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  • 特開2015113285-抗B型肝炎ウイルス薬 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-113285(P2015-113285A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】抗B型肝炎ウイルス薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7064 20060101AFI20150526BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20150526BHJP
【FI】
   A61K31/7064
   A61P31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-254236(P2013-254236)
(22)【出願日】2013年12月9日
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100101904
【弁理士】
【氏名又は名称】島村 直己
(72)【発明者】
【氏名】馬場 昌範
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼崎 隆之
(72)【発明者】
【氏名】アショーカ シャロン
(72)【発明者】
【氏名】チャンドララータ バル
(72)【発明者】
【氏名】アナンダラジャン シャガラジャン
(72)【発明者】
【氏名】モハン カスラ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たな抗B型肝炎ウイルス(HBV)薬の提供。
【解決手段】式(I)で示される化合物、その塩又はそれらの溶媒和物を含む抗HBV薬。

(Baseは、式(a)もしくはその類似体)

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
(式中、Baseは、次式(a):
【化2】
又は次式(b):
【化3】
で示される基を表す。)
で示される化合物、その塩又はそれらの溶媒和物を含有する抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項2】
前記式(I)において、Baseが前記式(a)で示される基である請求項1記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項3】
前記式(I)において、Baseが前記式(b)で示される基である請求項1記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗B型肝炎ウイルス薬に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(HBV)による慢性肝炎は肝硬変や肝臓癌の主要な原因の1つである。現在、日本人の0.9%(約110万人)がHBVのキャリアであると推定されており、世界では約3億人のキャリアが存在すると考えられている。HBV感染予防にはワクチンが開発されており、また既にいくつかの抗HBV薬も存在し、ラミブジン、アデホビル、そしてエンテカビルが上市されている。これらはすべて核酸アナログであり、逆転写機能を有するHBVのDNAポリメラーゼを標的としている。これらの使用により、血中のHBVは消失する。しかしながら、HBVは肝細胞内で安定な形のDNAとして存在するため、抗ウイルス薬による化学療法を中断すると、肝炎が再燃するおそれがある。また、既存の抗HBV薬に対する薬剤耐性ウイルスの出現も報告されている。このようなことから、既存の薬剤に加えて、新たな抗HBV薬の開発が望まれている。
【0003】
一方、炭素環ヌクレオシド類としては、特許文献1には2’−フルオロ−6’−メチレン炭素環ヌクレオシド類が抗HBV活性を有することが記載されている。
【0004】
非特許文献1には、次式(A):
【化1】
(式中、Rは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
で示される5−(4−アミノ−3−ハロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)−3−(ヒドロキシメチル)シクロペント−3−エン−1,2−ジオールが抗C型肝炎ウイルス(HCV)活性を示すことが記載されているが、50%有効濃度(EC50)は、陽性対照のKZ−16(Biochem. Biophys. Res. Commun. 2011, 415, 714-719記載のフェナントリジノン誘導体)が0.17μMであるのに対し、6.6〜87.6μMであり、必ずしも十分なものではなかった。
【0005】
非特許文献2には、次式(B):
【化2】
(式中、Rは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
で示される5−(5−ハロ−4−メチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル)−3−(ヒドロキシメチル)シクロペント−3−エン−1,2−ジオールが抗C型肝炎ウイルス(HCV)活性を示すことが記載されているが、50%有効濃度(EC50)は、陽性対照のKZ−16(Biochem. Biophys. Res. Commun. 2011, 415, 714-719記載のフェナントリジノン誘導体)が0.17μMであるのに対し、37.3〜46.2μMであり、必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
HCVはRNAウイルス、HBVはDNAウイルスであり、核酸誘導体を含め、抗HCV活性と抗HBV活性との間には、一般に相互関係がないといわれている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2013−510904号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ChemMedChem 2013, 8, 1-9
【非特許文献2】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2012, 22, 7742-7747
【非特許文献3】Journal of Medicinal Chemistry 2009, 52, 206-213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新たな抗HBV薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らは、培養細胞におけるHBV遺伝子複製の抑制を指標として、種々の炭素環ヌクレオシド類について、抗HBV活性の検討及び構造展開研究を遂行することにより、特定の化合物が優れた抗HBV活性を有し、かつ安全性が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)下記式(I):
【化3】
(式中、Baseは、次式(a):
【化4】
又は次式(b):
【化5】
で示される基を表す。)
で示される化合物、その塩又はそれらの溶媒和物を含有する抗B型肝炎ウイルス薬。
(2)前記式(I)において、Baseが前記式(a)で示される基である前記(1)に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
(3)前記式(I)において、Baseが前記式(b)で示される基である前記(1)に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗HBV薬は優れた抗HBV活性を有し、かつ安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】化合物(Ia)及び化合物(Ib)についての抗HBVアッセイの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
前記式(I)で示される化合物の塩としては、薬学的に許容される塩が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、又はクエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩が挙げられる。
【0014】
前記式(I)で示される化合物の溶媒和物としては、例えば水和物が挙げられる。
前記式(I)で示される化合物のうち、Baseが前記式(a)で示される基である化合物(Ia)は、例えば、非特許文献1(ChemMedChem 2013, 8, 1-9)に記載の方法に従って、以下に示すようにして製造することができる。
【0015】
【化6】
(式中、Trはトリチル基を表す。)
(i) NIS, DMF, RT, 4h; (ii) (Boc)2O, DMAP, THF, RT, 6h; (iii) sat.NaHCO3, MeOH, RT, 3h; (iv) Ph3P, DIAD, THF, 0-5℃, 2h; (v) 10% conc. HCl in CH3OH, 60℃, 5h.
【0016】
1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(1)をDMF中、室温で4時間N−ヨードコハク酸イミドと反応させてヨード体(2)を得る。次いで、ヨード体(2)及び二炭酸ジ-tert-ブチル((Boc)2O)のTHF溶液を4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下室温で撹拌する。反応終了後、過剰のTHFを除去し、粗生成物をメタノールに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、室温で3時間処理して、N−保護体(3)を得る。次いで、N−保護体(3)とシクロペンテン誘導体(4)を光延(Mitsunobu)カップリング反応させて化合物(5)を得た後、脱保護することにより化合物(Ia)を得ることができる。
【0017】
前記式(I)で示される化合物のうち、Baseが前記式(b)で示される基である化合物(Ib)は、例えば、非特許文献2(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2012, 22, 7742-7747)に記載の方法に従って製造することができる。
【0018】
すなわち、前記N−保護体(3)の代わりに、次式(6):
【化7】
で示される化合物を用いて、当該化合物(6)とシクロペンテン誘導体(4)を光延(Mitsunobu)カップリング反応させた後、脱保護することにより化合物(Ib)を得ることができる。
【0019】
前記のようにして得られる生成物を精製するには、通常用いられる手法、例えばシリカゲル等を担体として用いたカラムクロマトグラフィーやメタノール、エタノール、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、n−ヘキサン−酢酸エチル、水等を用いた再結晶法によればよい。カラムクロマトグラフィーの溶出溶媒としては、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトン、ヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0020】
前記の化合物は、抗HBV薬として、慣用の製剤担体と組み合わせて製剤化することができる。投与形態としては、特に限定はなく、必要に応じ適宜選択して使用され、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、徐放性製剤、液剤、懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤等の経口剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられる。
【0021】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、無機塩類等を用いて常法に製造される。また、これらに加えて、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を適宜添加することができる。
【0022】
結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が挙げられる。
【0023】
崩壊剤としては、例えばデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0024】
界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80等が挙げられる。
【0025】
滑沢剤としては、例えばタルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
流動性促進剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
【0027】
注射剤は、常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、オリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。更に必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を加えてもよい。また、注射剤は、安定性の観点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。前記式(I)の化合物の注射剤中における割合は、5〜50重量%の間で変動させ得るが、これに限定されるものではない。
【0028】
その他の非経口剤としては、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、常法に従って製造される。
【0029】
製剤化した抗HBV薬は、剤形、投与経路等により異なるが、例えば、1日1〜4回を1週間から3ヶ月の期間、投与することが可能である。
【0030】
経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人の場合、前記式(I)の化合物の重量として、例えば0.1〜1000mg、好ましくは1〜500mgを、1日数回に分けて服用することが適当である。
【0031】
非経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人の場合、前記式(I)の化合物の重量として、例えば0.1〜1000mg、好ましくは1〜500mgを、静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射により投与することが適当である。
【0032】
また、本発明の化合物は、HBV感染に対して有効な他の薬剤と組み合わせて使用してもよい。これらは、治療の過程において別々に投与されるか、例えば錠剤、静脈用溶液、又はカプセルのような単一の剤形において、本発明の化合物と組み合わせられる。このような他の薬剤としては、例えば、インターフェロン、ペグインターフェロン、ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル、Telbivudine、Clevudine等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0034】
[合成例1]各種炭素環ヌクレオシド類の合成
(1)化合物(Ia)の合成
【化8】
【0035】
(a)THF中のN−保護体(3)(1.5mmol)、シクロペンテン誘導体(4)(1.57mmol)及びトリフェニルホスフィン(3.75mmol)の混合物に、0℃でアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)を滴下した。反応混合物を室温に戻し、撹拌を続けた。TLCで反応が終了したことを確認した後、溶媒を減圧留去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=100:0→70:30)で精製し、カップリング生成物(5)を収率85%で得た。
【0036】
カップリング生成物(5)の化合物名及び物性を以下に示す。
Di-Boc-protected 3-iodo-1-((4R)-2,2-dimethyl-6-((trityloxy)methyl)-4,6a-dihydro-3aH-cyclopenta[d][1,3]dioxol-4-yl)-1H-pyrazolo-[3,4-d]pyrimidin-4-amine
mp: 89-99℃; MS (ESI) (m/z): [M++1] 872.0; UV (MeOH): λmax=264 nm; 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ=8.97 (s, 1H, 2-CH), 7.21-7.46 (m, 15H, trityl), 6.04-6.08 (m, 2H, 1’,6’-CH), 5.33-5.35 (d, J=5.8 Hz, 1H, 2’-CH), 4.88-4.90 (d, J=5.9 Hz, 1H, 3’-CH), 3.95-3.99 (d, J=15.3 Hz, 1H, 5’-CH2), 3.80-3.84 (d, J=15.3 Hz, 1H, 5’-CH2), 1.45 (s, 3H, CH3), 1.42 (s, 18H, Boc-6CH3), 1.33 ppm (s, 3H, CH3).
【0037】
(b)カップリング生成物(5)を、10%塩酸含有メタノール中、60℃で加熱することにより、保護基を脱離させた。TLCで反応が終了したことを確認した後、溶媒を減圧留去し、得られた固形物をアセトンで洗浄して、化合物(Ia)の塩酸塩を収率81%で得た。
【0038】
化合物(Ia)の化合物名及びその塩酸塩の物性を以下に示す。
(1S,2R,5R)-5-(4-Amino-3-iodo-1H-pyrazolo[3,4-d]pyrimidin-1-yl)-3-(hydroxymethyl)cyclopent-3-ene-1,2-diol
mp:194-196℃; MS (ESI) (m/z): [M++1] 390.0; [α]D21=-147.88 cm3g-1dm-1 (c=0.24 MeOH); UV (MeOH): λmax=264 nm; 1H NMR (400 MHz, [D6]DMSO): δ=9.18-9.22 (bs, 1H, NH2), 8.49 (s, 1H, 2-CH), 8.02-8.21 (bs, 1H, NH2), 5.64-5.65 (m, 1H, 1’-CH), 5.56-5.57 (m, 1H, 6’-CH), 4.61-5.22 (bs, 3H, 2’, 3’ & 5’-OH), 4.38-4.39 (m, 1H, 2’-CH), 4.26-4.29 (m, 1H, 3’-CH), 4.07-4.11 ppm (m, 2H, 5’-CH2); 13C NMR (100 MHz, [D6]DMSO): δ=153.06, 152.10, 150.23, 148.93, 123.23, 102.68, 92.39, 76.45, 71.82, 67.00, 58.39 ppm.
【0039】
(2)その他の炭素環ヌクレオシド類の合成
非特許文献1(ChemMedChem 2013, 8, 1-9)及び非特許文献2(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2012, 22, 7742-7747)に記載の方法、又はその他の公知の方法に従って、表1に示す各種炭素環ヌクレオシド類を合成した。
【0040】
[実施例1]抗HBVアッセイ
HepG2.2.15.7細胞(肝芽細胞腫(hepatoblastoma)細胞株HepG2に、HBV遺伝子がトランスフェクションされ、持続的にウイルスを産生するHepG2.2.15細胞(Journal of Virology, Aug. 1988, 62, 2836-2844)由来で、国立感染症研究所において樹立されたクローン細胞であり、親株であるHepG2.2.15細胞よりも効率良くウイルスを産生するクローン細胞)を用いて、各種炭素環ヌクレオシド類の抗HBVアッセイを以下のようにして行った。
【0041】
1)HepG2.2.15.7細胞を96穴マイクロタイタープレートに撒いた。(1×10細胞/well,培地100μl)(培地:DMEM/F12+glutamax(Invitrogen #10565−018)+5μg/mlインスリン+50μMヒドロコルチゾン+HEPES+ペニシリン/ストレプトマイシン+10%FBS)
2)細胞をCOインキュベーター内、37℃で24時間インキュベートした。
3)各試験化合物を様々な濃度で含有する新鮮な培地100μlをプレートに加えた。
4)細胞をCOインキュベーター内、37℃で3日間インキュベートした。
5)培地を、各化合物を含有する新たな培地で完全に置き換えた。
6)細胞をCOインキュベーター内、37℃で3日間インキュベートした。
7)培養上清100μlを新たな96穴マイクロタイタープレートに移した。
8)細胞をMTTアッセイにより分析し、細胞生存率を測定した。
9)各培養上清10〜20μlに同容量のSideStepTM溶解・安定化緩衝液(Agilent Technologies #400900)を加えて、1分間ボルテックスして培地中の粗DNAを抽出した。
10)DNA溶液を使用するまで、ディープフリーザーで保存した。
11)リアルタイムPCR法を用いて、培地中のHBV DNAを定量した。
結果を表1及び図1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1及び図1から、化合物(Ia)及び化合物(Ib)は優れた抗HBV活性を有し、かつ安全性が高いことがわかる。一方、その他の炭素環ヌクレオシド類は、抗HBV活性を示さないか、示したとしてもその活性は極めて低かった。
図1