【0017】
本発明のアルカリ土類金属化合物微粒子分散液は、動的光散乱法により測定される粒度分布において、D
95が200nmを超えることがなく、粒子径が500nm以上の粒子を1%以上含有することがない。D
95は、篩下の累積粒度分布が95%となる粒子径を意味する。D
95は、180nmを超えないことが好ましく、160nmを超えないことがより好ましく、140nmを超えないことが特に好ましい。D
95は、一般に100nm以上である。粒子径が500nm以上の粒子の含有率は、0.8%を超えないことが好ましく、0.5%を超えないことがより好ましく、0.1%を超えないことが特に好ましい。また、本発明の微粒子分散液は、D
50が5〜100nmの範囲にあることが好ましく、5〜80nmの範囲にあることがより好ましく、5〜60nmの範囲にあることが特に好ましい。本発明において、微粒子分散液のD
50、D
95及び粒子径が500nm以上の粒子の含有率はそれぞれ、動的光散乱法により測定される光強度基準の粒度分布から求めた値である。光強度基準の粒度分布は、体積基準の粒度分布と比較して粒子径が大きい粒子の存在が強調されるので、粗大粒子の含有量の評価に適している。
【実施例】
【0033】
[比較例1]
容量1Lの容器に、酸化マグネシウム微粉末(BET比表面積:170m
2/g)30g、メチルアルコール270g、そしてジルコニア製球状ビーズ(YTZボール、直径:0.1mm)1.2kgを投入して、蓋をした。次いで、蓋をした容器をロッキングミルを用いて3時間振とうさせて、酸化マグネシウム微粒子分散液を調製した。容器内の酸化マグネシウム微粒子分散液をデカンテーションにより回収した。回収した酸化マグネシウム微粒子分散液について粒度分布、水分含有量及び粘度を下記の方法により測定した。下記の表1に、その粒度分布から求めたD
50、D
95及び粒子径が500nm以上の粗大粒子の含有率、水分含有量及び粘度を示す。
【0034】
[粒度分布の測定方法]
試料の酸化マグネシウム微粒子分散液にメチルアルコールを加えて、酸化マグネシウム微粒子の濃度が0.2質量%となるように希釈した後、超音波ホモジナイザー(SONIFIER 150、ブランソン製)にて、パワー強度8の条件で1分間分散処理を行なった。得られた希釈分散液中の酸化マグネシウム微粒子の光強度基準の粒度分布を、動的光散乱式粒度分布測定装置(ナノトラックUPA−EX150、日機装(株)製)を用いて測定した。粒度分布の測定は1回の測定を60秒として5回行なって、その平均値から光強度基準の粒度分布を算出した。算出した光強度基準の粒度分布から、D
50、D
95、粒子径が500nm以上の粗大粒子の含有率を求めた。
【0035】
[水分含有量の測定方法]
気化室(ADP−611、京都電子工業(株)製)を備えたカールフィッシャー水分計(MKC−610、京都電子工業(株)製)を用いて測定した。試料の酸化マグネシウム微粒子分散液を300℃の温度に設定した気化室に投入し、発生した気体及び蒸気をカールフィッシャー水分計に導入して、その気体及び蒸気の水分量を測定し、分散液の水分含有量とした。
【0036】
[粘度の測定方法]
試料の酸化マグネシウム微粒子分散液の液温を25℃に調整し、円錐平板型回転粘度計(TVE−25H、円錐平板のサイズ:1°34’×半径24mm、東機産業(株)製)を用い、円錐平板を1rpmの回転速度で回転させ、円錐平板の回転開始2分後の粘度を測定した。
【0037】
[実施例1]
比較例1で回収した酸化マグネシウム微粒子分散液160g中の粗大粒子を、ジルコニア製球状ビーズ(YTZボール、直径:0.05mm)680gと、
図1に示す粗大粒子の除去装置とを用いて除去した。すなわち、円筒体1の上方端部に固定されている蓋10を外して、円筒体1の上方開口から円筒体1内に酸化マグネシウム微粒子分散液とビーズとを投入する。ビーズが酸化マグネシウム微粒子分散液中を沈降して、フィルター8の上にビーズが堆積してビーズ充填層(長さ:100mm)が形成されたことを確認した後、円筒体1の上方端部に蓋10を固定して、円筒体1内を密閉状態とした。次いで、バルブ12を開けて、気体供給管13から空気を円筒体1内に導入して、円筒体1内を0.10MPa加圧した。ビーズ充填層を通過した酸化マグネシウム微粒子分散液を分散液回収容器15にて回収した。回収した酸化マグネシウム微粒子分散液について粒度分布、水分含有量及び粘度を測定した。下記の表1に、その粒度分布から求めたD
50、D
95及び粒子径が500nm以上の粗大粒子の含有率、水分含有量及び粘度を示す。
【0038】
[実施例2]
ジルコニア製球状ビーズに直径0.1mmのジルコニア製球状ビーズ(YTZボール)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ジルコニア製球状ビーズの充填層を通過した酸化マグネシウム微粒子分散液を回収した。回収した酸化マグネシウム微粒子分散液について粒度分布、水分含有量及び粘度を測定した。下記の表1に、その粒度分布から求めたD
50、D
95及び粒子径が500nm以上の粗大粒子の含有率、水分含有量及び粘度を示す。
【0039】
[実施例3]
ジルコニア製球状ビーズに、直径0.3mmのジルコニア製球状ビーズ(YTZボール)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ジルコニア製球状ビーズの充填層を通過した酸化マグネシウム微粒子分散液を回収した。回収した酸化マグネシウム微粒子分散液について粒度分布、水分含有量及び粘度を測定した。下記の表1に、その粒度分布から求めたD
50、D
95及び粒子径が500nm以上の粗大粒子の含有率、水分含有量及び粘度を示す。
【0040】
表1
────────────────────────────────────────
粒子径が500nm
D
50 D
95 以上の粗大粒子の 水分含有率 粘度
(nm) (nm) 含有率(%) (質量ppm)(mPa・秒)
────────────────────────────────────────
比較例1 53.2 352.0 2.24 2944 3.0
────────────────────────────────────────
実施例1 41.5 121.8 検出されず 2951 3.0
────────────────────────────────────────
実施例2 40.6 150.8 検出されず 3024 3.0
────────────────────────────────────────
実施例3 42.4 193.3 検出されず 3460 3.0
────────────────────────────────────────
【0041】
上記の表の結果から、ジルコニア製球状ビーズの充填層を通過させた後の酸化マグネシウム微粒子分散液(実施例1〜3)は、ジルコニア製球状ビーズの充填層を通過させる前の酸化マグネシウム微粒子分散液(比較例1)と比較して、D
50、D
95と粒子径が500nm以上の粒子の含有率が小さい値を示すことが分かる。特に、ジルコニア製球状ビーズの充填層を通過させた後の酸化マグネシウム微粒子分散液(実施例1〜3)は、500nm以上の粗大粒子が検出できないレベルにまで粗大粒子が除去されていることが分かる。
【0042】
[実施例4]
実施例2で製造した酸化マグネシウム微粒子分散液0.2mLを、硼珪酸ガラス基板(縦50mm×横50mm×厚さ0.55mm、480〜800nmの波長範囲の可視光の光透過率が91.5%)の上に滴下した後、ガラス基板を3000rpmの回転速度で60秒間回転させて、ガラス基板の上に塗布層を形成した。次いで、ガラス基板を120℃に加熱したホットプレートの上に置いて、塗布層を乾燥させて、厚さ500nmの酸化マグネシウム膜を形成して透明積層体を得た。
【0043】
[比較例2]
酸化マグネシウム微粒子分散液に、比較例1で製造した酸化マグネシウム微粒子分散液を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ガラス基板の上に厚さ500nmの酸化マグネシウム膜を形成して透明積層体を得た。
【0044】
[評価]
(1)透明積層体の光透過率
実施例4及び比較例2で得られた透明積層体について、酸化マグネシウム膜側の表面から光を照射したときの光透過率を、絶対反射率測定ユニット(ARSN−733、日本分光(株)製)を備えた分光光度計(V−670、日本分光(株)製)を使用して、下記の条件により測定した。その結果を、
図2に示す。なお、
図2に示した値は、基板の硼珪酸ガラス基板の光透過率を100とした相対値である。
[光透過率の測定条件]
入射角:0度
データ取り込み間隔:2nm
バンド幅:5nm
走査速度:1000nm/分
【0045】
図2の結果から、粗大粒子の含有量が相対的に少ない酸化マグネシウム微粒子分散液を用いて製造した透明積層体(実施例4)は、粗大粒子の含有量が相対的に多い酸化マグネシウム微粒子分散液を用いて製造した透明積層体(比較例2)と比較して、可視光領域の光透過率が高いことが分かる。特に、実施例4の透明積層体は、480〜800nmの広い光の波長範囲において、光透過率が100%を超えていること、すなわち硼珪酸ガラス基板よりも光透過率が高いことが分かる。
【0046】
(2)透明積層体の酸化マグネシウム膜の結晶構造
実施例4で得られた透明積層体の酸化マグネシウム膜のX線回折パターンを、X線回折装置(NEW D8 ADVANCE、ブルカー・エイエックスエス(株)製)を使用して、θ−2θスキャンにより下記の条件により測定した。その結果を
図3に示す。
[X線回折パターンの測定条件]
X線:CuKα(Ni)
管電圧:40kV
管電流:40mA
検出器:一次元半導体高速検出器(LynxEye、ブルカー・エイエックスエス(株)製)
発散スリット:0.3度
ステップサイズ:0.01度
計数時間:1.00秒/ステップ
【0047】
図3のX線回折パターンから、実施例4で得られた透明積層体の酸化マグネシウム膜は、酸化マグネシウムの(200)面に起因するX線回折線のピーク強度が、酸化マグネシウムの(111)面に起因するX線回折線のピーク強度よりも大きいことが分かる。
【0048】
[参考例1]
本実施例で使用した酸化マグネシウム粉末のX線回折パターンを測定した。その結果を、
図4に示す。この
図4の結果から、実施例4で得られた透明積層体の酸化マグネシウム膜の結晶構造は、原料の酸化マグネシウム粉末の結晶構造と同一であることが分かる。
【0049】
[参考例2]
硼珪酸ガラス基板の上に、電子ビーム蒸着法を用いて下記の成膜条件により、厚さ1000nmの酸化マグネシウム膜を形成して、透明積層体を得た。得られた透明積層体の酸化マグネシウム膜のX線回折パターンを測定した。その結果を、
図5に示す。この
図5の結果から、電子ビーム蒸着法により得られた酸化マグネシウム膜は、酸化マグネシウムの(111)面に起因するX線回折線のピーク強度が、酸化マグネシウムの(200)面に起因するX線回折線のピーク強度よりも大きいことが分かる。
[成膜条件]
電圧:8kV
蒸着速度:2.0nm/秒
蒸着チャンバーの酸素分圧:2×10
-2Pa
基板温度:200℃