(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-516886(P2018-516886A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(54)【発明の名称】カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブ、その製造方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07F 17/02 20060101AFI20180601BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20180601BHJP
【FI】
C07F17/02CSP
G01N21/64 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-558380(P2017-558380)
(86)(22)【出願日】2016年4月1日
(85)【翻訳文提出日】2017年11月7日
(86)【国際出願番号】CN2016077950
(87)【国際公開番号】WO2017036133
(87)【国際公開日】20170309
(31)【優先権主張番号】201510561049.9
(32)【優先日】2015年9月2日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】周 宇涵
(72)【発明者】
【氏名】曲 景平
(72)【発明者】
【氏名】董 暁亮
【テーマコード(参考)】
2G043
4H050
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA06
2G043CA03
2G043EA01
2G043KA02
2G043KA03
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB92
4H050AC40
4H050BB15
4H050BB21
4H050BC10
4H050BC19
4H050WB11
4H050WB13
4H050WB15
(57)【要約】
本発明は式Iの構造を有するカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブに関する。その製造方法は、アントラセニルメタンアミンとp−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートとの付加反応を通じて置換安息香酸メチルを得た後、加水分解により相応のカルボン酸を得、得られたカルボン酸とアルカリとを反応させてカルボン酸塩を得、その後、二核鉄前駆体と配位反応を行って蛍光プローブを得る。従来の技術に比べ、本願は、初めて生体酵素の中心構造と似ているカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター金属錯体を提供する。該金属錯体は蛍光プローブとして、フッ素イオンに対する検出選択性がよく、蛍光滴定実験操作が簡単であり、蛍光変化が敏感である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有し、
【化1】
その中、Rはメチル基又はエチル基である、ことを特徴とするカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブ。
【請求項2】
アントラセン−9−メタンアミンとp−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートとを、反応温度0〜40℃下で1〜48時間反応させ、付加生成物を得る付加反応ステップと、
付加反応ステップから得られた付加生成物とアルカリ性の水溶液とを混合し、0〜100℃下で1〜24時間反応させた後、酸性の水溶液でpH6〜7に調整して、加水分解生成物を得る加水分解反応ステップと、
前記加水分解反応ステップから得られた加水分解生成物とアルカリとを、0〜80℃下で1〜24時間反応させ、錯体を得る中和反応ステップと、
前記中和反応ステップから得られた錯体と二核鉄前駆体とを、0〜80℃下で1〜48時間反応させる配位反応ステップと、を含み、
その中、前記二核鉄前駆体は[Cp*Fe(μ−SR)2(MeCN)2FeCp*][PF6]2であり、Cp*はペンタメチルシクロペンタジエニルであり、Rはメチル基或いはエチル基である、ことを特徴とする請求項1に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項3】
前記付加反応ステップにおいて、アントラセン−9−メタンアミンとメトキシカルボニルフェニルイソシアネートとのモル比は1:1〜2:1であり、反応溶媒はジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン或いはエチルエーテルから選ばれる少なくとも一種である、ことを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項4】
前記加水分解反応ステップにおいて、アルカリ性の水溶液の濃度は1mol/L〜5mol/Lであり、使用したアルカリ性の水溶液の体積とメトキシカルボニルフェニルイソシアネートの質量との比率は5:1〜50:1mL/gである、ことを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項5】
前記中和反応ステップにおいて、アルカリはカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、トリエチルアミン、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド或いはナトリウムエトキシドから選ばれる少なくとも一種であり、前記アルカリと加水分解生成物との重量比は1:3〜2:3である、ことを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項6】
前記配位反応ステップにおいて、二核鉄前駆体と配位子とのモル比は1:1〜1:2であり、配位反応の溶媒はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル或いはアセトンから選ばれる少なくとも一種である、ことを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブのフッ素イオン検出においての用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一類のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブ、その製造方法及びその用途に関し、ファインケミストリー分野におけるイオンの検出に属する。
【背景技術】
【0002】
生体は様々な種類の酵素を有しており、その中、中心構造がカルボン酸イオン架橋の二核鉄であるいくつかの生体酵素がある。例えば、リボヌクレオチド還元酵素(RNR)と可溶性メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)等があり、それら酵素は生体内の一部の重要な基質の転化を促進しており、生体内において重要な役割を果している。そこで、それら生体酵素の構造と機能をシミュレーションすることは挑戦しがいのある仕事であるとともに、この仕事は重要な意味がある(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0003】
陰イオンは生体内に広く存在してあり、重要な役割を果している。その中、フッ素イオンは生体において不可欠な微量元素の一つである。フッ素は歯や骨格の成分において不可欠な要素であり、適当量のフッ素イオンは虫歯の発生を有効的に予防できる。そのため、歯磨き粉には微量のフッ素イオンが含まれている。しかし、フッ素イオンを大量に摂取すると、オステオポロシス、尿石症等になる可能性があり、重症であれば、児童の知能の発達や生理系に影響を及ぼす可能性がある。日常生活用の水には、すべて微量のフッ素イオンが含まれている。このようにフッ素イオンは重要であるため、フッ素イオンを検出するのは重要で肝要なことである(非特許文献3〜5)。
【0004】
フッ素イオンを検出する方法として、電気化学法、
19F−NMR分析法、UV分析法及び蛍光分析法があり、その中、前の三種の方法は、それぞれ、例えば、設備が高価であり、リアルタイムの検出ができない等の局限性がある。それに比べて、蛍光分析法は高感度、リアルタイム検出、超低濃度検出及び細胞内検出等の利点を有しているので、近年において、蛍光法を用いたフッ素イオン検出法は、研究者の関心を引き受けている。
【0005】
目前、金属錯体蛍光プローブを利用いたフッ素イオンの検出に対する研究報告はあまり無く、これら報告において、中心金属はルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ユウロピウム(Eu)及びアイロン(Fe)等であり、蛍光団或いは発色団はフェナントロリンとナフタレンが多く(非特許文献6〜10)、カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスターを用いたフッ素イオン蛍光プローブに関する報告はまだ無い。そのため、これらフッ素イオン蛍光プローブに対する研究は、進歩性及び価値がある仕事である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Acc.Chem.Res.2011,44,280−288
【非特許文献2】Coord.Chem.Rev.2013,257,3−26
【非特許文献3】Chem.Rev.2014,114,5511−5571
【非特許文献4】Chem.Soc.Rev.2010,39,3746−3771
【非特許文献5】Chem.Commun.2009,2809−2829
【非特許文献6】Dalton Trans.2009,12,2096−2102
【非特許文献7】Dalton Trans,2012,41,4484−4496
【非特許文献8】Appl.Organometal.Chem.,2008,22,258−261
【非特許文献9】Analyst,2013,138,278−283
【非特許文献10】Polym.Chem.,2012,3,2640−2648
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は優良機能を有する一類の新規のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスターフッ素イオン蛍光プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスターフッ素イオン蛍光プローブは式Iの構造を有し、
【化1】
その中、Rはメチル基又はエチル基である。
【0009】
本発明は更にカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法を提供し、該方法は具体的に、
アントラセン−9−メタンアミンとp−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートとを、反応温度0〜40℃下で1〜48時間反応させ、付加生成物を得る付加反応ステップと、
付加反応ステップから得られた付加生成物とアルカリ性の水溶液とを混合し、0〜100℃下で1〜24時間反応させた後、酸性の水溶液でpH6〜7に調整して、加水分解生成物を得る加水分解反応ステップと、
前記加水分解反応ステップから得られた加水分解生成物とアルカリとを、0〜80℃下で1〜24時間反応させ、錯体を得る中和反応ステップと、
前記中和反応ステップから得られた錯体と二核鉄前駆体とを、0〜80℃下で1〜48時間反応させる配位反応ステップと、を含み、
その中、前記二核鉄前駆体は[Cp
*Fe(μ−SR)
2(MeCN)
2FeCp
*][PF
6]
2であり、Cp
*はペンタメチルシクロペンタジエニルであり、Rはメチル基(4a)或いはエチル基(4b)である。
【0010】
二核鉄前駆体4aと4bの製造方法は、文献J.Am.Chem.Soc.2011,133,1147−1149に記載の通りである。
【0011】
カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法において、前記付加反応ステップにおいて、アントラセン−9−メタンアミンとメトキシカルボニルフェニルイソシアネートとのモル比は1:1〜2:1であり、反応溶媒はジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン或いはエチルエーテルから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法において、前記加水分解反応ステップにおいて、使用したアルカリ性の水溶液の体積とメトキシカルボニルフェニルイソシアネートの質量との比率は5:1〜50:1mL/gであることが好ましい。
【0013】
カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法において、前記中和反応ステップにおいて、アルカリはカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、トリエチルアミン、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド或いはナトリウムエトキシドから選ばれる少なくとも一種であり、前記アルカリと加水分解生成物とのモル比は1:1〜2:1であることが好ましい。
【0014】
カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法において、前記配位反応ステップにおいて、二核鉄前駆体と配位子とのモル比は1:1〜1:2であり、配位反応の溶媒はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル或いはアセトンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0015】
本発明は更にカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブのフッ素イオン検出においての用途を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提供する蛍光プローブは、快速で高選択性にフッ素イオンに対する蛍光増強検出を実現することができ、従来の技術に比べて、以下の利点がある。
(1)本発明は初めて生体酵素の中心構造に似ているカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター金属錯体を提供した。
(2)本発明の金属錯体は蛍光プローブとして、フッ素イオンに対する検出選択性がよく、蛍光滴定実験操作が簡単で、蛍光変化が敏感である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】蛍光プローブ5aと異なる量のF−が作用する時の蛍光スペクトルを示す。
【図2】蛍光プローブ5bと異なる量のF−が作用する時の蛍光スペクトルを示す。
【図3】蛍光プローブ5aと異なる陰イオンが作用する時の蛍光スペクトルを示す。
【図4】蛍光プローブ5bと異なる陰イオンが作用する時の蛍光スペクトルを示す。
【図5】蛍光プローブ5aの単結晶構造図であり、その中、5aの結合距離(Å)、結合角と二面角(°)は以下の通りである。Fe(1)−Fe(2)2.5996(10)、Fe(1)−S(1)2.2031(15)、Fe(1)−S(2)2.2115(15)、Fe(1)−O(1)1.971(3)、Fe(2)−S(1)2.2025(16)、Fe(2)−S(2)2.2085(15)、Fe(2)−O(2)1.972(3)、Fe(2)−S(1)−Fe(1)53.83(4)、Fe(2)−S(2)−Fe(1)53.92(4)、C(25)−O(2)−Fe(2)122.7(3)、C(25)−O(1)−Fe(1)122.7(3)、O(1)−Fe(1)−Fe(2)84.85(10)、O(1)−Fe(1)−S(2)89.81(11)、O(1)−Fe(1)−S(1)90.57(11)、O(2)−Fe(2)−Fe(1)84.91(10)、O(2)−Fe(2)−S(2)89.7(1)、S(1)−Fe(1)−S(2)107.37(6)、Fe(2)−S(1)−Fe(1)72.32(5)、Fe(2)−S(2)−Fe(1)72.05(5)、S(2)−Fe(1)−Fe(2)53.92(4)、S(2)−Fe(2)−Fe(1)54.03(4)、O(2)−C(25)−O(1)124.7(4)、Cp*(1)−Cp*(2)55.94(15)、S(1)Fe(2)Fe(1)−Fe(2)O(2)O(1)Fe(1)86.7(7)、O(2)C(25)O(1)−Fe(2)O(2)O(1)Fe(1)4.4(4)、C(34)C(35)C(40)C(41)C(42)C(47)−O(1)C(25)O(2)70.3(4)。
【図6】蛍光プローブ5bの単結晶構造図であり、その中、5bの結合距離(Å)、結合角と二面角(°)は以下の通りである。Fe(1)−Fe(2)2.6208(8)、Fe(1)−S(1)2.2067(13)、Fe(1)−S(2)2.2097(13)、Fe(1)−O(1)1.972(3)、Fe(2)−S(1)2.2008(12)、Fe(2)−S(2)2.1976(12)、Fe(2)−O(2)1.976(3)、O(1)−C(25)1.266(5)、O(2)−C(25)1.265(5)、O(3)−C(32)1.205(5)、N(1)−C(32)1.390(5)、N(1)−C(29)1.390(5)、N(2)−C(32)1.356(5)、N(2)−C(33)1.442(5)、Fe(2)−S(1)−Fe(1)72.39(4)、Fe(2)−S(2)−Fe(1)、C(25)−O(2)−Fe(2)123.0(2)、C(25)−O(1)−Fe(1)122.7(2)、O(1)−Fe(1)−Fe(2)84.97(8)、O(1)−Fe(1)−S(2)89.78(8)、O(1)−Fe(1)−S(1)90.17(8)、O(2)−Fe(2)−Fe(1)84.57(8)、O(2)−Fe(2)−S(1)89.52(9)、O(2)−Fe(2)−S(2)90.02(9)、S(1)−Fe(1)−Fe(2)53.70(3)、S(1)−Fe(2)−Fe(1)53.91(3)、S(1)−Fe(1)−S(2)106.96(5)、Fe(2)−S(1)−Fe(1)72.39(4)、Fe(2)−S(2)−Fe(1)72.40(4)、S(2)−Fe(1)−Fe(2)53.59(3)、S(2)−Fe(2)−Fe(1)54.02(3)、O(2)−C(25)−O(1)124.8(3)、Cp*(1)−Cp*(2)54.03(12)、S(1)Fe(2)Fe(1)−Fe(2)O(2)O(1)Fe(1)90.0(7)、O(2)C(25)O(1)−Fe(2)O(2)O(1)Fe(1)1.2(4)、C(34)C(35)C(40)C(41)C(42)C(47)−O(1)C(25)O(2)84.91(3)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下実施例に基づき、本発明について詳しく説明するが、以下の実施例は本発明の好ましい実施例であるだけで、本発明の保護範囲を限定するものではない。いずれの当業者も、本発明が開示した範囲内において、本発明の技術方案及び発明の構想に基づいて行った等しい切替又は改変は本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【0019】
カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法における反応機構は以下の通りである。
【0021】
(1)付加反応
アントラセン−9−メタンアミンとp−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートとを付加反応させることにより、相応のカルボン酸エステルを得る。
【0022】
(2)加水分解反応
ステップ(1)から得られた生成物溶液と水とを混合し、加水分解反応を行うことにより、中間体3を得る。
【0023】
(3)中和反応
ステップ(2)から得られた中間体3とアルカリとを反応させることにより、カルボン酸塩を得る。
【0024】
(4)配位反応
ステップ(3)から得られたカルボン酸塩と二核鉄前駆体4a又は4bとを配位反応させることにより、蛍光プローブ5a又は5bを得る。
【0025】
(実施例1)
カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブ5aの合成:
0.86gのp−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートを1gのアントラセン−9−メタンアミンが含まれている180mLのジクロロメタン溶液中に加え、室温下で24時間反応させてから、ろ過し、10mLのクロロホルムでろ過ケークを洗浄した後、ろ過ケークを10mLのエタノールに溶解させる。その溶解液に2Mの水酸化ナトリウム溶液10mLを加え、75℃まで昇温させてから12時間反応させる。その後、反応液を3Mの塩酸でpH6になるように調整した後、5mLの水とエタノールでそれぞれろ過ケークを洗浄する。最後に、ジメチルスルホキシドーアセトンの混合溶媒システムにおいて再結晶させて、加水分解産物3(0.92g、52%)を得る。
【0026】
1HNMR(400MHz,DMSO−d
6):δ11.24(br,1H)、8.99(s,1H)、8.61(br,1H)、8.54(d,J
H−H=8Hz,2H)、8.11(br,2H)、7.72(br,2H)、7.54−7.61(m,4H)、7.35(br,3H)、5.31(br,2H).
13CNMR(100MHz,DMSO−D
6):δ155.08、141.50、131.08、130.97、129.78、128.83、127.11、126.22、125.17、124.60、115.93,35.17。
【0027】
ESI−HRMS(m/z):[M−H]
−369.1317;calcd.value for C
23H
18N
2O
3:369.1326。
【0028】
22mgのカリウムt−ブトキシドを72mgの加水分解産物3が含まれている30mLのテトラヒドロフラン溶液中に加え、50℃で2時間反応させた後、減圧下で溶媒を除去する。アルゴンガスの保護下において、30mLのアセトニトリルと150mgの二核鉄前駆体4aを加え、室温下で48時間反応させる。反応液をろ過し、減圧下においてアセトニトリルを除去し、3mLのジクロロメタンで残留物を溶解した後、ろ過し、減圧下においてジクロロメタンを除去する。その残留物を3mLのテトラヒドロフランで溶解した後、ろ過し、減圧下においてテトラヒドロフランを除去する。最後に、それぞれ2mLのエチルエーテルで残留物を2回洗浄して、パステルグリーン固体5a(108mg、60%)を得る。
【0029】
1HNMR(400MHz,CD
2Cl
2):δ8.43(s,1H)、8.32(br,2H)、7.99(br,2H)、7.44−7.50(m,4H)、7.13(br,2H)、6.95(br,2H)、6.72(s,1H)、5.25(br,2H)、1.79(s,6H)、1.43(s,30H)。IR(KBr,cm
−1):3419(m)、2921(s)、1695(m)、1597(m)、1550(m)、1516(s)、1397(s)、1375(m)、1318(w)、1216(w)、1178(m)、1018(m)、955(w)、842(s)、778(m)、735(m)。
【0030】
ESI−HRMS(m/z):[M−PF
6]
+845.2170;calcd.value for C
45H
53Fe
2N
2O
3S
2:845.2196。
【0031】
(実施例2)
カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブ5bの合成:
二核鉄前駆体4bを用い、その他のステップは実施例1と同じく操作して5b(105mg、58%)を得る。
1HNMR(400MHz,CD
2Cl
2):δ8.44(s,1H),8.33(d,J
H−H=8Hz,2H),8.01(d,J
H−H=8Hz,2H),7.46−7.51(m,4H),7.14(d,J
H−H=8Hz,2H),6.93(d,J
H−H=8Hz,2H),6.73(s、1H),5.33(br,2H),5.26(br,1H),1.93(t,J
H−H=8Hz,6H),1.63(q,J
H−H=8Hz,4H),1.46(s,30H).IR(KBr,cm
−1):3421(m),3056(w),2981(m),2925(s),1698(s),1597(s),1519(s),1448(w),1403(s),1375(m),1319(m),1231(m),1178(m),1073(w),1018(s),845(s),778(m),736(m)。
【0032】
ESI−HRMS(m/z):[M−PF
6]
+873.2506;calcd.value for C
47H
57Fe
2N
2O
3S
2:873.2509。
【0033】
(実施例3)
フッ素イオンの量が蛍光プローブ5aの蛍光発光に与える影響:
毎回3mLの濃度が10
−5mol/Lである5a(実施例1において合成)のテトラヒドロフラン溶液を取ってキュベットに入れた後、それぞれ0.2当量、0.4当量、0.6当量、0.8当量、1.0当量、1.2当量、1.4当量、1.6当量、1.8当量、2.0当量、2.2当量、2.4当量、2.6当量、2.8当量及び3.0当量のフッ化テトラブチルアンモニウムの水溶液を加え、その蛍光発光スペクトルを測定し、図1に示す結果を得た。図1に示すように、フッ素イオンの量が増加することに従って、システムの蛍光が顕著に増加された。
【0034】
同じ方法で、フッ素イオンの量が蛍光プローブ5bの蛍光発光に与える影響を調べており、その結果は図2に示す。
【0035】
(実施例4)
異なる陰イオンが蛍光プローブ5aの蛍光発光に与える影響:
毎回3mLの濃度が10
−5mol/Lである5a(実施例1において合成)のテトラヒドロフラン溶液を取ってキュベットに入れた後、3当量のF
−、Br
−、Cl
−、H
2PO
4−、HSO
4−、Ac
−、NO
3−及びI
−をそれぞれ加え、370nmの励起光の作用下において、その蛍光発光スペクトルを測定し、図3に示す結果を得た。図3に示すように、システムは選択的にフッ素イオンを識別できた。
【0036】
同じ方法で、異なる陰イオンが蛍光プローブ5bの蛍光発光に与える影響を調べており、その結果は図4に示す。
【0037】
(付記)
(付記1)
式Iの構造を有し、
【化3】
その中、Rはメチル基又はエチル基である、ことを特徴とするカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブ。
【0038】
(付記2)
アントラセン−9−メタンアミンとp−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートとを、反応温度0〜40℃下で1〜48時間反応させ、付加生成物を得る付加反応ステップと、
付加反応ステップから得られた付加生成物とアルカリ性の水溶液とを混合し、0〜100℃下で1〜24時間反応させた後、酸性の水溶液でpH6〜7に調整して、加水分解生成物を得る加水分解反応ステップと、
前記加水分解反応ステップから得られた加水分解生成物とアルカリとを、0〜80℃下で1〜24時間反応させ、錯体を得る中和反応ステップと、
前記中和反応ステップから得られた錯体と二核鉄前駆体とを、0〜80℃下で1〜48時間反応させる配位反応ステップと、を含み、
その中、前記二核鉄前駆体は[Cp
*Fe(μ−SR)
2(MeCN)
2FeCp
*][PF
6]
2であり、Cp
*はペンタメチルシクロペンタジエニルであり、Rはメチル基或いはエチル基である、ことを特徴とする付記1に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【0039】
(付記3)
前記付加反応ステップにおいて、アントラセン−9−メタンアミンとメトキシカルボニルフェニルイソシアネートとのモル比は1:1〜2:1であり、反応溶媒はジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン或いはエチルエーテルから選ばれる少なくとも一種である、ことを特徴とする付記2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【0040】
(付記4)
前記加水分解反応ステップにおいて、アルカリ性の水溶液の濃度は1mol/L〜5mol/Lであり、使用したアルカリ性の水溶液の体積とメトキシカルボニルフェニルイソシアネートの質量との比率は5:1〜50:1mL/gである、ことを特徴とする付記2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【0041】
(付記5)
前記中和反応ステップにおいて、アルカリはカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、トリエチルアミン、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド或いはナトリウムエトキシドから選ばれる少なくとも一種であり、前記アルカリと加水分解生成物との重量比は1:3〜2:3である、ことを特徴とする付記2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【0042】
(付記6)
前記配位反応ステップにおいて、二核鉄前駆体と配位子とのモル比は1:1〜1:2であり、配位反応の溶媒はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル或いはアセトンから選ばれる少なくとも一種である、ことを特徴とする付記2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【0043】
(付記7)
付記1に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブのフッ素イオン検出においての用途。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【手続補正書】
【提出日】2017年11月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法において、前記付加反応ステップにおいて、アントラセン−9−メタンアミンと
p−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートとのモル比は1:1〜2:1であり、反応溶媒はジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン或いはエチルエーテルから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
カルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法において、前記加水分解反応ステップにおいて、
アルカリ性の水溶液の濃度は1mol/L〜5mol/Lであり、使用したアルカリ性の水溶液の体積と
p−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートの質量との比率は5:1〜50:1mL/gであることが好ましい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
(2)加水分解反応
ステップ(1)から得られた生成物溶液と
アルカリ水溶液とを混合し、加水分解反応を行うことにより、
加水分解産物3を得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
(3)中和反応
ステップ(2)から得られた
加水分解産物3とアルカリとを反応させることにより、カルボン酸塩を得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有し、
【化1】
その中、Rはメチル基又はエチル基である、ことを特徴とするカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブ。
【請求項2】
アントラセン−9−メタンアミンとp−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートとを、反応温度0〜40℃下で1〜48時間反応させ、付加生成物を得る付加反応ステップと、
付加反応ステップから得られた付加生成物とアルカリ性の水溶液とを混合し、0〜100℃下で1〜24時間反応させた後、酸性の水溶液でpH6〜7に調整して、加水分解生成物を得る加水分解反応ステップと、
前記加水分解反応ステップから得られた加水分解生成物とアルカリとを、0〜80℃下で1〜24時間反応させ、錯体を得る中和反応ステップと、
前記中和反応ステップから得られた錯体と二核鉄前駆体とを、0〜80℃下で1〜48時間反応させる配位反応ステップと、を含み、
その中、前記二核鉄前駆体は[Cp*Fe(μ−SR)2(MeCN)2FeCp*][PF6]2であり、Cp*はペンタメチルシクロペンタジエニルであり、Rはメチル基或いはエチル基である、ことを特徴とする請求項1に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項3】
前記付加反応ステップにおいて、アントラセン−9−メタンアミンとp−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートとのモル比は1:1〜2:1であり、反応溶媒はジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン或いはエチルエーテルから選ばれる少なくとも一種である、ことを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項4】
前記加水分解反応ステップにおいて、アルカリ性の水溶液の濃度は1mol/L〜5mol/Lであり、使用したアルカリ性の水溶液の体積とp−メトキシカルボニルフェニルイソシアネートの質量との比率は5:1〜50:1mL/gである、ことを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項5】
前記中和反応ステップにおいて、アルカリはカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、トリエチルアミン、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド或いはナトリウムエトキシドから選ばれる少なくとも一種であり、前記アルカリと加水分解生成物とのモル比は1:1〜2:1である、ことを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項6】
前記配位反応ステップにおいて、二核鉄前駆体と配位子とのモル比は1:1〜1:2であり、配位反応の溶媒はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル或いはアセトンから選ばれる少なくとも一種である、ことを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のカルボン酸イオン架橋の二核鉄硫黄クラスター蛍光プローブのフッ素イオン検出においての用途。
【国際調査報告】