【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0035】
(製造例)
凍結ショウガ根茎に対して5倍量(容量/重量)の冷エタノールを添加し、カッティングミルで十分粉砕してスラリーとし、このスラリーをろ過してエタノールを除去し、残渣を風乾してショウガ根茎粉砕物を得た。ウシ由来ゼラチン5質量%溶液(pH4.8)に対し、1/10倍量の前記ショウガ根茎粉砕物を添加し、およびグルタチオン含有酵母エキス(株式会社興人社製、ハイチオンエキスYH−15(グルタチオン含有率15%以上))を0.02w/v%となるように添加し、50℃で振盪、攪拌しながら16h反応させた。反応終了後静置し、上清を回収してペプチド溶液を得た。
【0036】
(1)LC/MS測定条件
高速液体クロマトグラフ:1200Series(Agilent Technologies)、
質量分析装置:3200QTRAP(AB Sciex)、
分析カラム: Ascentis Express F5 HPLC column 5μm, 4.6mmi.d.×250mm(Supelco)、
カラム温度:40℃
移動相:A液;0.1%ギ酸、B液;100%アセトニトリル、
グラジエント条件:
0〜7.5分:A液100%、
7.5〜20分:A液100〜1%;B液0〜99%、
20.1〜25分:A液1%;B液99%、
25.1〜30分:A液100%、
流速:0.6mL/min、
(2)質量分析条件:
イオン化:ESI、ポジティブ、
分析モード:Multiple Reaction Monitoring(MRM)モード、
イオンスプレー電圧:3kV、
イオンソース温度:600℃
【0037】
(実施例1)
Ala−Hyp−Glyを用いて以下の実験を行った。
200μg/mlのAla−Hyp−Glyを蒸留水中で85℃、1時間または3時間加熱し、反応前、反応1時間時、反応3時間時の反応液に含まれるHyp、Ala、Gly、Hyp−Gly、Ala−Hyp、Ala−Hyp−Gly量を前記LC/MS条件にて分析した。結果を
図1に示す。反応時間の経過に伴ってAla−Hyp−Gly量が減少し、およびGly量が増加することが観察された。Hyp、Ala、Hyp−Gly、Ala−Hypは、ほとんど検出されなかった。更に、MS分析で生成物のスキャン(m/z 100〜300)を行った。結果を
図2に示す。
図2に示すように、加熱反応によりm/z 185.1の化合物が生成した。
Ala−Hyp−Glyの加熱により、グリシンのピークが検出され、Ala−Hypが検出されないことから(
図1)、Ala−Hyp−Gly(m/z 260.1)を加熱すると、C末端アミノ酸であるグリシンが脱離すると瞬時にAla−Hypが脱水縮合し、シクロ(Ala−Hyp)(m/z 185.1)で示される環状ジペプチドが生成すると考えられた。
【0038】
(実施例2)
Ala−Hyp−Glyを100μg/mlとなるように0.1%ギ酸(pH2.8)、50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.0、pH4.4、pH4.8、pH5.2、およびpH5.6)、50mM MESバッファー(pH6.0)、または50mM Trisバッファー(pH7.0、pH7.8、およびpH8.6)に溶解し、それぞれ85℃で1時間加熱した。各反応液に含まれるシクロ(Ala−Hyp)量を前記LC/MS条件で定量した。結果を
図3に示す。なお、コントロールは、加熱前の値を示す。
【0039】
(実施例3)
Ala−Hyp−Glyを100μg/mlとなるように、50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.2)に溶解し、反応温度40℃、55℃、70℃、85℃、および100℃でそれぞれ1時間加熱し、各反応液に含まれるシクロ(Ala−Hyp)量を前記LC/MS条件で定量した。結果を
図4に示す。なお、コントロールは、加熱前の値を示す。
【0040】
(実施例4)
Ala−Hyp−Glyを100μg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解し、85℃で加熱した。経時的に反応液を採取し、生成した環状ジペプチド量を前記LC/MS条件で定量し、元のAla−Hyp−Glyモル量に対する生成したモル量を生成率(%)として評価した。結果を
図5に示す。加熱5分でも反応が進行し加熱120分で略平衡に達した。
【0041】
(実施例5)
Ala−Hyp−GlyおよびGly−Pro−Alaをそれぞれ100μg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解し、これを85℃で1時間または3時間加熱し、元のペプチド量と生成した環状ジペプチド量とを前記LC/MS条件で定量した。結果を
図6に示す。Ala−Hyp−Glyを原料とした場合は、1時間時に48.2μg/ml、3時間時に67.4μg/mlの環状ジペプチドを生成した。一方、Gly−Pro−Alaを原料とする場合の環状ジペプチドの生成量は、1時間時に16.7μg/ml、3時間時に36.1μg/mlであった。C末端がグリシンである直鎖トリペプチドは、C末端がアラニンである直鎖トリペプチドよりも加熱1時間時に約3倍量の環状ジペプチドを生成し、加熱3時間で2/3量を環状ジペプチドに変換していた。
【0042】
(実施例6)
Ala−Hyp−Gly、Glu−Hyp−Gly、Ile−Hyp−Gly、Leu−Hyp−Gly、Phe−Hyp−Gly、Ser−Hyp−Gly、Thr−Hyp−Gly、Ala−Pro−GlyおよびLeu−Pro−Glyを、それぞれ100μg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解した。また、比較のため、Gly−Ala−Hyp、Gly−Pro−Ala、Gly−Pro−Arg、Gly−Pro−Gln、Gly−Pro−Hyp、Gly−Pro−SerおよびPro−Hyp−Glyについて同様に100μg/ml(pH4.8)の溶液を調製した。これらをそれぞれ85℃で1時間加熱した。各反応液に含まれる元のペプチドの量を前記LC/MS条件で定量した。結果を
図7に示す。Ala−Hyp−Gly、Glu−Hyp−Gly、Ile−Hyp−Gly、Leu−Hyp−Gly、Phe−Hyp−Gly、Ser−Hyp−Gly、Thr−Hyp−Gly、Ala−Pro−GlyおよびLeu−Pro−Glyの全てで、元の直鎖トリペプチドが反応により21.8%〜67.3%まで減少し、
図1〜6で示されたAla−Hyp−Glyを原料とした結果から、その他のペプチドでも同様にそれぞれ対応する環状ジペプチドが生成したと考えられる。これに対し、その他の直鎖トリペプチドでは元の原料が多く残存し(80.1%〜136.0%)、反応率が低かった。Pro−Hyp−Glyは、C末端アミノ酸がグリシンであるが、プロリンやヒドロキシプロリンが連続すると、立体障害により環化率が低下すると考えられる。
【0043】
(実施例7)
直鎖トリペプチドと直鎖ジペプチドを原料として、環状ジペプチドの生成率を観察した。
Ala−HypおよびAla−Hyp−Glyを100μg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解した。これを85℃で1時間加熱し、生成したシクロ(Ala−Hyp)を前記LC/MS条件で定量した。結果を
図8に示す。Ala−Hyp−Glyを原料とすると、Ala−Hypを原料とする場合よりも約70倍の高率でシクロ(Ala−Hyp)を生成した。
【0044】
(実施例8)
コラーゲンペプチド組成物(I)(株式会社ニッピ製、コラーゲン加水分解物、平均分子量3010Da)、コラーゲンペプチド組成物(II)(株式会社ニッピ製、コラゲナーゼ分解物、平均分子量1586Da)、コラーゲンペプチド組成物(III)(製造例1で得られたショウガ根茎由来酵素分解物、平均分子量868Da)という分解工程の異なるコラーゲン由来ペプチド組成物をそれぞれ1mg/mlとなるように50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)に溶解し、それぞれ85℃で1時間または3時間加熱した。各反応液に含まれるAla−Hyp−Gly、Leu−Hyp−Gly、および環状ジペプチド量を前記LC/MS条件で定量した。結果を
図9に示す。
図9(a)に示すように、加熱前ではX−Hyp−Gly(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)で示される直鎖トリペプチドは、コラーゲン組成物(III)に多く含有されており、それに対応するシクロ(X−Hyp)(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)は、コラーゲン組成物(I)、(II)にはごく微量、コラーゲン組成物(III)には少量含有されていた。これを85℃で加熱すると、X−Hyp−Gly(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)で示される直鎖トリペプチドは経時的に減少し、これに対応して
図9(b)に示すように、コラーゲン組成物(III)でシクロ(X−Hyp)(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)の増加が確認された。コラーゲン組成物(III)に多量に含有されるX−Hyp−Gly(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)が加熱によって脱水縮合して環化しシクロ(X−Hyp)(式中、Xはアラニン、ロイシンを示す。)に変換したと考えられる。