【解決手段】太陽電池セルと、太陽電池セルを覆う封止材と、受光面保護材と、裏面保護材を備える太陽電池モジュールに関する。太陽電池セルは、導電型単結晶シリコン基板を有する光電変換部と、受光面電極と裏面電極を備え、受光面電極及び裏面電極はグリッド状であり、光電変換部の受光面、裏面及び側面において、受光面電極及び裏面電極が形成されていない領域の略全面が絶縁層で覆われている。封止材、絶縁層及び光電変換部の最表面層の屈折率(ne、nb及びnt)がne<nb<ntを満たすことが好ましい。裏面保護材は、セル側から順に黒色樹脂層及び反射層との積層膜を含む。黒色樹脂層は、波長750nm以上の近赤外線λAを透過し、波長が750nmより小さい可視光線λBを吸収する。反射層は波長750nm以上の近赤外線λAを反射する。
太陽電池セルと、前記太陽電池セルを覆う封止材と、前記太陽電池セルの受光面側に設けられた受光面保護材と、裏面側に設けられた裏面保護材を備える太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池セルは、導電型単結晶シリコン基板を有する光電変換部と、前記光電変換部の受光面に形成される受光面電極と、前記光電変換部の裏面に形成される裏面電極と、を備え、
前記受光面電極および裏面電極は、いずれも、グリッド状であって、前記光電変換部の受光面、裏面および側面において、受光面電極および裏面電極が形成されていない領域の略全面が絶縁層で覆われており、
前記封止材、絶縁層および光電変換部の最表面層の屈折率を各々ne、nbおよびntとしたとき、ne<nb<ntを満たし、
前記裏面保護材は、前記太陽電池セル側から順に、黒色樹脂層および反射層が積層された積層膜を含み、前記黒色樹脂層は、波長750nm以上の近赤外線λAを透過し、かつ波長が750nmより小さい可視光線λBを吸収し、前記反射層は、波長750nm以上の近赤外線λAを反射することを特徴とする太陽電池モジュール。
前記太陽電池セルは、光電変換部として、前記導電性単結晶シリコン基板の受光面側に一導電型半導体層と透明電極層を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図2に示すように、本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池セルと、前記太陽電池セルを覆う封止材と、前記太陽電池セルの受光面側に設けられた受光面保護材と、裏面側に設けられた裏面保護材を備え、前記太陽電池セルは、導電型単結晶シリコン基板を有する光電変換部と、前記光電変換部の受光面に形成される受光面電極と、前記光電変換部の裏面に形成される裏面電極と、を備える。
【0025】
前記受光面電極および裏面電極は、いずれも、グリッド状であって、前記光電変換部の受光面、裏面および側面において、受光面電極および裏面電極が形成されていない領域の略全面が絶縁層で覆われている。両面にグリッド電極を用いることで、単結晶シリコン基板として膜厚が薄いものを用いた場合であっても、全面に金属膜を勢膜した裏面電極を有するセルに比べて反りを抑制することができる。光電変換部の表面が絶縁層で覆われることで、両面グリッド状の電極を用いた場合であっても、セルへの湿分の浸入を抑制することができる。
【0026】
前記封止材、絶縁層および光電変換部の最表面層の屈折率を各々ne、nbおよびntとしたとき、ne<nb<ntを満たすことが好ましい。この範囲を満たすことで、光閉じ込め効果をより向上することができる。前記裏面保護材は、前記太陽電池セル側から順に、黒色樹脂層および反射層との積層膜を含み、前記黒色樹脂層は、波長750nm以上の近赤外線λAを透過し、かつ波長が750nmより小さい可視光線λBを吸収し、前記反射層は、波長750nm以上の近赤外線λAを反射する。
【0027】
このような裏面保護材を用いることで、後述のように、外観を保持しつつ、太陽電池セルを透過して裏面保護材に達した太陽光や、隣り合う太陽電池セル間などのセルが形成されていないモジュールの領域に入射して裏面保護材に達した太陽光を反射させて再度セルに閉じ込めることが出来る。
【0028】
[太陽電池モジュール]
以下に、本発明の太陽電池モジュールの好ましい実施形態について説明するが、以下に限定されるものではない。
【0029】
本発明の太陽電池のモジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、
図2に示すように、受光面電極7や裏面電極8に配線材204が接続されることによって、複数の太陽電池セルが直列または並列に接続され、封止材201、また受光面保護材200と裏面保護材203、により封止されることによりモジュール化が行われる。即ち、
図2のように各材料を配置して押圧等を行うことにより、太陽電池セルと太陽電池セルの間や、モジュールの端部にも封止材が流動してモジュール化が行われる。
図2においては、一の太陽電池セルの受光面電極に接続させた配線材を、他の太陽電池セルの裏面電極と接続させている。
【0030】
本発明においては、前記裏面保護材203は、
図3に示すように、前記太陽電池セル側から順に、黒色樹脂層2031および反射層2032とが積層された積層膜を有する。裏面保護材は、当該積層膜以外の層を有していてもよく、
図3に示すように、積層膜の太陽電池セルとは反対側に基材2033を有していてもよい。
【0031】
図3に示すように、前記黒色樹脂層2031は、波長750nm以上の近赤外線λAを透過し(A)、かつ波長が750nmより小さい可視光線λBを吸収する(B)。よって、樹脂層2031は黒色に見える。なお、本明細書においては、波長が750nm以上の光を近赤外線λA、750nmより小さい光を可視光線λBという。
【0032】
また、反射層2032は、波長750nm以上の近赤外線λAを反射する(A)。このように裏面保護材に使用される積層膜として、太陽電池セル側に、黒色樹脂層2031を適用することで、
図4に示すように、受光面保護材200、封止材201、太陽電池セル101を透過してきた波長750nm以上の近赤外線λAは、反射層で反射され、太陽電池セルに再入射させる(A)ことで、性能を向上させることができる。また同様に、λAAに示すように、受光面保護材から、隣接する太陽電池セルの間に入射してきた太陽光を再度反射層で反射させることにより、太陽電池セルに再度入射させることができる。
【0033】
さらに、本発明においては、後述のように、封止材、絶縁層および光電変換部の最表面層の波長600nmにおける屈折率を各々、ne、nbおよびntとしたとき、屈折率が、ne<nb<ntとなるように作製される。この範囲を満たす絶縁層を、光電変換部の略全面を覆うように形成することで、光閉じ込め効果をより向上できると共に、外部の湿分を防止することができるため、長期信頼性に優れた太陽電池モジュールを作製することができる。
【0034】
黒色樹脂層2031としては、λAを透過し、λBを吸収するものであればよいが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂と赤外線反射特性を有する無機顔料とを含有する熱可塑性樹脂組成物、互いに色相の異なる明度L
*45以上の三種以上の色料を含む着色層、主剤樹脂と暗色系の有機顔料を含む組成物等のλAを透過し、かつλBを吸収する材料が好ましい。
【0035】
中でも、黒色樹脂層として、オレフィン樹脂を含有していることが好ましい。オレフィン樹脂は、湿分透過率が2.0[g/m
2/day]程度以下であり、通常の樹脂の湿分透過率(10[g/m
2/day]以上)と比べて低いため、裏面保護材として金属箔を有さないものを用いた場合であっても、湿分が外部から侵入することをより抑制することができる。
【0036】
反射層2032として、λAを反射させるものであればよいが、例えば、白色顔料を含む樹脂からなる白色樹脂層、金属蒸着層を基材の上に積層させた金属反射層、又は金属箔などを使用することができるが、白色樹脂層を使用した場合、それ自身が基材の役割を果たし、基材2033を用いる必要がないため、好ましい。
【0037】
反射層2032として金属反射層や金属箔を用いる場合、空気に触れることによる腐食や短絡防止など、製品の信頼性や安全性を向上させる観点から基材2033が必要で、
図3に示すように、積層膜の反射層側に配置することが好ましく、基材として、ポリフッ化ビニルフィルム(例えば、テドラーフィルム(登録商標))等のフッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような有機フィルムが好ましい。
【0038】
積層膜として、例えば、上述のように白色樹脂層を含んだ基材上に接着性を有する黒色樹脂層を用いる材料、黒色樹脂層と反射層の間に、本発明の機能を損なわない範囲の接着剤を介して接着させる材料、黒色樹脂層と反射層、基材の構成の材料を用いることができる。
【0039】
封止材201としては、例えば、エチレンを主成分とするオレフィン系エラストマーを主成分としたポリエチレン系樹脂組成物の、高密度ポリエチレン(HDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ等の透光性の樹脂を用いることが好ましい。湿分の浸入を抑制するという観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・α-オレフィン共重合体、がより好ましい。特に、裏面保護材として、金属箔を有さないものを用いた場合であっても、裏面や側面などから湿分の侵入をより防止できるため、より長期信頼性の高い太陽電池モジュールを作製することができる。
【0040】
配線材の材料は、特に制限されないが、導電体として半田、また芯材として銅箔を用い、表面が導電体(半田)で被覆された半田めっき銅箔や、受光面電極もしくは裏面電極との接続面が凹凸構造を有した銅箔に銀が被覆された拡散タブを用いることが好ましい。半田や銀を銅箔の表面に形成することにより、銅箔の表面の腐食を防止する効果とともに集電極との接続の役割を果たす。また、配線材で反射された光による電流向上の効果も期待できる。
【0041】
この際、受光面側の配線材は、受光面電極と反対側(受光面保護材側)の表面に凹凸構造を有することが好ましい。
図5には、配線材の両面に凹凸構造を有するものを示す。この場合、λFに示したように、受光面側から入射した光を配線材の凹凸構造で反射させ、光をより多く取りこむことが可能となる。また裏面側の配線材は、裏面電極と反対側(裏面保護材側)の表面に凹凸構造を有することが好ましい。この場合、λRに示したように裏面保護材で反射した光が再度、裏面側の配線材の凹凸構造により反射され、光をより多く取り込むことが可能となる。
【0042】
配線材は、受光面側および裏面側表面のうち、少なくとも受光面側に凹凸構造を有していれば良く、裏面側は平坦であってもよいが、太陽電池セルの受光面電極と、隣接する太陽電池セルの裏面電極を配線材で接続させた場合、通常、太陽電池セルの受光面電極と接着する側(配線材の裏面側)とは反対面側(配線材の受光面側)が、他の太陽電池セルの裏面電極と接着される。従って、本発明の効果をより得るために、裏面側にも凹凸構造を有する、即ち
図5に示すように、配線材の両面に凹凸構造を有することが好ましい。
【0043】
配線材と太陽電池セルの接続は、接着剤により接着する方法が挙げられる。接着剤としては、一般的に導電性微粒子を含有する樹脂製接着剤で接着する方法、導電性微粒子を有さない樹脂製接着剤を介して、電極と配線材を接触させて導通させる方法、あるいは半田付けによる方法などが挙げられる。ここで一般的に、ヘテロ接合太陽電池セルは、熱によるダメージを受けやすいが、本発明の場合、絶縁層を光電変換部の表面上の略全面に形成しているため、熱によるダメージを低減できるため、半田付けによる方法も好ましく使用できる。また該金属との接合のしやすさや熱ダメージをより抑制する観点から、導電性微粒子を含有する樹脂製接着剤により接着されることがより好ましい。
【0044】
太陽電池モジュールは、太陽電池セルと、樹脂製接着剤を介して配線材を互いに接続し太陽電池ストリングを作製し、次に、受光面保護材を準備し、当該受光面保護材上に、封止材、太陽電池ストリング、封止材及び裏面保護材を順次積層して積層体とすることにより太陽電池モジュールを作製することができる。 次に、上記積層体を所定条件で加熱することにより、封止材を硬化させることが好ましい。そしてAlフレーム等を取り付けることで太陽電池モジュールを作製することが好ましい。
【0045】
以下の実施形態では、太陽電池セルとして、ヘテロ接合太陽電池セルを用いた場合について説明するが、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0046】
[太陽電池セル]
本発明の太陽電池セルとしては、単結晶シリコン基板を有するものを用いる。太陽電池セルとしては、例えば、
図1のように一導電型の単結晶シリコン基板の表面に、単結晶シリコンとはバンドギャップの異なるシリコン系層を有することで、拡散電位が形成された結晶系太陽電池(ヘテロ接合結晶シリコン太陽電池)を用いることが好ましい。太陽電池セルは、光電変換部として、一導電型単結晶シリコン基板の一方の面(受光面側の面)に、一導電型シリコン系層および受光面側透明電極層をこの順に有する。
【0047】
一導電型単結晶シリコン基板の他方の面(受光面側とは異なる面)には、逆導電型シリコン系層および裏面側透明電極層をこの順に有することが好ましい。光電変換部表面の受光面側透明電極層上には、受光面電極が形成されている。裏面側透明電極層上には裏面電極が形成されている。
【0048】
導電型単結晶シリコン基板1としては、n型単結晶シリコン基板とp型単結晶シリコン基板を用いることが出来るが、結晶基板内のキャリア寿命の長さから、n型単結晶シリコン基板を用いることが好ましい。p型単結晶シリコンで、光照射によってp型ドーパントであるB(ホウ素)が影響して再結合中心となるLID(Light Induced Degradation)が起こる場合があるが、n型ではより抑制できる為である。
【0049】
導電型単結晶シリコン基板1としては、膜厚が50〜200μmが好ましく、60〜180μmがより好ましく、70〜180μmが更に好ましい。この範囲の膜厚の基板を用いることにより、より材料コストを低減することができる。このように薄い基板を用い、裏面電極として全面に金属膜を形成した場合、反りが生じやすくなるものの、本発明のように両面グリッドの電極を形成することにより、応力がかかり難くなり、反りを抑制することができる。
【0050】
導電型シリコン系層(一導電型シリコン系層2および/または逆導電型シリコン系層3)としては、p型シリコン系層とn型シリコン層を使用することが考えられる。用いる材料としては、非晶質成分を含む非晶質シリコン層が好ましい。ドーパント不純物としては、n型シリコン層であればP(リン)、p型シリコン層であればB(ホウ素)が好ましく用いられる。
【0051】
導電型単結晶シリコン基板1と一導電型シリコン層2の間や導電型単結晶シリコン基板1と逆導電型シリコン層3の間に真性シリコン層を挿入することが好ましい。真性シリコン層を挿入することで、導電型単結晶シリコン基板1の表面欠陥が終端され、ライフタイムが向上することで、太陽電池としての出力も向上する。
【0052】
導電型シリコン系層の製膜方法は特に限定されないが、精密な膜厚制御を必要とするため、CVD(Chemical Vaper Deposition)法による製膜が好ましい。その場合、材料ガスとしては、SiH4ガスを用い、ドーパント添加ガスとしては、水素希釈されたB2H6やPH3が好ましく用いられる。また、光の透過性を向上させるために酸素や炭素といった不純物を微量添加しても良い。その場合、CO2やCH4といったガスをCVD製膜の際に導入することにより形成することができる。
【0053】
導電型シリコン系薄膜3は、一導電型または逆導電型のシリコン系薄膜である。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型が用いられる場合、一導電型シリコン系薄膜、および逆導電型シリコン系薄膜は、各々n型、およびp型となる。p型またはn型シリコン系薄膜を形成するためのドーパントガスとしては、B2H6またはPH3等が好ましく用いられる。また、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、予めSiH4やH2で希釈された混合ガスを用いることが好ましい。導電型シリコン系薄膜の製膜時に、CH4、CO2、NH3、GeH4等の異種元素を含むガスを添加して、シリコン系薄膜を合金化することにより、シリコン系薄膜のエネルギーギャップを変更することもできる。
【0054】
シリコン系薄膜としては、非晶質シリコン薄膜、微結晶シリコン(非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む薄膜)等が挙げられる。中でも非晶質シリコン系薄膜を用いることが好ましい。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型単結晶シリコン基板を用いた場合の光電変換部50の好適な構成としては、透明電極層6a/p型非晶質シリコン系薄膜3a/i型非晶質シリコン系薄膜2a/n型単結晶シリコン基板1/i型非晶質シリコン系薄膜2b/n型非晶質シリコン系薄膜3b/透明電極層6bの順の積層構成が挙げられる。この場合、前述の理由から、p層側を受光面面とすることが好ましい。
【0055】
(透明電極層)
ヘテロ接合太陽電池101の光電変換部50は、導電型シリコン系薄膜3a,3b上に、透明電極層6a,6bを備えることが好ましい。シリコン基板の受光面側に、シリコン基板と異なる導電型のシリコン層が配置された場合、透明電極層6aは、側面や裏面にも回り込んでしまい、表面と裏面との間の短絡やリークを生じる場合がある。このような薄膜の回り込みを防止するために、透明電極層が形成されていない領域(絶縁領域ともいう)が基板の受光面側または/および裏面側の周縁部にあることが好ましく、該領域にシリコン系層が製膜されていることが好ましい。ここで、「周縁部」とは、基板の端部から300μm〜1000μm程度の領域を意味する。
【0056】
この際、絶縁領域は、受光面側および裏面側にあってもよく、両面の透明電極層をマスク製膜する等により形成することができるが、受光面側もしくは裏面側のみに絶縁領域が形成されることが好ましい。この場合、受光面もしくは裏面の透明電極層をマスク製膜し、他面を全面製膜することにより形成できる。この場合、通常、全面製膜した透明電極層が側面にも回りこんで製膜されるため、両面マスクの場合に比べて、側面からの光閉じ込め効果も期待できる。また側面からの湿分の浸入をより抑制できるため好ましい。
【0057】
裏面側(この場合、シリコン基板と同じ導電型のシリコン層が配置された側)については、再結合やリークの影響が比較的小さいので、出力を落とさずに透明電極層6b(透明電極ともいう)を全面に形成することが可能である。従って、裏面側では、透明電極層は、主面側の全面に形成されることが好ましい。導電型単結晶シリコン基板の端部を含む周縁部の構造としては、シリコン基板側面からも光を入射できることから、前述のように受光面側(導電型シリコン基板と異なる導電型を示す導電型シリコン層の側)の透明電極層を製膜する際にマスクを用いて製膜するなどして、主面の端部に透明電極層が製膜されないようにすることが好ましい。
【0058】
受光面側透明電極層および裏面側透明電極層の膜厚を各々W1およびW2としたとき、0.9≦W2/W1≦1.1を満たすことが好ましい。すなわち、受光面と裏面側の透明電極層の厚みが略同じである。中でも、0.95≦W2/W1≦1.05を満たすことがより好ましく、0.98≦W2/W1≦1.02を満たすことがさらに好ましく、W2/W1=1.00であることが特に好ましい。上記範囲を満たす透明電極層を用いることで、表裏の透明電極層を製膜する際に、コスト低減効果及び出力向上効果が期待できる。
【0059】
受光面側透明電極層および裏面側透明電極層の膜厚(W1およびW2)は、W1=40〜80nmが好ましく、50〜70nmがより好ましい。またW2=40〜80nmが好ましく、50〜70nmがより好ましい。上記範囲で、受光面側透明電極層および裏面側透明電極層の膜厚が同じであることが特に好ましい。
【0060】
両主面の透明電極を略同じ膜厚範囲に設定するコスト低減効果について説明する。両主面への透明電極形成は、スパッタ法かRPD(ReactivePlasma Deposition)法によって行なわれることが好ましく、現在、一般的に行われている。
【0061】
この場合、量産時、材料利用効率の観点から、どちらの製膜方法もインライン型の大型設備を用いる場合が多い。両主面の透明電極層の膜厚を上記範囲に設定することで、同じスピードで移動する太陽電池セルに対して、同じ出力で製膜するプロセスを選択することが可能となり、材料利用効率及び設備の稼動効率を飛躍的に向上させることができる。中でも特にW2/W1=1.00を満たすように設定することで、一方の透明電極層と他方の透明電極層を、同一の製膜条件でより容易に製膜することができるため、好ましい。
【0062】
受光面側及び裏面側の透明電極層としては、一般に、透明導電性金属酸化物、例えば酸化インジウムや酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタンやその複合酸化物などからなる薄膜が用いられる。中でも、酸化インジウムを主成分とするインジウム系複合酸化物が好ましい。高い導電率と透明性の観点からは、インジウム酸化物が特に好ましく用いられる。また、信頼性やより高い導電率を確保する為に、インジウム酸化物に不純物を添加して用いることが更に好ましい。用いる不純物としては、Sn、Ti、W、Ce、Ga等が挙げられる。
【0063】
(集電極)
透明電極上にはグリッド電極が形成される。本発明では、受光面電極および裏面電極として、グリッド状の集電極(グリッド電極ともいう)を用いる。ここで、裏面電極のフィンガー本数は、裏面電極及び裏面側透明電極層中を電流が流れる際の直列抵抗を抑える観点で設計することが好ましい。結果として、受光面面側の受光面電極のフィンガー電極の本数は、裏面電極の半分程度か1/3程度であることが好ましい。
【0064】
このように両面をグリッド構造にすることで、工程の簡略化等が期待できる。中でも、受光面電極と裏面電極がいずれもめっき層を有する場合、めっき層の膜厚(例えば、後述のように銅めっき層上に錫めっき層を形成した層の各々の膜厚)をより自由に設計することができる。
【0065】
グリッド電極としては、導電性ペースト、めっき層などにより形成することができるが、グリッド電極としてめっき層を有することが好ましい。これにより、従来のようにAgペーストのみによりグリッド電極を形成した場合に比べて、より低コストでより低抵抗な集電極を形成することができる。めっき層としては、錫、銅、銀、ニッケルなどが用いられるが、中でも、より低コストでより低抵抗化が期待できる観点から、銅を用いることが好ましい。
【0066】
また、めっき層としては複数層を用いても良く、例えば銅めっき層を形成後に銅の酸化を防止するために錫めっき層等により保護層を形成してもよい。受光面電極と裏面電極の材料は、同じであっても異なっていても良いが、材料を一元化したコスト低減効果や、受光面と裏面側の応力や熱膨張を均一化する点で同一の材料を用いることが好ましい。特に、単結晶シリコン基板として、膜厚が50〜200μm程度と薄いものを用いた場合に生じうる反り等をより抑制することができる。
【0067】
本発明においては、受光面電極または裏面電極の少なくとも一方は、フィンガー電極を有し、
図1(b)に示すようにフィンガー電極71とバスバー電極72により構成されていることが好ましい。 グリッド電極として、めっき層を形成する場合、無電解めっきや電解めっきが挙げられるが、電解めっきによってグリッド電極を形成することが好ましい。電解めっきによる形成は、無電解めっきと異なり、クーロン量によってめっきする金属の付着量を制御できるため、生産性の点で好ましい。
【0068】
電解めっきにより形成する場合、このめっき層の下地となる下地電極層を有することが好ましい。即ち、受光面電極および/または裏面電極として、下地電極層およびめっき層を有することが好ましい。透明電極層と界面を形成する下地電極層の材料としては、Au、AgやNi、Cu、Sn等が考えられるが、透明電極層との接触抵抗を低く保ち、酸化を防ぐという観点から、Ag、Ni、Snが好ましい。また信頼性を維持しつつ、コストも低減する為に、上記材料を組み合わせて使用しても良い。すなわち、下地電極層は複数層であってもよい。下地電極層は、無電解めっき、スパッタ、蒸着、または印刷などによって形成できるが、材料の利用効率という観点では、印刷による形成が好ましい。例えば、Agペーストなどの導電性ペーストを印刷により形成した下地電極層を用いることができる。
【0069】
(絶縁層)
本発明においては、光電変換部の受光面、裏面および側面において、受光面電極および裏面電極が形成されていない領域の略全面が絶縁層で覆われている。ここで、「略全面」とは、受光面電極および裏面電極が形成されていない領域の95%以上覆われている状態を意味する。中でも、絶縁層による水蒸気バリア効果や水素脱離防止効果の点で、98%以上が覆われていることが好ましく、99%以上が覆われていることがより好ましい。また本発明の絶縁層は、膜厚が10nm以上150nm以下であることが好ましい。このような範囲の厚みを有する絶縁層を用いることにより、耐湿性の向上が可能となる。
【0070】
絶縁層の材料としては、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル、エポキシ、ポリウレタンなどの有機材料や無機材料を用いることができるが、光、熱、湿分の安定性の観点で無機材料を用いることが好ましい。無機材料としては、例えば、酸化マグネシウムや酸化銅、酸化ニオブなどを用いることが出来るが、CVDや印刷によって形成できるSiO、SiN、SiON等の透光性の絶縁材料が好ましい。
【0071】
下地電極層の形成に印刷を用いた場合、WO2013/077038国際公開パンフレットに記載されているように、下地電極層として、導電性ペースト等をスクリーン印刷により形成することが好ましく、また絶縁層の形成にCVD法を用いることが好ましい。
【0072】
印刷によって形成された多孔質のペースト下地電極表面の大部分をCVDによって形成された絶縁層が覆うことで、めっき液が多孔質中に侵入することを防ぐことが出来る。また、多孔質ペースト電極がCVD製膜に伴う熱膨張や圧力変化によって形状変化することで、表面に形成された絶縁層に亀裂が入りめっき銅の発生起点となる。
【0073】
本発明においては、光電変換部の受光面、裏面および側面において、受光面電極および裏面電極が形成されていない領域の略全面を絶縁層で覆うことにより、湿分の太陽電池セルへの浸入を抑制し、性能低下を防ぐことができる。また太陽電池として、例えば、非晶質シリコン系薄膜層を有するヘテロ接合太陽電池などを用いた場合、非晶質シリコン系薄膜層は、湿分によりダメージを受けやすい。しかしながら本発明の太陽電池モジュールを用いることにより、湿分の太陽電池セルへの浸入をより防止することができる。
【0074】
さらには、両主面および側面が絶縁層で覆われるため、後述のように、裏面側保護材として金属フリーのものが用いることができ、モジュール部材のコストを低減することができ、また選択可能なモジュール構造の幅も広がる。
【0075】
前述した透光性樹脂などの金属箔を有しない裏面側保護材を用いた場合、湿分の浸入が予想される為、裏面側絶縁層に水蒸気バリア膜としての機能が要求される。この場合、裏面側絶縁層の膜厚としては、10nm以上150nm以下が好ましく、30nm以上150nm以下がより好ましく、30nm以上70nm以下が特に好ましい。また受光面側の絶縁層は、湿分の浸入防止や光学的ロス低減の点から、10nm以上150nm以下が好ましく、30nm以上150nm以下がより好ましく、30nm以上70nm以下が特に好ましい。インラインCVD等を用いる場合、生産性の観点から、受光面側と裏面側の絶縁層の膜厚は、合わせることが好ましい。異なるCVDを用いて特に膜厚を合わせるメリットがない場合、裏面側絶縁層を厚くすることが好ましい。
【0076】
ここで、通常、ヘテロ接合太陽電池に使用される透明電極層の膜厚は、光学特性と直列抵抗の観点から、例えば受光面側では100nm程度、裏面側では85nm程度と受光面側の方が裏面側よりも膜厚が15〜20%程度大きいものが用いられてきた。一方、本発明においては、受光面側と裏面側の厚みがほぼ同程度である透明電極層を用いた場合であっても、絶縁層の厚みや屈折率等を調整することにより、コスト低減効果及び出力向上効果が期待できる。
【0077】
一方、裏面では、太陽電池を透過して裏面保護材に入射して裏面保護材にて反射した反射光、または/および隣接する太陽電池との間に入射して裏面保護材にて反射した反射光などが殆どであり、受光面に直接入射する太陽光と比較して、長波長成分の割合が大きい。よって、裏面側の光入射をより向上するためには、受光面側と比較して、絶縁層の膜厚が5〜10%以上厚いことが好ましい。
【0078】
更に、モジュール構造からして、受光面側(受光面側)には受光面保護材としてガラス基板200が配置されることが好ましく、上述のように裏面保護材として金属フリーの透光性樹脂などを用いた場合、モジュール裏面側からの湿分の進入が比較的多くなる。この湿分に対するバリア性を確保する観点でも、裏面側の絶縁層膜厚は、受光面側と比較して厚いことが好ましい。この際、表面側絶縁層は40〜50nm、裏面側絶縁層は、60〜70nmが好ましい。
【0079】
また、絶縁層の膜厚が両面で同じ場合であっても、屈折率が両主面側で異なっていれば、前述した受光面側と裏面側の入射光の波長分布にそれぞれ適した光学構造を形成することが可能である。一般的に強い水蒸気バリア性を有し、屈折率の高いSiNを裏面絶縁層として用いることで、モジュールとしての信頼性を向上するため好ましい。
【0080】
絶縁層の波長600nmにおける屈折率nbは、光学的な観点から前述のように封止材neよりも大きく、光電変換部の最表面層の屈折率ntよりも小さいものを用いる。すなわち、ne<nb<ntを満たすものを用いる。
図1に示すように、ヘテロ接合太陽電池の場合、光電変換部の最表面層が透明電極層であるため、透明電極層の屈折率よりも小さいものを用いる。
【0081】
ここで、封止材、絶縁層、または光電変換部の最表面層の屈折率が、受光面側および裏面側で値が異なる場合、少なくとも受光面側の封止材、絶縁層、光電変換部の最表面層の屈折率がne<nb<ntを満たせばよい。中でも、裏面保護材で反射した光を裏面側からセルにより多く取り込む観点からは、裏面側においても、ne<nb<ntを満たすことが好ましい。
【0082】
絶縁層の屈折率は、上記範囲を満たせばよいが、封止材の屈折率は一般的に1.4〜1.5であり、透明電極層の屈折率は1.9〜2.3であることから、絶縁層の屈折率nbは1.5以上2.3以下であることが好ましい。中でも、より光閉じ込め効果を向上させる観点から、nbは1.5以上1.8以下が好ましい。屈折率が1.5以上1.8以下の材料(例えばSiOなど)を絶縁層に用いる場合、光学的な観点から膜厚を自由に設計できる。今後、特に限定する場合を除き、屈折率は波長600nmにおけるものとする。なお、屈折率は、エリプソメトリーにより測定することができる。
【0083】
透明電極層は電気を流す材料である以上、電荷を有し透明電極中を移動するキャリアが存在する為、キャリアによる光の吸収が存在する。透明電極の膜厚を薄くすることで、透明電極膜中のキャリア密度は一定の場合、キャリアの絶対数が減るので、キャリアによる光吸収は膜厚に比例して低減できる。一方で、透明電極膜厚を低減した分、光吸収の無い絶縁層を形成して、反射防止効果を確保する必要がある。
【0084】
上述のようにモジュール封止材の屈折率は一般的に屈折率が1.4〜1.5程度であるため、反射防止効果を得る為には、絶縁層の屈折率は、透明電極よりもやや低い程度が好ましく、1.7〜1.9が好ましい。従って、上述の光閉じ込め効果と、反射防止効果をより向上させる観点から、絶縁層の屈折率は、1.75〜1.8が好ましい。なお、絶縁層のうち、受光面側絶縁層と裏面絶縁層の屈折率は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0085】
また、受光面側、裏面側とも光入射方向において連続的な屈折率が変化する構成にすることが好ましい。つまり、例えば屈折率1.5の封止材と屈折率1.9程度の透明電極層を有する場合、屈折率1.7程度の絶縁層を封止材と透明電極層の間に挿入することが好ましい。こうする事で、反射防止効果が発揮される。
【0086】
なお、本実施形態では、下地電極層上に開口部を有する絶縁層を形成し、該開口部にめっき層を形成した形態について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、予め開口部を有する絶縁層を形成後、該開口部にグリッド電極を形成してもよい。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
実施例1のヘテロ接合太陽電池モジュールを以下のように製造した。
【0088】
一導電型単結晶シリコン基板として、入射面の面方位が(100)で、n型単結晶シリコンウェハを用いた。次にアセトン中で洗浄した後、2重量%のHF水溶液に5分間浸漬し、表面の酸化シリコン層を除去し、超純水によるリンスを2回行った。こうして準備した基板1を75℃に保持した5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬した。
【0089】
最後に、2重量%のHF水溶液に5分間浸漬し、超純水によるリンスを2回行い、常温で乾燥させた。AFM(機種)による導電型単結晶シリコン基板1の表面観察を行ったところ、基板受光面、及び裏面には(111)面が露出した四角錐状のテクスチャ構造が形成されており、その算術平均粗さは2100nmで、基板の厚みは160μmであった。基板の厚みは、表裏の凸間の距離を求めた。 エッチングが終了した単結晶シリコン基板1をCVD装置へ導入し、受光面側に真性非晶質シリコン層を4nm製膜し、そのまま一導電型シリコン層2として、p型非晶質シリコン層を5nm製膜した。
【0090】
なお、本実施例における薄膜の膜厚は、シリコン基板上に同条件にて製膜された薄膜の膜厚を、分光エリプソメトリー(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)にて測定することにより求められた製膜速度から算出された値である。また、テクスチャが形成されたシリコン基板表面に形成された層については、テクスチャの斜面と垂直な方向を膜厚方向とした。
【0091】
i型非晶質シリコン層の製膜条件は、基板温度が180℃、圧力130Pa、SiH4/H2流量比が2/10、投入パワー密度が0.03W/cm−2であった。p型非晶質シリコン層3の製膜条件は基板温度が190℃、圧力130Pa、SiH4/H2/B2H6流量比が1/10/3、投入パワー密度が0.04W/cm−2であった。なお、上記でいうB2H6ガスは、B2H6濃度を5000ppmまでH2で希釈したガスを用いた。
【0092】
次に裏面側へ、真性非晶質シリコン層を5nm製膜した。真性非晶質シリコン層上に逆導電型シリコン層3としてn型非晶質シリコン層を10nm製膜した。n型非晶質シリコン層の製膜条件は、基板温度が180℃、圧力60Pa、SiH4/PH3流量比が1/2、投入パワー密度が0.02W/cm−2であった。なお、上記でいうPH3ガスは、PH3濃度を5000ppmまでH2で希釈したガスを用いた。
【0093】
次に、基板1をRPD設備へ移送し、p型非晶質シリコン層上に受光面側透明電極層として屈折率1.9の酸化インジウム層を80nm製膜した。蒸着源にはIn2O3へタングステンを1%添加したものを用いた。また、周縁部0.5〜0.75mmはマスクでカバーすることで、酸化インジウム層が製膜されないようにした。
【0094】
次にn型非晶質シリコン層上へ裏面透明電極層として屈折率1.9の酸化インジウム層をRPD法によって、80nm製膜した。受光面透明電極層と同様に、蒸着源にはIn2O3へタングステンを1%添加したものを用いた。尚、裏面側透明電極層の製膜時には、マスクは用いずに端部のみを保持し、裏面全面へ製膜を行った。このとき、裏面透明電極層は、受光面透明電極層と同様の製膜条件により製膜した。
【0095】
次に受光面側の酸化インジウム層上に、受光面電極として、下地電極層となる銀ペーストをスクリーン印刷し、140℃で2分程度の仮焼成を行った。次に裏面側の酸化インジウム上に裏面電極として、下地電極層となる銀ペーストをスクリーン印刷し、140℃で20分程度の仮焼成を行った。この際、両主面の下地電極層(銀ペースト)の厚みは15μmであった。この際、受光面電極は、後のモジュール化工程において接続部材と接続するための受光面バスバー電極と、フィンガー電極により構成され、裏面電極は、裏面バスバー電極と、フィンガー電極により構成されている。また、裏面電極の電極本数に対し、受光面電極のフィンガー電極の本数を半分にした。
【0096】
その後、基板1をCVD設備へ搬送し、受光面と裏面に、それぞれ受光面側絶縁層及び裏面側絶縁層として屈折率1.7のSiOx層をそれぞれ40nmと60nm製膜した。SiOxの製膜条件は、基板温度が180℃、圧力60Pa、SidH4/CO2流量比が1/10、投入パワー密度が0.04W/cm−2であった。この際、受光面側絶縁層を製膜後に、基板を反転させて裏面側絶縁層を製膜した。なお、屈折率は、エリプソメトリー(商品名M−2000FI、ジェー・エー・ウーラム社製)により求めた。
【0097】
絶縁層製膜の際の加熱工程によって、下地層であるペースト電極から脱ガス及びペースト電極の体積変化によって、下地層上に製膜された受光面側絶縁層及び裏面側絶縁層に開口部が多数生じた。
【0098】
その後、基板を電解めっき設備へと投入し、受光面電極及び裏面電極7へプローブを接続し、銅めっき液に浸漬させ電解めっきにより、夫々の集電極である銀ペーストの表面に、夫々、受光面側絶縁層及び裏面側絶縁層の開口部を通じて、銅を10μm析出させた。純水リンスの後、錫めっき液に浸漬させ電解めっきを行うことで、夫々の集電極である銅表面に錫を3μm析出させ、純水によるリンスを行った。このようにして、受光面側および裏面側の各々に、銀ペースト/銅めっき層/錫めっき層の構成の受光面電極および裏面電極を形成した。
【0099】
受光面電極、裏面電極上に、各々、導電性接着剤を介して、配線材を配置し、温度180℃、15秒間、2MPaの圧力を加え、接続し、太陽電池ストリングを作製した。導電性接着剤として、エポキシ樹脂を主成分とした樹脂中に、平均粒子径約10μmφのNiを10質量%含有したフィルム上樹脂を選択した。また配線材としては、銅箔の表面を覆うように半田が形成された半田めっき銅箔を用いた。
【0100】
以上の様にして、配線材を接続した太陽電池ストリングを用い、太陽電池モジュールを作製した。受光面保護材として白板ガラスを、封止材として屈折率1.5のEVAを用いた。裏面保護材として、黒色樹脂層と反射層を積層させた積層膜を用い、黒色樹脂層が太陽電池セル側になるように配置した。黒色樹脂層として、互いに色相の異なる明度L
*45以上の三種以上の色料を含む着色層を用い、反射層として、Al箔を用いた。
【0101】
更に、反射層の太陽電池セルと反対側に、基材としてPETを積層させた構造(太陽電池セル側から、黒色樹脂層/反射層/基材)の裏面保護材を適用した。なお黒色樹脂層として使用する着色層は、750nmより小さい可視光線λBを吸収し、かつ波長が750nm以上の近赤外線λAを透過し、また反射層として使用するAl箔はλAを反射させるものである。白板ガラス、EVA、太陽電池ストリング、EVA、裏面保護材の順に積層させ、加熱しながら加圧することで、一体化させた。大気圧での加熱圧着を5分間行い、続いて、150℃にて60分間保持して、EVAを架橋させた。このようにして、
図2に示すような太陽電池モジュールを作製した。
【0102】
(実施例2)
封止材として、屈折率1.5のLDPEを、裏面保護材としての反射層として白色顔料を含む白色樹脂層とPETとが積層された白色PETを、白色樹脂層が黒色樹脂層に接するように積層したものを用いた点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。なお、反射層として使用する白色PETはλAおよびλBを反射させるものである。EVAの水蒸気透過率が、15.0g/m
2/day(40℃,90%)であったのに対し、LDPEは、2.1g/m
2/day(40℃,90%)であった。またLDPEの屈折率は1.5であった。
【0103】
(比較例1)
太陽電池セルの集電極として、スクリーン印刷によりAgペーストを厚み35μm印刷した構造、すなわち、めっき層、絶縁層を適用しない構造を採用した点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。
【0104】
(比較例2)
裏面保護材として、ブラックカーボンを用いた黒色系バックシートを適用した点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。黒色系バックシートは、λAおよびλBとも吸収するものである。
【0105】
(比較例3)
絶縁層の屈折率を1.5に変更した点を除いて、実験例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。比較例3においては、封止材と絶縁層の屈折率が同じであった。
(比較例4)
裏面電極としてスパッタ法で100nmの銀を裏面の全面に形成した後電解めっきにより銅を2μm、錫を1μm全面に形成した点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。
(比較例5)
裏面電極としてスパッタ法で100nmの銀を裏面の全面に形成した後電解めっきにより銅を2μm、錫を1μm全面に形成し、裏面保護材として白色樹脂層とPETとが積層された白色PET(白色系バックシート)を用いた点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。白色系バックシートは、λAおよびλBのいずれも反射するものである。
【0106】
[太陽電池モジュール初期性能測定]
各実験例、比較例のヘテロ接合太陽電池モジュール特性の測定を行った。また、比較例1に示す方法において作製した太陽電池セルで作製したモジュールにおける特性評価結果を基準(1.000)とし、各実験例に係る太陽電池モジュールにおける太陽電池特性の評価結果を比較する事により、出力の相関を評価した。
【0107】
[耐湿性試験]
次に、実施例および比較例による太陽電池モジュールについて、耐湿性試験を行った。耐湿性試験は、IEC61215に記載されている内容に準じて行った。太陽電池モジュールの初期出力を測定した後、太陽電池モジュールを温度85℃、湿度85%以上の恒温恒室槽中に2000時間保持した。試験後、太陽電池モジュールの出力を再び測定し、太陽電池モジュールの初期出力に対する2000時間の保持後の出力の割合(%)(以下、耐湿性試験の保持率という)を求めた。
【0108】
求めた初期出力比に基づいて、太陽電池モジュールの耐湿性を評価した。なお、IEC61215では、耐湿性試験後の保持率は95.0%以上が合格基準として規定されている。本発明では、より長期で厳しい条件での耐湿性を評価するために、通常実施される1000時間よりも長い2000時間まで保持し、太陽電池モジュールの保持率を求め、98.0%以上を合格とした。
【0109】
[外観]
外観は、作製したモジュールを目視により判定し、太陽電池セル、および家屋の屋根と同色の場合を○、異なる場合を×とした。
上記の結果をまとめたものを表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
比較例1と、実施例1、2を比較すると、実施例1,2では初期性能が向上した。これは、実施例1,2では、めっき層によりグリッド電極を形成したため、Agペーストを用いた比較例1と比べて電気抵抗を低減できたためと考えられる。また実施例1,2では、比較例1と比べて耐湿性試験後の保持率が向上した。これは、太陽電池セルの受光面、裏面、及び側面が絶縁層で覆われているため、太陽電池モジュールの端部(側面)や裏面側から浸入した湿分が、太陽電池セルに浸入することを防止できたためと考えられる。
【0112】
また、封止材として、LDPEを用いた実施例2の方が、EVAを用いた実施例1より耐湿性試験後の保持率をより低減することができた。これは、LDPEの水蒸気透過率は、EVAより1/10程度低いため、主に側面からの湿分のモジュール内への浸入を抑制し、太陽電池セルに浸入することをより防止できたためと考えられる。
【0113】
比較例2、実施例1を比較すると、3種以上の色料を黒色樹脂層として用いた裏面保護材を適用した実施例1は、ブラックカーボンを用いた裏面保護材を適用した比較例2の黒色系バックシートと同様にセルとほぼ同色になり、外観は良好であった。さらに、実施例1では、比較例2と比べて4%太陽電池モジュール性能が向上した。これは、ガラス板から入射し、裏面保護材に到達した太陽光は、比較例2では全波長(λA、λB共に)裏面保護材に吸収されてしまったのに対し、実施例1では、
図4に示すように、750nm以上の近赤外光λAは裏面保護材の反射層にて反射し、裏面側再度太陽電池セルに入射したため、太陽電池モジュールの性能が向上したと考えられる。
【0114】
比較例3と、実施例1を比較すると、絶縁層の屈折率を1.7にした実施例1は、1.5にした比較例3より、1%太陽電池モジュール性能が向上した。これは、ガラス板から入射した太陽光が、材料界面の屈折率差により反射が低減され、太陽電池モジュールの性能が向上したためと考えられる。
【0115】
比較例4と、実施例1を比較すると、裏面グリッド電極にした実施例1は、裏面電極として全面にAg/Cu/Snを形成した比較例4より、0.6%太陽電池モジュール性能が向上した。これは、裏面電極をグリッド電極にすることで、セルの反りを抑制でき、モジュール化のダメージを低減することができたためと考えられる。
【0116】
比較例5と、実施例1を比較すると、黒色樹脂層を用いた実施例1は、白色樹脂層を用いた比較例5と同程度の特性を得ることができた。また実施例1は、比較例5より外観が向上した。これは、実施例1の黒色樹脂層と反射層の積層膜を用いることで、外観の向上を保持しつつ、比較例5の白色樹脂層と同程度の反射効果が得られ、裏面保護材で反射した光を太陽電池セルに再度取りこむことができたためと考えられる。
【0117】
従って、所定の太陽電池セル構造、所定の封止構造を有する太陽電池モジュールを用いることで、意匠性に優れ、太陽電池モジュール特性を向上させることができ、また太陽電池モジュールの性能劣化を防止し、耐用年数を向上させることができると考えられる。