらに、また、アブレーション(切除)実験は、規定されたニューロン集団の間の因果関係(コンパクトまたはまばらに分布)および脳活動と行動を研究するための一般的な方法であり:毒素は、そのような細胞を損傷するために使用されるが、ポスト定量化は、それがプラセボ処置脳と比較することに依存し、およびアブレーションされた細胞の正確な分布を知ることは不可能であるので、まれにしか正確でない。PARSを、TEMPEST-CLARITYに対する前駆体(DeisserothおよびGradinaru、2014)-と組み合わせることによって、-興味がある集団内での長期的なケラチンフィラメントのイン・ビボ発現(形態学のロイヤルブループリント(忠実な青写真)を維持しながら、細胞がそれら自体でより長く生き延びる)が、脳全体の長期縮退細胞の正確な死後の定量化およびマッピングを容易にすることができる。
【0083】
例3
メソッド
【0084】
PACTクリアリング
【0085】
4%パラホルムアルデヒド(PFA)-固定した組織切片を、0.25%の光開始剤2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(二塩酸塩)を補充したヒドロゲルモノマー溶液A4P0(PBS中4%アクリルアミド)〔VA-044、Wako Chemical USA, Inc,(ワコー・ケミカルUSA社)において一晩4℃でインキュベーションした。A4P0注入された試料は、1-5分間窒素で脱気し、および次いで組織ヒドロゲルハイブリッド形成を開始するために、37℃で2-3時間インキュベーションした。短時間のPBS洗浄を介して過剰なヒドロゲルを除去した後、組織ヒドロゲルマトリクスを、0.1M PBS(pH7.5)中の8%SDSを含有する50mLのコニカルチューブに移し、および組織の大きさに応じて、37℃で2-5日間振とうしながらインキュベーションした。免疫染色のために、1-3mm厚のPACT-処理した試料を、一日かけて4-5回バッファー(緩衝剤)の変換を含むPBSで洗浄し、そして次に、小分子染料または一次抗体、次いで蛍光標識二次抗体〔1:200-400、2%正常ロバ血清、0.1%Triton-X-100および0.01%アジ化ナトリウムを含有するPBSにおいて)が含まれるバッファーに移し、3-7日間または小分子染料を伴う1-3日間続けた。抗体または小分子染料溶液は毎日交換する必要がある。非結合抗体を以前のように、PBS洗浄によって除去し、およびその後、サンプルを、二次抗体〔Fabフラグメント(Fab断片)の二次抗体が好ましく、1:200-400〕と共に2-5日間インキュベートし、そしてその後、イメージング媒体(RIMS)中でのインキュベーションの前に、PBSまたはリン酸緩衝液(PB)中で1日間洗浄した。すべての染色および取り付けのステップは、穏やかに振とうしながら室温で行った。
【0086】
ヒドロゲルモノマー特性
【0087】
特定のヒドロゲル組成物が、ここで行われる実験において用いられ報告される。固定剤/ハイドロゲル組成物には、任意の便利なヒドロゲルのサブユニットが含まれ、たとえば、制限されないが、ポリ(エチレングリコール)およびその誘導体〔例は、PEGジアクリレート(PEG-DA)、PEG-RGD〕、ポリ脂肪ポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエチレンコポリマー(ポリエチレン共重合体)、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(ヒドロキシエチルアクリラート)、およびポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、コラーゲン、ヒアルロン酸、キトサン、デキストラン、アガロース、ゼラチン、アルギナート(アルギン酸塩)、タンパク質ポリマー、メチルセルロースおよびその他同種類のものなどのようなものである。いくらかの例では、ヒドロゲルのサブユニットは、ヒドロゲルに固有の特性を追加するように修飾することができ、たとえば、ペプチド配列は、分解を誘導するために〔例は、West(ウエスト)およびHubbell(ハベル)、1999、Macromolecules(マクロモレキュルズ、高分子)、32:241参照〕、または細胞接着を修飾するために〔例は、Hem(ヘム)およびHubbell、1998、J. Biomed. Mater. Res.(ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ)、39:266参照〕組み込むことができる。たとえば、親水性ナノ粒子のような薬剤、例は、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PLG)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリスチレン、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、などのようなものは、パターン形成を維持しながら、ヒドロゲルの浸透性を向上させるために使用される〔例は、米国特許出願第13/065030号明細書;Lee(リー)W.ら、2010、Proc. Natl. Acad. Sci.(プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ)、107、20709-20714参照)。たとえば、PEG、分解性PEO、ポリ(乳酸)(PLA)、および他の同様の材料のブロックコポリマーなどのような材料は、ヒドロゲルに固有のプロパティを追加するために使用することができる〔例は、Huh(ハー)およびBae(バー)、1999、Polymer(ポリマー)、40:6147参照〕。架橋剤(例は、ビス-アクリルアミド、ジアジリン、等)およびinitiatiors(開始剤)〔例は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、リボフラビン、L-アルギニン、等〕は、後の重合ステップにおいて巨大分子相互作用の間に共有結合を促進するために含まれてもよい。
【0088】
ヒドロゲルネットワークの特性
【0089】
典型的には、ヒドロゲルサブユニット(群)および変性剤の濃度および分子量は、選定されたポリマーおよび望ましい特長、例は、それらが重合されるヒドロゲルネットワークの細孔サイズ、膨潤性、導電性、弾性/剛性(ヤング率)、生分解性の指標などに依存する。たとえば、ヒドロゲルにとっては、高分子、例は、タンパク質、核酸、または小分子を、以下により一層詳細に記載するように、標本中に通過可能にするのに十分な大きさの孔を含むことが望ましい場合がある。当業者は、孔径が、大抵はヒドロゲルのサブユニットの濃度の増加に伴って減少し、そして概して、ヒドロゲルサブユニットの架橋剤に対する増加率と共に増加し、およびそのような高分子の通過を可能にするヒドロゲルのサブユニットの濃度が含まれる固定剤/ヒドロゲル組成物を調製するであろうことを認識する。別の例として、ヒドロゲルにとっては、特定の剛性、例は、包埋標本の処理に安定性を提供するために、約2-70kN/m2での、たとえば、約2kN/m2、約4kN/m2、約7kN/m2、約10kN/m2、約15kN/m2、約20kN/m2、約40kN/m2であるが、典型的には、約70kN/m2を超えないヤング率をもつようにすることが望ましいかもしれない。当業者は、ヒドロゲルネットワークの弾力性が、ポリマーの分枝、ヒドロゲルサブユニットの濃度、および架橋度を含め、様々な要因によって影響を受ける可能性があることを知っているであろうし、およびそのような望ましい弾性を提供するために、ヒドロゲルサブユニットのある濃度が含まれる固定剤/ヒドロゲル組成物を調製するであろう。
【0090】
ヒドロゲルモノマー
【0091】
固定剤/ヒドロゲル組成物は、アクリルアミドモノマーを、約1%w/vから約20%w/vまで、例は、約2%から約15%まで、約3%から約10%まで、約4%から約8%%までの濃度で、およびビス-アクリルアミド架橋剤を、約0.01%から約0.075%まで、例は、0.01%、0.02%、0.025%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、または0.075%の範囲での濃度の含んでいてもよく、またはたとえば、固定剤/ヒドロゲル組成物は、少なくとも約2.5Kから約50K、例は、2.5Kまたはそれよりも多く(2.5K以上)、3.5K以上、5K以上、7.5K以上、10K以上、15K以上、20K以上で、典型的には約50Kを超えない範囲の分子量をもつPEGプレポリマーを、約1%w/wから約50%w/wまでの、例は、1%以上、5%以上、7.5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上、および通常は約50%を超えない範囲での濃度で含んでいてもよい。望ましいヒドロゲルの特長を提供するヒドロゲルサブユニットおよび改質剤の濃度は、この技術での方法によってか、または以下の実施例に記載されるように難なく決定することができる。
【0092】
固定剤/ヒドロゲル溶液は、任意の便利な方法、例は、灌流、注射、点滴、吸収、塗布、浸漬/水没などによって検体に送ることができる。検体は、典型的に、ヒドロゲルの存在下で、15分以上、たとえば、30分以上、1時間以上、2時間以上、4時間以上、6時間以上、12時間以上、いくらかの例では、16時間以上、20時間以上、または24時間以上で固定される。
【0093】
ヒドロゲル重合
【0094】
検体の固定の後、ヒドロゲルサブユニットは、重合され、すなわち、ヒドロゲルネットワークを形成するために、共有結合または物理的に架橋することができる。重合は、制限されないが、熱架橋、化学的架橋、物理的架橋、イオン架橋、光架橋、放射線的架橋(例は、X線、電子線)、およびその他同種類のものなどを含め、任意の方法によるものでよく、および使用するヒドロゲルの種類、当該技術の知識に基づいて選定されてもよい。たとえば、非重合または部分的に重合された樹脂の特定の架橋化学物質との混合は、架橋を形成する化学反応をもたらす。架橋は通常、たとえば、電子ビーム曝露、ガンマ線照射、またはUV光などのような放射線源への曝露を介して熱可塑性である材料に誘導することができ;たとえば、電子ビーム処理は、架橋ポリエチレンのCタイプを重合するために用いられる。架橋ポリエチレンの他のタイプは押出す間、過酸化物を添加することによって(タイプA)、または架橋剤(例えばビニルシラン)および押出しの間、触媒の添加、および次いで押出後の硬化を行うことによって作製される。
【0095】
フリーラジカル捕捉剤を介する重合の抑制
【0096】
多くのポリマーは、典型的には、大気中の酸素に曝露されたとき酸化架橋を受ける。いくらかの場合において、反応は望まれたものよりも迅速であり、そして従って重合反応は、酸化架橋の形成を遅らせるために抗酸化剤の使用を含むことができる。他の例では、たとえば、酸化による架橋のより一層迅速な形成が望ましいとき、たとえば、過酸化水素のような酸化剤は、プロセスをスピードアップするために用いることができる。重合のための時間の長さは、使用されるヒドロゲルサブユニットおよび選定された重合方法の種類に依存するが、しかし典型的には、たとえば、約15分ないし約48時間、たとえば、15分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、6時間以上、12時間以上、16時間以上、24時間以上、またはいくらかの場合において、48時間であろう。試薬の最適時間および組合せは、当業者に知られているか、または経験的にか、もしくは多くの公的に利用可能なリソースから決定しうる〔例は、piercenet(ピアスネット).comでのワールドワイドウェブ上で、また、Macroporous Polymers(マクロポーラス・ポリマー):Production Properties and Biotechnological/Biomedical Applications.(生産プロパティおよびバイオメディカル/バイオテクノロジー用途)。Bo Mattiasson(ボー・マッティアソン)により編集、Ashok Kumar(アショク・クマール)、およびIgor Yu(イゴール・ユウ).Galeaev. CRC Press(ガレアブ.CRC・プレス)2010;およびCrosslinking Reagents Technical Handbook(架橋試薬技術ハンドブック)、Pierce Biotechnology, Inc.,(ピアス・バイオテクノロジー社)、2006参照〕。
【0097】
クリアリング
【0098】
一旦重合すれば、ヒドロゲル包埋(すなわち、ヒドロゲルハイブリダイズ)検体をクリアにすることができる。検体を「クリアリング」することによって、検体が光に実質的に透明な、すなわち、透過性にすることを意味する。換言すれば、検体を明るくするのに用いられる約70%以上の視覚的(即ち、白色)光、紫外光または赤外光は、検体を通過し、そしてその中の選定された細胞成分だけを照明するために、例は、光の75%以上、光の80%以上、光の85%以上、またはいくらかの例では、光の90%以上、光の95%以上、光の98%以上、例は、光の100%は、試料を通過することになる。検体の光学的性質での変化は、組織内部の細胞および細胞内構造の視覚化を提供する。
【0099】
細胞成分、例は、脂質を、検体から締め出すか、細胞成分、例は、脂質を、検体から取り出すか、または細胞成分、例は、脂質を、破壊させる、すなわち、検体内で溶解させる任意の処理は、検体をクリアにするため、制限されないが、たとえば、キシレン、エタノールまたはメタノールなどのような有機溶媒への曝露、たとえば、サポニン、Triton X-100およびTween(ツイーン)-20などのような洗浄剤への暴露、イオン性界面活性剤、例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)への曝露を含め、-ここに記載されるように、特に、電気泳動、動圧、超音波振動、溶質コントラスト、マイクロ波放射、血管の循環などに使用することができる。若干の例では、クリアリングは、蛍光タンパク質を消光しない溶媒の使用により行われる。蛍光タンパク質を消光することが知られる有機溶媒の例には、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ベンジルアルコール/安息香酸ベンジル(BABB)、およびジベンジルエーテルが含まれる。したがって、種々のタンパク質の蛍光を保存するために、いくらかの実施形態では、クリアリングは、たとえば、のもの以外の溶媒を用いて行われ、例は、非有機溶媒を用いて行われる。
【0100】
RIMSイメージングメディア(RI 1.46)
【0101】
Sigma(シグマ)D2158〔Histodenz(ヒストデンツ)の40g は、0.02M PBの30mlにおいて、0.1%のTween-20および0.01%アジ化ナトリウムを伴い、NaOHで7.5までのpHにされ-それは、88%Histodenz重量/容量の最終濃度をもたらす。サンプルは透明になるまでRIMSにおいてインキュベーションされ(PACTサンプルについて〜1日、PARSクリア脳のために1週間まで)、次いで新鮮なRIMSにおいてマウントされる。
【0102】
smFISH
【0103】
100μmのPACTセクションは、エタノール透過処理し、B-アクチンに向けた24のAlexa 594標識の20merのオリゴプローブで標識し(37℃で一晩インキュベーション)、公表されたプロトコル〔Buxbaumら、2014;Lyubimova(リュビーモヴァ)ら、2013〕に従って、Slowfade(スローフェード)Gold(ゴールド)+DAPIで洗浄し、そしてカバーグラスをかけた(coverslipped)。3の半径を有するガウシアンフィルタのラプラシアン(Laplacian of Gaussian filtering)をクリアおよび未クリアの双方のサンプル中の転写産物を可視化するために適用した。
【0104】
PARSプロトコル
【0105】
4%PFA(PBS、pH7.4中)での標準心臓灌流のすぐ後に、固定げっ歯類を灌流チャンバー(図10A)上に移し、それは以降のすべてのPACTおよび免疫標識試薬(のようなもの)を、連続(1ml/分)して、蠕動ポンプを介してげっ歯類の血管系を通して再循環した。灌流チューブは、チャンバーを、大動脈中に左心室を介して挿入される送り針に接続され、および適切な場所にゆるく縫合される。齧歯類は、1時間、4%PFAで後固定し、および次いで、PBSで1時間灌流洗浄した。A4P0モノマーは、一晩血管系を通して循環させ、次いで2時間、PBS灌流洗浄を続けた。重合前および灌流ラインを切断することなく、灌流チャンバーは、ジプロック・バッグ(図10A)に入れ、そしてげっ歯類を伴うチャンバーを含むバッグを、窒素ガス下で2分間脱気した。重合は2-3時間、37℃で、PBSにおいて0.25%のVA-044開始剤の200mLの灌流の再循環を介して開始した。全身を、37-42℃でPBS、pHが7.5で、8%SDSにより≦2週間の灌流を通じてクリアにし、次いで2-3日かけて大規模なPBS灌流洗浄を続けた。抗体および小分子染料(PACTにおいてのように)は、その後3日間の灌流および1日の洗浄を介して送られた。脳または脊髄クリアリングのPARS-CSFの変動(図3A-B)について、経心的に固定された(transcardially-fixed)げっ歯動物を断頭し、および硬膜下カニューレを、関心がある領域上に挿入し、そして頭蓋骨に接合した。すべてのPACT試薬は、1ml/分でPARSと同じ順序および時間枠で送られる
【0106】
AAVの生産および全身デリバリー
【0107】
一本鎖ssAAV-CAG-EGFPベクターがAAV9またはAAV9バリアントカプシドにパッケージされ、AAV2/9BD1が生成され、および記載されているように精製された〔Lock(ロック)ら、2010〕。AAV2/9BD1キャプシドは、AAV2/9〔U. Penn(ペン)〕から、とりわけ、N498Y変異を伴い、肝伝達を低減するために、修飾された〔Pulicherla(ピュリチャーラ)ら、2011〕。いずれかのウイルスの1×10
12ベクターゲノム(vg)を、マウス中に静脈内で送られ、および組織をネイティブeGFP蛍光のためのPARSによって6ヶ月後に評価した。
【0108】
蛍光顕微鏡
【0109】
クリア組織試料をサンプルの厚さに応じて0.5mm-7mmからのスペーサーを使用して室温でRIMSにおいて取り付け〔iSpacer(アイスペーサー)、SunJin Lab Co.(ソンジン・ラボ株式会社);Silicone Isolator(シリコーン・アイソレータ)、Electron Microscopy Sciences(エレクトロン・マイクロスコピー・サイエンシーズ)、PA〕、およびカバーグラスを付した。図3Bについては、サンプルは、Leica(ライカ)HC FLUOTAR L 25x/1.00 IMM CORRオブジェクティブ(対物レンズ)を有するLeica TCS SP8二光子顕微鏡を用いて、Leica Microsystems(ライカ・マイクロシステムズ)によって画像化した(作動距離、w.d.6.0mm)。他のイメージは、Zeiss(ツァイス)LSM 780顕微鏡を、Fluar 5x/0.25 M27乾燥対物レンズ(w.d. 12.5mm)、Plan-Apochromat(プラン-アポクロマート)10x/0.45 M27エア対物レンズ(w.d. 2.0mm)、LD SCのPlan-Apochromat 20x/1.0 Corr M32 85mmスケール浸漬対物レンズ(w.d. 5.6mm)、またはLD LCI Plan-Apochromat 25x/0.8 Imm Corr(イム・コアー)DIC M27マルチ浸漬対物レンズ(w.d. 0.57mm)のどれかと共に用いて撮影した。イメージ再構成は、Imaris(イマリス)イメージングソフトウェア〔Bitplane(ビットプレーン)〕を用いて行った。イメージング後、サンプルを室温でRIMSにおいて貯蔵した。
【0110】
拡張した補足手法&追加試薬およびバッファー
【0111】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0112】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【0113】
【表3-1】
【表3-2】
【0114】
1 中枢および末梢神経系の双方において、ミエリンは、主に脂質(乾燥重量で75-80%)から構成されている〔Morell(モレル)およびQuarles(クォールズ)、1999〕。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)は、ミエリン鞘のはるかに最も豊富なタンパク質であり、種に応じて、合計タンパク質含有量の概略で60-80%を占める。MBPとは異なって、他のミエリンタンパク質は、概して、水溶液中で不溶性であり、そして従って容易に抽出されない。しかし、これらは、MBPと共に、膜タンパク質の分離のための標準プロトコルを使用するSDSを用いて抽出することができる。それゆえ、クリアリングプロトコルの主要な関心事は、組織試料中のミエリンタンパク質を安定化するために不適切なPFAおよび/またはヒドロゲルモノマーの架橋である。ミエリン関連タンパク質〔MAPs(マップ)〕のための免疫標識がまだ、描写するために、たとえば、クリア組織における軸索または神経線維について、クリアにされたヒト組織に示されたように(Chungら、2013)実行可能でありうるのに対し、脱髄および再ミエリン化での定量的な研究を、いくらかのミエリン成分が潜在的にクリアリング中に洗い流されるところのPACT/PARS処理組織において、正確に評価することができるかどうかは依然として不透明なままである。実際、何人かの著者は、特に、髄鞘形成での彼らの研究において、脂質の多いミエリン鞘の可溶化および除去というこの懸念のため、組織のクリアリングを回避することを報告している(Jungら、2014)。様々な刊行されたクリアリングプロトコルのうち、SeeDB、CLARITYおよびPACT/PARSは、無傷の一定のミエリン構造的要素を残すために最も大きな可能性を秘めている。すなわち、SeeDB(Keら、2013)は、親油性染料との適合性を実証され、その一方、CLARITY/PACT/PARSはすべてSDSでのクリアリング中にミエリンタンパク質の損失を防止することが期待されるヒドロゲル組織埋込みステップを含む。最後に、ミエロアーキテクチャー(myeloarchitecture)を再構成するために、光学クリアランス顕微鏡(optical clearance microscopy)の使用が研究された調査において、脳サンプルは、光学的にクリアされ、およびOCMの前にScaleA2を搭載された〔Leahy(リーイ)ら、2013〕。しかし、著者は彼らのクリアリング方法について詳細を提供しなかったので、組織がScaleA2において広範囲にクリアにされたかどうか、またはScaleA2が主に屈折率の実装メディアとして使用され、そこではミエリン損失のリスクが最小限になるかどうかを評価することはできない。
2 近年、スペクトル共焦点反射顕微鏡での有髄軸索のラベルフリーのイン・ビボのイメージングのための方法〔SCoRe(スコア)〕が、拡散テンソルイメージング(DTI)に対して、より容易に実現される代替物として報告された(Schainら、2014)。脂質が豊富なミエリンの高屈折率から利益を得ることで、SCoRe法は、慣習的なレーザー走査共焦点顕微鏡だけでの軸索髄鞘形成での変化の微細なスケールのイメージングを可能にする。エクス・ビボ(ex vivo)イメージングへの新しいアプローチが、PARS-処理され、および免疫標識されたサンプルにおいて物質の全生物のPARSベースの転送を伴う生きた有機体における物質の拡散を置き換えることを実行することができることは明らかである。
【0115】
動物
【0116】
野生型マウス(C57BL/6NおよびFVB/N、両方の雄性および雌性)、Thy1-YFPマウス(ラインH)、およびTh-cre(1Tmd/J)マウスは、新規なクリアリングプロトコルおよびクリアリング試薬の開発およびテストに使用した。Thy1-YFPマウスは、マルチウィーククリアリングステップの全体およびRIMS(リムス)の長期的サンプル貯蔵下での内因性蛍光シグナルの維持を評価した。ペリアドレッセント(Periadolescent、若年付近)から成体の野生型ラット〔Long-Evans(ロングエバンス)およびWistar(ウィスター系)、雄性および雌性〕は、より一層大きな組織サンプルのためのクリアリングプロトコルを最適化し、および冗長なかん流ベースのクリアリングおよび抗体染色ステップの間に脈管構造の保存を描写するために使用された。経心腔的(transcardial)かん流のために、対象は、Euthasol(ユーサソル)(100mg/kgのIP注射)の過剰摂取で、0.5%のNaNO
2(亜硝酸ナトリウム)を含むヘパリン化PBS(10U/mLヘパリン0.1M PBS中)での最初の心臓内かん流前に、次いで4%PFAで深く麻酔した。PACTについて、脳および/または望ましい器官を摘出し、およびヒドロゲルモノマー注入およびクリアリングステップに先立ち、数時間、4%PFAにおいて後固定した。PARSベースの全身クリアリングについて、心臓カテーテルはちょうど大動脈弁を越えて延びる左心室に挿入され、縫合糸の緩いループにより大動脈の内側に安定化された。PARSベースの全脳をクリアリングについて、下行大動脈はマイクロクランプ(microclamp)と連結した。AAV9-CAG-eGFP形質導入した細胞の視覚化を含む実験のために、若い成体雌性C57BL/6マウスに、後眼窩を介してウイルスを注射し、およびウイルス形質導入およびeGFP発現のために6ヶ月の遅延の後、マウスをPACTおよびPARS研究のために安楽死させた。
【0117】
AAV生産および全身デリバリー
【0118】
蛍光標識された導入遺伝子を運ぶアデノ随伴ウイルスベクターをマウスに注射することで、PARS処理の、Thy1プロモーターによって駆動されるものよりもスパースな(まばらな)、ローカライズされた蛍光標識を有するRIMSマウンティングとの適合性を観察することが可能であった(図5A-C対図5D-E)。特定の神経細胞の種類およびグリアのスパース標識、ならびに別個の器官での局所的eGFP発現(例は、肝臓および海馬の図5D-E)がはっきりと見えた。AAV9またはAAV9変異キャプシド、AAV9BD1中にパッケージ化された一本鎖ssAAV-CAG-eGFPベクターは、生成され、そして記載されるように精製された(Lockら、2010)。AAV9BD1キャプシドは、以下の変異(VP1ナンバリング)を有するAAV9〔U. Penn(ペン)〕から修飾された:1)N498Y変異は肝臓形質導入を低減するためになされ(Pulicherlaら、2011)、2)アミノ酸配列AAADSPAHPS(Chenら、2009)はAA588-589の間に挿入され、および3)Y731F変異は作成された(Pulicherlaら、2011)。いずれかのウイルスの1×10
12ベクターゲノム(vg)は、後眼窩洞を介して、若い成体雌性C57BL/6マウス中に静脈内デリバーされ、およびマウスはPARSによるネイティブeGFP蛍光の評価のために6ヶ月後に安楽死させた。AAV9-注入マウスからのPARS脳および肝臓組織のすべてのイメージングは、RIMSにおいて2週間の組織貯蔵後に実行された。
【0119】
PACTおよびPARS試薬の選定
【0120】
異なるヒドロゲルモノマー調剤物およびクリアリング条件をスクリーニングするために、いくつかの成体C57およびThy-1のeYFPマウス(Jackson)を、Euthasolの過剰投与(100mg/kg、IP注射)により麻酔し、および最初に、0.5%NaNO2および10U/mLヘパリンを含有するPBSで、および次いでPBS中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)で経心的に灌流した。切り取った全脳を、1mmおよび3mmの矢状(sagittal)断面および冠状切片(coronal sections)にスライスし、2-6時間、室温で4%PFAにおいて後固定し(定着後の全脳および切片の4℃での一晩も有効なオプションであった)、および次いで、切片を一晩A2P0(2%アクリルアミドおよび0%パラホルムアルデヒド、PBS中)、A4P0 PBS(4%アクリルアミドおよび0%パラホルムアルデヒド、PBS中)、またはA4P4(4%アクリルアミドおよび4%パラホルムアルデヒド、PBS中)ヒドロゲルモノマー溶液で、それぞれが0.25%の光開始剤2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-044、Wako Chemical USA社)を含むものにて4℃でインキュベートした。まだヒドロゲルモノマーに浸漬しながら、ヒドロゲル注入サンプルを1分間、バキュテナーまたは5mLのエッペンドルフチューブにおいてサンプル-ヒドロゲル溶液を通して窒素をバブリングすることにより脱気した。オリジナルおよび高度なCLARITYプロトコルで必要と判断されるように、不活性ガスで酸素雰囲気を交換するいくつかの、より一層厳密な方法が実験されたことに留意すべきである(Chungら、2013;Tomerら、2014)(例は、1.氷上でサンプルを含むバキュテナーを配置すること;2.穏やかに数分間ボルテックスしながらハウスバキュームライン(house vacuum line)を用いてバキュテナーを脱気すること;3.氷からサンプルを取り除くこと、および数分間ヒドロゲルモノマー溶液に窒素をバブリングすること;4.ステップ1-3を数回繰り返すことである)。しかし、窒素のための酸素の短い1分間の交換が適切な重合をサポートすることを決定し:残留酸素は組織およびアクリルアミドモノマーの間の完全なハイブリダイゼーションを妨げたかもしれないが、組織-ヒドロゲルマトリクスは、組織構造およびタンパク質含量を維持するのに十分であった。ヒドロゲル-組織マトリクスを重合するために、サンプルを37℃の水浴またはヒーティングブロックに移し、そしてこの高められた温度で2-3時間インキュベートした。重合したサンプルを、過剰なヒドロゲルを除去するためにPBSで簡単に洗浄し、50mLのコニカルチューブに移し、PBS、PBS中0.1%トリトンX-100、またはクリアリング溶液:4%SDS、8%SDS、20%SDS、10%デオキシコール酸、すべては0.1M PBS、pH7.5において調製したものであり、それらのいずれかにおいて振盪しながら、37℃で2-5日間インキュベートした。3mmの脳切片の画像は、低いPFA濃度で調製した組織ヒドロゲルマトリクスについてのより一層大きな組織膨潤および高PFA(およびアクリルアミド)濃度で調製した組織ヒドロゲルマトリクスについてのより一層遅い組織クリアリングの間のトレードオフ(交換)を示すために、24時間および48時間で採取し(図1A);A4P0ヒドロゲル調剤物はその後のPACTおよびPARS実験における一般的な使用のために選定した。8%SDSクリアリング溶液中の脳切片の72時間のインキュベーションは、優れた組織のクリアリングをもたらし(図7A)、それゆえ8%のクリアリング溶液はその後のPACTおよびPARSの実験のために選定した。クリアリング時間に関しては、このパラメータは、ケース固有の方法で最適化されなければならない。24時間のクリアリングは、小さな組織サンプルまたは高度に多孔質な組織に十分でありうるが、その一方、より一層大きく、高度に有髄の(myelinated)、または高濃度組織切片および器官全体は>96時間を必要とする場合がある。サンプルが長期に貯蔵される場合、膨張が長期的にはヒドロゲル軟化および崩壊、サンプル損失の危険に寄与するので、サンプルをオーバークリア(overclear)しないように、およびまた過度の膨張について定期的にチェックするように注意しなければならない。このことは、サンプルの調製および取扱いの間、高温および機械的応力によって促進される。組織ヒドロゲルサンプルの穏やかな処置およびインキュベーション溶液への抗生剤の添加は、ヒドロゲルが、最大で二週間まで安定を維持させることを可能にする。また、クリアリング後の1-2%のPFAでの組織架橋または組織ヒドロゲル再重合の追加のラウンドが封入媒体(mounting media)における組織膨張および組織崩壊の双方を打ち消すのに有益であることが決定された。
【0121】
PACT免疫組織化学
【0122】
PACT加工組織を免疫染色するため、クリアサンプルは、残留SDSを除去するのに、1日かけてPBSの4-5回の変更により洗浄した。次に、サンプルを、2%正常ロバ血清、0.1%トリトンX-100および0.01%アジ化ナトリウムを含むPBS中で一次抗体(1:200-400)と共に、3-7日間振とうしながら室温でインキュベーションした。六つのA4P0重合および六つのA4P4重合の3mmの矢状切片を、クリアした組織においてIgGの侵入深さを測定するために24時間、48時間および72時間にて、これらの抗体のインキュベーションから取り出した(図1B参照)。残りのセクションについて、未結合の一次抗体を1日にわたって4-5回のPBS緩衝剤交換におけるセクション洗浄を介して除去した。次に、サンプルを、二次抗体(Fabフラグメント二次抗体が好ましく、1:200-400)と、2%正常ロバ血清、0.1%トリトンX-100および0.01%アジ化ナトリウムを含むPBSにおいて、2-5日の間、振とうしながら室温で共にインキュベートした。1日にわたるPBSの4-5回の変更による洗浄の後、サンプルを、RIMS溶液において〔0.01%アジ化ナトリウムを伴い、NaOHでpHを7.5にした0.02Mリン酸緩衝剤の30mLにおけるSigma D2158(HistodenzTM)の40g、-これは結果として88%Histodenz、v/wの最終濃度をもたらし)、それらが透明になるまで室温でインキュベートした。抗体、小分子染色、またはRIMSにおける組織の長いインキュベーション(>4日)の間、溶液はインキュベーションの途中で新鮮なものに交換した。特別な予防策として、および細菌の増殖を防ぐため、組織は、すべての緩衝剤交換と共に新鮮な50mlコニカルチューブまたは染色ジャーに移すことができる。RIMSインキュベーションおよび封入を、クリーンな環境で実行すること、-細菌汚染を最小限にするためにフードにおいて、または炎の上に新鮮なコニカル中にRIMSをデカントすることによるのいずれか、が示唆された。
【0123】
受動的な染色のために使用される一次抗体は、ニワトリ抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH)のIgY、ニワトリ抗グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)のIgY〔Aves Labs(鳥類研究所)、Tigard(タイガード)、OR〕、ラビット抗イオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba1)のIgG〔Biocare Medical(バイオケア・メディカル)、Concord(コンコード)、CA〕、ラビット抗インテグリンb4、b5のIgG、およびラビットアンチベータ(antibeta)チューブリンのIgG〔Santa Cruz Biotechnology(サンタ・クルズ・バイオテクノロジー社)、Dallas(ダラス)、Texas(テキサス州)〕である。 AlexaFluor 647結合ロバ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)は、抗体の浸透実験のために使用した(図1B)。Nissl(ニッスル)染色はNeuroTrace 530/615のRed Fluorescent Nissl Stain(赤色蛍光ニッスル染色)(PBSにおいて1:50、Life Technologies社、グランドアイランド、ニューヨーク州により実行し;サンプルをRT(室温)で一晩インキュベートし、次いで、実装前にPBSで洗浄した。アクリジンオレンジを用いる小分子染色のために、サンプルを10分間、アクリジンオレンジの100μg/mLの溶液中に配置し、次いで一時間PBSでの洗浄を続けた。組織を次にイメージングに先立ち4時間RIMS溶液に配置した。全てのステップは室温で行った。
【0124】
PARSチャンバーの設計
【0125】
クリアリングおよび免疫標識のステップ用に血管系を介するPARS試薬をかん流するため、脂質抽出および抗体拡散中、数日から数週間の間、組織への継続的な圧力勾配と共に試薬を再循環するための簡単な装置の製造を必要とした。そのため、配送方法として、伝統的な心臓かん流固定技術を用いて(Gageら2012;Jonkersら、1984)、PARSチャンバーを、以下の要素からなるよう考案した:1)対象の左心室内の定位置にクランプされる供給針カテーテル(feeding needle catheter)、2)病変右心房を通って脈管系を出る循環試薬をキャッチするためのかん流液収集ウェル(ピペットボックス)、および3)その収集からの再循環試薬を蠕動ポンプによってその通過を介して対象の脈管系中に十分に後ろ向きに移すカテーテルチューブ(PTFEチューブ)(図10A)。このセットアップが全生物のクリアリングのために機能的であることを確認するために、いくつかの異なるパーセンテージでのSDS、様々な濃度で、ナトリウムラウリルサルコシン、およびデオキシコール酸ナトリウムを含む、いくつかの異なる洗浄剤は、連続的に、頸動脈を介して、最大2週間まで全体のマウスおよびラットを通してかん流した。PACT(図7A)でのように、単にSDSは、効果的に光学イメージングのために組織を透明にすることができる。同様に、PARSチャンバーのセットアップを用いて送られたとき、8%SDSが効率的に深部組織で脂質を溶媒和し、および大規模組織サンプルの均一なクリアを達成することができた。このように、PARSチャンバーのセットアップは、その後のPARS実験のために採用された。
【0126】
PARSクリアリングおよび染色
【0127】
成体マウスまたはラットの経心腔的かん流(transcardial perfusion)固定について、供給針が左心室を通っておよび大動脈に挿入し、および大動脈弓のレベルで血管に所定の位置でゆるく縫合された。PACTのために要約されるように、PBSおよび4%PFAでのかん流に続いて、固定された全体のげっ歯類はカスタムビルドかん流チャンバーに移され、そこでは、チャンバー内の溶液がげっ歯類中にかん流され、および蠕動ポンプを介して再循環される。げっ歯類は、室温で1-2時間、1mL/分の流速で、大動脈中に同じ供給針を介して4%PFAで後固定した。ラットの脳および脊髄のクリアリングのために、動脈循環を体系的に連結し、頚動脈を無傷のままにし、およびこれらの血管によって直接かん流していない組織を除去した。PFAがアクリルアミドモノマーを架橋することを防ぐために、PBSを、残留PFAを洗い落すために、RTで2時間かん流し、および4%アクリルアミド(A4P0)を一晩RTでPBSに注入した。翌日、PBSを再び脈管系において任意の残りのPFA/アクリルアミドポリマー/モノマーを除去するためにかん流した。重合前に、およびかん流ラインを切断することなく、かん流チャンバーは、ジプロック・バッグに入れられ、サンプルを脱ガスするため別の接続通してかん流チャンバー中に窒素ガスが注入された。重合プロセスは、PBSを伴う0.25%のVA-044開始剤の200mLを添加すること、および2-3時間37-42℃の水浴中で脱気かん流チャンバーを浸漬することによって開始した。鉛の重りは、かん流チャンバーの上に、その傾斜を防止するために置いた。重合後、溶液を0.1MのPBS、pH7.5のクリアリングバッファ中の8%SDSにより置換し、およびマウス/ラットは、最大2週間までかん流した。PARS IHCのため、クリアマウス/ラットは、まず、残差SDSを除去するために、2日間にわたり200mLのPBSの8回のバッファー変更によりかん流した。そして、PACTプロトコルにおいて説明したのと同じ抗体調剤物を使用して、一次抗体カクテルでの3日のかん流、PBS洗浄での1日のかん流、二次抗体カクテルでの3日間のかん流、および1日のPBS洗浄を、クリアマウス/ラットの末梢器官を染色するために行った。
【0128】
脳および脊髄クリアリングのためのPARS-CSFの方法論
【0129】
脳および脊髄のマッピングに制限された適用のために、頭骨内(within-skull)PARS戦略がを開発し、それは頭蓋内脳シャントを介してCSF中へのハイドロゲルモノマーおよびクリアリング試薬の直接注入によって全脳および全脊髄の完全クリアリングを通して付与される。特定の状況〔例は、対象におけるガイドカニューレのイン・ビボでの薬理学的、神経生物学的、または光遺伝学的(オプトジェネティック)な研究からの既存の可用性〕の下では、PARS-CSFは、全脳クリアリングおよび組織学を可能にし、それは自動的に既存のカニューレの近くの領域のために最適化され、およびそれは同等の器官全体のPACT手順としてより一層少ない時間および試薬しか必要としない。ここで、PARS試薬の頭蓋内配送のための二つのルートが確認された。脊髄をクリアにするためには、カニューレは、大槽(cisterna magna)中に、または頭骨を介して低下して(関心領域に孔をあけること、および硬膜において開口部を作成するためにピンセットを使用することによって)のいずれかで、くも膜下腔のレベルまで、直接背側下丘の上に挿入することができる(図3A参照)。PARS-CSFが高温で、クリアリングの長い期間実行されたとき、ラットの脊髄サンプル(右)はクリアにすることができる。脳全体をクリアにするには、カニューレは、頭蓋骨を介して低下され、硬膜を貫通し、そして直接嗅球の上の領域に配置することができる(図3B参照)。カニューレ(21G、PlasticsOne)は、歯科用アクリル〔C&B-Metabond(メタボンド)、Parkell Inc.(パーケル社)〕を用いて頭骨の表面に定位置(インプレース)で接合される。PARS手順は、次に、この頭蓋内製剤に適用された:カテーテルチューブは、心臓栄養チューブ(cardiac feeding tube)とは対照的に、硬膜下カニューレに接続され、そしてすべてのPACT試薬は1ml/分でPARSにおけるのと同じ順序および時間枠を使用して注入された。全脳クリアリングのため、対象は、経心腔的かん流で固定され、および断頭され、頭部だけがPARSチャンバーに移され、および注入(輸液)ラインに接続された。ピペットボックスおよびカテーテルラインは、4%アクリルアミドモノマー溶液(A4P0)を用い予め充填し、チューブをカニューレに接続し、および一晩室温にて1ml/分の流速でA4P0を頭蓋内に注入した(図10A、左)。未結合PFAおよびアクリルアミドモノマーの脳をフラッシュした後(PBSの2時間注入)、それは脈管構造が未重合のままであったことを確実にするために非常に重要であり、全脳はPARSチャンバーからジプロック・バッグへの移送および二分間の不活性雰囲気(N2)下に置くことを介して脱気した(図10A、右)。バッグド-PARSチャンバー(bagged-PARS chamber)はその後37-42℃の水浴に移し、そして熱開始剤補充した脱気PBSを、全体で2-3時間のインキュベーションのために脳を介して注入した。この全脳-ハイドロゲルマトリクスの形成後に、頭骨内組織クリアリングは、PARSチャンバーを全体のプロセスについて37-42℃の水浴中に残存させると共に、4日間カニューレを通して8%SDSの一定のかん流循環を介して達成された。最後に、大規模なPBS洗浄(2-3日)の後、カテーテルラインを切断し、そして脳を取り出し、切片にし、およびイメージングのためのRIMSにマウントした(図3B)。
【0130】
AAV9-eGFPを用いIV-注射したマウスを使用し、全器官クリアリングのためのPARS-CSFの手順は、以下の条件に関して確認した:1)カニューレの配置に関しどれだけ十分な領域をクリアにするかでのほんの少しのバイアス、2)高すぎる流速またはかん流液の不十分な排出で、高い頭蓋内圧が引き起こされるもののいずれかからの過剰な流体圧力によるカニューレに近い領域での構造的な損傷の不存在、3)細胞内構造形態の保存、および4)まばらに標識された細胞集団および蛍光の良好な視覚化。それは、すでに脳内(IC)または脳室内(ICV)でのカニューレ装着マウスまたはラットの対象の使用を伴い、および各対象について死後の脳組織学を必要とする研究を行う科学者への特定の関連性を有することがある。
【0131】
抗体の浸透
【0132】
四体の経心的にかん流し、および4%PFAポスト固定した成体マウス(4-12週齢)の脳を2mmの矢状スライスに切断し、およびこれらのスライスをPACT処理した。具体的には、各PFA固定した脳の一方の半分は、A4P4ヒドロゲルとハイブリダイズさせ、その一方、他の半分は4A0Pヒドロゲルにおいてハイブリダイズした。PACTプロトコルに記載されるように、すべてのサンプルは、PBSにおいて8%SDSを用いて受動的にクリアし、そして残留SDSを1日間PBS洗浄によって除去した。サンプルを、次いで一次抗体カクテル(ロバ抗マウスIgG抗体、1:200、PBSにおいて2%正常ロバ血清、0.1%のTriton-X100および0.01%アジ化ナトリウムを含む)において24-72時間に及ぶ、時間期間の範囲についてインキュベートした。次に、サンプルを1日かけて0.1MのPBSの4-5回の緩衝剤交換で洗浄し、そしてRIMS溶液においてマウントした。画像は、W Plan-Apochromat(Wプラン-アポクロマート)20x/1.0 DIC M27(作動距離1.8mm)を使用したZeiss(ツァイス)LSM 780共焦点顕微鏡を用いて撮影した。抗体の浸透の深さ(図1B)はReslice(リスライス)およびZプロジェクト・プラグイン(Z project plugins)を有するFiji(フィジー)を使用して、y-z投影像にて概説した。
【0133】
PACTおよびPARSサンプルのRIMS(屈折率マッチング溶液)
【0134】
イメージングのための組織の準備の最終段階として、サンプルマウンティングは、対物レンズ、レンズ浸漬媒体、および組織の屈折率を調整するのに役立つ媒質において組織切片を浸漬することが含まれ、それはより一層高い解像度およびイメージングの深さを与える。PACTおよびPARSのマウンティングにおいて、FocusClearTM(フォーカスクリアーTM)、極めて高価な試薬の使用を回避するため、代わりの新しいマウンティング溶液を処方した。組織の光学的クリアリングの原則に基づいて、化学物質の二つの主要なグループ(糖アルコールおよび放射線造影剤)が合理的にスクリーニングされ、それは、光学的クリアリング剤の以下の望ましい特性を持つ(高い水溶性、低粘度、高密度、低浸透圧、低自家蛍光、非蛍光団の消光、生体適合性、低コストである。ソルビトール、糖アルコールは、手頃な価格で、広く利用可能であると認識された。70-80%(w/v)溶液にて、ソルビトールは、200μmの厚さのクリアでないものおよび1mmの厚いPACTクリアの脳切片を、蛍光をほとんど消光せずに実際上クリアにすることができる。調剤物(sRIMSと称し、説明については以下を参照)は、後に0.02-0.05Mリン酸塩バッファー(pHの維持)、0.1%のtween-20(組織の浸透を促進する)、およびアジ化ナトリウム(細菌の増殖を抑制するための防腐剤)を含むように修飾された。糖アルコールに加えて、放射線造影剤はまた、評価され、特に、血管内に送られた非イオン性ヨウ素化造影剤(また、密度勾配媒体として使用するために認可される)は、それらの物理的および化学的特性として、理想的な屈折率整合媒体のそれと密接に一致する。コストおよび利用可能性に基づき、イオジキサノール〔Optiprep(オプティプレップ)〕およびそのモノマーイオヘキソール〔Nycodenz(ナイコデンツ)、HistodenzTM、イオヘキソールの誘導体なども利用可能〕を試験し、およびイオヘキソールがはるかに大きいPARSクリアサンプルに一致するインデックスにおいてソルビトールよりも優れていることが判明した。
【0135】
次に、サイドバイサイドの比較(図9A参照)は、一般的に使用される/商業上入手可能なマウンティングオプションの間で行われ:80-90%のグリセロールおよびFocusClearTM、およびここに記載されるメディアマウンティング媒体調剤物:sRIMSおよびRIMS、マウンティング媒体は、標準的な共焦点顕微鏡による本発明者らのイメージングセットアップのために最適化される。RIMS溶液を、30mLの合計容量について、0.01%アジ化ナトリウムを有する0.02Mリン酸バッファーにおいてHistodenzTM〔Sigma(シグマ)D2158〕の40gを溶解すること、NaOHでpHを7.5にすることによって調製し、それはRI=1.46を有する88%の終濃度のHistodenz(w/v)をもたらす(特に断りのない限り、この研究を通じて使用される)。
【0136】
また、RIMSの屈折率(RI)が、特定の組織/イメージングシステムと一致するように調整されうることは注目に値し:RIMS RIが、非常に良好なサンプル分解能を得るために、1.38(30%Histodenz w/v)から1.48(95%Histodenz w/v)の範囲であってもよいことが予想される。RIMSでの光透過率(図9B)は、Reichert(ライヘルト)AR200 Refractometer(屈折計)で測定した。RIMSマウンティングについて、サンプルをそれらが透明になるまで、まず室温でRIMSに沈めた。この期間中、クリア組織は初期に最初の数時間収縮する(図3B、9Dを参照)。RIMSの継続的なインキュベーションは、RIMSが十分に組織を貫通するまで時間をかけて緩やかな組織の拡大につながり(図4C、11Aを参照);最大のサンプル(例は、ラット全脳)は、RIMS-浸漬の一週間以内に透明になり、その後それらの拡大が止まったことが観察された。しかし、組織拡大は、4%PFAにおいてクリアにして染色したサンプルを、室温で1-2時間(少量のサンプル)または一晩まで(大きなサンプル)をポスト定着することによって、RIMSのインキュベーションに進む前に好首尾に制限された(図4C、右のボックス;図11A、右下のボックスを参照ください)。ポスト固定PARS組織は緩やかな組織容量膨張を削減するが(図9)、追加的な架橋はまた、組織透過性のわずかな減少を引き起こした(図11A)。しかし、蛍光強度、細胞表現型、またはイメージングの解像性の深さは悪影響を受けなかった。
【0137】
sRIMS:RIMSに対する費用対効果の高いソルビトール系代替物
【0138】
0.01%アジ化ナトリウムを有する0.02Mリン酸バッファーにおける70%のソルビトール(w/v)(Sigma S1876)を、NaOHでpHを7.5にし;$ 0.2/mlの純費用である。RIMSが、行われた一定の実験においてsRIMSを上回ったが、解決可能イメージング深さの点では、ソルビトールは、科学研究室全体で一般に入手可能な化学物質であり、そしてそれゆえにグリセロールベースのマウンティング溶液に対して便利な、費用対効果の高い、優れた代替手段を提供する。
【0139】
血管系の保全
【0140】
ラットを、ヘパリン化PBS、4%PFAを用いて経心的にかん流し、そして最後に追加のPBSで洗浄した。次に、PARSでのように任意のヒドロゲルモノマー注入またはクリアリングする前に、ラットを100 mLのAtto(アトー)488結合抗GFAPナノボディ(PBS中1:100)を用いる大動脈内カテーテルを介して室温で一晩かん流した。GFAPのナノボディは、出版された方法に従って調製した(Liら、2012)。それを使用前にAtto(アトー)488蛍光色素に結合させた。脳を頭蓋骨から取り出し、およびナノボディを架橋するために一晩4℃で4%PFAにおいてインキュベートした。脳はその後、ヒドロゲルモノマー注入、ハイブリダイゼーション、および0.1MのPBS、pH7.5中8%SDSにおける3日間37℃にて、受動サンプルクリアリングを含む標準PACTプロトコルに従って1mmの冠状スライスに切断し、および加工した。クリアにされたサンプルは、一日間RIMS溶液中でインキュベートし、そしてイメージング用のRIMS溶液においてマウントした。画像はLD LCI Plan-Apochromat(プラン-アポクロマート)25x/0.8 Imm Corr(イム・コアー)DIC M27マルチ液浸対物レンズを有するZeiss LSM 780共焦点顕微鏡を用いて撮影した。の方法は、Alexa Fluor(アレクサ・フルオロ)647結合(コンジュゲート)抗マウスIgGを用いる血管系の標識のためにマウスにおいて繰り返した。簡単に言えば、4%PFAで固定したマウスは、Alexa Fluor(アレクサ・フルオロ)647結合抗マウスIgGを一晩、4%PFA固定のために設置されたのと同じ大動脈内カテーテルを用いて経心的にかん流させた。脳は切り出し、4℃で一晩4%PFAで後固定し、1mmの冠状スライスに切断し、およびPACTは3日間37℃で、0.1MのPBS、pH7.5において8%SDSにてクリアリングした。クリアにされたサンプルは、一日間RIMS溶液中でインキュベートし、およびイメージングのためのRIMS溶液中でマウントした。
【0141】
スライスされた組織の拡大および体重増加測定
【0142】
PFA固定成体マウス(4-12週齢)の脳は、六つの1mm厚の冠状スライスに切断した。脳の一方の半分からのスライスを、PBS中に貯蔵し、その一方、脳の他の半分からのスライスは4日間PACT-クリアにした。スライスを秤量し、そしてクリアリング前後で、慣習的なカメラを用いて撮像した。スライスのサイズはImage J(イメージJ)を用いて概説し、および算出しました。組織の拡大および重量増加を、クリアリング前後にスライスのサイズおよび重量の変化を計算することによって(図1E)、およびpre(プレ)PACT測定に対してそれらを正規化することによって決定された。
【0143】
タンパク質損失測定
【0144】
各サンプルについてのタンパク質損失の割合(図1C、2E)は、PACTまたはPARSクリアリングから、それぞれの溶液を用いてブランクにしたNanoDrop(ナノドロップ)により収集したクリアリング溶液において合計タンパク質の量を測定することにより得られ、およびマウスの重量(PARS用)またはクリアリングの前にスライス(PACT用)に対して正規化した。
【0145】
全脳組織形態保存および定量化
【0146】
脳容量でのPARSプロセスおよびRIMSマウントの効果を観察するために、PFA固定成体マウスの脳を、直ちに抽出するか(クリアにされないコントロール)またはPARS処理するかのいずれかをし;そしてこれら二つのグループからの脳を、次の条件のいずれか一つに従って処置した:1日間PBS中でインキュベートし、1週間PBS中でインキュベートし、1日のRIMSにおいてマウントされ、2週間RIMSにおいてマウントされ、または後固定および2週間RIMSにおいてマウントされた。すべての条件からの、クリアにされ、およびクリアにされてない脳は、その後、それらの相対的な寸法変化を推定するために撮影し(図4C)、クリアリングの深さを視覚化するために切片に切断し(図11A)、スライドに取り付けられ、および組織構造における総変化を評価するために共焦点顕微鏡を介して画像化した(例は、主要脳領域、心室および血管系の構造の整合性の形態学的変形)(図11B)。各サンプル(図1C、2E)についてのタンパク質損失の割合は、NanoDrop(ナノドロップ)を介して組織のPACTまたはPARSプロセス後に集収したクリアリング溶液のアリコートのタンパク質濃度を測定することによって求めた。純タンパク質の損失は、次にこの濃度、および処理中に使用されるクリアリング溶液の既知の合計容量に基づいて推定することができる。各サンプルによって失われたタンパク質の量は、マウスの重量(PARS用)またはクリアリング前に組織スライス(PACT用)に対して正規化され、その結果、サンプルを横切る、および組織処理条件にわたるタンパク質の損失を比較することができた。
【0147】
単一分子のRNA FISH
【0148】
組織サンプルを、光真空下(under light vacuum)で1時間脱水することによりアミノシラン処理したカバースリップに対して付着させた。サンプルは、以下のプロトコルに従ってハイブリダイゼーション前に透過処理した(permeabilized):最初に、サンプルを室温で10分間100%エタノールにおいて二回洗浄した。次に、サンプルを室温で10分間95%エタノールにおいて洗浄しました。次いで、サンプルを4℃で2時間70%エタノールにおいてインキュベートした。インキュベーション後、組織を、0.5%の水素化ホウ素ナトリウム(w/v)の70%エタノール溶液に室温で10分間配置した。最後に、組織は、PBSの3回の洗浄により再水和させた。ハイブリダイゼーションは、24のAlexa 594標識したB-アクチンに向かう20マーのオリゴプローブの各々当たり1nMを含む10%ホルムアミド(v/v)、2×SSC、10%硫酸デキストラン(w/v、Sigma D8906)からなるハイブリダイゼーションバッファーにおいて37℃で一晩行った。翌日、サンプルを室温で30分間、30%ホルムアミド、2×SSC中で洗浄し、次いで2×SSCで4回洗浄を続けた。洗浄後、サンプルはSlowfade Gold(スローフェード・ゴールド)+DAPI〔Life(ライフ)S36938〕を有する二つのカバースリップの間にマウントした。サンプルは、Andor Ikon-M(アンドール・イコン-M)カメラおよび追加の1.5×の倍率を有する60X/1.4NA Plan Apo(プラン・アポ)λ対物レンズによるNikon(ニコン)のTi Eclipse(エクリプス)顕微鏡にてイメージ化した。画像は30μmを超える0.5μmのステップサイズを伴うZ-stacks(Z-スタック)として取得した。サンプルは589nm(SDL-589-XXXT)、532nm(SDL-532-200TG)およびShangbhai Dream Laser(シャンハイ・ドリーム・レーザー)製の405nm(SDL-405-LM-030)レーザーによって励起した。
【0149】
smFISHイメージ(図2)は、MATLABにおいて書き込まれた画像解析スクリプトを使用して分析した。サンプルの平均バックグラウンドを決定するために、イメージは、50×50ピクセルのカーネルを用いてメジアンフィルターし(median filtered)、そしてセンター200×200ピクセルのサブ画像の平均ピクセル強度を、画像の平均バックグラウンド値として使用した。smFISHドットは、Gaussian(ガウシアン)フィルタのLaplacian(ラプラシアン)を適用すること、平均バックグラウンド値に基づいて画像を閾値処理すること、および極大値を見つけるために、得られる画像を横に拡がった画像と比較することによって見出した。エラーバーは、得られる測定値の標準偏差を用いて算出した。
【0150】
ヒト組織生検の調製
【0151】
ヒト基底細胞がんの皮膚組織サンプルは、適切なインフォームドコンセントの後およびUCLA IRB#12-01195の承認の下でそれらのがんの切除を受けた患者から取得た。組織サンプルは、診断またはマージン制御目的が必要でない腫瘍の切片から取得し、および元の皮膚がんの大きさに応じて大きさが変動した。生検された腫瘍試料は、固定された組織のためのヒドロゲル支持マトリクスを生成するために、4%アクリルアミド溶液(A4P0)を使用して、げっ歯類の組織について記載されるようにPACTの方法論を利用して処理した。重合した組織ヒドロゲルマトリクスは、その後、37℃の8%SDS中で2-7日間(すなわち、組織の厚さに応じて)受動的にクリアにした。一般的には、厚さ3mmのヒト皮膚切片は、3-4日以内に透明にすることができた。
【0152】
PACT-処理されたサンプルを、抗パン・サイトケラチン(AE1/AE3)Alexa Fluor(アレクサ・フルオロ)488の一次抗体(eBiosciences)の1:100希釈を用いて2日間免疫標識し、次いでPBSにおいて1日の洗浄を続けた。すべての標識および洗浄ステップは室温で実行し、および最終的PACT処理生検サンプルは、RIMSにマウントした。イメージングは、上述のように、20×長い作動距離の対物レンズを有するZeiss(ツァイス)780共焦点顕微鏡にて行った。組織ヒドロゲルのサンプルについてクリアリング時間(8%SDSにおいて2-7日)の範囲をテストするにもかかわらず、皮下層(主に脂肪細胞からなる)は、脂肪細胞でのすべてのパックされた脂質の不完全なミセル溶媒和により、一貫したクリアリングに抵抗した(黄色組織、図8A)。
【0153】
走査電子顕微鏡
【0154】
サンプルは、ESEMモードでのFEI Quanta(クウォンタ)200F環境走査型電子顕微鏡(ESEM)にて画像化した。PACT処理脳組織の薄いスライスを、チャンバーにおいてサンプルホルダ上に配置し、および5kV(キロボルト)の電圧および3または4のスポットサイズを有する7.7-8.3mmの間の作動距離にて、気体の二次電子検出器を使用して、撮像した(GSED)。切断/SEMプロセス中に延伸することが、組織ヒドロゲルハイブリッドの細孔をより大きくすることに注目される。SEMイメージの実際の有効孔径は、ここに提示されているものよりも小さくなければならない。
【0155】
定量法
【0156】
平均最近隣距離(NND):1mm厚の冠状スライスを、DAPIを用いて染色し、w/10×0.45N.A. plan-apo対物レンズを画像化した。24 3μmの厚さの画像は、皮質視床(cortex thalamus)および線条体の異なる領域から採取した。30ピクセルローリングボール半径減算フィルタは、バックグラウンドを除去するために使用した。すべてのイメージは、個別に閾値化され(thresholded)、および二値画像に変換される。バイナリ流域セグメンテーション(binary watershed segmentation)は、一緒にクラスタ化される細胞を分けるために適用した。結果として得られる画像はImage(イメージ)J上での分析粒子オプションを使用して定量化した。各細胞の重心は、測定で確認され、NNDはImageJ上の「NND」プラグインを適用することにより算出した。
【0157】
GFPサイズ定量化:マウスの脳に注入されるAAV9-eGFP IVの1mm(ミリメートル)厚の冠状スライスを、5×0.25N.A. Fluar対物レンズを用いて画像化した。Zスタックの最大投影を定量化のために使用した。各GFP陽性ニューロンのエリアを分離し、およびImageJの上の分析粒子オプションを使用して定量した。
【0158】
双方の最近隣距離測定およびGFPサイズの計算は、三つの脳領域について実行した:皮質、線条体、および視床;クリアにされないで、PARSクリア、およびPARSクリアでその後ポスト固定したマウス脳スライス(データ結果のための代表的な脳スライスのための図11Aおよび図11Bを参照)。すべての計数した細胞の平均細胞サイズおよび平均NNDは、各領域についてコンピュータにより計算し、およびデータを領域間の細胞サイズにおける、またはNNDにおける統計的有意差について分析した。
【0159】
蛍光顕微鏡
【0160】
クリア組織サンプルを一日間RIMS溶液中でインキュベートした。次いで、サンプルを、カバーガラスにより、7.0mmまたは3.0mmのスペーサー〔iSpacer(アイスペーサー)、SunJin Lab Co.(ソンジン・ラボ社)〕、または0.5mmもしくは2.5mmのスペーサー〔Silicone Isolator, Electron Microscopy Sciences(シリコーン・アイソレーター、エレクトロン・マイクロスコピー・サイエンシーズ)、PA〕を用いて、各溶液においてマウントした。カバーガラス付き(Coverslipped)サンプルは室温で貯蔵し、およびイメージングに先立ち遮光した。注目すべきは、ほとんどの蛍光イメージおよび初期サンプルの視覚化は、慣習的な顕微鏡(Zeiss LSM 780)にて、いずれかのFluar 5×/0.25 M27ドライ対物レンズ(作動距離12.5ミリメートル)、Plan-Apochromat(プラン-アポクロマート)10×/0.45 M27空気対物レンズ(作動距離2.0ミリメートル)、LD SC Plan-Apochromat 20x/1.0 Corr(コアー)M32 85mmスケール浸漬対物レンズ(作動距離5.6ミリメートル)、またはLD LCIプラン-アポクロマート25x/0.8 Imm Corr(イム・コアー)DIC M27マルチ浸漬対物レンズ(作動距離0.57ミリメートル)で実行した。唯一の例外は、Andor Ikon-M(アンドール・イコン-M)カメラおよび60X/1.4NA Plan Apo l対物レンズを有するNikon(ニコン)Ti Eclipseの顕微鏡を使用するsmFISH実験についての、およびサンプルがLeica(ライカ)HC FLUOTAR L 25x/1.00 IMM CORR対物レンズ(作動距離6.0ミリメートル)を有するLeica(ライカ)TCS SP8二光子顕微鏡を用いるLeica Microsystems(ライカ・マイクロシステムズ)によって撮像される、図3Cに提示されるイメージの取得のためのものであった。イメージ再構成は、Imaris(イマリス)イメージングソフトウェア〔Bitplane(ビットプレーン)〕を用いて実行した。イメージング後、サンプルを貯蔵のため、室温でRIMSに包埋した。
【0161】
すべての共焦点イメージングのために使用する対物レンズの概要:
【0162】
図1:(F左)Fluar 5×/0.25 M27ドライ対物レンズ;(F右;G;H;K)LD LCIプラン-アポクロマート25x/0.8イム・コアーDIC M27マルチ浸漬対物レンズ;(I、J)LD SCプラン-アポクロマート20x/1.0コアーM32 85ミリメートルスケール浸漬対物レンズ。(L)ツァイス・プラン-アポクロマート10x/0.45エアー対物レンズ。
【0163】
図2:(A-B)サンプルは、アンドール・イコン-Mカメラおよび追加の1.5xの倍率を有する60X/1.4NAプラン・アポl対物レンズを用いる、Nikon(ニコン)Ti Eclipse(エクリプス)顕微鏡で撮像された。イメージは、30μmにわたり0.5μmのステップサイズを伴うZスタックとして取得された。サンプルは640nmのCoherent Cube(コヒーレント・キューブ)、および532nm(SDL-532-200TG)および405nm(SDL-405-LM-030)レーザーによって励起した。
【0164】
図3:(C)Leica(ライカ)HC FLUOTAR L 25x/1.00 IMM CORR対物レンズ。図5:(A)Fluar 5x/0.25 M27ドライ対物レンズ;(B)ライカHC FLUOTAR L 25x/1.00 IMM CORR対物レンズ6.0ミリメートルの作動距離;(C)Top(トップ):Fluar 5x/0.25 M27ドライ対物レンズおよびBottom(ボトム)(挿入):LD LCIプラン-アポクロマート25x/0.8イム・コアーDIC M27マルチ浸漬対物レンズ;(D)ライカHC FLUOTAR L 25x/1.00 IMM CORR対物レンズ;(E)LD LCIプラン-アポクロマート25x/0.8イム・コアーDIC M27マルチ浸漬対物レンズ。図6:(A)10×0.45 N.A.プラン-アポクロマートを有するツァイスLSM 780共焦点顕微鏡;(B)LD SCプラン-アポクロマート20x/1.0コアーM32 85ミリメートルスケール浸漬対物レンズ(作動距離5.6ミリメートル、ツァイス)。
【0165】
図8:(B-C)ツァイス5x 0.25 N.A Fluar対物レンズおよびLD LCIプラン-アポクロマート25x/0.8 N.A.マルチ浸漬対物レンズを有するツァイス780共焦点顕微鏡。(D)smFISHサンプルは、アンドール・イコン-Mカメラおよび追加の1.5xの倍率を有する60X/1.4NAプラン・アポl対物レンズを用い、ニコンTiエクリプス顕微鏡で画像化した。
【0166】
図9:(A)LD LCIプラン-アポクロマート25x/0.8イム・コアーDIC M27マルチ浸漬対物レンズ。(E)Fluar 5x/0.25 M27ドライ対物レンズ。
【0167】
図10:(B)左:LD LCIプラン-アポクロマート25x/0.8イム・コアーDIC M27マルチ浸漬対物レンズ;右:10×0.45 N.A.プラン-アポクロマートを有するツァイスLSM 780共焦点顕微鏡。
【0168】
図12:10x 0.45 N.A.プラン-アポクロマートを有するツァイスLSM 780共焦点顕微鏡。
【0169】
上述の種々の方法および技術は、本発明を遂行するための多数の方法を提供する。もちろん、必ずしも説明したすべての目的または利点がここに記載の任意の特定の実施態様に従って達成できるわけではないことを理解すべきである。したがって、たとえば、この技術での熟練した者は、本方法が、ここに教示され、または示唆されるように、必ずしも他の目的または利点を達成することなく、ここに教示されるような利点の一つの利点またはグループを達成または最適化する様式で実行されることができることを認識するであろう。様々な選択肢がここに言及される。いくらかの好ましい実施態様は、特に、一つの、別の、またはいくつかの特色を含む一方、他のものは具体的に、一つの、別の、またはいくつかの特色を除外し、その一方、さらに他には、一つの、別の、またはいくつかの有利な特色を含むことによって特定の特色を軽減すると理解されるべきである。
【0170】
さらに、熟練者は異なる実施態様から様々な特色の適用可能性を認識する。同様に、上述されたように、様々な要素、特色、およびステップ、ならびに各々のそのような要素、特色またはステップについての他の知られた等価物は、ここに記載される原理に従って方法を実行するために、様々な組合せにおいて、この技術における通常の技量の者によって使用することができる。様々な要素、特色、およびステップの中で、いくらかのものは、多様な実施態様において、具体的に含まれ、および他のものは具体的に除外される。
【0171】
本出願は、一定の実施態様および例との関係で開示されるが、本出願の実施態様が、特に開示された実施形態を越えて他の代替実施態様および/または使用およびそれらの修飾および等価物にまで拡がることは、この技術における熟練した者によって理解されるであろう。
【0172】
いくらかの実施態様において、用語「a(一の、不定冠詞)」および「an(前記“a”の母音の前形態)」および「the(その、定冠詞)」および本出願の特定の実施態様を説明する文脈において使用される類似の参照は(特に、以下の一定の請求の範囲との関係において)単数および複数の双方をカバーすると解釈することができる。ここでは、値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入るそれぞれ別個の値に個々に言及する簡単な方法として役立つことを意図する。ここにおいて他に示されない限り、各個別の値は、それが個々にこの中に規定されているかのように、本明細書中に組み込まれる。そうでなければここに示され、またはそうでなければ文脈によって明らかに矛盾するものでない限り、ここに記載のすべての方法は、任意の適切な順序で実行することができる。ここでの一定の実施態様に関して提供される、任意の、およびすべての例の使用、または例示的な言語(たとえば、「などのような」)は、より一層良好にアプリケーションを照明するようにだけ単に意図され、および他の方法でクレームする本出願の範囲に制限をもたらすものではない。本明細書中のいかなる用語も、本出願の実践に不可欠な任意の非請求的要素(any non-claimed element)を示すものとして解釈されるべきではない。
【0173】
本出願の好ましい実施態様は、本出願を遂行するために本発明者に知られる最良の形態を含め、ここに記載される。それらの好適な実施態様の変形(バリエーション)は、前述の説明を読めばこの技術において熟練した者に明らかになるであろう。熟練者が適宜そのような変形を採用することができることが考えられ、本適用(アプリケーション)が具体的にここに記載される以外の方法で実践することができる。したがって、本出願の多くの実施態様は、適用法令により許可されるような、添付の請求の範囲に規定する主題のすべての修飾および均等物を含む。また、すべての可能な変形におけるされる要素の任意の組合せは、さもなければここに示され、またはそうでなければ文脈によって明らかに矛盾しない限り、本出願によって包含される。
【0174】
すべての特許、特許出願、特許出願の刊行物、および他の材料で、たとえば、ここにおいて参照される、そのような記事、書籍、仕様書、出版物、文書、物事、および/またはその種の他のものなどは、この参照によりここにその全体が、すべての目的で組み込まれるが、同じもの、または任意の同じもので、それが提示書類と矛盾するか、または抵触するもの、または任意の同じもので、目下の、またはその後に提示書類と関係する請求の範囲の最も広い範囲に関して制限する影響をもつことがあるものと関連付けられる任意の訴追ファイル経過は除かれる。一例として、組み込まれた材料のいずれかと関連付けられる説明、定義、および/または用語の使用および提示書類に関連したものの間の任意の矛盾または抵触が存在するなら、提示書類における説明、定義、および/または用語の使用が優先すべきである。
【0175】
最後に、ここに開示される適用の実施態様が、適用の実施態様の原理の例示であることを理解すべきである。採用することができる他の修飾は、本出願の範囲の内にあることができる。それ故、一例として、しかし制限されないが、本出願の実施態様の代わりの構成は、ここでの教示に従って利用することができる。したがって、本出願の実施態様は、厳密に図示して説明したようなものに制限されない。
【0176】
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