(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-100303(P2015-100303A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】園芸用連棟ハウス
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20150508BHJP
E04H 5/00 20060101ALI20150508BHJP
H01L 31/042 20140101ALI20150508BHJP
【FI】
A01G9/14 A
A01G9/14 G
E04H5/00
H01L31/04 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-242652(P2013-242652)
(22)【出願日】2013年11月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】広本 直樹
【テーマコード(参考)】
2B029
5F151
【Fターム(参考)】
2B029AA02
2B029BB06
2B029BD11
5F151JA13
(57)【要約】
【課題】基礎を持たない簡易的なパイプハウスや曲面の多い屋根面を有するハウスであっても補強工事をする必要がなく、太陽光発電モジュールの設置が容易であり、かつ、ハウス内の作物の栽培に必要な光合成と発電効率とのバランスが十分にとれた園芸用連棟ハウスを提供する。
【解決手段】屋根の稜線を南北方向に向けた複数のハウスを谷樋を介して複数棟連接した園芸用連棟ハウスにおいて、前記谷樋に隣接する前記屋根の西側裾部にシート型太陽光発電モジュールを設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の稜線を南北方向に向けた複数のハウスを谷樋を介して複数棟連接した園芸用連棟ハウスにおいて、前記谷樋に隣接する前記屋根の西側裾部にシート型太陽光発電モジュールを設けたことを特徴とする園芸用連棟ハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、園芸用連棟ハウスに関し、詳しくは、屋根の谷部の西側面にシート型太陽光発電モジュールを設けた園芸用連棟ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出を削減するために、ハウス内の冷暖房や照明設備に化石燃料を使用せず、屋根に太陽光発電パネルを設置し、そのエネルギーを利用している園芸用ハウスが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3161980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、国内で最も多く普及している太陽光発電モジュールである結晶体シリコンのバルク型モジュールはかなりの重量があるため、基礎を持たない簡易的なパイプハウスの屋根面に設置するには、その重量を支えるための補強工事が必要となってしまう。また、パネル自体の柔軟性がないため、曲面の多い屋根面への設置は困難であった。
【0005】
さらに、特許文献1に記載の園芸用ハウスは、発電効率を上げるために太陽光発電モジュールを南向きの屋根全面に設置しているが、太陽光発電モジュールは基本的に不透明であり、作物の栽培に必要不可欠な太陽光が十分ハウス内に取り入れられず、光合成低下に伴う生育不良の問題が生じてしまう可能性があった。
【0006】
そこで本発明は、基礎を持たない簡易的なパイプハウスや曲面の多い屋根面を有するハウスであっても補強工事をする必要がなく、太陽光発電モジュールの設置が容易であり、またハウス内の作物の栽培に必要な光合成と発電効率とのバランスが十分にとれた園芸用連棟ハウスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の園芸用連棟ハウスは、屋根の稜線を南北方向に向けた複数のハウスを谷樋を介して複数棟連接した園芸用連棟ハウスであって、前記谷樋に隣接する前記屋根の西側裾部にシート型太陽光発電モジュールを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の園芸用連棟ハウスによれば、軽量で柔軟性のあるシート型太陽光発電モジュールを利用することにより、屋根面へ設置するための補強をする必要がなく、曲面の多い屋根面でも設置が可能となる。また、屋根面の谷部の西側にのみ設置することにより、作物の光合成にとって重要な午前中の時間帯は、モジュールの影が谷樋の影と重なることから、実質的にハウス内の作物の生育への悪影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明に係る園芸用連棟ハウスの一実施形態を示す正面図である。
【
図5】春分(秋分)の日における谷樋と太陽光発電モジュールの影のシミュレーション結果を示す8時から10時の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の基本的概念を表す説明図である。
図1に示すように、本発明による園芸用連棟ハウス1は、各ハウス1aの稜線を南北方向に向けており、屋根の谷部の西側面にシート型太陽光発電モジュール2を設置している。太陽3が東から昇っている午前中の間は、作物の生育に必要な光合成のために太陽光を取り込み、西に沈む午後の時間には太陽光発電を行うものである。
【0012】
以下、本発明による実施の形態の詳細について説明する。
図2乃至
図4に示す園芸用連棟ハウス11は、各ハウスの屋根の稜線30を南北方向に向けるように、所定の間隔で配設された連棟中央柱12、側面柱13、アーチパイプ14、横梁15、母屋パイプ16等といった骨組で形成され、これらを覆う形でハウス被覆フィルム17が全面に取り付けられている。また、屋根には、換気窓18が設けられ、巻上機19により開閉される。さらに、アーチの谷部には、排水用の谷樋20が設けられている。
【0013】
谷樋20に隣接する屋根の西側裾部には、ハウス被覆フィルム17の内側に、シート型太陽光発電モジュール21が設置されている。このシート型太陽光発電21は、アモルファスシリコンによるフレキシブル型のものであり、非常に軽量であることから、基礎を持たない簡易的なパイプハウスであっても、設置に際し補強工事をする必要がない。なお、気象条件等によっては、モジュール21をハウス被覆フィルムの外側に設置してもよい。
【0014】
図5乃至
図7は、春分(秋分)の日における谷樋と太陽光発電モジュールの影の発生位置をシミュレーションしたものである。
【0015】
8時から10時の間は、太陽光発電モジュール21の設置場所よりも西側に影が発生し、影の幅自体もモジュール21の幅より狭く、一部は谷樋20の影と重なる。
【0016】
11時から14時は、影の発生が、モジュール21の設置場所直下であり、ハウスの端境部にあたることから作物の非生育エリアに該当する。13時以降から、影の幅がモジュール21の幅より徐々に広くなる。
【0017】
15時以降は、影がモジュール21の設置場所よりも東側に発生し、影の幅がモジュール21の幅よりも広くなってしまう。
【0018】
このように、午前中には、太陽光発電モジュール21の影が谷樋20の影と重なるため、ハウス内の影を増やすことはない。一方、午後は、徐々にモジュール21の影がハウス内に広がるが、すでに光合成のプライムタイムが終わりに近づいているため、作物の生育への影響は少ない。
【0019】
例えば、間口4.5m、奥行44mのハウスを12棟併設した園芸用連棟ハウスに、長さ2m、幅50cmで1枚あたりの最大出力が55Wのモジュールのシート型太陽光発電モジュールを1棟あたり19枚設置した場合、総計228モジュール設置されているので、発電設備容量は12.5kWPとなる。
【0020】
このように発電された電力は、蓄電して、夜間にこのハウス内で使用される負荷機器(天窓モーター、サイド巻上モーター、温風暖房機ファン)等に使用してもよいし、負荷機器があまり稼動しない昼間に関しては、余剰電力を売電することもできる。
【符号の説明】
【0021】
1、11…園芸用連棟ハウス、2、21…シート型太陽光発電モジュール、3…太陽、12…連棟中央柱、13…側面柱、14…アーチパイプ、15…横梁、16…母屋パイプ、17…ハウス被覆フィルム、18…換気窓、19…巻上機、20…谷樋、30…稜線