(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-100336(P2015-100336A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】培養液栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20060101AFI20150508BHJP
F25J 1/00 20060101ALI20150508BHJP
C01B 31/20 20060101ALI20150508BHJP
A01G 7/02 20060101ALI20150508BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
F25J1/00 Z
C01B31/20 Z
A01G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-245398(P2013-245398)
(22)【出願日】2013年11月27日
(71)【出願人】
【識別番号】593012310
【氏名又は名称】菱熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182349
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 誠治
(72)【発明者】
【氏名】八幡 智嗣
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
4D047
4G146
【Fターム(参考)】
2B022DA12
2B022DA15
2B314MA12
2B314MA17
2B314MA26
2B314MA42
2B314MA46
2B314PB24
2B314PD43
4D047AA05
4D047BA01
4D047BA06
4D047CA15
4D047DA10
4G146JA02
4G146JA03
4G146JA04
4G146JC39
4G146LA01
(57)【要約】
【課題】極めて簡単でコストを抑えることができるとともに、温暖化ガスとされる二酸化炭素の有効利用が図れ、さらには培養液に含まれる菌数を食品ベンダーに許容される値以下にまですることができる培養液栽培システムを提供する。
【解決手段】培養液を加熱する加熱器10と、加熱器10によって加熱された培養液を冷却する冷却器11とを備え、冷却器11は液体二酸化炭素を断熱膨張によりドライアイスに固化して培養液を冷却する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培室に二酸化炭素ガスを供給し、定植トレイに培養液を供給して植物の栽培を行う培養液栽培システムにおいて、
前記培養液を加熱する加熱器と、
前記加熱器によって加熱された培養液を冷却する冷却器とを備え、
前記冷却器は液体二酸化炭素を断熱膨張によりドライアイスに固化して前記培養液を冷却することを特徴とする培養液栽培システム。
【請求項2】
前記冷却器は、前記培養液を貯留する貯留槽と、前記液体二酸化炭素を断熱膨張させるオリフィスと、該オリフィスに接続されて該貯留槽内に設けられ、前記ドライアイスを流す管とを備えることを特徴とする請求項1記載の培養液栽培システム。
【請求項3】
前記冷却器は、前記液体二酸化炭素を断熱膨張させるオリフィスと、前記オリフィスを通して得られるドライアイスが散布される容器と、該容器内に設けられ、前記培養液が流れる管とを備えることを特徴とする請求項1記載の培養液栽培システム。
【請求項4】
前記冷却器から二酸化炭素ガスを前記栽培室に供給する供給管を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の培養液栽培システム。
【請求項5】
栽培室に二酸化炭素ガスを供給し、定植トレイに培養液を供給して植物の栽培を行う培養液栽培システムにおいて、
前記培養液を保持する培養液タンクと、
前記培養液を加熱する加熱器と、
前記加熱器により加熱された培養液を冷却する冷却器とを備え、
前記培養液タンクから前記定植トレイを経て、前記培養液を前記培養液タンクに循環させる第1の培養液循環経路と、
前記培養液タンクから前記加熱器、前記冷却器を順次経て、前記培養液を前記培養液タンクに循環させる第2の培養液循環路と、
を備えることを特徴とする培養液栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培室に二酸化炭素ガスを供給し、定植トレイに培養液を供給して植物の栽培を行う培養液栽培システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
培養液栽培システムでは、培養液に発生する菌の数を軽減するため、従来より、培養液の除菌装置としてオゾンや光触媒や紫外線を利用する技術が知られている。そして、さらに近年では促進酸化処理法を用いた技術も開発されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4355315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような除菌装置は、装置が複雑となり、コスト高となる。また、培養液の菌数を食品ベンダーが許容する値以下に保つには至っていない。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、極めて簡単でコストを抑えることができるとともに、温暖化ガスとされる二酸化炭素の有効利用が図れ、さらには培養液に含まれる菌数を食品ベンダーに許容される値以下にまですることができる培養液栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、栽培室に二酸化炭素ガスを供給し、定植トレイに培養液を供給して植物の栽培を行う培養液栽培システムにおいて、前記培養液を加熱する加熱器と、前記加熱器によって加熱された培養液を冷却する冷却器とを備え、前記冷却器は液体二酸化炭素を断熱膨張によりドライアイスに固化して前記培養液を冷却することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、栽培室に二酸化炭素ガスを供給し、定植トレイに培養液を供給して植物の栽培を行う培養液栽培システムにおいて、前記培養液を保持する培養液タンクと、前記培養液を加熱する加熱器と、前記加熱器により加熱された培養液を冷却する冷却器とを備え、
前記培養液タンクから前記定植トレイを経て、前記培養液を前記培養液タンクに循環させる第1の培養液循環経路と、
前記培養液タンクから前記加熱器、前記冷却器を順次経て、前記培養液を前記培養液タンクに循環させる第2の培養液循環路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、極めて簡単でコストを抑えることができるとともに、温暖化ガスとされる二酸化炭素の有効利用が図れ、さらには培養液に含まれる菌数を食品ベンダーに許容される値以下にまですることができる培養液栽培システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における培養液栽培システムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1における冷却器の構成を示す図である。
【
図3】実施の形態2における冷却器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(実施の形態1)
この実施の形態における培養液栽培システムは、栽培室1に二酸化炭素ガスを供給し、定植トレイ2に培養液を供給して植物の栽培を行うものである。また、栽培室1で収穫された植物(野菜や果物など)を一時的に保管する野菜冷蔵庫3を二酸化炭素を利用して冷却するようにしたものである。
【0012】
栽培室1は例えばビニールハウスや一部開閉式のガラスやプラスチックなどから構成される温室とすることができる。
【0013】
栽培室1には植物を育成するための複数の定植トレイ2が設けられ、これら複数の定植トレイ2それぞれに培養液が培養液タンク4から循環されて供給される。即ち、培養液タンク4から各定植トレイ2には、培養液供給配管5が設けられ、培養液タンク4からポンプ(第1のポンプ)6によって各定植トレイ2に培養液が供給されるとともに、各定植トレイ2からは、培養液帰還配管7によって培養液タンク4に培養液が戻される。こうして、培養液タンク4、培養液供給配管5、定植トレイ2、培養液帰還配管7、及びポンプ6は、本発明における第1の培養液循環路を構成している。
【0014】
なお、この実施の形態における培養液は、窒素、リン、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム等の成分を含む水と肥料との混合物といった植物の成長を促進させるものであれば何が用いられてもよい。そのような培養液としては、例えば、クノープ液やハイドロカルチャー(登録商標)培養液等が挙げられる。
【0015】
前述した培養液タンク4は、約100リットルの培養液を蓄えており、その一部は、ポンプ(第2のポンプ)8により配管9を介して加熱器10に供給される。なお、この実施の形態において、配管9には培養液の圧力調整用の配管9aが仕切り弁9bを介して設けられている。
【0016】
この加熱器10としては例えばガス給湯器を用いることができる。この加熱器10において、培養液はおよそ5分ほど加熱されることで、約80度に加熱される。
【0017】
加熱器10で加熱された培養液は次に冷却器11に配管12を介して送られる。冷却器11は、
図2に示されるように、配管12によって送られた培養液を貯留する貯留槽11aを備えるとともに、二酸化炭素ボンベ13から供給される液体二酸化炭素を断熱膨張させるオリフィス(減圧弁)11bと、このオリフィス11bで固化されてなるドライアイスが流れる冷却管11cとからなる熱交換器11Aを備える。
【0018】
この熱交換器11Aによって培養液の熱が吸収され、培養液の温度は50℃〜40℃に冷却され、培養液タンク4に配管14を経て戻される。
【0019】
一方、熱交換器11Aで培養液から熱を吸収して加熱されたドライアイスは二酸化炭素ガスとなり、配管15を介して冷却器11から栽培室1に供給される。この二酸化炭素ガスは栽培植物の光合成に利用され、植物の栽培の促進に効率的に利用されることとなる。
【0020】
以上の構成において、培養液タンク4、加熱器10、冷却器11、配管9、12、14、及びポンプ8は本発明における第2の培養液循環路を構成している。
【0021】
なお、この実施の形態において、各培養液循環路を循環する培養液の流量は、6.7リットル/分であり、これは総培養液量のおよそ5パーセントである。もちろん、これらの値は一例であり、これらの値は本発明の培養液栽培システムの設置環境において変更され得るものである。
【0022】
また、この実施の形態では、数多く準備される二酸化炭素ボンベ13の一部を用いて、別個に野菜冷蔵庫3を冷却するようにしている。野菜冷蔵庫3は、栽培室1で育成された植物(野菜や果物など)を収穫した後、一時的に保管するための冷蔵庫であり、本発明の冷蔵室に対応している。
【0023】
この野菜冷蔵庫3は、二酸化炭素ボンベ13aから供給される液体二酸化炭素を断熱膨張させるオリフィス(減圧弁)3aと、このオリフィス3aで固化されてなるドライアイスを流す冷却管3bおよびその冷却管3bが接触する放熱板3cとを有する熱交換器3Aを備える。
【0024】
すなわち、二酸化炭素ボンベ13aからは配管16を介して野菜冷蔵庫3に液体二酸化炭素が送られ、これがオリフィス3aによりドライアイスとなり、熱交換器3Aによって冷蔵庫内を冷却する。
【0025】
この実施の形態では、野菜冷蔵庫3内は約5度となるように冷却能力が設定されている。
【0026】
この熱交換器3Aで野菜冷蔵庫3内の熱を吸収して加熱されたドライアイスは二酸化炭素ガスとなり、この二酸化炭素ガスも供給管17を介して野菜冷蔵庫3から栽培室1に供給される。すなわち、この二酸化炭素ガスも栽培植物の光合成に利用され、植物の栽培の促進に効率的に利用される。
【0027】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2を示す冷却器の別構造例を示す。
実施の形態2の冷却器21は、液体二酸化炭素を断熱膨張させるオリフィス(減圧弁)21bと、このオリフィス21bを通して得られるドライアイスが散布される容器(例えば圧力容器)21aと、この容器21a内に配設され、培養液が流れる冷却管21cとからなる熱交換器21Aを備えるようにしたものである。
【0028】
このような冷却器21の構成によっても、培養液は、実施の形態1に示した冷却気と同様な作用を奏することができる。
【0029】
以上の実施の形態により、この培養液栽培システムにおける培養液内の菌数を大幅に削減することが可能になった。具体的には、何ら殺菌、即ち加熱、冷却殺菌を行わなかった場合の菌数が2.0×10
4/mlであったのに対し、加熱、冷却殺菌をした場合には、菌数を1.8×10
2/mlにまで削減することができた。
【0030】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0031】
1 栽培室
2 定植トレイ
3 野菜冷蔵庫
3a,11b,21b オリフィス(減圧弁)
3b,11c,21c 冷却管
3c 放熱板
3A,11A,21A 熱交換器
4 培養液タンク
5 培養液供給配管
6 ポンプ(第1のポンプ)
7 培養液帰還配管
8 ポンプ(第2のポンプ)
9,12,14,15,16 配管
10 加熱器
11,21 冷却器
11a 貯留槽
13,13a 二酸化炭素ボンベ
17 供給管
21a 容器(圧力容器)