【解決手段】 この発明は、非晶質シリコンと結晶系シリコンとを組合せることにより構成されたヘテロ半導体接合を有する太陽電池セル10と、複数の前記太陽電池セル10を接続するタブ14と、を備え、太陽電池セル10に高温加熱処理を施した後、太陽電池セル10にタブ14を半田付けし、複数の太陽電池セル10をタブ14により電気的に接続して太陽電池モジュールを製造する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0027】
まず、この発明が適用される太陽電池セルの一例を
図1に従い説明する。この太陽電池セル10は、
図1に示すように、結晶系半導体基板として、100μm〜300μmの厚みとを有するとともに、(100)面を有するn型単結晶シリコン基板1(以下、n型単結晶シリコン基板1という)を備えている。n型単結晶シリコン基板1の表面には、数μmから数十μmの高さを有する光閉じ込めのためのピラミッド状凹凸が形成されている。
このn型単結晶シリコン基板1上には、CVD法により水素を含有する実質的に真性な非晶質半導体薄膜層として、膜厚数nmから数10nm程度の実質的に真性のI型非晶質シリコン(a−SI:H)層2が形成されている。また、I型非晶質シリコン層2上には、水素を含有する荷電子制御された非晶質半導体薄膜層として、膜厚数nmから数10nm程度のP型非晶質シリコン層3が形成されている。
【0028】
そして、P型非晶質シリコン層3上には、酸化物透明導電膜として、ITO膜(インジウム錫酸化膜)4がスパッタ法により形成されている。
【0029】
このITO膜4の上面の所定領域には銀(Ag)ペーストを焼成して形成した櫛形状の集電極5が設けられている。集電極5は、例えば、Agペーストを用い、スクリーン印刷法により、フィンガー部とバスバー部とを形成し、焼成(熱硬化)して形成される。フィンガー部は、複数のものが互いに平行に形成され、バスバー部はフィンガー部に流れる電流を集合させる。バスバー部に接続タブが半田により取り付けられ、他の太陽電池セルと電気的に接続される。
【0030】
また、n型単結晶シリコン基板1の下面上には、実質的に真性のI型非晶質シリコン層6が形成されている。I型非晶質シリコン層6上には、n型非晶質シリコン層7が形成されている。このようにn型単結晶シリコン基板1の下面上に、I型非晶質シリコン層6およびn型非晶質シリコン層7が順番に形成されることにより、いわゆるBSF(Back Surface FIeld)構造が形成されている。更に、n型非晶質シリコン層7上には、酸化物透明導電膜として、ITO膜8がスパッタ法により形成されている。このITO膜8の上面の所定領域には銀ペーストを焼成(熱硬化)して形成した櫛形状の集電極9が設けられている。
【0031】
図2は、この発明の一実施形態を示す太陽電池モジュールの製造工程図を示している。
【0032】
まず、
図1に示す構造の太陽電池セル10は、パレット(図示せず)に載置する(第1工程)。そして、太陽電池セル10の集電極5のバスバー部分にフラックス塗布装置20により液状のフラックスを塗布する(第2工程)。
【0033】
続いて、太陽電池セル10の全体を所定温度で所定時間加熱させ、界面特性を改善させる(第3工程)。この実施形態では、下面側からホットプレート21Bによる太陽電池セル10全体へのヒータ加熱、上面側から太陽電池セル全域へのハロゲンランプ装置21を用いたランプの光照射により、短時間で高温まで加熱する。短時間、この高温加熱処理により、太陽電池セル10には、ダメージを防止して特性を向上させることができる。なお、この加熱工程における温度並びに加熱時間については後述する。また、加熱方法はホットプレートにランプ加熱を併用した加熱以外に、ホットプレートのみを用いた加熱、ランプの光照射のみを用いた加熱などの方法を用いることができる。上記のように、高温加熱処理とは、太陽電池セルの出力向上を可能とする温度での処理をいう。
【0034】
次に、隣接する太陽電池セル10に渡って平行に2列の接続タブ14を設置する(第4工程)。接続タブ14は、表裏面に半田、この実施形態においては鉛フリー半田を塗布した銅箔にて構成されている。
【0035】
その後、配設した接続タブ14が浮かないように、接続タブ14の幅に略等しい太さで耐熱性を有し半田が付かない2列の押し付け装置の押圧ピン24(
図3参照)で接続タブ14を太陽電池セル10に押し付ける。そして、温風ヒータ22の温風吹き出し口22a、22Bより、接続タブ14近傍に、この実施形態では、半田の溶融温度以上の250℃〜480℃範囲での温風を当て、インターコネクタの溶着が行なわれる。鉛フリー半田の場合、溶融温度(この実施形態では217℃)以上の温風を数秒程度当てることで、インターコネクタの溶着が行なわれる(第5工程)。尚、押圧具は、図示はしないが半田付け時接続タブ14を押圧し、半田付け終了後はセル12上から離れる方向に移動するように構成されている。
【0036】
この接続タブ設置工程と溶着工程につき
図3を参照して説明する。無端ベルトからなる搬送ベルト30により、太陽電池セル10が搬送される。搬送ベルト30は、所定時間停止した後、所定時間移動するという間欠動作により、太陽電池セル10を図中左方向から右方向に搬送する。搬送ベルト30の所定の半田付けの位置の上下には、それぞれ接続タブ14をセル側へ押し込む押し付け装置が設けられている。この押し付け装置は、図示しない駆動手段によって上下動する二列の複数の押圧ピン24、24から構成されている。
この押圧ピン24は、耐熱性を有し半田が付かないもので構成され、2以上の接続タブの垂直上方及び下方にそれぞれ対応して配置されている。
【0037】
この押し付け装置と同じ接続タブ14、14の垂直上方及び下方のそれぞれ対応する位置には、温風式加熱手段として温風ヒータ22が設けられている。各温風ヒータ22は、例えば通電されて発熱する電気ヒータと送付機とで構成されており、電気ヒータにて加熱された空気(温風)を送風機にて温風吹き出し口22a、22Bを介して接続タブ14、14部分に集中的に吹き付けるものである。
【0038】
そして、セル10の上下面に2以上の接続タブ14、14を当接させ、配置させた状態で、この停止期間中、押し付け装置の各ピン24、24が降下(又は上昇)し、接続タブ14をセル10の上面及び下面に押し付けて浮かないように押さえつける。また、接続タブ14を押圧せずにセル10に半田付けできれば、必ずしも押し付け装置は使用しなくても差し支えない。
【0039】
このように、セル10に接続タブ14を押し付けた状態で温風ヒータ22の電気ヒータと送風機に通電し、高温の温風を接続タブ14、14に集中して吹き付け接続タブ14、14に塗布された半田を溶融温度以上で加熱する。
【0040】
ここで、温風ヒータ22からの温風は接続タブ14、14に集中的に吹き付けられるので、それ以外の部分のセル10が過剰に加熱され、温度が異常に高くなってセルにダメージが生じることがない。
【0041】
このように、押し付け装置で接続タブ10をセル10に押し付けながら温風ヒータ22から温風を所定時間吹き付けた後、温風ヒータは停止される。
【0042】
この間に、上面の接続タブ14、14の後部には次のセル10が載置される。その後、ピン24はセルから離間する方向に移動する。次に、搬送ベルト30が所定距離移動され、この新たに設置されたセル10が半田付け位置に移動されて、再び接続タブ14、14がその上面に載置される。このようにして、
図4に示すように、接続タブ14により、複数のセル10が直列に接続されストリングが製造される。
【0043】
そして、
図5に示すように、複数の太陽電池セル10…を接続タブ14で接続した後、白板強化ガラスなどからなる表面保護材40と裏面保護材41との間に、充填材42で封止され太陽電池モジュールが得られる。この太陽電池モジュールは、裏面保護材41として、PVF(ポリビニルフルオライド)/Al(アルミニウム)/PVF(ポリビニルフルオライド)の3層構造のものを用い、表面保護材40と白板強化ガラスを、封止樹脂42としてEVA(エチレンビニールアセテート)を配置し、真空熱圧着方式のラミネータによって、例えば、温度150℃で一体化を行い、150℃のオーブンで30分以上加熱し、EVAを架橋する。その後、保護枠43として、アルミニウム枠をブチル等の接着剤を用いて取り付けて太陽電池モジュールが完成する。
【0044】
次に、上記した接続タブ接続前に行う加熱処理につき説明する。この加熱処理は、高温度の加熱処理を短時間行うことにより、太陽電池セル自体にダメージを与えずにアニール効果により層境界面の特性を良好にし、太陽電池特性の改善を図るものである。
【0045】
接続タブの接続前に行う加熱処理の効果を確認するために、複数のサンプルを用意し、ヒータ加熱を10秒間施した際の加熱温度と太陽電池セル特性の変化を測定した。この測定においては、加熱手段として非光照射の加熱手段であるヒータを用いた。この実施例ではヒータとしてホットプレート21Bを用いた。
【0046】
図6は、この実施例に用いたホットプレートを示す模式的斜視図である。このホットプレート21Bは、Branstead IntenatIonal製の型番HPA1914Bを用いた。このホットプレート21Bのプレート220はアルミニウム製で157mm×157mmの大きさである。このホットプレート21Bの各仕様は、100V、7.5A、750Wである。ホットプレート21Bの本体部221の前面には、ホットプレートの温度を設定するためのコントロールダイヤル222が設けられている。このコントロールダイヤル222により所定の温度に設定して加熱処理を行う。例えば、200℃の温度に設定する場合には、200℃の目盛りコントロールダイヤル222を用いて設定する。プレート220の表面温度が200℃になるように内部ヒータが制御される。
【0047】
上記した
図6に示すホットプレート21Bを用いて太陽電池セル特性の変化を測定した。測定はホットプレート21Bで太陽電池セルを加熱したものの太陽電池特性を加熱処理を施していないものの特性で規格化した。更に、ヒータ加熱とランプ照射を行った太陽電池特性も測定し、同様に規格化した。
【0048】
図7は、ヒータ加熱とランプ照射を行う装置を示す模式的斜視図である。ヒータ加熱は、
図6に示したホットプレート21Bを用いた。そして、このホットプレート21Bの上方にハロゲンランプを備えたハロゲンランプ装置21をセットし、プレート220の全面にランプからの光が一様に照射されるように構成した。ハロゲンランプ装置21のランプからホットプレート21Bのプレート220面までの距離は約20cmに維持した。
【0049】
この実施例で用いたハロゲンランプ装置21は、日動工業株式会社の型番HST―1000Dのハロゲンライトを用いた。このハロゲンランプ装置21は、500Wのハロゲン球211,211をリフレクタ210の内部に2つ設けた、100V、1000Wの仕様のものである。
【0050】
この測定に用いた太陽電池セル10を具体的に説明する。太陽電池セル10の構造は
図1に示したものであり、以下、測定に用いた太陽電池セル10の具体的な膜厚並びに製造条件等につき説明する。
【0051】
太陽電池セル10は、結晶系半導体基板として、約1Ω・cm、300μmの厚みとを有するとともに、(100)面を有するn型単結晶シリコン基板1を用いる。n型単結晶シリコン基板1の表面には、等方性エッチングにより、数μmから数十μmの高さを有する光閉じ込めのためのピラミッド状凹凸が形成されている。
【0052】
このn型単結晶シリコン基板1上に、RFプラズマCVD(13.56MHz)により、形成温度200℃、反応圧力20Pa、RFパワーは150Wにて、I型非晶質シリコン(a−SI:H)層2、P型非晶質シリコン層3を5nm程度ずつ堆積して接合を作成した。P型ドーパントとしては、III属元素であるB(ボロン)を含む化合物ガスを使用した。
【0053】
また、n型単結晶シリコン基板1の下面上には、I型非晶質シリコン層6、n型非晶質シリコン層7を同様に5nm程度ずつ堆積した。n型ドーパントとしては、V属であるP(リン)を含む化合物ガスを使用した。
【0054】
各非晶質シリコン層の形成条件を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
このようにn型単結晶シリコン基板1の表裏面にそれぞれ形成された非晶質シリコン層3、6上に、膜厚100nmのITO膜(インジウム錫酸化膜)4、8をスパッタ法により形成する。このサンプルでは、ITO膜4、8として、錫(Sn)をドープした酸化インジウムを用いた。まず、SnO
2粉末を5Wt%として、In
2O
3粉末との焼結体をターゲットとしてカソード電極に設置する。そして、DCスパッタ装置を用いて、素子を配置してから、チャンバーを真空排気した。加熱ヒータにより、基板温度を室温から200℃になるまで加熱した。そして、アルゴン(Ar)と酸素(O
2)混合ガスを流して、圧力を0.4Pa〜1.3Paに保ち、カソードにDC電力を0.5kW〜2kW投入し、上述のように、膜厚100nmのITO膜4、8をそれぞれ成膜した。
【0057】
このITO膜4、8の上面の所定領域に、エポキシ樹脂などに銀(Ag)微粉末を練り込んだ銀ペーストをスクリーン印刷法により、高さ10μm〜30μm、幅100μm〜500μmに形成した後、200℃、80分で焼成(硬化)して、フィンガー部とバスバー部とを形成した。
【0058】
表2及び
図8は、各条件につきそれぞれ5個のサンプルを用意し、
図6及び
図7に示す装置を用いて、ヒータ加熱を10秒間施した際の加熱温度と太陽電池セル特性とヒータ加熱とランプ照射による同時加熱を10秒間行った太陽電池特性をそれぞれ測定し、高温加熱処理を行わなかった太陽電池セルの特性でそれぞれ規格化したものである。ヒータ加熱温度は、190℃から350℃まで行った。尚、使用したハロゲンランプは従来の半田溶着に用いるものより低出力の1000Wのものである。ランプ照射は、10秒間である。
【0059】
ここで、1000Wのハロゲンランプ装置21を用いたのは次の理由による。後述するように、1000Wのハロゲンランプ装置21を用いると、例えば、290℃のホットプレート装置21Bの温度で加熱中にランプ照射を行っても温度上昇がほとんどない。このことから、数十秒程度であれば温度管理がし易いという利点があるからである。1000Wのランプ強度よりランプ強度が強いと、照射によって太陽電池セルの温度が上昇してしまい、太陽電池セルの特性低下が起こりやすくなるので、条件管理が難しい。一方、ハロゲンランプ装置21の1灯のハロゲンランプを消し500Wにすると、太陽電池セル全面に対して均一に照射しにくいため、十分な効果が得られない。このことから、この実施例においては、1000Wのハロゲンランプ装置21を用いた。
【0060】
なお、太陽電池セル全面に対して均一に照射できるものであれば、1000Wより小さなランプ強度のハロゲンランプ装置21を用いることも可能である。
【0061】
ランプ照射時の太陽電池セルの温度は次の方法で確認した。はじめにホットプレート21Bの温度290℃に設定し、温度が安定した後で太陽電池セルを載せる。その際に、以下の2つの方法にで温度測定を行う。
【0062】
(1)太陽電池セル表面に熱電対を貼る。(2)太陽電池セル表面に日油技研工業株式社製のサーモクレヨンを塗布し、溶け方で温度判定を行う。
【0063】
上記の2つの方法で測定した結果、どちらの方法でもランプ照射に関係なく290℃以上300℃未満であった。
【0064】
表2及び
図8に示すように、各条件につきそれぞれ5個のサンプルを測定し、その最高値、最低値並びに平均値を示す。ヒータ温度は、それぞれの測定温度が上限値になるように、ヒータ温度を制御している。この結果、測定温度より各サンプルは若干低い温度での加熱になっているが、その温度範囲は誤差の範囲である。
【0065】
【表2】
【0066】
この表2及び
図8からホットプレートによる10秒間の加熱処理においては、200℃以上で明らかに特性向上の効果が認められる。しかし、必要以上に温度が高いと特性が低下する傾向が見受けられる。ホットプレートのみで10秒間の加熱処理においては、350℃以下の温度で加熱処理を施すことがよい。
【0067】
更に、ヒータ加熱とランプ照射を同時に行うと、ランプ照射を行わない場合よりも全ての温度範囲で効果が優れていることが分かる。このことから、ヒータ加熱に更にランプ照射を併用する方がよいことが分かる。
【0068】
続いて、ヒータ加熱とランプ照射を併用した場合の効果を確認するために、ホットプレートの温度を290℃、300℃、340℃にそれぞれ設定し、ハロゲンランプの光を照射した時の照射時間と特性の変化の関係を測定した。表3及び
図9に示すように、各条件につきそれぞれ5個のサンプルを測定し、その最高値、最低値並びに平均値を示す。ヒータ温度は、それぞれの測定温度が上限値になるように、ヒータ温度を制御している。この結果、測定温度より各サンプルは若干低い温度での加熱になっているが、その温度範囲は誤差の範囲である。
【0069】
【表3】
【0070】
この表3及び
図9に示すものは、ホットプレートとハロゲンランプの光照射で同時に太陽電池セルを加熱したものの太陽電池特性を高温加熱処理を施していないものの特性で規格化したものである。尚、使用したハロゲンランプは従来の半田溶着に用いるものより低出力の
図7に示した1000Wのものである。
【0071】
表3及び
図9に示すように、ランプの光を照射すると特性が向上していることが分かる。ヒータ温度が290℃の場合は、照射時間が15秒を超えると特性の変化が飽和していることが分かる。逆に、300℃を超えると、照射する時間がある程度長くなると特性が低下している。
【0072】
表3及び
図9から分かるように、ヒータ温度が290℃の場合は、ランプ照射とヒータの同時適用の場合には、15秒を超えたあたりで効果のピークがあり、それ以上照射してもあまり効果に変化が現れない。このことから、ヒータ温度が290℃の場合は、5秒以上照射すれば良く、スループットなどを考えれば照射時間は20秒以下でよい。
【0073】
また、300℃以上の場合には15秒未満、特に300℃〜340℃の場合には10秒以下に効果のピークがあり、それ以上の照射時間では熱ダメージにより特性が低下するが、ランプの光照射の効果により、ヒータ加熱だけの場合より高い出力になる。
【0074】
ヒータ温度が300℃の場合には、ランプの光照射の時間は2秒以上25秒以下が好ましい。
【0075】
また、ヒータ温度が340℃の場合には、2秒以上20秒未満、好ましくは5秒以上10秒以下である。よって、300℃以上350℃未満のヒータ温度の場合、2秒以上20秒未満、好ましくは5秒以上15秒未満、より好ましくは,5秒以上10秒以下である。
【0076】
図8と
図9を比較すると、同じ10秒間でもホットプレート(ヒータ)だけの加熱に比べて、ホットプレート(ヒータ)にランプ照射したものの方が効果が優れている。これはヒータ加熱に加えランプ照射したことによる光照射効果による特性改善効果だと考えられる。ホットプレート(ヒータ)の加熱を省略し、ランプ照射のみで、200℃以上の高温加熱した場合においても、ホットプレート(ヒータ)のみの加熱の場合より特性改善が改善すると考えられる。
【0077】
図10ないし
図12は、各条件につきそれぞれ5個のサンプルを用意し、
図7に示す装置を用いて、ヒータ加熱を10秒間施した際の加熱温度と太陽電池セルの各パラメータ特性とヒータ加熱とランプ照射による同時加熱を10秒間行った太陽電池セルの各パラメータ特性をそれぞれ測定し、高温加熱処理を行わなかった太陽電池セルの各パラメータ特性でそれぞれ規格化したものである。ヒータ加熱温度は、190℃から340℃まで行った。
尚、使用したハロゲンランプは従来の半田溶着に用いるものより低出力の1000Wのものである。ランプ照射は、10秒間である。
図10は、開放電圧特性、
図11は、短絡電流、
図12は、曲率因子(F.F.)を示している。
【0078】
図10及び
図12に示すように、ランプ照射の有無が、開放電圧と曲率因子に対して顕著に表れていることが分かる。
【0079】
図11からは、ヒータ加熱、ヒータ加熱とランプ照射したもの双方ともヒータ温度が上昇するにつれて短絡電流の特性が若干低下している。これは、非晶質シリコンと結晶系シリコンを組み合わせたヘテロ接合型太陽電池セルでは、非晶質層への熱ダメージを抑えるために、表面の電極(例えば、ITO膜)を低温(150℃未満)でスパッタ等により形成している。ITO膜は、150℃から200℃で形成することにより、結晶化することが知られている。しかし、150℃未満の低温では、アモルファス化しており、150℃以上の加熱によって結晶化が進む。ITO膜が結晶化することに伴い、ITO膜の屈折率が変化することにより、初期特性に比べ短絡電流の特性が若干低下する傾向が見られる。
【0080】
この実施例のように、比較的短時間であっても300℃の温度では、結晶化が進み、ITO膜の屈折率の変化が見られる。温度が350℃を超えるとこの傾向が強まり、短絡電流の低下が大きくなるため、短時間で処理を終える必要がある。10秒未満の短時間処理だとばらつきが大きくなり、制御が難しい。このことからヒータ温度は300℃以下が好ましい。
【0081】
一方、ITO膜以外の透明電極では、結晶化温度が比較的大きいものもある。しかし、350℃以上になると、10秒未満の短時間で非晶質膜中をドーパント等が移動し、開放電圧の低下が起きて有効な出力の向上が望めない。このため、ITO膜以外の透明電極を用いたとしても350℃以下のヒータ温度が望ましい。
【0082】
また、光照射は、可視光または赤外光もしくは可視光および可視光より長波長の光(赤外光)が好ましく、これらの波長域の光を含むのが好ましい。照射するランプとしては、ハロゲンランプに代えてキセノンランプや赤外線ランプ等を用いても良い。
【0083】
次に、照射するランプとして、高出力の赤外線ランプを用いて、短時間照射を行った。
赤外線ランプとしては、2.5KWのものを用いた。効果のばらつきは大きかったが、ハロゲンランプと同様の特性向上は確認できた。
図13は、各条件につきそれぞれ5個のサンプルを用意し、ランプ照射中も含めヒータ加熱を15秒間施した際の加熱温度と太陽電池セル特性と高温加熱処理を行わなかった太陽電池特性でそれぞれ規格化したものである。赤外線ランプの照射は、照射強度が大きいので、125V、3秒間と短時間照射を行った。
図13より、ヒータ温度が290℃までの間は特性が向上していることが確認できた。但し、ヒータ温度が340℃にあると特性が急激に特性が低下している。また、ランプの印加電圧を150V、175Vと上げると太陽電池セル温度が上昇しすぎるため、特性は低下した。光照射により、太陽電池セルの温度がヒータの設定温度より短時間に上昇した効果と考えられる。なお、これらの太陽電池セルの温度は、ヒータ温度より上昇していることは確認しているが、短時間であり、正確な温度は測定できなかった。
【0084】
また、本効果はランプ出力やヒータ温度によってその最適値が変化すると考えられる。
例えば、ランプ照射とヒータの同時適用の場合は、
図9に示すように、ヒータ加熱が低温の290℃であれば、ランプ照射はより長い方が最適値になり、ヒータ加熱が同じ300℃であってもランプの出力が1000Wより高出力の例えば2000Wのものを用いればランプ照射は短く数秒で十分である。更に、ランプ強度(出力)が強ければ、ヒータ加熱が無くても同様の効果が得られると考えられる。従って、実用的なタクトタイム(0より大きく60秒以下)で考えると、効果がある範囲はヒータ加熱無しからヒータ温度が400℃未満、ランプ出力が500W〜3000Wで照射時間は60秒以内になると考えられる。同様に、ヒータ加熱だけの場合は、加熱温度と加熱時間で効果があるため、最適な加熱温度は200℃〜350℃、加熱時間は60秒以内になると思われる。
【0085】
また、上記した実施例においては、ランプ照射を太陽電池セルの光入射側から行っているが、
図1の太陽電池セルのように、表裏面に同じ集電極の構成の両面発電タイプの太陽電池セルの場合には、光入射側の反対側の面からランプ照射を行っても同様の効果が得られていることを確認している。なお、両面発電タイプの太陽電池セルであれば、表裏面の集電極構成が異なるものでも同じ効果が得られる。
【0086】
更に、ランプ照射の時間とヒータ加熱の時間を同じにする必要はなく、ヒータで加熱した状態で、ヒータ加熱時間より少ない時間、ランプ照射を行いランプ照射による太陽電池セルの出力の向上を更に図るように構成しても良い。
【0087】
上記したこの実施形態においては、ホットプレートによるヒータ加熱とランプの光照射とを組み合わせているが、短時間の高温加熱ができるものであればホットプレートなどのヒータ加熱だけ、或いはランプ加熱だけでも良い。更に、段積みにしたセルを高温(300℃程度)の炉内に数秒間入れる方法なども考えられる。ただし、加熱温度、加熱時間に最適値があり、熱ダメージが少なくなるランプの光照射が望ましい。加熱時間が短時間であるため、装置タクトに加熱条件が影響されにくく、セル特性が向上する最適条件で加熱処理を行いやすい。また、ランプの光照射でセル特性の向上と接続タブの溶着工程を同時に行う場合は、セル全体の温度を上げて且つ半田を溶融させる必要があり、必要以上の熱量がセルに加わるため最適な特性改善が得られなかった。また、反り、割れなども発生し、歩留まりも悪くなる。
【0088】
また、上記した実施形態においては、フラックスを塗布した後に高温加熱を施しているが、フラックスによっては、高温加熱した後にフラックスを塗布した方が好ましい場合もある。
【0089】
尚、上記した実施形態においては、太陽電池セルとして非晶質シリコンと結晶系シリコンとを組合せることにより構成されたヘテロ半導体接合を有する太陽電池セルを用いた場合について説明したが他の構成の太陽電池セルにもこの発明は適用できる。例えば、Pn接合を有する多結晶シリコンからなる多結晶シリコン太陽電池セルにおいては、反射防止膜として窒化シリコン(SIN)を使っている場合は、その界面に水素パッシベーションを行うことで界面特性が改善されることが知られている。反射防止膜は高い温度の熱プロセス(Pn接合の形成)で形成されるので、この発明の加熱工程を行うことで、反射防止膜内の水素が多結晶の粒界などを改善し、太陽電池特性を向上させることが期待できる。
【0090】
また、太陽電池セルとして、非晶質シリコン、微結晶シリコンなどの薄膜系の太陽電池を用いた場合には、多くの界面を有するため、この発明の高温加熱処理工程を行うことで、界面特性を改善し、太陽電池特性を向上させることが期待できる。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。