(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
図1から
図8により、本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置1における全体構造の概要を説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置1の概要を正面側から模式的に示す縦断面図である。
図2Aは、第1実施形態のインクジェット記録装置1について、記録ヘッド22にキャップユニット50が装着された状態における記録部20及び搬送ユニット30の周辺部を示す平面図である。
図2Bは、第1実施形態のインクジェット記録装置1について、記録ヘッド22にキャップユニット50が装着された状態における記録部20及び搬送ユニット30の周辺部を示す正面図である。
【0020】
図3Aは、第1実施形態のインクジェット記録装置1について、記録ヘッド22が印刷(記録)可能な状態における記録部20及び搬送ユニット30の周辺部を示す平面図である。
図3Bは、第1実施形態のインクジェット記録装置1について、記録ヘッド22が記録可能な状態における記録部20及び搬送ユニット30の周辺部を示す正面図である。
図4Aは、第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるキャップユニット50及び水平移動機構60を示す平面図である。
図4Bは、第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるキャップユニット50及び水平移動機構60を示す正面図である。
【0021】
図5は、キャップユニット50が着脱位置において記録ヘッド22に装着されている状態を示す正面図である。
図6は、キャップユニット50が着脱位置において下向きに移動した状態を示す正面図である。
図7は、キャップユニット50が着脱位置から退避位置に移動した状態を示す正面図である。
図8は、記録ヘッド22が記録(印字)可能な状態を示す正面図である。
【0022】
図1から
図3Bに示すように、第1実施形態のインクジェット記録装置1は、本体2内に、記録部20と、搬送ユニット30と、搬送ユニット30の昇降装置40と、キャップユニット50と、水平移動機構60(
図4A、
図4B参照)と、備える。
第1実施形態のインクジェット記録装置1は、更に、給紙カセット3と、給紙ローラ4と、用紙搬送路5と、レジストローラ対6と、乾燥装置7と、排紙ローラ対8と、排紙口9と、排紙トレイ10と、を備える。
【0023】
図1から
図3Bに示すように、搬送ユニット30は、駆動ローラ32と、従動ローラ33と、駆動ローラ32及び従動ローラ33に掛け渡される搬送ベルト31と、搬送ベルト31のテンションを調整するテンションローラ34と、空気吸引ユニット36とを有する。搬送ベルト31及び空気吸引ユニット36の上面には、それぞれ吸引用の貫通孔(図示せず)が多数設けられている。
【0024】
駆動ローラ32及び従動ローラ33が正面視で反時計方向に回転することにより、搬送ベルト31の上面部分で形成される搬送面31Aは、水平面(X−Y平面)内の用紙搬送方向Pの一方から他方に向けて水平移動される。つまり、搬送ベルト31の搬送面31A上においては、用紙搬送方向Pは、水平方向Xとほぼ一致する。空気吸引ユニット36は、搬送ベルト31の搬送面31Aの下側(反対側)に配置される。
搬送ベルト31としては、両端部を互いに重ね合わせて接合してエンドレス状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルト等を用いることができる。
【0025】
図2Aから
図3Bに示すように、所定の記録時には、記録媒体としての用紙Tは、搬送ベルト31の搬送面31A上に、用紙搬送方向Pの一方側から導入される。搬送面31Aには、空気吸引ユニット36の動作に伴って、前記の吸引用の貫通孔(図示せず)を介して搬送ベルト31に作用する吸引力が生じている。搬送ベルト31の搬送面31A上に導入された用紙Tは、前記吸引力により搬送面31Aに吸着されて、用紙搬送方向Pの他方側に向けて搬送される。このように搬送ベルト31の搬送面31Aに吸着された状態で搬送される用紙Tに向けて、後述する記録部20の記録ヘッド22からインクが吐出されることにより、用紙Tに画像等が記録される(印刷される)。
【0026】
図1に示すように、給紙カセット3は、用紙Tを積層状態で収容するものであり、本体2の内部の下方における搬送ユニット30の用紙搬送方向Pの上流側に配置されている。給紙ローラ4は、給紙カセット3の上方に配置されている。この給紙ローラ4により、用紙Tは、
図1における給紙カセット3の右上方に向けて送り出される。
【0027】
用紙搬送路5、レジストローラ対6、記録部20及び搬送ユニット30は、給紙カセット3の用紙搬送方向Pの下流側に配置されている。給紙カセット3から送り出された用紙Tは、用紙搬送路5を通ってレジストローラ対6に到達する。レジストローラ対6は、用紙Tの斜め送りを矯正して用紙Tを再度送り出す。記録部20とレジストローラ対6との間の用紙搬送路5に設けられた用紙先端検出センサ(図示せず)により、用紙Tの先端部が検出され、その検出されたタイミングに基づいて、記録部20は、後述するようなインクの吐出動作を実行する。
【0028】
図1に示すように、乾燥装置7は、本体2の内部の上方における搬送ユニット30の用紙搬送方向Pの下流側に配置されている。乾燥装置7は、記録部20において吐出されるインクにより記録された後における用紙Tのインクを乾燥させる。
【0029】
排紙ローラ対8、排紙口9及び排紙トレイ10は、乾燥装置7の用紙搬送方向Pの下流側に、この順で配置されている。乾燥装置7によりインクの乾燥が終了した用紙Tは、排紙ローラ対8により用紙搬送方向Pの下流側に送られ、排紙口9を通して、本体2の外側に設けられた排紙トレイ10に送られて、本体2の外部に排出される。
【0030】
図1から
図3Bに示すように、記録部20は、4色に対応する記録ヘッド22を備える。4色に対応する記録ヘッド22とは、ブラック用の記録ヘッド22K、シアン用の記録ヘッド22C、マゼンタ用の記録ヘッド22M及びイエロー用の記録ヘッド22Yである。これら4色の記録ヘッド22K、22C、22M及び22Yは、用紙搬送方向P(水平方向X)に対して直角な用紙幅方向Yに沿って長く延びている。記録ヘッド22K、22C、22M及び22Yは、搬送ベルト31の用紙搬送方向Pに沿い、用紙搬送方向Pの上流側から下流側に向かって順に配列して配置されている。第1実施形態においては、4色の記録ヘッド22K、22C、22M及び22Yそれぞれにおいて、1色の記録ヘッドにつき3個の記録ヘッドを用紙幅方向Yに等間隔で直列に配置している。
【0031】
図1に示すように、搬送ユニット30の下方には、4色の記録ヘッド22K、22C、22M及び22Yそれぞれに対応して、4台のインクタンク23K、23C、23M及び23Yが配置されている。4色のインクは、それぞれ4台のインクタンク23K、23C、23M及び23Yから供給チューブ(図示せず)を経て、4色のインクが対応する記録ヘッド22K、22C、22M及び22Yに補給される。
【0032】
なお、以下の説明において、特に特定する必要がある場合を除いて、4色の記録ヘッド22K、22C、22M及び22Y並びに4台のインクタンク23K、23C、23M及び23Yの識別記号である「K」、「C」、「M」及び「Y」については省略して、単に「記録ヘッド22」及び「インクタンク23」と記載する。
【0033】
記録部20の各記録ヘッド22は、外部コンピュータ(図示せず)から受信した画像データ情報(例えば、文字、図形、模様)に対応して、搬送ベルト31の搬送面31A上に載置された用紙Tに向かって4色のインクを吐出する。
図2Aから
図3Bに示すように、各記録ヘッド22は、矩形板状の記録ヘッド支持部材21に支持されており、この記録ヘッド支持部材21と共に、本体2に固定されている。そして、搬送ベルト31の回転移動と共に、所定のタイミングで各記録ヘッド22から4色のインクが順次吐出されることにより、用紙Tには、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色のインクが重ね合わせられ、カラーインク画像が印刷される。
【0034】
記録ヘッド22のインク吐出方式としては、例えば、ピエゾ素子(図示せず)を用いてインクを押し出すピエゾ方式や、発熱体(図示せず)によって気泡を発生させ、圧力を掛けてインクを吐出するサーマルインクジェット方式等の各種吐出方式を採用することができる。
【0035】
図1に示すように、搬送ユニット30の昇降装置40は、搬送ユニット30の下方に配置されている。昇降装置40は、搬送ユニット30を記録ヘッド22に対して、水平面(X−Y平面)に垂直な方向Z(以下「上下方向Z」ともいう)に昇降(移動)させるものである。この昇降装置40による搬送ユニット30の上下方向Zの移動により、搬送ベルト31の搬送面31Aは、記録ヘッド22のノズル面221(
図9A参照)に対して相対的に接近又は離間可能に構成されている。
【0036】
図1に示すように、昇降装置40は、搬送ベルト31の下方における用紙搬送方向Pの上流側及び下流側に配置された2つの偏心カム41を備える。偏心カム41は、搬送ユニット30の正面側及び背面側にそれぞれ2個ずつ、合計4個設けられる。偏心カム41の偏心周面は、搬送ユニット30の外底面に下方から接近する。
図1に示すように、各偏心カム41は、用紙幅方向Yに延びる軸部42を備えると共に、回転軸線が偏在するカムで構成される。偏心カム41は、モータ(図示せず)を介して、軸部42を中心として回転される。偏心カム41は、その周縁部に、複数のベアリング43を備えている。ベアリング43の周面の一部は、偏心カム41の周面から外方に突出している。
【0037】
ベアリング43は、偏心カム41の回転軸線と平行な軸線を中心として回転自在となっている。ベアリング43は、偏心カム41の先端側から回転軸線側に向かって順次配置されている。通常の印刷状態においては、
図1に示すように、軸部42から最も離れたベアリング43は、搬送ユニット30の外底面に下方から当接する。これにより、搬送ユニット30は、最高位置に上昇移動される。
【0038】
この状態から、用紙搬送方向Pの上流側の偏心カム41を正面視で反時計方向に回転させると共に、用紙搬送方向Pの下流側の偏心カム41を正面視で時計方向に回転させる。これにより、複数のベアリング43は、軸部42から最も離れたベアリング43から軸部42に最も近いベアリング43の順で、搬送ユニット30の外底面に順次当接する。そのため、搬送ユニット30を下降させることができる。
複数のベアリング43は、偏心カム41の回転時において、周縁方向で隣り合う2個のベアリング43が同時に搬送ユニット30の外底面に当接する期間を有するような間隔に、配置されている。
【0039】
昇降装置40の偏心カム41を回転させて搬送ユニット30を下降させることにより、搬送ユニット30における搬送ベルト31の搬送面31Aは、記録ヘッド22に対して下方に離間される。これにより、後述するように、記録ヘッド22からキャップユニット50が離脱される。そして、キャップユニット50が記録ヘッド22から離脱された状態で、記録ヘッド22のインク噴射用ノズル(図示せず)からインクを噴射させることにより、ノズル内に残留する高い粘度のインクを吐出させてインク詰まりを解消するための吐出回復処理、すなわち、パージを実行することが可能である。
【0040】
一方、昇降装置40の偏心カム41を前述とは逆方向に回転させて搬送ユニット30を上昇させることにより、搬送ユニット30は通常の記録位置(印刷位置)に戻される。これによって、後述するように、記録ヘッド22のノズル面221にキャップユニット50を装着することが可能となる。
【0041】
図2Aから
図4Bに示すように、キャップユニット50は、記録部20の下方に配置可能に構成される。キャップユニット50は、第1インク受け部材としてのキャップ51と、第2インク受け部材としてのキャップケース52と、キャップベース部材53と、を備えている。キャップユニット50は、後述する水平移動機構60(
図4A、
図4B参照)により、用紙搬送方向Pに水平移動可能に構成されている。キャップユニット50は、搬送ユニット30の上方に配置されており、昇降装置40により、搬送ユニット30と共に昇降可能に構成されている。
【0042】
次に、
図4A及び
図4Bにより、キャップユニット50及び水平移動機構60を説明する。
図4A及び
図4Bに示すように、キャップユニット50のキャップベース部材53は、キャップケース52の長手方向(用紙幅方向)Yの両側に、用紙搬送方向Pに沿って配置される。
水平移動機構60は、一対の駆動プーリ61と、一対の従動プーリ62と、一対の駆動用ベルト63と、駆動モータ64と、を備える。
一対の駆動プーリ61は、キャップベース部材53よりも用紙搬送方向Pの上流側に配置されている。一対の従動プーリ62は、キャップベース部材53よりも用紙搬送方向Pの下流側に配置されている。駆動用ベルト63は、駆動プーリ61及び従動プーリ62に掛け渡されている。駆動用ベルト63は、用紙幅方向Yの両側からキャップベース部材53を挟んだ状態で配置している。
【0043】
図4A及び
図4Bに示すように、一対の駆動プーリ61は、用紙幅方向Yに離間して配置されると共に、駆動モータ64に連結された駆動用シャフト65に固定されている。一対の従動プーリ62は、用紙幅方向Yに離間して配置され、従動用シャフト66に固定されている。
駆動モータ64は、正逆回転の切換可能に構成されている。そして、キャップベース部材53の用紙搬送方向Pの両端部は、固定部材67を介して駆動用ベルト63に固定されている。これにより、キャップベース部材53を含むキャップユニット50は、駆動用ベルト63と一体に用紙搬送方向Pに移動可能である。
【0044】
上述の構成により、駆動モータ64を介して駆動用シャフト65が
図4Bの時計方向に回転すると、駆動用ベルト63は時計回りに回転移動する。これにより、キャップユニット50は、用紙搬送方向Pの下流側に水平移動する。一方、駆動モータ64を介して駆動用シャフト65が
図4Bの反時計方向に回転すると、駆動用ベルト63は反時計回りに回転移動する。これにより、キャップユニット50は、用紙搬送方向Pの上流側に水平移動する。
【0045】
そして、記録ヘッド22にキャップユニット50が装着されるときには、キャップユニット50は、
図2A、
図2B、
図5及び
図6に示すように、記録ヘッド22の下方の着脱位置に配置される。そして、キャップユニット50は、着脱位置において、キャップ51が記録ヘッド22のノズル面221を覆う状態(
図5参照)と、キャップ51がノズル面221から離間した状態(
図6参照)とに変更可能に垂直移動される。
一方、記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから用紙Tにインクが吐出される記録時には、キャップユニット50は、
図3A、
図3B、
図7及び
図8に示すように、退避位置に水平移動される。退避位置は、キャップ51が記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから用紙Tに向かうインクの吐出を妨げない位置である。
【0046】
退避位置は、キャップ51が、それと対応する記録ヘッド22と、この記録ヘッド22の用紙搬送方向Pの下流側に隣接する記録ヘッド22との間に配置される位置に、設定されている。具体的には、
図3A、
図3B、
図7及び
図8に示すように、退避位置は、記録ヘッド22Kに対応するキャップ51が記録ヘッド22Kと記録ヘッド22Cとの間に配置され、記録ヘッド22Cに対応するキャップ51が記録ヘッド22Cと記録ヘッド22Mとの間に配置され、且つ記録ヘッド22Mに対応するキャップ51が記録ヘッド22Mと記録ヘッド22Yとの間に配置される位置である。
【0047】
また、キャップユニット50が退避位置に移動されたとき、用紙搬送方向Pにおいて最も下流側の記録ヘッド22Yに対応するキャップ51は、
図3A、
図3B、
図7及び
図8に示すように、記録ヘッド22Yの下流側に配置される。このように、キャップユニット50の退避位置を、キャップ51が隣接する記録ヘッド22の間に配置される位置とすることによって、キャップユニット50が退避位置と着脱位置との間の移動する距離を短くすることができる。
【0048】
また、吐出回復処理(パージ)の実行時には、キャップユニット50は、退避位置において昇降装置40(
図1参照)により下降された後、水平移動機構60(
図4A、
図4B参照)により着脱位置まで移動される。あるいは、キャップユニット50は、着脱位置において昇降装置40により下降される。これによって、吐出回復処理の実行が可能となる。
【0049】
次に、
図5から
図8により、キャップユニット50の動作について説明する。
図5に示すように、キャップユニット50は、着脱位置において記録ヘッド22に装着される。そして、キャップ51は、記録ヘッド22のノズル面221を覆う。これにより、記録ヘッド22の不使用時に、残留インクの乾燥によるノズルの詰まりや、ノズルを介して記録ヘッド22の内部に異物が混入することを防ぐことができる。
【0050】
そして、次の記録開始に先立って、
図6に示すように、昇降装置40(
図1参照)を介してキャップユニット50を搬送ユニット30と共に下降させることにより、キャップ51を記録ヘッド22のノズル面221から離間するように下方に移動させる。この状態において、記録ヘッド22のインク噴射用ノズル(図示せず)からインクを噴射させることにより、インク詰まりを解消するための吐出回復処理を実行することができる。つまり、記録部20を長時間停止させたことに伴って、ノズル内には高い粘度のインクが残留しているが、このような残留するインクを吐出させて、インクの吐出不良の発生を防止する。
【0051】
吐出回復処理の実行後、
図7に示すように、キャップユニット50を水平移動機構60(
図4A、
図4B参照)により、
図5及び
図6に示す着脱位置から用紙搬送方向Pの下流側(
図7の二重矢印方向)に水平移動させる。詳しくは、キャップユニット50のキャップ51を、記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから用紙Tに向かうインクの吐出を妨げない退避位置まで水平移動させる。
【0052】
そして、キャップユニット50が退避位置に移動された状態で、
図8に示すように、昇降装置40を介してキャップユニット50を搬送ユニット30と共に上昇させる。これにより、記録ヘッド22は、搬送ユニット30における搬送ベルト31の搬送面31Aと所定間隔を隔てて対向する。この状態において、各記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから搬送ベルト31により搬送される用紙T(
図1参照)に向けて、4色のインクが吐出される。これにより、用紙Tにはブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクが重ね合わせられ、カラーインク画像が印刷(記録)される。
なお、記録(印刷)において、記録ヘッド22のノズル面221と搬送ベルト31の搬送面31Aとの間の間隔は、例えば1mm程度の微小間隔に設定される。
【0053】
次に、
図9Aから
図11Bを参照して、第1実施形態のインクジェット記録装置1における特徴部分に係る構成について詳細に説明する。
図9Aは、キャップユニット50の全体構造を右側から示す縦断面図である。
図9Bは、
図9Aに示す状態から、キャップユニット50が記録ヘッド22に装着された状態を示す縦断面図である。
図9Cは、吐出回復処理の実行時において、記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから排出されたインクの流れ及び回収処理を示す縦断面図である。
図10Aは、キャップユニット50のキャップ51を拡大して右側から示す縦断面図である。
図10Bは、
図10Aに示すキャップ51を正面側から示す縦断面図である。
図11Aは、キャップユニット50のキャップケース52を拡大して右側から示す縦断面図である。
図11Bは、
図11Aに示すキャップケース52を正面側から示す縦断面図である。
【0054】
図9Aから
図9Cに示すように、キャップユニット50は、キャップ51と、キャップケース52と、廃インク容器530と、連通部材としてのチューブ54と、インク回収用のポンプ56と、を備える。
以下の説明においては、4色のうちの1色に対応するキャップ51などについてのみ説明する。
【0055】
キャップ51は、3個の記録ヘッド22それぞれに対応して3個設けられ、各記録ヘッド22の下方に配置可能に構成される。キャップケース52は、3個のキャップ51に対応してキャップ51の下方に1個配置される。廃インク容器530は、搬送ユニット30における搬送ベルト31の用紙幅方向Yの一端側に配置される。チューブ54は、キャップケース52の第2排出孔524(後述)と廃インク容器530のインク収容室531とを連通させるものである。廃インク容器530は、複数個が直列状に配置されている。各廃インク容器530同士は、インク回収チューブ55を介して連通されて、インクを順送り状態に貯留(収容)する。ポンプ56は、インク回収チューブ55の他端に接続されている。
【0056】
図9Aから
図10Bに示すように、各キャップ51は、第1受け部としての第1底面511が形成された第1底壁部512と、第1周壁部513と、第1排出孔514と、を有する。
第1底面511は、記録ヘッド22のインク噴射用ノズル(図示せず)から排出されたインクJを受け止める第1受け部として機能する。第1周壁部513は、第1底壁部512の周縁部から上方に起立する。第1排出孔514は、第1底面511の中央位置に形成されており、第1底面511で受け止めたインクJを下方に排出させる孔である。
【0057】
図10A及び
図10Bに示すように、各キャップ51の第1底面511は、第1周壁部513から第1排出孔514に向けて下方に傾斜している。また、
図9Aから
図10Bに示すように、3個のキャップ51は、第1周壁部513の外面同士が繋ぎプレート515を介して連結されて一体化され、第1キャップユニット516を構成している。この第1キャップユニット516は、樹脂材料により一体成形されている。
【0058】
図9A、
図9B、
図9C、
図11A及び
図11Bに示すように、キャップケース52は、第2受け部としての第2底面521が形成された第2底壁部522と、第2周壁部523と、第2排出孔524と、付勢部材としての圧縮バネ58と、を有する。
第2底面521は、3個のキャップ51の第1排出孔514それぞれから排出されたインクJを併せて受け止める第2受け部として機能する。第2周壁部523は、第2底壁部522の周縁部から上方に起立する。第2排出孔524は、第2底壁部522の長手方向(用紙幅方向Y)の一端部の近傍に形成され、第1排出孔514それぞれから排出され且つ第2底面521で受け止めたインクJを下方に併せて排出させる孔である。
【0059】
図11Aに示すように、キャップケース52の第2底面521は、用紙搬送方向Pに視た場合に、第2排出孔524に向けて下方に傾斜している。また、
図11Bに示すように、キャップケース52の第2底面521は、用紙幅方向Yに視た場合に、用紙搬送方向Pに対向する一対の第2周壁部523それぞれから用紙搬送方向Pの中央部に向けて下方に傾斜している。
【0060】
また、
図9Aから
図9Cに示すように、第1キャップユニット516の繋ぎプレート515の外周縁部とキャップケース52の第2周壁部523の内面との間には、シール材57が介在されている。これにより、シール部が形成されている。シール材57が介在することにより、第1キャップユニット516の外周縁部は、キャップケース52の第2周壁部523の内面に密着される。これにより、第1キャップユニット516とキャップケース52との間の通気が阻害されて、インクJの排出がスムーズに行われるようになっている。
【0061】
図9Aから
図9Cに示すように、連通部材としてのチューブ54は、一端部(上端部)がキャップケース52の第2排出孔524に接続されていると共に、他端部(下端部)が廃インク容器530のインク収容室531内に開口している。これによって、キャップケース52の第2底面521で併せて受け止められ且つ第2排出孔524から併せて排出されるインクJを、単一のチューブ54のみを用いて廃インク容器530のインク収容室531内に流通させ、貯留することが可能である。
【0062】
また、
図9Aから
図9Cに示すように、圧縮バネ58は、第1キャップユニット516において、各キャップ51の第1底壁部512とキャップケース52の第2底壁部522との間に配置されている。
図9Cに示すように、これら圧縮バネ58は、キャップユニット50が昇降装置40により搬送ユニット30と共に記録ヘッド22側に上昇されて、各キャップ51が対応する各記録ヘッド22のノズル面221を覆った状態において、各キャップ51をノズル面221に向けて弾性的に移動させるように付勢する。
【0063】
次に、
図5、
図6、
図9B及び
図9Cを参照して、第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるキャップユニット50の動作について説明する。
【0064】
図5に示すように、記録ヘッド22の不使用時(記録を行わない時)において、キャップユニット50は、水平移動機構60(
図4A、
図4B参照)により着脱位置に水平移動された後、その着脱位置において昇降装置40(
図1参照)により搬送ユニット30と共に上昇されて記録ヘッド22に装着される。
【0065】
キャップユニット50が記録ヘッド22に装着された時には、
図9Bに示すように、キャップユニット50の各キャップ51が記録ヘッド22のノズル面221を覆う。この状態において、各キャップ51が圧縮バネ58の弾性力を受けることにより、第1周壁部513の上端部は、記録ヘッド22のノズル面221に弾性的に密着される。これにより、記録ヘッド22の不使用時において、残留インクが乾燥してノズルに詰まりを生じたり、ノズルを介して記録ヘッド22の内部に異物が混入したりすることを防ぐことができる。
【0066】
そして、次に記録ヘッド22による記録を開始するに先立って、
図6に示すように、昇降装置40によりキャップユニット50を搬送ユニット30と共に下降させることにより、キャップ51は、記録ヘッド22のノズル面221から離間するように、下方に移動される。
【0067】
このようにキャップユニット50が記録ヘッド22の下方に下降されたときには、
図9Cに示すように、キャップユニット50における各キャップ51が記録ヘッド22のノズル面221の直下の位置に対応して配置する。この状態において、各記録ヘッド22のインク噴射用ノズル(図示せず)からインクを噴射させることにより、吐出回復処理(記録部20の長時間停止(記録ヘッド22の不使用)に伴ってノズル内に残留している高い粘度のインクを吐出させて、インクの吐出不良の発生を防止する処理)が実行される。
【0068】
吐出回復処理の実行に伴って、
図9Cに示すように、各記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから排出されたインクJは、各キャップ51の第1底面511で受け止められた後、第1底面511の傾斜に沿って第1排出孔514側に向けて流れると共に合流する。その後、合流したインクJは、各キャップ51それぞれの第1排出孔514から下方に排出される。
【0069】
各キャップ51の第1排出孔514それぞれから下方に排出されたインクJは、キャップケース52の第2底面521で併せて受け止められた後、第2底面521の傾斜に沿ってキャップケース52の長手方向の一端部側に向けて流れると共に合流する。その後、合流したインクJが第2排出孔524から排出される。この第2排出孔524から排出されたインクJは、単一のチューブ54を通って廃インク容器530のインク収容室531内に収容(貯留)される。
廃インク容器530内に貯留されたインクJは、ポンプ56の作動に伴ってインク回収チューブ55を経て所定の箇所(図示せず)に回収される。
【0070】
そして、吐出回復処理の実行が終了した後、
図7に示すように、キャップユニット50は、水平移動機構60により退避位置に水平移動された後、
図8に示すように、その退避位置において昇降装置40により搬送ユニット30と共に上昇される。退避位置で上昇された各キャップ51は、それぞれが対応する記録ヘッド22とその記録ヘッド22の用紙搬送方向Pの下流側に隣接する記録ヘッド22との間に配置される。これと共に、各記録ヘッド22は、搬送ユニット30における搬送ベルト31の搬送面31Aと所定の間隔、例えば1mm程度を隔てて対向して配置される。
【0071】
この状態において、搬送ベルト31により搬送される用紙T(
図1参照)に向けて各記録ヘッド22のインク噴射用ノズルから4色のインクが吐出される。これにより、用紙Tには、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクが重ね合わせられ、カラーインク画像が印刷(記録)される。
【0072】
所定の印刷(記録)が終了した後には、キャップユニット50は、
図8、
図7及び
図6に順次示すように、退避位置において昇降装置40により搬送ユニット30と共に下降し、水平移動機構60により再び着脱位置に水平移動された後、その着脱位置において昇降装置40により搬送ユニット30と共に上昇する。このようにして、
図5に示すように、キャップユニット50は記録ヘッド22に装着される。これにより、
図9Bに示すように、キャップユニット50の各キャップ51が記録ヘッド22のノズル面221を覆う状態となって、残留インクの乾燥によるノズルの詰まりや、ノズルを介して記録ヘッド22の内部に異物が混入することを防ぐことが可能である。
【0073】
第1実施形態のインクジェット記録装置1によれば、次の効果が奏される。
第1実施形態のインクジェット記録装置1は、吐出回復処理の実行時においてインクの処理に用いられるキャップユニット50として、複数(3個)の記録ヘッド22それぞれに対応してインク噴射用ノズルから排出されるインクJを受け止める複数(3個)のキャップ51と、これら各キャップ51それぞれの第1排出孔514から排出されるインクJを併せて受け止めると共に、それら併せて受け止めたインクJを併せて排出する第2排出孔524を有するキャップケース52とを、備える。
【0074】
そのため、キャップケース52で併せて受け止めたインクJを、第2排出孔524に連通させた1本のチューブ54を用いて廃インク容器530のインク収容室531内に導入し貯留させることができる。また、複数の記録ヘッド22に対応する本数のチューブ54を配置する必要がなくなり、チューブ54の本数を削減することができる。その結果、複数の記録ヘッド22それぞれに対応した本数のチューブを用いるものに比べて、コストダウンを図ることができると共に、チューブ54の取り回しを簡便にすることができる。チューブ54の取り回しを簡便にすることができるため、インクJが自重によりチューブ54内を流通して落下する構成の実現が容易となる。
また、複数のキャップ51を含むキャップユニット50の水平移動機構等の構成も簡単なものとすることができる。
【0075】
また、第1実施形態においては、各キャップ51の第1底面511及びキャップケース52の第2底面521が共に、第1排出孔514及び第2排出孔524に向けて下方に傾斜されている。
そのため、受け止めたインクJを、インク自体の重量(自重)を有効に活用してスムーズに第1排出孔514及び第2排出孔524に向けて合流させながら流動させることが可能である。したがって、吐出回復処理の実行時におけるインクJの回収効率を高めて、吐出回復処理から所定の記録時までの待機時間を短縮することができる。
【0076】
また、第1実施形態においては、キャップケース52は、記録ヘッド22の不使用時において記録ヘッド22のノズル面221を覆うキャップ51をノズル面221に向けて弾性的に付勢する圧縮バネ58を備えている。
そのため、記録ヘッド22の不使用時にノズル面221を覆うキャップ51の第1底面511をノズル面221に密着させることができる。したがって、記録ヘッド22の不使用時に、残留インクの乾燥によるノズルの詰まりや、ノズルを介して記録ヘッド22の内部に異物が混入することを一層抑制することができる。
【0077】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態については、主として、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様な構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。他の実施形態において、特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、他の実施形態においても、第1実施形態と同様な効果が奏される。
【0078】
<第2実施形態>
次に、
図12A及び
図12Bにより、第2実施形態について説明する。
図12Aは、第2実施形態におけるキャップユニット50のキャップケース52を拡大して右側から示す縦断面図である。
図12Bは、
図12Aに示すキャップケース52を正面側から示す縦断面図である。
【0079】
図12A及び
図12Bに示すように、第2実施形態のキャップユニット50におけるキャップケース52の第2底壁部522の第2底面521は、用紙幅方向Yに視た場合に、用紙搬送方向Pに対向する一対の第2周壁部523それぞれから用紙搬送方向Pの中央部に向けて下方に傾斜している。この傾斜した第2底面521の最低部には、略半円状に凹む樋部525が形成されている。樋部525は、用紙幅方向Yに延びている。樋部525の一端は、第2排出孔524に対応して開口している。
【0080】
そして、樋部525内には、スクリュー部材526が回転可能に配置されている。スクリュー部材526は、モータ(図示せず)を介して一定速度に回転駆動可能とされている。スクリュー部材526は、第2底面521で受け止められ且つ樋部525内に流入するインクJを第2排出孔524に向けて繰り出して移送する。なお、その他の構成については第1実施形態と同様である。
【0081】
以上の構成を有する第2実施形態は、キャップケース52の第2底面521の最低中央部に樋部525を形成し、この樋部525内に、第2底面521を経て樋部525に流入するインクJを強制的に第2排出孔524に向けて繰り出して移送するスクリュー部材526を備えている。そのため、複数のキャップ51の第1排出孔514から排出されるインクJが粘度の高いものであっても、インクJが、それを受け止めるキャップケース52の第2底面521上に滞留したり、残留して付着したりすることなく、確実且つスムーズに第2排出孔524に移送して排出することができる。したがって、記録ヘッド22が長時間にわたり不使用状態に放置され、その結果、粘度が高くなった吐出回復処理後のインクJの処理に好適である。
【0082】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、上述の各実施形態では、記録部20の3個の記録ヘッド22及びキャップユニット50における3個のキャップ51それぞれを用紙幅方向Yに等間隔で直列に配置したものを示したが、これに制限されない。例えば、
図13に示すように、3個の記録ヘッド22及び3個のキャップ51それぞれを、1個の記録ヘッド及びキャップが他の2個の記録ヘッド及びキャップに対して用紙搬送方向Pに偏位するような千鳥状に配置してもよい。
【0083】
キャップ51におけるインクを第1排出孔514へ導く構成、キャップケース52におけるインクを第2排出孔524へ導く構成については、特に制限されない。
【0084】
また、上述の各実施形態では、記録部20の記録ヘッド22に対して搬送ユニット30を昇降移動させることで、搬送面31Aと記録ヘッド22のノズル面221とを相対的に接近又は離間可能にしているが、これに制限されない。例えば、搬送ユニット30を移動させずに記録部20側を昇降移動させることで、記録ヘッド22のノズル面221と搬送面31Aとを相対的に接近又は離間可能にしてもよい。また、搬送ユニット30及び記録部20の両方を互いに移動させることで、搬送面31Aと記録ヘッド22のノズル面221とを相対的に接近又は離間可能にしてもよい。
【0085】
さらに、上述の各実施形態では説明を省略したが、本発明のインクジェット記録装置においては、画像等の記録、ノズル面221のキャッピング、吐出回復処理(パージ)という一連の動作を、予め設定された順序で全て自動的に行う制御プログラムを記憶させたメモリを有する制御装置、例えばコンピュータを用いることが好ましい。