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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-155785(P2016-155785A)
(43)【公開日】2016年9月1日
(54)【発明の名称】環状ジペプチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/12 20060101AFI20160805BHJP
   C07K 5/06 20060101ALI20160805BHJP
【FI】
   C07K5/12
   C07K5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-35334(P2015-35334)
(22)【出願日】2015年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000135151
【氏名又は名称】株式会社ニッピ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100111464
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(72)【発明者】
【氏名】多賀 祐喜
(72)【発明者】
【氏名】楠畑 雅
(72)【発明者】
【氏名】林田 治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲
(72)【発明者】
【氏名】服部 俊治
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045BA11
4H045BA30
4H045FA10
(57)【要約】
【課題】直鎖トリペプチドを原料として、シクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドを製造する方法を提供する。
【解決手段】X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドの水溶液を加熱することを特徴とする。コラーゲンを分解すれば種々のX−Pro/Hyp−Glyで示される直鎖トリペプチドを得られるため、効率的に種々の環状ジペプチドを製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドを加熱することを特徴とする、シクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドの製造方法。
【請求項2】
加熱温度は、40〜140℃である、請求項1記載の環状ジペプチドの製造方法。
【請求項3】
加熱時の圧力は0.1〜1MPaで行われる、請求項1または2記載の環状ジペプチドの製造方法。
【請求項4】
前記直鎖トリペプチドは、pH2〜10の水溶液中で加熱されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の環状ジペプチドの製造方法。
【請求項5】
前記直鎖トリペプチドは、タンパク質の加水分解物の一部であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の環状ジペプチドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドを原料とする、シクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロ(Gly−Pro)で示される環状ジペプチドが健忘症に有効であるとの報告があり(非特許文献1)、シクロ(Phe−Pro)やシクロ(Phe−Hyp)に抗カビ作用があること(非特許文献2)、およびシクロ(Phe−Pro)に抗癌作用があること(非特許文献3)等が知られている。これらはいずれもプロリンやヒドロキシプロリンを構成アミノ酸残基として含むものである。
【0003】
一方、環状ジペプチドの製造方法として、酵素反応によるもの(特許文献1)、遺伝子工学によるもの(特許文献2)、有機溶剤中での加熱によるもの(特許文献3)、高温高圧水中で脱水・環化反応させ環状ジペプチドを生成するもの(特許文献4)、直鎖ジペプチドや直鎖トリペプチドを加熱して環状ジペプチドを生成するもの(特許文献5)などがある。
【0004】
前記特許文献4記載の方法では、直鎖ジペプチドを100〜450℃かつ圧力1〜40Mpaの高温高圧水中で反応させると、環状ジペプチドが生成されるという。実施例では、Gly−Gly、Gly−Ala、Gly−Leuを使用し、これらが加水分解されたアミノ酸と共に、環状ジペプチドであるグリシン無水物、シクロ(Gly−Ala)、シクロ(Gly−Leu)をそれぞれ検出している。なお、直鎖ペプチドは、アミノ酸2〜10個のものが好ましく、環化の際には、直鎖ペプチドのN末端アミノ酸のアミノ基とC末端アミノ酸のカルボキシル基とが脱水・縮合する。したがって、直鎖トリペプチドであるPhe−Ala−Serを原料とすればシクロ(Phe−Ala−Ser)が生成し、直鎖テトラペプチドであるGly−Leu−Tyr−Aspを原料とすれば、シクロ(Gly−Leu−Tyr−Asp)が生成するという。
【0005】
一方、前記特許文献5記載の方法は、Xがフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、グリシンのいずれかであり、Yがアルギニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、グリシン、プロリン、またはヒドロキシプロリンである場合に、X−Pro/Hyp、Pro/Hyp−Yで示される直鎖ジペプチドを0.5MPa以下で加熱すると、シクロ(X−Pro/Hyp)、シクロ(Pro/Hyp−Y)で示される環状ジペプチドが生成するというものである。加圧条件が0.5MPa以下であるため、比較的容易に環状ジペプチドを製造することができるという。なお、特許文献5では、N末端がグリシンで、プロリンまたはヒドロキシプロリンを含むGly−(Pro/Hyp)−(Ala/Pro/Hyp)で示される直鎖トリペプチドを原料とする場合も、加熱によりシクロ(Gly−Pro/Hyp)で示される環状ジペプチドを製造している。上記条件で加熱すると、N末端アミノ酸のアミノ基と2番目のアミノ酸のカルボキシル基とが環化し、更に3番目のC末端アミノ酸が脱離して、シクロ(Gly−Pro/Hyp)で示される環状ジペプチドが生成するという。この方法は、既存の直鎖トリペプチドを原料に使用でき、温和な反応条件である点で、特許文献1〜特許文献4に示す方法より簡便な方法といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−534048号公報
【特許文献2】特表2006−503554号公報
【特許文献3】特表2003−531197号公報
【特許文献4】特開2003-252896号公報
【特許文献5】特許第5456876号公報
【特許文献6】国際公開第2014/017474号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gudasheva, T. A., S. S. Boyko, V. Akparov, R. U. Ostrovskaya, S. P. Skoldinov, G. G. Rozantsev, T. A. Voronina, V. P. Zherdev and S. B. Seredenin (1996). ”Identification of a novel endogenous memory facilitating cyclic dipeptide cyclo−prolylglycine in rat brain.” FEBS Lett 391(1−2): 149−152.
【非特許文献2】Strom, K., J. Sjogren, A. Broberg and J. Schnurer (2002). ”Lactobacillus plantarum MiLAB 393 produces the antifungal cyclic dipeptides cyclo(L−Phe−L−Pro) and cyclo(L−Phe−trans−4−OH−L−Pro) and 3−phenyllactic acid.” Appl Environ Microbiol 68(9): 4322−4327.
【非特許文献3】Brauns, S. C., P. Milne, R. Naude and M. Van de Venter (2004). ”Selected cyclic dipeptides inhibit cancer cell growth and induce apoptosis in HT−29 colon cancer cells.” Anticancer Res 24(3a): 1713−1719.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献5では、直鎖ジペプチドや直鎖トリペプチドを原料として、シクロ(Gly−Pro)で示される環状ジペプチドを生成させている。一方、前記特許文献4は、直鎖トリペプチドから環状トリペプチドが生成すると記載する。後記するように、コラーゲンおよび/またはゼラチンをバクテリアコラゲナーゼやショウガ根茎由来酵素で分解することにより、Gly−X−YやX−Pro/Hyp−Glyといった直鎖トリペプチドを効率的に生成することができる一方、コラーゲンおよび/またはゼラチンから単独の酵素で直鎖ジペプチドを効率的に生成させることは困難である。環状ジペプチドの生成経路は明確ではないが、直鎖トリペプチドから環状ジペプチドを生成することができれば、直鎖ジペプチドを使用せずに環状ジペプチドを製造できる点で有利である。したがって、直鎖トリペプチドを使用して、環状ジペプチドを製造する方法の開発が望まれる。
【0009】
一方、特許文献5で使用する直鎖トリペプチドは、Gly−(Pro/Hyp)−(Ala/Pro/Hyp)に限定される。このため、前記した抗カビ効果のあるシクロ(Phe−Hyp)や抗カビ効果や抗癌作用があるシクロ(Phe−Pro)を製造することはできない。前記したように、プロリンやヒドロキシプロリンを構成アミノ酸残基として含む環状ジペプチドは、種々の効果を示すものが多い。したがって、直鎖トリペプチドを原料として、シクロ(Gly−Pro/Hyp)以外の環状ジペプチドを製造する方法の開発が望まれる。
【0010】
前記特許文献5の実施例では、直鎖トリペプチドとして市販のコラーゲン分解物を使用している。コラーゲンはアミノ酸繰り返し配列−(Gly−X−Y−)n−(式中、X,Yはアミノ酸残基を表し、nは正の整数を表す。)で構成されるポリペプチドを含み、クロストリジウム・ヒストリチカム等のコラゲナーゼを作用させると、−(Gly−X−Y−)n−(式中、X,Yはアミノ酸残基を表し、nは正の整数を表す。)で示されるアミノ酸繰り返し配列のグリシンとYとの間のアミド結合を切断するため、得られるトリペプチドの主成分は、N末端がグリシンのGly−X−Yとなる。コラーゲンは、X位やY位にプロリンやヒドロキシプロリンが含まれ、Gly−(Pro/Hyp)−(Ala/Pro/Hyp)が含有されるため、反応によりシクロ(Gly−Pro)が生成されたと推定される。しかしながら、特許文献5の実施例7では、トリペプチドの12%を環化・脱離してシクロ(Gly−Pro)を得るために60℃で72時間の加熱を必要とし、実施例9では、トリペプチドの28%を環化・脱離してシクロ(Gly−Pro)とするために、80℃で48時間の加熱を必要としている。いずれも長時間の加熱を必要とするため、より短時間の反応で、環状ジペプチドを効率的に製造できる方法の開発が望まれる。
【0011】
一方、コラーゲンのアミノ酸繰り返し配列−(Gly−X−Y−)n−(式中、X,Yはアミノ酸残基を表し、nは正の整数を表す。)において、グリシンとYとの間を切断する酵素以外を使用してなるペプチド組成物、例えば、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、ProおよびHyp以外のアミノ酸残基を示す。)で示すペプチドを含むコラーゲンペプチド組成物は公知である(特許文献6)。しかしながら、直鎖ペプチドから環状ペプチドが生成される工程は明確でなく、特許文献4に示すように、直鎖トリペプチドがPhe−Ala−Serの場合はシクロ(Phe−Ala−Ser)で示す環状トリペプチドが生成し、直鎖ジペプチドがGly−Alaの場合には、シクロ(Gly−Ala)の生成と共にグリシンやアラニンが副生し、更に配列が反転したAla−Glyで示す直鎖ジペプチドが副生している。直鎖トリペプチドを原料とする場合は、更に反応が複雑化する可能性がある。したがって、高収率で環状ジペプチドを製造する方法の開発が望まれる。
【0012】
上記現状に鑑み、本発明は、直鎖トリペプチドから効率的にシクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、直鎖トリペプチドとして、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)を加熱すると、C末端アミノ酸が脱離してグリシンとX−Pro/Hypで示す直鎖ジペプチドとが生成され、前記直鎖ジペプチドが瞬時に環化してシクロ(X−Pro/Hyp)で示す環状ジペプチドを形成すること、前記直鎖ジペプチドの環化は、前記直鎖トリペプチドのC末端アミノ酸の脱離と密接に関連していること、2番目のアミノ酸がプロリンまたはヒドロキシプロリンでありC末端アミノ酸がグリシンである直鎖トリペプチドは、加熱によりC末端アミノ酸が効率的に脱離し、および生成した直鎖ジペプチドが速やかに脱水縮合して環化し、シクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示す環状ジペプチドを生成することを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち本発明は、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドを加熱することを特徴とする、シクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドの製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、加熱温度が、40〜140℃である、前記環状ジペプチドの製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、加熱時の圧力が0.1〜1MPaで行われる、前記環状ジペプチドの製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記直鎖トリペプチドが、pH2〜10の水溶液中で加熱されることを特徴とする、前記環状ジペプチドの製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、前記直鎖トリペプチドが、タンパク質の加水分解物の一部であることを特徴とする、前記環状ジペプチドの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドを原料とすることで、シクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1において、Ala−Hyp−Gly水溶液を85℃で加熱した場合の経時的Ala−Hyp−Gly量、および分解物量の変化を示す図である。
図2】実施例1において、Ala−Hyp−Gly水溶液を85℃で加熱した場合の経時的変化をLC/MS分析した結果を示す図である。
図3】実施例2において、85℃での加熱時、Ala−Hyp−Gly水溶液のpHを変化させた場合のシクロ(Ala−Hyp)量の変動をLC/MS分析した結果を示す図である。
図4】実施例3において、Ala−Hyp−Gly水溶液の加熱温度を変化させた場合のシクロ(Ala−Hyp)量の変動をLC/MS分析した結果を示す図である。
図5】実施例4において、Ala−Hyp−Glyを加熱した際の経時的環状ジペプチド生成率を測定した結果を示す図である。
図6】実施例5において、Ala−Hyp−GlyおよびGly−Pro−Alaを同条件で加熱した場合の反応液に含まれる元のペプチドの量および環状ジペプチド量をLC/MSで定量した結果を示す図である。
図7】実施例6において、各種直鎖トリペプチドを同条件で加熱した場合の反応液に含まれる元のペプチドの量をLC/MSで定量した結果を示す図である。
図8】実施例7において、Ala−HypおよびAla−Hyp−Glyを同条件で加熱した場合の生成したシクロ(Ala−Hyp)をLC/MSで定量した結果を示す図である。
図9】実施例8において、分解工程の異なるコラーゲンペプチド組成物に含まれるAla−Hyp−Gly、Leu−Hyp−Gly、および環状ジペプチド量をLC/MSで定量した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドを加熱することを特徴とする、シクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドの製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
(1)直鎖トリペプチド
本発明で原料として使用する直鎖トリペプチドは、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される。前記直鎖トリペプチドは、ペプチド合成によって製造されたものを使用してもよく、タンパク質を分解してなるペプチドであってもよい。例えば、コラーゲンはアミノ酸繰り返し配列−(Gly−X−Y−)n−(式中、X,Yはアミノ酸残基を表し、nは正の整数を表す。)で構成されるポリペプチドを含み、X位にプロリン、Y位にヒドロキシプロリンが多く配列される。コラーゲンに、C末端から2番目がプロリンまたはヒドロキシプロリンとなるペプチドを産生しうるエンドペプチダーゼを作用させると、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示されるトリペプチドを含むペプチド組成物を得ることができる。このようなエンドペプチダーゼとしてショウガ根茎由来酵素がある。本発明では、ショウガ根茎由来酵素を作用して得られたペプチド組成物から特定のX−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)を単離して使用してもよく、上記直鎖トリペプチドを含むペプチド組成物をそのまま原料として使用してもよい。なお、コラーゲンの分解は、上記酵素反応に限定されず、他の1以上の酵素を使用してもよい。更に、塩酸、酢酸などの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリを使用してコラーゲンを部分的に加水分解し、適宜精製して、前記直鎖トリペプチドを得てもよい。更に、コラーゲン由来のペプチド組成物を得るために、加水分解反応と酵素反応とを併用してもよい。
【0023】
本発明で使用する直鎖トリペプチドは、N末端から2番目のアミノ酸がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、C末端がグリシンであることを特徴とする。後記する実施例に示すように、C末端がアラニンであるGly−Pro−Alaを85℃、1時間加熱してもその17%がシクロ(Gly−Pro)で示される環状ジペプチドに変換されるに過ぎないが、C末端がグリシンであるAla−Hyp−Glyを使用すると、同1時間の加熱で48%がシクロ(Ala−Hyp)で示される環状ジペプチドに変換され、1時間時で3倍量の環状ジペプチドを生産できることが判明した。なお、前記直鎖トリペプチドを使用すると、同3時間の加熱により、67%が環状ジペプチドに変換され、環状ジペプチドの生成率は極めて高い。
【0024】
本発明では、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドの中で、Xとしてアラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、セリン、バリン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リシン、グルタミン酸、アスパラギン酸を好適に使用することができる。
【0025】
前記式で示される直鎖トリペプチドとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用すると、Xで示されるアミノ酸残基に対応する2種以上の環状ジペプチドの組成物を得ることができる。2種以上の直鎖トリペプチドを含むものとして、タンパク質の加水分解物がある。加水分解は、酸やアルカリによる分解でもよく、酵素による分解でもよい。例えば、前記したように、コラーゲンにショウガ根茎由来酵素を作用させて得たペプチド組成物は、前記式で示す直鎖トリペプチドを多量に含み、上記加水分解物として使用することができる。コラーゲンにショウガ根茎由来酵素を作用させて得たペプチド組成物から1種以上の直鎖トリペプチドを単離して使用し、対応する環状ジペプチドを製造することができる。さらに、このような直鎖トリペプチドを含むペプチド組成物を原料として加熱し、種々の環状ジペプチドを含む環状ジペプチド組成物を製造することもできる。このような環状ジペプチド組成物から、所定の環状ジペプチドを単離してもよい。
【0026】
(2)反応条件
本発明では、前記直鎖トリペプチドを加熱する。直鎖トリペプチドは、固体であっても溶媒に溶解または懸濁された液状であってもよい。前記直鎖トリペプチドを粉末、顆粒その他の固体で得た場合には、直接加熱することができる。固体を均一に加熱するため、撹拌機能付きの加熱装置を使用してもよい。一方、直鎖トリペプチドを溶媒に溶解、分散、または懸濁すると、簡便に均一な加熱を行うことができる。溶媒を使用する場合は、不要な副反応を回避するため、水を使用することが好ましい。溶媒中の直鎖トリペプチド濃度は、0.001〜10g/Lであることが好ましく、より好ましくは0.01〜1g/Lである。
【0027】
反応温度は、前記直鎖トリペプチドが固体であるか液状であるか、固体である場合の密度や液状である場合の濃度その他によって適宜選択することができる。反応圧力によっても変動するが、一般には、温度40〜140℃であり、好ましくは温度60〜120℃、より好ましくは70〜100℃、特に好ましくは80〜100℃である。温度が高い方が環状ジペプチドの生成率が高い傾向がある。脱水・縮合反応が速やかに進行するためと考えられる。なお、140℃以下、より好ましくは100℃以下であれば、環化時の脱離以外の加水分解は無視しうる。
【0028】
反応時間は、加熱温度や前記直鎖トリペプチドの種類、その他によって適宜選択することができる。一般には、5分から5時間であり、好ましくは1〜4時間であり、特に好ましくは1〜3時間である。
【0029】
加熱時の圧力は、0.1〜1MPa、より好ましくは0.1〜0.5MPaである。本発明では、大気圧下でも十分に反応が進行する。上記範囲であれば、直鎖トリペプチドから環状トリペプチドの副生や、加水分解によって生じるアミノ酸や直鎖ジペプチドの副生を低減して、効率的に環状ジペプチドを製造することができる。
【0030】
前記直鎖トリペプチド水溶液を反応に使用する場合、pHを調整してもよい。至適pHは、使用する直鎖トリペプチドによって適宜選択することができる。好ましくは、pH2〜10、より好ましくはpH3.0〜8.6、特に好ましくはpH4.0〜8.0、さらに好ましくは、pH4.0〜6.0である。直鎖トリペプチドは、酸やアルカリ条件での加熱により加水分解されるが、前記pH範囲であれば、強酸条件や中性条件、強アルカリ条件よりも、前記環状ジペプチドの生成率に優れる。本発明では、前記直鎖トリペプチドを溶解または懸濁する溶媒として、上記pH範囲の緩衝液を使用してもよい。
【0031】
例えば、直鎖トリペプチド水溶液を温度60〜120℃、反応時間5分〜3時間、pH4.0〜6.0、0.1〜1MPa、より好ましくは、温度80〜100℃、反応時間1〜3時間、pH4.0〜6.0、0.1〜0.5MPaで加熱して、対応する環状ジペプチドを製造することができる。
【0032】
本発明において、前記直鎖トリペプチドから前記環状ジペプチドが生成する反応経路の詳細は明確ではない。しかしながら、後記する実施例に示すように、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドを加熱した反応液をLC/MS分析すると、グリシンと直鎖トリペプチドのピークとシクロ(X−Pro/Hyp)で示される環状ジペプチドのピークとが検出され、一方、X−Pro/Hypで示される直鎖ジペプチドのピークは検出されなかった。直鎖トリペプチドのC末端アミノ酸が脱離し、N末端アミノ酸と2番目のアミノ酸との直鎖ジペプチドが形成され、これが瞬時にN末端アミノ酸と2番目のアミノ酸とを脱水縮合し、環化し、環状ジペプチドが生成されたと推察される。なお、前記直鎖トリペプチドのC末端アミノ酸を除去した直鎖ジペプチドを用いて前記直鎖トリペプチドと同様の反応を行ったが、環状ジペプチドの生成率は極めて低く、直鎖トリペプチドを原料とする場合の70分の1の生成量に過ぎなかった。このことから、C末端の脱離と直鎖ジペプチドの環化工程とが密接に関連し、環状ジペプチドが生成されると推察される。本発明で使用する直鎖トリペプチドは、C末端アミノ酸がグリシンに限定され、かつ2番目のアミノ酸がプロリンまたはヒドロキシプロリンである。反応の際に、C末端アミノ酸であるグリシンの脱離が容易であり、2番目のアミノ酸がプロリンまたはヒドロキシプロリンであることなどが相乗的に作用し、環状ジペプチドの生成に優れると考えられる。環状ジペプチドの生成率は、直鎖トリペプチドのC末端アミノ酸によって相違すること、およびC末端アミノ酸がグリシンである場合に、環状ジペプチドの生成率に優れることは、従来全く知られていなかった。
【0033】
(3)生成物
上記反応により、シクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドが製造される。Xは、原料に用いた直鎖トリペプチドを構成するアミノ酸に対応し、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、セリン、バリン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リシン、グルタミン酸、アスパラギン酸などとなる。本発明によれば、X−Pro/Hyp−Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドを原料とし、かつ反応工程でC末端アミノ酸が脱離した後に残存するジペプチドが環化してなる環状ジペプチドが生成されるため、シクロ(Ala−Pro/Hyp)、シクロ(Phe−Pro/Hyp)、シクロ(Leu−Pro/Hyp)、シクロ(Ile−Pro/Hyp)、シクロ(Thr−Pro/Hyp)、シクロ(Ser−Pro/Hyp)、シクロ(Val−Pro/Hyp)、シクロ(Gln−Pro/Hyp)、シクロ(Asn−Pro/Hyp)、シクロ(Arg−Pro/Hyp)、シクロ(Lys−Pro/Hyp)、シクロ(Glu−Pro/Hyp)、シクロ(Asp−Pro/Hyp)などの種々の環状ジペプチドを製造することができる。
【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0035】
(製造例)
凍結ショウガ根茎に対して5倍量(容量/重量)の冷エタノールを添加し、カッティングミルで十分粉砕してスラリーとし、このスラリーをろ過してエタノールを除去し、残渣を風乾してショウガ根茎粉砕物を得た。ウシ由来ゼラチン5質量%溶液(pH4.8)に対し、1/10倍量の前記ショウガ根茎粉砕物を添加し、およびグルタチオン含有酵母エキス(株式会社興人社製、ハイチオンエキスYH−15(グルタチオン含有率15%以上))を0.02w/v%となるように添加し、50℃で振盪、攪拌しながら16h反応させた。反応終了後静置し、上清を回収してペプチド溶液を得た。
【0036】
(1)LC/MS測定条件
高速液体クロマトグラフ:1200Series(Agilent Technologies)、
質量分析装置:3200QTRAP(AB Sciex)、
分析カラム: Ascentis Express F5 HPLC column 5μm, 4.6mmi.d.×250mm(Supelco)、
カラム温度:40℃
移動相:A液;0.1%ギ酸、B液;100%アセトニトリル、
グラジエント条件:
0〜7.5分:A液100%、
7.5〜20分:A液100〜1%;B液0〜99%、
20.1〜25分:A液1%;B液99%、
25.1〜30分:A液100%、
流速:0.6mL/min、
(2)質量分析条件:
イオン化:ESI、ポジティブ、
分析モード:Multiple Reaction Monitoring(MRM)モード、
イオンスプレー電圧:3kV、
イオンソース温度:600℃
【0037】
(実施例1)
Ala−Hyp−Glyを用いて以下の実験を行った。
200μg/mlのAla−Hyp−Glyを蒸留水中で85℃、1時間または3時間加熱し、反応前、反応1時間時、反応3時間時の反応液に含まれるHyp、Ala、Gly、Hyp−Gly、Ala−Hyp、Ala−Hyp−Gly量を前記LC/MS条件にて分析した。結果を図1に示す。反応時間の経過に伴ってAla−Hyp−Gly量が減少し、およびGly量が増加することが観察された。Hyp、Ala、Hyp−Gly、Ala−Hypは、ほとんど検出されなかった。更に、MS分析で生成物のスキャン(m/z 100〜300)を行った。結果を図2に示す。図2に示すように、加熱反応によりm/z 185.1の化合物が生成した。
Ala−Hyp−Glyの加熱により、グリシンのピークが検出され、Ala−Hypが検出されないことから(図1)、Ala−Hyp−Gly(m/z 260.1)を加熱すると、C末端アミノ酸であるグリシンが脱離すると瞬時にAla−Hypが脱水縮合し、シクロ(Ala−Hyp)(m/z 185.1)で示される環状ジペプチドが生成すると考えられた。
【0038】
(実施例2)
Ala−Hyp−Glyを100μg/mlとなるように0.1%ギ酸(pH2.8)、50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.0、pH4.4、pH4.8、pH5.2、およびpH5.6)、50mM MESバッファー(pH6.0)、または50mM Trisバッファー(pH7.0、pH7.8、およびpH8.6)に溶解し、それぞれ85℃で1時間加熱した。各反応液に含まれるシクロ(Ala−Hyp)量を前記LC/MS条件で定量した。結果を図3に示す。なお、コントロールは、加熱前の値を示す。
【0039】
(実施例3)
Ala−Hyp−Glyを100μg/mlとなるように、50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.2)に溶解し、反応温度40℃、55℃、70℃、85℃、および100℃でそれぞれ1時間加熱し、各反応液に含まれるシクロ(Ala−Hyp)量を前記LC/MS条件で定量した。結果を図4に示す。なお、コントロールは、加熱前の値を示す。
【0040】
(実施例4)
Ala−Hyp−Glyを100μg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解し、85℃で加熱した。経時的に反応液を採取し、生成した環状ジペプチド量を前記LC/MS条件で定量し、元のAla−Hyp−Glyモル量に対する生成したモル量を生成率(%)として評価した。結果を図5に示す。加熱5分でも反応が進行し加熱120分で略平衡に達した。
【0041】
(実施例5)
Ala−Hyp−GlyおよびGly−Pro−Alaをそれぞれ100μg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解し、これを85℃で1時間または3時間加熱し、元のペプチド量と生成した環状ジペプチド量とを前記LC/MS条件で定量した。結果を図6に示す。Ala−Hyp−Glyを原料とした場合は、1時間時に48.2μg/ml、3時間時に67.4μg/mlの環状ジペプチドを生成した。一方、Gly−Pro−Alaを原料とする場合の環状ジペプチドの生成量は、1時間時に16.7μg/ml、3時間時に36.1μg/mlであった。C末端がグリシンである直鎖トリペプチドは、C末端がアラニンである直鎖トリペプチドよりも加熱1時間時に約3倍量の環状ジペプチドを生成し、加熱3時間で2/3量を環状ジペプチドに変換していた。
【0042】
(実施例6)
Ala−Hyp−Gly、Glu−Hyp−Gly、Ile−Hyp−Gly、Leu−Hyp−Gly、Phe−Hyp−Gly、Ser−Hyp−Gly、Thr−Hyp−Gly、Ala−Pro−GlyおよびLeu−Pro−Glyを、それぞれ100μg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解した。また、比較のため、Gly−Ala−Hyp、Gly−Pro−Ala、Gly−Pro−Arg、Gly−Pro−Gln、Gly−Pro−Hyp、Gly−Pro−SerおよびPro−Hyp−Glyについて同様に100μg/ml(pH4.8)の溶液を調製した。これらをそれぞれ85℃で1時間加熱した。各反応液に含まれる元のペプチドの量を前記LC/MS条件で定量した。結果を図7に示す。Ala−Hyp−Gly、Glu−Hyp−Gly、Ile−Hyp−Gly、Leu−Hyp−Gly、Phe−Hyp−Gly、Ser−Hyp−Gly、Thr−Hyp−Gly、Ala−Pro−GlyおよびLeu−Pro−Glyの全てで、元の直鎖トリペプチドが反応により21.8%〜67.3%まで減少し、図1〜6で示されたAla−Hyp−Glyを原料とした結果から、その他のペプチドでも同様にそれぞれ対応する環状ジペプチドが生成したと考えられる。これに対し、その他の直鎖トリペプチドでは元の原料が多く残存し(80.1%〜136.0%)、反応率が低かった。Pro−Hyp−Glyは、C末端アミノ酸がグリシンであるが、プロリンやヒドロキシプロリンが連続すると、立体障害により環化率が低下すると考えられる。
【0043】
(実施例7)
直鎖トリペプチドと直鎖ジペプチドを原料として、環状ジペプチドの生成率を観察した。
Ala−HypおよびAla−Hyp−Glyを100μg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解した。これを85℃で1時間加熱し、生成したシクロ(Ala−Hyp)を前記LC/MS条件で定量した。結果を図8に示す。Ala−Hyp−Glyを原料とすると、Ala−Hypを原料とする場合よりも約70倍の高率でシクロ(Ala−Hyp)を生成した。
【0044】
(実施例8)
コラーゲンペプチド組成物(I)(株式会社ニッピ製、コラーゲン加水分解物、平均分子量3010Da)、コラーゲンペプチド組成物(II)(株式会社ニッピ製、コラゲナーゼ分解物、平均分子量1586Da)、コラーゲンペプチド組成物(III)(製造例1で得られたショウガ根茎由来酵素分解物、平均分子量868Da)という分解工程の異なるコラーゲン由来ペプチド組成物をそれぞれ1mg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解し、それぞれ85℃で1時間または3時間加熱した。各反応液に含まれるAla−Hyp−Gly、Leu−Hyp−Gly、および環状ジペプチド量を前記LC/MS条件で定量した。結果を図9に示す。
図9(a)に示すように、加熱前ではX−Hyp−Gly(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)で示される直鎖トリペプチドは、コラーゲン組成物(III)に多く含有されており、それに対応するシクロ(X−Hyp)(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)は、コラーゲン組成物(I)、(II)にはごく微量、コラーゲン組成物(III)には少量含有されていた。これを85℃で加熱すると、X−Hyp−Gly(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)で示される直鎖トリペプチドは経時的に減少し、これに対応して図9(b)に示すように、コラーゲン組成物(III)でシクロ(X−Hyp)(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)の増加が確認された。コラーゲン組成物(III)に多量に含有されるX−Hyp−Gly(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)が加熱によって脱水縮合して環化しシクロ(X−Hyp)(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)に変換したと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、種々のシクロ(X−Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドを簡便、短時間、高収率で製造できるため、有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9