耐寒衝撃性、真空成形時のドローダウンの抑制性及びひねりに対する耐性をバランス良く有する冷凍麺製造用トレー用シート、及びこれを用いて形成される冷凍麺製造用トレーを提供すること。
以下であるポリエチレンと、メルトフローレートが0.1〜10g/10分であり、且つ融点が140℃以上であるポリプロピレンとを含有するオレフィン樹脂組成物からなり、ポリエチレンとポリプロピレンとの質量比が25:75〜70:30である冷凍麺製造用トレー用シート。
請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷凍麺製造用トレー用シート、又は当該冷凍麺製造用トレー用シートを少なくとも一層備え、且つ当該層の厚みが全体の50〜100%を占めるシート積層体から形成される冷凍麺製造用トレー。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態の冷凍麺製造用トレー用シートは、ポリエチレン及びポリプロピレンを含有するオレフィン樹脂組成物からなる。また、本実施形態の冷凍麺製造用トレーは、上記冷凍麺製造用トレー用シート、又は当該冷凍麺製造用トレー用シートを少なくとも一層備え、且つ当該層の厚みが全体の50〜100%を占めるシート積層体から形成される。以下、詳細について説明する。
【0015】
(ポリエチレン)
ポリエチレンのメルトフローレートは0.1〜5g/10分である。このメルトフローレートは、トレーの耐寒衝撃性を向上させ、且つ真空成形時のドローダウンをより高度に抑制する観点から、0.15〜3g/10分であると好ましく、0.2〜2g/10分であるとより好ましく、0.25〜1.8g/10分であるとさらに好ましい。
なお、ポリエチレンのメルトフローレートは、JIS K7210に規定された方法に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定される値である。
【0016】
ポリエチレンの密度は930g/m
3以下である。この密度は、トレーの耐寒衝撃性を向上させる観点から、928g/m
3以下であると好ましく、926g/m
3以下であるとより好ましく、924g/m
3以下であるとさらに好ましい。また、この密度の下限は特に限定されないが、例えば、900g/m
3以上とすることができる。
なお、ポリエチレンの密度はJIS K7100に準拠し調整を行った試料について、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。
【0017】
ポリエチレンとしては、上記のメルトフローレート、密度の範囲の中でエチレンの単独重合体、あるいは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα‐オレフィンとの共重合体を用いることができる。具体的には高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンである。これらの中で、ポリプロピレンとの組成物の均一性の観点から、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、同様の理由で、直鎖状低密度ポリエチレンがさらに好ましい。
【0018】
ポリエチレンのスウェル比(SR)は、真空成形時のドローダウンをより高度に抑制し、且つトレーの剛性を向上させる観点から、1.2以上であると好ましく、1.25以上であるとより好ましく、1.3以上であるとさらに好ましい。また、このスウェル比の上限は特に限定されないが、例えば、1.7以下とすることができる。
なお、ポリエチレンのスウェル比は、実施例に記載の方法に従って測定される値である。
スウェル比を上記範囲とする方法としては、分子量を大きく、つまり、上記メルトフローレートを小さくするか、あるいは、溶融状態での分子の絡みやすい構造(例えば長鎖分岐構造)とする方法が挙げられる。
【0019】
上述のポリエチレンは、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物などの助触媒成分を粒子状担体に担持させた固体粒子状の助触媒成分と、アルキレン基やシリレン基等の架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン錯体と、からなる重合触媒の存在下、エチレンを重合させることにより製造することができる。
【0020】
また、上述のポリエチレンとしては、市販のものを利用することもでき、例えば、スミカセンEPPE GH030、スミカセンGMH GT050、スミカセンL211、スミカセン−E FV203(以上、住友化学株式会社製、商品名)等が入手可能である。
【0021】
(ポリプロピレン)
ポリプロピレンのメルトフローレートは0.1〜10g/10分である。このメルトフローレートは、トレーの耐寒衝撃性を向上させ、且つ真空成形時のドローダウンをより高度に抑制する観点から、0.2〜5g/10分であると好ましく、0.3〜2g/10分であるとより好ましく、0.4〜1.4g/10分であるとさらに好ましい。
なお、ポリプロピレンのメルトフローレートは、JIS K7210に規定された方法に従い、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定される値である。
【0022】
ポリプロピレンの融点は140℃以上である。この融点は、耐寒衝撃性を向上させる観点から、145℃以上であると好ましく、150℃以上であるとより好ましく、155℃以上であるとさらに好ましい。また、この融点の上限は特に限定されないが、例えば170℃以下とすることができる。
なお、ポリプロピレンの融点は、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0023】
上述のポリプロピレンは、プロピレンと共重合可能な他のモノマー、例えば、エチレン、α−オレフィンとのランダム共重合体、3元共重合体、ブロック共重合体やプロピレンの単独重合体などを挙げることができる。ランダム共重合体を重合するための共重合可能なモノマーのα−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが好ましく用いられ、より好ましくは、炭素数4〜10のα−オレフィンである。炭素数4〜10のα−オレフィンの具体例を挙げれば、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどである。これらの中で本発明におけるポリプロピレンとしては、トレーの使いやすい剛性を発現させやすいという理由で、融点が140℃以上のランダム共重合体が好ましく、エチレン−プロピレンエラストマーを5〜30重量部添加し、細かく分散させたブロック共重合体が特に好ましい。
【0024】
上述のポリプロピレンの立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよい。本実施形態においては、耐熱性の点から、シンジオタクチック又はアイソタクチックのポリプロピレンが好ましく用いられる。
【0025】
上述のポリプロピレンは、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法などによって、製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
【0026】
また、上述のポリプロピレンとしては、市販のものを利用することができ、例えば、住友ノーブレンAH1311(住友化学株式会社製、商品名)等が入手可能である。
【0027】
(オレフィン樹脂組成物)
本実施形態のオレフィン樹脂組成物は、上述のポリエチレン及びポリプロピレンを25:75〜70:30の質量比で含有する。オレフィン樹脂組成物におけるポリエチレンとポリプロピレンとの比は、耐寒衝撃性を向上させる観点から、30:70〜65:35であると好ましく、35:65〜60:40であるとより好ましく、40:60〜55:45であるとさらに好ましい。
【0028】
本実施形態のオレフィン樹脂組成物は、上述のポリエチレン及びポリプロピレンのみからなるものであってもよく、必要に応じてフェノール系やリン系、ヒンダードアミン系などの酸化防止剤、ヒドロキシベンソフェノン系、ヒドロキシベンゾトリアゾール系、ヒドロキシトジアジン系などの紫外線吸収剤、リン酸金属塩類やカルボン酸金属塩類、あるいは、ベンジリデンソルビトール系造核剤、高級脂肪酸エステルや高級脂肪酸金属塩類などの滑剤、中和剤、帯電防止剤、可塑剤、分散剤、防曇剤、抗菌剤、有機多孔質パウダー、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、金属フタロシアニンなどの着色剤等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、添加剤のその添加量は特に限定されないが、例えば、10質量%以下、すなわちポリエチレン及びポリプロピレンの含有量を90質量%以上とすることができる。
【0029】
また、本実施形態のオレフィン樹脂組成物は、必要に応じて、上述のポリエチレン及びポリプロピレンとは異なる熱可塑性樹脂を含有してもよい。該熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩、ポリスチレン、ABS樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物などのスチレン系重合体、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・66などのポリアミド類、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、エチレン・プロピレン共重合ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0030】
オレフィン樹脂組成物の製造方法はしては、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンと必要に応じて添加剤等の他の成分とを、ドライブレンドやメルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いる方法が挙げられ、メルトブレンドする方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いて溶融混練する方法が挙げられる。添加剤を添加する場合は、事前に必要な添加剤量の5−50倍の量を含有するマスターバッチをメルトブレンドする方法によりペレット状に製造し、そのマスターバッチを所定量ドライブレンドしてもよい。
【0031】
(シート)
本実施形態のオレフィン樹脂組成物からなるシートの成形方法としては、例えばインフレーション法やTダイキャスト法などの押出し成形法、射出成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法などを挙げることができる。これらの成形法の中で、シートの生産性が高く、かつ製品品質の高さの観点では、Tダイキャスト法が好ましい。Tダイキャスト法とは、180−280℃程度に温調した押出機に所定の樹脂組成物を供給、スクリューで可塑化、溶融混練を連続的に実施、Tダイよりシート状に押し出す。この際、スクリューは、単軸でもよいし、二軸でもよい。単軸の場合、スクリューは、フルフライト型でもバリアフライト型でもよく、計量部にダルメージタイプ、マドックタイプ、あるはユニメルトタイプなどのニーディングユニットが配置されているものなどが使用できる。また、シートの流れ方向の厚みの均一性を向上させる観点からはギアポンプを配置し、圧力変動が0.3MPa以内に制御された条件でTダイに送れる形態が望ましい。さらに、製品のシートの異物を除去するために、押出機先端に200メッシュより細かい金網あるいは焼結ファイバーなどを配置してもよい。
Tダイより押し出された溶融状態のシート状物は、10〜80℃に温調されたキャスティング設備の冷却ロールに溶融状態のシート状物を接触させ、冷却固化させることで所定のシートを製造する方式である。ここで、冷却ロールに溶融状のシート状物を接触させるために、エアチャンバー、エアナイフ、静電ピニングなどを補助的な密着手段として用いる場合や、これら補助的な密着手段の代わりに、金属剛体ロール、金属弾性ロール、あるいはゴムロールなどを用い、冷却ロールとの間で溶融状のシート状物を挟み込んで成形するロールを用いた補助的な密着手段を用いることができる。
本発明の冷凍麺製造用トレー用シートを真空成形によりトレー状に成形される場合、真空成形の予熱の段階で熱による収縮が激しいと、真空成形前にシートが変形し、トレーの品質の安定性を損なう可能性があり好ましくない。この熱による収縮を抑制するためには、Tダイキャスト法においてシートを製造する際、補助的な密着手段として、上記の内、エアナイフ、静電ピニング、金属弾性ロール、あるいは、ゴムロールを用いる方が、配向を抑制でき、好ましい。
【0032】
上述の冷却ロールには、表面をハードクロムメッキやセラミック溶射により被覆された金属剛体ロールが用いられるが、ロール表面粗さを変えることによって、シートのHAZE値や摩擦係数などを制御することができる。特に補助的な密着手段として金属弾性ロールやゴムロールを用いる場合、それらのロール表面を選択することにより、得られるシートの両表面に形状を付与し、HAZE値、摩擦係数などを制御できる。
【0033】
本実施形態のオレフィン樹脂組成物からなるシートの成形方法として、共押出法、押出ラミネート法などを採用することにより、シート積層体(多層シート)にしてもよい。また、酸素などの気体や水蒸気のバリア層;吸音層;遮光層;酸素吸収層;接着層;粘着層;着色層;導電性層;再生樹脂含有層;発泡層などを設けてもよい。
【0034】
熱可塑性樹脂からなる層を本実施形態のオレフィン樹脂組成物からなる層に積層される場合は、共押出法により製造することが、生産性の観点では好ましい。共押出法は、本実施形態のオレフィン樹脂組成物と一つ以上の熱可塑性樹脂組成物を一つのTダイに接続された別々の押出機にそれぞれ、供給し、可塑化、溶融混練され、Tダイ方向に送られる。そして、フィードブロック、あるいはコンバイニングアダプターで、積層の順に配置される。フィードブロックでは、Tダイに入る前に重ねられ、Tダイ中でフィルム状に広げられ多層シート状物としてTダイより押し出される(フィードブロック法)。後者のコンバイニングアダプターは、各層毎にTダイ中のマニホールドで広げられた後、Tダイ出口付近で積層され、Tダイより押し出される(マルチマニホールド法)。一般にマルチマニホールド法は、そのTダイが大きくなるため、エアギャップをあまり小さくすることができないので、できるシートの熱収縮が課題となる可能性が考えられるが、各押出機内の樹脂の溶融粘度が異なる場合での対応がしやすいなどそのメリットは高い。ここでエアギャップは、60〜180mm程度が好ましい。このエアギャップは短い方が好ましい。
【0035】
なお、本実施形態のオレフィン樹脂組成物からなる層以外の層を有するシート積層体については、本発明の効果をより高度に発揮する観点から、該オレフィン樹脂組成物からなる層の厚みがシート積層体全体の50〜100%を占めることが好ましい。
【0036】
上述のシート積層体における層の数は、例えば、2〜4層、好ましくは2〜3層とすることができる。本実施形態のオレフィン樹脂組成物からなる層以外の層としては、本発明の効果をより高度に発揮する観点から、本実施形態のオレフィン樹脂組成物と同様の材料を用いたものとすることが好ましい。
【0037】
上述のシート積層体の場合、各層の熱可塑性樹脂に必要に応じて添加されるフェノール系やリン系、ヒンダードアミン系などの酸化防止剤、ヒドロキシベンソフェノン系、ヒドロキシベンゾトリアゾール系、ヒドロキシトジアジン系などの紫外線吸収剤、リン酸金属塩類やカルボン酸金属塩類、あるいは、ベンジリデンソルビトール系造核剤、高級脂肪酸エステルや高級脂肪酸金属塩類などの滑剤、中和剤、帯電防止剤、可塑剤、分散剤、防曇剤、抗菌剤、有機多孔質パウダー、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、金属フタロシアニンなどの着色剤等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。着色剤を添加する場合は、全ての層に添加する必要はない。シートの表面層を形成しない層のみに添加すると、シートに高級感が発現しやすく、表面層を形成する層に入れると、一般的に着色剤の添加量が少なくてすむ利点がある。
【0038】
上述のシート又はシート積層体の厚みは、トレーの剛性を向上させる観点から、250〜1500μmであると好ましい。
【0039】
上述のシート又はシート積層体のヘイズ値は、トレーの破損があった場合に、破損箇所を目視しやすい観点から、10%以上であると好ましく、30%以上であるとより好ましく、50%以上であるとさらに好ましく、70%以上であると特に好ましい。
【0040】
(トレー)
上述のシートを熱成形することにより、トレーを製造することができる。熱成形方法としては、例えば真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、熱板圧空成形法等を挙げることができる。具体的には、フリードローイング法、プラグアンドリング成形法、リッジ成形法、マッチドモールド成形法、ストレート成形法、ドレープ成形法、リバースドロー成形法、エアスリップ成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシストリバースドロー成形法、接触加熱圧空成形法等が挙げられる。
【0041】
トレーの形状は、従来公知のものとすることができ、特に限定されないが、トレーとしての剛性を高くするために、トレーの側面や底面、フランジ部等にリブを有することも有効である。リブの幅と高さは、それぞれ一般的に0.5〜10mm、0.5〜5mmである。リブの数は、一面あたり、1〜10本程度である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。物性の評価は、以下の方法によって行った。
【0043】
(1)ポリエチレンとポリプロピレンのメルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K 7210に規定された方法に従い、荷重21.18Nで、ポリエチレンは温度190℃、ポリプロピレンは温度230℃の条件で測定した。
【0044】
(2)ポリエチレンのスウェル比(SR)
(1)のメルトフローレートの測定において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、オリフィスから20〜40mm程度の長さで押し出したポリエチレンのストランドをカットし、空気中で冷却し、固体状のストランドを得た。次に、該ストランドの押出し上流側(ストランドカット前の下端)先端から約3mmの位置でのストランドの直径D(単位:mm)を測定し、その直径Dをオリフィス径2.095mm(D
0)で除した値(D/D
0)を算出し、スウェル比とした。
【0045】
(3)ポリエチレン及びポリプロピレンの密度(d、単位:kg/m
3)
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料には、JIS K7100に準拠し調整を行ったものを用いた。
【0046】
(4)ポリプロピレンの融点(Tm、単位:℃)
熱プレスにより作製した厚さ約0.5mmのシートから、約10mgの試片を切り出したものを測定用サンプルとし、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製Diamond DSC)を用いて測定した。測定では、測定用サンプルを、230℃で5分間保持した後、5℃/分の降温速度で50℃まで降温した。その後に50℃で1分保持した後、5℃/分で200℃まで昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークの温度を融点(Tm)とした。
【0047】
(5)シートの耐寒衝撃性
実施例及び比較例で得られたシートを100mm×100mmに切り出したものを測定サンプルとして、以下の手順で耐寒衝撃性を評価した。
A)測定サンプルを−35℃に温調した冷凍庫に5時間入れた。
B)測定サンプルを取り出し、地上から50mmの高さで、サンプルを固定した。
C)測定の中央部に、表1及び2に示す高さから500g、20φの鉄球を落下させた。
D)変化がなかったものを「A」、接触部分が変形したものを「B」、割れが発生したもの(脆性破壊されたもの)を「C」として評価した。
【0048】
(6)シートの剛性
JIS K7133 2号ダンベルを用いて、実施例及び比較例で得られたシートを打抜き、試験片とした。JIS K7161を参考として、チャック間距離を80mmとした引張試験機に取り付け、引張速度1mm/minで引張試験を行い、伸びが、0.2%の応力と0.4%の応力を結ぶ線の傾きから引張弾性率を算出し、これをシートの剛性とした。
【0049】
(7)シートのヘイズ値
実施例及び比較例で得られたシートのヘイズ値をJIS K 7105に従って測定した。
【0050】
(8)シ−トのドローダウン
実施例及び比較例で得られたシートの中央部から320mm×320mmのサイズに切り出したサンプルを、外枠340mm×340mm、中枠300mm×300mmのスペーサーに挟んでクランプで固定した。次に500℃に設定されたヒーターでサンプルを160℃になるまで加熱し、加熱中の数秒間のドローダウン状況を目視で確認した。このドローダウンの度合いが大き過ぎる場合には、成形品に大きなしわができる場合があり、度合いが小さいものほど熱成形時の加工性が優れるとする。
【0051】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)を表1に示す組成割合(質量比)で、一括混合した後、スクリュー径65mmφ、L/D=33の押出機を用いて以下の条件でバンク成形によりシート加工を行った。得られたシートの厚みは500μmであり、評価結果を表1に示した。
加工温度:260℃
冷却ロール温度:60℃
補助な密着手段:ゴムロール(シリコンゴムロール)
Tダイ幅:400mm
吐出量:1.2kg/h
引取り速度:4.0m/min
エアギャップ:90mm
なお、表1及び表4中に記載されている材料の物性を表2及び表3に示す。
【0052】
【表1】
なお、表中、「総合」の欄において、「◎」は冷凍麺製造用トレーとして特に好適に用いることできることを示し、「○」は冷凍麺製造用トレーとして好適に用いることを示し、「▲」は冷凍麺製造用トレーとして用いるには難があることを示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
(実施例5、6)
表面層と中間層をそれぞれ構成する樹脂組成物を表4に示す割合(質量比)でポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)を(質量比)で、一括混合した後、表面層を形成する樹脂組成物はスクリュー径70mmφ、L/D=28の押出機Sを用い、中間層を構成する樹脂組成物はスクリュー径120mmφ、L/D=28の押出機Bを用いて以下の条件でシート加工を行った。得られたシートは450μmであり、評価結果を表4に示した。
加工温度:260℃
冷却ロール温度:42℃
補助な密着手段:エアナイフ
Tダイ幅:1150mm
吐出量:180kg/h
引取り速度:6.0m/min
エアギャップ:110mm
【0056】
【表4】