特開2018-44691(P2018-44691A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018044691-多連装ロケット弾ランチャ 図000003
  • 特開2018044691-多連装ロケット弾ランチャ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-44691(P2018-44691A)
(43)【公開日】2018年3月22日
(54)【発明の名称】多連装ロケット弾ランチャ
(51)【国際特許分類】
   F41F 3/04 20060101AFI20180223BHJP
【FI】
   F41F3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-177964(P2016-177964)
(22)【出願日】2016年9月12日
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】尾嵜 康隆
(57)【要約】
【課題】従来の多連装ロケット弾ランチャは、ケージの後端部を俯仰動作の回動中心としていたため、支持するバランスが悪く、比較的高速の動作が困難であった。
【解決手段】複数のロケット弾を収容したケージ1を俯仰動作可能に備えた多連装ロケット弾ランチャLであって、基台2に配置した固定アーム3と、ケージ1の側部に配置して俯仰動作の回動中心を決定するケージ関節部4と、ケージ1を俯仰動作させるための俯仰機構5と、固定アーム3に基端部を回動自在に連結し且つケージ関節部4に先端部を回動自在に連結した支持アーム6と、基台2と支持アーム6の中間部とを連結する昇降用シリンダ7とを備えたものとし、ケージ1をバランス良く支持することを可能にして、高速動作を実現した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロケット弾を収容したケージを俯仰動作可能に備えた多連装ロケット弾ランチャであって、
基台に配置した固定アームと、
ケージの側部に配置して俯仰動作の回動中心を決定するケージ関節部と、
ケージを俯仰動作させるための俯仰機構と、
固定アームに基端部を回動自在に連結し且つケージ関節部に先端部を回動自在に連結した支持アームと、
基台と支持アームの中間部とを連結する昇降用シリンダとを備えたことを特徴とする多連装ロケット弾ランチャ。
【請求項2】
基台が、ベースと、ベースに対して垂直軸回りに旋回可能なタレットとを備え、
タレット上において、旋回中心の一方側に固定アームを配置すると共に、その他方側に昇降用シリンダの連結部が配置してあることを特徴とする請求項1に記載の多連装ロケット弾ランチャ。
【請求項3】
俯仰機構が、ケージと支持アームとを連結する俯仰用シリンダであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多連装ロケット弾ランチャ。
【請求項4】
車両に搭載される多連装ロケット弾ランチャであって、
車両に基台を設置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多連装ロケット弾ランチャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のロケット弾を収容したケージを俯仰動作可能に備えた多連装ロケット弾ランチャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多連装ロケット弾ランチャとしては、例えば非特許文献1に記載されているものがある。非特許文献1に記載の多連装ロケット弾ランチャは、車両に搭載したものであって、複数のロケット弾を収容したケージを俯仰動作可能に備えている。すなわち、多連装ロケット弾ランチャは、車両の後端部若しくは側端部に、ケージの後端部が回動可能に連結してあり、使用時には、油圧シリンダ等によりケージを上方向に回動させて傾斜状態にし、ロケット弾を発射する。
【0003】
上記の多連装ロケット弾ランチャにおいて、車両の後端部や側端部に、ケージの後端部を俯仰動作の回動中心として連結しているのは、不使用時にケージを車両の範囲内に収めると共に、使用時にロケット弾の燃焼ガス等の噴射物から車両を保護するためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jane's Land Warfare Platforms (Atilly & Air Defence) 2014-2015. p.391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の多連装ロケット弾ランチャは、車両の後端部や側端部に、ケージの後端部を俯仰動作の回動中心として連結した構造であるが、ケージの後端部は俯仰動作の回動中心としてバランスが悪く、比較的高速の動作が困難であるという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたものであって、ケージをバランス良く支持することを可能にして、比較的高速の動作を行うことができる多連装ロケット弾ランチャを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる多連装ロケット弾ランチャは、複数のロケット弾を収容したケージを俯仰動作可能に備えたものである。この多連装ロケット弾ランチャは、基台に配置した固定アームと、ケージの側部に配置して俯仰動作の回動中心を決定するケージ関節部と、ケージを俯仰動作させるための俯仰機構と、固定アームに基端部を回動自在に連結し且つケージ関節部に先端部を回動自在に連結した支持アームと、基台と支持アームの中間部とを連結する昇降用シリンダとを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わる多連装ロケット弾ランチャは、不使用時には、ケージ及び支持アームを水平状態に維持している。そして、多連装ロケット弾ランチャは、使用時には、昇降用シリンダを伸長駆動すると、支持アームが、固定アームに連結した基端部を中心にして回動し、これに伴って、支持アームの先端に連結したケージ関節部を介してケージを上昇させる。その一方で、多連装ロケット弾ランチャは、俯仰機構により、ケージ関節部を中心にしてケージを上下方向に回動(俯仰動作)させる。
【0009】
上記の多連装ロケット弾ランチャは、基台に固定アームを配置し、固定アームに支持アームの基端部を連結すると共に、支持アームの先端部とケージ関節部とを連結したので、ケージの側部において、ケージの重心に近い位置にケージ関節部を配置することが可能になる。このようにして、多連装ロケット弾ランチャは、ケージをバランス良く支持することを可能にし、これにより比較的高速の動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の多連装ロケット弾ランチャの一実施形態を説明する側面図である。
図2図1に示す多連装ロケット弾ランチャの斜視図である。
図3図1に示す多連装ロケット弾ランチャの動作を説明する側面図である。
図4図1に示す多連装ロケット弾ランチャの動作の過程を順次説明する各々側面図(A)〜(D)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す多連装ロケット弾ランチャL(以下、「ランチャL」と略記する)は、車両Bに搭載したものであり、複数のロケット弾(図示略)を収容したケージ1を俯仰動作可能に備えている。このランチャLは、図2に示すように、2つのケージ1,1を並列に配置し、両ケージ1,1の間に駆動装置を備えている。よって、図1や後に説明する図3及び図4では、駆動装置を示すために手前のケージを省略している。
【0012】
上記のランチャLは、基台2に配置した固定アーム3と、ケージ1の側部に配置して俯仰動作の回動中心を決定するケージ関節部4と、ケージ1を俯仰動作させるための俯仰機構とを備えている。また、ランチャLは、固定アーム3に基端部を回動自在に連結し且つケージ関節部4に先端部を回動自在に連結した支持アーム6と、基台2と支持アーム6の中間部とを連結する昇降用シリンダ7とを備えている。
【0013】
図示例のケージ1は、ロケット弾を収容した複数の発射筒8を縦横に組み合わせ、これらをホルダ9により強固に拘束した構成である。基台2は、車両Bに対する重量配分等を考慮して、車両Bの後輪の上位側に配置してあり、ベース2Aと、ベース2Aに対して垂直軸回りに旋回可能なタレット2Bとを備えている。したがって、この実施形態のランチャLは、ケージ1を俯仰動作可能にし、且つ旋回可能にしたものである。
【0014】
固定アーム3は、基台2のタレット2Bに、立てた状態で配置してあり、その上端部に、支持アーム6の基端部との連結部10を備えている。ケージ関節部4は、ケージ1の側部において、ケージ1の重心に近い位置に設けてあり、ケージ1の俯仰動作の回転中心Chを決定する。図示例では、ケージ1のホルダ9に、ケージ関節部4が設けてある。
【0015】
俯仰機構は、ケージ関節部4を中心にケージ1を回動し得るものであれば、その構成がとくに限定されるものではないが、この実施形態では、ケージ1と支持アーム6とを連結する俯仰用シリンダ5を用いている。俯仰用シリンダ5は、例えば油圧シリンダであって、基端部を支持アーム6の基端部に回動自在に連結し、シリンダロッド5Aの先端をケージ1の所定位置に回動自在に連結している。なお、図示例では、俯仰用シリンダ5と支持アーム6との連結部は、固定アーム3と支持アーム6の連結部10から離間している。
【0016】
支持アーム6は、基端部を固定アーム3の連結部10に回動自在に連結すると共に、先端部をケージ関節部4に回動自在に連結しており、その中間部には、昇降用シリンダ7の連結部11を有している。昇降用シリンダ7は、例えば油圧シリンダであって、基端部をタレット2B上に配置した連結部12に回動自在に連結すると共に、シリンダロッド7Aの先端部を支持アーム6の連結部11に回動自在に連結している。
【0017】
ここで、ランチャLは、タレット2B上において、旋回中心Cvの一方側(図1中で右側)に固定アーム3を配置すると共に、その他方側(図1中で左側)に昇降用シリンダ7の連結部12が配置してある。
【0018】
また、固定アーム3の連結部10、ケージ関節部4、支持アーム6の連結部11、タレット2Bの連結部12、及び俯仰用シリンダ5の両側の連結部は、夫々の回転中心の軸線が互いに平行で且つ水平である。タレット2Bの旋回中心Cvの軸線は、車両Bに対して垂直である。なお、車両Bには、ランチャLのタレット2B及び各シリンダ5,7の駆動制御や、ロケット弾の火器管制等を行う制御装置13が搭載してある。
【0019】
上記構成を備えたランチャLは、不使用時には、図1及び図4(A)に示すように、ケージ1を水平状態に支持している。この際、ランチャLは、支持アーム6もほぼ水平状態になり、全体が車両Bの範囲内にコンパクトに収まった状態になる。
【0020】
次に、ランチャLは、使用時には、図3及び図4(B)〜(D)に示すように、基台2のタレット2Bを回転駆動してロケット弾の発射方位を調整し、昇降用シリンダ7及び俯仰用シリンダ5を駆動してロケット弾の発射角度を調整する。
【0021】
すなわち、ランチャLは、昇降用シリンダ7を伸長駆動すると、支持アーム6が、固定アーム3に連結した基端部(連結部10)を中心にして上方に回動し、これに伴って支持アーム6の先端に連結したケージ関節部4を介してケージ1を上昇させる。その一方で、ランチャLは、俯仰機構である俯仰用シリンダ5を伸縮駆動することにより、ケージ関節部4を中心にしてケージ1を上下方向に回動(俯仰動作)させる。
【0022】
つまり、ランチャLは、図3中の矢印A1で示すように、昇降用シリンダ7を伸縮駆動すると、同図中の矢印A2で示す如く支持アーム6が上下方向に回動し、同図中の矢印A3で示すように、俯仰用シリンダ5を伸縮駆動すると、同図中の矢印A4で示す如くケージ1が上下方向に回動する。
【0023】
このようにして、ランチャLは、昇降用シリンダ7の伸縮駆動(矢印A1)により、ケージ1と車両Bの相対位置を決定し、俯仰用シリンダ5の伸縮駆動(矢印A3)により、ロケット弾の発射角を決定する。すなわち、ランチャLは、ロケット弾の発射時に燃料ガスが車両にかからないようにケージ1の位置を設定し、ロケット弾が目標に向かうようにケージ1の角度を設定する。
【0024】
このとき、ランチャLは、基台2に固定アーム3を配置し、固定アーム3に支持アーム6の基端部を連結すると共に、支持アーム6の先端部とケージ関節部4とを連結した構成であるから、ケージ1の側面において、同ケージ1の重心に近い位置にケージ関節部4を配置することができる。つまり、ランチャLは、ケージ1をバランス良く支持することが可能になる。
【0025】
また、上記のランチャLは、先述の如く不使用時には車両Bの範囲内にコンパクトに収まり、使用時には、ケージ1を上昇させて俯仰動作を行うので、この状態でロケット弾を発射しても、その燃焼ガス等の噴出物が車両Bに当たることが無く、噴出物から車両Bを保護し得る。
【0026】
このようにして、上記のランチャLは、車両Bへの搭載機能や車両Bの保護機能を満足しつつ、ケージ関節部4を俯仰動作の回動中心としてケージ1をバランス良く支持することが可能になり、これにより、比較的高速の動作を行うことができる。また、ランチャLは、高速動作の実現により、例えば、車両Bの走行中におけるロケット弾の発射、比較的近距離の高速移動体に対するロケット弾の発射などに迅速に対応し得るものとなる。
【0027】
さらに、上記のランチャLは、基台2のタレット2B上において、旋回中心Cvの一方側に固定アーム3を配置すると共に、その他方側に昇降用シリンダ7の連結部12が配置してあるので、設置範囲が限られたタレット2B上で、支持アーム6の回動範囲や昇降用シリンダ7のストロークを最大限に確保し、可動範囲を大きく得ることができる。また、ランチャLは、昇降用シリンダ7の伸縮駆動により、ケージ関節部4の位置が旋回中心Cvの軸線上となるように調整すれば、旋回動作に関してもケージ1をバランス良く支持することができる。
【0028】
さらに、上記のランチャLは、俯仰動作の回動中心がケージ1の重心位置に近いバランスの良いケージ関節部4であるうえに、俯仰機構として、ケージ1と支持アーム6とを連結する俯仰用シリンダ5を採用したことから、俯仰機構の構造の簡略化や省力化を実現すると共に、迅速な俯仰動作が可能である。
【0029】
本発明に係わる多連装ロケット弾ランチャは、その構成が上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の細部を適宜変更することが可能である。また、多連装ロケット弾ランチャは、車両だけでなく、船舶等の各種移動体に搭載したり、不動の構造物に設置したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
B 車両
L 多連装ロケット弾ランチャ
1 ケージ
2 基台
2A ベース
2B タレット
3 固定アーム
4 ケージ関節部
5 俯仰用シリンダ(俯仰機構)
6 支持アーム
7 昇降用シリンダ
10,11,12 連結部
図1
図2
図3
図4