【文献】
奥田大輔、加藤利次、井上馨,逆相アドミタンスによる誘導機の固定子巻線の故障診断法,電気学会半導体電力変換研究会資料,日本,電気学会,2010年 1月29日,SPC−10−013,77−82
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る短絡故障診断方法の好ましい実施形態について説明する。なお、各実施形態では三相誘導機における固定子巻線の短絡故障を診断するが、三相誘導機は単なる一例であり、本発明は各種交流電動機における固定子巻線の短絡故障の診断にも適用可能である。
【0015】
[第1実施形態]
図1に、第1実施形態のシステム構成を示す。同図に示すように、三相(a相、b相、c相)誘導機1は三相インバータ等を含む三相交流電源2により駆動される。A/Dコンバータ3は、三相交流電源2からa相の固定子巻線(不図示)に向かって流れる固定子電流の電流値i
asと、b相の固定子巻線(不図示)に向かって流れる固定子電流の電流値i
bsとを一定時間おきにA/D変換して、そのディジタルデータを演算部としてのコンピュータ4に出力する。コンピュータ4は、固定子電流値i
asおよびi
bsのディジタルデータに基づいて、最終的に、三相誘導機1の短絡故障情報(診断結果)を出力する。
【0016】
なお、本実施形態では、1相あたりの固定子巻線数が234である三相誘導機1を使用している。また、三相交流電源2から入力される固定子電圧の周波数を60Hzとしている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態に係る短絡故障診断方法はステップS11〜S17から構成され、このうち、ステップS12は上記A/Dコンバータ3によって実行され、ステップS13以降のステップは上記コンピュータ4によって実行される。
【0018】
まず、ステップS11では、予め解析またはシミュレーションにより三相誘導機1の正相アドミタンスY
pを求める。この解析またはシミュレーションに必要な計算は、コンピュータ4で行ってもよいし、別のコンピュータで行ってもよい。また、ステップS11を実行するタイミングは、ステップS12の前に限定されない。要は、コンピュータ4が後述するステップS16を実行する際に、正相アドミタンスY
pの値を参照することができるようになっていればよい。
【0019】
ステップS12では、A/Dコンバータ3がa相の固定子電流値i
asおよびb相の固定子電流値i
bsをサンプリング時間h秒毎にA/D変換して、そのディジタルデータをコンピュータ4に出力する。本実施形態では、1周期のサンプル数を256とするために、サンプリング時間hを65.1μ秒(サンプリング周波数15360Hz)としている。
【0020】
ステップS13では、コンピュータ4が電流パークベクトルIを求める。より詳しくは、次式により電流パークベクトルIの実部i
dと虚部i
qを求め、
【数3】
さらに、これらを次式のようにフェーザで表現して電流パークベクトルIを得る。
【数4】
ここで、I
p、I
nはステップS14、S15で求める電流パークベクトルIの正相成分および逆相成分である。また、*は複素共役を示す(他の式も同様)。
【0021】
ステップS14では、式(3)で求めた電流パークベクトルIを用いて、最小自乗法を用いたあてはめにより電流パークベクトルIの正相成分I
pを求める。また、ステップS15では、前ステップで求めた正相成分I
pを差し引いた後の電流パークベクトルIを用いて、最小自乗法を用いたあてはめにより電流パークベクトルIの逆相成分I
nを求める。あてはめの詳細な手法については、後で詳細に説明する。
【0022】
ステップS16では、ステップS11で予め求めておいた三相誘導機1の正相アドミタンスY
p、ステップS14で求めた電流パークベクトルIの正相成分I
p、およびステップS15で求めた電流パークベクトルIの逆相成分I
nを用いて、次式により、非対称アドミタンスY
a*を求める。
【数5】
【0023】
固定子巻線に短絡故障が発生していない完全に平衡な三相誘導機1では、電流パークベクトルIの逆相成分I
nの値は0なので、非対称アドミタンスY
a*の値も0となる。一方、短絡故障が発生して不平衡となった三相誘導機1では、逆相成分I
nは0以外の値となるので、非対称アドミタンスY
a*も0以外の値となる。ステップS16では、このことを利用して、非対称アドミタンスY
a*に基づいて三相誘導機1の短絡故障情報を得る。ステップS16の具体的な手法は種々考えられるが、例えば、非対称アドミタンスY
a*を絶対値化し、絶対値|Y
a*|が増加傾向にあるか否かを判定することにより、短絡故障が伸展しているか否かを診断することができる。
【0024】
また、非対称アドミタンスY
a*は、例えば故障ターン数が5の場合であっても、故障相がどの相なのかによって、その実部と虚部が異なる値をとる。そこで、ステップS16では、このことを利用して、非対称アドミタンスY
a*を実部と虚部に分解して複素平面上にプロットすることで、故障相(a相、b相、c相、またはいずれか2つの相が複合的に故障しているのか)と、故障ターン数(各故障相において、総巻線数234のうちのどの程度の巻線が短絡故障しているのか)を推定することもできる。
【0025】
なお、三相誘導機1の短絡故障は、非対称アドミタンスY
a*ではなく、電流パークベクトルIの正相成分I
pと逆相成分I
nの比に基づいて診断することもできるが、本発明に係る短絡故障診断方法では、これと等価であり、かつより分かりやすい上述の非対称アドミタンスY
a*に基づいて診断する手法を採用することとした。
【0026】
(最小自乗法を用いたあてはめ)
続いて、ステップS14およびステップS15における最小自乗法を用いたあてはめについて説明する。なお、正弦波形のパラメータには、振幅A、角周波数ωおよび位相θの3つがあるが、本実施形態では、計算量を減らすため、角周波数ωは与えられたものとして残りの2つのパラメータ(振幅A、位相θ)をあてはめにより求めることとしている。
【0027】
あてはめにより求めたい電流パークベクトルIの正相成分y^
pおよび逆相成分y^
n*を以下の正弦関数で定義する。ただし、以下の各式において、^はあてはめにより求める推定値であることを示し、下付添字p、nはそれぞれ正相成分、逆相成分であることを示し、また、上付添字d、qはそれぞれ電流パークベクトルIの実部成分、虚部成分であることを示す。
【数6】
【0028】
1周期Tをサンプリング時間h(例えば65.1μ秒)でn
s点(例えば256点)サンプリングする場合は、以下の式が成立する。
【数7】
【0029】
また、時刻t=t
i=ihにおける測定電流値y
i(例えば固定子電流値i
as、i
bs)、およびあてはめにより求める電流値y^
i(|I|,θ)をそれぞれ以下のように定義する。
【数8】
ただし、(9)式における|I|およびθは、あてはめにより求める正弦波形パラメータの振幅および位相である。
【0030】
次に、現在t=t
iのサンプル点よりn
dサンプル毎にn
f点を選んで過去に遡って、まず、正相成分I
pの振幅パラメータ|I
p|(t
i)および位相パラメータθ
p(t
i)をあてはめにより求める。より詳しくは、本実施例では1周期のサンプル数が256点なので、16サンプル毎に16点を選んで過去に遡ることにより、過去1周期の状態を反映したあてはめを行う。サンプルを間引くのは、計算負担を軽減するためである。
【0031】
あてはめ関数y^
d、y^
qの|I
p|、θ
pについての偏微分値は、次式の通りである。
【数9】
したがって、前の時間ステップのパラメータ値を推定値の初期値とした場合、最小自乗法を用いて求めるべき振幅パラメータ|I
p|(t
i)および位相パラメータθ
p(t
i)のあてはめは、次式により行うことができる。
【数10】
ただし、残差ベクトルb
pの左側にある符号は最小自乗法によるあてはめを示す。また、係数行列A
p、解Δx
p i、残差ベクトルb
pは、それぞれ次式の通りである。
【数11】
【数12】
【数13】
【0032】
残差を最小とする解Δx
p iは、次式を用いて過去の値より更新される。
【数14】
【0033】
係数行列A
p、残差ベクトルb
pの値を与えるためには、求めるべき動作点(振幅パラメータ|I
p|、位相パラメータθ
p)の値が必要となる。例えば、1サンプル前に求めた過去t=t
i-1における振幅パラメータ|I
p|(t
i-1)および位相パラメータθ
p(t
i-1)を動作点の値として用いる場合は、解Δx
p iは次式により更新される。
【数15】
なお、この反復修正は各時間ステップで1回行えば、数時間ステップ後に収束するので、それ以降の時間ステップにおいては精度よくあてはめを行うことができる。
【0034】
以上のようにして、時間t=t
iにおける正相成分I
pの振幅パラメータ|I
p|および位相パラメータθ
pが求められる。
【0035】
続いて、逆相成分I
nの振幅パラメータ|I
n|および位相パラメータθ
nを最小自乗法を用いて求める方法について説明する。これらのパラメータは、電流パークベクトルIから先に求めた正相成分I
pを差し引き、残りの成分の残差が最小となるように、次式を用いてあてはめを行うことにより求められる。
【数16】
ただし、係数行列A
n、解Δx
n i、残差ベクトルb
nは、それぞれ次式の通りである。
【数17】
【数18】
【数19】
【0036】
残差を最小とする解Δx
n iは、次式を用いて過去の値より更新される。
【数20】
【0037】
係数行列A
n、残差ベクトルb
nの値を与えるためには、求めるべき動作点(振幅パラメータ|I
n|、位相パラメータθ
n)の値が必要となる。例えば、1サンプル前に求めた過去t=t
i-1における振幅パラメータ|I
n|(t
i-1)および位相パラメータθ
n(t
i-1)を動作点の値として用いる場合は、解Δx
n iは次式により更新される。
【数21】
【0038】
以上のようにして、時間t=t
iにおける逆相成分I
nの振幅パラメータ|I
n|および位相パラメータθ
nが求められる。
【0039】
[第2実施形態]
図3に、第2実施形態のシステム構成を示す。同図に示すように、三相(a相、b相、c相)誘導機1は三相インバータ等を含む三相交流電源2により駆動される。A/Dコンバータ3は、三相交流電源2からa相の固定子巻線(不図示)に向かって流れる固定子電流の電流値i
asと、b相の固定子巻線(不図示)に向かって流れる固定子電流の電流値i
bsと、a相−b相の相間固定子電圧の電圧値v
abと、b相−c相の相間固定子電圧の電圧値v
bcとを一定時間おきにA/D変換して、そのディジタルデータを演算部としてのコンピュータ4に出力する。コンピュータ4は、固定子電流値i
as、i
bsおよび相間固定子電圧値v
ab、v
bcのディジタルデータに基づいて、最終的に、三相誘導機1の短絡故障情報(診断結果)を出力する。
【0040】
なお、本実施形態では、1相あたりの固定子巻線数が234である三相誘導機1を使用している。また、三相交流電源2から入力される固定子電圧の周波数は60Hzである。
【0041】
図4に示すように、本実施形態に係る短絡故障診断方法は、ステップS21〜S28から構成され、このうち、ステップS21は上記A/Dコンバータ3によって実行され、ステップS22以降のステップは上記コンピュータ4によって実行される。
【0042】
まず、ステップS21では、A/Dコンバータ3がa相の固定子電流値i
as、b相の固定子電流値i
bs、およびa相−b相の相間固定子電圧値v
ab、b相−c相の相間固定子電圧値v
bcをサンプリング時間h秒毎にA/D変換して、そのディジタルデータをコンピュータ4に出力する。本実施形態では、1周期のサンプル数を256とするために、サンプリング時間hを65.1μ秒(サンプリング周波数15360Hz)としている。
【0043】
ステップS22〜ステップS24については、第1実施形態のステップS13〜S15と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0044】
ステップS25では、コンピュータ4が電圧パークベクトルVを求める。より詳しくは、次式により電流パークベクトルVの実部v
dと虚部v
qを求め、
【数22】
さらに、これらを次式のようにフェーザで表現して電圧パークベクトルVを得る。
【数23】
ここで、V
pはステップS26で求める電圧パークベクトルVの正相成分である。逆相成分が存在しないのは、三相交流電源2から正弦波状の電圧を入力しているからである。
【0045】
ステップS26では、式(25)で求めた電圧パークベクトルVを用いて、最小自乗法を用いたあてはめにより電圧パークベクトルVの正相成分V
pを求める。電圧パークベクトルVの正相成分V
pは、第1実施形態における電流パークベクトルIの正相成分I
pと同様の手法で求めることができる。
【0046】
ステップS27では、ステップS24で求めた電流パークベクトルIの逆相成分I
nおよびステップS26で求めた電圧パークベクトルVの正相成分V
pを用いて、次式により、非対称アドミタンスY
a*を求める。
【数24】
【0047】
ステップS16では、非対称アドミタンスY
a*に基づいて三相誘導機1の短絡故障情報を得る。具体的手法としては、第1実施形態と同様の手法を用いることができる。ただし、本実施形態では、実測値に基づいたあてはめにより電圧パークベクトルVの正相成分V
pを求めるので、解析等により求めた正相アドミタンスY
pを用いる第1実施形態よりもすべりに強く、より精度よく短絡故障の診断を行うことができる。
【0048】
[実験結果]
(第1実験)
図5および
図6に、第2実施形態に係る短絡故障診断方法により得た電圧パークベクトルVの正相成分振幅パラメータ|V
p|および位相パラメータ∠V
p、電流パークベクトルIの正相成分振幅パラメータ|I
p|および位相パラメータ∠I
p、並びに電流パークベクトルIの逆相成分振幅パラメータ|I
n*|および位相パラメータ∠I
n*のグラフを示す。なお、本実験では、三相交流電源2から入力される固定子電圧の周波数を60Hz、相間固定子電圧の振幅を100V、サンプリング時間hを65.1μ秒(サンプリング周波数:15360Hz)とし、コンピュータ4における処理はdSPACEで構築したシステム上で行った。また、上記∠V
p、∠I
pはあてはめにより求めた位相パラメータθ
pに相当し、上記∠I
n*はあてはめにより求めた位相パラメータθ
nに相当するものであるが、理解を容易にするために、あえて別の表記とした。
【0049】
図5に示す短絡故障が発生していない場合、および
図6に示すa相に5ターンの短絡故障が発生している場合の電圧パークベクトルVの正相成分振幅パラメータ|V
p|はそれぞれ70.5、70.2Vで、位相パラメータ∠V
pの回転方向は正回転であった。また、電流パークベクトルIの正相成分振幅パラメータ|I
p|はそれぞれ0.800、0.828Aで、位相パラメータ∠I
pの回転方向は正回転であった。固定子電圧の周波数は60Hzなので、各位相パラメータ∠V
p、∠I
p、∠I
n*は16.7m秒で1回転した。
【0050】
これに対して、電流パークベクトルIの逆相成分振幅パラメータ|I
n|は、故障が発生していない
図5においては構造の非対称性のみによる0.030Aであったが、a相に5ターンの短絡故障が発生している
図6においては0.123Aにまで増加していた。また、位相パラメータ∠V
pの回転方向は逆回転であった。
【0051】
以上のように、第2実施形態に係る短絡故障診断方法によれば、短絡故障発生に起因する逆相成分振幅パラメータ|I
n|の増加を検出することができた。
【0052】
(第2実験)
図7に、第1実施形態および第2実施形態に係る短絡故障診断方法により得た非対称アドミタンスY
a*の絶対値および位相のグラフを示す。本実験では、1秒経過する度にa相の故障ターン数を1ターンずつ増加させた。つまり、時間0秒〜1秒の間は故障ターン数0、時間1秒〜2秒の間は故障ターン数1、・・・、時間5秒〜6秒の間は故障ターン数6とした。また、入力条件は第1実験と同様とした。
【0053】
同図に示すように、いずれの短絡故障診断方法においても故障ターン数の増加に伴う非対称アドミタンスY
a*の増加が追跡することができた。言い換えると、短絡故障が伸展しているか否かを診断することができた。
【0054】
なお、現実には完全に平衡な三相誘導機1は存在し得ないので、短絡故障が発生していない場合であっても非対称アドミタンスY
a*が上述のように微少な値を示し、上記診断が困難になることがある。そこで、本実験では、短絡故障が発生していないときの非対称アドミタンスY
a*を三相誘導機1の機械的非対称性に起因する成分であるとみなして、この値をキャンセルするように各故障状態における非対称アドミタンスY
a*を校正し、校正後の非対称アドミタンスY
a*により短絡故障が伸展しているか否かを診断することとした。後述する第3実験においても、同様の校正を行った。
【0055】
(第3実験)
続いて、いずれか2相の固定子巻線を同時に5ターンまで短絡故障させた第3実験について説明する。本実験では、まず、事前準備として
図9に示すマップを作成した。このマップは、巻線短絡故障モデル(
図8参照)を用いたシミュレーションで得た非対称アドミタンスY
a*を実部と虚部に分解し、複素平面上にプロットしたものである。なお、
図8に示すモデルにおいて、μ
aはa相固定子巻線の故障率、μ
bはb相固定子巻線の故障率、R
afはa相短絡故障抵抗、R
bfはb相短絡故障抵抗である。また、i
af、i
bfは、a相固定子巻線またはb相固定子巻線が短絡故障した際に流れる故障電流である。
【0056】
図9に示すマップは3つの領域に分かれており、このうち、非対称アドミタンスY
a*を○印でプロットした領域はa相とb相の固定子巻線が短絡故障した領域、△印でプロットした領域はb相とc相の固定子巻線が短絡故障した領域、そして□印でプロットした領域はb相とc相の固定子巻線が短絡故障した領域である。
【0057】
図10および
図11に、本発明の第2実施形態に係る短絡故障診断方法により得た非対称アドミタンスY
a*を複素平面上にプロットしたマップを示す。
図10に示す故障なしの状態から各故障状態を直接的に作り出した場合、および
図11に示す故障ターン数を1ターンずつ増加させて各故障状態を作り出した場合のいずれの場合においても、
図9に示すシミュレーション結果とほぼ同じ結果が得られた。
【0058】
より詳しくは、a相、b相、c相のいずれか1相のみにおいて5ターンまでの短絡故障を発生させた場合は、ほぼ矢印線上に非対称アドミタンスY
a*がプロットされ、a相とb相において短絡故障を発生させた場合は、○印の領域に非対称アドミタンスY
a*がプロットされ、a相とb相において短絡故障を発生させた場合は、△印の領域に非対称アドミタンスY
a*がプロットされ、さらに、b相とc相において短絡故障を発生させた場合は、□印の領域に非対称アドミタンスY
a*がプロットされた。この結果から、本発明に係る短絡故障診断方法によれば、故障相の推定が可能であることが判った。
【0059】
また、
図10および
図11から明らかなように、例えば、a相の故障ターン数を5、b相の故障ターン数を5としたときの非対称アドミタンスY
a*は、a相のみを5ターン短絡故障させたベクトルとb相のみを5ターン短絡故障させたベクトルとのベクトル和で表される。したがって、本発明に係る短絡故障診断方法によれば、非対称アドミタンスY
a*を図中矢印方向に分解することにより、各故障相における故障ターン数を推定することもできる。
【0060】
以上、本発明に係る短絡故障診断方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【0061】
例えば、各実験におけるサンプリング時間h等の具体的な数字は単なる一例であり、他の条件の下で本発明に係る短絡故障診断を行うこともできる。
また、第3実験では第2実施形態に係る短絡故障診断方法を用いたが、第1実施形態に係る短絡故障診断方法を用いても同様の診断を行うことができる。