【解決手段】 ソーラーパネル100の裏面にパネル側配管111が設けられている。パネル側配管111は、エンジン冷却水通路61に接続されている。エンジンECU50は、パワースイッチ90がオフ状態であって、冷却水の入替条件が成立すると、ウォーターポンプ70を駆動して冷却水をパネル側配管111に循環させる。これにより、エンジン冷却水通路61に溜まって冷えた冷却水と、パネル側配管111に溜まって暖められた冷却水とが入れ替えられる。この結果、ソーラーパネル100が冷却されるとともに、エンジン10が暖められる。
【発明の概要】
【0004】
車両のユーザは、ソーラーパネルからできるだけ多く発電させようとして、日射条件のよい場所を選んで駐車する。しかしながら、ソーラーパネル(太陽電池)は、高温になるほど発電効率が低下するという問題が生じる。この問題に対して、特許文献2には、ソーラーパネルの裏側に空気流路を設け、パネル温度が所定温度より高いときに、クロスフローファンを作動させて、空気流路に空気を流すように構成されたソーラーカーが提案されている。しかしながら、特許文献2に提案されたソーラーカーにおいても、ソーラーパネルに溜まった熱を有効利用していない。
【0005】
一方で、車両の起動時にエンジンが冷えている場合には、エンジンを暖めるために熱が必要となる。一般に、ハイブリッド車両においては、車両の起動時にエンジンが暖まっていれば、エンジンを起動させることなくモータトルクだけで走行開始できるが、エンジンが冷えている場合には暖機運転が行われる。このため、燃料の一部が暖機運転のために使用されることから燃費の低下を招く。また、暖機運転時においては、エンジンの最適運転時に比べて排ガスの質が低下してしまう。
【0006】
このように、同一の車両内において、ソーラーパネル側では放熱が求められ、エンジン側では吸熱が求められるという状況が発生する。しかしながら、同じ車両内で熱を有効利用できていない。
【0007】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、ソーラーパネルに溜まった熱を有効利用してエンジン冷却水の温度を上昇させることによりエンジンを早期に暖めることを可能とするとともに、ソーラーパネルの発電効率を向上させることにある。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、ソーラーパネル(100)を搭載した車両において、
前記ソーラーパネルにおける受光面に対して反対側となる裏面側の領域に前記ソーラーパネルと熱交換可能に配置されたパネル側配管(111)と、
エンジン冷却水通路(61)に冷却水を循環させるエンジン冷却装置(60)と、
前記エンジン冷却水通路と前記パネル側配管とを連結する往路(112a)と復路(112b)とを有する連結配管(112)と、
前記エンジン冷却水通路内の冷却水を前記往路を介して前記パネル側配管に汲み上げ、前記パネル側配管内の冷却水を前記復路を介して前記エンジン冷却水通路に戻すエンジン・パネル間冷却水入替装置(50,130,S28,S29)とを備えたことにある。
【0009】
本発明は、エンジン(内燃機関)を搭載している車両に適用される。この車両は、太陽光エネルギーを使って発電する太陽電池を備えたソーラーパネルを搭載している。太陽電池は、高温になるにしたがって発電効率が低下する。一方、車両の起動時にエンジンが冷えている場合には暖機運転が行われる。そこで、本発明においては、ソーラーパネルの熱をエンジンの暖機に有効利用する。
【0010】
本発明の車両は、前述したように、パネル側配管と、エンジン冷却装置と、連結配管と、エンジン・パネル間冷却水入替装置とを備えている。パネル側配管は、ソーラーパネルにおける受光面に対して反対側となる裏面側の領域にソーラーパネルと熱交換可能に配置される。エンジン冷却装置は、エンジン冷却水通路に冷却水を循環させてエンジンを冷却する。エンジン冷却水通路とパネル側配管とは、往路と復路とを有する連結配管によって連結されている。従って、連結配管によりエンジン冷却水通路とパネル側配管とを連通させて、エンジン冷却水通路の冷却水をパネル側配管内に汲み上げたり、エンジン冷却水通路の冷却水をパネル側配管に流したり、エンジン冷却水通路の冷却水とパネル側配管内の冷却水とを入れ替えたりすることができる。
【0011】
エンジン・パネル間冷却水入替装置は、エンジン冷却水通路内の冷却水を往路を介してパネル側配管に汲み上げ、パネル側配管内の冷却水を復路を介してエンジン冷却水通路に戻す。
【0012】
ソーラーパネルは、太陽光が照射されやすい位置に設けられるため、高温になりやすく、パネル側配管には、ソーラーパネルと熱交換された高温の冷却水が溜まる。このため、エンジン停止中、あるいは、エンジンの起動時に、エンジン・パネル間冷却水入替装置を作動させることにより、パネル側配管に溜まった高温の冷却水をエンジン冷却水通路に戻してエンジンを暖めることができる。同時に、エンジン冷却水通路の冷えた冷却水をソーラーパネル側配管に汲み上げて、ソーラーパネルを冷却することができる。
【0013】
この結果、本発明によれば、ソーラーパネルに溜まった熱を有効利用してエンジンを暖めることができる。従って、燃費の向上、排ガスの質の向上を図ることができる。同時に、ソーラーパネルの発電効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の一側面における特徴は、
前記エンジン冷却装置は、冷却水を前記エンジン冷却水通路に循環させる電動ポンプ(70,71)を備え、
前記エンジン・パネル間冷却水入替装置は、前記電動ポンプを使用して、前記エンジン冷却水通路内の冷却水を前記パネル側配管に汲み上げるように構成されたことにある。
【0015】
本発明の一側面によれば、エンジン冷却装置に設けられた電動ポンプを使用してエンジン冷却水通路内の冷却水をパネル側配管に汲み上げることができるため、特別なポンプを新たに設ける必要がなく、低コストにて実施することができる。
【0016】
本発明の一側面における特徴は、車両の走行開始が予測される場合に、前記冷却水を前記復路の一部を通して前記パネル側配管から抜く水抜き手段(50,130,S1,S40)を備えたことにある。
【0017】
パネル側配管に冷却水が満たされている場合には、車両の重量バランスの関係から、車両の運動性能が低下する可能性がある。特に、ソーラーパネルをルーフに設けている車両では、パネル側配管に冷却水を充填すると重心が上に移動するため、その傾向が高い。そこで、本発明の一側面では、水抜き手段を備えている。水抜き手段は、車両の走行開始が予測される場合に、冷却水を復路の一部を通してパネル側配管から抜く。例えば、水抜き手段は、車両の起動操作(パワースイッチあるいはイグニッションスイッチのオン操作)を検出して、冷却水をパネル側配管から抜く。これにより、車両走行中においては、冷却水がパネル側配管から抜かれた状態となっている。従って、車両の運動性能の低下を低減することができる。
【0018】
本発明の一側面における特徴は、前記エンジン冷却水通路の冷却水の温度を表すエンジン側温度(Te)と、前記ソーラーパネルの温度あるいは前記パネル側配管の冷却水の温度を表すパネル側温度(Tp)とを取得する温度取得手段(S21,S22)と、
前記取得したエンジン側温度とパネル側温度とに基づいて、前記エンジン・パネル間冷却水入替装置の作動を制御する入替制御手段(50,S24,S25,S28,S29,S32,S33)とを備えたことにある。
【0019】
本発明の一側面では、温度取得手段と入替制御手段とを備えている。温度取得手段は、エンジン冷却水通路の冷却水の温度を表すエンジン側温度と、ソーラーパネルの温度あるいはパネル側配管の冷却水の温度を表すパネル側温度とを取得する。これにより、エンジンの温度状態と、ソーラーパネルの温度状態とを把握することができる。入替制御手段は、エンジン側温度とパネル側温度とに基づいて、エンジン・パネル間冷却水入替装置の作動を制御する。従って、ソーラーパネルの冷却処理、および、エンジンの暖め処理を適切に行うことができる。
【0020】
本発明の一側面における特徴は、前記入替制御手段は、前記パネル側温度が前記エンジン側温度に比べて入替設定温度差(Aref)以上高いことを条件として、前記エンジン・パネル間冷却水入替装置を作動させるように構成された(S32,S33,S28,S29)ことにある。
【0021】
パネル側温度がエンジン側温度に比べてある程度高い場合に、冷却水による熱の移動を適切に行うことができるが、そうでない場合には、逆効果となる可能性がある。そこで、本発明の一側面では、入替制御手段が、パネル側温度がエンジン側温度に比べて入替設定温度差以上高いことを条件として、エンジン・パネル間冷却水入替装置を作動させる。従って、冷却水による熱の移動を適切に行うことができる。
【0022】
本発明の一側面における特徴は、前記入替制御手段は、前記パネル側温度がパネル側入替設定温度より高く、かつ、前記エンジン側温度が前記パネル側入替設定温度よりも低い温度に設定されたエンジン側入替設定温度より低いことを条件として、前記エンジン・パネル間冷却水入替装置を作動させるように構成された(S24,S25,S28,S29)ことにある。
【0023】
本発明の一側面では、入替制御手段が、パネル側温度がパネル側入替設定温度より高く、かつ、エンジン側温度がエンジン側入替設定温度(<パネル側入替設定温度)より低いことを条件として、エンジン・パネル間冷却水入替装置を作動させる。従って、冷却水による熱の移動を適切に行うことができる。
【0024】
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る車両について図面を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る車両Vの概略構成を表している。
【0027】
本実施形態の車両Vは、ハイブリッドシステムと太陽光発電システムとを備えたプラグイン方式のハイブリッド自動車である。ハイブリッドシステムは、車両Vの走行用駆動力を発生するエンジン10およびモータ15と、蓄電装置20と、パワーコントロールユニット25と、充電装置30と、ハイブリッド電子制御ユニット40(ハイブリッドECU40と呼ぶ)、エンジン電子制御ユニット50(エンジンECU50と呼ぶ)を備えている。
【0028】
蓄電装置20は、主にモータ15の駆動電源として使用される高圧バッテリと、12V系の車載負荷の電源として使用される低圧バッテリと、各バッテリの蓄電状態(SOC:State of Charge)を検出するSOCセンサ等を備えている。充電装置30は、太陽光発電システムで発電された電力、および、充電ケーブルを介して外部電源装置(充電スタンド、家庭の電源コンセント等)から供給された電力を蓄電装置20に充電するための充電回路等を備えている。パワーコントロールユニット25は、蓄電装置20(高圧バッテリ)からモータ15への電力供給、および、モータ15から蓄電装置20(高圧バッテリ)への電力回生を行うもので、モータ駆動回路であるインバータ、電圧変換回路等を備えている。
【0029】
ハイブリッドECU40は、マイクロコンピュータを主要部として備えるとともに、エンジンECU50と相互通信可能に接続されている。ハイブリッドECU40は、アクセル操作量およびブレーキ操作量であるドライバー操作量を表すセンサ信号、車両Vの運動状態を表すセンサ信号、蓄電装置20のSOCセンサ信号等に基づいてエンジン要求出力値およびモータ要求トルク値(駆動トルク、回生制動トルク)を算出する。ハイブリッドECU40は、算出したエンジン要求出力値をエンジンECU50に送信するとともに、モータ要求トルク値に基づいてパワーコントロールユニット25の作動を制御する。また、ハイブリッドECU40は、蓄電装置20の蓄電状態をモニタしつつ、蓄電状態に基づいて充電装置30の作動を制御する。
【0030】
エンジンECU50は、マイクロコンピュータを主要部として備え、ハイブリッドECU40から送信されたエンジン要求出力値に従ってエンジン10の作動を制御する。また、エンジンECU50は、エンジン10を冷却するエンジン冷却装置60に設けられたウォーターポンプ70(
図2参照)を駆動するためのモータ駆動回路を内蔵しており、エンジン10の運転中に、目標回転速度にてウォーターポンプ70が回転するようにモータ71を駆動制御する。また、エンジンECU50は、エンジン冷却装置60のウォーターポンプ70を使って、太陽光発電システムに設けられたパネル側配管111(後述する)に冷却水を流すエンジン・パネル間冷却水入替制御を実施する機能部を備えている。このエンジン・パネル間冷却水入替制御については、後述する。
【0031】
エンジン冷却装置60は、
図2に示すように、エンジン10の冷却対象部(シリンダヘッドおよびシリンダブロック)に冷却水を循環させるためのエンジン冷却水通路61を備えている。エンジン冷却水通路61には、ラジエータ62、リザーブタンク63、ウォーターポンプ70およびサーモスタット弁64が設けられている。また、エンジン冷却水通路61には、ラジエータ62およびリザーブタンク63を迂回して冷却水をエンジン10に循環させるためのバイパス通路65が形成されている。このバイパス通路65の出水口は、サーモスタット弁64に連結されている。
【0032】
サーモスタット弁64は、ウォーターポンプ70の吸引口側に設けられ、自身の弁ハウジング内の冷却水の温度が暖機終了温度(例えば、80℃)未満となる場合には、ラジエータ62とウォーターポンプ70との連通を遮断するとともに、バイパス通路65とウォーターポンプ70とを連通させる。このときのサーモスタット弁64の弁位置を暖機位置と呼ぶ。また、サーモスタット弁64は、冷却水の温度が暖機終了温度以上となる場合には、ラジエータ62とウォーターポンプ70とを連通させ、バイパス通路65とウォーターポンプ70との連通を遮断する。このときのサーモスタット弁64の弁位置を通常位置と呼ぶ。
【0033】
以下、サーモスタット弁64が暖機位置となって冷却水がラジエータ62およびリザーブタンク63を迂回して循環する流路をエンジン冷却水暖機流路と呼ぶ。また、サーモスタット弁64が通常位置となって冷却水がラジエータ62およびリザーブタンク63を通って循環する流路をエンジン冷却水通常流路と呼ぶ。
【0034】
ウォーターポンプ70は、電動式であってポンプモータ71を備える。ポンプモータ71は、エンジンECU50から供給される駆動電流によって駆動される。従って、エンジンECU50は、エンジン冷却装置60の一部を構成している。本明細書においては、ポンプモータ71に通電してウォーターポンプ70を作動させることを、ウォーターポンプ70を駆動すると表現する。
【0035】
エンジン冷却装置60は、エンジン10の冷却対象部(シリンダヘッドあるいはシリンダブロックに形成された冷却水通路)に流れる冷却水の温度を検出する温度センサ72(以下、エンジン側温度センサ72と呼ぶ)が設けられている。エンジン側温度センサ72は、検出したエンジン冷却水温度Teを表す検出信号をエンジンECU50に出力する。エンジンECU50は、エンジン冷却水温度Teを表す情報をハイブリッドECU40に出力する。
【0036】
ハイブリッドECU40は、ドライバーによってパワースイッチ90がオン操作されたときハイブリッドシステムを起動する。ハイブリッドECU40は、ドライバーの操作量および車両状態に応じてモータ要求トルク値とエンジン要求出力値とを演算し、モータ要求トルク値に基づいてモータ15を駆動制御するとともに、エンジンECU50にエンジン要求出力値を送信する。この場合、ハイブリッドECU40は、エンジン冷却水温度Teが設定温度(例えば、暖機終了温度)よりも低い場合には、必ず、エンジン10およびウォーターポンプ70が起動するようにエンジン要求出力値を演算する。従って、パワースイッチ90がオン操作されたときにエンジン冷却水温度Teが設定温度よりも低い場合には、暖機運転が行われる。一方、エンジン冷却水温度Teが設定温度以上となる場合には、暖機運転が省略される。このため、ハイブリッドシステムの起動時から、エンジン10を停止した状態でモータ15のみによる走行が可能となっている。
【0037】
次に、太陽光発電システムについて説明する。太陽光発電システムは、車両VのルーフRに設けられるソーラーパネル100と、ソーラーパネル100を冷却するパネル冷却装置110とを備えている。ソーラーパネル100は、
図3に示すように、透明ガラス板101と、透明ガラス板101の裏面に貼り付けられた薄膜状の太陽電池102とから構成される。透明ガラス板101は、車両Vのルーフ枠RFに固定される。
【0038】
パネル冷却装置110は、ソーラーパネル100の裏面(太陽光が照射される受光面に対して反対側となる面)にソーラーパネル100と熱交換可能に配設されるパネル側配管111と、パネル側配管111とエンジン冷却水通路61とを連結する連結配管112と、冷却水の流れる流路の切替等を行う冷却アクチュエータ130(
図2参照)とを備えている。連結配管112は、
図1に示すように、往路配管112aと復路配管112bとから構成される。このパネル冷却装置110は、エンジン冷却装置60の一部(エンジンECU50、ウォーターポンプ70、エンジン冷却水通路61)を兼用して、エンジン冷却水をパネル側配管111に循環させるように構成されている。
【0039】
パネル側配管111は、ソーラーパネル100と熱交換可能となるように、ソーラーパネル100の裏面側の領域全体にわたって配置され、車幅方向の両端(車両前後方向の両端でもよい)でU字状に曲げられて蛇行した形状となっている。パネル側配管111の一方端は、往路配管112aの一方端に接続され、パネル側配管111の他方端は、復路配管112bの一方端に接続されている。連結配管112(往路配管112a、復路配管112b)は、例えば、車両VのピラーPに固定されている。パネル側配管111は、
図3に示すように、カバー103によって下方から覆われており、車室内から目視できないようになっている。
図3において、符号104は、車両Vのフロントガラスである。
【0040】
往路配管112aの他方端は、
図2に示すように、エンジン冷却装置60の冷却水が循環するエンジン冷却水通路61の第1位置611にて接続され、復路配管112bの他方端は、エンジン冷却水通路61の第2位置612にて接続される。第1位置611および第2位置612は、エンジン冷却水暖機流路に含まれる位置である。また、第2位置612は、第1位置611よりもエンジン冷却水通路61における下流側となっている。
【0041】
冷却アクチュエータ130は、第1開閉弁131、第2開閉弁132、第3開閉弁133、第4開閉弁134を備えている。第1開閉弁131、第2開閉弁132、第4開閉弁134は、通電時にのみ開弁する常閉式の電磁弁であり、第3開閉弁133は、通電時にのみ閉弁する常開式の電磁弁である。第1開閉弁131は、往路配管112aに設けられ、第2開閉弁132は、復路配管112bに設けられる。第1開閉弁131、第2開閉弁132は、エンジンルーム内に設けられることが好ましい。第3開閉弁133は、エンジン冷却水通路61における第1位置611と第2位置612との間に設けられる。車両VのルーフRには、往路配管112aの一方端側、あるいは、パネル側配管111の一方端側に大気開放管113が分岐して設けられている。大気開放管113の先端は、大気に開放されている。第4開閉弁134は、この大気開放管113に設けられている。
【0042】
第1開閉弁131、第2開閉弁132、第3開閉弁133、第4開閉弁134は、それぞれエンジンECU50に接続され、エンジンECU50から出力される弁駆動信号によって開閉状態が制御される。
【0043】
また、復路配管112bには、第2開閉弁132とパネル側配管111との間となる位置に、気液分離機能を有するリザーバー135が設けられている。このリザーバー135は、ルーフRよりも低い位置、例えば、エンジンルーム内に配設される。
【0044】
また、パネル側配管111には、パネル側配管111内の冷却水の温度を検出する温度センサ73(以下、パネル側温度センサ73と呼ぶ)が設けられている。パネル側温度センサ73は、検出したパネル側冷却水温度Tpを表す検出信号をエンジンECU50に出力する。
【0045】
ここで、パネル冷却装置110を作動させないモードにおける冷却水の循環路について説明する。エンジンECU50は、パネル冷却装置110を作動させないときには、冷却アクチュエータ130への通電を停止する。このため、常開式電磁弁である第3開閉弁133のみが開弁状態に維持され、常閉式電磁弁である第1開閉弁131、第2開閉弁132、第4開閉弁134は閉弁状態に維持される。ウォーターポンプ70の駆動時において、サーモスタット弁64まわりの冷却水温度が暖機終了温度未満となっている場合には、サーモスタット弁64の弁位置が暖機位置となっている。このため、
図4に矢印で示すように、エンジン冷却水暖機流路P1が形成される。冷却水温度が上昇して、サーモスタット弁64まわりの冷却水温度が暖機終了温度以上になると、サーモスタット弁64の弁位置が暖機位置から通常位置に切り替わる。これにより、
図5に矢印で示すように、エンジン冷却水通常流路P2が形成される。
【0046】
システム起動時(パワースイッチ90のオン操作時)にエンジン10の冷却水温度が高ければ、暖機運転を行う必要がない。このため、ハイブリッドシステムにおいては、エンジン10を起動することなく、モータ15により車両Vを走行させることができる。一方、冷却水温度が低い場合には、必ずエンジン10を起動して暖機運転を行うことによりエンジン駆動系全体を暖める。このため、エンジン10の冷間時においては、暖機運転を行うための余分な燃料が必要となる。また、暖機運転時には、通常運転時に比べて排ガスの質が低下する。
【0047】
そこで、本実施形態においては、エンジン10の駆動による暖機運転を省略、あるいは、暖機運転時間を短縮できる構成を備えている。具体的には、ハイブリッドシステムが起動していないときであって、冷却水の入替条件が成立したときに、エンジン10とパネル側配管111とが直列に配置された冷却水循環路を形成するように、エンジン冷却水通路61とパネル側配管111とを連通させてウォーターポンプ70を駆動する。これにより、エンジン冷却水通路61に溜まっている冷えた冷却水がパネル側配管111に汲み上げられるとともに、パネル側配管111内に溜まっている暖められた冷却水がエンジン冷却水通路61に戻される。従って、ソーラーパネル100によって暖められた冷却水を使ってエンジン10を暖めることができる。また、ソーラーパネル100に設けられた太陽電池102は、高温になるほど発電効率が低下するが、パネル側配管111内の冷却水がエンジン冷却水通路61に溜まっていた冷えた冷却水と置換されるため、太陽電池102の発電効率を高めることができる。
【0048】
こうした処理は、エンジンECU50がパネル冷却装置110(冷却アクチュエータ130)およびウォーターポンプ70の作動を制御することにより実施される。以下、エンジンECU50の実施するエンジン・パネル間冷却水入替制御について説明する。
図6は、エンジンECU50の実施するエンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチン(メインルーチン)を表すフローチャートである。また、
図7〜
図9は、エンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチンに組み込まれるサブルーチンであって、
図7は、水充填ルーチン、
図8は、暖機・パネル冷却ルーチン、
図9は、水抜きルーチンを表す。
【0049】
エンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返し実施される。本ルーチンが起動すると、エンジンECU50は、ステップS1において、パワースイッチ90がオフ状態であるか否かを判断する。つまり、ハイブリッドシステムが起動していないか否かを判断する。尚、エンジンECU50は、パワースイッチ90がオフ状態であっても、蓄電装置20から電源が供給されており、ウォーターポンプ70、冷却アクチュエータ130を駆動できるように構成されている。
【0050】
パワースイッチ90がオフ状態である場合、エンジンECU50は、ステップS2において、水充填処理が完了しているか否かを判断する。後述するように、ドライバーによってパワースイッチ90がオンされたときには、ソーラーパネル100のパネル側配管111に溜まっている冷却水が抜かれ(水抜き処理と呼ぶ)、パワースイッチ90がオフされたときには、エンジン10内の冷却水の温度低下を待って、パネル側配管111に冷却水が充填される。このステップS2は、冷却水の抜かれたパネル側配管111に再び冷却水を充填する水充填処理が完了しているか否かについての判断処理である。
【0051】
エンジンECU50は、水充填処理が完了していない場合には、その処理をステップS10の水充填ルーチン(
図7参照)に進める。水充填ルーチンが起動すると、エンジンECU50は、ステップS11において、エンジン側温度センサ72により検出されるエンジン冷却水温度Teを読み込み、続くステップS12において、エンジン冷却水温度Teが水充填設定温度Teref以下であるか否かを判断する。冷却水が冷えていない場合(S12:No)、エンジンECU50は、ステップS13において、パネル冷却装置110の冷却アクチュエータ130の作動を停止状態にする。つまり、第1開閉弁131、第2開閉弁132、第4開閉弁134を閉弁状態、第3開閉弁133を開弁状態にする。続いて、エンジンECU50は、ステップS14において、ウォーターポンプ70を停止状態にする。
【0052】
エンジンECU50は、ステップS14の処理を実施すると、水充填ルーチンを一旦抜けて、その処理をエンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチン(メインルーチン)に戻す。これにより、エンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチンが一旦終了する。エンジンECU50は、エンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチンを所定の短い周期で繰り返す。従って、エンジン冷却水温度Teが水充填設定温度Terefより高い間は、冷却アクチュエータ130およびウォーターポンプ70が停止状態に維持される。
【0053】
エンジン10内の冷却水の温度が低下して、エンジン冷却水温度Teが水充填設定温度Teref以下になると(S12:Yes)、エンジンECU50は、ステップS15において、第1開閉弁131および第2開閉弁132を開弁状態にし、第3開閉弁133および第4開閉弁134を閉弁状態にする。従って、パネル側配管111とエンジン冷却水通路61とが、連結配管112(往路配管112a、復路配管112b)を介して連通される。続いて、エンジンECU50は、ステップS16において、ウォーターポンプ70を予め設定された回転数で駆動する。これにより、
図10に矢印で示すように、リザーバー135に溜まっていた冷却水が汲み上げられて、パネル側配管111への冷却水の供給が開始される。
【0054】
続いて、エンジンECU50は、ステップS17において、ウォーターポンプ70を起動してから一定時間t1経過したか否かを判断する。この一定時間t1は、ウォーターポンプ70の駆動によってパネル側配管111内に冷却水が充填されるのに必要とされる時間に設定されている。ウォーターポンプ70の駆動時間が一定時間t1未満である場合には、エンジンECU50は、水充填ルーチンを一旦抜けて、その処理をエンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチン(メインルーチン)に戻す。これにより、上述した処理が繰り返される。
【0055】
ウォーターポンプ70の駆動時間が一定時間t1に到達すると(S17:Yes)、エンジンECU50は、ステップS18において、パネル側配管111内に冷却水が充填されたと判定し、その処理を上述したステップS13に進める。これにより、パネル側配管111とエンジン冷却水通路61との連通が遮断され(S13)、ウォーターポンプ70が停止される(S14)。こうして、水充填ルーチンが終了する。
【0056】
パネル側配管111内に冷却水が充填されると、エンジンECU50は、ステップS20において、暖機・パネル冷却ルーチン(
図8)を実施する。この暖機・パネル冷却ルーチンは、パワースイッチ90がオフ状態となっているあいだ繰り返し実施される。
【0057】
暖機・パネル冷却ルーチンが起動すると、エンジンECU50は、ステップS21において、エンジン側温度センサ72により検出されるエンジン冷却水温度Teを読み込み、続くステップS22において、パネル側温度センサ73により検出されるパネル側冷却水温度Tpを読み込む。
【0058】
続いて、エンジンECU50は、ステップS23において、冷却水の入替中であるか否かを判断する。本ルーチンが起動された直後は、冷却水の入替中では無いため、エンジンECU50は、その処理をステップS24に進める。エンジンECU50は、ステップS24において、パネル側冷却水温度Tpが予め設定されたパネル側入替設定温度Tprefよりも高いか否かを判断し、パネル側冷却水温度Tpがパネル側入替設定温度Tpref以下である場合には、その処理をステップS26,S27に進める。ステップS26,S27の処理は、上述したステップS13,S14の処理と同じである。従って、冷却アクチュエータ130への通電が停止され、第1開閉弁131、第2開閉弁132、第4開閉弁134が閉弁状態、第3開閉弁133が開弁状態に維持され、ウォーターポンプ70が停止状態に維持される。
【0059】
太陽光の照射によってソーラーパネル100が加熱されると、ソーラーパネル100の熱がパネル側配管111内に滞留している冷却水に伝達される。これにより、ソーラーパネル100の温度上昇が抑制され、その分だけ冷却水の温度が上昇する。パネル側冷却水温度Tpが上昇してパネル側入替設定温度Tprefよりも高くなると(S24:Yes)、エンジンECU50は、ステップS25において、エンジン冷却水温度Teが予め設定されたエンジン側入替設定温度Terefよりも低いか否かを判断し、エンジン冷却水温度Teがエンジン側入替設定温度Terefより低い場合には、その処理をステップS26,S27に進める。エンジン側入替設定温度Terefは、パネル側入替設定温度Tprefよりも低い値に設定されている。尚、エンジン側入替設定温度Terefは、エンジン駆動系を暖める必要があるか否かを判断する閾値であり、パネル側入替設定温度Tprefは、ソーラーパネル100を冷却する必要があるか否かを判断する閾値である。
【0060】
エンジン10の冷却水の温度は、エンジン停止からの時間経過とともに低下する。エンジンECU50は、エンジン冷却水温度Teがエンジン側入替設定温度Tereよりも低くなると(S25)、冷却水の入替条件が成立して、その処理をステップS28,S29に進める。このステップS28,S29の処理は、上述したステップS15,S16の処理と同じである。
【0061】
従って、第1開閉弁131および第2開閉弁132が開弁され、第3開閉弁133および第4開閉弁134が閉弁されることにより(S28)、パネル側配管111とエンジン冷却水通路61とが、連結配管112(往路配管112a、復路配管112b)を介して連通される。同時に、ウォーターポンプ70が駆動される(S29)。これにより、冷却水は、
図11に矢印で示すように、エンジン冷却水通路61、連結配管112、パネル側配管111からなる循環路を循環し始める。この循環路をパネル冷却循環路と呼ぶ。パネル冷却循環路は、ウォーターポンプ70とエンジン10とパネル側配管111とを直列に接続した共通の循環路を構成している。
【0062】
こうして、エンジン冷却水通路61に溜まって冷えた冷却水と、パネル側配管111に溜まって暖められた冷却水との入れ替えが開始される。
【0063】
続いて、エンジンECU50は、ステップS30において、冷却水の入れ替えが開始されてからの経過時間、つまり、ステップS28,S29の処理が実施されてからの経過時間が一定時間t2に達したか否かを判断する。この一定時間t2は、パネル側配管111に溜まっていた冷却水をエンジン冷却水通路61に戻すのに必要とされる時間に設定されている。冷却水の入替時間が一定時間t2未満である場合には、エンジンECU50は、暖機・パネル冷却ルーチンを一旦抜けて、その処理をエンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチン(メインルーチン)に戻す。これにより、上述した処理が繰り返される。
【0064】
この場合、一旦、冷却水の入替処理(S27,S28)が開始された後は、ステップS24,S25の処理がスキップされる。従って、パネル側冷却水温度Tpおよびエンジン冷却水温度Teに無関係に冷却水の入替処理が継続される。これにより、エンジン冷却水通路61の冷えた冷却水が往路配管112aを通ってパネル側配管111に汲み上げられ、パネル側配管111の暖められた冷却水が復路配管112bを通ってエンジン冷却水通路61に戻される。
【0065】
こうして冷却水の入替時間が一定時間t2に達すると(S30:Yes)、エンジンECU50は、ステップS31において、冷却水の入れ替え処理が完了したと判定して、その処理をステップS26,S27に進める。これにより、パネル側配管111とエンジン冷却水通路61との連通が遮断され(S26)、ウォーターポンプ70が停止される(S27)。
【0066】
エンジンECU50は、冷却水の入れ替え処理が完了すると、暖機・パネル冷却ルーチンを一旦抜けて、その処理をエンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチン(メインルーチン)に戻す。これにより、次回の暖機・パネル冷却ルーチンの実施時においては、ステップS23の判断は「No」となって、冷却水の入替条件が判断される。
【0067】
このように、エンジン冷却水通路61に溜まっている冷えた冷却水と、パネル側配管111に溜まっている暖められた冷却水とを入れ替えることにより、エンジン冷却水通路61からパネル側配管111に汲み上げられた冷却水によりソーラーパネル100を冷却することができる。同時に、パネル側配管111からエンジン冷却水通路61に戻された冷却水によりエンジン10を暖めることができる。
【0068】
ソーラーパネル100は、日照時においては、太陽光の輻射エネルギーによって加熱されるため外気温よりも高温となる。例えば、外気温が30℃の場合であっても、ソーラーパネル100の裏面である太陽電池102の温度は60℃を超えることがある。このため、パネル側配管111に汲み上げられた冷却水は、ソーラーパネル100と熱交換して温度上昇する。この熱交換によりソーラーパネル100の太陽電池102が冷却される。太陽電池102は、高温になるほど発電効率が低下するが、この冷却水との熱交換により冷却されるため、発電効率の低下が抑制される。
【0069】
また、エンジン20は、パネル側配管111から戻された高温の冷却水と熱交換して暖められる。つまり、ソーラーパネル100から奪った熱で暖められる。従って、エンジン10を起動させなくても暖機運転と同様の効果が得られる。
【0070】
エンジンECU50は、所定の短い周期にてエンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチンを繰り返す。このため、パワースイッチ90がオフ状態になっている場合には(S1:Yes)、最初に冷却水がパネル側配管111内に充填され、その後、冷却水の入替条件が成立するたびに、一定時間t2だけ冷却水の入れ替えが行われる。
【0071】
エンジンECU50は、エンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチンが起動されるたびに、ステップS1において、パワースイッチ90の状態を判断する。パワースイッチ90がオン状態になっている場合(S1:No)、エンジンECU50は、ステップS3において、パネル側配管111の水抜き処理が完了しているか否かを判断する。水抜き処理が完了している場合には、エンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチンを一旦終了し、水抜き処理が完了していない場合には、ステップS40の水抜きルーチン(
図9参照)を実施する。
【0072】
水抜きルーチンが起動されると、エンジンECU50は、ステップS41において、冷却アクチュエータ130に設けられた4つの開閉弁131〜134のうち第4開閉弁134に駆動信号を出力して、第4開閉弁134を開弁状態にする(第1,第2開閉弁131,132は閉弁状態、第3開閉弁133は開弁状態に維持されている)。第4開閉弁134は、大気開放管113に設けられているため、パネル側配管111の一端が大気に開放される。また、パネル側配管111の他端側は、復路配管112bを介してリザーバー135に連通している。このため、パネル側配管111に溜まっていた冷却水は、
図12に矢印にて示すように、自重によってリザーバー135に流れ始める。
【0073】
続いて、エンジンECU50は、ステップS42において、第4開閉弁134を開弁してから一定時間t3経過したか否かを判断する。この一定時間t3は、パネル側配管111に溜まっている冷却水の全量をリザーバー135に流すのに必要とされる時間に設定されている。エンジンECU50は、第4開閉弁134を開弁してから一定時間t3経過していない場合(S42:No)には、水抜きルーチンを抜けて、その処理をエンジン・パネル間冷却水入替制御ルーチン(メインルーチン)に進める。これにより、水抜きルーチンが所定の短い周期で繰り返される。従って、第4開閉弁134を開弁してから一定時間t3が経過するまで、第4開閉弁134の開弁状態が維持される。
【0074】
エンジンECU50は、第4開閉弁134を開弁してから一定時間t2が経過すると(S42:Yes)、ステップS43において、第4開閉弁134を閉弁し、ステップS44において、水抜き処理が完了したと判定する。こうして、一定時間t3が経過するあいだに、パネル側配管111内の冷却水が空気に置換される。
【0075】
尚、エンジンECU50は、水抜きルーチンを実施している最中に、ハイブリッドECUからエンジン要求出力値を受信した場合には、水抜きルーチンを実行しつつ(第4開閉134弁を開弁状態に維持しつつ)、エンジン10を起動させる。また、エンジンECU50は、エンジン10の起動にあわせてウォーターポンプ70を起動し、エンジン冷却水通路61に冷却水を循環させる。
【0076】
以上説明した本実施形態の車両Vによれば、以下の作用効果を奏する。
1.エンジン10の停止中に、エンジン冷却水通路61とパネル側配管111とが連結配管112を介して連通され、ウォーターポンプ70が駆動される。これにより、エンジン冷却水通路61に溜まっている冷えた冷却水がパネル側配管111に汲み上げられるとともに、パネル側配管111内に溜まっている暖められた冷却水がエンジン冷却水通路61に戻される。従って、エンジン10の停止中の冷えた冷却水によりソーラーパネル100を冷却することができ、ソーラーパネル100(太陽電池102)の発電効率を向上させることができる。
【0077】
2.パネル側配管111内の冷却水は、ソーラーパネル100と熱交換して温度上昇する。従って、エンジン冷却水通には、暖められた冷却水が戻される。これにより、エンジン10を起動させる前に、エンジン10を暖めておくことができる。従って、ソーラーパネル100の蓄熱を有効利用して、暖機運転を省略あるいは暖機運転時間を短縮することができる。この結果、燃費の向上、排ガスの質の向上を図ることができる。
【0078】
3.パネル側配管111に冷却水が満たされている場合には、車両Vの重心が上に移動するため、車両Vの重量バランスの関係から、車両Vの運動性能が低下する可能性がある。そこで、本実施形態においては、車両Vの走行開始が予測される場合、つまり、パワースイッチ90のオン操作が検出されたときに、パネル側配管111から冷却水を抜く。このため、車両Vの走行中においては、冷却水がパネル側配管111から抜かれた状態となっているため、車両Vの運動性能の低下を低減することができる。
【0079】
4.パネル側冷却水温度Tpがパネル側入替設定温度Tprefよりも高く、かつ、エンジン冷却水温度Teがエンジン側入替設定温度Terefよりも低いことを冷却水の入替条件として、エンジン冷却水通路61に溜まっている冷却水と、パネル側配管111に溜まっている冷却水との入れ替えが行われる。また、この冷却水の入替処理は、一定時間t2だけ継続される。このため、冷却水による熱の移動を適切に行うことができる。また、ウォーターポンプ70の無駄な駆動を防止することができる。
【0080】
5.エンジン冷却装置60に設けられたウォーターポンプ70を使用して冷却水を入れ替えできるため、特別なポンプを新たに設ける必要が無く、低コストにて実施することができる。
【0081】
次に、暖機・パネル冷却ルーチンの変形例について説明する。
図13は、変形例に係る暖機・パネル冷却ルーチンを表すフローチャートである。この暖機・パネル冷却ルーチンは、上述した実施形態の暖機・パネル冷却ルーチン(
図8)に代えて実施されるものである。以下、実施形態の暖機・パネル冷却ルーチンと同一の処理については、図面に実施形態と同じステップ符号を付して説明を省略する。
【0082】
エンジンECU50は、ステップS32において、パネル側冷却水温度Tpとエンジン冷却水温度Teとの差である温度差A(=Tp−Te)を計算する。続いて、エンジンECU50は、ステップS33において、温度差Aが予め設定された入替設定温度差Aref以上であるか否かについて判断する。パネル側配管111内に冷却水が充填された直後は、温度差Aは入替設定温度差Arefよりも小さい。このため、エンジンECU50は、ステップS33において「No」と判定し、その処理をステップS26,S27に進める。従って、冷却アクチュエータ130への通電が停止され、第1開閉弁131、第2開閉弁132、第4開閉弁134が閉弁状態、第3開閉弁133が開弁状態に維持され、ウォーターポンプ70が停止状態に維持される。
【0083】
太陽光の照射によってソーラーパネル100が加熱されると、ソーラーパネル100の熱がパネル側配管111内に滞留している冷却水に伝達される。これにより、ソーラーパネル100の温度上昇が抑制され、その分だけ冷却水の温度が上昇する。パネル側配管111内の冷却水の温度が上昇して、パネル側冷却水温度Tpとエンジン冷却水温度Teとの温度差Aが入替設定温度差Aref以上になると(S33:Yes)、エンジンECU50は、その処理をステップS28,S29に進める。
【0084】
これにより、エンジン冷却水通路61に溜まっていた冷却水が往路配管112aを通ってパネル側配管111に汲み上げられ、パネル側配管111に溜まっていた冷却水が復路配管112bを通ってエンジン冷却水通路61に戻される。冷却水の循環開始時においては、パネル側冷却水温度Tpがエンジン冷却水温度Teよりも高い状態となっている。このため、ウォーターポンプ70によって冷却水を循環させることにより、パネル側配管111には相対的に低温の(循環開始直前に溜まっていた冷却水よりも低温の)冷却水が流入し、エンジン冷却水通路61には相対的に高温の(循環開始直前に溜まっていた冷却水よりも高温の)冷却水が流入する。
【0085】
このように冷却水を循環させることにより、エンジン冷却水通路61に溜まっている冷えた冷却水と、パネル側配管111に溜まっている暖められた冷却水とが入れ替えられる。これにより、温度差Aが低下していく。温度差Aが入替設定温度差Aref未満にまで低下すると、エンジンECU50は、その処理をステップS26,S27に進めて、パネル冷却循環路を閉じて冷却水の循環を停止させる。
【0086】
以上説明した変形例の暖機・パネル冷却ルーチンによれば、実施形態の暖機・パネル冷却ルーチンと同様にソーラーパネル100に溜まった熱を有効利用してエンジン10を暖めると同時に、ソーラーパネル100の発電効率を向上させることができる。
【0087】
以上、本実施形態(変形例を含む)の車両Vについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0088】
例えば、本実施形態では、ハイブリッド自動車について説明しているが、本発明の対象となる車両は、ハイブリッド自動車に限るものではなく、車輪駆動源としてエンジン10のみを備えた車両であってもよい。
【0089】
また、本実施形態においては、ソーラーパネル100(太陽電池102)の温度状態を、パネル側配管111内の冷却水の温度によって検出しているが、それに代えて、ソーラーパネル100の温度を直接検出する構成であってもよい。例えば、ソーラーパネル100に温度センサ(パネル温度センサと呼ぶ)を設け、ステップS22において、パネル温度センサの検出するパネル温度TpをエンジンECU50で読み込むようにしてもよい。
【0090】
また、本実施形態においては、パワースイッチ90がオフ状態となっているときに冷却水をパネル側配管111に充填するが、例えば、外気温度が極端に低い場合や、日照が得られない夜間等においては、パネル側配管111で冷却水が逆に冷やされてしまうケースも考えられる。従って、予め定めた充填許可条件が満たされない場合(例えば、外気温度が充填許可設定温度未満となる場合、現在時刻が充填禁止時間帯に入る場合など)には、冷却水をパネル側配管111に充填しないようにする構成を備えていてもよい。この場合、例えば、ステップS1とステップS2との間に、充填許可条件が満足しているか否かを判断する処理を組み込み、充填許可条件が満足していないと判定された場合には、その処理をステップS3に進め、充填許可条件が満足していると判定された場合には、その処理をステップS2に進めるようにすればよい。
【0091】
また、本実施形態では、パネル側配管111として、蛇行した1本のパイプを採用しているが、例えば、複数のパイプを並列に設けて、各パイプの入水口を往路配管112aに接続し、各パイプの出水口を復路配管112bに接続した構成を採用することもできる。
【0092】
また、本実施形態では、水充填ルーチンにおいて、エンジン冷却水温度Teが水充填設定温度Teref以下になるまで待って、冷却水をパネル側配管111に供給するが、必ずしも、エンジン冷却水温度Teを検出する必要はない。例えば、ステップS11において、エンジン10の停止からの経過時間を測定し、ステップS12において、測定されたエンジン停止時間が、エンジン冷却水温度Teが水充填設定温度Teref以下になると想定される設定時間を超えたか否かを判断するようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態においては、エンジン10の停止中においてのみ冷却水の入れ替え(エンジン冷却水通路61に溜まって冷えた冷却水と、パネル側配管111に溜まって暖められた冷却水との入れ替え)を行うようにしているが、エンジン起動時に冷却水の入替処理を実施する構成を採用することもできる。例えば、エンジン起動時に暖機・パネル冷却ルーチン(
図8または
図13)を実施するようにしてもよい。この場合、水抜きルーチンは、冷却水の入替処理後に行ってもよいし、あるいは、省略してもよい。