(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-536143(P2018-536143A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】低オフセットグラフェンホールセンサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/07 20060101AFI20181109BHJP
H01L 43/06 20060101ALI20181109BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20181109BHJP
【FI】
G01R33/07
H01L43/06 S
H01L43/06 Z
G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-512142(P2018-512142)
(86)(22)【出願日】2016年9月6日
(85)【翻訳文提出日】2018年5月2日
(86)【国際出願番号】US2016050414
(87)【国際公開番号】WO2017041101
(87)【国際公開日】20170309
(31)【優先権主張番号】62/213,862
(32)【優先日】2015年9月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/936,631
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】アーラップ ポレイ
(72)【発明者】
【氏名】アルチャナ ヴェヌゴパル
(72)【発明者】
【氏名】ルイジ コロンボ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート アール ドーリング
【テーマコード(参考)】
2G017
2G025
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AB09
2G017AD52
2G017BA05
2G017CB02
2G017CB18
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2G025AC01
5F092AA14
5F092AB01
5F092AC02
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5F092BA02
5F092BA22
5F092BA25
5F092BA32
5F092DA03
(57)【要約】
説明される例において、グラフェンホールセンサ(GHS)(1101)が、GHSにおいて第1の導電状態を生じさせる第1の電圧と、GHSにおいてほぼ同じ第2の導電状態を生じさせる第2の電圧との間で変調周波数で交番する変調ゲートバイアス信号(1112)を有する。バイアス電流(1110)が、GHSの第1の軸を介して提供され得る。変調ホール電圧及びオフセット電圧を含む結果の出力電圧信号(VH−P、VH−N)が、ホールセンサの第2の軸を介して提供され得、ホール電圧は変調周波数で変調されている。オフセット電圧を含まないホール電圧の振幅(1131)が、結果の出力電圧信号から抽出され得る(1120)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンホールセンサ(GHS)を動作させるための方法であって、
変調されたゲートバイアス信号を前記GHSのゲートに提供すること、
前記GHSの第1の軸を介してバイアス電流を提供すること、
変調されたホール電圧及びオフセット電圧を含む結果の出力電圧信号を前記ホールセンサの第2の軸を介して得ること、及び
前記オフセット電圧を含まない前記ホール電圧の振幅を抽出すること、
を含み、
前記変調されたゲートバイアス信号が、前記GHSにおいて第1の導電状態を生じさせる第1電圧と、前記GHSにおいてほぼ同じ第2の導電状態を生じさせる第2電圧との間で変調周波数で交番し、
前記ホール電圧が前記変調周波数で変調される、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記ホール電圧の前記振幅を抽出することが、前記出力電圧信号の同期復調によって実施される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記ホール電圧の前記振幅を抽出することが、前記出力電圧信号をバンドパスフィルタリングすることによって実施される、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記ホール電圧の前記振幅を抽出することが、高速フーリエ変換を用いることによって実施される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記変調されたゲートバイアス信号が、10〜100MHzの範囲の周波数で変調される、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記GHSが頂部ゲート及びバックゲートを有し、前記変調されたゲート信号が前記頂部ゲートに提供され、適応制御された電圧が前記バックゲートに印加される、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記ホールセンサがバックゲートを有し、前記変調されたゲート信号が前記バックゲートに提供される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記変調されたゲートバイアス信号が、負の電圧振幅VG1と正の電圧振幅VG2との間で変調されて、前記GHSを2つの等しい導電状態間で切り替えさせ、その結果、各状態におけるオフセット電圧が等しくなる、方法。
【請求項9】
ホール効果センサシステムであって、
グラフェン層と、誘電体によって前記グラフェン層から離間される伝導ゲートとを有するグラフェンホールセンサ(GHS)であって、前記グラフェン層が、前記グラフェン層の第1の軸を介してバイアス電流を提供するように構成されるコンタクトの第1の対と、前記グラフェン層の第2の軸を介してホール効果電圧を測定するように構成されるコンタクトの第2の対とを備え、前記ホール効果電圧がオフセット電圧を含む、前記グラフェンホールセンサ、
前記伝導ゲートに結合され、前記GHSにおいて第1の導電状態を生じさせる第1電圧と、前記GHSにおいてほぼ同じ第2の導電状態を生じさせる第2電圧との間で、変調周波数で交番する、変調ゲートバイアス信号を提供するように構成される、発振器、及び
前記ホール効果電圧を受け取るように結合され、前記オフセット電圧を含まない前記ホール電圧の振幅を抽出するように構成される、復号器、
を含む、ホール効果センサシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のホール効果センサシステムであって、前記伝導ゲートが、前記GHSのチャネル部分のみを覆い、コンタクトの前記第1の対及びコンタクトの前記第2の対を覆わない、頂部ゲートである、ホール効果センサシステム。
【請求項11】
請求項9に記載のホール効果センサシステムであって、前記復号器が、ミキサに結合される局所発振器を含み、コンタクトの前記第2の対がローノイズアンプを介して前記ミキサに結合される、ホール効果センサシステム。
【請求項12】
請求項9に記載のホール効果センサシステムであって、前記復号器がバンドパスフィルタを含む、ホール効果センサシステム。
【請求項13】
請求項9に記載のホール効果センサシステムであって、前記復号器が、アナログデジタルコンバータと、前記ホール効果電圧の高速フーリエ変換を実施するように構成されるプロセッサとを含む、ホール効果センサシステム。
【請求項14】
請求項9に記載のホール効果センサシステムであって、前記発振器が、10〜100MHzの範囲の変調周波数を有する前記変調ゲートバイアス信号を提供するように構成される、ホール効果センサシステム。
【請求項15】
請求項9に記載のホール効果センサシステムであって、前記GHSが頂部ゲート及びバックゲートを有し、前記発振器からの前記変調ゲート信号が前記頂部ゲートに提供され、適応制御された電圧源が前記バックゲートに結合される、ホール効果センサシステム。
【請求項16】
請求項9に記載のホール効果センサシステムであって、前記ホールセンサがバックゲートを有し、前記発振器からの前記変調ゲート信号が前記バックゲートに結合される、ホール効果センサシステム。
【請求項17】
請求項9に記載のホール効果センサシステムであって、燃料タンクをさらに含み、前記GHSが前記燃料タンクに結合される、ホール効果センサシステム。
【請求項18】
請求項9に記載のホール効果センサシステムであって、前記GHSが伝導ワイヤを囲む磁束コアに結合される、ホール効果センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概してホール効果デバイスに関し、より特定していえば、グラフェンホールセンサ
【背景技術】
【0002】
ホールセンサは、低コストであり、小面積であり、集積しやすいため、中感度の磁気センサとして業界で選択されている。しかし、半導体ホールセンサはいずれも、不整合、ドーピング変動、及び望まれないピエゾ効果などの非理想性によりオフセットを生じてしまう。「スピニング電流」と称する技術により、オフセットが部分的に低減されるが、帯域幅が大きく劣化する。残ったオフセットでも、ほとんどの応用例において精度を制限してしまうほど大きい。また、残ったオフセットは、温度、パッケージング、応力、ばらつき、及び経時変化などの因子に依存してドリフトする。
【0003】
いわゆる「ホール効果」は、磁界が電流に直交しているとき生じる。この磁界は、磁界の方向及び電流の流れる方向の両方に直交する方向に、導体の両端間にホール電圧と呼ばれる電圧差を生じさせる。ホール電圧を測定することによって、磁界の成分の大きさを判定することができる。典型的なホールセンサは、通常、導電性材料のストリップ又はプレートを含み、電流がプレートを介して流れる。プレートが磁界中に置かれ、磁界の或る成分がプレートに直交するとき、プレート内に、磁界の方向及び電流の流れる方向の両方に直交する方向にホール電圧が生成される。
【0004】
現在の技術を用いて製造される半導体ホール効果センサは、典型的に、シリコンから製造される感知要素を含む。これらのデバイスの磁気感度は、感知要素を構築するために用いられる材料の電子移動度μに正比例し、電子移動度μによって制限される。シリコンの電子移動度は典型的に約1500cm
2/(Vs)である。対照的に、グラフェンの電子移動度は、4500〜40000cm
2/(Vs)の範囲をとり得る。その結果、グラフェンから構築される感知要素を用いるホール効果デバイスの磁気感度は、典型的なシリコンベースのデバイスの磁気感度よりもはるかに高い。
【0005】
チャネルとしてグラフェンを用いるホールセンサは、得られる移動度に依存して、ノイズ性能が良好であると予想される。しかし、グラフェンホールセンサも、半導体ホールデバイスと同じオフセットの問題を被る。
【発明の概要】
【0006】
説明される例において、グラフェンホールセンサ(GHS)が変調ゲートバイアス信号を有し、変調ゲートバイアス信号は、GHSにおいて第1の導電状態を生じさせる第1の電圧と、GHSにおいてほぼ同じ第2の導電状態を生じさせる第2の電圧との間で変調周波数で交番する。GHSの第1の軸を介してバイアス電流が提供され得る。変調ホール電圧及びオフセット電圧を含む、結果として得られる出力電圧信号が、ホールセンサの第2の軸を介して提供され得、ホール電圧は変調周波数で変調されている。オフセット電圧を含まないホール電圧の振幅が、結果の出力電圧信号から抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】例示のグラフェンホールセンサ(GHS)デバイスの図である。
【0008】
【図2】図1のGHSの側面図である。
【0009】
【図3】ホールセンサの等価電気モデルである。
【0010】
【図4】ゲート電圧の関数としてグラフェンチャネル伝導率を図示するグラフである。
【0011】
【図5】ゲート電圧の関数としてグラフェン電流関連感度を図示するグラフである。
【0012】
【図6】GHSのゲート電圧の変調を図示するグラフである。
【0013】
【図7】GHSの等価電気モデルの図である。
【0014】
【図8A】GHSの動作を図示するグラフである。
【図8B】GHSの動作を図示するグラフである。
【図8C】GHSの動作を図示するグラフである。
【図8D】GHSの動作を図示するグラフである。
【0015】
【図9】図6のGHSの出力の周波数ドメイン表現を示す。
【0016】
【図10A】図6のGHSの出力信号の復調を図示するグラフである。
【図10B】図6のGHSの出力信号の復調を図示するグラフである。
【図10C】図6のGHSの出力信号の復調を図示するグラフである。
【図10D】図6のGHSの出力信号の復調を図示するグラフである。
【0017】
【図11】例示の変調ゲートGHSのブロック図である。
【0018】
【図12】図8に従ったGHSの動作を図示するフローチャートである。
【0019】
【図13】GHSを含み得るシステムを例示する図である。
【図14】GHSを含み得るシステムを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
具体的な実施形態を添付の図を参照して詳細に説明する。様々な図における同様の要素は、一貫性を保つため同様の参照数字によって示される。実施形態の下記の詳細な説明では、より完全な理解が得られるように多くの具体的な細部が示されている。しかし、実施形態はこれらの具体的な細部なしに実施され得ることが当業者には明らかであろう。他の例において、記載を不必要に複雑にすることを避けるために、よく知られた特徴は詳細に記載されていない。
【0021】
本開示のグラフェンホールセンサ(GHS)におけるゲート制御グラフェンチャネルの固有の特性を用いるグラフェンホールデバイスにおけるオフセットを緩和し得るアーキテクチャ及び方法を提供する。従来のホールセンサとは異なり、GHSは、伝導グラフェンチャネルを制御するためにゲートバイアスを必要とする。グラフェンは、1原子が各頂点を形成する、2次元原子スケールの六角形格子の形態の炭素の同素体である。グラフェンは、伝導率及びホール感度に関係するいくつかの固有の性質を有する。伝導率はディラック点付近のゲート電圧の偶関数であり、ホール感度はゲート電圧の奇関数である。
【0022】
本明細書においてより詳細に開示する、GHSにおいて典型的なオフセットを低減するための解決策は、高周波制御電圧でゲートを変調してホール出力電圧も高周波数で変調することであるが、オフセットは直流のままである。その後、出力電圧は、センサ信号を得るために増幅後に復調され得る。これにより、電子増幅器におけるオフセット及びオフセットドリフトの影響もなくなり得る。ゲート変調は、典型的なスピニング電流周波数と比較してはるかに高い周波数で成され得、そのため、はるかに広い帯域幅が実現される。
【0023】
本明細書において開示される方法は、ホールセンサにおいて典型的に用いられるスピニング電流技術(SCT)法とは完全に異なる。本方法は、グラフェンの固有の二極性に依存している。この方法はまた、グラフェンにおけるクライントンネリングに依存しており、クライントンネリングは、グラフェンにおけるp−n又はn−p接合を介する電流を可能にする。本明細書において開示される解決策は、半導体ホールセンサと比較して、はるかに低いオフセット及びオフセットドリフト並びに一層広い帯域幅を提供する。
【0024】
図1は、例示のグラフェンホールセンサデバイス100の例示である。図2は、GHS100の側面図である。ホールセンサの一般的な概念は、よく知られており、本明細書では詳細に説明しない。上述のように、「ホール効果」は、磁界の向きが電流に直交するとき生じる。この磁界は、導体の両端間に、磁界の方向及び電流の流れる方向の両方に直交する方向に、ホール電圧と呼ばれる電圧差を生成する。ホール電圧を測定することによって、磁界の成分の大きさを判定することが可能である。
【0025】
この例では、ホールセンサ100は、既知の又は今後開発される製造方法を用いて基板120上に製造され得る。バックゲート110が、ウェル領域をドープすることによって基板120に形成され得る。誘電体109がバックゲート110に形成され得る。グラフェンの層102が誘電体109上に形成され、次いで、誘電体108の別の層がグラフェン層の上に形成される。誘電体層108の頂部上に伝導ゲート104が形成され得る。グラフェン層を介してバイアス電流112を提供するため、及び、得られるホール効果電圧114を感知するために、コンタクト領域106がグラフェン層と接触して形成される。
【0026】
グラフェン要素102は、図1に示すように、従来の十字形状にパターン化され得る。他の実施形態において、八角形又は実質的に八角形状、三角形又は実質的に三角形状、四つ葉形又は実質的に四つ葉形状、円形又は実質的に円形状など、他のグラフェン要素形状がパターン化され得る。同様に、グラフェン層102の幾何形状に応じて、コンタクトパッド106及び対応するワイヤの数が、所与の応用例に合うように変更され得る。
【0027】
この実施形態では、伝導ゲート104は、グラフェンのチャネル領域を覆うが、コンタクト領域106は覆わない。この構成により、ゲートが、コンタクト領域106のコンタクト抵抗に影響を及ぼすことなくチャネル領域を変調するために用いられ得る。
【0028】
図3は、典型的な半導体ホールセンサの等価電気モデルである。このモデルでは、バイアス電流が、ポートNにおいて注入され、ポートSにおいて取り除かれ、ポートWとEの両端間でホール電圧が測定されると仮定している。バイアス電流に対する実効チャネル抵抗R1があり、ホール電圧経路にチャネル抵抗R0がある。また、抵抗器R2〜R5によって表されるホイートストンブリッジ抵抗効果がある。典型的に、ホイートストンブリッジ型の電気モデルにおいて最先端のリソグラフィ及び製作プロセスを用いても避け得ない抵抗器不整合による大きなオフセットがある。これらの抵抗効果はそれぞれいずれも、時間及び温度とともに変化し得、そのため、オフセット電圧ドリフトに寄与し得る。2014年のPetrukらの「グラフェン製ホール効果センサにおける感度及びオフセット電圧試験」、Springer、631頁に例示されるように、GHSもこれらの影響を示す。
【非特許文献1】Petruk et al. “Sensitivity and Offset Voltage Testing in the Hall-Effect Sensors Made of Graphene” Springer 2014, pp.631
【0029】
図4は、例示のGHSデバイスにおけるゲート電圧(Vgate)の関数としてグラフェンチャネル伝導率(ジーメンス(S))を図示するグラフである。この例では、グラフェン移動度は10,000cm
2/Vであり、ゲート酸化物(CO
x)の容量は0.12fF/mm
2であり、ホール要素は正方形であり、コンタクト抵抗は100Ωである。GHSの他の構成は同様のチャネル伝導性特性を有し得る。
【0030】
ゲート電圧は、グラフェンチャネルにおけるキャリア(電子又はホール)を誘導する。伝導率(σ)は、式(1)によって表されるように、キャリア濃度(n)及び移動度(μ)に依存する。
σ=qnμ (1)
【0031】
グラフェンの特性は、電子と正孔が等しい移動度で伝わるということである。その結果、伝導率がディラック点401付近のゲート電圧の偶関数となる。
【0032】
図5は、ゲート電圧に対するホール感度(ボルト/アンペア×テスラ(V/AT))のグラフであり、グラフェンの電流関連感度をゲート電圧の関数として図示する。グラフェンのホール感度は、ゲート電圧に応答する電子(n)及び正孔(p)両方の表面密度に依存し、その結果、ディラック点401付近の奇関数となる。グラフェンのホール感度は式(2)によって示される。
【0033】
キラルトンネリング及びクラインパラドックスの既知の効果のため、PN接合においてキャリア(電子及び正孔の両方)の後方散乱がない。したがって、グラフェンPN接合は、通常の範囲においてダイオードとして働かない。グラフェンPN接合においてキャリアが妨げられずに流れる。グラフェンのコンタクト及びチャネルは、異なってドーピング(N型又はP型)され得、電流が、PからNへ又はNからPへ抵抗増加なしに流れ得る。例えば、Katsnelsonらの「グラフェンにおけるキラルトンネリング及びクラインパラドックス」を参照されたい。
【非特許文献2】Katsnelson et al. “Chiral tunneling and the Klein paradox in graphene”
【0034】
図2を再び参照すると、GHSが、頂部ゲート104及びバックゲート110両方を有し得る。他の実施形態において、一方又は他方のゲートのみが実装され得る。このデュアルゲートGHS構成は、チャネルキャリア濃度を変更するための2つの制御を提供する。頂部ゲートはチャネル領域のみにおいてキャリア濃度を変更する。典型的に、誘電体108を形成する酸化物層は層109より薄く、その結果、グラフェン層108を備えた頂部ゲート構造の静電容量密度が大きくなる。バックゲートは、チャネル領域及びコンタクト領域両方の下にあり、したがって、コンタクト領域106におけるキャリア濃度に影響を及ぼし得、それによってコンタクト抵抗を改変し得る。典型的に、誘電体109を形成する酸化物層は層108より厚く、その結果、バックゲートとグラフェン層102との間の静電容量密度は低くなる。
【0035】
図3及び図4、並びに式(1)及び(2)を再び参照すると、これらの図及び式は頂部ゲート応答を表す。ただし、同様の伝導性曲線がバックゲート電圧に対して存在する。典型的に、頂部ゲート誘電体はより薄く、そのため、バックゲート応答と比較して、伝導率の同じ変化に対して電圧の変化をより小さくする必要がある。この実施形態では、頂部ゲートは中間チャネル部分のみを含む。したがって、これは、チャネルの伝導性のみに影響を及ぼし、コンタクト抵抗(Rcnt)は変化させず、そのため、典型的に、頂部ゲート電圧変調が用いられ得る。これは、頂部ゲート電圧変調がより小さい電圧振幅の振れしか必要としないためである。しかし、バックゲートは、伝導率又は感度曲線の中心(ゼロ電圧バイアス、ディラック電圧)からのずれなど、非理想性の1つを低減するために用いられ得る別の制御を提供する。
【0036】
図6は、図1のGHS100などのGHSデバイスの頂部ゲート電圧の変調を図示するグラフである。別の実施形態において、バックゲートを変調することによって同様の応答が得られ得る。ゲート電圧600の振幅は、負の電圧振幅VG1 601と正の電圧振幅VG2 602との間で変調され得、そのため、式(3)によって示されるように、2つの等しい導電状態603及び604の間で切り替わる。
【0037】
図7は、GHSの等価電気モデルの図である。このモデルは、チャネル抵抗711〜714及びコンタクト抵抗701〜704を含む。前述したように、ホールセンサにおけるオフセット電圧は、ホールセンサのホイートストンブリッジ電気モデルの抵抗器711〜714におけるバイアス電流不整合に依存する。GHSの場合、オフセットは、チャネル抵抗及びチャネル幾何形状の不整合だけでなく、コンタクト抵抗にも依存する。コンタクト抵抗は、最新のコンタクト抵抗の場合のGHSにおける全体抵抗のかなりの部分である。例えば、ウェンジュン リウらの「グラフェン金属コンタクトに関する研究」を参照されたい。そのため、オフセット電圧は式(4)によって与えられる。抵抗器不整合は、コンタクト抵抗(Rcnt)、チャネル伝導率(Gch)、及びデバイス幾何形状不整合因子(F)の関数である。チャネル部分の上のみに頂部ゲートを備えたGHS構造では、コンタクト抵抗はゲート電圧変調によって変化せず、デバイス幾何形状不整合もゲート電圧の影響を受けない。その結果、式(5)によって示されるように、各状態においてオフセット電圧605、606が等しくなる。これら2つの状態について、式(6)によって示されるように、感度の符号が変化する。
G
ch(V
G1)=G
ch(V
G2) (3)
V
off(V
G)=I
biasf(R
cnt,G
ch(V
G),F) (4)
V
off(V
G1)=V
off(V
G2) (5)
S
I(V
G1)=−S
I(V
G2) (6)
【非特許文献3】Wenjun Liu et al. “A Study on Graphene-Metal Contact”
【0038】
図8A〜図8Dは、図6のGHSの動作を図示するグラフである。図8Aのグラフの線801は、図6のグラフ600に類似する、ゲート電圧変調を示す。図8Bのグラフの線802は、変調ゲート電圧801に応答する、選択される磁界強度に対するホール出力電圧を図示する。図8Cのグラフの線803は、ゲート変調の2つの状態各々の結果であるオフセット電圧を図示する。図8Dのグラフの線804は、GHSの出力コンタクトにおいて測定され得るホール電圧とオフセット電圧の組合せを図示する。
【0039】
図9は、図8Dのグラフの線804の周波数ドメイン解析を図示するグラフである。静的オフセット電圧を表す直流成分901と、変調ゲート電圧の周波数におけるホール電圧成分902がある。903で示すように、変調周波数のホール電圧高調波もあり得る。ホール電圧成分902は、同期復調、バンドパスフィルタリング、高速フーリエ変換(FFT)などの、既知の又は今後開発される信号調整技術を用いて回復され得る。
【0040】
ゲート電圧の変調周波数は、GHSの構成に応じて、最大100MHz又はそれ以上であり得る。これにより、変調の周波数まで、急速に変化する磁界を追跡し得る。オフセット電圧を下げるために電流スピニングを用いる従来のデバイスにおいて、この周波数は、半導体ホールデバイスの帯域幅制限のために100kHz〜1MHzに制限される。
【0041】
図10A〜図10Dは、オフセット電圧を除去するため信号調整を実施した後の図6のGHSの出力信号の復調を図示するグラフである。図10Aのグラフの線804は、図8Dのグラフの線804と同じであり、GHSの出力コンタクトで測定され得るホール電圧とオフセット電圧を組み合わせた信号を表す。図10Bのグラフの線1005は、信号804を復調するために用いられ得る復調波形を表す。図10Cのグラフの線1006は、GHSの出力信号804と復調信号1005の増倍(混合)後の信号を表す。
【0042】
図10Dのグラフの線1007は、混合信号1006を平均することによって得られるホール電圧を図示し、これは、混合信号804を復調しフィルタリングすることによって得られ得る同じ結果である。これにより、オフセット電圧が測定信号から成功裏に除去されている図8Bを再度参照して、ホール電圧802の振幅と等しい振幅を有する信号が提供される。信号1007は、GHSによって感知される磁界の大きさを正しく表している。
【0043】
図11は、例示の変調ゲートGHSシステム1100のブロック図である。GHSデバイス1101が、例えば、図1のGHS100と同様であり得る。バイアス電圧供給1110は、GHS1101のチャネルを介して安定したバイアス電流を提供するように構成される。バックゲートバイアス供給1111が、GHS1101のバックゲートにバイアス電圧を提供するように構成される。バイアス供給1110、1111は、応用例に応じて可変又は固定とされ得る。いくつかの実施形態では、バイアス電圧供給1110、1111によって提供される電圧レベルを制御するために制御論理が提供され得る。
【0044】
発振回路1112が、変調フロントゲート電圧をGHS100に提供するように構成される。発振器1112は、例えば、100MHzの周波数を有する矩形波(又はほぼ矩形或いは他の周期的)信号を提供するように構成され得る。ゲート電圧信号の振幅は、例えば、図8に示されるように、GHSの二極性領域において動作するように選択される。
【0045】
復調器回路1120がGHS1101の変調出力を受け取る。ローノイズアンプ(LNA)1121が、ホール電圧及び直流オフセット電圧の両方を含む測定信号を増幅する。上述したように、変調信号からホール電圧を回復するための一つ方式は同期復調を実施することである。これは、AM(振幅変調)無線又はホモダインRF(無線周波数)レシーバにおいて用いられるものと同様のプロセスである。復調発振器1122(又は1121の出力でさえ)が、ミキサ1123によって変調ホール出力信号と混合される100MHz信号を提供する。ミキサ1123の出力は、例えば、図10Dで示されるように、調整された出力信号を生成するためローパスフィルタ(LPF)1130によってフィルタリングされ得る。
【0046】
図12は、図8に従ったGHSの動作を図示するフローチャートである。先により詳細に開示したように、図1のGHS100などのGHSデバイスに、変調ゲートバイアス信号が提供され得る(1202)。図8に関して説明したように、この信号は、1〜100MHzの範囲又はそれ以上の周波数を有する矩形波であり得る。ゲート電圧の振幅は、式(4)によって示されるように導電状態が2つの等しい導電状態間で切り替わるように負の電圧振幅V
G1と正の電圧振幅V
G2の間で変調され得、その結果、式(5)によって示されるように、各状態で等しいオフセット電圧が得られる。
【0047】
GHSの1つの軸を介してバイアス電流が提供される(1204)。次いで、得られる出力電圧が、GHSの第2の軸を介して得られ得る(1206)。より詳細に上述したように、得られた出力電圧は、グラフェンホールセンサ内の非理想性から生じるオフセット電圧とともに、変調ゲートバイアス信号の周波数レートで変調されるホール電圧を含み得る。
【0048】
得られた信号は、次いで、オフセット電圧を含まないホール電圧の振幅が抽出されるように調整され得る(1208)。調整された信号はGHSを通過する任意の磁界の強さのより正確な表現を提供し得る。信号調整は、得られた電圧信号のバンドパスフィルタリングを実施すること、結果の信号の同期復調を実施すること、復調された信号をフィルタリングすること、結果の信号をデジタル表現に変換すること、及びFFT操作を実施することなど、様々な既知の又は今後開発される技術によってなされ得る。
【0049】
図13及び図14は、GHSを含み得るシステムを例示する。図13は、電流搬送ワイヤ1300を含むシステムを図示する。磁界は電流搬送場を囲むことがよく知られている。GHS1304が配置される領域を通るように磁束を向けるために、磁束コア1302がワイヤの周りに配置され得る。変調ゲートバイアス信号1306を提供すること、及び、得られた変調ホール電圧1308を調整することによって、ワイヤ1300を流れる電流が正確に判定され得る。
【0050】
図14は、例えば、自動車又はトラックの燃料など、量が変化する液体1408を含み得る例示のタンク1400の例示である。GHS1402が、タンクの上部領域に搭載される。フロートアセンブリ1406が、液体の高さに伴って上下する磁石と合わされる。フロートは、例えば、磁石1404のGHS1402との整合が保たれるようにばねによって抑制され得る。別の実施形態において、例えば、液体の高さに応答して、タンク内で回動し、GHS1402に関して磁石を動かすアーム上にフロートが搭載され得る。変調ゲートバイアス信号1401を提供すること、及び、得られた変調ホール電圧1412を調整することによって、液体1408の高さが正確に判定され得る。
【0051】
例示の実施形態のこの説明は限定的な意味で解釈されることを意図しない。様々な他の実施形態がこの説明を参照する当業者に明らかであろう。例えば、本明細書では十字形状のグラフェンデバイスを例示したが、八角形又は実質的に八角形状、三角形又は実質的に三角形状、四つ葉形又は実質的に四つ葉形状、円形又は実質的に円形状など、他のグラフェン要素形状がパターン化され得る。同様に、グラフェン層の幾何形状に応じて、コンタクトパッド及び対応するワイヤの数は、所与の応用例に適合するように変更され得る。
【0052】
別の実施形態において、低伝導率点を実現しない又はゼロ感度点をシフトしない不純物密度、最低伝導率点をシフトしゼロ感度点をシフトする非ゼロディラック電圧、及び2つの側について異なる伝導率及び/又は2つの側について異なる感度をもたらす電子及び正孔の等しくない移動度、などの影響を緩和するためにバックゲートバイアスを制御するように適応論理が提供され得る。
【0053】
グラフェン層は、メタンからの還元、及び酸化誘電体の頂部上にエピタキシャル成長されることによるなど、様々なプロセスによって形成され得る。より古いプロセスでは、「スコッチテープ」技術と称することもある、マイクロメカニカルへき開技術によって、グラフェンの層が生成される。グラフェン層を形成するために他の既知の又は今後開発される技術を用いてもよい。
【0054】
この開示で説明した技術は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組合せで実装され得る。例えば、復調プロセスはソフトウェアで実施され得る。ソフトウェアで実装される場合、ソフトウェアは、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(GPGA)、又はデジタル信号プロセッサ(DSP)などの1つ又は複数のプロセッサで実行され得る。これらの技術を実行するソフトウェアは、コンパクトディスク(CD)、ディスケット、テープ、ファイル、メモリ、又は任意の他のコンピュータ可読記憶デバイスなどのコンピュータ可読媒体に初期的に記憶され得、プロセッサにロードされ実行され得る。場合によっては、ソフトウェアは、コンピュータ可読媒体及びコンピュータ可読媒体のためのパッケージング材料を含むコンピュータプログラム製品として販売され得る。場合によっては、ソフトウェア命令が、リムーバブルコンピュータ可読媒体(例えば、フロッピーディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、USBキー)を介して、コンピュータ可読媒体から別のデジタルシステム上の伝送経路などを介して配送され得る。
【0055】
特定のシステム構成要素を指すために、明細書の記載及び特許請求の範囲を通じて或る用語が用いられる。当業者なら理解するように、デジタルシステムにおける構成要素は、記載される機能性から逸脱することなく、異なる名称で呼ばれ得、及び/又は本明細書に示されない方式で組み合わされ得る。下記の説明及び特許請求の範囲において、「含む(including)」及び「含有する(comprising)」という用語は非限定形式で用いられ、「含むが・・・に限定されるものではない」という意味に解釈されるべきである。また、「結合する」という用語及びその派生語は、間接的、直接的、光学的、及び/又はワイヤレスな電気的接続を意味することを意図している。そのため、第1のデバイスが第2のデバイスに結合される場合、その接続は、直接的電気接続を介するもの、他のデバイス及び接続を介した間接的電気接続を介するもの、光学的電気接続を介するもの、及び/又はワイヤレスな電気接続を介するものとし得る。
【0056】
本明細書では、方法ステップが順次提示され説明される場合があるが、で示され説明されたステップの1つ又は複数が、省略され得、繰り返され得、同時実行され得、及び/又は、図に示され及び/又は本明細書に記載された順とは異なる順で実施され得る。したがって、図に示され及び/又は本明細書に記載されたステップの特定の順に限定されるとみなされるべきではない。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【国際調査報告】